(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率を調整している。特に、
図3においては、オリフィスを見やすくするために、オリフィス部分を実際の寸法比率よりも相当に大きく描いている。
【0013】
本実施形態のガスセンサ故障検出装置は、タイヤなどの検査対象物からガス漏れが生じているか否かを検査するガス漏れ検査装置におけるガスセンサの故障を検出する装置である。そこで、ガスセンサ故障検出装置を説明する前に、まず、ガス漏れ検査装置の構成について説明する。
【0014】
ガス漏れ検査装置において、ガス漏れの検査対象となる検査対象物は、任意であってよい。
図1に示すように、ガス漏れ検査装置におけるガス漏れの検査対象となる検査対象物100は、軸対称の外面を有する軸対称の物体である。具体的に、本実施形態の検査対象物100は車両等に用いられるタイヤ101である。タイヤ101は、軸対称の外面として、タイヤ101の軸線に沿って延びる円筒状の接地面102、及び、接地面102の軸方向の両端に接続されて軸線に交差(例えば直交)する円環状の側面103,104と、を有する。タイヤ101の側面103,104は、例えば平坦に形成されてもよいし、湾曲してもよい。タイヤ101は、その軸方向の両端が開口している。このため、タイヤ101のガス漏れを検査する際には、タイヤ101の両端の開口を一対の蓋部105,106によって塞ぐことでタイヤ101を中空の検査対象物として構成する。
【0015】
ガス漏れの検査時においてタイヤ101に充填されるガス(以下「トレースガス」ともいう)は、水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどガスセンサに反応する各種のガス(反応ガス)であってよい。また、トレースガスは、反応ガスを含む混合ガス(例えば水素ガス5%、窒素95%の混合ガス)であってもよい。トレースガスには、例えば粘性が低いガス(例えば使用時にタイヤ101に注入される空気よりも粘性が低いガス)が選択されてよい。
【0016】
図1に示すように、ガス漏れ検査装置200は、ガスセンサ201と、移動手段202と、を備える。ガスセンサ201は、タイヤ101の外面に対向して配される。ガスセンサ201は、タイヤ101の外面(接地面102、側面103,104)に接触しない範囲で、タイヤ101の外面により近づけて配されるとよい。ガスセンサ201は、タイヤ101に充填されたガスをタイヤ101の外側において検出する。ガスセンサ201は、前述したトレースガスを検出する。ガスセンサ201は、検出したトレースガスの濃度を電気信号(例えば電圧値)として出力する。
【0017】
移動手段202は、ガスセンサ201がタイヤ101の外面に沿って移動するように、タイヤ101とガスセンサ201とを相対的に移動させる。移動手段202は、タイヤ101の外面からガスセンサ201に至る距離を一定に保つように、タイヤ101とガスセンサ201とを相対的に移動させるとよい。移動手段202によるタイヤ101とガスセンサ201との相対的な移動方向などは任意であってよい。移動手段202は、タイヤ101の軸線を中心としてタイヤ101とガスセンサ201とを相対的に移動させる。
【0018】
移動手段202は、例えばガスセンサ201をタイヤ101の外面に沿って移動させてもよい。この場合、移動手段202は、例えばガスセンサ201を移動させるロボットアームと、タイヤ101の外面の形状に合せてガスセンサ201が動くようにロボットアームを制御するコンピュータと、を備えてよい。なお、タイヤ101とガスセンサ201とを相対的に移動させるにあたり、タイヤ101及びガスセンサ201の双方を移動させてもよい。移動手段202は、ガスセンサ201がタイヤ101の外面に沿って移動するように、タイヤ101を移動させる。より具体的に、移動手段202は、タイヤ101をその軸線を中心に回転させる回転駆動部202Aによって構成されている。回転駆動部202Aの具体的な構成は任意であってよい。回転駆動部202Aは、タイヤ101の回転位置を把握することが可能なステッピングモータによって構成されている。
【0019】
回転駆動部202Aは、例えばタイヤ101を置く台に接続されてよい。回転駆動部202Aは、タイヤ101の開口を塞ぐ第一の蓋部105に接続されている。回転駆動部202Aが蓋部105に接続されていることにより、タイヤ101の軸線と回転駆動部202Aの軸線とを簡単に一致させることができる。
【0020】
ガスセンサ201は、少なくともタイヤ101の外面のうち周方向の一部領域に対向するように配されればよい。ガスセンサ201は、例えばタイヤ101の接地面102に対向するように配されてよい。ガスセンサ201は、タイヤ101の側面103,104に対向するように配されている。ガスセンサ201の数は、例えば複数であるが、一つであってもよい。
【0021】
複数のガスセンサ201は、タイヤ101の軸線を中心とするタイヤ101の周方向に間隔をあけて配列されている。タイヤ101の周方向に配列された複数のガスセンサ201は、例えば等間隔で配列されているが、不等間隔で配列されてもよい。ガスセンサ201はタイヤ101の周方向に二つ配列されている。
【0022】
ガスセンサ201は、例えばタイヤ101の両方の側面103,104に対向して配されているが、タイヤ101の一方の側面103にのみ対向して配されてもよい。一方の側面103に対向するガスセンサ201と、他方の側面104に対向するガスセンサ201とは、例えば互いに一致するように位置するが、タイヤ101の径方向又は周方向において互いにずれて位置してもよい。
【0023】
ガスセンサ201は移動しないが、例えばタイヤ101の外面に沿って移動してもよい。また、タイヤ101も移動しないが、移動してもよく、例えば軸線周りに自転して移動してもよい。このように、ガスセンサ201がタイヤ101の外面のいずれかに相対するように、ガスセンサ201及びタイヤ101の少なくとも一方が移動するようにしてもよい。
【0024】
あるいは、ガスセンサ201がタイヤ101の側面103,104に対向するように配される場合、ガスセンサ201はタイヤ101の径方向に移動してもよい。また、例えばガスセンサ201がタイヤ101の接地面102に対向するように配される場合、ガスセンサ201はタイヤ101の軸方向に移動してもよい。また、ガスセンサ201は、例えばタイヤ101の外面の移動方向に直交する方向(例えばタイヤ101の径方向や軸方向)に複数配列されてもよい。
【0025】
ガス漏れ検査装置200は、ガス供給排出部203を備える。ガス供給排出部203は、タイヤ101の内部にトレースガスを供給するガス供給部を含む。また、ガス供給排出部203は、タイヤ101内部からトレースガスを排出するガス排出部を含む。ガス供給排出部203によるタイヤ101に対するガスの供給や排出は、後述するPLC215によって制御される。ガス供給排出部203は、トレースガスの供給源(例えばガスボンベ)、供給源とタイヤ101の内部とをつなぐガス供給用の配管、タイヤ101の内部と外部とをつなぐガス排出用の配管、配管の途中に設けられて配管におけるガスの流通及び流通の遮断を切り換えるバルブ(いずれも不図示)、などを適宜組み合わせて構成されてよい。
図1では、ガス供給排出部203の配管204が、タイヤ101の開口を塞ぐ第二の蓋部106に接続されている。ガス供給排出部203の配管204は、ガス供給用の配管及びガス排出用の配管を兼用している。
【0026】
ガス漏れ検査装置200は、位置検出手段205と、判定手段206と、漏れ位置特定手段207と、を備える。位置検出手段205は、移動手段202によるタイヤ101とガスセンサ201との相対的な移動時間又は移動距離に基づいて、タイヤ101の外面におけるガスセンサ201の位置を検出する。位置検出手段205は、タイヤ101の周方向におけるガスセンサ201の位置を検出する。また、ガスセンサ201がタイヤ101の径方向や軸方向に移動する場合、位置検出手段205は例えばタイヤ101の径方向や軸方向におけるガスセンサ201の位置を検出してもよい。位置検出手段205は、複数のガスセンサ201の各々の位置を検出する。
【0027】
位置検出手段205は、PLC(Programmable Logic Controller)215及び回転駆動部202Aによって構成されている。PLC215は、ガス漏れ検査装置200の各種動作を制御する制御部や、ガス漏れ検査装置200に必要な各種データを管理するデータ管理部として構成されている。PLC215は、回転駆動部202Aから送出されるタイヤ101の回転位置のデータに基づいてタイヤ101の外面におけるガスセンサ201の位置を検出する。また、PLC215は、回転駆動部202Aの動作(駆動や停止、速度調整等)も制御する。
【0028】
判定手段206は、ガスセンサ201において検出されたトレースガスの濃度に基づいて、タイヤ101にガス漏れが生じているか否かを判定する。判定手段206は、ガスセンサ201において検出されたトレースガスの濃度が所定のガス漏れ判定閾値以下である場合に、「タイヤ101にガス漏れが生じていない(タイヤ101に孔等の欠陥が無い)」と判定する。また、判定手段206は、ガスセンサ201において検出されたトレースガスの濃度が所定のガス漏れ判定閾値以上である場合に、「タイヤ101にガス漏れが生じている(タイヤ101に孔等の欠陥がある)」と判定する。
【0029】
判定手段206は、PLC215及びガス測定部216によって構成されている。ガス測定部216は、各ガスセンサ201と接続されている。ガス測定部216は、各ガスセンサ201から出力された電気信号(電圧値)をトレースガスの濃度に変換する。電気信号(電圧値)をトレースガスの濃度に変換するための基準データは、例えばガス測定部216に記憶されてもよいが、PLC215に記憶されている。このため、ガス測定部216において電気信号をトレースガスの濃度に変換する際には、上記の基準データがPLC215からガス測定部216に送出される。ガス測定部216において変換されたトレースガスの濃度(又は電圧値)は、各ガスセンサ201と対応付けた状態でPLC215に送出される。
【0030】
PLC215には、タイヤ101にガス漏れが生じているか否かを判定するためのガス漏れ判定閾値のデータが予め記憶されている。ガス漏れ判定閾値は、トレースガスの濃度であってもよいし、電圧値であってもよい。PLC215は、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度(又は電圧値)と、上記のガス漏れ判定閾値とを比較し、タイヤ101にガス漏れが生じているか否かを判定する。ガス測定部216は、例えばトレースガスの濃度を表示する表示部を備えてよい。ガス測定部216の表示部には、例えばガスセンサ201から出力された電圧値が表示されてもよい。
【0031】
漏れ位置特定手段207は、判定手段206が「タイヤ101にガス漏れが生じている」と判定した場合に、位置検出手段205によって検出されたガスセンサ201の位置(タイヤ101の外面に対するガスセンサ201の位置)と、ガスセンサ201において検出されたトレースガスの濃度と、を対応付けて、タイヤ101においてガス漏れが生じている位置を特定する。漏れ位置特定手段207は、PLC215によって構成されている。
【0032】
PLC215は、ガス漏れの有無に関わらず、ガスセンサ201の位置とガスセンサ201において検出されたトレースガスの濃度とを対応付ける。対応付けたデータは、図示しないPC(パーソナルコンピュータ)に送出され、PCの記憶部に記憶されたり、PCの表示部に表示されたりする。上記の対応付けたデータには、検査したタイヤ101を特定するデータ(例えば識別番号)が対応付けられてもよい。
【0033】
ガス漏れ検査装置200を用いたガス漏れ検査方法は、次の手順で行われる。まず、PLC215は、ガスセンサ201がタイヤ101の外面に沿って相対的に移動するように、タイヤ101がその軸線と中心として回転するように、回転駆動部202Aを回転させる。また、PLC215は、ガス供給排出部203からタイヤ101にトレースガスを供給する。続いて、ガスセンサ201は、トレースガスを検出し、検出したトレースガスの濃度に応じた電気信号(電圧値)をPLC215に出力する。PLC215は、出力された電気信号に基づいて、タイヤ101にガス漏れが生じているか否かを判定する。このとき、PLC215では、ガス漏れが生じていると判断した場合における回転駆動部202Aの回転位置を把握している。このため、ガス漏れ検査装置200では、タイヤ101からガスが漏れ出している場合に、少なくともタイヤ101の周方向におけるガス漏れ位置(ガス漏れ領域)を特定することができる。
【0034】
続いて、本実施形態のガスセンサ故障検出システムについて説明する。
図2に示すように、ガスセンサ故障検出システムは、ガスセンサ故障検出装置1と、判断部2(
図1参照)と、を備えている。ガスセンサ故障検出システムでは、
図1に示すガス漏れ検査装置200における回転駆動部202A、ガス供給排出部203、PLC215、ガス測定部216等がそのまま用いられる。
【0035】
ガスセンサ故障検出装置1は、
図3に示すように、位置固定部21と、ガス吹出部22と、吹出量調節部23と、を備えている。ガスセンサ故障検出装置1は、取付治具10によって構成されている。位置固定部21は、ガス吹出部22の位置を固定している。ガス吹出部22は、タイヤ101に充填されたトレースガスを吹き出す。吹出量調節部23は、ガス吹出部22から吹き出されるトレースガスの吹出し量を調整する。位置固定部21は、ホルダ部11、ナット12、及び押えネジ13で構成されている。ガス吹出部22は、トレースガスが吹き出される吹出口13Aで構成されており、吹出量調節部23は、オリフィス部14で構成されている。
【0036】
取付治具10は、例えばタイヤ101の一方の側面103を貫通して取り付けられる。取付治具10は、タイヤ101におけるガス漏れが発生すると想定される想定ガス漏れ位置に配置される。
図2に示す例では、取付治具10は、タイヤ101に1つ取り付けられているが、複数のガスセンサ201の数に応じて、タイヤ101に複数取り付けられてもよい。取付治具10は、例えば、タイヤ101の側面103,104の一方に取り付けられてもよいし、両方に取り付けられてもよい。取付治具10からは、トレースガスが、例えば常時吹き出される。タイヤ101は、回転駆動部202Aによって回転させられるが、取付治具10から吹き出されるトレースガスは、取付治具10が所定の位置、例えばガスセンサ201の真下又はその近傍の位置を通過するときに、ガスセンサ201の検出範囲に向けて吹き出される。なお、取付治具10がガスセンサ201の真下を通過するタイミングに合わせて、その前後の間にトレースガスを吹き出すようにしてもよい。
【0037】
取付治具10は、
図3に示すように、ホルダ部11と、ナット12と、押えネジ13と、オリフィス部14と、を備えている。ホルダ部11は、断面略T字形状をなしており、天板部11Aと、胴部11Bと、を備えている。ホルダ部11における天板部11Aは、円盤状をなしており、タイヤ101の外側に配置されている。
【0038】
胴部11Bは、円筒形状をなしており、その軸方向が天板部11Aに直交している。胴部11Bは、タイヤ101の側面103を貫通しており、胴部11Bの内側には、その軸方向に延在する流通路11Cが形成されている。さらに、胴部11Bにおける流通路11Cの天板部11A側における端部には、ネジ収容部11Dが設けられている。胴部11Bの外側にはネジ山が切られており、ネジ収容部11Dの内側にはネジ溝が切られている。
【0039】
ナット12は、ホルダ部11における胴部11Bの外側の周囲に配置されている。ナット12の内側面には、ホルダ部11の胴部11Bの外側に切られたネジ山に噛み合うネジ溝が切られている。ホルダ部11のネジ山がナット12ネジ溝と噛み合わされて、ホルダ部11の天板部11Aとナット12によってタイヤ101の側面103が挟み込まれる。こうして、ホルダ部11がタイヤ101に固定される。
【0040】
押えネジ13は、ホルダ部11におけるネジ収容部11Dに収容されて配置されている。押えネジ13の外側面には、ホルダ部11のネジ収容部11Dの内側に切られたネジ溝に噛み合うネジ山が切られている。押えネジ13とホルダ部11のネジ収容部11Dの底面との間には、オリフィス部14が設けられている。押えネジ13のネジ山がネジ収容部11Dのネジ溝と噛み合わされて、押えネジ13によってオリフィス部14がネジ収容部11Dの底面に押え付けられて固定される。また、押えネジ13には、吹出口13Aが設けられている。
【0041】
オリフィス部14は、板状部14Aと、板状部14Aに設けられた小径のオリフィス孔14Bとを備えている。オリフィス孔14Bは、ホルダ部11の流通路11Cと、押えネジ13の吹出口13Aとの間を連通している。流通路11Cに流入したトレースガスは、オリフィス孔14Bを通過して、吹出口13Aからタイヤ101の外部に吹き出される。
【0042】
また、オリフィス部14としては、板状部14Aの外形が共通し、オリフィス孔14Bの径が異なる種々のものを用いてもよい。これらのオリフィス孔14Bの径が異なる複数のオリフィス部14を交換可能とすることにより、トレースガスが吹き出す際の吹出し量などを調整することができる。
【0043】
図1に示すように、判断部2は、PLC215及びガス測定部216によって構成されている。ガス測定部216は、ガス漏れ検査装置200で用いられる際と同様に機能する。PLC215には、ガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定するための故障判定閾値のデータが予め記憶されている。故障判定閾値は、トレースガスの濃度であってもよいし、電圧値であってもよい。PLC215は、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度(又は電圧値)と、上記の故障判定閾値とを比較し、ガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定する。
【0044】
また、PLC215は、ガスセンサ201の故障検出を行う際に、タイヤ101に対して一定量のトレースガスを供給するように、ガス供給排出部203を制御する。PLC215に記憶される故障判定閾値は、ガス供給排出部203からタイヤ101に供給されるトレースガスの量に応じて定められている。
【0045】
次に、ガスセンサ故障検出システムによるガスセンサ201の故障検出を行う手順について説明する。ガスセンサ故障検出システムによるガスセンサ201の故障検出は、例えば、ガス漏れ検査装置200による検査作業を開始する前の始業前点検時、段替え後の点検時、ガスセンサ201の劣化の確認時などに行えばよい。
【0046】
ガスセンサ201の故障検出を行う際には、故障検出の前の準備として、取付治具10が取り付けられたタイヤ101を回転駆動部202Aに取り付ける。取付治具10は、タイヤ101の任意の位置に取り付けることができる。ここでは、例えば回転駆動部202Aに取り付けられたタイヤ101が回転する際に、ガスセンサ201の直下を通過するタイヤ101の位置に取付治具10が取り付けられている。
【0047】
また、タイヤ101の開口を塞ぐ蓋部106を介してガス供給排出部203からトレースガスをタイヤ101の内側に供給可能とする。続いて、ガス供給排出部203からトレースガスを供給して、タイヤ101の内側がトレースガスで充填される。こうして、準備が完了した後に、ガスセンサ201の故障検出が行われる。
【0048】
ガスセンサ201の故障検出を行う際には、PLC215は、ガス供給排出部203からトレースガスを供給するとともに、回転駆動部202Aを駆動させる。ガス供給排出部203からトレースガスを供給すると、タイヤ101に充填されたトレースガスは、取付治具10に設けられた吹出口13Aから吹き出す。なお、ガスセンサ201の故障検出を行う際に、ガス供給排出部203からのトレースガスの供給を行わないようにしてもよい。この場合、タイヤ101の内圧によって吹出口13Aからトレースガスが吹き出される。ガスセンサ201では、吹出口13Aから吹き出したトレースガスを検出する。ガスセンサ201は、トレースガスを検出したときには、トレースガスの濃度に応じた電気信号(電圧値)を検出結果として出力する。
【0049】
ところが、ガスセンサ201に故障が発生していると、例えば取付治具10の吹出口13Aからトレースガスが吹き出したとしても、ガスセンサ201がトレースガスを検出できず、ガスセンサ201は、トレースガスの濃度に応じた電圧値を出力しなくなる。ガス測定部216は、ガスセンサ201から出力される電圧値をトレースガスの濃度に変換してPLC215に送出する。PLC215では、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度を故障判定閾値と比較して、ガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定する。
【0050】
ガスセンサ201に故障が生じていない場合には、ガスセンサ201は、取付治具10の吹出口13Aから吹き出されるトレースガスの濃度に応じた電圧値を出力する。したがって、トレースガスの濃度が故障判定閾値以上であるときには、ガスセンサ201に故障が生じていないと判定できる。また、ガスセンサ201に故障が生じている場合には、ガスセンサ201は、取付治具10の吹出口13Aから吹き出されるトレースガスの濃度に応じた電圧値より低い電圧値、例えば0Vを出力する。あるいは、ガスセンサ201は、電気信号(電圧値)を出力しない。したがって、トレースガスの濃度が故障判定閾値未満であるときには、ガスセンサ201に故障が生じていると判定できる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1を用いたガスセンサ故障検出システムにおいては、タイヤ101に取付治具10を取り付け、タイヤ101からトレースガスを吹き出させて、ガスセンサ201による検出を行っている。ここで、ガスセンサ201の故障検出を行う際、タイヤ101から吹き出されるトレースガスの量や濃度は、既知の値となっている。また、トレースガスの吹出位置は、取付治具10の取付位置であるので、既知の位置となっている。タイヤ101は、回転駆動部202Aによって回転可能とされているが、回転駆動部202AはPLC215によって制御されるので、タイヤ101が回転されたとしても、トレースガスの吹出位置はやはり既知の状態となっている。このように、既知の量や濃度で既知の位置からトレースガスを吹き出すことができるので、ガスセンサ201が正常であれば、ガスセンサ201で検出されるトレースガスの濃度は一定となるはずである。ところが、ガスセンサ201に故障が生じていると、検出されるトレースガスの濃度が例えば低くなる。本実施形態のガスセンサ故障検出システムでは、PLC215において、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度を故障判定閾値と比較して、ガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定する。したがって、ガスセンサ201の故障を精度よく検出することができる。
【0052】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1において、トレースガスの吹出位置は、取付治具10の取付位置であり、取付治具10は、タイヤ101における任意の位置、例えばタイヤ101の側面103,104のいずれかの位置とすることもできるし、接地面102のいずれかの位置することもできる。したがって、トレースガスの吹出位置を容易に調整することができる。様々なケースを想定したガス漏れ検査に対応できる。
【0053】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1において、トレースガスの吹出位置は、取付治具10の取付位置によって決定される。取付治具10は、タイヤ101の任意の位置に取付可能であるので、トレースガスの吹出位置を容易に調整することができる。また、取付治具10のオリフィス部14には、小径のオリフィス孔14Bが形成されている。このため、タイヤ101から吹き出されるトレースガスの吹出量を調節することができ、タイヤ101からトレースガスを微小な量で吹き出すことができる。したがって、実際のタイヤのエア漏れに近い状態でタイヤ101からトレースガスを吹き出すことができる。
【0054】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1において、取付治具10におけるオリフィス部14は、オリフィス孔14Bの径が異なる複数のものと交換可能とされている。このため、取付治具10から吹き出されるトレースガスの量を調整することができる。さらに、取付治具10は、径や大きさの異なる複数種類のタイヤに対して取り付け可能である。このため、大きさの異なるタイヤ(ワーク)において、トレースガスの吹出を容易に行うことができる。したがって、ガスセンサ故障検出装置1では、ワークの大きさやトレースガスの漏れ量などが異なる場合などを含めて、様々なケースを想定したガス漏れ検査に対応できる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bは、タイヤ101に取付治具10を取り付ける態様に代えて、
図4に示すトレースガス吹出装置30を備えている。
【0056】
図4に示すように、トレースガス吹出装置30は、支持体40を備えている。支持体40は、台座31によって構成されている。台座31は、円盤状をなしており、例えば
図1に示すガス漏れ検査装置200における回転駆動部202Aに載置可能である。支持体40は、台座31でなくてもよい。例えば、回転駆動部202Aに載置される部材のほか、回転駆動部202Aやその他の位置に固定される部材等でもよい。
【0057】
ガスセンサ故障検出装置1Bは、位置固定部24、ガス吹出部25、及び吹出量調節部26を備えている。位置固定部24は、第1吹出管33〜第3吹出管35によって構成されている。ガス吹出部25は、第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38によって構成されている。吹出量調節部26は、第1バルブ33P〜第3バルブ35Pによって構成されている。
【0058】
台座31の上には、ガス供給管保持部32が設けられている。ガス供給管保持部32は、内側をトレースガスが流通可能とされている。ガス供給管保持部32には、調整部41が接続されている。調整部41は、第1吹出管33、第2吹出管34、及び第3吹出管35によって構成されている。第1吹出管33〜第3吹出管35には、ガス供給管保持部32からトレースガスが供給される。第1吹出管33〜第3吹出管35は、例えばフレキシブルアームによって構成されている。
【0059】
第1吹出管33〜第3吹出管35の先端部には、ガス吹出部材42が取り付けられている。ガス吹出部材42は、第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38によって構成されている。第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38には、
図3に示すオリフィス部14と同様のオリフィス孔が形成されたオリフィス部が設けられている。第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38の表面に、トレースガスが吹き出される第1吹出孔36A〜第3吹出孔38Aが設けられている。第1吹出孔36A〜第3吹出孔38Aには、ガス供給管保持部32からのトレースガスがオリフィス孔を通して供給される。第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38は、
図2に示すタイヤ101を仮想した場合に、タイヤ101におけるガス漏れが発生すると想定される想定ガス漏れ位置に配置される。また、第1吹出管33〜第3吹出管35は、例えばフレキシブルアームによって構成されていることにより、第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38の配置位置及びガス吹出角度を調整可能とされている。台座31は、第1吹出管33〜第3吹出管35を介して第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38を支持している。
【0060】
ガス供給管保持部32には、下部バルブ32Pが設けられている。また、第1吹出管33〜第3吹出管35には、第1バルブ33P〜第3バルブ35Pが設けられている。下部バルブ32Pを開放することにより、ガス供給管保持部32をトレースガスが通過可能となり、下部バルブ32Pを閉鎖することにより、ガス供給管保持部32をトレースガスが通過不能となる。また、第1バルブ33P〜第3バルブ35Pを開放することにより、第1吹出管33〜第3吹出管35をトレースガスが通過可能となり、第1バルブ33P〜第3バルブ35Pを閉鎖することにより、第1吹出管33〜第3吹出管35をトレースガスが不通となる。ガス供給管保持部32には、
図1に示すガス供給排出部203が接続されており、第1吹出管33〜第3吹出管35には、ガス供給管保持部32を介してトレースガスを供給可能とされている。
【0061】
以上のように構成される本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bは、第1実施形態のガスセンサ故障検出装置1と同様に、既知の量や濃度で既知の位置からトレースガスを吹き出すことができる。したがって、PLC215において、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度を故障判定閾値と比較してガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定することにより、ガスセンサ201の故障を精度よく検出することができる。
【0062】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bでは、トレースガス吹出装置30のガス吹出部材42が取り付けられる位置をタイヤ101のガス漏れが生じている位置に見立ててトレースガスを吹き出している。このため、タイヤ101を実際に用いることなく、タイヤから吹き出されるトレースガスを再現することができるので、容易にガスセンサ201の故障を検出することができる。また、タイヤ101を用いることなくガスセンサ201の故障を検出するので、故障検出中におけるタイヤ101のバーストを無くすことができる。
【0063】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bでは、調整部41を構成する第1吹出管33〜第3吹出管35がフレキシブルアームで構成されている。このため、フレキシブルアームの形状を調整することにより、第1吹出孔36A〜第3吹出孔38Aの配置位置及びガス吹出角度を容易に設定することができる。したがって、様々な大きさ及び形状のタイヤからのトレースガスの吹き出しを容易に再現することができる。
【0064】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bでは、ガス供給管保持部32に下部バルブ32Pが設けられ、第1吹出管33〜第3吹出管35に第1バルブ33P〜第3バルブ35Pが設けられている。このため、第1吹出頭部36〜第3吹出頭部38のトレースガスの吹き出しを一括して調整することもできるし、個々に調整することもできる。
【0065】
なお、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bでは、調整部41のフレキシブルアームは、作業員が手動で変形させるものであるが、他のものでもよい。例えば、フレキシブルアームに代えて、関節付ロボットアームなどを用いて、PCL215等によって形状を調整可能なものとしてもよい。
【0066】
[第3実施形態]
次に、
図5を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態のガスセンサ故障検出装置1Cは、第2実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bと同様、タイヤ101に取付治具10を取り付ける態様に代えて、
図5に示すトレースガス吹出装置50を備えている。
【0067】
図5(A)に示すように、トレースガス吹出装置50は、支持体60を備えている。支持体60は、台座51によって構成されている。台座51は、円盤状をなしており、例えば
図1に示すガス漏れ検査装置200における回転駆動部202Aに載置可能である。支持体60は、台座51でなくてもよい。例えば、回転駆動部202Aに載置される部材のほか、回転駆動部202Aやその他の位置に固定される部材等でもよい。
【0068】
ガスセンサ故障検出装置1Cは、位置固定部27、ガス吹出部28、及び吹出量調節部29を備えている。位置固定部27は、ガス吹出管52によって構成されている。ガス吹出部28は、トレースガスが吹き出される第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dによって構成されている。吹出量調節部29は、バルブ54によって構成されている。
【0069】
台座51の上には、ガス吹出管52が設けられている。ガス吹出管52は、
図5(B)にも示すように、平面視して蛇行した形状をなしている。ガス吹出管52には、複数、ここでは4つの第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dが設けられている。第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dは、タイヤ101を仮想した場合に、互いにタイヤ101の径方向にずれた位置に配置されている。
【0070】
ガス吹出管52は、
図5(C)に示すように、仮想したタイヤ101の表面に相当する位置に設けられている。ガス吹出管52は、剛性の管であるが、他の態様でもよく、例えば第2実施形態における第1吹出管33〜第3吹出管35と同様に、フレキシブルアームによって構成されていてもよい。
【0071】
ガス吹出管52における台座51側の端部には、バルブ54が設けられている。バルブ54を開放することにより、ガス吹出管52をトレースガスが通過可能となり、バルブ54を閉鎖することにより、ガス吹出管52をトレースガスが不通となる。ガス吹出管52には、
図1に示すガス供給排出部203が接続されており、ガス吹出管52に対してトレースガスを供給可能とされている。
【0072】
以上のように構成される本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Cは、第1実施形態のガスセンサ故障検出装置1と同様に、既知の量や濃度で既知の位置からトレースガスを吹き出すことができる。したがって、PLC215において、ガス測定部216から送出されたトレースガスの濃度を故障判定閾値と比較してガスセンサ201に故障が生じているか否かを判定することにより、ガスセンサ201の故障を精度よく検出することができる。
【0073】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Cでは、トレースガス吹出装置50のガス吹出管52における第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dの位置をタイヤ101のガス漏れが生じている位置に見立ててトレースガスを吹き出している。このため、タイヤ101を実際に用いることなく、タイヤから吹き出されるトレースガスを再現することができるので、容易にガスセンサ201の故障を検出することができる。また、タイヤ101を用いることなくガスセンサ201の故障を判断するので、故障判断中におけるタイヤ101のバーストを無くすことができる。
【0074】
また、本実施形態のガスセンサ故障検出装置1Cでは、第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dが仮想したタイヤ101の径方向にずれた位置に配置されている。このため、例えばタイヤ101を回転させるようにしてガスセンサ201の故障検出を想定した場合に、故障しているガスセンサ201を短時間で判断することができる。
【0075】
なお、第1実施形態のガスセンサ故障検出装置1及び第2実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bにおいても、複数のガス吹出部を設ける場合に、タイヤ101又はタイヤ101を仮想した際の径方向にずれた位置に複数のガス吹出部を配置するようにしてもよい。また、第3実施形態のガスセンサ故障検出装置1Cの第1ガス吹出口53A〜第4ガス吹出口53Dにオリフィス部を設けてもよい。また、第1実施形態のガスセンサ故障検出装置1及び第2実施形態のガスセンサ故障検出装置1Bにおいてオリフィス部を設けなくてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。