(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
排気タービン過給機は、コンプレッサとタービンとが回転軸により一体に連結され、このコンプレッサ及びタービンがハウジング内に回転自在に収容されて構成されている。そして、排気ガスがハウジング内に供給され、タービンを回転することで回転軸が駆動回転し、コンプレッサを回転駆動する。コンプレッサは、外部から空気を吸入し、羽根車で加圧して圧縮空気とし、この圧縮空気を内燃機関などに供給する。
【0003】
このような排気タービン過給機において、コンプレッサが遠心式であり、タービンが軸流式である。コンプレッサは、軸方向から吸入した流体をブレードが圧縮して径方向に吐出することから、背面に圧縮空気の吐出圧が作用する。一方、タービンは、径方向から流入した流体によりタービン翼が回転して軸方向に排出することから、タービン翼に流体の流入圧が作用する。このとき、コンプレッサの背面に作用する吐出圧がタービンのタービン翼に作用する流入圧より大きいことから、回転軸は、タービン側からコンプレッサ側へのスラスト荷重が作用する。そのため、スラスト軸受は、このスラスト荷重を受け止めるための能力を確保する必要があり、大型化することで機械的な損失が発生し、過給機は、応答時のレスポンスが低下してしまうおそれがある。
【0004】
そのため、過給機のスラスト軸受として、磁気軸受を適用することが考えられている。
例えば、下記特許文献1に記載されたターボチャージャは、コンプレッサホイールの背面部に円板上永久磁石を固定する一方、固定側に電磁石を固定し、コンプレッサホイールと電磁石の相対位置を検出し、電磁石の制御回路を制御するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、コンプレッサホイールは、金属製である。特許文献1に記載されたターボチャージャのように、コンプレッサホイールの背面部に円板上永久磁石を固定し、固定側に電磁石を固定し、コンプレッサホイールと電磁石の相対位置に応じて電磁石の制御回路を制御すると、コンプレッサホイールが金属製(磁性体)であることから、電磁誘導により大きな渦電流が発生する。この渦電流は、コンプレッサホイールの回転方向とは逆方向のトルクを発生させることから、過給機の効率が損失してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制すると共に効率の低下を抑制する過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の過給機は、中空形状をなすハウジングと、前記ハウジングに回転自在に支持される回転軸と、前記回転軸における軸方向の一端部に設けられるタービンと、前記回転軸における軸方向の他端部に設けられる非金属性をなすコンプレッサと、前記コンプレッサの背面側に固定される第1磁力発生部材と、前記第1磁力発生部材に対向するように前記ハウジングに固定される第2磁力発生部材と、前記回転軸に作用するスラスト荷重に応じて前記第1磁力発生部材または前記第2磁力発生部材の磁力を制御する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、回転軸に作用するスラスト荷重に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を制御することで、回転軸に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができ、回転軸を適正に支持することができる。また、コンプレッサが非金属性であることから、電磁誘導により発生する渦電流を低減することができる。その結果、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制することができると共に、効率の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の過給機では、前記第1磁力発生部材と前記第2磁力発生部材のいずれか一方は、周方向に所定間隔で配置される複数の永久磁石であり、前記いずれか他方は、電磁石であることを特徴としている。
【0011】
従って、第1磁力発生部材と第2磁力発生部材の一方を周方向に所定間隔で配置する複数の永久磁石とすることで、複数の永久磁石により発生する渦電流を低減することができ、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の過給機では、前記複数の永久磁石は、非金属製の回転体に埋設されることを特徴としている。
【0013】
従って、複数の永久磁石を非金属製の回転体に埋設することで、部材のコンパクト化や装着性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の過給機では、前記制御装置は、前記コンプレッサに作用する圧力と前記タービンに作用する圧力に基づいて前記回転軸に作用するスラスト荷重を算出し、算出したスラスト荷重に応じて前記第1磁力発生部材または前記第2磁力発生部材の磁力を制御することを特徴としている。
【0015】
従って、コンプレッサに作用する圧力とタービンに作用する圧力との偏差に基づいて算出したスラスト荷重に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を制御することで、回転軸に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができる。
【0016】
本発明の過給機では、前記制御装置は、前記コンプレッサの軸方向位置に応じて前記第1磁力発生部材または前記第2磁力発生部材の磁力を制御することを特徴としている。
【0017】
従って、コンプレッサの軸方向位置に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を制御することで、回転軸に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができる。
【0018】
本発明の過給機では、前記制御装置は、前記コンプレッサに作用する圧力と前記タービンに作用する圧力に基づいて前記回転軸に作用するスラスト荷重を算出し、算出したスラスト荷重に応じて前記第1磁力発生部材または前記第2磁力発生部材の磁力を制御し、前記コンプレッサの軸方向位置が予め設定された許容範囲にないときに、前記コンプレッサの軸方向位置に応じて前記第1磁力発生部材または前記第2磁力発生部材の磁力を補正することを特徴としている。
【0019】
従って、コンプレッサに作用する圧力とタービンに作用する圧力に基づいて算出したスラスト荷重に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を制御し、コンプレッサの軸方向位置が許容範囲にないときに、コンプレッサの軸方向位置に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を補正することで、回転軸に作用するスラスト荷重を高精度に算出して回転軸に作用するスラスト荷重を適正に打ち消すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の過給機によれば、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制することができると共に、効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る過給機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の排気タービン過給機を表す全体構成図である。
【0024】
図1に示すように、排気タービン過給機11は、主に、タービン12と、コンプレッサ13と、回転軸14とにより構成され、これらがハウジング15内に収容されている。
【0025】
ハウジング15は、内部が中空に形成され、タービン12の構成を収容する第一空間部S1をなすタービンハウジング15Aと、コンプレッサ13の構成を収容する第二空間部S2をなすコンプレッサハウジング15Bと、回転軸14を収容する第三空間部S3をなすベアリングハウジング15Cとを有している。ベアリングハウジング15Cの第三空間部S3は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1とコンプレッサハウジング15Bの第二空間部S2との間に位置している。
【0026】
回転軸14は、タービン12側の端部がタービン側軸受であるジャーナル軸受21により回転自在に支持され、コンプレッサ13側の端部がコンプレッサ側軸受であるジャーナル軸受22により回転自在に支持され、且つ、スラスト軸受23により回転軸14が延在する軸方向への移動を規制されている。回転軸14は、軸方向における一端部にタービン12のタービンディスク24が固定されている。タービンディスク24は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1に収容され、外周部に軸流型をなす複数のタービン翼25が周方向に所定間隔で設けられている。また、回転軸14は、軸方向における他端部にコンプレッサ13のコンプレッサ羽根車26が固定されている。コンプレッサ羽根車26は、コンプレッサハウジング15Bの第二空間部S2に収容され、外周部に複数のブレード27が周方向に所定間隔で設けられている。
【0027】
タービンハウジング15Aは、タービン翼25に対して排気ガスの入口通路31と排気ガスの出口通路32が設けられている。そして、タービンハウジング15Aは、入口通路31とタービン翼25との間にタービンノズル33が設けられており、このタービンノズル33により静圧膨張された軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、タービン12を駆動回転することができる。コンプレッサハウジング15Bは、コンプレッサ羽根車26に対して吸入口34と圧縮空気吐出口35が設けられている。そして、コンプレッサハウジング15Bは、コンプレッサ羽根車26と圧縮空気吐出口35との間にディフューザ36が設けられている。コンプレッサ羽根車26により圧縮された空気は、ディフューザ36を通って排出される。
【0028】
そのため、この排気タービン過給機11は、エンジン(図示せず)から排出された排ガスによりタービン12が駆動し、タービン12の回転が回転軸14に伝達されてコンプレッサ13が駆動し、このコンプレッサ13が燃焼用気体を圧縮してエンジンに供給する。従って、エンジンからの排気ガスは、排気ガスの入口通路31を通り、タービンノズル33により静圧膨張され、軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、複数のタービン翼25が固定されたタービンディスク24を介してタービン12が駆動回転する。そして、複数のタービン翼25を駆動した排気ガスは、出口通路32から外部に排出される。一方、タービン12により回転軸14が回転すると、一体のコンプレッサ羽根車26が回転し、吸入口34を通って空気が吸入される。吸入された空気は、コンプレッサ羽根車26で加圧されて圧縮空気となり、この圧縮空気は、ディフューザ36を通り、圧縮空気吐出口35からエンジンに供給される。
【0029】
第1実施形態の排気タービン過給機11にて、タービン12とコンプレッサ13と回転軸14は、スラスト軸受23により支持されており、このスラスト軸受23は、磁気軸受となっている。
【0030】
即ち、コンプレッサ13にて、少なくともコンプレッサ羽根車26は、非金属により形成されている。ここで、非金属としては、プラスチック、樹脂、セラミックなどの非磁性体が適用される。このコンプレッサ13にて、コンプレッサ羽根車26は、背面26aに第1磁力発生部材としての回転体41が固定されている。一方、コンプレッサハウジング15Bは、コンプレッサ羽根車26の背面26aに対向する壁面15Baに第2磁力発生部材としての電磁石42が固定されている。ここで、回転体(第1磁力発生部材)41と電磁石(第2磁力発生部材)42とは、回転軸14の軸方向に対向して配置されている。
【0031】
図2は、コンプレッサに固定される回転体の正面図、
図3は、コンプレッサに固定される回転体の変形例を表す正面図である。
【0032】
回転体41は、
図1及び
図2に示すように、非金属性の回転容器51内に周方向に所定間隔(好ましくは、等間隔)で複数の永久磁石52が埋設されて構成されている。この場合、永久磁石52を円板形状に形成する一方、回転容器51の平面部に周方向に所定間隔で複数の開口穴53を形成し、各永久磁石52をこの開口穴53にそれぞれ嵌合して固定すればよい。また、回転体41は、中心部に回転軸14が貫通する貫通孔54が設けられている。
【0033】
なお、回転体41は、上述した構成に限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、回転体46は、非金属性の回転容器56内に周方向に1個の永久磁石57が埋設されて構成されている。この場合、永久磁石57をリング形状に形成する一方、回転容器56の平面部にリング形状をなす開口穴58を形成し、永久磁石57をこの開口穴58に嵌合して固定すればよい。また、回転体46は、中心部に回転軸14が貫通する貫通孔59が設けられている。
【0034】
一方、電磁石42は、中心部に回転軸14が貫通する貫通孔が設けられたリング形状をなしている。電磁石42は、後述する制御装置により付与する電流を調整することで、発生する磁力の大きさを調整することができる。本実施例にて、回転体41の永久磁石52(57)と電磁石42は、対向する面が同極となるように配置され、永久磁石52(57)と電磁石42とは、互いに離間する方向に磁力が作用する。
【0035】
ここで、スラスト軸受23により回転軸14の軸受制御について説明する。
図4は、排気タービン過給機の制御系統を表すブロック図、
図5は、排気タービン過給機のスラスト荷重制御を表すフローチャートである。
【0036】
図1及び
図4に示すように、エンジン10は、コンプレッサ13から圧縮空気が供給され、排ガスがタービン12に排出される。制御装置65は、回転軸14に作用するスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御する。コンプレッサ13にて、吸入口34の吸入圧力を計測する第1圧力センサ61と、圧縮空気吐出口35の吐出圧力を計測する第2圧力センサ62が設けられている。また、タービン12にて、入口通路31の入口圧力を計測する第3圧力センサ63と、出口通路32の出口圧力を計測する第4圧力センサ64が設けられている。制御装置65は、第1圧力センサ61から吸入圧力が入力されると共に、第2圧力センサ62から吐出圧力が入力される。また、制御装置65は、第3圧力センサ63から入口圧力が入力されると共に、第4圧力センサ64から出口圧力が入力される。
【0037】
制御装置65は、吸入圧力と吐出圧力の偏差に基づいてコンプレッサ羽根車26の背面26aに作用する圧力を算出し、コンプレッサ13から回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。また、制御装置65は、入口圧力と出口圧力の偏差に基づいてタービンディスク24のタービン翼25に作用する圧力を算出し、タービン12から回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。この場合、コンプレッサ13は遠心式であることから、コンプレッサ13から回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧される荷重である。一方、タービン12は、軸流式であることから、タービン12から回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がタービン12側に押圧される荷重である。そして、コンプレッサ13から回転軸14に作用するスラスト荷重は、タービン12から回転軸14に作用するスラスト荷重よりも過大であることから、回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧される荷重となる。
【0038】
そのため、制御装置65は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧されるスラスト荷重が打ち消されるように、スラスト軸受23の電磁石42の磁力を制御する。即ち、回転軸14に作用するスラスト荷重と同等の押圧力(吸引力)が発生するように、電磁石42に付与する電流値を制御する。この場合、回転軸14に作用するスラスト荷重と電磁石42の制御量(電流値)との関係は、予め実験や解析などにより求めて特性マップを作成し、制御装置65は、この特性マップを用いて電磁石42の制御量を出力する。
【0039】
具体的に説明すると、
図5に示すように、ステップS11にて、制御装置65は、各圧力センサ61,62,63,64から各計測値を取得する。ステップS12にて、制御装置65は、各圧力センサ61,62,63,64から各計測値に基づいて回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。ステップS13にて、制御装置65は、算出したスラスト荷重に応じて電磁石42の制御量、つまり、電磁石42に付与する電流値を算出する。そして、ステップS14にて、制御装置65は、電磁石42を制御量により制御、つまり、電磁石42に所定の電流値を付与する。すると、電磁石42の吸引力により回転体41(永久磁石52)を介してコンプレッサ13が接近することで、回転軸14がタービン12側に押圧される。回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧される荷重であり、スラスト軸受23によりハウジング15に対して回転軸14をタービン12側に押圧する荷重を作用させる。その結果、回転軸14は、所定の軸方向位置に維持されることとなる。
【0040】
このように第1実施形態の過給機にあっては、中空形状をなすハウジング15と、ハウジング15に回転自在に支持される回転軸14と、回転軸14における軸方向の一端部に設けられるタービン12と、回転軸14における軸方向の他端部に設けられる非金属製をなすコンプレッサ13と、コンプレッサ13の背面側に固定される第1磁力発生部材と、第1磁力発生部材に対向するようにハウジング15に固定される第2磁力発生部材と、回転軸14に作用するスラスト荷重に応じて第1磁力発生部材または第2磁力発生部材の磁力を制御する制御装置65とを設けている。
【0041】
本実施形態では、第1磁力発生部材として、永久磁石52,57を有する回転体41,46をコンプレッサ13に固定し、第2磁力発生部材として、電磁石42をハウジング15に固定している。
【0042】
従って、回転軸14に作用するスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御することで、回転軸14に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができ、回転軸14を適正に支持することができる。また、コンプレッサ13が非金属性であることから、電磁誘導により発生する渦電流を低減することができる。その結果、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制することができると共に、効率の低下を抑制することができる。
【0043】
第1実施形態の過給機では、複数の永久磁石52,57を周方向に所定間隔で配置した回転体41,46をコンプレッサ13に固定し、電磁石42をハウジング15に固定している。従って、複数の永久磁石52,57を周方向に所定間隔で配置することで、複数の永久磁石52,57により発生する渦電流を低減することができ、スラスト荷重に対する機械的な損失の発生を抑制することができる。
【0044】
第1実施形態の過給機では、複数の永久磁石52,57を非金属製の回転容器51,56に埋設している。従って、部材のコンパクト化や装着性の向上を図ることができる。
【0045】
第1実施形態の過給機では、制御装置65は、コンプレッサ13に作用する圧力とタービン12に作用する圧力に基づいて回転軸14に作用するスラスト荷重を算出し、算出したスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御する。従って、回転軸14に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができる。
【0046】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の排気タービン過給機の制御系統を表すブロック図、
図7は、排気タービン過給機のスラスト荷重制御を表すフローチャートである。なお、本実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態と同様であり、
図1を用いて説明し、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図1及び
図6に示すように、制御装置65は、回転軸14に作用するスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御する。コンプレッサ13にて、コンプレッサ羽根車26の軸方向位置、つまり、回転体41と電磁石42との隙間量を計測する位置センサ66が設けられている。制御装置65は、位置センサ66からコンプレッサ羽根車26の軸方向位置(回転体41と電磁石42との隙間量)が入力される。
【0048】
制御装置65は、回転体41と電磁石42との隙間量と予め設定された適正隙間量との偏差を算出し、この偏差に基づいてスラスト軸受23の電磁石42の磁力を制御する。即ち、制御装置65は、回転体41と電磁石42との隙間量と適正隙間量との偏差が0となるように、スラスト軸受23の電磁石42の磁力を制御、つまり、電磁石42に付与する電流値を制御する。この場合、実際の隙間量と適正隙間量との偏差と電磁石42の制御量(電流値)との関係は、予め実験や解析などにより求めて特性マップを作成し、制御装置65は、この特性マップを用いて電磁石42の制御量を出力する。
【0049】
具体的に説明すると、
図7に示すように、ステップS21にて、制御装置65は、位置センサ66から計測値を取得する。ステップS22にて、制御装置65は、位置センサ66から計測値に基づいて電磁石42の制御量、つまり、電磁石42に付与する電流値を算出する。そして、ステップS23にて、制御装置65は、電磁石42を制御量により制御、つまり、電磁石42に所定の電流値を付与する。すると、電磁石42の吸引力により回転体41(永久磁石52)を介してコンプレッサ13が接近することで、回転軸14がタービン12側に押圧される。回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧される荷重であり、回転軸14が正規の位置よりコンプレッサ13側に移動している。そのため、スラスト軸受23によりハウジング15に対して回転軸14をタービン12側に押圧する荷重を作用させる。その結果、回転軸14は、正規の位置に戻されて所定の軸方向位置に維持されることとなる。
【0050】
このように第2実施形態の過給機にあっては、制御装置65は、コンプレッサ13の軸方向位置に応じて電磁石42の磁力を制御する。従って、回転軸14に作用するスラスト荷重を打ち消すことができ、過大なスラスト荷重を適正に受け止めることができる。
【0051】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の排気タービン過給機の制御系統を表すブロック図、
図9は、排気タービン過給機のスラスト荷重制御を表すフローチャートである。なお、本実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態と同様であり、
図1を用いて説明し、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図1及び
図8に示すように、制御装置65は、回転軸14に作用するスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御する。コンプレッサ13にて、吸入口34の吸入圧力を計測する第1圧力センサ61と、圧縮空気吐出口35の吐出圧力を計測する第2圧力センサ62が設けられている。また、タービン12にて、入口通路31の入口圧力を計測する第3圧力センサ63と、出口通路32の出口圧力を計測する第4圧力センサ64が設けられている。制御装置65は、吸入圧力と吐出圧力の偏差に基づいてコンプレッサ羽根車26の背面26aに作用する圧力を算出し、コンプレッサ13から回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。また、制御装置65は、入口圧力と出口圧力の偏差に基づいてタービンディスク24のタービン翼25に作用する圧力を算出し、タービン12から回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。
【0053】
制御装置65は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧されるスラスト荷重が打ち消されるように、スラスト軸受23の電磁石42の磁力を制御する。即ち、回転軸14に作用するスラスト荷重と同等の押圧力(吸引力)が発生するように、電磁石42に付与する電流値を制御する。
【0054】
また、コンプレッサ13にて、コンプレッサ羽根車26の軸方向位置、つまり、回転体41と電磁石42との隙間量を計測する位置センサ66が設けられている。制御装置65は、回転体41と電磁石42との隙間量と予め設定された適正隙間量との偏差を算出し、この偏差に基づいて回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。そのため、制御装置65は、回転体41と電磁石42との隙間量と適正隙間量との偏差が0となるように、スラスト軸受23の電磁石42の磁力を制御、つまり、電磁石42に付与する電流値を制御する。
【0055】
具体的に説明すると、
図9に示すように、ステップS31にて、制御装置65は、各圧力センサ61,62,63,64から各計測値を取得する。ステップS32にて、制御装置65は、各圧力センサ61,62,63,64から各計測値に基づいて回転軸14に作用するスラスト荷重を算出する。ステップS33にて、制御装置65は、算出したスラスト荷重に応じて電磁石42の制御量、つまり、電磁石42に付与する電流値を算出する。そして、ステップS34にて、制御装置65は、電磁石42を制御量により制御、つまり、電磁石42に所定の電流値を付与する。すると、電磁石42の吸引力により回転体41(永久磁石52)を介してコンプレッサ13が接近することで、回転軸14がタービン12側に押圧される。回転軸14に作用するスラスト荷重は、ハウジング15に対して回転軸14がコンプレッサ13側に押圧される荷重であり、スラスト軸受23によりハウジング15に対して回転軸14をタービン12側に押圧する荷重を作用させる。その結果、回転軸14は、所定の軸方向位置に維持されることとなる。
【0056】
次に、ステップS35にて、制御装置65は、位置センサ66から計測値を取得する。ステップS36にて、制御装置65は、回転体41と電磁石42との実際の隙間量が、予め設定された適正な隙間量となる許容範囲内にあるかどうかを判定する。ここで、実際の隙間量が許容範囲内にないと判定(No)されると、ステップS37にて、ステップS33で算出した制御量を実際の隙間量と適正隙間量との偏差に応じて補正する。そして、ステップS34からの処理を実行する。一方、実際の隙間量が許容範囲内にあると判定(Yes)されると、処理を終了する。
【0057】
このように第3実施形態の過給機にあっては、制御装置65は、コンプレッサ13に作用する圧力とタービン12に作用する圧力に基づいて回転軸14に作用するスラスト荷重を算出し、算出したスラスト荷重に応じて電磁石42の磁力を制御し、コンプレッサ13の軸方向位置が許容範囲にないときに、コンプレッサ13の軸方向位置に応じて電磁石42の磁力を補正する。
【0058】
従って、コンプレッサに作用する圧力とタービンに作用する圧力とコンプレッサの軸方向位置に応じて電磁石42の磁力を設定することから、回転軸14に作用するスラスト荷重を高精度に算出して回転軸14に作用するスラスト荷重を適正に打ち消すことができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、第1磁力発生部材として永久磁石52,57を有する回転体41,46をコンプレッサ13に固定し、第2磁力発生部材として電磁石42をハウジング15に固定したが、この構成に限定されるものではない。例えば、永久磁石52,57をハウジング15に固定し、電磁石42をコンプレッサ13に固定してもよい。また、第1磁力発生部材と第2磁力発生部材との関係は、永久磁石と電磁石の関係に限定されるものではない。例えば、金属部材と電磁石、金属部材とコイル、電磁石と電磁石などの組み合わせでもよく、いずれか一方をコンプレッサに固定し、他方をハウジングに固定すればよい。