(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の光学的放射源において、前記複数の針の各々が、平均高さと平均幅を有し、前記複数の針のアスペクト比が前記平均幅で割った前記平均高さに等しいことを特徴とする光学的放射源。
請求項1に記載の光学的放射源において、前記不規則単結晶半導体構造の曲線因子が、前記複数の針のヘッドから前記複数の針の基部にかけて徐々に大きくなることを特徴とする光学的放射源。
請求項20に記載の光学的放射源において、前記光学部品が、前記不規則単結晶半導体構造からの面内放射を反射して前記不規則単結晶半導体構造に戻して吸収し、それを加熱するように構成された筒状ミラーを具えることを特徴とする光学的放射源。
請求項25に記載の光学的放射源において、前記複数の直列に接続したブラッグミラーの少なくとも一つが、前記半導体基板内の光学的放射源と一体化したアクチュエータに接続されており、当該アクチュエータが前記少なくとも一つのブラッグミラーを移動させて、前記熱赤外放射の中心波長を調整するように構成されていることを特徴とする光学的放射源。
請求項25に記載の光学的放射源において、前記複数の直列に接続したブラッグミラーの各々が、前記各直列に接続したブラッグミラーのスペクトルの各中心波長をシフトさせるように選択された各々の寸法を有する複数の層を具えることを特徴とする光学的放射源。
【背景技術】
【0002】
本発明の態様は、一般的に、光学的放射源に関し、特に、シリコンベースの熱エミッタに関する。
【0003】
関連技術の説明
従来の熱光源は、発光材料を加熱することによって光子を生成する熱エミッタを用いている。このような熱エミッタは、通常、広域ラジエータであるその出力スペクトル放射輝度が、波長と、加熱した材料の絶対温度と、この元素の放射率の関数であり、これらはすべて、プランクの法則に従っている。連続する近赤外線から中赤外線(NIR)放射の理想的な源は、高温の黒体である。温度Tにおける黒体源からのスペクトル輝度Uλ(例えば、波長λにおけるステラジアン当たりの波長当たりの単位面積当たりの電力潮流)は、プランクの式(W/mm
2.μm.sr)で与えられる:
ここで、真空中で、C
1=11.9(W.μm
4/mm
2.sr)であり、C
2=14390μm.Kであり、Tは放射体の絶対温度、及びλは波長である。したがって、プランクの式によれば、どのような特定の波長範囲に対しても、放射輝度は温度に応じて高くなる。
【0004】
黒体は完全なエミッタであり、放射線吸収体である。また、発光方向に垂直な単位面積につきすべての方向において均一に放射する。しかしながら、実際の理想的でない源は、黒体の放射特性より放射特性が劣る。したがって、源の放射率(0≦ε≦1)は、同じ温度で黒体から放射された放射線に対する、表面で放射された放射線の比で表すことができ、その放射特性は温度、波長、及び放射する放射線の方向によって変化することがある。
【0005】
放射線束がある表面に入射するとき、入射放射線束は通常、照射と呼ばれ、その表面で照射の一部は吸収され、一部は反射され、残りが透過する。吸収率αは、表面で吸収された照射の一部である。キルヒホッフの法則は、温度Tにおける表面の放射率は、同じ温度における黒体からの放射の層吸収率に等しいとしている。
【0006】
現在入手可能なほとんどの熱放射製品は、低NIR又はNIRスペクトルレンジで使用する特定のガラスバルブを伴う黒体に近いフィラメント白熱光源をベースにしている。この動作温度は、このガラスと、バルブ内の不活性ガスにより2000−3000Kにも達する。これらのフィラメントのスペクトル放射は、ガラスがこのリミットを超える波長を吸収するため、最大4μmになる。しかしながら、このようなガラスバルブベースのフィラメント白熱光源のパッケージのジオメトリは、いくつかのアプリケーションで問題となることがある。
【0007】
ガラスバルブのないフィラメント白熱光源も、いくつかのアプリケーションで入手可能である。オープン環境で動作する際、この温度は通常600−900Kに制限されており、所定のフィラメント表面積に対して低い発光パワーとなる。温度を上げるためには、フィラメントが所望の波長レンジで透明窓で密封することができる。例えば、フッ化カルシウムの窓を最大8μmの波長に使用することができる。しかしながら、このような白熱光源は、光通信アプリケーションにおけるデバイスの最小化やバッチ製造に適合しない。
【0008】
マイクロマシン技術(MEMS)シリコンテクノロジーは、電子、機械、及び光学システムを一つのチップに集積する高価な基板である。単結晶シリコン材料は、純度が高く、良好な表面品質と、赤外線レンジにおける広いスペクトル幅をこえる透明性を含む、非常に確立された光学特性を有している。さらに、シリコンは、熱的、機械的、及び熱弾性特性に優れている。さらに、シリコンデバイスの設計及び製造に優れたフレキシビリティがあり、非常に確立されたマイクロ加工技術をうまく利用している。
【0009】
したがって、平面シリコン構造で形成した熱源が、中赤外線用に開発された。これらの源は、通常、シリコン基板に作成された薄膜構造からなる。抵抗加熱素子をシリコン基板上に一体化して、放射領域を加熱するようにしてもよい。これらのMEMS熱源は、基板が非常に薄く作られている結果、熱質量が低いため、電力消費が小さい。
【0010】
MEMS源は、さらに、表面粗さを増やすことによって大きな波長レンジにわたって良好な放射熱を提供するのに最適化することができる。例えば、白金黒又は銀黒をシリコンエミッタの表面に蒸着させて、表面粗さを増やすことができる。別の例として、シリコンのフォトニック結晶の深いキャビティをシリコン基板上に作成して、表面粗さを増やすことができる。このような周期的構造、光リソグラフィを行い、次いで電気化学エッチングと酸化によって、多孔性シリコンの安定したキャビティを形成することで得ることができる。しかしながら、放射率のスペクトル応答は、孔のサイズによって有意に変わり、キャビティの周期性が、放射率に鋭いディップラインを作る。さらに、この放射はすべてのアプリケーションに使用できない広い波長レンジをカバーしており、そのため、欠陥を呈している。したがって、必要なことは、表面積と広い放射帯域を超えて放射率を最小にした、最小化した調整可能な熱エミッタである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例によれば、光学的放射源が、不規則半導体構造を用いて形成されており、この不規則半導体構造を加熱することによって熱赤外線放射線を発生するように構成されている。この不規則半導体構造は、例えば、通常ブラックシリコンと呼ばれている構造化シリコンを具える。不規則半導体構造の使用により、表面積と放射率が広域発光帯を超えて最小となる。不規則半導体領域の形状はリソグラフィ処理を用いて制御することができるが、細かいマイクロ構造は、マスクレスシリコンエッチング処理を用いて制御することができる。例えば、不規則半導体微細構造(例えば、ブラックシリコンの針)は、基板に対して面外を向き、所定の角度のスペクトルで主に基板に垂直に伝達する光を生成するか、あるいは、面内を向いて、所定の角度のスペクトルで主に基板に対して平行に伝達する光を生成する。さらに、この光学的放射源はさらに、源出力光を合焦させる、あるいは集める様々な光学部品を具えていてもよい。
【0014】
不規則半導体構造のスペクトル放射はさらに、一またはそれ以上の光学フィルタとフィードバック機構によって、対象外の帯域の放射を用いて構造を加熱するように設計することができる。例えば、光学フィルタは、面内又は面外の方向性を有する多層ブラッグ反射器を用いて形成することができる。不規則半導体構造の熱質量は、不規則半導体構造をその上に形成する層の厚さを薄くすることでさらに小さくすることができる。不規則半導体領域は、さらに、埋め込み酸化(BOX)層、ガラスウエハ、窒化物層といった絶縁膜の上で熱的に絶縁してもよい。このような熱絶縁によって、最小のエネルギィで不規則半導体材料を加熱して、結果としての光源の効率を改善することができる。
【0015】
図1は、本発明の実施例による、不規則半導体材料から生じる光学的放射源100の例示的な構成要素を示すブロック図である。光学的放射源100は、加熱素子110と、不規則半導体構造120を具える。いくつかの例では、不規則半導体構造120がブラックシリコンを具える。光学的放射源100の加熱素子110は、電流Iと電圧Vの形で電気エネルギィ入力を受け取る。したがって、入力電力Pは、IとVの積に等しい。所定の時間にわたる入力電力の積分は、この期間に光学的放射源100に供給された総電気エネルギィQ
elecである。
【0016】
加熱素子110は、入力電気エネルギィを熱エネルギィQ
thermに変換する。これは、不規則半導体構造がこの熱エネルギィを放射エネルギィQ
radに変換して、熱赤外線(IR)放射(光)を出射するための不規則半導体構造120の加熱に利用される。例えば、この温度は、セ氏1400度(C)より低くてもよいが、好ましくは450度から1200度の間である。より高い温度では、光学的放射源100を真空又は不活性ガス環境の下でパッケージ化して、半導体材料の酸化を防止することができる。エネルギィロスを最小にして不規則半導体構造120を効率よく加熱するには、加熱素子110が不規則半導体構造120の近傍にあり、良好に熱接触するようにする。いくつかの例では、加熱素子は、プラチナなどの金属を具える。
【0017】
不規則半導体構造120の微細構造の寸法(高さ、幅、粗さ)は、不規則半導体構造120の吸収性、したがって放射性が、通常の(規則的な)シリコン構造より高くなるように選択することができる。このように、不規則半導体構造120の放射特性は、通常の関節バンドギャップシリコンと比較して改善され、電気エネルギィの放射エネルギィへの変換という意味で、光学的放射源100の効率を改善することができる。いくつかの例では、不規則半導体構造は、操作条件に応じて熱赤外線(IR)放射エネルギィを広域スペクトルを超えて放射する。
【0018】
光学的放射源100はさらに、不規則半導体構造120に接続されたアクチュエータ130を具える。いくつかの例では、アクチュエータ130が、マイクロ電気マシン技術システム(MEMS)アクチュエータを具えており、これは、不規則半導体構造120を変位させて(例えば、移動)出射したIR放射(光)の方向に向ける及び/又は光の波長を制御する。例示的な実施例では、MEMSアクチュエータが、コム駆動アクチュエータ、平行板アクチュエータ、又はその他のタイプのアクチュエータ、といった静電アクチュエータである。
【0019】
図2は、本発明の実施例による、半導体(シリコン)基板210をエッチングして作成したブラックシリコン構造200の例示的な構成を示す図である。いくつかの例では、
図1に示す不規則半導体構造120は、
図2に示すブラックシリコン構造200を具える。ブラックシリコン構造200は、針状の表面構造であり、半導体基板210の表面に、単結晶シリコンでできた複数の針220を具える。いくつかの例では、この針の径は、1マイクロメートルより小さく、針の高さは10マイクロメートルより高く、ブラックシリコン領域にわたってこれらのパラメータがランダムに変化している。この針は、光リソグラフィマスクを使用することなくエッチングすることによって、スパイク、コラム、コーン、ピラミッドなど、様々な形状に形成されている。
【0020】
したがって、
図2に示すように、ブラックシリコン構造200は高さ及び間隔がランダムな不規則半導体構造である。ブラックシリコン構造200のアスペクト比は、式(2)で規定される。
ここで、Hは平均高さ、Wは平均幅であり、両方ともエッチング時間、バイアス電圧、及び温度などのパラメータを処理することによって制御できる。いくつかの例では、エミッタ機能に必要なアスペクト比がAR≧5である。
【0021】
ブラックシリコン構造200の曲線因子f
1、f
2・・・f
Nは、さらに、構造200の所定の断面についてのシリコンと空気の比として定義することができる。
図2に示すように、この構造は、曲線因子が徐々に変化しており、深さと共に曲線因子が増える。例えば、ブラックシリコン構造200の曲線因子は、針の頭部から基部にかけて徐々に大きくなっている。針形状の表面構造はさらに、フレネル反射を低減する有効屈折率の連続的な変化を提供している。密度−等級深さ(density-grade depth)が増えると、シリコン(Si)の真空波長又は半波長の約1/8の特性密度深さ(grade depth)を伴って、反射率が急激に増える。
【0022】
通常、ブラックシリコン構造200は、シリコン基板上でエッチング工程がシリコン基板に対して面外になるようにして製造される。ブラックシリコン構造200は、多くの様々なエッチング技術のいずれかを使用して製造することができる。この様々な技術は、ウエットエッチング技術と、ドライエッチング技術に分類することができる。ウエットエッチング技術には、金属アシスト化学エッチングや、フレイファーシングチェンケンブリッジ(FFCケンブリッジ)工程を含む従来のエッチング法に加えて、例えば、HFエッチングや、ステインエッチングがある。ドライエッチング技術には、例えば、反応性イオンエッチングや、レーザー照射エッチングがある。
【0023】
シリコンの電気化学HFエッチングでは、HFと、H
2Oと、エッチング反応中に生成される酸化シリコンを除去するエタノールとを含む溶液に漬けたシリコンウエハを電気化学セルに接続して、酸化反応を起こし、シリコンの表面張力を低減する。低電流密度領域では、酸化工程によってエッチング反応が制限され、多孔性シリコンが形成される。ここで、孔のサイズは、電流密度が上がるほど大きくなり、深さは、エッチング時間が長くなるほど深くなる。電気化学HFエッチングは、低コスト工程のため好ましいが、広い表面積にわたって均一な電流密度を維持することが難しい。
【0024】
ステインエッチングでは、HFとHNO
3を用いてシリコンの化学エッチングを行い、多孔性シリコンを形成する。エッチング動作は、連続的な酸化−分解工程に基づいている。酸の相対濃度を制御することによって、異なるシリコン表面形態を形成できる。ステインエッチングは、低HNO
3領域で有効であり、濃度とエッチング時間を制御することにより多孔層の有効屈折率を調整できる。
【0025】
金属アシスト化学エッチングでは、HFの存在下でシリコンをエッチングして、酸化剤を金属メタルを用いて触媒反応させて、様々な形態のナノ構造表面を形成する。所望の表面構造ができると、残った金属ナノ粒子は取り除かれる。多孔率あるいは有効屈折率のスムーズな移行は、金属ナノ粒子の濃度を制御することによって、あるいは金属アシスト化学エッチングによって形成されたナノ構造の反応イオンエッチングによる修正を用いて、行うことができる。
【0026】
多孔性ブラックシリコンは、FFCケンブリッジ工程で製造することもできる。ここでは、SiO
2が電気化学的に低減して、850℃といった高温でシリコンを多孔性にする。FFCケンブリッジ工程は、安価で簡単であるが、高温の工程によって、シリコンウエハが金属汚染される傾向にある。
【0027】
低温での反応イオンエッチング(RIE)もシリコングラスブラックシリコン表面の形成に使用することができる。SF
6とO
2のガス成分が、シリコンエッチングを行い、冷却したシリコン基板に絶縁層を形成するF
*とO
*ラジカルを生成する。ここで、絶縁層は、イオン照射によって部分的に除去される。このエッチング/絶縁機構により、アスペクト比が非常に高いランダムシリコンマイクロ構造が形成される。ガスフローレート、基板のバイアス及び温度を含むRIE工程のパラメータが、形成したブラックシリコンの形態を制御する。高密度プラズマシステムでは、エッチングと絶縁の比率が高くなって、高アスペクト比のブラックシリコンを形成することができる。ほかのガスを使用して、同じように機能させることもできる。
【0028】
ブラックシリコン構造200は、ガス環境内で非常に短く、強いレーザーパルスをシリコン表面に当てることで製造することもできる。例えば、空気中でシリコン表面を空気と反応させて、表面をいくらかエッチングして、円錐状スパイクのパターンを残す。x−y移行ステージを用いて、シリコンウエハ表面を合焦レーザービームでスキャンすることができる。ブラックシリコンは、六フッ化硫黄及びその他のドーパントを含むガスの存在下で、フェムト秒のレーザーパルスをシリコンに照射することで、製造することもできる。次いで、シリコン表面に。マイクロメータサイズの自己組織化微細構造ができる。同様の表面改質を真空で行ってもよいが、このシリコンコーンは鋭い先端に欠けることになる。
【0029】
ブラックシリコン構造200は、重いカルコゲン(例えば、S、Se又はTe)を満たした環境内で半導体基板210にフェムト秒レーザーパルスを当てて、シリコンの薄い層を非平衡レベルでドーピングして半導体基板表面に製造することもできる。この光学ハイパードーピング工程は、バンドギャップにレベルを導入して、ブラックシリコン構造200の放射率をより長い波長に改善する。
【0030】
図3A−3Cは、本発明の実施例による、光学的放射源100の構成要素の例示的構成を示す図である。
図3A−3Cでは、光学的放射源100が、半導体基板310上に形成した不規則半導体構造120(例えば、
図2に示すようなブラックシリコン構造200)を具える。これは、例えば、
図2に示す半導体基板210に対応する。
図3A−3Cに示す例では、半導体基板310がシリコン−オン−インシュレータ(SOI)ウエハであり、これは、デバイス層320と、ハンドル層330と、デバイス層320とハンドル層330の間に配置した絶縁層340を具える。いくつかの例では、絶縁層340は、埋め込み酸化物(BOX)層、ガラス基板/ウエハ、あるいは窒化物層である。不規則半導体構造120は、デバイス層320又はハンドル層330をエッチングすることによって形成することができ、前者が
図3A−3Cに記載されている。
【0031】
光学的放射源100は、さらに、SOIウエハ310上に形成され、電流注入用の電気パッドに接続された加熱部品350と360でできた加熱素子110を具えている。したがって、
図3A−3Cに示すように、加熱素子110と不規則半導体構造120は、同じチップ(半導体基板)上に集積することができる。
図3Aに示す例では、加熱素子部品350と360が、不規則半導体構造120の上に配置されている。例えば、加熱素子部品350と360は、不規則半導体領域の半導体基板310のエッチングしていない表面370上に配置することができる。
図3Bに示す例では、加熱素子部品350と360が、半導体基板310のエッチングしていない表面370上の不規則半導体構造120の両側部に配置されている。
図3A及び3Bの両方において、絶縁材料375が、加熱素子部品350と360の下のエッチングしていない表面370上に配置されている。
【0032】
図3Cに示す例では、加熱素子部品350と360が、絶縁層340の露出面345上で不規則半導体構造120の下に配置されている。例えば、不規則半導体構造120は、SOIウエハ310のデバイス層320にエッチングすることができ、ハンドル層330は、さらに、不規則半導体構造120に縦方向に整列した絶縁層340の表面の一部を露出させるようにエッチングすることができる。加熱素子部品350と360は、絶縁層340の露出面345上に装着できる。いくつかの例では、露出表面345は、不規則半導体構造120と同じ幅か、あるいはこれより幅が広い。
【0033】
不規則半導体構造が熱エネルギィを吸収し蓄積する能力として規定される不規則半導体構造120の熱質量は、不規則半導体構造120を囲む半導体材料(例えば、シリコン)をエッチングすることによって最適化できる。例えば、デバイス層320は、不規則半導体構造120の両側部にエッチングされており、ハンドル層330は、不規則半導体構造120の下に縦方向にエッチングされて、不規則半導体構造120が絶縁層340のメンブレン380上に位置するようにしている。いくつかの例では、
図3Cに示すように、その上に加熱素子部品350と360が形成されている絶縁層340の露出面345は、絶縁層340のメンブレン380に対応する。メンブレン380はしたがって、熱絶縁体として作用し、不規則半導体構造120を熱的に絶縁する。上述した通り、絶縁層340、及び、したがってメンブレン380は、BOX層、ガラス基板/ウエハあるいは窒化層を具えている。
【0034】
さらに、デバイス層320とハンドル層330との間の絶縁層340をさらにエッチングして、不規則半導体構造120を開放することができる。さらに、開放した不規則半導体構造120は、不規則半導体構造120をMEMSアクチュエータに取り付けることによって可動となる。さらに、不規則半導体構造120が存在する面は平面であっても曲面であってもよく、放射光の位相面を制御する。
【0035】
図3A−3Cに示す各例では、射出した赤外線放射(光)390が、半導体基板310に対する面外方向あたりに角スペクトルを有する。その他の例では、
図4A−4Cに示すように、射出した赤外線放射390は、半導体基板310に対して面内方向あたりに角スペクトルを有する。
図4A−4Cに示す例では、不規則半導体構造120を、例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)ボッシュ工程を用いてデバイス層320をエッチングすることによって、デバイス層320に高アスペクト比のトレンチを形成し、ついで、光学的放射源100の光学路内にあるデバイス層320の周辺半導体材料を除去又はエッチングして、製造することができる。
【0036】
加えて、加熱素子110は、不規則半導体構造120に一体化することができる。例えば、
図4Bに示すように、加熱素子110は不規則半導体構造120の後側部に配置できる。したがって、不規則半導体構造120は、複数の針が形成された第1側部と、加熱素子110が形成された第1側部の反対側の第2側部を有しており、これらの第1及び第2の側部は、半導体基板310の面に垂直である。加熱素子110は、さらに、不規則半導体構造120の上面(例えば、デバイス層320の上面)にわたって延在している。いくつかの例では、加熱素子110は、不規則半導体構造120に接着又は取り付けられている。別の例では、加熱素子110は、リソグラフィと蒸着工程によって製造することができる。
【0037】
いくつかの例では、
図4Cに示すように、不規則半導体構造120がエミッタアレイ410を具えており、各アレイが不規則半導体構造領域(例えば、ブラックシリコン領域)を具えている。各エミッタ410は、例えば、DRIEボッシュ工程を用いて製造し、不規則半導体構造の壁に複数のトレンチを形成し、次いで光学路内の不規則半導体構造120を取り囲む半導体材料を除去(エッチング)して、各エミッタ410を通常の半導体材料(例えば、シリコン)420のコラムで分離する。いくつかの例では、単一の加熱素子110を用いて全エミッタ410を加熱することができる。いくつかの例では、一またはそれ以上のエミッタ410を、個別/それぞれの加熱素子110で個別に加熱することができる。
【0038】
図には示していないが、不規則半導体構造120の熱質量は、不規則半導体構造120の下にあるハンドル層330(
図3A−3Cに示す)をエッチングすることによって最適化することができる。さらに、デバイス層320とハンドル層330の間の犠牲層(絶縁体)340をさらにエッチングして、不規則半導体構造120を放出できる。さらに、放出した不規則半導体構造120は、不規則半導体構造120をMEMSアクチュエータに取り付けることによって、可動となる。さらに、不規則半導体構造120が存在する面は、平面であっても曲面であってもよく、放出した光の位相面を制御することができる。
【0039】
図5A−5Eは、本発明の実施例による不規則半導体構造120と加熱素子110の例示的形状を示す図である。この不規則半導体領域の形状は、リソグラフィ技術とそれに続くエッチングによって規定することができる。例えば、
図5A−5Cに示すように、矩形、円形、環状といった様々な形状とすることができる。いくつかの例では、この形状は、光学的放射源を使用するアプリケーション用に最適化することができる。
【0040】
さらに、
図5D及び5Eに示すように、加熱素子110の形状は、不規則半導体構造120の形状に基づいて選択することができる。いくつかの例では、加熱素子110は、リソグラフィ技術と、続いて薄膜蒸着を行うことによって規定することができる。不規則半導体構造120を十分な加熱は、ヒータのジオメトリを好適化し、不規則半導体構造120及び/又はデバイス全体を熱的に分離することによって行うことができる。
【0041】
図6A−6Fは、本発明による光学的放射源100の例示的構成を示す図であり、熱赤外線放射を方向付ける様々な光学部品を具えている。いくつかの例では、MEMS技術を用いて、光学的放射源100の構成要素を一体的に集積することができる。このように、様々な集積光学部品と不規則半導体構造との整列は、リソグラフィ方式で実装できる。
【0042】
例えば、
図6Aに示すように、不規則半導体構造120は、中空導波管610に封入して、放射した光390の面内方向への伝達を容易にしている。別の例では、
図6Bに示すように、光学的放射源100が、不規則半導体構造120に光学的に接続された、傾いたあるいは曲面のミラー620を具えており、放射光390を受けて、この放射光390を特定の方向に向けるようにしている。
図6Bに示す例では、ミラー620が放射光を面内方向に向けている。ここで
図6C及び6Dを参照すると、熱IR放射の方向は、不規則半導体構造120を囲むメタリックミラー660を用いて制御して、面内光線を反射して、不規則半導体構造120の方へ戻し、面外光線が光学的放射源100から出てゆくようにしてもよい。
図6Cに示す例では、ミラー660がその反射面が半導体基板310の面に垂直になるようにデバイス層320内に作られている。
【0043】
いくつかの例では、出射した放射を最良の形で使用し、光源とシステムのカップリング効率を上げるために、放射光の視準と合焦が必要である。例えば、FTIR(フーリエ変換赤外線)分光計など干渉分光法ベースのアプリケーションでは、視準を用いて解析限界分解能を改善しているが、合焦は信号対ノイズ比を上げるために用いられる。視準と合焦は、構成が異なる曲面鏡とレンズといった、異なる部品で達成することができる。
図6Eに示す例では、視準と合焦をパラボラ鏡630を用いて行っている。不規則半導体構造120は、パラボラ鏡630の合焦面に配置されて、鏡630の軸に平行な出射光線を反射する。いくつかの例では、パラボラ鏡630は、同じチップ内に一体化された面内2D/3D曲面鏡、あるいは外付けした鏡である。
【0044】
図6Fに示す例では、視準と合焦を、楕円鏡640とレンズ650を用いて行っている。不規則半導体構造120は、鏡640の焦点645の一つに配置されている。さらに、鏡640とレンズ650は、鏡640のその他の焦点が、レンズ650の焦点655と同じになるように離れて配置されており、出射光線が鏡640によって合焦し、レンズ650によって視準することができる。
【0045】
いくつかの例では、曲面鏡640が、不規則半導体構造120の下の基板にエッチングされているか、あるいは、別の基板上に作って、不規則半導体構造を有する基板に重ねるようにしている。さらに、レンズ650は、光レジストのリフロー、グレースケールマスク、あるいはRIE内のラグ効果によってシリコン材料上につくることができる。レンズ650はさらに、プラノ凸レンズ、又は正凹レンズであり、レンズ650からの反射光線が、不規則半導体構造120の上で再度合焦する。いくつかの例では、二またはそれ以上のレンズでできた光学系を使用している。
【0046】
図7A及び7Bは、本発明の実施例による、熱赤外線放射の方向性を制御する不規則半導体構造の例示的な構成を示す図である。
図7A及び7Bに示すように、熱IR放射390の方向性は、曲面鏡710を、不規則半導体構造120がエッチングされている半導体基板内につくることによって制御できる。
【0047】
図7Aに示す例では、曲面鏡710は、半導体基板210の底曲面を具える。これは、例えば、凹形状又は凸形状を作る三次元製造方法を用いて作成することができる。不規則半導体構造120は、次いで、半導体基板210の上側表面に不規則半導体構造120をエッチングする。
図7Aに示す結果としての構造は、屈折特性及び反射特性に基づいて、この構造の上部並びに底部からの熱IR放射を制御することができる。
【0048】
図7Bに示す例では、曲面鏡710が半導体基板210の上側曲面を具える。これは、いずれかのエッチング工程を用いて作ることができる。次いで、曲面鏡710内に不規則半導体構造120をエッチングする。いくつかの例では、半導体基板210が、
図3A−3Cに示すように、SOI基板310のデバイス層320又はハンドル層330である。
【0049】
図8A及び8Bは、本発明の実施例による、熱赤外線放射の方向性を制御する不規則半導体構造120の別の例示的構成を示す図である。
図8A及び8Bに示す例では、熱IR放射の方向性が、同心リング状シリコン(又はその他の半導体材料)810と、ブラックシリコン(又は、その他の不規則半導体構造)820を利用して実現される屈折と回析の原理を用いて制御される。エラー!基準電源が見つからなかった。この実現構造は、フレネルレンズ効果を有する。いくつかの例では、リングの形状が楕円形あるいは、所定の方向における方向性を改善するのに最適化したその他の形状であってもよい。このパフォーマンスは、リングとブラックシリコン(不規則半導体)材料のエッチング深さ間のスペース830によって制御できる。さらに、シリコン810とブラックシリコン820間を後退させることによっても放射率を操作して、放射率の値と、プロファイル対波長を制御することができる。
【0050】
図9A及び9Bは、本発明の実施例による、熱赤外線放射の方向性を制御する不規則半導体構造120の別の例示的構成を示す図である。光学的放射源のスペクトル特性は、不規則半導体材料を選択的にドーピングすることによって操作することができ、これによって、赤外線領域にプラズモン挙動が生じ、所定の波長及び/又は方向における放射を改善する。
図9A及び9Bに示す例では、半導体基板210(例えば、
図3A−3Cに示すSOI基板のデバイス層320)に不規則半導体構造をエッチングする前に、選択的にドーピングする。このように、エッチングの後に、不規則半導体構造120が高濃度にドープされた領域910と、低濃度にドープされた(あるいは、ドープされていない)領域920を具えていてもよい。いくつかの例では、このドーピングがマスクと、半導体基板中の深さ約100nmについて、3×10
20cm
−3に届くホウ素、又は、2×10
21cm
−3に届く燐のいずれかによるマスク及びイオン注入を用いて実行することができる。しかしながら、この構造をアニーリングすることで、ドーピングレベルを約10
20cm
−3まで下げることができる。
【0051】
いくつかの例では、高濃度にドープした領域910は金属のように挙動して、所定の方向と波長が強化された出射光に回析効果をもたらす。半導体材料にドーピングすることに代えて、周期的な金属構造(図示せず)を不規則半導体構造の上に蒸着させることによっても同じ結果を達成することができる。さらに、この金属構造によるプラズモン共鳴を得ることもできる。
【0052】
図10は、本発明の実施例による光学的放射源100の例示的構成要素を示すブロック図であり、熱放射スペクトルを制御するフィルタ1010を具える。熱放射スペクトルは、通常、所定のアプリケーションに必要なスペクトルより広い。使用しない出射スペクトルエネルギィが、光学的放射源の効率を落とす。したがって、
図10に示すように、使用しないスペクトル領域のエネルギィを不規則半導体構造120へ反射して戻すことによって、光学的放射源100の効率を改善するようにしている。不規則半導体構造で、エネルギィが吸収され加熱に寄与する。
【0053】
図10に示す例では、電流(I)が加熱素子110に流れ、次いでこの加熱素子が不規則半導体構造120へ向けて熱を発生する。不規則半導体構造120と周囲の熱質量ネットワークによって、熱エミッタ(不規則半導体構造120)の温度(T)が設定される。したがって、不規則半導体構造120は、その温度と放射率に応じてエネルギィを放射する。出射スペクトルエネルギィは、次いでフィルタ1010を通り、所定のアプリケーションに有用な帯域を出力に通過させ、有用でない帯域を反射して不規則半導体構造120へ戻す。反射したバンドエネルギィ(R)は、不規則半導体構造120の吸収度に応じて熱と温度に変換される。
【0054】
フィルタの一例が
図11に示されており、これは2.2μm/3dBのバンド幅を有しており、出力からのフィルタ応答バンド幅内の波長を抑制/反射する。フィルタにかけた/反射した波長は、次いで、不規則半導体構造にフィードバックされて、フィルタにかけた/反射したエネルギィをフィルタ応答外のその他の波長にマッピングする。結果としての出力放射スペクトルが、
図12に示されており、これは、フィードバックフィルタのある場合、及びフィードバックフィルタのない場合の、放射強度対波長を示している。
図12からわかるように、フィードバックフィルタを用いることによって、源の温度がより高くなり、その放射ピークはより小さい波長にシフトしている。いくつかの例では、出射パワーが、約5μmより小さい波長について改善された。
【0055】
ここで、
図13A及び13Bを参照すると、広域帯フィルタ1010は、複数の直列につないだ、ブラッグミラー1310を用いて実装することができる。各々が複数層1320を有する
図13Bに示す例では、層1320は、空気とシリコン層が交互になっており、例えば、SOI基板310のデバイス層内に製造することができる。しかしながら、別の例では、層1320が金属及び/又は誘電材料などのその他材料を含んでいる。直列につないだブラッグミラー1310は、不規則半導体構造とフィルタからの入射光を受ける方向に配置されており、その入射光1330をフィルタにかけて、この入射光のスペクトルの部分がフィルタを通過して(ステップ1330)、その他の部分は反射する(ステップ1350)。
【0056】
各ブラッグミラー1310は、反射スペクトルが制限されている。したがって、ブラッグミラー1310を直列につなぐことによって、反射スペクトル1350を不規則半導体構造へフィードバックするのに使用できる広い反射スペクトルとなる。いくつかの例では、ブラッグミラー1310内の各層1320の寸法を制御して、各ブラッグミラー1310の反射スペクトルの中央波長をシフトさせることができる。ブラッグミラー1310の反射スペクトルは、光学的放射源からの必要な工学的出力放射(送信した)スペクトル1340に依存して、オーバーラップしたりしなかったりする。さらに、ブラッグミラー1310は、基板310の表面に対して平行又は垂直に方向づけられており、垂直に方向づけられたものが
図13Bに示されている。
【0057】
図14A及び14Bは、本発明の実施例による、ブラッグミラー1010を具える光学的放射源100の例示的構成を示す図である。
図14Aは、光学的放射源100の側面図であり、
図14Bは平面図である。ブラッグミラーフィルタ1010は、例えば、空気とシリコンが交互になった複数の層1320を有する単一ブラッグミラー1310を具えている。層1320は、アプリケーションに必要な反射の中央波長に応じて寸法が異なる。
【0058】
図14A及び14Bに示す例では、不規則半導体構造120から出射される熱IR放射390は、半導体(SIO)基板310に対してインプレーンである。この例では、不規則半導体構造120は、基板310内に縦方向にエッチングされている。光学的放射源100は、さらに、パラボラ型金属反射器1410を具えており、出射熱IR放射をブラッグミラーフィルタ1010の方向に集めて合焦させている。
【0059】
図15A及び15Bは、本発明の実施例による、ブラッグミラーフィルタ1010を具える光学的放射源100の構成を示す図である。
図15Aは、この光学的放射源100の側面図であり、15Bは平面図である。
図15A及び15Bに示す例では、ブラッグミラーフィルタ1010が不規則半導体構造120を囲んでおり、不規則半導体構造の各側部上に単一のブラッグミラー1310を具えている。ブラッグミラー1310は、そのエッジにおいてオーバーラップしており、不規則半導体構造120を完全に囲んでいる。各ブラッグミラー1320のブラッグ層1320は、許容波長(例えば、ブラッグミラー1310を通過して送信される波長)と、反射波長(例えば、不規則半導体構造120で反射されて戻る波長)を、各ブラッグミラー1310について決定する。更に、ブラッグ層1320は、不規則半導体構造120のまわりの異なる放射角度について異なる厚さを有する。いくつかの例では、光学的放射源100は多重波長源であってもよく、ブラッグミラー層1010は、空中の異なる方向に対して、異なる波長(例えば、λ
1、λ
2、λ
3、及びλ
4)を選択的に向けることができる。
【0060】
図16は、本発明の実施例による、光学的放射源を調整するように構成した例示的なブラッグミラーフィルタを示す図である。
図16に示す例では、ブラッグミラーフィルタ1010の少なくとも一つのブラッグミラー1310が可動である。例えば、ブラッグミラー1310は、MEMSアクチュエータなどのアクチュエータに連結されており、これは、稼働時に、可動ブラッグミラー1310を変位させて、送信/反射スペクトル1340/1350の波長を変化させる。
【0061】
いくつかの例では、フィルタ1010の送信応答は、元の源のスペクトルより狭く、入射パワー1330のほとんどが反射されて不規則半導体構造へ戻る。この例では、反射パワー1350が不規則半導体構造の温度を上げて、フィルタ1010の狭い送信レンジ内でより大きな出力パワーがでる。この結果、光学的放射源が、従来の熱源に比べてより大きなコヒーレンス長を持つことができる。
【0062】
図16に示す構造は、非常に広い調整レンジをもち、フィルタ1010の調整レンジ能力によってのみ制限される。更に、ポラライザ(図示せず)をフィルタ1010の前及び/又は後に加えることによって、及びポラライザを、不要な偏光が反射されて不規則半導体構造に戻り、必要な変更が通過するように設計することによって、偏光を調整することができる。
【0063】
フィルタを用いて調整したものと、調整していない出力応答の例を
図17に示す。ここでは、パワーの相対値が維持されている。
図17に示す例では、フィルタのより長い波長への調整が、出力パワーを若干減らすことによって行われている。
【0064】
図18A及び18Bは、本発明の実施例による、光学的放射源100を具える例示的なマイクロ電磁機械システム(MEMS)光干渉計1800を示す。
図18Aは、MEMS光干渉計1800の側面図であり、
図18Bは平面図である。MEMS光干渉計1800は、不規則半導体構造120と加熱素子110を伴う光学的放射源100と、光ビームスプリッタ1810と、固定ミラー1820と、可動ミラー1830を具える。
図18Aに示す例では、光学的放射源100を具えるMEMS光干渉計1800の各構成要素が、同じ半導体(SOI)基板310(例えば、SOI基板310のデバイス層320内)の上に作成されている。したがって、光MEMS干渉計1800と光学的放射源100の整列をリソグラフィック態様で行うことができ、この構成要素のすべてを一体的に集積することができる。
【0065】
例示的な動作において、光学的放射源100からの入力ビーム(例えば、熱IR放射線)が、ビームスプリッタ1810へ導かれる。ビームスプリッタ1810は、例えば、入力ビームからある角度(例えば、45度)に配置され、入力ビームを二つのビームに分けるシリコン/空気インターフェースビームスプリッタである。このビームの一方は、固定ミラー1820に向けて空気中を伝達し、他方は、移動ミラー1830に向けてシリコンの中を伝達する。空気中を伝達するビームは、シリコン/空気ハーフ面ビームスプリッタ1810からの入力ビームの部分反射から出ており、したがって、ビームの入射角と等しい反射角を有する。このビームは、固定ミラー1820から反射されるまで空気中を伝搬し、したがって、第1の反射ビームを作る。
【0066】
更に、シリコン内を伝搬するビームは、シリコン/空気半平面スプリッタ1810を通る入力ビームの部分的伝送から生じ、スネルの法則によって決まる角度でシリコン内を伝わる。このビームは、シリコンを通過して、移動ミラー1830で反射されるまで伝搬し続け、第2の反射ビームを作る。二つの反射ビームはビームスプリッタ1810に向けて戻り、干渉して、入射信号として検出器(図示せず)で検出できる干渉パターン(インターフェログラム)を作る。いくつかの例では、次いで、検出したインターフェログラムにプロセッサでフーリエ変換を行って、測定したスペクトルを取り出す。
【0067】
可動ミラー1830は、アクチュエータ1840(例えば、マイクロ−エレクトロ−メカニカルシステムス(MEMS)のアクチュエータ)に連結されており、可動ミラーを変位させて光路を変動させ、この光路にそって伝搬する光ビーム間に光路差(OPD)を作る。例示的な実施例では、MEMSアクチュエータが、櫛歯アクチュエータ、平行平板アクチュエータ、又はその他のタイプのアクチュエータといった、静電アクチュエータである。
【0068】
図19は、本発明の実施例による、光学的放射源100を具える例示的ガス検出装置1900である。ガス検出装置1900は、不規則半導体構造を有する光学的放射源100と、ガスの入口1920と出口1930を有する気体電池1910と、光フィルタ1940と、検出器1950を具える。気体電池1910は、分析すべき化学物質を含んでいる。いくつかの例では、光学的放射源100が広帯域放射源であり、選択的に、中心波長が調整可能である。さらに、光フィルタ1940は狭帯域の調整可能な光フィルタであってもよく、波長スキャン干渉計として作用する。したがって、広帯域光学的放射源100の異なる中央波長で複数回スキャンを行った後、様々な波長範囲にアクセス可能である。
【0069】
例示的な動作では、光学的放射源100から出射した光(例えば、熱IR放射)が気体電池1910と光学フィルタ1940を通過して、検出器1950へ入射する。いくつかの例では、
図18A及び18Bに示すように光学フィルタ1940がスキャン干渉計である。検出器1950で検出された光は、次いで、分析用プロセッサ(図示せず)へ入力する。
【0070】
光学的放射源は、光コヒーレンス断層撮影などのその他のアプリケーションにも利用できる。例えば、光学的放射源は、同じパッケージにすべてあるスキャナ及び検出器と組み合わせて、超小型OCTヘッドとすることができる。
【0071】
図20は、本発明の実施例による、光学的放射源を操作する例示的プロセスを示すフローチャートである。
図20に示す方法2000は、例えば、上述した図面のいずれかに示す光学的放射源100によって実装することができる。
【0072】
方法2000は、光学的放射源を提供するブロック2010で開始し、これは、加熱素子と、この加熱素子にごく近接し、良好に熱接触している不規則半導体構造とを具える。いくつかの例では、不規則半導体構造がブラックシリコンを具えている。ブロック2020では、光学的放射源の加熱素子が電気エネルギィ入力を受けて、この入力電気エネルギィを熱エネルギィに変換する。ブロック2030では、加熱素子がこの熱エネルギィを不規則半導体構造にあてて、不規則半導体構造がこの熱エネルギィを放射エネルギィに変換する温度に不規則半導体構造を加熱し、ブロック2040において、不規則半導体構造が熱赤外線(IR)放射(光)を出射する。
【0073】
安定した出力パワーとスペクトル応答を提供するために、
図21に示すように、エミッタ(不規則半導体構造)の温度を、温度検出とフィードバックを用いて安定化させる。例えば、DC電圧源によって加熱素子110の外側端末に電圧がかかり、加熱素子の温度を上げる電流フローを生じさせ、黒体放射を生成する。加熱素子の温度は、加熱素子の抵抗(R
TH)の変化を測定することによって抽出することができる。
【0074】
いくつかの例では、加熱素子は、抵抗安定性、精度に優れ、抵抗と温度間に直線的相関を有するプラチナを含む。例えば、抵抗と0℃より高い温度間の関係は、
で与えられる。ここで、R(T)とR(0)は、それぞれ、温度Tと0℃における熱抵抗であり、Aは金属の抵抗温度係数であり、これは既知である。値R(0)は、金属薄膜の寸法と抵抗に依存している。
【0075】
加熱素子抵抗の正確な測定は、
図21に示すように、4点プローブ法を用いて、接点とアーム抵抗(R
BとR
S)をなくすことで得られる。4点プローブ法は、電気プローブを介して加熱素子に接続した電圧計2110と電流計2120を用いている。電圧計2110と電流計2120の出力は、プロセッサに送られ、電圧計の読みを電流計の読みで割ったV/Iによって、加熱素子の熱抵抗(R
TH)を計算することができ、したがって、接触抵抗とアーム抵抗(R
BとR
S)の影響をなくすことができる。次いで、上述の式3を用いてプロセッサ2130で熱抵抗に対応する温度を求めることができる。次いで、プロセッサ2130でこの温度を基準値と比較して、その結果を加熱素子110を駆動しているDC電源回路2100にフィードバックし、温度が基準値を下回ると電力を上げ、温度が基準値を上回ると電力を下げるようにする。
【0076】
当業者には認識されるように、本出願に記載した革新的概念は、広範囲にわたるアプリケーションで変形、変更されうる。したがって、特許の主題の範囲は、ここに述べた特定の例示の教示に限定するべきではなく、特許請求の範囲によって規定される。