(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868912
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】フットレストカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 3/06 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
B60N3/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-163321(P2019-163321)
(22)【出願日】2019年9月6日
(65)【公開番号】特開2021-41743(P2021-41743A)
(43)【公開日】2021年3月18日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】519196597
【氏名又は名称】株式会社明和
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】藤森 正信
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
独国実用新案第202008007477(DE,U1)
【文献】
実開昭58−173538(JP,U)
【文献】
特開平02−038153(JP,A)
【文献】
実開昭60−155641(JP,U)
【文献】
中国実用新案第206485248(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダル及びブレーキペダルに並列に設けられており、ドライバーの左足を乗せるフットレストに被せるカバーであって、
前記フットレストの形状に沿った形状であって、フットレストを覆うカバー本体と、
このカバー本体の前記ブレーキペダル側に設けられており、前記左足が前記ブレーキペダルの方向へ移動しないように規制する規制壁と、
を備えたことを特徴とするフットレストカバー。
【請求項2】
規制壁の下側ないし踵側を空けた形状としたことを特徴とする請求項1記載のフットレストカバー。
【請求項3】
前記規制壁の高さを、0.5〜5センチ、好ましくは1〜4センチとしたことを特徴とする請求項1又は2記載のフットレストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車において左足を置くフットレストカバ
ーに関し、特にブレーキとアクセルの踏み間違いを低減するフットレストの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ブレーキペダル(以下単に「ブレーキ」という)とアクセルペダル(以下単に「アクセル」という)の踏み間違いによる事故が増えている。ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故は、高齢者に限られるわけではないが、重大事故につながるケースとしては高齢者の割合が高くなっている。原因としては、踏み間違いが生じたときに、高齢者は気付くのが遅いことが考えられる。若年者は、踏み間違いが生じたとしても、それをすぐに修正する反射神経があるのに対し、高齢者は反射神経の低下に加え、アクセルを踏んでいるのにブレーキを踏んでいるとの思い込みないし錯覚を起こし、このため踏み間違いに気付けず、結果的に重大事故に発展してしまうことになる。
【0003】
従来のブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故を軽減するものとしては、例えば、下記特許文献1記載の「車両用の緊急停止装置」がある。これは、運転席からも助手席からもよく見えて操作可能な位置に押しボタン式の緊急停止スイッチを設けている。下記特許文献2の「自動車緊急停止装置」は、ブレーキとアクセルを踏み間違えたときに、直ちにエンジンを停止させている。下記特許文献3の「自動車等の走行制御装置」は、エンジン停止時にハザードランプを点滅させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-238182号公報
【特許文献2】特開2013-14304号公報
【特許文献3】特開2014-5821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブレーキとアクセルは、車の操作の中で唯一足による操作となっており、目視することなく感覚で行う操作となっている。すなわち、座席の位置やハンドル等の補器類の位置から、ブレーキやアクセルの位置を判断している。このため、運転姿勢との関係で踏み間違いが生ずる可能性がある。通常の運転中では、進行方向に対してドライバの体はまっすぐ正面を向いおり、体の中心にブレーキがある。しかし、駐停車時や後方確認時では体をひねることがあり、駐車料金の支払い時などでは上体や手を伸ばすことがあって、運転姿勢が乱れる原因となる。すると、ブレーキ上にあるはずの右足が実はアクセル上に移動することになって、踏み間違いが生ずることになる。特に、高齢者は、若年者と比較して体が硬くて柔軟性がなく、体をひねったりすると足も動いてしまい、乱れた運転姿勢を戻すのに時間がかかるようになる。
【0006】
以上のように、何らかの理由で自分の右足の位置と、ブレーキないしアクセルの位置との対応が不明確となると、このためブレーキとアクセルの踏み間違いが生じてしまうものと考えられる。してみると、右足の位置と、ブレーキやアクセルの位置との対応関係が明確になれば、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故を低減できる可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の点に着目したもので、右足の位置と、ブレーキやアクセルの位置との対応関係をドライバーに明瞭に認識させることで、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故の発生を低減することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフットレストカバーは、アクセルペダル及びブレーキペダルに並列に設けられており、ドライバーの左足を乗せるフットレストに被せるカバーであって、前記フットレストの形状に沿った形状であって、フットレストを覆うカバー本体と、このカバー本体の前記ブレーキペダル側に設けられており、前記左足が前記ブレーキペダルの方向へ移動しないように規制する規制壁と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
主要な形態の一つによれば、規制壁の下側ないし踵側を空けた形状としたことを特徴とする。
【0010】
更に他の形態の一つによれば、前記規制壁の高さを、0.5〜5センチ、好ましくは1〜4センチとしたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フットレスト
カバーにより規制壁を設けて、ドライバーの左足をフットレスト上で位置決めすることとしたので、ドライバーは、本来の運転姿勢を保持して、ブレーキやアクセルの位置関係を明瞭に認識でき、ブレーキとアクセルの踏み間違いが良好に低減されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のフットレストカバーの実施例を示す図である。(A)はカバーの全体を示し、(B)は取り付け時の様子を示す。
【
図2】前記実施例におけるカバー取り付け後の様子を示す図である。
【
図3】前記実施例の作用を従来技術と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には、本発明の一実施例が示されている。同図(A)はフットレストカバー100の全体を示しており、同図(B)は、自動車の運転席の足元部分にフットレストカバー100が取り付けられる前の様子を示しており、
図2は取り付け後の様子を示している。これらの図において、いわゆるAT(オートマチックトランスミッション)を搭載する自動車では、クラッチが存在せず、運転席にはアクセル10とブレーキ20が設けられているのみである。アクセル10,ブレーキ20は右足で操作するため、左足を置くためのフットレスト30が設けられている(一部車両によりフットレストが設けられていない車両もある)。
【0015】
フットレストカバー100は、上述したフットレスト30を覆うカバー本体110の表面に、滑り止め機能を持たせたシリコン製マット116を備えている。カバー本体110は、フットレスト30の形状に沿った形状となっており、フットレスト30に上から被せることで、フットレスト30の全体を覆うようになっている。カバー本体110のセンターコンソール側は側方当接面112となっており、ブレーキ20側には規制壁114が設けられている。規制壁114は、ブレーキ20側の全体ではなく、下側(踵側)が空いており、ドライバーの足の踵がマット116に乗せやすいようになっている。
【0016】
図2に示すように、フットレストカバー100のカバー本体110を、フットレスト30に被せると、側方当接面112がセンターコンソール側面に当接するようになる。フットレストカバー100は、両面テープやビスなどを利用して、自動車側の各当接面に接着固定される。
【0017】
次に、
図3も参照しながら、本実施例の作用を説明する。同図(A)は、本実施例のフットレストカバー100を取り付けた状態におけるドライバーの足の様子を示している。ドライバーが、その左足LFをカバー本体110上に置くと、左足LFの左側はセンターコンソール側面に当たり、右側は規制壁114に当たる。このため、左足LFは、カバー本体110上に位置が規制されるようになり、正しい運転姿勢が保持されるようになる。この状態で右足RFを移動してアクセル10やブレーキ20を操作することで、右足RFとアクセル10やブレーキ20との位置関係を把握して覚え込むことができる。このため、右足RFがアクセル10上にあるのか、あるいはブレーキ20上にあるのかを、明確に認識することができ、踏み間違いが低減されるようになる。
【0018】
これに対し、従来は、同図(B)に示すように、フットレスト30に対する左足LFの位置が矢印で示すように変動する。このため、左足LFに対する右足RFの位置も変動するようになり、右足RFがアクセル10の位置にあるのか、あるいはブレーキ20の位置にあるのかが不明確となって、踏み間違えてしまう原因となる。例えば、駐車場において料金を支払ったり駐車券を抜き差しする際、ドライバーが体をよじって左足LFの位置がブレーキ20の方にずれると、右足RFはアクセル10の方にずれるようになる。そうすると、右足RFでブレーキ20を踏んでいるはずなのに、間違えてアクセル10を踏んでしまう可能性が高くなる。
【0019】
これに対し、本実施例によれば、ドライバーの体がよじれて、左足LFがブレーキ20の方向にずれようとしても、規制壁114によって動きが規制され、左足LFの位置は変動しない。このため、アクセル10とブレーキ20の踏み間違いが低減されるようになる。
【0020】
更に、本実施例によれば、左足LFの全体がカバー本体110上に載って保持されるので、体が進行方向に対しまっすぐ正面を向く正しい運転姿勢を保持することができる。それは、左右の足に均等に体重を掛ける事となり、腰など体に対して負担の少ない運転が可能となる。
【0021】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、各種の自動車に後付けできるように、フットレストのカバーとしたが、自動車の組み立て工程において、規制壁を設けたフットレストを自動車に取り付けるようにしてもよい。
(2)本発明の適用対象としては、一般的な乗用車の他、トラックなどにも適用してよい。
(3)前記実施例に示した形状や寸法は一例であり、適宜変更してよい。しかし、規制壁114のマット116からの高さとしては、0.5センチ〜5センチ程度,より好ましくは1センチ〜4センチとするとよい。低いと左足LFが動いてしまう恐れがあり、高いと左足LFをカバー本体110に乗せにくくなる。
(4)フットレストカバー100とフロアマット40とを一体にするようにしてもよい。また、フットレストカバー100に、フロアマット40の方に延設される延設部を付加し、これをフロアマット40の下に敷くようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、フットレスト
カバーにより規制壁を設けて、ドライバーの左足をフットレスト上で位置決めすることとしたので、ドライバーは、本来の運転姿勢を保持して、ブレーキやアクセルの位置関係を明瞭に認識でき、ブレーキとアクセルの踏み間違いが良好に低減されるようになるので、各種の乗用車のフットレストに好適であ
る。
【符号の説明】
【0023】
10:アクセル
20:ブレーキ
30:フットレスト
40:フロアマット
100:フットレストカバー
110:カバー本体
112:側方当接面
114:規制壁
116:滑り止めマット
LF:左足
RF:右足