(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
1.チタン材
まず、本実施形態に係るチタン材について説明する。
本実施形態に係るチタン材は、基材であるチタンの表面に、酸化チタン層が形成されているチタン材である。すなわち、チタン材は、基材と当該基材の表面に形成された酸化チタン層とを有する。そして、チタン材の表面に含まれる元素を分析するグロー放電分光分析法(Glow Discharge Spectroscopy、GDS)によって測定される酸化チタン層の厚みは、1.0μm以上5.0μm以下である。酸化チタン層に含まれるチタン酸化物のうち、X線回折法で最大強度を示すチタン酸化物はアナターゼ型のTiO
2である。
【0010】
また、チタン材の表面粗さについては、例えば表面粗さ測定機等によって求められ、当該チタン材の算術平均粗さRaは0.1μm以上2.0μm以下である。なお、算術平均粗さRaは、JIS B 0601で定義される表面性状パラメータの一つである。これにより、本実施形態に係るチタン材は、L
*a
*b
*色空間で、L
*:60.0以上、a
*:0以上3.0以下、b
*:0以上4.0以下で表わされる色調を有し、金属色に近い銀白色の外観を呈する。本発明のチタン材が銀白色の外観を呈するメカニズムについては不明な点もあるが、透明な酸化チタン層の厚みが干渉色を生じない程度で、かつ、表面が平滑であるため、基材であるチタンの金属色を呈するためと考えられる。
【0011】
1.1 基材(純チタン又はチタン合金)
チタン材の基材には、純チタン又はチタン合金を用いることができる。なお、純チタン及びチタン合金を総称してチタンと称する。加工性が要求される場合は、不純物を低減したJIS1種(たとえば、JIS H 4600)の工業用純チタンが好適である。また、強度が必要とされる場合は、JIS2種〜4種の工業用純チタンについても適用できる。チタン合金としては、例えば、耐食性を向上させるために、微量の貴金属系の元素(パラジウム、白金、ルテニウム等)を添加したJIS11種から23種等や、Ni、Moを含むASTM B265 Grade12等が挙げられる(耐食チタン合金)。また、JIS H 4600の板及び条に限らず、管や棒線を使用してもよい。
【0012】
ただし、Ti−6Al−4V系合金のように、アルミニウムを多量に含有する場合、耐食性が劣化し、耐変色性に悪影響を及ぼす場合がある。そのため、チタン合金の表面に酸化チタン層を形成する場合、予め、用途に対する合金元素の影響を調査し、基材に応じて、各層の組成、厚みを適宜調整することが推奨される。
【0013】
1.2 酸化チタン層
上述したように基材の表面には酸化チタン層が形成されている。酸化チタン層に含まれるチタン酸化物は光触媒活性に影響し、また、酸化チタン層の厚み及び表面性状はチタン材の色調に影響を与える。特に本実施形態に係るチタン材の酸化チタン層は、以下の構成を有することにより、光触媒活性を有し、銀白色の外観を呈するチタン材を実現する。また、このような酸化チタン層は、基材への密着性に優れている。本実施形態において酸化チタン層は、陽極酸化処理、大気焼鈍を、順次、施すことによって形成される。
【0014】
(酸化チタン層の結晶構造)
酸化チタン層に存在し得るTiO
2の結晶構造は、例えば、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型、非晶質が挙げられ、酸化チタン層は、このうちアナターゼ型TiO
2を主体とする。このような酸化チタン層の結晶構造により、チタン材は光触媒活性を発現することができる。アナターゼ型TiO
2を主体とする酸化チタン層は、チタンに陽極酸化処理を施した後、大気中で熱処理を施すことによって形成される。
【0015】
また、酸化チタン層に存在する各結晶構造および非晶質のチタン酸化物の同定、定量は、X線回折法によって行うことができる。そして、酸化チタン層が、アナターゼ型を主体とする場合、X線回折法で最大強度を示すチタン酸化物がアナターゼ型のTiO
2となる。ブルッカイト型や非晶質のTiO
2は大気中での熱処理によって減少しており、この場合酸化チタン層に存在する結晶構造は、ルチル型、アナターゼ型が主体となる。したがって、X線回折法では、回折角20〜30°の範囲でピーク強度(回折ピークの高さ)を比較し、ルチル型、アナターゼ型のうち、ピーク強度が高い方が主体となる結晶構造であると考えてよい。
【0016】
(酸化チタン層の厚み)
酸化チタン層の厚みは、グロー放電分光分析法(GDS)によって測定することができる。GDSでは、チタン材の表面から、O(酸素)及びTiの分析を行う。酸化チタン層の厚みは、GDSによって測定されるO濃度によって求める。具体的には、最表面から、O濃度が最表面のO濃度に対して半減した部位までの深さ方向の距離を酸化チタン層の厚みとする。なお、上述した酸化チタン層の厚みは、測定部位における平均の厚みをいう。
【0017】
また、酸化チタン層の厚みは、光触媒活性の効果が大きくなり、また、干渉色を生じないようにするため、少なくとも1.0μm以上が必要である。酸化チタン層の厚みの上限は、5.0μmを超えると剥離し易くなるため、5.0μmを上限とする。酸化チタン層の厚みは、上述した範囲内であればよいが、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは3.0μnm以上である。また、酸化チタン層の厚みは、好ましくは4.5μm以下、より好ましくは4.0μm以下である。
【0018】
(チタン材の表面性状)
本実施形態に係るチタン材は、陽極酸化処理および熱処理によって形成された酸化チタン層を有しており、銀白色を呈するように表面性状は平滑である。チタン材の表面性状は、算術平均粗さRaによって評価することができる。チタン材の表面粗さは、表面粗さ測定機によって測定し、JIS B 0633に準拠して評価すればよい。
【0019】
チタン材の表面の算術平均粗さRaを2.0μm以下にすることにより、光の散乱が抑制され、チタン材の外観を金属色に近い銀白色にすることができる。一方、算術平均粗さRaの下限は、酸化チタン層の密着性を確保するため、0.1μmとする。酸化チタン層の表面の算術平均粗さRaの下限は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上とする。この場合、チタン材の表面の算術平均粗さRaは、例えば、基材であるチタンの表面に機械研磨を施すことによって制御することができる。酸化チタン層の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは1.7μm以下、より好ましくは1.8μm以下であると、チタン材の外観をより確実に銀白色とすることができる。一方で、基材であるチタンの表面に圧延ロールなどによって転写された凹凸を除去しない場合は、チタン材の表面の算術平均粗さRaの下限は1.0μmであってもよい。酸化チタン層の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは1.2μm以上、より好ましくは1.4μm以上であると、酸化チタン層の密着性を向上させることができる。この場合、チタン材の表面の算術平均粗さRaは、例えば、圧延ロールの表面仕上げによって、チタン材の表面に転写される凹凸を調整することにより、制御することが可能である。
【0020】
1.3 チタン材の外観(L
*a
*b
*色空間)
本発明では、チタン材の測色をJIS K 5600−4−5に準じて行い、色調をJIS K 5600−4−4に準じて、L
*a
*b
*色空間の数値範囲で定量的に定義する。L
*a
*b
*色空間で、L
*:60.0以上、a
*:0以上3.0以下、b
*:0以上4.0以下となる場合、銀白色の外観を呈するということができる。
【0021】
L
*の下限は、60.0よりも低くなると、暗すぎる色調になるため、60.0を下限とする。適切な明るさの色調を得るために、L
*は、好ましくは61.0以上、より好ましくは62.0以上である。チタン材の色調は明るいほど好ましいのでL
*の上限は特に限定されず、72.0以下であってもよい。ただし、白色が強くなり過ぎないように、L
*が68.0以下であることが好ましい。L
*は、より好ましくは67.0以下、より一層好ましくは66.0以下である。
【0022】
また、a
*は、0未満であると緑色系統の色調が強くなるため、下限を0とする。好ましくは0.5以上とする。一方、a
*が3.0を超えると赤色系統の色調が強くなるため、上限を3.0以下とする。好ましくは2.5以下とする。また、b
*は、0未満になると青色系統の色調が強くなるため、下限を0とする。好ましくは0.5以上とする。一方、b
*が4.0を超えると黄色系統の色調が強くなるため、上限を4.0以下とする。好ましくは3.5以下とする。
【0023】
2. チタン材の製造方法
本実施形態に係るチタン材の製造方法は、チタンの表面に、pH5.0以上の水溶液中で、100〜200Vの電圧を繰り返して印加する陽極酸化処理工程と、その後に大気中で施す熱処理工程と、を含む。
【0024】
2.1 基材(チタン)の製造方法
まず、上記各工程の説明に先立ち、基材としてのチタンの製造方法について説明する。光触媒にされる純チタン又はチタン合金は、一般には薄板形状であり、冷間圧延によって所定の厚みまで圧延された後、焼鈍処理が施される。冷間圧延では、ダル仕上げ、ヘアーライン仕上げ等の各種の表面仕上げを適用することができる。大気中で焼純処理を施した場合は、酸洗によって酸化スケールを除去すればよい。真空中で焼鈍すると、焼鈍時に形成するスケール除去等の工程を省略することができる。後述する陽極酸化処理工程の前に基材の表面に、機械研磨、乾式研磨、化学研磨などを施してもよい。
【0025】
光触媒活性の可視光応答性が求められる場合は、基材であるチタンの表面の炭素濃度を高めることが好ましく、潤滑油に含まれる炭素をチタンの表面に侵入させるように、冷間圧延の圧下率を高めることが好ましい。また、冷間圧延後に浸炭処理を施してもよい。冷間圧延後に酸洗を施す際には溶削量を制限することが好ましい。真空焼鈍処理を施す場合は、表面の炭素濃度を低下させないように、加熱温度を低温にすることが好ましい。
【0026】
焼鈍温度は、要求される基材の機械特性に応じて、適宜、調整することができるが、500℃以上が好ましい。焼鈍温度の上限は特に設けないが、熱処理温度を高めることは、インプット熱量を増大させる必要があり、経済的な観点から1200℃未満が望ましい。大気焼鈍は連続焼鈍、バッチ焼鈍の何れでもよく、通常の条件で行えばよい。真空焼鈍を行う場合は、表面の炭素が過度に拡散しないように、1000℃以下の温度で行うことが好ましい。より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは700℃以下である。真空焼鈍の場合、処理時間は3時間以上が好ましく、より好ましくは5時間以上である。保持時間の上限には特に制限はないが、生産性の観点から48時間以下が好ましい。
【0027】
なお、チタンとしては、上述した方法によって製造されたものには限定されず、例えば予め製品として存在するものを用いてもよい。
【0028】
2.2 陽極酸化処理工程
次いで、チタンの表面に、pHが5.0以上の水溶液中で、電圧を100V以上200V以下に上昇させた後、0V以上50V以下に降下させる電圧印加を3回以上繰り返して行う陽極酸化処理を施す。すなわち、陽極酸化処理工程では、水溶液中でチタン基材と対極(例えばステンレス鋼)とを直流電源で電気的に接続して、チタン基材を正極として100V以上200V以下の電圧を負荷した後、電圧を除去する電圧印加を3回以上繰り返して行う。電圧の上昇、降下のパターン、すなわち電圧波形は、特に限定されず、例えば、矩形波形、鋸歯波形であってもよい。
【0029】
pHが5.0以上の水溶液は、特に限定されるものではなく、炭酸塩、りん酸塩および硫酸塩から選択される1種又は2種以上を含む水溶液であることができる。具体的には、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、りん酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよびりん酸アンモニウムから選択される1種又は2種以上を含む水溶液を用いることができる。このうち、炭酸塩を含む水溶液が好ましく、pHは7.0以上が好ましい。また、溶液における炭酸塩、りん酸塩および硫酸塩の合計の濃度は、特に限定されないが、例えば1g/l以上50g/l以下、好ましくは3g/l以上40g/l以下である。
【0030】
また、上述したように水溶液のpHは、5.0以上である。水溶液のpHが5.0未満であると、厚みが1.0μm以上の酸化チタン層を形成した場合、酸化チタン層の凹凸が大きくなり、チタン材の表面の算術平均粗さRaが2.0μmを超え、チタン材の外観が暗くなり、金属色に近い銀白色にすることができない。また、酸化チタン層に亀裂が発生して密着性が低下するという問題が生じることがある。
当該水溶液のpHは、好ましくは5.5以上、より好ましくは6.0以上である。pHの調整は、上述した炭酸塩、りん酸塩、硫酸塩の1種又は2種以上の濃度を調節することによって行うことができるが、適宜、塩基を添加して行ってもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルジジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。また、当該水溶液のpHの上限は特に限定されるものではなく、14.0であってもよい。ただし、操業上の観点から、当該水溶液のpHは12.0以下が好ましく、より好ましくは10.0以下である。
【0031】
また、陽極酸化処理における電圧(電圧上昇後、降下前)は、1.0μm以上の厚みの酸化チタン層を得るために、100V以上とする。好ましい下限は120V以上、より好ましくは140V以上である。一方、電圧は200Vを超えると酸化チタン層の凹凸が大きくなるため、200V以下とする。好ましい上限は180V以下、より好ましくは160V以下である。このように、電圧を100V以上200V以下の範囲に印加することにより、酸化チタン層が成長する。
【0032】
また、上記の電圧維持後、電圧を0V以上50V以下まで降下させる。このように電圧を降下させるのは、酸化チタン層の残留応力の蓄積を緩和し、密着性を向上させるためである。残留応力は電圧を100V以上200V以下とした際に、酸化チタン層が成長することによって増加するが、降下後の電圧を50V以下とすることによって緩和される。降下後の電圧は、好ましくは30V以下、より好ましくは20V以下である。降下後の電圧は、低いほど好ましいが、正極と陰極とを逆にする必要はないので、降下後の電圧を0V以上とする。
【0033】
陽極酸化処理は、100V以上200V以下への上昇及び0V以上50V以下への降下(電圧印加)を3回以上繰り返して行う。この際、電圧変化率(上昇率、下降率)や、電圧印加の時間を制限する必要はなく、また電圧波形は、例えば、矩形波形、台形波形、三角波形、鋸歯波形、正弦波形であってもよい。また、電圧印加の回数は、1.0μm以上の厚みの酸化チタン層を形成させるために3回以上とする。好ましくは、4回以上である。上限は、特に限定されないが、酸化チタン層が厚くなり過ぎないように、例えば20回以下、好ましくは10回以下とすることができる。
【0034】
このような電圧の上昇および降下を伴う電圧印加を繰り返し行うことによって、酸化チタン層に生じる残留応力が緩和され、密着性を向上させることができる。そして、基材の表面性状の調整、印加電圧、電圧印加の繰り返し数を調整することにより、上述したような表面粗さおよび厚みの酸化チタン層が形成される。
【0035】
2.3 熱処理工程
陽極酸化処理工程の後、チタンの表面に形成された非晶質の酸化チタンをアナターゼ型のTiO
2にして、光触媒活性を得るため、チタンを大気中において350℃以上750℃以下の温度で48時間以下の時間保持する。
熱処理の温度は、アナターゼ型のTiO
2を主体のチタン酸化物とする酸化チタン層を形成させるため、350℃以上とする。熱処理の温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上である。一方、熱処理の750℃を超えると、ルチル型のTiO
2が増加し、酸化チタン層の主体のチタン酸化物がアナターゼ型のTiO
2にはならず、光触媒活性が低下するため、750℃を上限とする。熱処理の温度は、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下である。
【0036】
チタン材の温度を350℃以上750℃以下の温度に到達させると、主体のチタン酸化物をアナターゼ型のTiO
2とする酸化チタン層を形成させることができるので、熱処理の時間の下限は特に限定されるものではない。オンラインで熱処理を行う場合、チタン材の温度が上記の温度範囲内に到達した直後に冷却を開始することができるので、熱処理の時間は0分でもよい。しかしながら、熱処理の時間(保持の時間)は十分にアナターゼ型のTiO
2を形成させるために、1分以上とすることができる。熱処理の時間は、好ましくは2分以上、より好ましくは3分以上である。熱処理の時間の上限は、バッチ焼鈍を行う場合、生産性の観点から48時間以下とする。熱処理の時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。オンラインで熱処理を行う場合、熱処理の時間は5分以下であってもよい。
【0037】
以上の各工程を経ることにより、上述したチタン材を製造することができる。上述したように得られるチタン材は、密着性に優れ、光触媒活性を有する酸化チタン層を有しており、銀白色の外観を呈する。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係るチタン材及びチタン材の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係るチタン材及びチタン材の製造方法のあくまでも一例であって、本発明が、下記の例に限定されるものではない。
【0039】
1. チタン材の製造
表1および表2に示す種類及び表面仕上げの純チタン及びチタン合金を基材とし、表3に示す何れかの条件(製造法No.)の陽極酸化処理及び熱処理処理を施し、基材であるチタンを製造した。表1および表2では、純チタンの種類をJIS H 4600に準じて、「純チタン1種」、「純チタン2種」、「純チタン3種」、「純チタン4種」と表記している。チタン合金の種類は、JIS H 4600に準ずるものは、「JIS11種」、「JIS12種」、「JIS13種」、「JIS21種」、「JIS60種」、「JIS60E種」と表記し、ASTM B265 Grade12を「ASTMGr.12」と表記している。なお、表1および表2には基材の表面仕上げを併記した。
【0040】
陽極酸化処理には、蒸留水に、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、りん酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、りん酸アンモニウムの何れかを加えて、表2に示す濃度に調整した水溶液を用いた。水溶液のpHは、適宜、水酸化ナトリウムを加えて調整した。陽極酸化処理の電圧印加は矩形波形とし、表3に示す印加電圧、降下電圧、繰り返し数とした。陽極酸化処理を施した後、試験片を水洗し、乾燥して、表3に示す条件で熱処理を施した。なお、熱処理は大気中での連続焼鈍またはバッチ焼鈍である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
2. 評価
2.1 物性評価
各例にかかるチタン材の酸化チタン層の厚みをGDSによって測定し、X線回折法によって酸化チタン層の同定を行った。また、チタン材の算術平均粗さRaは、表面粗さ測定機によって測定し、JIS B 0633に準拠して評価した。密着性の評価は、カッターを用いて各例にかかるチタン材の表面に碁盤目状の切り込みを入れ、その後、テープを貼り付けて剥がしたときに酸化チタン層が剥がれた面積で評価した。酸化チタン層が全く剥がれなかった場合を○、剥がれたが半分以上の面積は剥がれなかった場合を△、半分以上の面積が剥がれた場合を×とした。次に、各例にかかるチタン材から試料を採取し、JIS Z 5600−4−5に準拠して測色を行い、JIS K 5600−4−4に準じて、L
*a
*b
*色空間の各座標(L
*、a
*、b
*)を求めた。
【0045】
2.2 光触媒活性評価
光触媒活性の評価は、幅15mm、長さ25mm、厚み0.4mmの試験片(各例にかかるチタン材)を用いて行った。試験片の板面を上に向けて上蓋付きの透明プラスチックケースに挿入し、0.1Mのヨウ化カリウム溶液50ccを入れて、上部から15Wのブラックライト2本(東芝ライテック製、FL−15BLB−A)を30分間照射し、照射後、吸光光度計を用いて287nmでの吸収強度を測定した。更に、試験片を入れていない状態で、溶液の吸収強度を測定し、各例にかかるチタン材の測定値からブランクとして差し引き、その値を光触媒活性の評価に用いた。上記の評価試験は、20℃に設定した室内で実施した。
【0046】
表1、2に示すように、本発明にかかるチタン材(No.1〜49)は、外観が銀白色を呈し、酸化チタン層の密着性が良好で、かつ優れた光触媒活性を有していた。一方、表2に示すように、比較例に係るチタン材(No.101〜113)は、外観が銀白色でないか、または、酸化チタン層の密着性、光触媒活性に劣っていた。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。