特許第6868863号(P6868863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868863
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20210426BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20210426BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20210426BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20210426BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20210426BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B62K23/04
   F02D11/02 R
   F02D11/10 U
   G05G1/10 Z
   G05G25/00 C
   G05G5/05
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-234403(P2016-234403)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-90065(P2018-90065A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
【審査官】 田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−071236(JP,A)
【文献】 特開2015−020659(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152469(WO,A1)
【文献】 特開2015−081564(JP,A)
【文献】 特開2010−088154(JP,A)
【文献】 特表2005−520472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/04
F02D 11/02
F02D 11/10
G05G 1/10
G05G 5/05
G05G 25/00
B62M 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされ、初期位置から所定方向に正回転及び当該所定方向とは逆方向の逆回転が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップの正回転及び逆回転に連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段と、
前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段と、
前記連動部材と連動して回転し得る回転部材と、
前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの正回転時の回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき車両の所定の機能を作動又は非作動とし得るスロットルグリップ装置であって、
前記連動部材は、前記スロットルグリップの回転力を前記回転部材に伝達するためのギアが形成された伝達手段を構成するとともに、周方向に亘って溝形状から成る収容部が形成され、当該収容部の内部に前記第2付勢手段が収容されたことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記スロットルグリップが正回転したとき、前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与させず、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与し得る付勢力付与手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記付勢力付与手段は、前記第2付勢手段が取り付けられ、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材と共に回転して当該第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与せず、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材の回転を許容しつつ前記ケースに形成されたストッパと当接することにより停止して前記第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与し得ることを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記連動部材は、前記ギアが所定範囲に亘って形成されたフランジを有するとともに、前記ストッパ及び当該ストッパと当接する前記付勢力付与手段の当接部が前記フランジに対応する位置に形成されたことを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたものが普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行速度を一定に保持する定車速保持装置(オートクルーズ装置)を具備するとともに、スロットルグリップを所定方向に正回転させたとき、その回転角度に応じて車両のエンジンを制御するとともに、スロットルグリップを所定方向とは反対の方向に回転させたとき、定車速保持装置の車速保持制御を停止(キャンセル)させるスロットルグリップ装置が開示されている。
【0004】
かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップを所定方向に正回転させたとき連動して回転する連動部材と、スロットルグリップを所定方向とは反対の方向に回転させたとき連動して摺動する摺動部材と、連動部材を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段と、摺動部材を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段とを具備するとともに、連動部材内に摺動部材及び第2付勢手段が配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−81564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のスロットルグリップ装置においては、連動部材内に配設された磁石と、その磁石からの磁力の変化を検知する磁気センサとを有して構成された回転角度検出手段を具備し、当該回転角度検出によりスロットルグリップの回転角度を検出していたので、連動部材内には、磁石及び第2付勢手段が配設されることとなり、連動部材が大型化してしまうとともに、磁気センサの配設位置が限定されてしまうため、装置内のレイアウトの自由度が低下してしまうという不具合があった。
【0007】
このような不具合を解消すべく、連動部材と連動して回転し得る回転部材を具備し、その回転部材の回転角度を回転角度検出手段により検出してスロットルグリップの回転角度を検出することにより、磁石を連動部材の外部に配設することも考えられるが、その場合、第2付勢手段を収容する連動部材の他、連動部材の回転を回転部材に伝達して回転させるための伝達手段が必要となってしまう。この場合、回転部材の設置スペースに加えて伝達手段のためのスペースが別個に必要となり、装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連動部材と連動する回転部材を具備させても装置が大型化してしまうのを抑制することができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされ、初期位置から所定方向に正回転及び当該所定方向とは逆方向の逆回転が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップの正回転及び逆回転に連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材を回転自在に保持するケースと、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第1付勢手段と、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材を初期位置に向かって付勢する第2付勢手段と、前記連動部材と連動して回転し得る回転部材と、前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの正回転時の回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされるとともに、前記スロットルグリップが逆回転したとき車両の所定の機能を作動又は非作動とし得るスロットルグリップ装置であって、前記連動部材は、前記スロットルグリップの回転力を前記回転部材に伝達するためのギアが形成された伝達手段を構成するとともに、周方向に亘って溝形状から成る収容部が形成され、当該収容部の内部に前記第2付勢手段が収容されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与させず、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与し得る付勢力付与手段を具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記付勢力付与手段は、前記第2付勢手段が取り付けられ、前記スロットルグリップが正回転したとき、前記連動部材と共に回転して当該第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与せず、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記連動部材の回転を許容しつつ前記ケースに形成されたストッパと当接することにより停止して前記第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与し得ることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、前記ギアが所定範囲に亘って形成されたフランジを有するとともに、前記ストッパ及び当該ストッパと当接する前記付勢力付与手段の当接部がフランジに対応する位置に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、連動部材は、スロットルグリップの回転力を回転部材に伝達するためのギアが形成された伝達手段を構成するとともに、その内部に第2付勢手段が収容されたので、連動部材と連動する回転部材を具備させても装置が大型化してしまうのを抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、スロットルグリップが正回転したとき、第2付勢手段の付勢力を連動部材に付与させず、前記スロットルグリップが逆回転したとき、前記第2付勢手段の付勢力を前記連動部材に付与し得る付勢力付与手段を具備したので、スロットルグリップの回転方向に応じて第1付勢手段及び第2付勢手段を選択的に作用させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、付勢力付与手段は、第2付勢手段が取り付けられ、スロットルグリップが正回転したとき、連動部材と共に回転して当該第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与せず、スロットルグリップが逆回転したとき、連動部材の回転を許容しつつケースに形成されたストッパと当接することにより停止して第2付勢手段の付勢力を当該連動部材に付与し得るので、スロットルグリップの回転方向に応じて第1付勢手段又は第2付勢手段による付勢力を連動部材に対して適切且つ確実に付与することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、連動部材は、ギアが所定範囲に亘って形成されたフランジを有するとともに、ストッパ及び当該ストッパと当接する付勢力付与手段の当接部がフランジに対応する位置に形成されたので、ストッパ及び当接部を連動部材の径内に形成することができ、スロットルグリップ装置の径方向の寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置が適用される車両のスロットルグリップ及びスイッチケースを示す側面図及び正面図
図2】同スロットルグリップ装置を示す分解斜視図
図3】同スロットルグリップ装置を示す斜視図
図4】同スロットルグリップ装置を示す3面図
図5図4におけるV−V線断面図
図6図4におけるVI−VI線断面図
図7図6におけるVII−VII線断面図
図8図6におけるVIII−VIII線断面図
図9】同スロットルグリップ装置のケースを示す3面図
図10】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す4面図
図11】同スロットルグリップ装置の付勢力付与手段を示す4面図
図12】同スロットルグリップ装置における付勢力付与手段の作用を示すための説明図であって、付勢力付与手段及び連動部材が初期位置にある状態を示す模式図
図13】同スロットルグリップ装置における付勢力付与手段の作用を示すための説明図であって、スロットルグリップを正回転させた際の付勢力付与手段及び連動部材の状態を示す模式図
図14】同スロットルグリップ装置における付勢力付与手段の作用を示すための説明図であって、スロットルグリップを逆回転させた際の付勢力付与手段及び連動部材の状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1に示すように、二輪車のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送るためのもので、図2〜8に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、付勢力付与手段3と、第1付勢手段4と、第2付勢手段5と、回転部材6と、磁気センサ7(回転角度検出手段)とを有して構成されている。
【0019】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたスイッチケースS内(図1参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2、付勢力付与手段3及び回転部材6等を回転自在に保持するものである。なお、図1中符号Mは、スイッチケースSに形成されたスイッチノブを示しており、所望のスイッチノブMを操作することにより、二輪車に搭載された所望電装品を作動させ得るようになっている。また、符号9は、ケース1の開口側を塞ぐための蓋部材を示している。
【0020】
スロットルグリップGは、スイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、図1、2に示すように、初期位置から軸回りに所定方向の正回転a及び当該所定方向とは逆方向の逆回転bが可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、一対の突出部から成る係合部Ga(図2図10参照)が形成されており、これら係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図2等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0021】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの正回転a及び逆回転bに連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図10に示すように、一対の被係合部2aと、一対の収容部2bと、フランジ2cと、ギア2dとを有した円環状部材から成る。
【0022】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、スロットルグリップGの回転に伴って連動部材2も回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、収容部2bが形成されている。なお、連動部材2における他方の面には、円弧状にそれぞれ形成された一対の凸部2eが形成されている。
【0023】
収容部2bは、一対の被係合部2aの間の位置に弧状に形成された溝形状から成り、その内部には第2付勢手段5を構成する圧縮コイルスプリングがそれぞれ収容可能とされている。フランジ2cは、連動部材2の全周方向に亘り径方向に向かって突出形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、回転部材6の外周に形成されたギアと噛み合うことが可能とされており、連動部材2の回転に伴って回転部材6が回転するようになっている。
【0024】
回転部材6は、上述のように連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の所定位置に形成された収容凹部1c(図9参照)に収容されるとともに、軸L(図2、6参照)を中心として回転自在とされている。しかして、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて回転部材6が回転するようになっている。かかる回転部材6には、磁石mが取り付けられており、当該回転部材6の回転に伴って磁石mから生じる磁力が変化するよう構成されている。
【0025】
磁気センサ7(回転角度検出手段)は、図6に示すように、回転部材6の軸Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、回転部材6に取り付けられた磁石mから生じる磁気の変化を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ7は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ7は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成されている。
【0026】
しかして、スロットルグリップGが正回転aするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材6も連動して回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。
【0027】
一方、スロットルグリップGが逆回転bするのに伴って連動部材が同方向に回転すると、回転部材6も連動して回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、スロットルグリップGの逆回転bを検出することができる。
【0028】
このように、スロットルグリップGの逆回転bが検出されると、二輪車が具備する所定の機能を作動又は非作動とすることができるようになっている。本実施形態においては、走行速度を一定に保持する定車速保持装置(オートクルーズ装置)を備えた二輪車に適用されており、スロットルグリップGを逆回転b(初期位置からスロットルを全開させる正回転aの方向とは逆方向の回転操作)させると、当該定車速の保持制御を停止(キャンセル)させ得るよう構成されている。
【0029】
しかして、本実施形態に係る連動部材2は、スロットルグリップGの回転力を回転部材6に伝達するためのギア2dが形成された伝達手段を構成するとともに、その内部(本実施形態においては収容部2b内)に第2付勢手段5が収容されており、連動部材2がスロットルグリップGの回転力を伝達する機能と、第2付勢手段5を収容する機能とを併せて持つものとされている。
【0030】
また、本実施形態に係る連動部材2は、ギア2dが所定範囲に亘って形成されたフランジ2cを有するとともに、図12〜14に示すように、ストッパ1a及び当該ストッパ1aと当接する付勢力付与手段3の当接部3cがフランジ2cに対応する位置に形成されている。これにより、ストッパ1a及び当接部3cを連動部材2のフランジ2cの径内に収めることができ、小型化に寄与することができる。
【0031】
第1付勢手段4は、捩りコイルバネから成り、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。すなわち、スロットルグリップGを正回転aさせると、第1付勢手段4の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0032】
第2付勢手段5は、一対のコイルスプリングから成り、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。すなわち、スロットルグリップGを逆回転bさせると、第2付勢手段5の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0033】
付勢力付与手段3は、第2付勢手段5が取り付けられ、スロットルグリップGが正回転aしたとき、第2付勢手段5の付勢力を連動部材2に付与させず(このとき、第1付勢手段4の付勢力のみが連動部材に付与される)、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、第2付勢手段5の付勢力を連動部材2に付与し得るものである。具体的には、付勢力付与手段3は、図11に示すように、一対の突出部3aと、第2付勢手段5の一端5a側を受けるための一対のバネ受け3bと、当接部3cとを有した円環状部材から成る。
【0034】
一対の突出部3aのうち一方には、外径方向にさらに突出した当接部3cが形成されている。そして、連動部材2に付勢力付与手段3が組み付けられた状態において、図12に示すように、当接部3cが一対の凸部2eが形成された間隙(一方の凸部2eの端部2eaと他方の凸部2eの端部2ebとの間)に位置するとともに、連動部材2が正回転aすると、図13に示すように、凸部2eの端部2eaが当接部3cの一方の端面3caを押圧し、連動部材2と共に付勢力付与手段3が回転するようになっている。一方、連動部材2が逆回転bすると、図14に示すように、他方の凸部2eの端部2ebが当接部3cの他方の端面3cbに当接するまで回転するものの、その当接するまでの間、他方の端面3caを押圧しないので、連動部材2の回転を許容しつつ付勢力付与手段3は停止した状態とされる。
【0035】
バネ受け3bは、連動部材2に付勢力付与手段3を取り付けた状態において、当該連動部材2の収容部2b内に位置するもので、図7に示すように、収容部2b内に収容された第2付勢手段5の一端5a側を受け得るものである。なお、第2付勢手段5は、一端5aがバネ受け3bにて支持されるとともに、他端5b側が収容部2bの縁壁面に当接して組み付けられており、連動部材2と付勢力付与手段3とが共に回転したとき(図13参照)、第2付勢手段5による付勢力は作用せず、連動部材2が回転しつつ付勢力付与手段3が停止したとき(図14参照)、第2付勢手段5が圧縮されて付勢力が連動部材2に付与されるよう構成されている。
【0036】
さらに、当接部3cは、付勢力付与手段3の径方向に向かって一体的に突出形成された部位から成り、連動部材2が逆回転bする際、図14に示すように、ケース1に形成されたストッパ1aと当接し得るようになっている。これにより、連動部材2が逆回転bして第2付勢手段5の付勢力による反力を受けたとしても、付勢力付与手段3の停止状態が保持されるようになっている。
【0037】
ところで、第1付勢手段4は、一端4aが連動部材2に形成された係止部2f(図10参照)に係止されるとともに、他端4bがケース1に形成された係止溝1b(図8参照)に係止されており、連動部材2が正回転aして付勢力付与手段3と共に回転すると、図13に示すように、一端4aが凸部2eの端部2ecに押圧され、これら連動部材2及び付勢力付与手段3に対して付勢力を付与し得るよう構成されている。一方、連動部材2が逆回転bすると、図14に示すように、第1付勢手段4の一端4aは、凸部2eの間(一方の凸部2eの端部2edと他方の凸部2eの端部2ecとの間)に位置した状態が保持されて押圧されず、当該第1付勢手段4の付勢力は付与されないようになっている。
【0038】
このように、本実施形態に係る付勢力付与手段3は、第2付勢手段5が取り付けられ、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2と共に回転して第2付勢手段5の付勢力を当該連動部材2に付与せず(第1付勢手段4の付勢力は付与される)、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2の回転を許容しつつケース1に形成されたストッパ1aと当接部3cとが当接することにより停止して第2付勢手段5の付勢力を当該連動部材2に付与し得る(第1付勢手段4の付勢力は付与されない)ようになっている。これにより、スロットルグリップGの回転方向に応じて第1付勢手段4又は第2付勢手段5による付勢力を連動部材2に対して適切且つ確実に付与することができる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、スロットルグリップGの係合部Ga及び連動部材2の被係合部2aは、当該スロットルグリップGの回転方向に亘って等間隔に複数(本実施形態においては2つずつ)それぞれ形成されるとともに、連動部材2における被係合部2aの間の位置には、第2付勢手段5がそれぞれ配設されている。これにより、スロットルグリップGの回転操作時及び第2付勢手段5の付勢力によりスロットルグリップGが初期位置に戻るとき、連動部材2の回転を安定させてスロットルグリップGの操作性を向上させることができる。
【0040】
しかるに、本実施形態においては、スロットルグリップGの係合部Ga及び連動部材2の被係合部2aは、当該スロットルグリップGの回転方向に亘って等間隔に2つ形成されているが、当該スロットルグリップGの回転方向に亘って等間隔に複数形成されていれば足り、例えば3つ以上形成し、それら被係合部2aの間の位置に第2付勢手段5をそれぞれ配設するものとしてもよい。
【0041】
また、スロットルグリップGが正回転したとき、第2付勢手段5の付勢力を連動部材2に付与させず、スロットルグリップGが逆回転したとき、第2付勢手段5の付勢力を連動部材2に付与し得る付勢力付与手段3を具備したので、スロットルグリップGの回転方向に応じて第1付勢手段4及び第2付勢手段5を選択的に作用させることができる。よって、スロットルグリップGのより円滑な回転操作を行わせることができ、操作性をより向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る第2付勢手段5は、連動部材2における被係合部2aの間の位置で円弧状に延びて配設されたコイルスプリングから成るので、第2付勢手段5の付勢力によりスロットルグリップGが初期位置に戻るとき、連動部材2の回転をより安定させてスロットルグリップGの操作性を一層向上させることができる。しかるに、第2付勢手段5が複数(本実施形態においては2つ)配設されているので、1つの付勢力を小さくすることができ、装置の組み付け時における収容部2bに対する第2付勢手段5の収容作業を容易に行わせることができる。
【0043】
加えて、本実施形態によれば、連動部材2は、スロットルグリップGの回転力を回転部材6に伝達するためのギア2dが形成された伝達手段を構成するとともに、その内部に第2付勢手段5が収容されたので、連動部材2と連動する回転部材6を具備させても装置が大型化してしまうのを抑制することができる。また、連動部材2と連動する回転部材6の回転を磁気センサ7(回転角度検出手段)にて検出し、スロットルグリップGの回転角度を検出するので、連動部材2に磁石m等を形成する必要がなく、第2付勢手段5の設置スペースを十分確保することができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る連動部材2は、ギア2dが所定範囲に亘って形成されたフランジ2cを有するとともに、ストッパ1a及び当該ストッパ1aと当接する付勢力付与手段3の当接部3cがフランジ2cに対応する位置に形成されたので、ストッパ1a及び当接部3cを連動部材2の径内に形成することができ、スロットルグリップ装置の径方向の寸法を小さくすることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第1付勢手段4を捩りコイルバネ以外の付勢手段(スロットルグリップGが正回転したとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢する別の付勢手段)としてもよく、第2付勢手段5をコイルスプリング以外の付勢手段(スロットルグリップGが逆回転したとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢する別の付勢手段)としてもよい。また、磁気センサ7に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態においては、スロットルグリップGを逆回転させると、定車速保持装置(オートクルーズ装置)の定車速の保持制御を停止(キャンセル)させるよう構成されているが、スロットルグリップGの逆方向の回転を検知すると、車両が具備する所定の機能を作動又は非作動するものであれば足りる。例えば、スロットルグリップGの逆方向の回転により、イモビシステムやスマートエントリシステムにおける認証開始、エンジンを始動させるスタータの作動、ハザード等の緊急時点灯手段の作動等を行わせるものとしてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
連動部材は、スロットルグリップの回転力を回転部材に伝達するためのギアが形成された伝達手段を構成するとともに、周方向に亘って溝形状から成る収容部が形成され、当該収容部の内部に第2付勢手段が収容されたスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ケース
1a ストッパ
1b 係止溝
1c 収容凹部
2 連動部材
2a 被係合部
2b 収容部
2c フランジ
2d ギア
2e 凸部
2f 係止部
3 付勢力付与手段
3a 突出部
3b バネ受け
3c 当接部
4 第1付勢手段(ねじりコイルバネ)
4a 一端
4b 他端
5 第2付勢手段(コイルスプリング)
5a 一端
5b 他端
6 回転部材
7 磁気センサ(回転角度検出手段)
8 プリント基板
9 蓋部材
G スロットルグリップ
Ga 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14