(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868905
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】インフレータ付きセフティゲージ
(51)【国際特許分類】
B60S 5/04 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
B60S5/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-183115(P2018-183115)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-50227(P2020-50227A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】三村 義雄
【審査官】
田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−112292(JP,A)
【文献】
実開平6−042488(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/111645(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0125505(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールに装着したタイヤを起立した状態で収容してエアーを充填するインフレータ付きセフティケージにおいて、セフティケージの下端部にはタイヤを持ち上げるタイヤリフトを備え、該タイヤリフトの底板には側板一方側を低く傾斜した複数のローラを回転自在に軸支し、またタイヤの下端部を側板一方側へ押圧する為のタイヤ押えを取付け、一方、セフティケージの上端部には圧縮エアーを噴射するノズルを設けたインフレータを備え、該インフレータは側板方向に向かってスライドすることが出来る移動手段を備え、さらにセフティケージには自動充填機を取付けたことを特徴とするインフレータ付きセフティケージ。
【請求項2】
上記インフレータの移動手段として、ロッドレスシリンダーを用いた請求項1記載のインフレータ付きセフティケージ。
【請求項3】
傾斜したローラを2本配置し、その間にロッドレスシリンダーによって作動するタイヤ押えを取付けた請求項1、又は請求項2記載のインフレータ付きセフティケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤにエアーを充填する場合、タイヤが破裂しても作業者や周りに居る人が怪我しないように、しかもホイールとタイヤビード間に生じる隙間からのエアー漏れを抑え、エアー充填を効率良く行うことが出来るインフレータ付きセフティゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤには所定の空気圧になるようにエアーが充填される。
図9はホイール外周に形成しているリム(イ)にタイヤ(ロ)が装着されている断面を表しているが、タイヤ(ロ)のビード(ハ)はリムビード部(ニ)に嵌り、リム両側に起立する耳部(ホ)、(ホ)によって拘束され、外れないように成っている。タイヤ(ロ)のビード(ハ)には高張力の金属製ワイヤーが埋着され、エアーが充填された状態では起立した耳部(ホ)を乗り越えて外れない構造と成っている。
【0003】
ところで、大型トラックともなればタイヤ(ロ)は数トン以上もある車両を支えることが出来るように高圧に充填され、その為にエアー充填時にはタイヤビード(ハ)がリム(イ)に完全に装着されていなければ成らず、不完全な装着状態でエアーを充填すればタイヤ(ロ)がリム耳部(ホ)から外れてしまうことがある。又、タイヤ(ロ)のゴムが劣化している場合、タイヤ(ロ)の一部にキズがある場合など、エアーを充填して高圧になったところタイヤが破裂する虞がある。勿論、タイヤ(ロ)にキズがなくてリム(イ)に正しく装着されていても、作業ミスで空気を入れ過ぎるならばタイヤ(ロ)は破裂する。
【0004】
このように、エアー充填中にタイヤ(ロ)が破裂する虞がある為に、作業者はもとより、周りに居る人が怪我しないように対処する必要がある。そこで、従来ではタイヤ(ロ)にエアーを充填する場合に安全ケース(セフティケージ)が使用されている。このセフティケージは、タイヤ(ロ)を起立した状態で収容し、このセフティケージ内で安全にエアーが充填される。
【0005】
ところで、同図に示すチューブレスタイヤの場合、エアーがある程度充填されるならば、タイヤビード(ハ)はリム(イ)のリムビード部(ニ)及び耳部(ホ)に密着するが、エアーを充填する前では、タイヤビード(ハ)とリム(イ)のリムビード部(ニ)及び耳部(ホ)との間に隙間が存在する。従って、充填するエアーはこの隙間から漏れてしまい、所定の空気圧に達しない。
すなわち、ホイールに装着しないで長期間にわたって放置したち、保管されたタイヤは変形し、この変形したタイヤをホイールに装着したのでは必然的にタイヤビード(ハ)とリムビード部(ニ)及び耳部(ホ)との間に隙間が発生し、この状態ではエアーを充填することは出来ない。
【0006】
ところで、このように変形して、タイヤビード(ハ)とリムビード部(ニ)及び耳部(ホ)との間に隙間が発生しているタイヤであっても、エアーを充填することが出来るようにした装置は知られている。
すなわち、エアー充填装置とは独立した装置(インフレータ)を用い、タイヤビード(ハ)とリムビード部(ニ)及び耳部(ホ)との間に存在する隙間にインフレータの先端ノズルから圧縮エアーを噴射し、この噴射する圧縮エアーで充填されるエアーの漏れを遮断・抑制することが出来る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、タイヤビードとリムビード部及び耳部との間に隙間がある場合でも、エアーの充填が出来る装置が使用されている。しかし、従来の装置はエアー充填装置とは切り離されもので、エアーの充填作業を効率的に行うことが出来ない。
本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、簡単な構造で構成してエアーの充填を安全に効率よく行うことが出来るようにしたものであり、すなわち、タイヤを転がして手軽に出し入れすることが出来るように縦型とし、そして、エアーを安全に充填することが出来ると共に、充填されるエアーの漏れを抑えるインフレータを組み込んで一体化したセフティケージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセフティケージは起立した状態でタイヤを転がして収容出来る形態とし、底部にはタイヤリフトを備えている。リフトの底板には複数本の細長いローラを傾斜した状態で回転出来るように軸支し、また、底板にはタイヤ押えを取付けている。タイヤ押えにはシリンダーなどの移動手段が連結し、上記ローラの傾斜方向へタイヤを押圧するように機能する。ローラの傾斜方向はセフティケージの一方側面が低くなるように互いに平行に傾斜している。
【0009】
セフティケージの上部にはインフレータが取付けられ、該インフレータに接続されて下方へ延びるノズルを有している。また、セフティケージの上方には自動充填機を備えている。
該自動充填機は上記インフレータに接続したノズルから圧縮エアーを噴射すると共に、タイヤにエアーを充填所定の空気圧にすることが出来るように構成している。
【0010】
ところで、ホイールに装着したタイヤは転がしてセフティケージ内に起立した状態で収容されるが、タイヤは傾斜した支持ローラに載ることで傾くが、タイヤに嵌っているホイールは直立して保持され、その自重で降下する。
そして、ローラと対を成して取付けているタイヤ押えにて起立したタイヤの下側が押圧され、その為にタイヤ側面の上部及び下部はセフティケージに当接する。
【0011】
ホイールは自重によって降下し、その為にタイヤビード下部とホイールのリムビード下部とはシートされて隙間は発生しない。また、セフティケージの側面に当接した側のタイヤビード上部とホイールのリムビード上部とはシートされるが、反対側のタイヤビード上部とホイールのリムビード上部とはシートされることなく隙間が発生する。
【0012】
すなわち、タイヤとホイールとの間に発生する隙間は、セフティケージとの当接面とは反対側の上部のみである。タイヤはリフターにて持ち上げられ(上昇し)、発生する隙間が上記インフレータのノズルの位置になるようにセットされる。
そこで、自動充填機を作動してタイヤにエアーを充填するならば、発生した上記隙間からエアーが漏れようとするが、ノズルから噴射する圧縮エアーにてタイヤからのエアー漏れは抑止され、タイヤにエアーが効率よく充填される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセフティケージはインフレータを備えたものであり、変形してホールのリムビード部との間に隙間が発生したタイヤであっても、効率よくエアーを充填することが出来る。すなわち、セフティケージは起立したタイヤを傾かせて、上部の片側のみにホイールとの間に隙間を作り、この隙間にインフレータのノズルから圧縮エアーを噴射することが出来る。噴射する圧縮エアーにて隙間から漏れようとするエアーは抑制又は遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るインフレータ付きセフティケージの実施例を示す正面図。
【
図2】本発明に係るインフレータ付きセフティケージの実施例を示す側面面。
【
図3】本発明に係るインフレータ付きセフティケージの実施例を示す平面図。
【
図4】タイヤリフトの底板に取付けた2本の傾斜したローラとタイヤ押え。
【
図5】傾斜したローラとタイヤ押えの位置関係を示す正面図。
【
図6】タイヤリフトに載って上昇したタイヤの側面図。
【
図7】ホイールに装着したタイヤのビードとホイールビード部間の隙間に配置したノズル。
【
図8】インフレータ及びノズルをスライド移動する具体的な手段。
【
図9】タイヤがホイールのリムに嵌っている断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図3は本発明に係るインフレータ付きセフティケージを示す実施例であり、
図1は正面図、
図2は側面図、
図3は平面図をそれぞれ表している。
同図の1はセフティケージ、2は自動充填機、3はインフレータ、4はノズル、5はローラ、6はタイヤ押え、7はタイヤリフトをそれぞれ表わしている。
上記セフティケージ1は開口を有す箱型で、内部にはタイヤが起立して入ることが出来る大きな収容空間8を有している。自動充填機2はタイヤにエアーを充填し、またインフレータの圧縮エアーをノズルから噴射することが出来るように構成している。
【0016】
ホイールに装着したタイヤは収容空間8に転がって入り、この収容空間8に入ったタイヤにエアーが充填される。勿論、セフティケージ1に収容された状態でエアーが充填される為に、何らかの原因でタイヤが破裂しても安全である。
タイヤにエアーがある程度充填されるならば、タイヤは膨らんでホイールのリムとの間に隙間なく、タイヤビードはリムビード部に密着してエアー漏れは生じないが、タイヤビードがリムビード部に密着するまでは間に隙間が存在し、この隙間から充填されるエアーの一部が漏れる。したがって、タイヤのエアー圧が所定の値に成るには時間がかかり、作業効率は悪い。
【0017】
本発明はタイヤビードとリムビード部との間に隙間がある場合、この隙間からエアーが漏れないように、又はエアー漏れを抑制することが出来るように、本発明ではインフレータを備え、該インフレータに接続して延びているノズルから圧縮エアーが噴射し、隙間からのエアー漏れを遮断することが出来るように構成している。
そこで、タイヤビードとリムビード部との間に生じる隙間は、タイヤを起立した状態で、上部の片側に限定して生じるようにしている。
【0018】
そこで、セフティケージ1の底部には
図4に示すごとく、タイヤリフト7を設け、該タイヤリフト7の底板9には所定の間隔をおいて2本の平行なローラ5a,5bを回転自在に軸支している。しかも、該ローラ5a,5bは水平な底板9に対して傾斜している。細長いローラ5a,5bはその両端に支持板10a,10bが起立し、一方の支持板10aは他方の支持板10bより高さが低く、その為にローラ5a,5bは支持板10a側を低くして傾斜している。
その為に、両ローラ5a,5bに載ったタイヤは傾斜して起立し、ただし、タイヤに嵌っているホイールは直立状態で保持される。
【0019】
そして、上記両ローラ5a,5bの間にはタイヤ押え6を設けている。該タイヤ押え6は底板9に取着したロッドレスシリンダー11に取付けられ、上方へ起立している。したがって、タイヤ押え6はロッドレスシリンダー11に沿って移動し、ローラ5a,5bに載って起立したタイヤは押されてタイヤリフト7の下端部は側板12に当接する。よって、タイヤの上端部と下端部が共にセフティケージ1の側面に当接するようになる。
【0020】
図5はローラ5とタイヤ押え6の関係を示す正面図であり、ロッドレスシリンダー11に取付けられていて、底板9から起立するタイヤ押え6は、ローラ5より上方へ突出して延び、ローラ5に載ったタイヤはタイヤ押え6が移動することで押圧され、タイヤ下端部は側板12に当接することが出来る。そして、起立したタイヤは適当な高さになるように、タイヤリフト7にて上昇する。
【0021】
タイヤリフト7は、前記
図4に示しているように、底板9に2本のローラ5a,5bを取付け、両ローラ5a,5bの間にタイヤ押え6を備えている。そして、該底板9はシリンダー13にて昇降動することが出来、該シリンダー13の両側にはガイド14,14を配置している。したがって、大きくて重いタイヤでもタイヤリフト7にて安定して昇降動することが出来る。
【0022】
図6はタイヤがタイヤリフト7にて上昇し、所定の高さにセットされた場合である。すなわち、インフレータ3から延びるノズル4がホイールの耳部に位置する高さになるように上昇する。
図7はホイール15にタイヤ16が装着している場合の縦断面を表している。タイヤ16は起立した状態でセフティケージ1のタイヤリフト7の底板9に取着しているローラ5a,5bに載置され、この場合、ホイール15は自重で降下し、同図の〇印で示すAとBはシートされ、タイヤビードとホイールビード部間の隙間は無くなる。
【0023】
タイヤ16は傾斜したローラ5a,5bに載り、しかもタイヤ押え6にて押圧されることで、同図の〇印で示すAとCはシートされて、タイヤビードとホイールのビード部との間に隙間は生じない。
このように、A,B,Cの部分はタイヤビードとホイールビード部間の隙間は無くなるが、〇印のDの部分には隙間が残される。
すなわち、傾斜したローラ5a,5bにタイヤ16を載置すると共に、タイヤ押え6にて押圧することで、タイヤビードとホイールビード部間に発生する隙間17をD部分に限定することが出来る。
【0024】
そこで、この隙間17にノズル4を位置し、該隙間17に圧縮エアーを噴射する。インフレータ3内の圧縮エアーは、自動充填機2を作動することでノズル4から勢いよく噴射し、タイヤ16に充填されるエアーが該隙間17からの漏れが抑制される。
ところで、タイヤ16のサイズは色々あり、タイヤビードの外径の違いはタイヤリフト7の昇降にて、ノズル4の高さに位置合わせすることが出来る。
【0025】
一方、タイヤの幅寸法の違いは、ノズル4のスライドにて位置合わせすることが出来る。
図8はインフレータ3及びノズル4の移動手段を示す具体例であり、ロッドレスシリンダー18から水平にアーム19が延び、該アーム19の先端に上記インフレータ3が取付けられている。そして、インフレータ3の下方にはノズル4が連結している。
そこで、ロッドレスシリンダー18が作動するならば、アーム19に取着しているインフレータ3及びノズル4は移動し、前記
図7に示すように隙間17付近に位置させることが出来る。このロッドレスシリンダー18は、ノズル4が適度な位置になるように手動で行われる。
【0026】
ところで、タイヤ16へのエアーの充填、及びノズル4からの圧縮エアーの噴射は自動充填機2を操作して行われる。そしてタイヤ16にエアーが充填されたならば、ノズル4を後退させ、タイヤリフト7を降下し、さらにタイヤ押え6を戻すことでタイヤ16をセフティケージ1から取り出すことが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1 セフティケージ
2 自動充填機
3 インフレータ
4 ノズル
5 ローラ
6 タイヤ押え
7 タイヤリフト
8 収容空間
9 底板
10 支持板
11 ロッドレスシリンダー
12 側板
13 シリンダー
14 ガイド
15 ホイール
16 タイヤ
17 隙間
18 ロッドレスシリンダー
19 アーム