特許第6869043号(P6869043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869043
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】道路用加熱装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/14 20060101AFI20210426BHJP
   E01C 23/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   E01C23/14
   E01C23/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-25315(P2017-25315)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-131783(P2018-131783A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 悟
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−154505(JP,A)
【文献】 特開昭63−255402(JP,A)
【文献】 特開2011−226190(JP,A)
【文献】 特開2007−247239(JP,A)
【文献】 実開平02−011815(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 21/00−23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設舗装体を加熱する道路用加熱装置であって、
本体部と、
前記本体部に取り付けられた加熱部と、
前記本体部に取り付けられ且つ前記既設舗装体の端面に対して前記加熱部を一定の距離で追従させる追従部と、
前記本体部に取り付けられる1又は複数の車輪と、を有
前記追従部は、前記既設舗装体の端面と接する端面接触部であり、
前記端面接触部は、転動体又は摺動体で構成されており、
1又は複数の前記車輪の少なくとも1つは、前記既設舗装体の端面に沿って進行する前記本体部が前記端面接触部を前記既設舗装体の端面に押し付けるよう、進行方向に対して斜めを向いている、
道路用加熱装置。
【請求項2】
前記本体部が前記既設舗装体の端面に沿って進行する際に、前記本体部は、前記端面接触部を前記既設舗装体の端面に押し付けるように構成されている、
請求項に記載の道路用加熱装置。
【請求項3】
前記既設舗装体の端面に沿って進行する前記本体部は、前記端面接触部を前記既設舗装体の端面に押し付けるように吊されている、
請求項1又は2に記載の道路用加熱装置。
【請求項4】
前記本体部に取り付けられ且つ前記既設舗装体の端面を引っ掻くスカリファイヤを有する、
請求項1乃至の何れか一項に記載の道路用加熱装置。
【請求項5】
既設舗装体を加熱する道路用加熱装置であって、
本体部と、
前記本体部に取り付けられた加熱部と、
前記本体部に取り付けられ且つ前記既設舗装体の端面に対して前記加熱部を一定の距離で追従させる追従部と、
前記本体部に取り付けられ且つ前記既設舗装体の端面を引っ掻くスカリファイヤと、を有する、
道路用加熱装置。
【請求項6】
前記スカリファイヤは、前記既設舗装体の端面に沿って進行する前記本体部の後端に配置されている、
請求項に記載の道路用加熱装置。
【請求項7】
前記スカリファイヤは、前記既設舗装体の端面に沿って延びる前記本体部の長手方向において前記加熱部と重複しないように配置されている、
請求項又はに記載の道路用加熱装置。
【請求項8】
前記スカリファイヤは、前記既設舗装体の端面に沿って進行する前記本体部の後側に取り付けられた車輪の近傍に配置されている、
請求項乃至の何れか一項に記載の道路用加熱装置。
【請求項9】
前記本体部に取り付けられ且つ前記スカリファイヤを前記既設舗装体の端面に向けて付勢する付勢部を有する、
請求項乃至の何れか一項に記載の道路用加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷えた既設舗装体に隣接するように新設舗装体を敷設するコールドジョイント法で舗装された道路は、既設舗装体と新設舗装体との接合部(ジョイント部)の接着力が弱い場合、ジョイント部から劣化が始まる。そのため、作業者は、道路用加熱装置を使用して既設舗装体の端部を加熱して軟らかくし、ジョイント部の接着力を高めるようにしている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−37800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の加熱装置は、道路機械に取り付けられた支持部材に吊り下げられ、道路機械と共に移動しながら、既設舗装体の端部を加熱していく。そのため、加熱装置の加熱面が既設舗装体の端面(側面)から離れ過ぎてしまう場合がある。
【0005】
上述に鑑み、加熱部と既設舗装体の端面との距離の変動を抑制できる道路用加熱装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例に係る道路用加熱装置は、既設舗装体を加熱する道路用加熱装置であって、本体部と、前記本体部に取り付けられた加熱部と、前記本体部に取り付けられ且つ前記既設舗装体の端面に対して前記加熱部を一定の距離で追従させる追従部と、前記本体部に取り付けられる1又は複数の車輪と、を有し、前記追従部は、前記既設舗装体の端面と接する端面接触部であり、前記端面接触部は、転動体又は摺動体で構成されており、1又は複数の前記車輪の少なくとも1つは、前記既設舗装体の端面に沿って進行する前記本体部が前記端面接触部を前記既設舗装体の端面に押し付けるよう、進行方向に対して斜めを向いている。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、加熱部と既設舗装体の端面との距離の変動を抑制できる道路用加熱装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加熱装置を牽引するアスファルトフィニッシャの概略図である。
図2】加熱装置の斜視図である。
図3】加熱装置の本体部の背面図である。
図4】加熱装置の概略図である。
図5】加熱装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る加熱装置50を牽引する道路機械としてのアスファルトフィニッシャ100の概略図である。具体的には、図1(A)はアスファルトフィニッシャ100の側面図であり、図1(B)はその上面図である。図中の太線矢印はアスファルトフィニッシャ100の進行方向を表す。
【0010】
アスファルトフィニッシャ100は、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成されている。以下では、トラクタ1から見たホッパ2の方向(+X方向)を前方とし、トラクタ1から見たスクリード3の方向(−X方向)を後方とする。
【0011】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100を走行させるための機構である。本実施例では、トラクタ1は、後輪走行用モータを用いて後輪5を回転させ、且つ、前輪走行用モータを用いて前輪6を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。後輪走行用モータ及び前輪走行用モータは油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する。後輪5及び前輪6はクローラで置き換えられてもよい。
【0012】
ホッパ2は、舗装材を受け入れるための機構である。本実施例では、トラクタ1の前側に設置され、ホッパシリンダによってY軸方向(車幅方向)に開閉可能に構成される。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2を全開状態にしてダンプトラックの荷台から舗装材(例えばアスファルト混合物である。)を受け入れる。図1はホッパ2が全開状態であることを示す。ホッパ2内の舗装材が減少するとホッパ2が閉じられ、ホッパ2の内壁付近にあった舗装材がホッパ2の中央部に集められる。ホッパ2の中央部にあるコンベアCVがトラクタ1の後側に舗装材を給送できるようにするためである。また、トラクタ1の後側に給送された舗装材は、スクリュSCによってトラクタ1の後側且つスクリード3の前側で車幅方向に敷き拡げられる。図1の例では、スクリュSCは、エクステンションスクリュが左右に連結された状態にある。
【0013】
スクリード3は、舗装材を敷き均すための機構である。本実施例では、スクリード3は、主に、前側スクリード30及び後側スクリード31を含む。また、スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3Aを介してトラクタ1に連結される。
【0014】
前側スクリード30は左前側スクリード30L及び右前側スクリード30Rを含み、後側スクリード31は左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを含む。左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rはスクリード伸縮シリンダを用いて車幅方向に伸縮される。
【0015】
スクリード3の端部にはサイドプレート40が取り付けられている。サイドプレート40は、スクリュSCによって敷き拡げられる舗装材の車幅方向への過度の拡がりを制限する。図1の例では、サイドプレート40は、右後側スクリード31Rから前方に延びる右サイドプレート40Rと、左後側スクリード31Lから前方に延びる左サイドプレート40Lとを含む。
【0016】
サイドプレート40には、加熱装置50を牽引するための牽引部材60が取り付けられている。図1の例では、牽引部材60は、鉄パイプで構成されたL字状の棒状部材であり、右サイドプレート40Rの前端(+X側端)且つ上端(+Z側端)から前方(+X方向)に延びるように取り付けられている。牽引部材60の先端(+X側端)にはワイヤ61が取り付けられている。ワイヤ61の下端(−Z側端)は加熱装置50の先端(+X側端)に取り付けられている。牽引部材60は、トラクタ1に取り付けられていてもよい。加熱装置50は、アスファルトフィニッシャ100によって後ろから押されて進行する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、アスファルトフィニッシャ100は、既設舗装体APと路盤RBとの境界を跨ぐように配置された加熱装置50をその境界に沿って進行させることができる。
【0018】
加熱装置50は、既設舗装体APを加熱する。図1の例では、加熱装置50は、既設舗装体APの端部を加熱するジョイントヒータである。図1は、2つの加熱装置50F、50Rが連結された状態を示している。加熱装置50は、3つ以上が連結されていてもよく、1つであってもよい。
【0019】
ここで、図2及び図3を参照し、加熱装置50の詳細について説明する。図2は、加熱装置50を左斜め後方から見た斜視図である。図3は、加熱装置50の本体部51の背面図である。図2の太線矢印は、加熱装置50の進行方向を表す。以下の説明は、前方の加熱装置50F及び後方の加熱装置50Rの双方に適用される。
【0020】
加熱装置50は、主に、本体部51、端面接触部52、車輪高さ調整機構53、車輪54、耐熱シート55等を含む。
【0021】
本体部51は、燃料を燃焼させる燃焼室を形成する。燃料は、例えば、プロパンガス等の気体燃料である。液体燃料であってもよい。本実施例では、本体部51は、金属板で囲まれた燃焼室を有する。燃焼室の下部には、燃料の燃焼によって加熱されて発熱する加熱部が取り付けられている。加熱部は、例えば、既設舗装体APの端部の形状に合致する背面視L字状の加熱面(面熱源)として構成されている。加熱面は、既設舗装体APの端面AP1及び表面AP2の双方に向き合うように、水平面に対して傾斜する形状を有していてもよく、湾曲形状等の他の形状を有していてもよい。加熱部は、線熱源又は点熱源であってもよい。
【0022】
或いは、本体部51は、加熱部として、マイクロ波を発生するマグネトロンを備えていてもよく、電磁誘導加熱式ヒータ、抵抗加熱式ヒータ等の電気ヒータを備えていてもよい。
【0023】
端面接触部52は、本体部51に取り付けられ且つ既設舗装体APの端面AP1に対して加熱部を一定の距離で追従させる追従部の一例である。端面接触部52は、既設舗装体APの端面AP1と接するように構成されている。端面接触部52は、例えば、車輪、ボール等の転動体、又は、先端部に円筒面又は球面を有する摺動体である。本実施例では、端面接触部52は、耐熱性の材料(例えば、金属)で形成された車輪であり、本体部51の前側(+X側)に取り付けられる前側端面接触部52Fと、後側(−X側)に取り付けられる後側端面接触部52Bとを含む。後側端面接触部52Bは、例えば、本体部51の背面に固定されている金属板ステー51aに、Y軸方向の位置を調整できるように、ボルトを介して締結される。Z軸方向の位置(高さ)を調整できるように構成されていてもよい。前側端面接触部52Fについても同様である。本実施例では、端面接触部52の回転軸は、既設舗装体APの端面AP1と平行になるように配置されている。但し、端面接触部52の回転軸は、端面AP1に対して傾斜していてもよい。
【0024】
この構成により、端面接触部52は、本体部51の加熱部が既設舗装体APの端面AP1に過度に接近してしまうのを防止できる。また、本体部51の加熱部と既設舗装体APの端面AP1との距離を一定に維持できる。
【0025】
車輪高さ調整機構53は、車輪54の高さを調整するための機構である。本実施例では、車輪高さ調整機構53は、本体部51の前側に2つ取り付けられ、且つ、後側に2つ取り付けられている。具体的には、左前側車輪54FLに対応する左前側調整機構53FL、右前側車輪54FRに対応する右前側調整機構53FR、左後側車輪54BLに対応する左後側調整機構53BL、及び、右後側車輪54BRに対応する右後側調整機構53BRを含む。
【0026】
より具体的には、左後側調整機構53BLは、側面視L字状の金属板53Sを含む。金属板53Sは、本体部51の背面に固定されている金属板ステー51bに、Z軸方向の位置(高さ)を調整できるように、ボルトを介して締結される。金属板53Sには締結の際にZ軸方向に延びる高さ調整用の一対の長孔53Gが形成されている。高さ調整用の複数対の丸孔が形成されていてもよい。左後側車輪54BLは、Y軸方向の位置を調整できるように、ボルトを介して金属板53Sに締結される。金属板53Sには位置調整用の2対の丸孔53Hが形成されている。位置調整用の3対以上の丸孔が形成されていてもよく、位置調整用の一対の長孔が形成されていてもよい。左前側調整機構53FL、右前側調整機構53FR、及び、右後側調整機構53BRについても同様である。
【0027】
本体部51の下部には耐熱シート55が取り付けられている。耐熱シート55は、本体部51の加熱部と地面(例えば路盤RB、既設舗装体APの表面AP2等)との間の加熱空間を外部空間から遮断するための部材である。本実施例では、耐熱シート55は、本体部51の左側面の下端から下方に延びる左側耐熱シート55L、本体部51の右側面の下端から下方に延びる右側耐熱シート55R、本体部51の前側面の下端から下方に延びる左前側耐熱シート55FL(図4参照。)及び右前側耐熱シート55FR(図4参照。)、並びに、本体部51の後側面の下端から下方に延びる左後側耐熱シート55BL及び右後側耐熱シート55BRを含む。
【0028】
本実施例では、左側耐熱シート55L、左前側耐熱シート55FL、及び、左後側耐熱シート55BLのそれぞれの下端は路盤RBの表面と接している。右側耐熱シート55R、右前側耐熱シート55FR、及び、右後側耐熱シート55BRのそれぞれの下端は既設舗装体APの表面AP2と接している。この構成により、耐熱シート55は、加熱空間を外部空間から隔離し、加熱空間内の温度を効率的に維持できる。
【0029】
本体部51の後端には付勢部56を介してスカリファイヤ57が取り付けられている。本実施例では、付勢部56及びスカリファイヤ57は、後方の加熱装置50Rにのみ取り付けられている。既設舗装体APの端面AP1が最も加熱された状態で端面AP1を掻きほぐすことができるようにするためである。但し、前方の加熱装置50Fに追加的に取り付けられていてもよい。
【0030】
付勢部56は、スカリファイヤ57を既設舗装体APの端面AP1に向けて付勢する。本実施例では、付勢部56は板バネである。コイルバネが用いられていてもよい。
【0031】
スカリファイヤ57は、既設舗装体APの端面AP1を引っ掻くための部材である。本実施例では、スカリファイヤ57は、金属板で形成され、3つの爪を有する。スカリファイヤ57は、付勢部56によって既設舗装体APの端面AP1に押し付けられる。
【0032】
既設舗装体APの端面AP1にある突起部等によってスカリファイヤ57が外向き(+Y方向)の力を受けた場合、付勢部56は、スカリファイヤ57を外方向(+Y方向)に逃がすことができる。これにより、付勢部56は、スカリファイヤ57に過度の力が作用してしまうのを防止できる。そのため、スカリファイヤ57の損傷を防止できる。
【0033】
スカリファイヤ57は、望ましくは、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する本体部51の後端に配置されている。加熱装置50による加熱によって端面AP1が軟らかくなったときに端面AP1を引っ掻くことができるようにするためである。そのため、スカリファイヤ57は、例えば、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する本体部51の後側に取り付けられた左後側車輪54BLの近傍に配置されている。
【0034】
また、スカリファイヤ57は、望ましくは、既設舗装体APの端面AP1に沿って延びる本体部51の長手方向において加熱部と重複しないように配置されている。例えば、耐熱シート55によって定められる加熱空間の外側に配置されている。耐熱シート55による外部空間からの加熱空間の遮断が容易に実現されるようにするためである。
【0035】
以上の構成により、スカリファイヤ57は、加熱装置50による加熱によって軟らかくなった既設舗装体APの端面AP1を掻きほぐすことができる。そのため、既設舗装体APと新設舗装体との接着力が強化される。既設舗装体APにおけるより多くの舗装材と新設舗装体におけるより多くの舗装材とがより深く噛み合うためである。その結果、加熱装置50は、舗装材が適切に噛み合ったジョイント部を形成できる。
【0036】
次に、図4を参照し、本体部51が端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付ける構成について説明する。図4は、加熱装置50の概略図であり、図4(A)が加熱装置50の正面図を示し、図4(B)が加熱装置50の上面図を示す。
【0037】
図4に示すように、4つの車輪54は、本体部51の進行方向に対して斜めを向くように、すなわち、本体部51の長手方向に対して斜めを向くように、本体部51に固定されている。図4(B)の太線矢印は本体部51の進行方向を表す。具体的には、本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に取り付けられている。角度θは、例えば、進行速度、車輪54のサイズ、加熱装置50の長さ等に応じて適切に設定される。角度θは、車輪毎に異なる角度であってもよく、各車輪に共通する角度であってもよい。
【0038】
この構成により、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する際に、端面接触部52(前側端面接触部52F及び後側端面接触部52B)を既設舗装体APの端面AP1に押し付けることができる。進行方向に対して角度θの方向を向く4つの車輪54により、本体部51は、角度θの方向に進行しようとするため、すなわち、既設舗装体AP側に近寄ろうとするためである。実際には、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1と端面接触部52との接触により右方向(−Y方向)への移動が制限されるため、前方(+X方向)に進行する。
【0039】
また、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って移動することができる。すなわち、加熱部と端面AP1との距離を一定に維持できる。本体部51が端面AP1から遠ざかろうとする動きは、角度θの方向に進行しようとする本体部51の動きによって相殺されるためである。また、本体部51が端面AP1に近づこうとする動きは、端面AP1と端面接触部52との接触によって制限されるためである。そのため、アスファルトフィニッシャ100が蛇行していたり、或いは、既設舗装体APがカーブに沿って湾曲していたりしても、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って移動できる。
【0040】
上述の実施例では、4つの車輪54の全てが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に固定されている。しかし、4つの車輪54のうちの一部のみが角度θの方向を向くように本体部51に固定されていてもよい。例えば、左前側車輪54FL及び右前側車輪54FRが角度θの方向を向くように固定され、左後側車輪54BL及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されていてもよい。或いは、左前側車輪54FL及び左後側車輪54BLが角度θの方向を向くように固定され、右前側車輪54FR及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されていてもよい。或いは、左前側車輪54FLが角度θの方向を向くように固定され、右前側車輪54FR、左後側車輪54BL及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されていてもよい。
【0041】
本体部51に取り付けられる車輪54の数は3つであってもよい。この場合、例えば、右前側車輪54FR及び右後側車輪54BRに加え、上面視で本体部51の中央左側に左側車輪54Lが取り付けられていてもよい。そして、3つの車輪54の全てが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に固定されていてもよい。左側車輪54Lのみが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、右前側車輪54FR及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されていてもよい。或いは、右前側車輪54FR及び右後側車輪54BRが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、左側車輪54Lが進行方向を向くように固定されていてもよい。
【0042】
或いは、左前側車輪54FL及び左後側車輪54BLに加え、上面視で本体部51の中央右側に右側車輪54Rが取り付けられる構成であってもよい。そして、3つの車輪54の全てが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に固定されていてもよい。右側車輪54Rのみが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、左前側車輪54FL及び左後側車輪54BLが進行方向を向くように固定されていてもよい。或いは、左前側車輪54FL及び左後側車輪54BLが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、右側車輪54Rが進行方向を向くように固定されていてもよい。
【0043】
或いは、左後側車輪54BL及び右後側車輪54BRに加え、上面視で本体部51の中央前側に前側車輪54Fが取り付けられる構成であってもよい。そして、3つの車輪54の全てが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に固定されていてもよい。前側車輪54Fのみが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、左後側車輪54BL及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されていてもよい。
【0044】
或いは、左前側車輪54FL及び右前側車輪54FRに加え、上面視で本体部51の中央後側に後側車輪54Bが取り付けられる構成であってもよい。そして、3つの車輪54の全てが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように本体部51に固定されていてもよい。左前側車輪54FL及び右前側車輪54FRが本体部51の進行方向に対して角度θの方向を向くように固定され、後側車輪54Bのみが進行方向を向くように固定されていてもよい。
【0045】
また、本体部51は、端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けるように、アスファルトフィニッシャ100から延びるアーム(図示せず。)の先端に吊されていてもよい。この場合、アームの先端は、例えば、既設舗装体APの表面AP2上の点の真上になるように位置付けられる。加熱装置50の自重によって端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けるようにするためである。車輪54は省略されてもよく、1つ、2つ、3つ、或いは4つ以上であってもよい。
【0046】
この構成により、本体部51は、車輪54が角度θの方向を向くように固定された場合と同様に、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する際に、端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けることができる。端面接触部52は、本体部51の自重により端面AP1の方向に移動しようとするためである。
【0047】
また、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って移動することができる。すなわち、加熱部と端面AP1との距離を一定に維持できる。本体部51が端面AP1から遠ざかろうとする動きは、本体部51の自重による動きによって相殺されるためである。また、本体部51が端面AP1に近づこうとする動きは、端面AP1と端面接触部52との接触によって制限されるためである。そのため、アスファルトフィニッシャ100が蛇行していたり、或いは、既設舗装体APがカーブに沿って湾曲していたりしても、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って移動することができる。
【0048】
次に、図5を参照し、加熱装置50の別の構成例について説明する。図5は、加熱装置50の別の構成例を示す概略図であり、図4に対応する。具体的には、図5(A)は加熱装置50の正面図を示し、図5(B)は加熱装置50の上面図を示す。
【0049】
図5の加熱装置50は、本体部51の前端(+X側端)及び後端(−X側端)において右端(−Y側端)寄りに車輪54が取り付けられ且つ左端(+Y側端)に端面接触部52が取り付けられている点で図4の加熱装置50と異なる。図4の加熱装置50は、本体部51の前端及び後端において左右端に車輪54が取り付けられ且つ中央に端面接触部52が取り付けられている。
【0050】
そのため、図5の加熱装置50では、4つの車輪54の全てが既設舗装体APの表面AP2上を移動する。図4の加熱装置50では、左前側車輪54FL及び左後側車輪54BLが路盤RBの表面上を移動し、右前側車輪54FR及び右後側車輪54BRが既設舗装体APの表面AP2上を移動する。
【0051】
また、図5の加熱装置50では、左前側車輪54FL及び右前側車輪54FRが角度θの方向を向くように固定され、左後側車輪54BL及び右後側車輪54BRが進行方向を向くように固定されている。4つの車輪54の全てが角度θの方向を向くように固定されていてもよく、4つの車輪54のうちの1つ、2つ、或いは3つが角度θの方向を向くように固定されていてもよい。
【0052】
本体部51の前端及び後端において、車輪54が左端寄りに取り付けられ且つ端面接触部52が右端に取り付けられていてもよい。この場合、4つの車輪54の全てが路盤RBの表面上を移動する。
【0053】
この構成により、図5の加熱装置50は、図4の加熱装置50の場合と同様に、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する際に、端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けることができる。進行方向に対して角度θの方向を向く車輪54により、本体部51は、角度θの方向に進行しようとするため、すなわち、既設舗装体AP側に近寄ろうとするためである。実際には、本体部51は、既設舗装体APの端面AP1と端面接触部52との接触により右方向(−Y方向)への移動が制限されるため、前方(+X方向)に進行する。
【0054】
上述のように、既設舗装体APを加熱する加熱装置50は、本体部51と、本体部51に取り付けられ且つ既設舗装体APの端面AP1と接する端面接触部52とを有する。そのため、加熱部と既設舗装体APの端面AP1との距離の変動を抑制できる。例えば、加熱部と既設舗装体APの端面AP1との距離が過度に小さくなるのを防止できる。
【0055】
端面接触部52は、望ましくは、耐熱性の転動体又は耐熱性の摺動体で構成されている。そのため、端面接触部52と既設舗装体APの端面AP1との間に発生する摩擦力の増大を抑えることができ、その摩擦力によって加熱装置50の進行が妨げられてしまうのを抑制或いは防止できる。
【0056】
本体部51は、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する際に、端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けるように構成されている。例えば、車輪54は、進行方向に対して斜めを向くように本体部51に取り付けられている。或いは、本体部51は、端面接触部52を既設舗装体APの端面AP1に押し付けるように吊されていてもよい。具体的には、アスファルトフィニッシャ100から延びるアームの先端に吊されていてもよい。そのため、加熱部と既設舗装体APの端面AP1との距離の変動を更に抑制できる。例えば、加熱部と既設舗装体APの端面AP1との距離を一定に維持できる。
【0057】
加熱装置50は、本体部51に取り付けられ且つ既設舗装体APの端面AP1を引っ掻くスカリファイヤ57を有していてもよい。スカリファイヤ57は、加熱装置50による加熱によって軟らかくなった既設舗装体APの端面AP1を掻きほぐすことができる。そのため、既設舗装体APと新設舗装体との接着力を強化できる。その結果、加熱装置50は、舗装材が適切に噛み合ったジョイント部を形成できる。
【0058】
スカリファイヤ57は、望ましくは、既設舗装体APの端面AP1に沿って進行する本体部51の後端に配置されている。例えば、本体部51の後側に取り付けられた車輪54の近傍に配置されている。既設舗装体APの端面AP1が最も加熱された状態で端面AP1を掻きほぐすことができるようにするためである。
【0059】
スカリファイヤ57は、望ましくは、既設舗装体APの端面AP1に沿って延びる本体部51の長手方向において加熱部と重複しないように配置されている。耐熱シート55による加熱空間の遮断が容易に実現されるようにするためである。
【0060】
加熱装置50は、本体部51に取り付けられ且つスカリファイヤ57を既設舗装体APの端面AP1に向けて付勢する付勢部56を有していてもよい。より確実にスカリファイヤ57を既設舗装体APの端面AP1に押し付けるためである。また、付勢部56は、既設舗装体APの端面AP1にある突起部等によってスカリファイヤ57が外向き(+Y方向)の力を受けた場合、スカリファイヤ57を外方向(+Y方向)に逃がすことができる。これにより、付勢部56は、スカリファイヤ57に過度の力が作用してしまうのを防止できる。そのため、スカリファイヤ57の損傷を防止できる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施例に制限されることはない。上述した実施例は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。
【0062】
例えば、上述の実施例では、加熱装置50は、追従部としての端面接触部52を用いて既設舗装体APの端面AP1に対して加熱部を一定の距離で追従させている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。追従部は、例えば、車輪54の角度θをアクティブに制御する構成(例えば、車輪54の取り付け角度θを動的に変化させる機構)であってもよい。この場合、追従部は、超音波センサ、ミリ波レーダ、レーザレーダ、カメラ等の距離測定部で端面AP1と加熱部との距離を測定し、その測定結果に基づいて角度θを動的に変化させてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・トラクタ 2・・・ホッパ 3・・・スクリード 3A・・・レベリングアーム 5・・・後輪 6・・・前輪 30・・・前側スクリード 31・・・後側スクリード 40・・・サイドプレート 50、50F、50R・・・加熱装置 51・・・本体部 51a、51b・・・金属板ステー 52・・・端面接触部 53・・・車輪高さ調整機構 53G・・・長孔 53H・・・丸孔 53S・・・金属板 54・・・車輪 55・・・耐熱シート 56・・・付勢部 57・・・スカリファイヤ 60・・・牽引部材 61・・・ワイヤ 100・・・アスファルトフィニッシャ AP・・・既設舗装体 AP1・・・端面 AP2・・・表面 CV・・・コンベア RB・・・路盤 SC・・・スクリュ
図1
図2
図3
図4
図5