(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッシベーション層が、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ある種の半導体デバイスの製造においては、半導体層又は基材上にパッシベーション層を形成し、レーザー照射によりこのパッシベーション層に貫通孔を形成し、そして貫通孔を有するパッシベーション層上に、金属ペーストを適用及び焼成して電極を形成することによって、パッシベーション層による効果を提供しつつ、貫通孔を通る電極によって外部との導通を達成することが行われている。
【0003】
具体的には、例えば太陽電池、特にPERC太陽電池(Passivated Emitter,Rear Contact)の製造においては、受光面及び裏面にパッシベーション層を形成し、レーザー照射によりこのパッシベーション層に貫通孔を形成し、そして貫通孔を有するパッシベーション層上に、金属ペーストを適用及び焼成して電極を形成することによって、パッシベーション層で表面再結合を抑制しつつ、貫通孔を通る電極によって外部との導通を達成することが行われている。
【0004】
パッシベーション層を用いて高い変換効率の結晶系太陽電池を得る技術は、例えば、特許文献1及び2等に開示されている。
【0005】
PERC構造の太陽電池では、電極からの金属原子の拡散によって形成されたドープ層、例えばアルミニウム電極からのアルミニウム原子の拡散によって形成されたp
+層の存在により、生成キャリアの収集効率を向上させるBSF(Back Surface Field)効果が得られる。また、これと併せて、PERC構造の太陽電池では、パッシベーション層が、シリコン基板表面での電子の再結合を抑制することにより、発生したキャリアの再結合を減らすことが可能となる。その結果、PERC構造の太陽電池では、高い電圧を得ることができ、変換効率を高めることができる。
【0006】
しかしながら、PERC構造の太陽電池において、裏面のパッシベーション層の貫通孔を通る電極を、金属ペーストから形成する際、金属ペーストの金属と、シリコン層又は基材のような半導体層又は基材との反応が局在化し、それによって電極と半導体層又は基材との界面付近の電極中にボイドが形成され、それによってフィルファクターが悪化することが、非特許文献1で報告されている。
【0007】
この現象は、貫通孔の径が小さくなるに従い顕著に確認され、貫通孔が50μm以下の径になると特に影響が大きくなる。
【0008】
このため、アルミニウムペーストとシリコンの反応性を低下させる方法として、アルミニウム−シリコン合金粉末をアルミニウムペースト材料に使用し、空洞発生を抑えるという技術(特許文献3)や、ホウ素レーザードーピングを行うことで、アルミニウムと同じp型ドーパントであるホウ素をあらかじめが電極形成部分にドープし、それによってアルミニウムとシリコンの反応性を抑制することで空洞発生を抑えるという技術(特許文献4)が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、PERC構造の太陽電池のようなある種の半導体デバイスの製造においては、パッシベーション層の貫通孔を通して、半導体層又は基材に、金属ペーストを塗布し、そして焼成して、電極を形成することが行われている。
【0012】
これに関して、
図3に示すように、半導体層又は基材10及びその上のパッシベーション層20を提供し(
図3(a))、レーザー光照射200等によってパッシベーション層20に貫通孔25を形成し(
図3(b))、そしてパッシベーション層20の貫通孔25に金属ペースト40を塗布し、そしてこの金属ペースト40を焼成して電極を形成(
図3(c))する場合、金属ペースト40の金属が半導体層又は基材10と反応して合金を形成する際に、金属成分が半導体層又は基材に物理的に流入し、それによって矢印300で示すように、この合金形成による堆積膨張によりパッシベーション層20の貫通孔25を押し広げること、貫通孔25の周囲において金属ペースト40とパッシベーション層20との反応及び物理的な物質流動が起こること等によって、意図せずに、当初の貫通孔25よりもより広い領域で電極形成が行われる場合があるという問題を、本件発明者らは見いだした。
【0013】
このように、意図せずに、すなわち制御が困難な様式で、当初の貫通孔よりもより広い領域で電極形成が行われる場合、パッシベーション層によって提供しようとしていた機能、すなわち例えば、半導体デバイスが太陽電池の場合には電子と正孔との再結合を抑制するという機能を十分に達成できず、それによって得られ半導体デバイスの機能が悪化することがある。
【0014】
したがって、本発明ではこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本件発明者は、鋭意検討の結果、下記の本発明に想到した。
【0016】
〈1〉(i)下記を有する半導体積層体を提供すること:
半導体層又は基材、
上記半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有するパッシベーション層、及び
上記貫通孔の周縁領域において上記パッシベーション層上に積層されている周縁保護層;
(ii)上記半導体積層体上に金属ペーストを塗布し、それによって上記金属ペーストが、上記パッシベーション層の上記貫通孔を通って上記半導体層又は基材に接触するようにすること、並びに
(iii)塗布された上記金属ペーストを焼成して、上記パッシベーション層の上記貫通孔を通って上記半導体層又は基材に電気的に接触する電極を形成すること、
を含み、
上記周縁保護層が、半導体粒子で構成されており、
上記周縁保護層が、1μm以上400μm以下の幅を有し、かつ
上記周縁保護層が、0.1μm以上10μm以下の厚さを有する、
半導体デバイスの製造方法。
〈2〉上記周縁保護層が、10μm以上100μm以下の幅を有する、上記〈1〉項に記載の方法。
〈3〉上記貫通孔の最小径が、100μm以下である、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の方法。
〈4〉上記半導体粒子が、シリコン粒子である、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈5〉上記半導体粒子の平均一次粒子径が500nm以下である、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈6〉上記パッシベーション層が、1
nm以上300nm以下の厚さを有する、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈7〉上記パッシベーション層が、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されている、上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈8〉下記の工程によって、上記半導体積層体を形成する、上記〈1〉〜〈7〉項のいずれか一項に記載の方法:
上記半導体層又は基材上に、上記パッシベーション層を形成すること、
上記パッシベーション層のうちの一部に、半導体粒子及び分散媒を含有する半導体粒子分散体を塗布し、そして塗布した上記半導体粒子分散体を乾燥して、半導体粒子層とすること、並びに
上記半導体粒子層の一部に光照射を行うことによって、照射された部分において、上記パッシベーション層及び上記半導体粒子層を除去して、上記パッシベーション層の貫通孔を形成し、かつ上記貫通孔の周縁領域において上記半導体粒子層を残留させて上記周縁保護層にすること。
〈9〉上記半導体デバイスが太陽電池である、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈10〉半導体層又は基材、
上記半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有するパッシベーション層、
上記貫通孔の周縁領域において上記パッシベーション層上に積層されている周縁保護層、並びに
上記半導体積層体上に積層されており、かつ上記パッシベーション層の上記貫通孔を通って上記半導体層又は基材に電気的に接触している電極
を有し、
上記周縁保護層が、半導体粒子で構成されており、
上記周縁保護層が、1μm以上400μm以下の幅を有し、かつ
上記周縁保護層が、0.1μm以上10μm以下の厚さを有する、
半導体デバイス。
〈11〉太陽電池である、上記〈10〉項に記載の半導体デバイス。
【発明の効果】
【0017】
半導体デバイスを製造する本発明の方法によれば、意図せずに、すなわち制御が困難な様式で、当初の貫通孔よりもより広い領域で電極形成が行われ、それによってパッシベーション層によって提供しようとしていた機能を十分に達成できないという問題を抑制することができる。したがって例えば、半導体デバイスを製造する本発明の方法によれば、電子と正孔との再結合を抑制するというパッシベーション層の機能の損失を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《半導体デバイスの製造方法》
半導体デバイスを製造する本発明の方法は、下記の工程を含む:
(i)下記を有する半導体積層体を提供すること:
半導体層又は基材、
半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有するパッシベーション層、及び
貫通孔の周縁領域においてパッシベーション層上に積層されている周縁保護層;
(ii)半導体積層体上に金属ペーストを塗布し、それによって金属ペーストが、パッシベーション層の貫通孔を通って半導体層又は基材に接触するようにすること、並びに
(iii)塗布された金属ペーストを焼成して、パッシベーション層の貫通孔を通って半導体層又は基材に電気的に接触する電極を形成すること。
【0020】
例えばこの方法では、
図1(c)に示すように、半導体層又は基材10、貫通孔25を有するパッシベーション層20、及び貫通孔25の周縁領域においてパッシベーション層20上に積層されている周縁保護層32を有する半導体積層体100を提供する。その後、
図1(d)に示すように、パッシベーション層20の貫通孔を通って半導体層又は基材10に接触する金属ペースト40を半導体積層体上に塗布し、そしてこの金属ペースト40を焼成して、パッシベーション層20の貫通孔を通って半導体層又は基材10に電気的に接触する電極を形成する。
【0021】
上記のように、パッシベーション層の貫通孔に金属ペーストを塗布し、そしてこの金属ペーストを焼成して電極を形成する場合、金属ペーストの金属が半導体層又は基材と反応して合金を形成する際に、金属成分が半導体層又は基材に物理的に流入し、それによってこの合金形成による堆積膨張によりパッシベーション層の貫通孔を押し広げること、貫通孔の周囲において金属ペーストとパッシベーション層との反応及び物理的な物質流動が起こること等によって、意図せずに、当初の貫通孔よりもより広い領域で電極形成が行われる場合があるという問題を、本件発明者らは見いだした。
【0022】
この知見に基づいて、本件発明者等は、パッシベーション層の貫通孔の周縁領域に、半導体粒子で構成されている周縁保護層を形成することで、金属ペーストを焼成して電極を形成する際に、金属ペーストを周縁保護層の半導体粒子と反応させ、それによって金属ペーストと半導体層又は基材との反応を抑制できること、かつ/又は金属ペーストとパッシベーション層との反応を抑制できることを見いだした。
【0023】
これによれば、意図せずに、すなわち制御が困難な様式で、当初の貫通孔よりもより広い領域で電極形成が行われることを抑制できる。したがって、これによれば、パッシベーション層によって提供しようとしていた機能、すなわち例えば、半導体デバイスが太陽電池の場合には、電子と正孔との再結合を抑制するというパッシベーション層の機能を効果的に得ることができる。
【0024】
〈工程(i):半導体積層体の提供〉
本発明の工程(i)では、半導体積層体を提供する。
【0025】
ここで、この半導体積層体は、下記を有する:
半導体層又は基材、
半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有するパッシベーション層、及び
貫通孔の周縁領域においてパッシベーション層上に積層されている周縁保護層。
【0026】
〈半導体層又は基材〉
半導体層又は基材としては、任意の半導体層又は基材、特にシリコン、ゲルマニウム、又は化合物半導体の層又は基材を用いることができる。シリコン層又は基材としては、シリコンウェハー、アモルファスシリコン層、及び結晶質シリコン層を挙げることができる。また、半導体層又は基材は、その全体又は一部が、予めドープされていてもよい。
【0027】
〈パッシベーション層〉
パッシベーション層は、半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有する。
【0028】
このパッシベーション層は、パッシベーション層として機能させることができる任意の厚さを有することができ、例えば1nm以上、5nm以上、10nm以上、30nm以上、50nm以上の厚さを有することができる。また、パッシベーション層は、300nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、又は10nm以下の厚さを有することができる。この厚さが薄すぎる場合、パッシベーション層としての性質に劣る可能性がある。また、この厚さが厚すぎる場合、光照射によっては貫通孔の形成を十分に行えないことがある。
【0029】
パッシベーション層は、パッシベーション層として機能させることができる任意の材料で形成されていてよく、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、及びそれらの組合せからなる群より選択される材料で形成されていてよい。
【0030】
パッシベーション層の貫通孔の最小径は、100μm以下、70μm以下、又は50μm以下であってよい。また、この最小径は、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよい。
【0031】
なお、本発明に関して、パッシベーション層の貫通孔の「最小径」は、貫通孔の最長径に直交する方向の最長径を意味している。したがって、貫通孔が真円形である場合には、この「最小径」は真円の直径を意味し、貫通孔が楕円形である場合には、この「最小径」は楕円の短径を意味し、また貫通孔が線状である場合には、この「最小径」は線の線幅を意味している。
【0032】
〈周縁保護層〉
周縁保護層は、貫通孔の周縁領域において、パッシベーション層上に積層されている。また、周縁保護層は、半導体粒子で構成されている。
【0033】
また、周縁保護層の幅は、1μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、又は40μm以上であってよい。また、この幅は、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、又は、50μm以下であってよい。
【0034】
なお、本発明に関して、周縁保護層の「幅」は、貫通孔の縁の接線方向と垂直な方向についての、周縁保護層の幅を意味している。したがって、貫通孔が真円形である場合には、この「幅」は貫通孔の半径方向についての、周縁保護層の幅を意味し、また貫通孔が線状である場合には、この「幅」は、線の長手方向に垂直な方向についての、周縁保護層の幅を意味している。
【0035】
周縁保護層の厚さは、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、又は1.0μm以上であってよい。また、この厚さは、10μm以下、8μm以下、6μm以下、5μm以下、又は4μm以下であってよい。
【0036】
半導体粒子は、具体的には、シリコン、ゲルマニウム、ホウ素、炭素の半導体元素や、SiCのような化合物半導体からなる粒子、特にシリコン粒子であってよい。この半導体粒子は、イントリンシック、p型ドーパントによってドープされているp型半導体粒子、又はn型ドーパントによってドープされているn型半導体粒子であってよい。
【0037】
半導体粒子がシリコン粒子である場合、このシリコン粒子としては、レーザー光熱分解法、特にCO
2レーザー光を用いたレーザー光熱分解法によって得られたシリコン粒子を挙げることができる。
【0038】
半導体粒子は、特に、半導体層又は基材において電子と正孔との再結合を促進する金属元素、例えばFe(鉄)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、及びAu(金)等の含有量が、10ppm以下、1ppm以下、又は100ppb以下であることが好ましい。
【0039】
半導体粒子は、金属ペーストの焼成温度において、金属ペーストの金属と合金を形成するものであってよい。
【0040】
このように半導体粒子が金属ペーストの金属と合金を形成することは、金属ペーストの焼成時に、金属ペーストの金属が半導体層又は基材と反応して形成される合金が貫通孔を押し広げる効果を抑制するために特に好ましい。なお、本発明に関して、「合金」は金属と金属との間の化合物だけでなく、金属とシリコンのような半金属との間の化合物をも包含する意味で用いている。
【0041】
半導体粒子の平均一次粒子径は、10nm以上、又は20nm以上であって、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、又は100nm以下であってよい。
【0042】
ここで、本発明においては、半導体粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察によって、撮影した画像を元に直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上からなる粒子群を解析することで、数平均一次粒子径として求めることができる。
【0043】
〈工程(ii):金属ペーストの塗布〉
工程(ii)では、パッシベーション層及び周縁保護層上に金属ペーストを塗布し、それによって金属ペーストが、パッシベーション層の貫通孔を通って半導体層又は基材に接触するようにする。
【0044】
金属ペーストは、金属の微粒子及び/又は化合物と、樹脂及び溶媒等のペースト化成分とを含有するペーストであって、焼成することによって金属電極にすることができる任意のペーストである。このような金属ペーストとしては、アルミニウムペースト、銀−アルミニウムペーストを挙げることができる。
【0045】
金属ペーストの塗布はスクリーン印刷等の任意の方法で行うことができる。
【0046】
〈工程(iii):電極の形成〉
工程(iii)では、塗布された金属ペーストを焼成して、パッシベーション層の貫通孔を通って半導体層又は基材に電気的に接触する電極を形成する。
【0047】
この金属ペーストの焼成温度は、50℃以上、60℃以上、80℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、又は300℃以上であってよい。また、この温度は、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下であってよい。
【0048】
〈工程(i)の半導体積層体の形成〉
本発明の工程(i)の半導体積層体は、任意の方法で提供することができ、例えば下記の工程によって提供することができる:
半導体層又は基材上に、パッシベーション層を形成すること、
パッシベーション層のうちの一部に、半導体粒子及び分散媒を含有する半導体粒子分散体を塗布し、そして塗布した半導体粒子分散体を乾燥して、半導体粒子層とすること、並びに
半導体粒子層の一部に光照射を行うことによって、照射された部分において、パッシベーション層及び半導体粒子層を除去して、パッシベーション層の貫通孔を形成し、かつ貫通孔の周縁領域において半導体粒子層を残留させて周縁保護層にすること。
【0049】
(パッシベーション層の形成)
パッシベーション層は、上記のように、パッシベーション層として機能させることができる任意の材料で、任意の厚さの層として形成することができる。
【0050】
このパッシベーション層は、化学気相堆積法(CVD)、又は物理気相堆積法(PVD法)で形成することができ、例えばプラズマ促進化学気相堆積法(PE−CVD法)によって形成することができる。
【0051】
(半導体粒子層の形成)
半導体積層体を提供する工程においては、パッシベーション層のうちの一部に、半導体粒子分散体を塗布し、そして塗布した半導体粒子分散体を乾燥して、半導体粒子層とすることができる。
【0052】
半導体粒子分散体の塗布は、分散体を所望の厚さ及び均一性で塗布できる方法であれば特に限定されず、例えばインクジェット印刷法、スピンコーティング法、又はスクリーン印刷法等によって行うことができる。半導体粒子分散体の塗布は、インクジェット印刷やスクリーン印刷のような印刷法を用いて行うことが、特定の領域に分散体を塗布し、かつ製造工程を短くするために特に有益なことがある。
【0053】
また、この塗布は、分散体層を乾燥したときに得られる半導体粒子層の厚さが、周縁保護層に関して上記で説明した厚さになるように行うことができる。また、この塗布は、最終的に得られる周縁保護層の幅が、周縁保護層に関して上記で説明した幅になるように行うことができる。
【0054】
半導体粒子分散体の乾燥は、分散体から分散媒を実質的に除去することができる方法であれば特に限定されず、例えば分散体を有する半導体層又は基材を、ホットプレート上に配置して行うこと、加熱雰囲気に配置して行うこと等ができる。
【0055】
乾燥温度は例えば、半導体層又は基材、分散体の粒子を劣化等させないように選択することができ、例えば50℃以上、70℃以上、90℃以上であって、100℃以下、200℃以下、300℃以下、400℃以下、500℃以下、600℃以下、700℃以下、又は800℃以下であるように選択できる。
【0056】
半導体粒子分散体は、少なくとも半導体粒子及び分散媒を含有する。
【0057】
半導体粒子については、周縁保護層に関する上記の記載を参照することができる。
【0058】
半導体粒子分散体の分散媒は、本発明の目的及び効果を損なわない限り制限されるものではなく、したがって例えば分散体で用いる半導体粒子と反応しない有機溶媒を用いることができる。具体的にはこの分散媒は、非水系溶媒、例えばアルコール、アルカン、アルケン、アルキン、ケトン、エーテル、エステル、芳香族化合物、又は含窒素環化合物、特にイソプロピルアルコール(IPA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等であってよい。また、アルコールとしては、エチレングリコールのようなグリコール(2価アルコール)を用いることもできる。なお、分散媒は、分散体で用いる半導体粒子の酸化を抑制するために、脱水溶媒であることが好ましい。
【0059】
(貫通孔及び周縁保護層の形成)
半導体積層体を提供する工程においては、半導体粒子層の一部に光照射を行うことによって、照射された部分において、パッシベーション層及び半導体粒子層を除去して、パッシベーション層の貫通孔を形成し、かつ貫通孔の周縁領域において半導体粒子層を残留させて周縁保護層にすることができる。
【0060】
これに関して、
図1に示すように、半導体層又は基材10上に、パッシベーション層20及び半導体粒子層30を提供し(
図1(a)及び(b))、そしてレーザー光照射200等によってパッシベーション層20に貫通孔25を形成し、かつ貫通孔25の周縁領域において半導体粒子層を残留させて周縁保護層32にすることができる(
図1(c))。 なお、半導体粒子がp型又はn型半導体粒子である場合には、
図2(a)〜(c)に示すように、光照射200を行うことによって、照射された部分において、パッシベーション層20及び半導体粒子層30を除去するのと併せて、半導体層又は基材10をドープして、ドープ領域12を形成することができる。これについては、特許文献4の記載を参照できる。
【0061】
(光照射)
半導体粒子層に対する光照射は、照射された部分において、パッシベーション層及び半導体粒子層を除去して、パッシベーション層の貫通孔を形成し、かつ貫通孔の周縁領域において半導体粒子層を残留させて周縁保護層にすることができる任意の光照射であればよい。
【0062】
なお、このような光照射を用いる場合、半導体粒子層及びパッシベーション層、及びそれらの下側にある半導体層又は基材の表面部分は、半導体層又は基材の本体部分への伝熱によって素早く冷却される。したがって、このような光照射を用いる場合には、半導体層又は基材の本体部分を高い熱に露出させることなしに、照射された部分において、パッシベーション層及び半導体粒子層を除去することができる。
【0063】
半導体粒子層に対して照射される光としては、上記のようにしてパッシベーション層及び半導体粒子層の除去を達成できれば任意の光を用いることができる。例えば、照射される光としては、単一波長からなるレーザー光、特に波長600nm以下、500nm以下又は400nm以下であって、300nm以上の波長を有するレーザー光を用いることができる。また、特定の帯域の波長範囲(例えば200〜1100nm)の光を一度に照射するフラッシュランプ、例えばキセノンフラッシュランプを用いて行うこともできる。また、上記のようにしてパッシベーション層及び半導体粒子層の部分的な除去を達成できれば、パルス状の光、連続発振される光などの光を任意に用いることができる。なお、半導体粒子に吸収される波長の光を用いて照射を行うことが有効である。
【0064】
例えば、光照射をパルス状の光を用いて行う場合、パルス状の光の照射回数は例えば、1回以上、2回以上、5回以上、又は10回以上であって、300回以下、200回以下、又は150回以下にすることができる。また、パルス状の光の照射エネルギーは例えば、100mJ/(cm
2・shot)以上、200mJ/(cm
2・shot)以上、300mJ/(cm
2・shot)以上、400mJ/(cm
2・shot)以上、500mJ/(cm
2・shot)以上、600mJ/(cm
2・shot)以上、700mJ/(cm
2・shot)以上にすることができる。また、この照射エネルギーは、5000mJ/(cm
2・shot)以下、4000mJ/(cm
2・shot)以下、3000mJ/(cm
2・shot)以下、2000mJ/(cm
2・shot)以下、1500mJ/(cm
2・shot)以下、又は1000mJ/(cm
2・shot)以下にすることができる。さらに、パルス状の光の照射時間は、例えば200ナノ秒/shot以下、100ナノ秒/shot以下、50ナノ秒/shot以下にすることができる。
【0065】
ここで、光の照射エネルギーが小さすぎる場合には、所望のパッシベーション層及び半導体粒子層の除去を達成できないことがある。また、光の照射エネルギーが大きすぎる場合には、半導体層又は基材の破損をもたらすことがある。なお、照射エネルギー、照射回数等の最適な条件は、使用する光照射の波長、粒子の特性等に依存しており、当業者であれば、本願明細書を参照して実験を行うことによって最適な値を求めることができる。
【0066】
この光照射は、非酸化性雰囲気、例えば水素、希ガス、窒素、及びそれらの組合せからなる雰囲気において行うことが、半導体デバイスの特性に与える影響を小さくするために好ましい。ここで、希ガスとしては、特にアルゴン、ヘリウム、及びネオンを挙げることができる。なお、雰囲気が水素を含有することは、分散体粒子の還元作用があり、酸化された表面部分を還元して、連続層を形成するために好ましいことがある。また、非酸化性雰囲気とするために、雰囲気の酸素含有率は、1体積%以下、0.5体積%以下、0.1体積%以下、又は0.01体積%以下とすることができる。
【0067】
《半導体デバイス》
本発明の半導体デバイスは、半導体層又は基材、半導体層又は基材上に積層されており、かつ貫通孔を有するパッシベーション層、貫通孔の周縁領域においてパッシベーション層上に積層されている周縁保護層、並びに半導体積層体上に積層されており、かつパッシベーション層の貫通孔を通って半導体層又は基材に電気的に接触している電極を有する。
【0068】
本発明の半導体デバイスは例えば、太陽電池又は薄層トランジスタ、特に太陽電池、より特にPERC太陽電池である。
【0069】
本発明の半導体デバイスの製造方法は特に限定されないが、例えば半導体デバイスを製造する本発明の方法によって得ることができる。また、本発明の半導体デバイスの各構成要素の詳細については、半導体デバイスを製造する本発明の方法に関する記載を参照できる。
【実施例】
【0070】
〈実施例1〉
(シリコン粒子)
シリコン粒子は、モノシラン(SiH
4)ガスを原料として、二酸化炭素(CO
2)レーザー光を用いたレーザー光熱分解(LP:Laser Pyrolysis)法により作製した。
【0071】
得られたシリコン粒子は、平均一次粒子径が約35nmであった。なお、シリコン粒子の平均一次粒子径は、TEM観察にて10万倍の倍率で画像解析を行い、500個以上の集合を元に算出した。
【0072】
(分散体の調製)
上記のようにして得たシリコン粒子を、プロピレングリコール(PG)中に分散させて、固形分濃度10質量%のシリコン粒子分散体を得た。
【0073】
(基材の準備)
受光面側にn型拡散層及びパッシベーション層を有し、かつ裏面側にパッシベーション層を有する厚さ200μmのシリコン基材を提供した。ここで、パッシベーション層は、シリコン基材上に、酸化アルミニウム層(10nm)及び窒化ケイ素層(100nm)をこの順で、プラズマ促進化学気相堆積法(PE−CVD法)によって形成したものである。このパッシベーション層によれば、酸化アルミニウム層がシリコン基材に接していることによって、シリコン基材に電荷を与え、それによってキャリアのライフタイムを長くすることができる。
【0074】
(シリコン粒子分散体の印刷)
上記のシリコン基材の裏面側の特定部分に対して、シリコン粒子分散体をスクリーン印刷で帯状の領域で、その帯状の幅方向での中心から次の帯状の中心の距離を1mmピッチとして多数のラインとなるように成膜した。印刷したシリコン粒子分散体の帯状の領域の幅は、120μmであった。
【0075】
(乾燥)
シリコン粒子分散体が塗布された基板を、200℃のオーブンで乾燥させることによって、シリコン粒子分散体中の分散媒であるプロピレングリコールを除去し、それによってシリコン粒子を含むシリコン粒子層(膜厚1800nm)を、シリコン基材の裏面側に幅120μmの複数の帯状の領域として形成した。
【0076】
(光照射)
次に、このシリコン粒子層に対して、レーザー光照射装置(Rofin社製、商品名PowerLineE20)を用いてグリーンレーザー光(波長532nm)を照射することによって、パッシベーション層をアブレーションして、線状の貫通孔を形成した。したがって、このレーザー光照射の線幅が、パッシベーション層の貫通孔の最小径に対応している。なお、レーザー光照射条件は、照射エネルギー2000mJ/(cm
2・shot)、ショット数10回であり、レーザー光照射は、大気中で行った。
【0077】
なお、レーザー光照射は、線(ライン)幅40μm及び線ピッチ1mmで、幅120μmの帯状のシリコン粒子層の中央部分に沿って行って、幅40μmの線状の貫通孔をパッシベーション層の中央部分に沿って形成した。すなわち、概念上面図を
図4(a)に示し、またこの上面図(
図4(a))の一部について拡大した上面図を
図4(b)に示し、かつ拡大側面図を(
図4(c))に示すように、パッシベーション層420を有するシリコン基板410において、幅hが40μmである線状の貫通孔425に沿う周縁領域に、それぞれ幅pが約40μmであるシリコン粒子層が、周縁保護層430として存在するようにした。ここで、貫通孔の幅方向の中心から、次の貫通孔の幅方向の中心までの距離sを1mmピッチとした。また、パッシベーション層被覆率、すなわちパッシベーション層全体の面積に対する貫通孔以外の部分の面積の割合は、96.3%であった。
【0078】
(電極の形成)
裏面側のパッシベーション層上に、スクリーン印刷によってPERC専用アルミニウム(Al)ペースト(膜厚20μm)を塗布して、パッシベーション層の貫通孔を通して、アルミニウムペーストがシリコン基材の電極領域に達するようにした。また、受光面側には銀(Ag)ペーストを塗布した。
【0079】
その後、ビーム搬送式焼成炉にて、350℃で30秒間にわたって、そして820℃で3.8秒間にわたってアルミニウムペースト及び銀ペーストを焼成することによって、電極を形成して、PERC太陽電池セルを得た。
【0080】
この太陽電池セルの裏面側アルミニウム電極の幅に関して、断面割断による走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、電極の幅は、53μmであった。すなわち、焼成によって電極の幅が13μm増加した。このとき、貫通孔の周縁領域には、周縁保護層としてのシリコン粒子層が残存していた。
【0081】
(評価−IV特性)
作製された太陽電池の電流−電圧(I−V)特性評価を、ソーラーシミュレータ(山下電装製)を用いて行って、変換効率、開放電圧、短絡電流、及び曲線因子(Fill Factor)を求めた。なお、変換効率は、開放電圧、短絡電流、及び曲線因子の積で求めた。
【0082】
実施例1の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0083】
表1に示しているように、焼成前の貫通孔幅が40μmであったのに対して、焼成後の電極幅(貫通孔幅に対応)が53μmであったので、その増加は13μmであった。また、焼成前のパッシベーション層による被覆率が96.3%であったのに対して、焼成後のパッシベーション層による被覆率が94.7%であったので、その被覆率の低下は1.6%であった。
【0084】
〈実施例2〉
シリコン粒子分散体の固形分濃度を調整して、シリコン粒子層の厚みを200nmにした以外は実施例1と同様にして、実施例2の太陽電池セルを作製及び評価した。実施例2の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0085】
〈実施例3〉
シリコン粒子分散体を繰り返し印刷することで、シリコン粒子層の厚みを9.2μmにした以外は実施例1と同様にして、実施例3の太陽電池セルを作製及び評価した。実施例3の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0086】
〈実施例4〉
シリコン粒子の作製条件を変更して、シリコン粒子の平均一次粒子径を約115nmとした以外は実施例1と同様にして、実施例4の太陽電池セルを作製及び評価した。実施例4の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0087】
〈比較例1〉
シリコン粒子分散体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の太陽電池セルを作製及び評価した。比較例1の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0088】
〈
参考例2〉
シリコン粒子分散体を繰り返し印刷することで、シリコン粒子層の厚みを12μmにした以外は実施例1と同様にして、
参考例1の太陽電池セルを作製した。しかしながら、この
参考例2では、シリコン粒子層が厚いことによって、ここで用いたレーザー光照射によっては、貫通孔を形成できなかった。
参考例2の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0089】
〈
参考例3〉
シリコン粒子層の幅を50μmにした以外は実施例1と同様にして、
参考例3の太陽電池セルを作製及び評価した。
参考例3の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0090】
〈
参考例4〉
シリコン粒子層の幅を1000μmにした以外は実施例1と同様にして、
参考例4の太陽電池セルを作製及び評価した。
参考例4の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0091】
〈
参考例5〉
シリコン粒子層の幅を全面に印刷した以外は実施例1と同様にして、
参考例5の太陽電池セルを作製及び評価した。
参考例5の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【0092】
〈実施例5〉
(ホウ素(B)ドープシリコン粒子)
シリコン粒子は、モノシラン(SiH
4)ガスを原料として、二酸化炭素(CO
2)レーザー光を用いたレーザー光熱分解(LP:Laser Pyrolysis)法により作製した。このとき、SiH
4ガスと共にジボラン(B
2H
6)ガスを導入して、ホウ素ドープシリコン粒子を得た。
【0093】
得られたホウ素ドープシリコン粒子のドーパント濃度は、ICP−MS装置(Agilent Technologies社、7500型)で測定すると、1×10
21atoms/cm
3であった。また、得られたホウ素ドープシリコン粒子は、平均一次粒子径が約33nmであった。
【0094】
ホウ素ドープシリコン粒子分散体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の太陽電池セルを作製及び評価した。実施例5の概略及び評価結果を、下記の表1に示している。
【表1】
【0095】
適切な幅の周縁保護層を有していた実施例1〜5の太陽電池では、表1で示されているように、周縁保護層を用いなかった比較例1、及び周縁保護層の幅が有意に小さかった
参考例3と比べて、良好な開放電圧が得られた。これは、実施例1〜4の太陽電池では、周縁保護層の存在によって焼成による電極幅の増加が小さく、それによって焼成によるパッシベーション層被覆率の低下が小さく、またそれによって正孔と電子との再結合を効果的に抑制できたことによると考えられる。
【0096】
また、適切な幅の周縁保護層を有していた実施例1〜5の太陽電池では、表1で示されているように、周縁保護層の幅が有意に大きかった
参考例4及び5と比べて、良好な短絡電流及び曲線因子が得られた。これは、
参考例4及び5の太陽電池では、周縁保護層の存在によって焼成による電極幅の増加が小さかったものの、焼成時におけるアルミニウムペーストと周縁保護層のシリコン粒子との反応の割合が大きくなり、これが電極の電気的な特性を低下させたことによると考えられる。
【0097】
なお、実施例1〜4の太陽電池では、比較例1と同程度か又はそれよりも良好な短絡電流及び曲線因子が得られた。これは、裏面側電極の線幅が40μmと細いにも関わらず、電極とシリコン基板との間の良好な電気的な接触が達成されていることによると考えられる。
【0098】
特に実施例1及び3の太陽電池では、良好な開放電圧と、良好な短絡電流及び曲線因子との組合せによって、良好な変換効率が達成できた。
【0099】
なお、上記のとおり、
参考例2では、周縁保護層にすることを意図したシリコン粒子層が厚いことによって、ここで用いたレーザー光照射によっては、貫通孔を形成できなかった。