特許第6869085号(P6869085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6869085-貯留バラ物自然発火防止装置 図000002
  • 特許6869085-貯留バラ物自然発火防止装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869085
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】貯留バラ物自然発火防止装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20210426BHJP
   B65D 90/48 20060101ALI20210426BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20210426BHJP
   G01K 13/10 20060101ALI20210426BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20210426BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B65D90/22 Z
   B65D90/48 G
   G01K7/00 321J
   G01K13/10
   G08C17/00 A
   G08C15/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-83371(P2017-83371)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-177348(P2018-177348A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎弥
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−222335(JP,A)
【文献】 特開昭53−140897(JP,A)
【文献】 特開2011−007698(JP,A)
【文献】 特開昭58−173442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
G01K 1/00−19/00
G08C 13/00−25/04
A62D 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ物が貯留されるバラ物貯留槽の内部にバラ物と共に投入されて複数埋設されるカプセルを備え、
該カプセルは、
冷却ガスが圧入されるタンク部と、
前記バラ物の温度を検出する温度センサと、
該温度センサで検出された温度が設定値を超えた場合に開放されて前記タンク部に圧入された冷却ガスを放出するバルブと
該バルブの動作状況を送信する無線モジュールと
を備え
前記カプセルの無線モジュールから送信されるバルブの動作状況及びカプセルの位置情報を集計するデータ処理端末を備えたことを特徴とする貯留バラ物自然発火防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留バラ物自然発火防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス化炉やボイラ等の燃料として用いられる石炭、或いはペレット化されたバイオマス等のバラ物は、バンカ或いはサイロ等のバラ物貯留槽に貯留される。前記石炭のうち、特に褐炭や亜瀝青炭は揮発分が多いことから、温度上昇して自然発火しやすく、充分な注意が必要となっている。又、木質ペレットは、湿った空気の流入や結露により局所的な水分の集中が起こった場合、微生物による発酵熱が生じ、これが蓄熱されると更に自然酸化により発熱し、発火に至る可能性があるため、石炭と同様、充分な注意が必要となっている。
【0003】
従来、前記バラ物貯留槽に貯留されたバラ物の自然発火を監視するには、該バラ物貯留槽の内部の温度を計測することが通常行われている。
【0004】
そして、前記バラ物貯留槽の内部の温度が設定値以上となった場合、バラ物貯留槽の下部からバラ物を払い出した後、再度、バラ物貯留槽の上部からバラ物を投入する、いわゆるリサイクル運転が行われる。又、バラ物貯留槽の内部に窒素を充填することにより温度を低下させる処置を施すこともある。
【0005】
尚、前記バラ物貯留槽に貯留されたバラ物の温度を計測して自然発火を防止する装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−219152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のようなリサイクル運転では、バラ物貯留槽の内部のバラ物を全て払い出す必要があり、一部分のみの払い出しは困難で、作業が非常に大掛かりなものとなっていた。
【0008】
又、前記バラ物貯留槽の内部に窒素を充填するのでは、大量の窒素ガスが必要となり、コストが嵩むと共に、窒素充填に長時間を要していた。
【0009】
更に又、温度計が設置されずに温度計測ができない箇所で仮に温度上昇が発生した場合には、それを把握することが困難となり、自然発火を防止できなくなる虞があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、温度上昇に対してピンポイントでの検出と対応を行うことができ、バラ物の自然発火を未然に防止し得る貯留バラ物自然発火防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の貯留バラ物自然発火防止装置は、バラ物が貯留されるバラ物貯留槽の内部にバラ物と共に投入されて複数埋設されるカプセルを備え、
該カプセルは、
冷却ガスが圧入されるタンク部と、
前記バラ物の温度を検出する温度センサと、
該温度センサで検出された温度が設定値を超えた場合に開放されて前記タンク部に圧入された冷却ガスを放出するバルブと
該バルブの動作状況を送信する無線モジュールと
を備え
前記カプセルの無線モジュールから送信されるバルブの動作状況及びカプセルの位置情報を集計するデータ処理端末を備えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貯留バラ物自然発火防止装置によれば、温度上昇に対してピンポイントでの検出と対応を行うことができ、バラ物の自然発火を未然に防止し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の貯留バラ物自然発火防止装置の実施例を示す全体概要構成図である。
図2】本発明の貯留バラ物自然発火防止装置の実施例におけるカプセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明の貯留バラ物自然発火防止装置の実施例である。
【0017】
図1中、1はガス化炉やボイラ等の燃料として用いられる石炭、或いはペレット化されたバイオマス等のバラ物Bを貯留するバンカ或いはサイロ等のバラ物貯留槽であり、該バラ物貯留槽1の底部には、複数(図1の例では、四基)の払出機2が設けられている。
【0018】
本実施例の場合、カプセル3を前記バラ物貯留槽1の投入口1aからバラ物Bと共に投入して複数埋設するようになっている。尚、前記投入口1aとは別に、カプセル3専用の投入口(図示せず)を前記バラ物貯留槽1に設けても良い。
【0019】
前記カプセル3は、図2に示す如く、冷却ガスGが圧入されるタンク部3aを備え、前記バラ物Bの温度を検出する温度センサ4と、該温度センサ4で検出された温度が設定値を超えた場合に開放されて前記タンク部3aに圧入された冷却ガスGを放出するバルブ5とが内蔵されている。
【0020】
前記バルブ5は、駆動部5aと、該駆動部5aにより押し引きされる弁棒5bと、該弁棒5bの先端に取り付けられた弁体5cとを備え、該弁体5cにより、前記タンク部3aの内部空間と外部とを連通するようカプセル3の外殻に穿設された噴射孔3bを開閉するようになっている。
【0021】
前記冷却ガスGとしては、例えば、ハロゲン元素の負触媒効果を利用して燃焼の連鎖反応を抑制するハロン2402、ハロン1211、ハロン1301等のハロゲン化物ガス、或いは酸素濃度を低下させる窒息効果を有した不燃性物質である炭酸ガス(二酸化炭素)を用いることができる。
【0022】
前記カプセル3には、前記バルブ5の動作状況を送信する無線モジュール6も内蔵され、該無線モジュール6から送信されるバルブ5の動作状況を無線基地局7aを介してデータ処理端末7(図1参照)によって受信し、該データ処理端末7において、前記バルブ5の動作状況及びカプセル3の位置情報を集計するようになっている。因みに、前記無線モジュール6は、例えば、ZigBee(登録商標)等のセンサネットワークを主目的とする近距離無線通信規格のものを用いることができる。
【0023】
尚、図2中、8は逆止弁であり、該逆止弁8に図示していないボンベを接続し、該ボンベから冷却ガスGをカプセル3のタンク部3aに充填するようになっている。
【0024】
又、図1中、9はベルトコンベヤ等のコンベヤであり、該コンベヤ9により前記払出機2から払い出されたバラ物Bをガス化炉やボイラ等へ搬送するようになっている。但し、前記コンベヤ9はベルトコンベヤに限定されるものではない。
【0025】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0026】
先ず、バラ物貯留槽1の内部にカプセル3をバラ物Bと共に投入して複数埋設しておく。
【0027】
前記バラ物貯留槽1に貯留されたバラ物Bの温度は、カプセル3の温度センサ4によって検出される。
【0028】
前記温度センサ4で検出された温度が設定値を超えると、バルブ5の駆動部5aにより弁棒5bが引き込まれて、弁体5cが開かれ、前記カプセル3のタンク部3aに圧入された冷却ガスGが噴射孔3bから放出される。
【0029】
前記冷却ガスGが噴射孔3bから放出されると、カプセル3の周囲に位置するバラ物Bの温度が低下する。ここで、前記冷却ガスGとして、例えば、ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301等のハロゲン化物ガスを用いた場合、ハロゲン元素の負触媒効果により温度上昇が抑制され、自然発火が回避される。又、前記冷却ガスGとして不燃性物質である炭酸ガス(二酸化炭素)を用いた場合、窒息効果によりカプセル3の周囲における酸素濃度が低下し、温度上昇が抑制され、自然発火が回避される。
【0030】
前記カプセル3の無線モジュール6からは、前記バルブ5の動作状況が無線基地局7aを介してデータ処理端末7へ送信され、該データ処理端末7において、前記無線モジュール6から送信されるバルブ5の動作状況及びカプセル3の位置情報が集計される。これにより、前記バラ物貯留槽1の内部において、どの部分のバラ物Bの温度が上昇して冷却ガスGが放出されているかという分析が行われ、バラ物貯留槽1の内部におけるバラ物Bの温度分布を把握することが可能となる。
【0031】
本実施例の場合、前記バラ物貯留槽1の内部の温度が設定値以上となったとしても、従来のようなリサイクル運転とは異なり、バラ物貯留槽1の内部のバラ物Bを払い出す必要がなく、大掛かりな作業をしなくて済む。
【0032】
又、前記バラ物貯留槽1の内部に大量の窒素を充填しなくて済み、コストアップが避けられると共に、窒素充填に要していた時間の節約をも図ることが可能となる。
【0033】
更に又、従来、温度計が設置されずに温度計測ができない箇所にもカプセル3を分散させることができるため、温度上昇を隈なく見つけ出して処理することが可能となり、自然発火防止に有効となる。
【0034】
こうして、温度上昇に対してピンポイントでの検出と対応を行うことができ、バラ物Bの自然発火を未然に防止し得る。
【0035】
尚、本発明の貯留バラ物自然発火防止装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 バラ物貯留槽
3 カプセル
3a タンク部
4 温度センサ
5 バルブ
6 無線モジュール
7 データ処理端末
B バラ物
G 冷却ガス
図1
図2