(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1及び
図2に示す架線1は、線路上空に架設される架空電車線(電車線路)である。架線1は、支持点間の距離(径間)が所定の長さになるように、所定の間隔をあけて支持構造物によって支持点で支持されている。架線1は、電車又は電気機関車などの電気車(鉄道車両)が走行する線路上空に架設されている。架線1は、電気車の集電装置のすり板が接触するトロリ線と、このトロリ線を支持する補助ちょう架線と、この補助ちょう架線を介してトロリ線を支持するちょう架線などを備えている。がいし(碍子)2は、電気導体を絶縁して支持する部材である。がいし2は、架線1とばねバランサ4との間を電気的に絶縁するとともに、架線1と張力変化低減装置14との間を電気的に絶縁する。電柱3は、電車線路の構成物を支持する部材である。電柱3は、ばねバランサ4を支持しており、電気車が走行する線路に沿って基礎部分が固定されている。
【0017】
図1〜
図9に示すばねバランサ4は、架線1の張力Tを一定に保持する装置である。ばねバランサ4は、
図3に示す筒部5〜8と、ばね9〜11と、
図1及び
図2に示す装着部12,13などを備えている。ばねバランサ4は、例えば、架線1の温度伸縮、クリープ伸び、摩耗による弾性伸びなどのような架線1の伸縮をばね9〜11のばね力(弾性力)を利用して吸収し、架線1の張力Tを一定に保持するばね式テンションバランサである。
図1〜
図9に示すばねバランサ4は、架線1の温度変化などによる弛度及び張力変化を常に一定に保持するために、この架線1の張力Tを自動的に調整する自動張力調整装置として機能する。
【0018】
図3に示す筒部5〜8は、架線1の伸縮動作に連動して進退動作する部材である。筒部5は、架線1側に連結された状態でばね9に挿入されており、この筒部5の外周面にばね9の一端部を受けるばね受部5aなどを備えている。筒部6は、筒部5を中心線方向に進退自在に収容した状態でばね10に挿入されており、このばね10の一端部を受けるばね受部6aと、ばね9の一端部を受けるばね受部6bなどを備えている。筒部7は、筒部6を中心線方向に進退自在に収容した状態でばね11に挿入されており、このばね11を受けるばね受部7aと、ばね10を受けるばね受部7bなどを備えている。筒部8は、筒部7を中心線方向に進退自在に収容しており、ばね11の一端部を受けるばね受部8aなど備えている。
【0019】
ばね9〜11は、架線1に張力Tを付与する部材である。ばね9〜11は、圧縮状態で常時使用される圧縮コイルばねであり、架線1にばね力を常時作用させている。ばね9〜11は、小径のばね9から大径のばね11までばね定数が段階的に小さくなるように設定されている。ばね9は、筒部5側のばね受部5aと筒部6側のばね受部6bとの間に挟み込まれることによってばね力を発生する。ばね10は、筒部6側のばね受部6aと筒部7側のばね受部7bとの間に挟み込まれることによってばね力を発生する。ばね11は、筒部7側のばね受部7aと筒部8側のばね受部8aとの間に挟み込まれることによってばね力を発生する。
【0020】
図1及び
図2に示す装着部12,13は、筒部8を電柱3に着脱自在に装着する手段である。装着部12は、筒部8の後端部と電柱3の外周部とを連結するようにこの電柱3に着脱自在に取り付けられる固定バンドを備えている。装着部13は、筒部8の先端部寄りの底部と電柱3の外周部とを連結する連結軸と、この連結軸の両端部を電柱3及び筒部8に着脱自在に取り付ける固定バンドなどを備えている。
【0021】
図1、
図2及び
図4〜
図9に示す張力変化低減装置14は、ばねバランサ4によって架線1に張力Tを付与するときに、この架線1に発生する張力変化を低減する。ここで、張力変化とは、ばねバランサ4によって架線1の張力Tを標準張力T
Sに設定した場合に、架線1の伸縮によって張力Tが変動したときに許容される変動範囲である。張力変化低減装置14は、
図12に示すように、架線1の伸縮によってこの架線1の張力Tが変化したときに、
図8及び
図9に示すようにこの架線1に付加張力T
Aを作用させてこの架線1の張力Tを所定範囲内にする。
【0022】
ここで、
図12に示す縦軸は、架線1の張力T(kgf)であり、横軸は架線1の変位(mm)である。標準張力T
sは、ばねバランサ4によって設定された架線1の標準的な張力値である。上限張力T
maxは、架線1の張力Tが増加したときに許容される張力Tの上限値である。下限張力T
minは、架線1の張力Tが低下したときに許容される張力Tの下限値である。
図12に示す張力特性図は、標準張力T
Sが5500kgfであり、上限張力T
maxが5775kgf(標準張力T
Sの+5%)であり、下限張力T
minが5225kgf(標準張力T
Sの-5%)であり、標準長が±320mmである場合の特性図である。
図12に示す太実線(実施例)は、この実施形態に係る張力変化低減装置14による張力変化率+9%〜-5%の範囲内の場合の張力特性である。細実線(従来例)は、従来のばね式テンションバランサによる張力変化率±9%の範囲内の場合の張力特性である。二点鎖線は、標準張力T
Sの値を示し、太点線は上限張力T
max及び下限張力T
minの値を示す。
【0023】
図1、
図2及び
図4〜
図9に示す張力変化低減装置14は、架線1の張力Tが下限張力T
minを下回らないように、この架線1に付加張力T
Aを作用させる。張力変化低減装置14は、例えば、
図12に示すように、従来のばねバランサによる架線1の張力変化率が標準張力T
Sの±9%の範囲内であるときに、この架線1の張力変化率を標準張力T
Sの+9%〜-5%の範囲内まで低減する。張力変化低減装置14は、架線1及びばねバランサ4の構造を改変することなく、このばねバランサ4の外部に着脱自在に装着されている。張力変化低減装置14は、
図1〜
図9に示す連結部15と、
図1に示す付加張力作用部16A,16Bと、カム機構部17A,17Bと、
図1及び
図2に示す装着部26などを備えている。
【0024】
図1〜
図9に示す連結部15は、がいし2とばねバランサ4とを連結する手段である。連結部15は、ばねバランサ4の筒部5の先端部とがいし2とを着脱自在にピン結合する。連結部15は、架線1の張力Tが下限張力T
minを下回るときに付加張力作用部16A,16Bから付加張力T
Aが伝達されており、筒部5を押し込む方向(架線1を引っ張る方向)にこの付加張力T
Aを作用させる。連結部15は、アーム部15a,15bなどを備えている。アーム部15a,15bは、付加張力作用部16A,16Bから付加張力T
Aが伝達される部分である。アーム部15aは、連結部15の一方の縁部から突出しており、アーム部15bは連結部15の他方の縁部から突出している。
【0025】
図1に示す付加張力作用部16A,16Bは、架線1に付加張力T
Aを作用させる手段である。
図1に示すように、付加張力作用部16Aは電柱3の一方の側面側に配置されており、付加張力作用部16Bは電柱3の他方の側面側に配置されている。付加張力作用部16A,16Bは、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、いずれも同一構造であり、上下重ねてそれぞれ2つずつ配置されている。付加張力作用部16A,16Bは、
図1及び
図2に示すように、ばねバランサ4と架線1との間に、このばねバランサ4の外部からこの架線1に付加張力T
Aを作用させる。付加張力作用部16A,16Bは、例えば、常に一定の引張力を発生する定荷重ばねであり、
図6〜
図9に示すようにステンレス鋼帯などのばね材が全長にわたり一定の曲率で巻かれている。付加張力作用部16A,16Bは、
図6〜
図9に示すように、常に一定の引張力(荷重)を作用させて往復するばね端部16aなどを備えている。付加張力作用部16A,16Bは、ばね端部16aを引き出して使用し、引き出し長さに関わらず常に一定の引張力を発生する。
【0026】
図1に示すカム機構部17A,17Bは、付加張力作用部16A,16Bから架線1に付加張力T
Aを作用させる状態と作用させない状態とに、この架線1の伸縮に応じて切り替える手段である。カム機構部17Aは、ばねバランサ4の一方の側面側に配置されており、カム機構部17Bはばねバランサ4の他方の側面側に配置されている。カム機構部17A,17Bは、
図1及び
図2に示すように、付加張力作用部16A,16Bと架線1との間で、ばねバランサ4の外部から切り替える。カム機構部17A,17Bは、架線1の張力Tが低減したときに、付加張力作用部16A,16Bが発生する引張力を付加張力T
Aとして架線1に伝達する。カム機構部17A,17Bは、
図5及び
図12に示すように、架線1の張力Tが下限張力T
minを下回るときには、付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とを連結する。一方、カム機構部17A,17Bは、
図4及び
図12に示すように、架線1の張力Tが下限張力T
min以上であるときには、付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とを解放する。カム機構部17A,17Bは、
図6〜
図9に示すように、固定部材18と、カム19と、可動部材20と、カム21と、従動部22と、スライダ23と、ガイド部材24と、接続部材25などを備えている。カム機構部17A,17Bは、いずれも同一構造であり、以下では一方のカム機構部17Aを中心に説明する。
【0027】
図6〜
図9に示す固定部材18は、架線1の伸縮に関わらず非可動の部材である。固定部材18は、外観が四角形の板状部材であり、この固定部材18の両端部が装着部26に着脱自在に取り付けられている。固定部材18は、ばねバランサ4の側面と可動部材20の裏面との間に配置されている。
【0028】
カム19は、従動部22を往復運動させる部分である。カム19は、従動部22の運動とこのカム19の輪郭曲線とが一平面内に存在する平面カムである。カム19は、一端部が水平方向に延びており他端部が上方に向かって屈曲している。カム19は、固定部材18を貫通するカム溝19a〜19cなどを備えている。カム溝19aは、架線1に付加張力T
Aを作用させているときに従動部22が移動する部分である。カム溝19aは、ばねバランサ4の中心線と平行に直線状に形成されている。カム溝19bは、架線1に付加張力T
Aを作用させていないときに従動部22が嵌合する部分である。カム溝19bは、ばねバランサ4の中心線と直交して直線状に形成されている。カム溝19cは、カム21側のカム溝21bに従動部22が嵌合しているときに、この従動部22をこのカム溝21bから強制的に抜け出させる部分である。カム溝19cは、カム溝19aとカム溝19bとを連結するように曲線状に形成されている。
【0029】
可動部材20は、架線1側に連結された状態でこの架線1の伸縮に応じて可動する部材である。可動部材20は、外観が四角形の板状部材であり、
図9に示すように、架線1に付加張力T
Aを作用させているときには付加張力作用部16A,16B寄りに位置し、
図6に示すように架線1に付加張力T
Aを作用させていないときには連結部15寄りに位置する。
【0030】
図6〜
図9に示すカム21は、従動部22を往復運動させる部分である。カム21は、カム19と同様の平面カムであり、一端部が水平方向に延びているが、カム19とは異なり他端部が下方に向かって屈曲している。カム21は、可動部材20を貫通するカム溝21a〜21cなどを備えている。カム溝21aは、架線1に付加張力T
Aを作用させていないときに従動部22が移動する部分である。カム溝21aは、ばねバランサ4の中心線及びカム溝19aと平行に直線状に形成されている。カム溝21bは、架線1に付加張力T
Aを作用させているときに従動部22が嵌合する部分である。カム溝21bは、ばねバランサ4の中心線と直交して直線状に形成されており、
図7及び
図8に示すように、架線1に付加張力T
Aを作用させる状態と作用させない状態とに切り替わるときにはカム溝19bと重なる。
図6〜
図9に示すカム溝21cは、カム19側のカム溝19bに従動部22が嵌合しているときに、この従動部22をこのカム溝19bから強制的に抜け出させる部分である。カム溝21cは、カム溝21aとカム溝21bとを連結するように曲線状に形成されている。カム溝21cは、
図7及び
図8に示すように、架線1に付加張力T
Aを作用させる状態と作用させない状態とに切り替わるときには、カム溝19cと部分的に重なる。
【0031】
図6〜
図9に示す従動部22は、付加張力作用部16A,16B側に連結された状態でカム19,21に沿って移動する部材である。従動部22は、カム溝19a〜19c,21a〜21cに沿って回転移動する回転体であり、カム溝19a〜19c,21a〜21cによって従動し往復運動するフォロア(従動節)として機能する。従動部22は、付加張力作用部16A,16Bのばね端部16aに着脱自在にピン結合されており、
図8及び
図9に示すように、カム溝21bに嵌合しているときには、付加張力作用部16A,16Bが発生する付加張力T
Aを可動部材20に作用させる。従動部22は、
図9に示すように、付加張力作用部16A,16Bから架線1に付加張力T
Aを作用させるときには、この付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とが連結状態になるように、可動部材20側のカム21に嵌合した状態で固定部材18側のカム19に沿って移動する。一方、従動部22は、
図6に示すように、付加張力作用部16A,16Bから架線1に付加張力T
Aを作用させないときには、この付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とが解放状態になるように、固定部材18側のカム19に嵌合した状態で可動部材20側のカム21に沿って移動する。
【0032】
図6〜
図9に示すスライダ23は、ガイド部材24に沿って進退自在に移動する部材である。スライダ23は、可動部材20の両縁部に固定されており、架線1の伸縮に応じて進退動作する。ガイド部材24は、スライダ23を移動自在にガイドする部材である。ガイド部材24は、このガイド部材24の中心線がばねバランサ4の中心線と平行になるように配置されている。ガイド部材24は、このガイド部材24の両端部が装着部26に着脱自在に取り付けられている。
【0033】
接続部材25は、可動部材20と連結部15とを接続する接続する部材である。接続部材25は、一方の端部が可動部材20の先端部に着脱自在にピン結合されており、他方の端部が連結部15のアーム部15a,15bに着脱自在にピン結合されている。接続部材25は、例えば、剛性を有するリンク部材である。接続部材25は、
図8及び
図9に示すように、従動部22から作用する付加張力T
Aを連結部15に作用させる。
【0034】
図1及び
図2に示す装着部26は、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bをばねバランサ4に着脱自在に装着する手段である。装着部26は、複数の板状部材を組み合わせて枠組状に形成されている。装着部26は、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bをばねバランサ4と連結するように、この筒部8に着脱自在に取り付けられる固定バンドなどを備えている。
【0035】
次に、この発明の実施形態に係る架空線の張力変化低減装置の動作を説明する。
以下では、
図6〜
図11に示す付加張力作用部16A及びカム機構部17Aの動作について説明し、付加張力作用部16B及びカム機構部17Bの動作については説明を省略する。
例えば、
図6及び
図10(A)に示すように、気温が上昇して架線1が伸長すると、ばね9のばね力によって筒部5が後退して、架線1の張力Tが低下する。架線1が伸長して筒部5が後退すると、筒部5と一体となって連結部15が後退しこの連結部15と一体となって接続部材25も後退する。接続部材25が後退すると可動部材20も後退し、固定部材18側のカム19のカム溝19bに従動部22が嵌合した状態で、可動部材20側のカム21のカム溝21aに沿ってこの従動部22が移動する。このとき、付加張力作用部16Aから従動部22を通じて固定部材18に付加張力T
Aが作用するが、従動部22がカム溝21aに沿ってスライドするため、付加張力作用部16Aから従動部22を通じて可動部材20に引張力が作用しない。
【0036】
図12に示す架線1の張力Tが下限張力T
minまで低下する直前に、
図7及び
図10(B)に示すようにカム溝21aからカム溝21cに従動部22が移動すると、カム溝21cによって従動部22が押し出される。このため、カム溝19bに嵌合していた従動部22がカム溝19bから外れて、カム溝19c,21cに沿って従動部22が移動する。
図12に示す架線1の張力Tが下限張力T
minに達すると、
図8及び
図10(C)に示すようにカム溝21bに従動部22が嵌合して、付加張力作用部16Aと連結部15とが連結状態に切り替わる。このため、付加張力作用部16Aから従動部22を通じて可動部材20に引張力が付加張力T
Aとして作用し、この可動部材20から接続部材25を通じて連結部15にこの付加張力T
Aが作用する。このため、付加張力作用部16Aから連結部15を通じて架線1に一定の付加張力T
Aが作用し、この付加張力T
Aによってばねバランサ4のばね9が伸び、このばねバランサ4の筒部5が付加張力T
Aを受けて後退する。その結果、連結部15及びがいし2を通じて架線1に付加張力T
Aが作用し、架線1の張力Tが増加して架線1の張力Tが低下するのが抑制される。
【0037】
図9及び
図10(D)に示すように、架線1がさらに伸長してもカム溝21bに従動部22が嵌合した状態で、従動部22がカム溝19aに沿って移動し、付加張力作用部16Aのばね端部16aが従動部22によって押し戻される。ばね端部16aの引き出し量に関わらず付加張力作用部16Aが常に一定の引張力を発生するため、付加張力作用部16Aから可動部材20に一定の引張力が付加張力T
Aとして継続して作用する。その結果、一定の付加張力T
Aが架線1に継続して作用し、架線1の張力Tが低下するのが抑制される。
【0038】
一方、例えば、
図11(A)に示すように、
図10(D)に示す状態から気温が低下して架線1が収縮すると、ばね9のばね力に抗して筒部5が前進して、架線1の張力Tが増加する。架線1が収縮して筒部5が前進すると、筒部5と一体となって連結部15が前進しこの連結部15と一体となって接続部材25も前進する。接続部材25が前進すると可動部材20も前進して、カム溝21bに従動部22が嵌合した状態で、従動部22がカム溝19aに沿って移動し、付加張力作用部16Aのばね端部16aが従動部22によって引き出される。ばね端部16aの引き出し量に関わらず付加張力作用部16Aが常に一定の引張力を発生するため、付加張力作用部16Aから可動部材20に一定の付加張力T
Aが継続して作用する。
【0039】
図11(B)に示すように、可動部材20がさらに前進するとカム溝19cによって従動部22が押し出される。このため、
図11(C)に示すように、カム溝21bに嵌合していた従動部22がカム溝21bから外れて、カム溝19c,21cに沿って従動部22が移動し、付加張力作用部16Aと連結部15とが解放状態に切り替わる。さらに、
図11(D)に示すように、カム溝19bに従動部22が嵌合すると、カム溝19bに従動部22が嵌合した状態で、カム溝21aに沿ってこの従動部22が移動する。このため、付加張力作用部16Aから従動部22を通じて可動部材20に引張力が作用しなくなり、この可動部材20から接続部材25を通じて連結部15にも引張力が作用しなくなる。その結果、連結部15に付加張力T
Aが作用せず、ばねバランサ4のばね5のばね力によってのみ架線1に張力Tが作用し、架線1に付加張力T
Aが作用してこの架線1の張力Tが増加してしまうのが抑制される。
【0040】
この発明の実施形態に係る架空線の張力変化低減装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、架線1に付加張力T
Aを付加張力作用部16A,16Bが作用させ、この付加張力作用部16A,16Bから架線1にこの付加張力T
Aを作用させる状態と作用させない状態とに、この架線1の伸縮に応じてカム機構部17A,17Bが切り替える。このため、架線1の張力Tの変動に応じて付加張力T
Aを作用させることができる。その結果、架線1に発生する張力変化を簡単な構造によって低減することができる。
【0041】
(2) この実施形態では、ばねバランサ4と架線1との間に、このばねバランサ4の外部から付加張力T
Aを付加張力作用部16A,16Bが作用させる。このため、ばねバランサ4や架線1の構造を改変せずに、このばねバランサ4の外側に付加張力作用部16A,16Bを簡単に後付けすることができる。その結果、既存のばねバランサ4や架線1の移動や取り換え工事が不要になり、短時間で安価に付加張力作用部16A,16Bを付加することができる。
【0042】
(3) この実施形態では、付加張力作用部16A,16Bと架線1との間で、ばねバランサ4の外部からカム機構部17A,17Bが切り替える。このため、ばねバランサ4や架線1の構造を改変せずに、このばねバランサ4の外側にカム機構部17A,17Bを簡単に後付けすることができる。その結果、既存のばねバランサ4や架線1の移動や取り換え工事が不要になり、短時間で安価にカム機構部17A,17Bを付加することができる。
【0043】
(4) この実施形態では、架線1の張力Tが下限張力T
minを下回るときには、付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とをカム機構部17A,17Bが連結し、架線1の張力Tが下限張力T
min以上であるときには、付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とをカム機構部17A,17Bが解放する。このため、架線1の張力Tが下限張力T
minに達する前に、この架線1に付加張力T
Aを作用させ、この架線1に発生する張力変化を確実に低減することができる。例えば、
図12に示すように、従来のばね式テンションバランサに比べて架線1の張力変化率を標準張力T
Sの±9%の範囲内から+9%〜-5%の範囲内に低減することができる。
【0044】
(5) この実施形態では、架線1側に連結された状態でこの架線1の伸縮に応じて可動部材20が可動し、この架線1の伸縮に関わらず固定部材18が非可動であり、付加張力作用部16A,16B側に連結された状態で、この可動部材20及びこの固定部材18のカム19,21に沿って従動部22が移動する。また、この実施形態では、付加張力作用部16A,16Bから架線1に付加張力T
Aを作用させるときには、この付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とが連結状態になるように、可動部材20側のカム21に嵌合した状態で固定部材18側のカム19に沿って従動部22が移動する。さらに、この実施形態では、付加張力作用部16A,16Bから架線1に付加張力T
Aを作用させないときには、この付加張力作用部16A,16Bとこの架線1とが解放状態になるように、固定部材18側のカム19に嵌合した状態で可動部材20側のカム21に沿って従動部22が移動する。このため、例えば、簡単な構造の付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bを既存のばねバランサ4に付加することによって、ばねバランサ4のばね力を支援し架線1の張力変化率を±9%の範囲内から+9%〜-5%の範囲内に低減することができる。
【0045】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、架空線として架線1のような架空電車線を例に挙げて説明したが、電線などの支持物に架設された電線路についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、ばねバランサ4が4個の入れ子構造の筒部5〜8を備える場合を例に挙げて説明したが、4個以外に複数の筒部を備えるばねバランサについても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bをばねバランサ4に装着部26によって装着する場合を例に挙げて説明したが、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bを電柱3に着脱自在に装着することもできる。
【0046】
(2) この実施形態では、付加張力作用部16A,16Bが定荷重ばねである場合を例に挙げて説明したが、このような機構に限定するものではない。例えば、油圧シリンダ又は空気圧シリンダのような流体圧シリンダや電動モータのような駆動力発生部によって引張力を架線1に作用させる場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、架線1が伸長してこの架線1の張力Tが低減するときに、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bによってこの架線1に引張力を付加張力T
Aとして作用させる場合を例に挙げて説明したが、この架線1に引張力を作用させる場合に限定するものではない。例えば、架線1が収縮してこの架線1の張力Tが増加するときに、付加張力作用部16A,16B及びカム機構部17A,17Bによってこの架線1に押圧力を付加張力T
Aとして作用させることもできる。さらに、この実施形態では、張力変化率を標準張力T
Sの+9%〜-5%の範囲内に低減する場合を例に挙げて説明したが、張力変化率を標準張力T
Sの+9%〜-5%の範囲内に限定するものではなく、任意の張力変化率の範囲内に低減することもできる。