【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1ヒドロキシプロピルメチルセルロース(第1HPMC)と、第2ヒドロキシプロピルメチルセルロース(第2HPMC)と、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(PVP/VA)とを含むマイクロニードルパッチ用のベース組成物を提供する。第1HPMCの粘度は、第2HPMCの粘度より大きい。ベース組成物全体の総重量基準で、第1HPMC及び第2HPMCの総量は、0.1重量パーセント(重量%)以上3重量%以下であり、第1HPMCの第2HPMCに対する重量比は、1:0.1以上1:1.2以下であり、PVP/VAの量は、0.25重量%以上2重量%以下である。
【0009】
適量の第1HPMC、第2HPMC及びPVP/VAを組み合わせて使用することで、ベース組成物から作られるベースを有するマイクロニードルパッチは、製造、使用及び保管の段階で次の効果を有する。
【0010】
(1)製造段階では、上記マイクロニードルパッチのベースを所望の通り必要限度まで乾燥し、スムーズに離型し、離型中に起こるベースの破損を防ぐことができる。
【0011】
(2)使用段階では、マイクロニードルパッチのベースが、ベースが破損しやすいという過去の問題を克服するための十分な支えを提供できるだけでなく、良好な柔軟性、平坦性、可撓性及び皮膚接着性を有することで、マイクロニードルパッチの各針先が確実に皮膚の角質層を穿孔できる。
【0012】
(3)保管段階では、マイクロニードルパッチのベースの吸湿性が小さいので、保管が難しいという問題を克服でき、保管期間を長期化できる。
【0013】
本発明によれば、上記第1HPMC、第2HPMC及びPVP/VAは、溶解性又は膨潤性材料である。より具体的には、これら2つのHPMC及びPVP/VAは、生体適合性材料又は生分解性材料であってよい。
【0014】
本発明によれば、上記第1HPMC及び第2HPMCの粘度は、第1HPMC又は第2HPMCをそれぞれ水に溶かして配合した2%の水溶液中で、温度20℃で計測される。この計測条件は、本書内において、単に@20℃、2%水溶液と示されることがある。
【0015】
20℃、2%水溶液で計測する第1HPMCの粘度は、好ましくは400センチポアズ(cP)以上10,000cP以下であり、より好ましくは1,000cP以上8,000cP以下であり、さらに好ましくは1,500cP以上6,000cP以下であり、さらに好ましくは2,000cP以上5,000以下であり、さらに好ましくは3,000cP以上4,500cP以下である。20℃、2%水溶液で計測する第2HPMCの粘度は、好ましくは1cP以上100cP以下であり、より好ましくは2cP以上50cP以下であり、さらに好ましくは2cP以上30cP以下であり、さらに好ましくは3cP以上20cP以下である。
【0016】
ベース組成物全体の総重量基準で、第1HPMC及び第2HPMCの総量は、好ましくは0.2重量%以上2.5重量%以下であり、より好ましくは0.2重量%以上2重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下である。
【0017】
第1HPMCの第2HPMCに対する重量比は、好ましくは1:0.2以上1:1.1以下であり、より好ましくは1:0.2以上1:0.8以下であり、さらに好ましくは1:0.3以上1:0.7以下である。
【0018】
ベース組成物全体の総重量基準で、PVP/VAの量は、好ましくは0.3重量%以上2重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。
【0019】
本発明によると、ベース組成物は、第1HPMC、第2HPMC及びPVP/VAを溶剤(例えば水)に溶かすことで形成される混合物でよい。なお、この溶剤は本書中でベース溶液ともいう。
【0020】
実施形態の一つによると、ベース溶液は、第1HPMC、第2HPMC、PVP/VA及び水からなる。
【0021】
ベース組成物の固形分は、好ましくは0.35重量%以上60重量%以下であり、これはベース組成物に40重量%以上99.65重量%以下の水が含有していることを示している。
【0022】
ベース組成物の固形分は、より好ましくは0.5重量%以上30重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以上30重量%以下であり、さらに好ましくは1.5重量%以上30重量%以下であり、さらに好ましくは1.75重量%以上4重量%以下である。ベース組成物の固形分を調整することで、マイクロニードルパッチのベースに存在する不要な空隙構造を回避できる。さらに、マイクロニードルパッチのベースが極端に柔らかい問題や、限度を超えた外力による変形を実質的に克服することができる。
【0023】
ベース組成物の粘度は、剪断速度1s
−1、25℃で測定される。ベース組成物の粘度は、好ましくは1cP以上200,000cP以下であり、より好ましくは1cP以上100,000cP以下であり、さらに好ましくは100cP以上500cP以下である。
【0024】
ベース組成物のpHは、好ましくは4以上8以下の範囲内であり、より好ましくは4以上7以下の範囲内である。
【0025】
ベース組成物の表面張力は、好ましくは60dyne/cm以下であり、より好ましくは25dyne/cm以上50dyne/cm以下であり、さらに好ましくは40dyne/cm以上45dyne/cm以下である。ベース組成物の表面張力が大きすぎると、マイクロニードルパッチのベースにムラ、気泡又は凸凹表面等の欠陥が生じ、製造されたマイクロニードルパッチのベースの構造的欠陥につながる。
【0026】
本発明によると、マイクロニードルパッチの製造の際に本発明のベース組成物が選択された場合、上記マイクロニードルパッチを次の方法で製造してよいが、製造方法はこれに限定されない。具体的には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の型の複数の針穴を針先組成物で塗工するか、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の型の複数の針穴に針先組成物を流し込み、次に針先組成物を真空状態にするか、遠心分離を行うことで、針先組成物内の気泡を除去し、針先組成物を針穴に埋め、PDMSのマスタ型に均一に広げることができる。湿式膜の厚みは、塗工ギャップ、塗工厚さ又は針先組成物の量を変更することで調整でき、乾式膜の厚みは、乾燥工程の条件を変更することでさらに調整することができる。マイクロニードルパッチの針先を作製後、様々なニーズに基づき設計可能な中間層、及びベースを上述の方法で製造することができ、マイクロニードルパッチが完成する。
【0027】
マイクロニードルパッチを作製する上で、ベース組成物及び/又は針先組成物は、好ましくは、例えば、ブレード又はスロットダイ塗工、ブレード塗工、スライド塗工、浸漬塗布、インクジェット印刷又はノズル印刷等の方法でマスタ型の針穴に流し込んでよいが、方法はこれに限定されない。
【0028】
真空状態にして気泡を除去し組成物を埋める工程において、真空度は、0.001トル以上90トル以下でよい。他の実施形態では、遠心分離を行うことで気泡を除去し組成物を埋める工程において、遠心分離の回転速度は、毎分100回転(rpm)以上10,000rpm以下に設定してよい。
【0029】
マイクロニードルパッチを作製する際、好ましくは、ベース組成物をフリーズドライで乾燥するか、室温で乾燥し、マイクロニードルパッチのベースを製造できる。乾燥工程の温度は、好ましくは−80℃以上160℃以下で調整してよく、乾燥工程の相対湿度は40%以上75%以下で調整してよい。乾燥工程の温度は、より好ましくは−20℃以上100℃以下で調整してよい。
【0030】
本発明は、複数のマイクロニードル構造からなるマイクロニードルパッチをさらに提供し、各マイクロニードル構造がベース及びベースに形成される針先を有し、ベースが上述のベース組成物から作られる。
【0031】
マイクロニードルパッチの各マイクロニードル構造は、円錐形状、ピラミッド形状又は尖塔形状であってよいが、それらに限定されない。
【0032】
マイクロニードルパッチの各マイクロニードル構造の長さは、1,500μm未満であってよいが、より好ましくは1,000μm未満であり、さらに好ましくは200μm以上950μm以下であってよい。
【0033】
マイクロニードルパッチの各マイクロニードル構造の針先の半径は、15μm未満であってよいが、より好ましくは11μm未満であり、さらに好ましくは5μm以上10μm以下であってよい。また、マイクロニードルパッチの針先角度は、30°未満であってよい。
【0034】
マイクロニードルパッチの各マイクロニードル構造の密度は、100ニードル/cm
2以上1,000ニードル/cm
2以下の範囲内であってよいが、より好ましくは150ニードル/cm
2以上750ニードル/cm
2以下の範囲内であってよい。
【0035】
マイクロニードルパッチの機械強度は、好ましくは0.045N/ニードル以上であってよいが、より好ましくは0.058N/ニードル以上であってよい。
【0036】
本発明の他の目的、メリット、新規性のある特色は、添付の図面と関連づけられる次の詳細な説明から、更に明らかにになるであろう。