特許第6868979号(P6868979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868979アクリル酸エステル重合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868979
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】アクリル酸エステル重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/10 20060101AFI20210426BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C08F20/10
   C08F2/38
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-134029(P2016-134029)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-2941(P2018-2941A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】溝口 大昂
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 武彦
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06762262(US,B1)
【文献】 特開平06−025358(JP,A)
【文献】 特開昭60−215007(JP,A)
【文献】 特開2016−094499(JP,A)
【文献】 特開2003−003016(JP,A)
【文献】 特開2000−198749(JP,A)
【文献】 特開平07−149836(JP,A)
【文献】 特開2012−116964(JP,A)
【文献】 特表2008−511710(JP,A)
【文献】 特開昭63−168415(JP,A)
【文献】 特開2011−153192(JP,A)
【文献】 特開昭60−133007(JP,A)
【文献】 特開2008−120880(JP,A)
【文献】 特表平10−513221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00−20/70
C08F 2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1040以下であり、重量平均分子量が3000未満であり、
重合体に含まれる単量体に由来する構造単位に対するアクリル酸エステルに由来する構造単位が80質量%以上、100質量%以下であり、
色調(APHA)が31以下である、アクリル酸エステル重合体。
【請求項2】
アクリル酸エステルを、ジアルキルパーオキシド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドから選択される1種または2種以上の過酸化物の存在下で重合する工程を含むアクリル酸エステル重合体の製造方法であって、
該アクリル酸エステルの使用量が単量体の使用量に対して80質量%以上、100質量%以下であり、
硫黄化合物の使用量が該過酸化物の使用量に対して0質量%以上、50質量%未満であり、該重合工程における反応温度が120℃以上、220℃以下である、数平均分子量が1040以下でかつ重量平均分子量が3000未満のアクリル酸エステル重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸エステル重合体およびその製造方法に関する。より詳しくは、良好な色調を有するアクリル酸エステル重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアクリル樹脂フィルムは、透明性、耐候性、熱性形成などに優れることから、建材用途、光学用途など幅広い用途に使用されている。しかし、アクリル樹脂フィルムは、用途によっては耐折り曲げ性が不十分であったため、改善の要望があった。これに対しては、樹脂の各種性能を改善する目的で、可塑剤などの添加剤を用いることが行われている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
一方、低分子量(メタ)アクリル酸系重合体を製造する方法として、200℃以上の高温でバルク重合する方法(特許文献3、非特許文献1)、150℃以上の高温において、溶液重合する方法(特許文献4、5、非特許文献2)、250℃以上の高温で、アクリル重合体を熱分解する方法(特許文献6)、が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−171563号公報
【特許文献2】特開2004−292650号公報
【特許文献3】米国特許第4414370号明細書
【特許文献4】特開2004−18791号公報
【特許文献5】特開2016−98284号公報
【特許文献6】特開平11−240854号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】河合道弘「高温重合によるマクロモノマーの合成とその反応性」、東亜合成研究年報、2002年、第5号、p.2−10
【非特許文献2】大畑正敏、外2名、「低分子量アクリル樹脂の特性に及ぼす重合温度の影響」、色材協会誌、2006年、第79巻、第7号、p.283−289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり各種可塑剤が提案されているが、アクリル樹脂は従来の可塑剤との親和性が十分ではない場合も多く、アクリル樹脂フィルムの耐折り曲げ性の改善は、十分とは言い難かった。また、アクリル樹脂フィルムの用途によってはその外観を害さないように、可塑剤などの添加剤に対して、色調が良好であることも要求されている。
よって、本発明は、アクリル樹脂とも良好な親和性を有し、アクリル樹脂フィルムに使用した場合に耐折り曲げ性の改善が可能であり、ブリードアウトも少なく、色調が良好であり、可塑剤としても使用可能な化合物(重合体)およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本発明の重合体は、数平均分子量が1040以下であり、重量平均分子量が3000未満であり、重合体に含まれる単量体に由来する構造単位に対するアクリル酸エステルに由来する構造単位が80質量%以上、100質量%以下であり、色調(APHA)が31以下である、アクリル酸エステル重合体である。
【0008】
また、本発明の別の局面からは、アクリル酸エステル重合体の製造方法が提供される。すなわち、本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法は、アクリル酸エステルを、ジアルキルパーオキシド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドから選択される1種または2種以上の過酸化物の存在下で重合する工程を含むアクリル酸エステル重合体の製造方法であって、該アクリル酸エステルの使用量が単量体の使用量に対して80質量%以上、100質量%以下であり、硫黄化合物の使用量が該過酸化物の使用量に対して0質量%以上、50質量%未満であり、該重合工程における反応温度が120℃以上、220℃以下である、数平均分子量が1040以下でかつ重量平均分子量が3000未満のアクリル酸エステル重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、エステル基を複数有する化合物を含むこと等から、各種基材への密着性に優れ、各種樹脂との相溶性に優れ、樹脂との相溶後もブリードアウトが少なく、各種化合物の溶解性に優れる。また、良好な色調を有する。よって、本発明の多価エステル組成物は、各種基材の改質剤、樹脂の可塑剤、不揮発性溶剤等として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
<アクリル酸エステル重合体>
本発明のアクリル酸エステル重合体は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を、単量体に由来する構造単位(アクリル酸エステルに由来する構造単位および後述するその他の単量体に由来する構造単位)に対し、80質量%以上、100質量%以下含む。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを表す。
本発明において、「アクリル酸エステルに由来する構造単位」とは、アクリル酸エステルの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造の構造単位であり、典型的にはアクリル酸エステルが重合して形成される構造単位である。ただし、実際にアクリル酸エステルが重合して形成された構造単位に限らず、アクリル酸エステルの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造の構造単位であれば、アクリル酸エステルに由来する構造単位に該当する。例えば、アクリル酸エチル、CH=CHCOOC、に由来する構造単位は、−CH−CH(COOC)−、と表すことができる。
「その他の単量体に由来する構造単位」についても、同様に、その他の単量体の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造の構造単位であり、典型的にはその他の単量体が重合して形成される構造単位である(ただし、同様に、実際にその他の単量体が重合して形成された構造単位に限定されない)。
本発明のアクリル酸エステル重合体は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を、単量体に由来する構造単位に対し、90質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、95質量%以上、100質量%以下含むことがより好ましく、100質量%含む(すなわち、単量体に由来する構造単位がすべてアクリル酸エステルに由来する構造単位であること)がよりさらに好ましい。上記範囲の場合、アクリル樹脂等との相溶性が向上する傾向にある。
【0012】
記アクリル酸エステルに由来する構造単位は、特に制限は無いが、アクリル酸エステルに由来する構造単位を、−CH−CR(COOR)−と表したときに、Rは、水素原子であるが、Rは、炭素数1〜30の有機基であることが好ましく、炭素数1〜18の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜8の有機基であることがさらに好ましい。
本発明のアクリル酸エステル重合体は、本発明のアクリル酸エステル重合体に含まれるアクリル酸エステルに由来する構造単位(−CH−CR(COOR)−)100モル部に対し、Rの炭素数が1〜30(好ましくは、1〜18、より好ましくは1〜8))の構造単位が50〜100モル部であることが好ましく、80〜100モル部であることがさらに好ましく、90〜100モル部であることがよりさらに好ましい。
【0013】
上記有機基としては、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状等)、アルケニル基(直鎖状、分岐状、環状等)、アリール基、ヘテロアリール基等が例示され、これらは置換基を有していても良い。なお、置換基を有する有機基を「置換の有機基」、置換基を有しない有機基を「無置換の有機基」ということがある。例えば、置換のアルキル基とは、アルキル基の水素原子の1または2以上が置換基で置換された構造を有する基を表す。上記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基、カルボキシエステル基、カルボキシアミド基、スルホン酸基、リン酸基、アルキル基、アリール基、アリール基、ヘテロアリール基等が例示され、置換基はさらに置換基を有していても良い。なお、上記有機基が置換基を有する場合、上記有機基の有する置換基の数、置換基の炭素数等は特に制限されないが、置換の有機基が全体として上記炭素数(1〜30、好ましくは、1〜18、より好ましくは1〜8)であることが好ましい。
上記有機基としては、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であることがより好ましく、置換または無置換のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明のアクリル酸エステル重合体における、その他の単量体に由来する構造単位の組成は、単量体に由来する構造単位に対し、0質量%以上、20質量%以下であるが、0質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることがよりさらに好ましい。
【0015】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で決定される数平均分子量が1040以下であり、好ましくは1000未満である。また、GPCで決定される重量平均分子量が3000未満であり、特に好ましくは2000未満である。分子量が上記の範囲より外れると、粘度が高くなることから取扱い性が低下する傾向にあり、また、各種樹脂との相溶性が低下する傾向にある。なお、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーは、後述する条件で測定することができる。
【0016】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、酸価が0以上、0.5mgKOH/g以下であることが好ましく、0以上、0.3mgKOH/g以下であることがより好ましく、0以上、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、色相がより良好になる傾向にあり、また、金属などに対する腐食性も十分に抑えられるため、可塑剤としてより好ましく使用できる傾向にある。なお、酸価は、後述する条件で測定することができる。
【0017】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、イオウ分の含有量が、重合体の質量に対し、硫黄原子換算(硫黄原子として計算することをいい、例えば−SH基でも、Sとして質量計算することをいう)で0ppm以上、1000ppm未満であることが好ましく、0ppm以上、100ppm未満であることがより好ましく、0ppm以上、10ppm未満であることがさらに好ましく、0ppm以上、2ppm未満であることが特に好ましい。なお、本発明において「イオウ分」とは、硫黄原子を含むイオン、化合物、基等をいう。本発明のアクリル酸エステル重合体は、重合体分子に結合しているイオウ分の含有量が上記範囲であることが好ましく、主鎖末端に含まれるイオウ分の含有量が上記範囲であることがより好ましい。重合体に含まれる硫黄分が多くなると、重合体の色調が低下する傾向にある。
【0018】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、リン分の含有量は、重合体の質量に対し、リン原子換算(リン原子として計算することをいい、例えば−OPO(OH)基でも、Pとして質量計算することをいう)で0ppm以上、1000ppm未満であることが好ましく、0ppm以上、100ppm未満であることがより好ましく、0ppm以上、10ppm未満であることがさらに好ましく、0ppm以上、2ppm未満であることが特に好ましい。なお、本発明において「リン分」とは、リン原子を含むイオン、化合物、基等をいう。本発明のアクリル酸エステル重合体は、重合体分子に結合しているリン分の含有量が上記範囲であることが好ましく、主鎖末端に含まれるリン分の含有量が、上記範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば、本発明のアクリル酸エステル重合体の色調がより良好になる傾向にある。
イオウ分の含有量やリン分の含有量は、例えばICP発光分析法により定量することが可能である。本発明のアクリル重合体において、リン含有化合物やイオウ含有化合物が不純物として存在している場合、重合体分子に結合しているリン分やイオウ分の含有量は、該不純物を液体クロマトグラフィーやガクスロマトグラフィーで定量し、ICP発光分析法の測定結果から除することにより算出しても良い。
【0019】
本発明のアクリル酸エステル重合体は、金属分の含有量は、重合体の質量に対し、金属原子換算(金属原子として計算することをいう)で0ppm以上、100ppm未満であることが好ましい。より好ましくは、0ppm以上、20ppm未満である。なお、金属原子とは周期律表の第1族から第12族までの原子をいう。上記金属分は、重合体分子に結合していてもよく、結合していなくともよいが、結合していない金属分の含有量が上記範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば、本発明のアクリル酸エステル重合体の色調がより良好になる傾向にある。金属分の含有量は、ICP発光分析法により定量することが可能である。
【0020】
<アクリル酸エステル重合体組成物>
クリル酸エステル重合体組成物は、本発明のアクリル酸エステル重合体を含む。アクリル酸エステル重合体組成物は、例えば、本発明のアクリル酸エステル重合体を35質量%以上、100質量%以下含むことが好ましい。
【0021】
上記アクリル酸エステル重合体組成物は、有機溶媒を含んでいても良い。有機溶媒としては、後述する本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法の重合に用いられる有機溶媒として例示するものが挙げられる。上記アクリル酸エステル重合体組成物の有機溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上、65質量%以下であることが好ましい。
【0022】
上記アクリル酸エステル重合体組成物は、イオウ分の含有量が、本発明のアクリル酸エステル重合体の質量に対し、硫黄原子換算で0ppm以上、1000ppm未満であることが好ましく、0ppm以上、100ppm未満であることがより好ましく、0ppm以上、10ppm未満であることがさらに好ましく、0ppm以上、2ppm未満であることが特に好ましい。
上記アクリル酸エステル重合体組成物は、リン分の含有量は、本発明のアクリル酸エステル重合体の質量に対し、リン原子換算で0ppm以上、1000ppm未満であることが好ましく、0ppm以上、100ppm未満であることがより好ましく、0ppm以上、10ppm未満であることがさらに好ましく、0ppm以上、2ppm未満であることが特に好ましい。
上記アクリル酸エステル重合体組成物は、金属分の含有量は、本発明のアクリル酸エステル重合体の質量に対し、金属原子換算(金属原子として計算することをいう)で0ppm以上、100ppm未満であることが好ましい。より好ましくは、0ppm以上、20ppm未満である。なお、金属原子とは周期律表の第1族から第12族までの原子をいう。
【0023】
<アクリル酸エステル重合体の製造方法>
本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法は、アクリル酸エステルを、必須とする単量体成分を重合する工程(重合工程)を必須とする。
本発明の製造方法において、アクリル酸エステルとは上記のとおりであるが、アクリル酸エステルをCH=CRCOOR、ただしRは水素原子である、で表した場合、Rの形態、好ましい形態は、特に言及する場合を除き、上記−CH−CR(COOR)−、におけるRの形態、好ましい形態と同様である。
【0024】
上記重合工程で使用する単量体(単量体成分)に対する、アクリル酸エステルを使用する割合は80質量%以上、100質量%以下である。好ましくは、90質量%以上、100質量%以下使用することが好ましく、95質量%以上、100質量%以下使用することがより好ましく、100質量%使用する(すなわち、単量体としてすべてアクリル酸エステルを使用すること)がよりさらに好ましい。上記範囲の場合、得られるアクリル酸エステル重合体のアクリル樹脂等との相溶性が向上する傾向にある。
【0025】
記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アリールエステル類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル、α−ヒドロキシエチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシエチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシエチルアクリル酸ブチルなどのα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などのアクリル酸誘導体類;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸トリパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、パーフルオロエチレンなどのアクリル酸パーフルオロアルキルエステル類;ケイ素含有アクリル酸エステル系単量体類などが挙げられ、これらは1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0026】
本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法で使用する単量体(単量体成分)は、アクリル酸エステル以外の単量体(その他の単量体という)を含んでいても良い。その他の単量体としては、少なくとも一つのラジカル重合性基を有する化合物であれば良いが、例えば、上記アクリル酸エステル(α−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルエステル類を除く)に対応するメタアクリル酸エステル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、メチレングルタル酸ジブチル等の不飽和ジカルボン酸エステル(モノ、ジ);(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の、(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等の不飽和アミン化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド等の不飽和アミド化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の、ビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;スチレン、インデン等のビニル芳香族系単量体;オクテン、ブタジエン等の、オレフィン類;などが挙げられる。これらを使用する場合には、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0027】
上記重合工程で使用する単量体(単量体成分)に対する、その他の単量体を使用する割合は0質量%以上、20質量%以下である。好ましくは、0質量%以上、10質量%以下使用することが好ましく、0質量%以上、5質量%以下使用することがより好ましく、0質量%であることがよりさらに好ましい。
【0028】
上記重合工程で使用するアクリル酸エステル(CH=CR(COOR))100モル部に対し、Rの炭素数が1〜30(好ましくは、1〜18、より好ましくは1〜8))のアクリル酸エステルの使用量が50〜100モル部であることが好ましく、80〜100モル部であることがさらに好ましく、90〜100モル部であることがよりさらに好ましい。
【0029】
上記重合工程における重合反応は、ジアルキルパーオキシド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドから選択される1種または2種以上の過酸化物の存在下で実施される。上記の過酸化物の存在下で実施することにより、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量や、色調を適切な範囲にすることが可能となる。
上記過酸化物は、重合工程において、主として重合開始剤として作用する。
上記過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−アミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキシド;t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーベンゾエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキサイド;が例示される。
上記過酸化物は1種または2種以上で用いられる。上記重合工程における、上記過酸化物の使用量は、上記モノマー混合物に対して、例えば、0.5〜10質量%である。
【0030】
上記過酸化物は、開封後の保管状態が悪いと過酸化物の酸価が経時的に増加し、そのような過酸化物を使用すると、アクリル酸エステル重合体の酸価が増加する傾向にある。よって、上記過酸化物は開封後、極力不活性雰囲気下で保管すると共に、極力早期に使用することが好ましい。好ましくは、過酸化物は開封後3か月以内に使用することが好ましい。また、メーカーから購入する場合は、納品後、6ヶ月以内が好ましい。
【0031】
上記重合工程においては、連鎖移動剤を併用することも可能である。連鎖移動剤としては、次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)等のリン化合物;亜硫酸水素塩、メルカプトプロピオン酸(塩)、ドデカンチオール等の硫黄化合物;等が例示される。しかしながら、リン分やイオウ分が重合体に導入されたり、重合体組成物に混入した場合、アクリル酸エステル重合体の色調が低下したり、可塑性等の諸物性が経時劣化しやすくなる傾向にあるため、リン化合物や硫黄化合物の使用量は極力抑えることが好ましい。
例えば、リン化合物や硫黄化合物の使用量をそれぞれ上記過酸化物に対して0質量%以上、50質量%未満に抑えることが好ましく、0質量%以上、20質量%未満に抑えることがより好ましく、0質量%以上、10質量%未満に抑えることがさらに好ましい。
また、上記リン化合物や硫黄化合物の使用量は、アクリル酸エステルの使用量に対して0質量%以上、2質量%未満に抑えることが好ましく、0質量%以上、1質量%未満に抑えることがより好ましく、0質量%以上、0.5質量%未満に抑えることがさらに好ましい。
【0032】
上記重合工程においては、同様に、金属成分の添加も極力抑えることが好ましい。金属成分の混入を抑制すると、アクリル酸エステル重合体の色調や可塑性等の諸物性の経時劣化をより好ましく抑制できる傾向にある。本発明のアクリル酸エステル重合体の質量に対し、金属原子換算(金属原子として計算することをいう)で0ppm以上、100ppm未満であることが好ましい。より好ましくは、0ppm以上、20ppm未満である。
【0033】
上記重合工程は、溶剤を使用せずに実施することも可能であるが、色調が良好になる傾向にあることから、溶剤を使用することが好ましい。重合に用いられる有機溶剤としては、炭化水素系、エステル系、ケトン系、アルコール系、エーテル系などの種々のものが利用できるが、重合温度を考慮すると、100℃以上の沸点を有する溶剤を用いることが好ましい。なお、これらの溶剤は2種以上を組合せて使用することができる。
りアクリル酸エステル重合体の色調が向上する傾向にあることから、単量体100質量部に対して50〜1000質量部の有機溶剤を使用することが好ましい。
【0034】
上記重合工程は、反応温度を120℃以上、220℃以下で行う。上記範囲を外れると、アクリル酸エステル重合体の色調が低下する傾向にある。好ましくは、130℃以上、220℃以下であり、より好ましくは、150℃以上、210℃以下である。なお、重合温度は一定で行う必要は無く、重合温度を変動させても良い。
【0035】
上記重合工程は、常圧下、減圧下、加圧下のいずれの条件下で行っても良いが、加圧下で行うことが好ましい。また、上記重合工程は、不活性雰囲気下で行っても良いが、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気下で行う場合、反応器(重合釜等)に、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどを添加しながら重合反応を実施しても良く、予め反応器を不活性気体で置換した後に重合反応を実施しても良い。
【0036】
本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法で得られるアクリル酸エステル重合体は、重合体主鎖末端に不飽和二重結合が形成される傾向にある。例えば還元工程を設けることにより、主鎖末端の不飽和二重結合に水添処理しても良い。
【0037】
本発明のアクリル酸エステル重合体の製造方法は、上記重合工程を必須に含むが、その他の工程を含んでいても良い。例えば、精製工程、触媒不活性化工程、希釈工程、濃縮工程、抽出工程、水添工程、エステル交換工程、未反応原料の回収工程、反応生成物を溶剤や水で洗浄する工程(洗浄工程)、反応生成物を活性炭や無機吸着剤等の固体吸着剤で処理する工程、不純物を溶剤で抽出する工程、反応生成物や反応原料をろ過する工程、等が例示される。
【0038】
<本発明のアクリル酸エステル重合体(組成物)の用途>
本発明のアクリル酸エステル重合体(組成物)は、上記のとおり、可塑剤として使用することができるが、本発明のアクリル酸エステル重合体(組成物)の流動性、粘性、エステル基による親和性や密着性、良好な色調等の性質を利用して、オフセット印刷を目的とした印刷インキ溶剤、印刷インキ組成物及び印刷機用インキ洗浄剤、プラスチック添加剤、帯電防止剤、バイオディーゼル、燃料又はその添加剤、電気絶縁油、潤滑油、流出油回収剤、工業用洗浄剤、塗料用溶剤、ウレタン減粘剤、接着剤用溶剤、反応、分離精製及び抽出用溶剤、繊維工業用溶剤、などに利用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0040】
<分子量>
重合体の分子量測定は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で行った。GPCは、以下の装置および条件で行った。
装置:東ソー HLC−8320
カラム:guardcolumn superHL、 TSKgel Super H2000
カラム温度:40℃
注入量:10μL
移動相: テトラヒドロフラン(和光試薬特級 安定剤含有)
流速:0.6mL/min
検出器:RI
検量線:TSK standard POLYSTYRENE.
<耐折り曲げ試験>
得られた試験片を180度折り曲げて、折り曲げ部の変化を目視で評価を行った。
○:折り曲げ部に白化は見られない。
×:折り曲げ部に白化が見られる、もしくは、割れが生じる。
【0041】
<耐ブリードアウト性試験>
得られた試験片を室内に保管し、1週間後に耐ブリードアウト性を評価した。
○:ブリードアウトなし
×:ブリードアウトあり。
【0042】
<酸価>
200mLナスフラスコに試料5gと滴定溶剤A(和光純薬工業(株)社製、2−プロパノール:49.0−50.0v/v%、トルエン:49.0−50.0v/v%溶液)100mL、指示薬溶液(p−ナフトールベンゼン0.1gを滴定溶剤Aに溶解させた溶液)0.5mLを入れ、均一な溶液になるまで降り混ぜた。
ビュレットを用いて0.1mol/L KOH/イソプロパノール(iPrOH)溶液で滴定し、溶液の色が黄橙色から緑色に変わるまでに要した溶液の量(V1)を読み取った。
同様に試料なしで試験を行い、中和に要した量(V0)をブランクの値とした。
これらの値を下の計算式に当てはめて、酸価を算出した。
酸価(mgKOH/g)=(56.1×0.1×(V1−V0))/m (m:試料の質量(g))
<色調>
試験管に試料を10g加え、色差計(日本電色工業株式会社製:TZ6000)でハーゼン色数(APHA)を測定した。(規格:JIS K 0071−1)
<製造例1>
容量1000mlの加圧式撹拌槽型反応器に酢酸ブチル252質量部を加えて密閉し、窒素ガスにより加圧、解圧を繰り返して反応器内部を窒素で置換した。電熱ヒーターにより、反応器内温度を200℃にまで昇温した後、酢酸ブチル63質量部と、パーブチルD(日油(株)社製:開始剤の酸価0.05mgKOH/g)3.15質量部を均一に混合した開始剤溶液とエチルアクリレート(以下EAという。)63質量部を、それぞれ2時間かけて、高圧定量ポンプを用いて同時に反応器に連続的に投入した。その後、反応器内の温度を200℃に保ったまま、30分間保持した。
その後、冷却し、反応器内の圧力が十分、低下したことを確認した後、解圧して内容物を取出し、溶媒を除去した。その後、更に酢酸ブチルや残存モノマー等の低沸点成分を減圧除去することで無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(1))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(1)の重量平均分子量は1040、数平均分子量は640、重合体の酸価は0.10mgKOH/g、色調(APHA)は15であった。
【0043】
<製造例2>
製造例1において、開始剤をパーブチルD(新ロット:開封後1週間、開始剤の酸価0.00mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(2))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(2)の重量平均分子量は1350、数平均分子量は730、重合体の酸価は0.05mgKOH/g、色調(APHA)は27であった。
【0044】
<製造例3>
製造例1において、開始剤をルペロックスDTA(アルケマ吉富(株)社製:開始剤の酸価0.05mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(3))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(3)の重量平均分子量は1050、数平均分子量は710、重合体の酸価は0.09mgKOH/g、色調(APHA)は14であった。
【0045】
<製造例4>
製造例1において、開始剤をパーブチルE(日油(株)社製:開始剤の酸価0.72mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(4))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(4)の重量平均分子量は1230、数平均分子量は760、重合体の酸価は0.18mgKOH/g、色調(APHA)は17であった。
【0046】
<製造例5>
製造例1において、開始剤をパーブチルI(日油(株)社製:開始剤の酸価0.54mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(5))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(5)の重量平均分子量は1130、数平均分子量は720、重合体の酸価は0.13mgKOH/g、色調(APHA)は21であった。
【0047】
<製造例6>
製造例1において、開始剤をパーブチルL(日油(株)社製:開始剤の酸価4.67mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(6))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(6)の重量平均分子量は1300、数平均分子量は780、重合体の酸価は0.32mgKOH/g、色調(APHA)は13であった。
【0048】
<製造例7>
製造例1において、開始剤をパーヘキサC75(日油(株)社製:開始剤の酸価0.05mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(7))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(7)の重量平均分子量は1240、数平均分子量は800、重合体の酸価は0.13mgKOH/g、色調(APHA)は31であった。
【0049】
<製造例8>
製造例2において、モノマーをブチルアクリレート(以下BAという。)に変更した他は、製造例2と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(8))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(8)の重量平均分子量は1630、数平均分子量は1040、重合体の酸価は0.03mgKOH/g、色調(APHA)は15であった。
【0050】
<製造例9>
製造例2において、モノマーをBA21質量部、EA42質量部に変更した他は、製造例2と同様にして無色透明の重合体(アクリル酸エステル重合体(9))を得た。なお、残存単量体は1000ppm未満であった。
クリル酸エステル重合体(9)の重量平均分子量は1250、数平均分子量は770、重合体の酸価は0.09mgKOH/g、色調(APHA)は23であった。
【0051】
<比較製造例1>
製造例1において、開始剤をメチルエチルケトンパーオキシド(以下MEKPOとする。)(日油(株)社製:開始剤の酸価0.46mgKOH/g)に変更した他は、製造例1と同様にして薄黄色透明の比較重合体(1)を得た。残存単量体は1000ppm未満であった。
比較重合体(1)の重量平均分子量は1400、数平均分子量は790、重合体の酸価は1.05mgKOH/g、色調(APHA)は66であった。
【0052】
<比較製造例2>
比較製造例1において、重合温度を240℃に変更した他は、比較製造例1と同様にして淡黄色透明の比較重合体(2)を得た。残存単量体は1000ppm未満であった。
比較重合体(2)の重量平均分子量は700、数平均分子量は530、重合体の酸価は1.10mgKOH/g、色調(APHA)は450であった。
【0053】
<比較製造例3>
比較製造例1において、モノマーをBAに変更した他は、比較製造例1と同様にして薄黄色透明の比較重合体(3)を得た。残存単量体は1000ppm未満であった。
比較重合体(3)の重量平均分子量は1200、数平均分子量は920、重合体の酸価は1.05mgKOH/g、色調(APHA)は57であった。
【0054】
<比較製造例4>
比較製造例1において、モノマーをBA21質量部、EA42質量部に変更した他は、比較製造例1と同様にして薄黄色透明の比較重合体(4)を得た。残存単量体は1000ppm未満であった。
比較重合体(4)の重量平均分子量は1400、数平均分子量は830、重合体の酸価は1.04mgKOH/g、色調(APHA)は62であった。
【0055】
<実施例1>
ポリメタクリル酸メチル(アルドリッチ社製、質量平均分子量35万)100質量部に対し、製造例1で得られたアクリル酸エステル重合体(1)を10質量部添加後、溶融混練し、得られた樹脂を、押し出し機を用いて0.5mmのフィルム試験片を得た。
この試験片について耐折り曲げ性試験及び耐ブリードアウト性試験を行った。結果を表2に示す。
【0056】
<実施例2〜9>
実施例1において、アクリル酸エステル重合体(1)の代わりに、下表にて対応する各アクリル酸エステル重合体を用いる他は実施例1と同様にして、フィルム試験片を得た。この試験片について耐折り曲げ性試験及び耐ブリードアウト性試験を行った。結果を表2に示す。
【0057】
<比較例1>
実施例1において、アクリル酸エステル重合体(1)を使用しない他は実施例1と同様にして、フィルム試験片を得た。この試験片について耐折り曲げ性試験及び耐ブリードアウト性試験を行った。結果を表2に示す。
【0058】
表1の結果から、本発明のアクリル酸エステル重合体は、アクリル樹脂フィルムの耐折り曲げ性の改善効果が良好であり、耐ブリードアウト性にも優れることが明らかとなった。
また、本発明のアクリル酸エステル重合体は良好な色調を有していたことから、例えばアクリル樹脂フィルムの可塑剤として好ましく使用できることが明らかとなった。
【0059】
【表1】