(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868906
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】包装用容器及び包装用容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20210426BHJP
B65D 43/06 20060101ALI20210426BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B65D77/20 C
B65D43/06 200
B65D1/34
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-236499(P2018-236499)
(22)【出願日】2018年12月18日
(65)【公開番号】特開2020-97438(P2020-97438A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2020年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】込山 和馬
【審査官】
一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−173160(JP,A)
【文献】
特表2008−505027(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0084796(US,A1)
【文献】
米国特許第6170696(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 43/02
B65D 43/06
B65D 1/34
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡体からなる発泡容器本体と、前記発泡容器本体に嵌合する蓋体と、を備える包装用容器であって、
前記発泡容器本体は、周壁部から外側に延びる第一延在部と、前記第一延在部の外縁からさらに外側に延びる第二延在部と、前記第二延在部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、
前記第一延在部と前記第二延在部との境界に位置する第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さいか、又は、前記第二延在部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい包装用容器。
【請求項2】
前記第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さく、かつ、前記第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記発泡容器本体の密度が、0.03g/cm3以上0.31g/cm3以下である請求項1又は2に記載の包装用容器。
【請求項4】
熱可塑性樹脂発泡体からなる発泡容器本体と、前記発泡容器本体に嵌合する蓋体と、を備える包装用容器であって、
前記発泡容器本体は、周壁部から外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、
前記フランジ部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する境界部の厚みが、前記フランジ部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい包装用容器。
【請求項5】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、曲げ弾性率が、シート流れ方向で290Mpa以上780Mpa以下であり、かつ、シート幅方向で140Mpa以上800Mpa以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びる第一延在部と、前記第一延在部の外縁からさらに外側に延びる第二延在部と、前記第二延在部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記第一延在部と前記第二延在部との境界に位置する第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さいか、又は、前記第二延在部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、曲げ弾性率が、シート流れ方向で290Mpa以上780Mpa以下であり、かつ、シート幅方向で140Mpa以上800Mpa以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記フランジ部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する境界部の厚みが、前記フランジ部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、厚みが1mm以上3mm以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びる第一延在部と、前記第一延在部の外縁からさらに外側に延びる第二延在部と、前記第二延在部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記第一延在部と前記第二延在部との境界に位置する第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さいか、又は、前記第二延在部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、厚みが1mm以上3mm以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記フランジ部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する境界部の厚みが、前記フランジ部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、坪量が100g/m2以上400g/m2以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びる第一延在部と、前記第一延在部の外縁からさらに外側に延びる第二延在部と、前記第二延在部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記第一延在部と前記第二延在部との境界に位置する第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さいか、又は、前記第二延在部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂発泡シートを準備する準備工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって発泡容器本体を形成する本体形成工程と、
前記発泡容器本体に嵌合する蓋体を形成する蓋体形成工程と、を含み、
前記準備工程において、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、坪量が100g/m2以上400g/m2以下であるシートを準備し、
前記本体形成工程において、前記発泡容器本体として、周壁部から外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、前記フランジ部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する境界部の厚みが、前記フランジ部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい発泡容器本体を形成する、包装用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば弁当や惣菜等の食品を包装するために、包装用容器が用いられている。このような包装用容器は、多くの場合、熱可塑性樹脂シートの熱成形(シート成形)によって形成される。このようなシート成形の包装用容器の一例が、特開2002−173160号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に記載されているように、断熱性及び軽量性の観点からは、熱可塑性樹脂シートとして熱可塑性樹脂発泡シートを用いることが好ましい場合がある。この場合、包装用容器は、熱可塑性樹脂発泡体からなる発泡容器本体と、その発泡容器本体に嵌合する蓋体とを備えることになる。
【0003】
しかし、そのような包装用容器(以下、「包装用発泡容器」と言う場合がある。)は、一般に嵌合力に劣るため、食品等の被収容物を収容した状態での包装用発泡容器の搬送時や陳列時等に、発泡容器本体から蓋体が外れやすいという問題があった。一方、発泡容器本体のフランジ部の外方に形成される垂れ部の下端に、蓋体に形成された内向きの屈曲部を係合させることで、発泡容器本体との密着性を高めて蓋体を外れにくくすることもできるが、この場合には開閉操作に手間取りやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−173160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋体の開閉操作を容易に行うことができるとともに嵌合力にも優れる包装用発泡容器の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る包装用容器は、
熱可塑性樹脂発泡体からなる発泡容器本体と、前記発泡容器本体に嵌合する蓋体と、を備える包装用容器であって、
前記発泡容器本体は、周壁部から外側に延びる第一延在部と、前記第一延在部の外縁からさらに外側に延びる第二延在部と、前記第二延在部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、
前記第一延在部と前記第二延在部との境界に位置する第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さいか、又は、前記第二延在部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい。
【0007】
この構成によれば、発泡容器本体に設けられる本体逆テーパー部と蓋体に設けられる蓋体逆テーパー部とが係合することで、発泡容器本体と蓋体との嵌合力を高めることができる。また、それぞれその両側の部位よりも厚みが薄い第一境界部又は第二境界部が、閉蓋時及び開蓋時に、発泡容器本体の弾性変形の支点となる。第二境界部が支点となることで、本体逆テーパー部を内方側にスムーズに移動させ、閉蓋操作及び開蓋操作を円滑に行うことができる。或いは、第一境界部が支点となることで、第二延在部を介して本体逆テーパー部を内方側にスムーズに移動させ、閉蓋操作及び開蓋操作を円滑に行うことができる。いずれにしても、蓋体の開閉操作を容易に行うことができる。従って、蓋体の開閉操作を容易に行うことができるとともに嵌合力にも優れる包装用発泡容器を実現することができる。
【0008】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0009】
一態様として、
前記第一境界部の厚みが、前記第一延在部の厚み及び前記第二延在部の厚みよりも小さく、かつ、前記第二境界部の厚みが、前記第二延在部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、閉蓋時及び開蓋時に、第一境界部及び第二境界部の両方が支点となることで、第二延在部及び本体逆テーパー部の全体の可動範囲を広げつつ、本体逆テーパー部を内方側にスムーズに移動させることができる。よって、蓋体の開閉操作を容易に行うことができる。
【0011】
一態様として、
前記発泡容器本体の密度が、0.03g/cm
3以上0.31g/cm
3以下であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、発泡容器本体の軽量化を図ることができるとともに、断熱性及び保温性を確保することができる。また、これらの特性を発揮させながら、蓋体の開閉操作の容易化を図るとともに嵌合力を向上させることができる。
【0013】
一態様として、
前記発泡容器本体は、熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって形成されるものであり、
熱成形前における前記熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率が、シート流れ方向で290Mpa以上780Mpa以下であり、かつ、シート幅方向で140Mpa以上800Mpa以下であることが好ましい。
【0014】
一態様として、
前記発泡容器本体は、熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって形成されるものであり、
熱成形前における前記熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが、1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0015】
一態様として、
前記発泡容器本体は、熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって形成されるものであり、
熱成形前における前記熱可塑性樹脂発泡シートの坪量が、100g/m
2以上400g/m
2以下であることが好ましい。
【0016】
これらのような特性の熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって形成される発泡容器本体であれば、閉蓋操作時に弾性変形し、その後、閉蓋完了後に復帰変形して、本体逆テーパー部と蓋体逆テーパー部とがしっかりと係合する。よって、包装用発泡容器であっても、開蓋時の嵌合力を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るもう1つの包装用容器は、
熱可塑性樹脂発泡体からなる発泡容器本体と、前記発泡容器本体に嵌合する蓋体と、を備える包装用容器であって、
前記発泡容器本体は、周壁部から外側に延びるフランジ部と、前記フランジ部よりも周縁側に設けられて前記蓋体の蓋体逆テーパー部に係合する本体逆テーパー部と、を有し、
前記フランジ部と前記本体逆テーパー部との境界に位置する境界部の厚みが、前記フランジ部の厚み及び前記本体逆テーパー部の厚みよりも小さい。
【0018】
この構成によれば、発泡容器本体に設けられる本体逆テーパー部と蓋体に設けられる蓋体逆テーパー部とが係合することで、発泡容器本体と蓋体との嵌合力を高めることができる。また、その両側の部位であるフランジ部及び本体逆テーパー部よりも厚みが薄い境界部が、閉蓋時及び開蓋時に、発泡容器本体の弾性変形の支点となる。すなわち、境界部が支点となることで、本体逆テーパー部を内方側にスムーズに移動させ、閉蓋操作及び開蓋操作を円滑に行うことができる。よって、蓋体の開閉操作を容易に行うことができる。従って、蓋体の開閉操作を容易に行うことができるとともに嵌合力にも優れる包装用発泡容器を実現することができる。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】閉蓋時の発泡容器本体の変形の様子を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
包装用容器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、例えば丼や惣菜等の食品(被収容物の一例)を包装するための包装用容器1(食品包装用容器)を例として説明する。この包装用容器1は、合成樹脂シートのシート成形によって形成される。
【0022】
図1に示すように、包装用容器1は、例えば食品を収容する深皿状の器である。包装用容器1は、発泡容器本体2と、その発泡容器本体2に嵌合する蓋体4とを備えている。発泡容器本体2は、熱可塑性樹脂発泡体で構成されている。蓋体4は、熱可塑性樹脂非発泡体で構成されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、発泡容器本体2は、底面部21と、本体周壁部22と、第一延在部23と、第二延在部24と、本体逆テーパー部27と、本体延出縁部28とを有している。底面部21は、発泡容器本体2の底部を形成している。本体周壁部22は、底面部21の周縁から上方に延びている。本体周壁部22は、上方に向かうに従って外側に向かって広がるように拡開している。本実施形態では、本体周壁部22が「周壁部」に相当する。
【0024】
第一延在部23は、本体周壁部22から外側に延びている。本実施形態では、第一延在部23は、本体周壁部22よりも小さな傾きで、上方に向かうに従って外側に向かって広がるように拡開している。第二延在部24は、第一延在部23の外縁からさらに外側に延びている。本実施形態では、第二延在部24は、下方に向かうに従って外側に向かって広がるように拡開している。本体逆テーパー部27は、第二延在部24よりも周縁側に設けられている。本体逆テーパー部27は、下方に向かうに従って内側に向かって窄まるように形成されている。この本体逆テーパー部27は、蓋体4の蓋体逆テーパー部47に係合する。本体延出縁部28は、本体逆テーパー部27の下端部から、外側に延出するように形成されている。
【0025】
発泡容器本体2は、熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって形成される。熱可塑性樹脂発泡シートは、熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性樹脂発泡層を備えている。熱可塑性樹脂発泡層を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されない。例えばポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、及びアクリル樹脂等の一般的な熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。これらは、それぞれ、単独重合体、他の単量体との共重合体、他の樹脂との混合物、又はそれらの組み合わせであって良い。好ましくは、ポリスチレン系樹脂であり、この場合、共重合体を構成する他の単量体や混合物を構成する他の樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及び変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が例示される。
【0026】
また、熱可塑性樹脂発泡シートは、熱可塑性樹脂層の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性樹脂非発泡層を備えても良い。熱可塑性樹脂非発泡層を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されない。例えばポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、及びアクリル樹脂等の一般的な熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。これらは、それぞれ、単独重合体、他の単量体との共重合体、他の樹脂との混合物、又はそれらの組み合わせであって良い。好ましくは、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂である。なお、各層を積層するには、例えば共押出法、押出ラミネート法、及び熱ラミネート法等の各方法を採用することができる。
【0027】
熱成形前における熱可塑性樹脂発泡シートの厚みは、特に限定されないが、1mm以上3mm以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが1mmよりも薄ければ剛性や断熱性が不十分となる可能性があり、3mmより厚ければ成形性が不十分となる可能性がある。好ましい熱可塑性樹脂発泡シートの厚みは、例えば1.5mm以上2.5mm以下である。
【0028】
熱成形前における熱可塑性樹脂発泡シート(特に、熱可塑性樹脂発泡層)の坪量は、特に限定されないが、100g/m
2以上400g/m
2以下であることが好ましい。坪量が100g/m
2未満であればシート成形によって深皿状の発泡容器本体2を形成するのが困難となり、坪量が400g/m
2超となると押出発泡成形によって熱可塑性樹脂発泡シートを形成するのが困難となる。好ましい熱可塑性樹脂発泡シートの坪量は、例えば110g/m
2以上300g/m
2以下である。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの坪量は、熱可塑性樹脂発泡シートの流れ方向に直交する方向(シート幅方向)に等間隔で3点、10cm×10cmのシート片を切り出し、各シート片の質量を測定して、その平均質量として算出する。熱可塑性樹脂発泡シートの坪量は、原料樹脂の供給量又は溶融樹脂の押出量を調整することによって調整することができる。或いは、押出成形時の温度条件又は圧力条件を調整することによって調整することもできる。
【0029】
熱成形前における熱可塑性樹脂発泡シート(特に、熱可塑性樹脂発泡層)の曲げ弾性率は、特に限定されないが、140Mpa以上800Mpa以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率は、当該熱可塑性樹脂発泡シートの流れ方向(シート流れ方向)と、それに直交する方向(シート幅方向)とで異ならせても良い。この場合、シート流れ方向で290Mpa以上780Mpa以下であり、かつ、シート幅方向で140Mpa以上800Mpa以下であることが好ましい。好ましい熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率は、例えば、シート流れ方向で440Mpa以上630Mpa以下であり、シート幅方向で340Mpa以上600Mpa以下である。ここで、熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率は、本来的には炭素繊維強化プラスチックに適用されるべきJIS K7074に倣いそれを一部変更した、以下の方法に従って測定するものとする。
【0030】
まず、熱可塑性樹脂発泡シートから、シート流れ方向及びシート幅方向のそれぞれについて、長さ100mm×幅25mmの大きさの試験片を切り出す。支点間距離L=60mm、圧子の半径R1=10mm、支持台の半径R2=10mm、試験速度V=10mm/minに設定する。シート流れ方向及びシート幅方向のそれぞれの試験片について、曲げ荷重とたわみとの関係を測定によって取得する。得られた曲げ荷重−たわみ曲線の直線部の初期勾配から、曲げ弾性率を算出する。
【0031】
熱成形前における熱可塑性樹脂発泡シートの厚み、坪量、及び曲げ弾性率がそれぞれ上記の範囲内であると、当該熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって得られる発泡容器本体2において、蓋体4の開閉に伴う弾性変形後に、しっかりと形状復元しやすい。
【0032】
発泡容器本体2は、上述した熱可塑性樹脂発泡シートを用いて、シート成形(熱成形)によって形成することができる。熱成形法としては、例えばプラグ成形法、マッチド・モールド成形法、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグ・アンド・リッジ成形法、及びリッジ成形法等が例示される。
【0033】
本実施形態の熱可塑性樹脂発泡シートの熱成形によって得られる発泡容器本体2の密度は、特に限定されないが、0.03g/cm
3以上0.31g/cm
3以下であることが好ましい。発泡容器本体2の密度が0.03g/cm
3未満であれば強度や高温での剛性が不十分な可能性があり、0.31g/cm
3超となると断熱性が不十分な可能性がある。好ましい発泡容器本体2の密度は、例えば0.06g/cm
3以上0.22g/cm
3以下である。なお、発泡容器本体2の密度は、底面部21から3cm×3cmの試験片を切り出し、電子比重計(ミラージュ貿易社製、型式:ED−120T)を用いて水中置換法により測定する。
【0034】
蓋体4は、発泡容器本体2に嵌合して、発泡容器本体2の上部開口を覆う。
図1及び
図2に示すように、蓋体4は、天面部41と、蓋体周壁部42と、フランジ部43と、傾斜面部44と、垂下面部45と、内向き突起46(蓋体逆テーパー部47)と、蓋体延出縁部48とを有している。天面部41は、蓋体4の天井部を形成している。蓋体周壁部42は、天面部41の周縁から下方に延びている。蓋体周壁部42は、下方に向かうに従って外側に向かって広がるように拡開している。
【0035】
フランジ部43は、蓋体周壁部42から外側に延びている。本実施形態では、フランジ部43は、水平面に沿うように延在している。傾斜面部44は、フランジ部43の外縁からさらに外側に延びている。本実施形態では、傾斜面部44は、下方に向かうに従って外側に向かって広がるように拡開している。垂下面部45は、傾斜面部44の外縁から下方に垂れ下がるように形成されている。この垂下面部45に、内側に向かって突出する内向き突起46が形成されており、この内向き突起46における下方に向かうに従って内側に向かって窄まる部分が、蓋体逆テーパー部47となっている。蓋体逆テーパー部47は、発泡容器本体2の本体逆テーパー部27に係合する。蓋体延出縁部48は、内向き突起46の下端部から、外側に延出するように形成されている。
【0036】
図4の下段に示すように、発泡容器本体2と蓋体4とが嵌合したとき、発泡容器本体2の第一延在部23と第二延在部24との境界部分(後述する第一境界部31)に、蓋体4のフランジ部43が載置される。また、発泡容器本体2の第二延在部24に、蓋体4の傾斜面部44が載置される。また、発泡容器本体2の第二延在部24と本体逆テーパー部27との境界部分(後述する第二境界部32)に、蓋体4の垂下面部45が外側から当接する。また、発泡容器本体2の本体逆テーパー部27に、蓋体4の蓋体逆テーパー部47が外側から係合する。この互いに係合する本体逆テーパー部27と蓋体逆テーパー部47とにより、“逆テーパー係合部”が形成される。また、発泡容器本体2の本体延出縁部28に、蓋体4の蓋体延出縁部48が載置される。このとき、蓋体延出縁部48の外縁は、本体延出縁部28の外縁よりも内側に位置される。
【0037】
図3に示すように、本実施形態の包装用容器1において、発泡容器本体2の第一延在部23と第二延在部24との境界に位置する第一境界部31の厚みT1は、第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4よりも小さい。本実施形態では、発泡容器本体2における第一境界部31の内面側には、凹状に窪む第一括れ部33が形成されている。そして、この第一括れ部33の存在により、第一境界部31の厚みT1が第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4よりも小さくなっている。第一境界部31の厚みT1は、例えば、第一延在部23の厚みT3の0.5倍〜0.9倍程度であって良く、また、第二延在部24の厚みT4の0.3倍〜0.9倍程度であって良い。
【0038】
さらに本実施形態では、第二延在部24と本体逆テーパー部27との境界に位置する第二境界部32の厚みT2は、第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さい。本実施形態では、発泡容器本体2における第二境界部32の内面側には、凹状に窪む第二括れ部34が形成されている。そして、この第二括れ部34の存在により、第二境界部32の厚みT2が第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さくなっている。第二境界部32の厚みT2は、例えば、第二延在部24の厚みT4の0.3倍〜0.9倍程度であって良く、また、本体逆テーパー部27の厚みT5の0.5倍〜0.9倍程度であって良い。
【0039】
また、本実施形態では、第一境界部31の厚みT1と第二境界部32の厚みT2とが同程度である。また、第一延在部23の厚みT3と本体逆テーパー部27の厚みT5も同程度であり、これらに比べて第二延在部24の厚みT4が大きい。すなわち、本実施形態では、第一延在部23の厚みT3及び本体逆テーパー部27の厚みT5は、第二延在部24の厚みT4よりも小さく、その第一延在部23の厚みT3及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも、第一境界部31の厚みT1及び第二境界部32の厚みT2がさらに小さくなっている。
【0040】
上述したように、本体逆テーパー部27及び蓋体逆テーパー部47は、いずれも、下方に向かうに従って内側に向かって窄まるように形成されている。このため、本体逆テーパー部27と蓋体逆テーパー部47とが係合してなる“逆テーパー係合部”も、下方に向かうに従って内側に向かうように形成されている。鉛直線に対する逆テーパー係合部の傾きθは、例えば15°〜75°であると好適である。また、逆テーパー係合部による係合深さD(内向き突起46の外面側に形成される窪みの深さ)は、例えば0.5mm〜40mmであると好適である。
【0041】
図4の上段に示すように、閉蓋時には、その両側の第一延在部23及び第二延在部24に対して相対的に厚みが小さい第一境界部31が、発泡容器本体2の弾性変形の支点となって、第二延在部24及び本体逆テーパー部27の全体を内方側にスムーズに移動させることができる。また、その両側の第二延在部24及び本体逆テーパー部27に対して相対的に厚みが小さい第二境界部32も、発泡容器本体2の弾性変形のもう1つの支点となって、本体逆テーパー部27を内方側にスムーズに移動させることができる。このように、第一境界部31及び第二境界部32の両方が支点となって、第二延在部24及び本体逆テーパー部27の全体の可動範囲を広げつつ、本体逆テーパー部27を内方側にスムーズに移動させることができる。よって、閉蓋操作を容易に行うことができる。
【0042】
閉蓋後は、
図4の下段に示すように、発泡容器本体2が形状復元して、本体逆テーパー部27と蓋体逆テーパー部47とがしっかりと係合する。よって、本体逆テーパー部27と蓋体逆テーパー部47とが係合してなる逆テーパー係合部の嵌合力を高めることができる。よって、例えば食品等の被収容物を収容した状態での包装用容器1の搬送時や陳列時等に、発泡容器本体2から蓋体4が外れにくい。
【0043】
図示は省略するが、開蓋時にも、第一境界部31及び第二境界部32の両方が支点となって、第二延在部24及び本体逆テーパー部27の全体の可動範囲を広げつつ、本体逆テーパー部27を内方側にスムーズに移動させることができる。よって、開蓋操作を容易に行うことができる。
【0044】
こうして、本実施形態の包装用容器1によれば、蓋体4の開閉操作を容易に行うことができるとともに、閉蓋状態での発泡容器本体2と蓋体4との嵌合力を高めることができる。よって、食品等の被収容物を包装用容器1に収容するための作業を容易化することができるとともに、当該被収容物を収容した包装用容器1において発泡容器本体2から蓋体4を外れにくくすることができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第一境界部31の厚みT1が第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4よりも小さく、かつ、第二境界部32の厚みT2が第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第一境界部31の厚みT1が第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4よりも小さいだけで、第二境界部32の厚みT2が、第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5の少なくとも一方以上であっても良い。或いは、例えば第二境界部32の厚みT2が第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さいだけで、第一境界部31の厚みT1が、第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4の少なくとも一方以上であっても良い。
【0046】
(2)上記の実施形態では、発泡容器本体2が、上方に向かうに従って外側に向かって広がる第一延在部23と、下方に向かうに従って外側に向かって広がる第二延在部24とを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、発泡容器本体2が水平面に沿うように延在する“本体フランジ部”を有しても良い。そのような本体フランジ部は、例えば
図5に示すように第一延在部23により構成されても良いし、
図6に示すように第二延在部24により構成されても良い。後者の場合、第一延在部23は、本体周壁部22から明確に区別される部位として構成されても良いし、本体周壁部22における上側領域によって構成されても良い。
【0047】
(3)上記の実施形態では、発泡容器本体2が第一延在部23、第二延在部24、及び本体逆テーパー部27を具備することを前提として、第一境界部31の厚みT1が第一延在部23の厚みT3及び第二延在部24の厚みT4よりも小さいか、又は、第二境界部32の厚みT2が第二延在部24の厚みT4及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図7に示すように、発泡容器本体2が第一延在部23及び第二延在部24に対応する代替構成としてフランジ部(本体フランジ部)25を備えても良い。フランジ部25は、水平面に沿って延在するように設けられても良いし、水平面に対して傾斜して延在するように設けられても良い。そして、かかる構成を前提として、フランジ部25と本体逆テーパー部27との境界に位置する境界部36の厚みT6が、フランジ部25の厚みT7及び本体逆テーパー部27の厚みT5よりも小さく構成されると良い。
【0048】
(4)上記の実施形態では、発泡容器本体2を構成する熱可塑性樹脂発泡シートとして、熱成形前における厚み、坪量、及び曲げ弾性率がそれぞれ特定の数値範囲内であるものを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、熱成形前における熱可塑性樹脂発泡シートの物性(上述した各特性値)は任意であって良い。
【0049】
(5)本体逆テーパー部27と蓋体逆テーパー部47とが係合してなる逆テーパー係合部は、全周に亘って設けられても良いし、断続的(間欠的)に設けられても良い。後者の場合、本体逆テーパー部27が全周に亘って設けられるとともに蓋体逆テーパー部47が断続的(間欠的)に設けられても良いし、本体逆テーパー部27及び蓋体逆テーパー部47の両方が互いに対応する位置に断続的(間欠的)に設けられても良い。
【0050】
(6)包装用容器1の全体形状は、任意であって良い。包装用容器1の全体形状としては、例えば矩形状(正方形状,長方形状,台形状)、多角形状(五角形状,六角形状,八角形状,・・・)、真円状、及び楕円状等、各種形状を採用することができる。
【0051】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 包装用容器
2 発泡容器本体
4 蓋体
22 本体周壁部(周壁部)
23 第一延在部
24 第二延在部
25 フランジ部
27 本体逆テーパー部
31 第一境界部
32 第二境界部
33 境界部
47 蓋体逆テーパー部
T1 第一境界部31の厚み
T2 第二境界部32の厚み
T3 第一延在部23の厚み
T4 第二延在部24の厚み
T5 本体逆テーパー部27の厚み