(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記把持部材のうちの少なくとも一部は、前記くさびが当接される範囲から突き出した部分が、前記くさびが圧接されることによって前記FRP緊張材から離れる方向に緩やかに弾性的な曲げ変形を生じ、前記突き出した部分で前記FRP緊張材に対する圧接力が低減されるものであることを特徴とする請求項1に記載のFRP緊張材の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記定着具には、次のような解決が望まれる課題がある。
特許文献1に開示される定着具では、緊張材の外周面とアルミニウム管との間に大きな隙間ができないように正確に内周面の径が調整されたアルミニウム管を準備し、このアルミニウム管の内側に緊張材を挿通しなければならない。そして、アルミニウム管の外周面にはコイルスプリング状の鋼線を装着するものであり、定着具を緊張材の端部に装着するのに多くの手間を要するものとなっている。
また、特許文献2に開示される定着具は、緊張材の端部に、複数に分割された抱持体を当接し、さらにその外側に複数に分割されたくさびを当接して定着スリーブ内に挿入しなければならない。このため、抱持体やくさびが緊張材の軸線方向に位置のずれを生じることなく正確に装着するのが難しくなり、装着する作業を効率よく行うのが難しくなっている。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、FRP緊張材を損傷することなく定着することができるとともに、緊張材に効率よく装着することができるFRP緊張材の定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 FRP緊張材の軸線に沿って該FRP緊張材の外周面に圧接される複数の把持部材と、 内径が直線的に変化する貫通孔を備え、該貫通孔に前記FRP緊張材の前記把持部材が圧接された端部が挿通される外管と、 前記把持部材と前記貫通孔の内周面との間に圧入されるくさびと、を有し、 前記把持部材は、 前記くさびが圧接される範囲から前記FRP緊張材が伸長される方向に突き出す長さを有し、 前記FRP緊張材が伸長される方向に突き出した先端部は、前記FRP緊張材が挿通される空間を囲むように配列された状態で隣り合う把持部材が互いに連結されているFRP緊張材の定着装置を提供する。
【0008】
この定着装置では、把持部材がFRP緊張材の外周面に当接された状態で外管と把持部材との間にくさびを押し込むことができる。したがって、くさびを押し込むときにFRP緊張材にくさびが強くこすり付けられてFRP緊張材を傷つけるのを回避することができる。そして、くさびの作用によって把持部材がFRP緊張材に強く圧接され、FRP緊張材を把持するとともに、くさびが圧接される範囲から突き出した部分ではFRP緊張材に対する圧接力が徐々に減少する。したがって、FRP緊張材に把持部材を押し付ける圧接力が急変するのが回避され、FRP緊張材の繊維の破断が生じにくくなる。
また、複数の把持部材はFRP緊張材が伸長される方向の先端部で連結されていることによってFRP緊張材の周囲に容易に装着し、外管及びくさびを装着する作業を容易に行うことが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のFRP緊張材の定着装置において、 複数の前記把持部材のうちの少なくとも一部は、前記くさびが当接される範囲から突き出した部分が、前記くさびが圧接されることによって前記FRP緊張材から離れる方向に緩やかに弾性的な曲げ変形を生じ、前記突き出した部分で前記FRP緊張材に対する圧接力が低減されるものとする。
【0010】
この定着装置では、複数の把持部材が、FRP緊張材が伸長する方向の先端部で間隔を保持して連結されているが、該先端部とくさびが圧接される範囲との間で把持部材が弾性的に変形し、くさびが圧接される範囲ではFRP緊張材に強く押し付けることができる。そして、くさびが圧接される範囲から先端部に向かって圧接力は緩やかに低減され、圧接力の急変によるFRP緊張材の破断を防ぐことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のFRP緊張材の定着装置において、 前記FRP緊張材は、複数の繊維を束ねて合成樹脂で結合した複数の棒状部材で構成され、 複数の前記棒状部材のそれぞれは、互いに分離した位置で複数の前記把持部材間に挟み込まれ、 複数の前記棒状部材を挟み込んだ状態で束ねられた複数の前記把持部材の外周部と前記貫通孔の内周面との間に前記くさびが圧入されるものとする。
【0012】
このFRP緊張材の定着装置では、複数のFRP緊張材のそれぞれが分離した位置で複数の把持部材間に挟み込まれ、外管の一つの貫通孔に挿通して定着される。つまり、複数のFRP緊張材を挟み込んで束ねた状態の把持部材の外周部と貫通孔の内周面との間に一組のくさびが押し込まれる。把持部材はくさびの作用によってそれぞれのFRP緊張材に強く押し付けられてFRP緊張材を把持し、緊張力が導入された状態で把持部材とともに定着することができる。このとき、FRP緊張材は直接にはくさびに接触しておらず、強く押し込まれるくさびによって損傷することがない。
また、複数のFRP緊張材を束ねた状態で、一組のくさびにより定着されるので、FRP緊張材のそれぞれを別個にくさびで定着する定着装置より小さい寸法とすることができ、小さなスペースで定着することが可能となる。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項3に記載のFRP緊張材の定着装置において、 複数の前記把持部材のうちの2つの把持部材の間に複数の
前記棒状部材を挟み込むものとする。
【0014】
この定着装置では、2つの把持部材の間に複数のFRP緊張材を挟み込むことによって把持部材の数を少なくすることができる。これにより、複数のFRP緊張材に複数の把持部材を装着して把持部材と外管との間にくさびを押し入れる作業を効率よく行うことが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明は、
請求項3又は請求項4に記載のFRP緊張材の定着装置において、 前記把持部材は、前記外管に設けられた貫通孔の中心線上に配置される中央部材と、 前記くさびが圧接され、前記中央部材の周囲に配置された複数の前記棒状部材を該中央部材との間に挟む複数の外周部材と、を有するものとする。
【0016】
この定着装置では、複数のFRP緊張材と複数の把持部材とが束ねられた状態で、外周部材にはくさびから中心に向かって押し付ける力が作用する。したがって、中央部材の周囲に配置された複数のFRP緊張材は、その外側に配置された外周部材によって中央部材に押し付けられる。これにより、複数のFRP緊張材を把持部材の間に挟み込んで確実に押圧することができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、 FRP緊張材の軸線に沿って該FRP緊張材の外周面に圧接される複数の把持部材と、 内径が直線的に変化する貫通孔を備え、該貫通孔に前記FRP緊張材の前記把持部材が圧接された端部が挿通される外管と、を有し、 前記把持部材は、 前記FRP緊張材の外周面に圧接された状態の複数の前記把持部材の外周部が、前記貫通孔の内径の変化に対応して、前記FRP緊張材の端側に向かって外径が拡大する部分と、 前記外管に挿通される範囲から前記FRP緊張材が伸長される方向に突き出す部分と、を有し、 該把持部材の前記FRP緊張材が伸長される方向に突き出した先端部は、前記FRP緊張材が挿通される空間を囲むように配列された状態で隣り合う把持部材と互いに連結されているFRP緊張材の定着装置を提供するものである。
【0018】
このFRP緊張材の定着装置では、FRP緊張材と複数の把持部材とが束ねられた状態で、外管の一つの貫通孔に挿通される。FRP緊張材を挟み込んで束ねられた状態の複数の把持部材の外周部は、FRP緊張材の端側に向かって外径が拡大していることによって、FRP緊張材に緊張力が導入されたときに貫通孔の内周面に圧接される。これらの把持部材はくさびとして機能し、FRP緊張材に強く押し付けられる。これにより、FRP緊張材が把持され、緊張力が導入された状態で定着することができる。そして、複数の把持部材はFRP緊張材が伸長される方向の先端部で連結されているとともに、把持部材がくさびとして機能して別個にくさびを用いる必要がないのでFRP緊張材の端部に該定着装置を装着する作業を容易に行うことが可能となる。
また、請求項1に係る発明と同様に、把持部材のくさびが圧接される範囲から突き出した部分ではFRP緊張材に対する圧接力が徐々に減少し、FRP緊張材に押し付ける圧接力が急変するのが回避される。
なお、本発明の把持部材は、上記のようにくさびとして機能するものであり、FRP緊張材が伸長される方向にくさびの先端部が延長されたものと同じ機能を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係るFRP緊張材の定着装置では、くさびによってFRP緊張材を損傷することなく、FRP緊張材に効率よく装着することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るFRP緊張材の定着装置を示す概略斜視図であり、くさびを装着する前の状態、及びFRP緊張材に装着する前の把持部材を示すものである。
図2は、この定着装置を用いてFRP緊張材が定着された状態を示す概略断面図である。
この定着装置は、FRP緊張材1を挟み込むように装着される2つの把持部材2a,2bと、把持部材2が装着されたFRP緊張材1が挿通される貫通孔3aを備えた円筒状の外管3と、外管3に設けられた貫通孔3aの内周面とFRP緊張材1に装着された把持部材2との間に押し入れられるくさび4とを備えており、1本のFRP緊張材1をくさび4によって外管3に固定し、外管3を介して構造部材6に定着するものである。
【0022】
この実施の形態の定着装置は、2つの把持部材2a,2bを組み合わせて用いるものであり、それぞれは鋼管を軸線方向に2分割した形状となっている。これらの把持部材2a,2bはFRP緊張材1の周囲を囲むように装着され、くさび4の作用によってFRP緊張材1を挟み込むように押し付けられてFRP緊張材1を把持するものとなっている。
【0023】
把持部材2a,2bが有する内側の円筒曲面は、内径がFRP緊張材1の外径とほぼ同じ又は外径よりわずかに大きく設定されており、把持部材2a,2bの内側に嵌め入れたFRP緊張材1の外周面と把持部材2a,2bの内周面とが周方向の広い範囲で接触するものである。そして、把持部材2a,2bの内周面は、FRP緊張材1との間で滑りが生じるのを抑止することができるように摩擦を大きくする処理が施されている。この処理は、例えば把持部材2a,2bの内周面を粗面に仕上げる処理、把持部材2a,2bの内周面にFRP緊張材1との間の摩擦が大きくなる樹脂等の皮膜を形成しておく処理等を採用することができる。このような処理によりFRP緊張材1は圧接される把持部材2a,2bに強固に把持され、くさび4及び外管3を介して定着される。
【0024】
2つの把持部材2a,2bは、FRP緊張材1の軸線方向にほぼ同じ長さとなっており、上記外管3及びくさび4の軸線方向の寸法より長くなっている。そして、軸線方向にほぼ等断面となっている。これらの把持部材2a,2bはFRP緊張材1が伸長される方向に外管31から突き出すようにFRP緊張材に装着される。そして、FRP緊張材1が伸長される方向の端面に鋼リング5が接合されており、
図1(b)に示すように所定の間隔を維持して連結されている。この鋼リング5で連結された把持部材2a,2bの間は、FRP緊張材1がわずかの隙間を残して挿通されるものとなっている。この鋼リング5が接合された端部からくさび4が圧接される範囲までの間は、弾性的に緩やかに変形することができるものである。これにより、鋼リング5によって双方の把持部材2a,2bの間隔が保持されていても、くさび4が押し付けられる範囲では把持部材2a,2bをFRP緊張材1に強く押し付けることができるものとなっている。
なお、双方の把持部材2a,2bを連結する部材は、上記鋼リング5に限定されるものではなく、合成樹脂、ゴム等の他の材料を使用するものであってもよい。また、把持部材は、2つでFRP緊張材の周囲を囲むように装着されるものに限らず、3つでFRP緊張材の周囲を囲むように装着されるものでもよく、これにともなってくさびも周方向に3分割されたものであってもよい。
【0025】
上記外管3は、外周面が円筒曲面となっており、中心軸線に沿って断面が円形の貫通孔3aが設けられている。貫通孔3aは挿通されたFRP緊張材1の端側から該FRP緊張材1が伸長される方向に向かって内径が直線的に縮小するものとなっている。つまり貫通孔3a内の空間が円錐台形状となっている。この貫通孔3aに把持部材2a,2bが装着されたFRP緊張材1の端部が挿通され、緊張力が導入された状態でくさび4によって該外管3に固定されるものである。FRP緊張材1がくさび4によって固定された外管3は、直接に構造部材6に当接して、又は支圧板(図示しない)等を介して構造部材6に緊張力を伝達することができるものである。
【0026】
上記くさび4は、2つの半割片からなるものであり、これらを対向させたときに外周面が円錐曲面に沿った形状となるものである。そして、これらを対向させたときの対向面には、それぞれ円筒曲面で形成された凹部を備えている。この凹部には、FRP緊張材1を囲むように当接された把持部材2a,2bを嵌め入れ、両側から挟み込むようにくさび4を押し付けることができるものとなっている。この円筒曲面には押し付けられる把持部材2a,2cを強固に把持することができるように小さな凹凸が形成されている。
一方、2つの半割片が対向するように配置されたときの外側に形成される円錐曲面は、上記貫通孔3aの内周面と傾斜角が対応するものであり、貫通孔3aの内側に押し入れられたときに、外管3の内周面とくさびの外周面とが広い範囲で接触し、くさび4を把持部材2に押し付ける方向の力が作用するものとなっている。
【0027】
このような定着装置では、複数の把持部材2a,2bが鋼リング5によって連結されているので、FRP緊張材1を挟み込むように該把持部材2a,2bを装着することが容易となる。そして、把持部材2a,2bが装着されたFRP緊張材1の端部を外管3の貫通孔3aに挿通し、FRP緊張材1を挟み込むように装着された把持部材2の外周部と貫通孔3aの内周面との間にくさび4を押し入れるときに、FRP緊張材1に接触している把持部材2と該FRP緊張材1とは相対的に変位しないので、FRP緊張材1の表面を傷つけることがなく、定着部でFRP緊張材1の強度が低下するのを防ぐことができる。
【0028】
また、把持部材2a,2bの軸線方向の長さは外管3及びくさび4より長くなっており、把持部材2と外管3との間にくさび4を押し入れたときに、把持部材2a,2bはくさび4の先端からFRP緊張材1が伸長される方向に突き出している。そして、先端は鋼リング5によって複数の把持部材2a,2bの相互間の間隔が保持されているので、把持部材2a,2bはくさび4が押圧される範囲では強くFRP緊張材1に強く押し付けられるとともに、くさび4の先端から突き出した部分では把持部材2a,2bの変形によってFRP緊張材1への圧接力が徐々に低減される。したがって、把持部材2a,2bがFRP緊張材1に押し付けられる圧接力は急変することなく徐々に変化し、圧接力の急変部でFRP緊張材1の繊維が破断するのが回避される。
【0029】
なお、上記定着装置は、
図3に示すように外管13の外周面に雄ネジを形成しておき、これにナット17を螺合するものであってもよい。
この定着装置では、外管13の外周面の雄ネジにねじり合わせて接合した緊張用ロッド(図示しない)を把持し、ジャッキ等を用いて緊張用ロッド、外管13、くさび14及び把持部材12を介してFRP緊張材11に緊張力を導入することができる。そして、所定の緊張力を導入してFRP緊張材11に伸びが生じた状態でナット17を構造部材16に締め付け、FRP緊張材11を構造部材16に定着することができる。このように緊張及び定着を行うことにより、定着時にくさび14と外管13との間で相対的な変位が生じることによる緊張力の低減をなくすことができる。
【0030】
図4は、本発明の他の実施形態であるFRP緊張材の定着装置を示す断面図である。
この定着装置は、
図1及び
図2に示す定着装置と同様に、FRP緊張材21を把持部材22で挟み込んだ状態で定着するものであるが、くさびを用いておらず、把持部材22の外周部の形状によって把持部材22がくさびの機能を有するものとなっている。なお、外管23は
図1に示す定着装置と同様の貫通孔を有するものが用いられる。
【0031】
本定着装置においても、把持部材22a,22bはFRP緊張材21を挟み込むように当接されるものである。これらの把持部材22a,22bでは、FRP緊張材21の周囲に当接されたときの外周面が、FRP緊張材21が伸長される側の所定範囲22Aで円筒曲面に沿った形状となり、その後方側の所定範囲22Bでは円錐曲面に沿った形状となっている。つまり、把持部材22a,22bは、FRP緊張材21の端側に向かって断面が拡大するものとなっている。この円錐曲面に沿った形状は、内径がFRP緊張材21の端側に向かって拡大される外管23の貫通孔の内周面と傾斜角が対応しており、FRP緊張材21を挟み込んで保持した状態で外管23の貫通孔に挿通されたときに、外周部が外管23の貫通孔の内周面と広い範囲で当接される。そして、FRP緊張材21が伸長する方向に引き込まれるときに、くさびのように機能して把持部材22a,22bがFRP緊張材21に強く押し付けられるものとなっている。
一方、上記外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分22Aでは、把持部材22a,22bはほぼ等断面となっており、曲げ剛性が小さく弾性的に曲げ変形を生じるものである。したがって、把持部材22a,22bは、一般に緊張材を定着するために用いられるくさびの先端部分、つまり断面が縮小された先端に等断面の突き出し部を設けた形状と言い表すことができる。
【0032】
上記2つの把持部材22a,22bは、FRP緊張材21が伸長される方向の先端部が鋼リング25で連結され、所定の間隔が保持されている。これにより、FRP緊張材21を挟み込むように容易に装着することが可能となっている。
【0033】
この定着装置では、あらかじめFRP緊張材21の端部を外管23の貫通孔に挿通しておき、該FRP緊張材21の端部に上記把持部材22a,22b装着する。そして、該FRP緊張材21が貫通孔から引き抜く方向に変位すると、把持部材22a,22bの外周部が外管23の貫通孔の内周面に圧接される。把持部材22a,22bの円錐曲面に沿った形状となる部分はくさびとして機能し、貫通孔の内周面から中心線に向かって押圧力が作用し、FRP緊張材21に圧接される。これによってFRP緊張21材を保持し、緊張力が外管23を介して構造部材26に定着される。
また、外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分は、把持部材22が貫通孔の内周面に圧接されたときに貫通孔から突き出し、弾性的に緩やかな曲げ変形を生じてFRP緊張材21との圧接力が徐々に低減される。
このようにFRP緊張材21を把持して定着することにより、装着時にFRP緊張材21を傷つけること、及び圧接力の急変部で繊維が破断することの防止が可能となるものである。
【0034】
本発明に係るFRP緊張材の定着装置は、一本のFRP緊張材を定着するものに限らず、複数本のFRP緊張材を束ねて定着するものに適用することができる。
図5は、本発明の一実施形態であって、複数のFRP緊張材をまとめて定着する定着装置の例を示す概略斜視図である。また、
図6はこの定着装置で用いられる把持部材をFRP緊張材に装着する前の状態を示す概略斜視図であり、
図7はこの把持部材の正面図、側面図及び背面図である。
図8は、この定着装置を用いてFRP緊張材が定着された状態を示す概略断面図である。
この定着装置は、4本のFRP緊張材31を束ね、一組のくさび34によって定着するものであり、FRP緊張材31を挟み込むように装着される複数の把持部材32と、把持部材32が装着されたFRP緊張材31が挿通される貫通孔33aを備えた円筒状の外管33と、外管33に設けられた貫通孔33aの内周面とFRP緊張材31に装着された把持部材32との間に押し入れられるくさび34とを備えている。
【0035】
本定着装置は、3つの把持部材32a,32b,32cを組み合わせて用いるものであり、互いに隣り合う把持部材間に2本ずつのFRP緊張材31を挟み込むものとなっている。これらの把持部材32a,32b,32cは、4本のFRP緊張材31を挟み込んで束ねられ、円筒曲面に沿った外周面を形成する2つの外周部材32a,32cと、これらの外周部材間にあって双方の外周部材32a,32cとの間にFRP緊張材31を挟み込む中央部材32bとで構成されている。中央部材32bは外周部材32a,32cとの間にFRP緊張材31を挟み込んだ状態で、外管33に変位が拘束されないように、寸法が設定されている。
【0036】
FRP緊張材31を挟み込む双方の把持部材32の対向する面には、内周面が円筒曲面となる溝32dが形成されている。これらの溝内にFRP緊張材31を嵌め入れ、双方の把持部材32を互いに押し付ける方向に押圧することによって挟み込んだFRP緊張材31を把持するものである。また、溝32dの内周面は、緊張力が導入されたFRP緊張材31が滑ることなく把持することができるように、粗面に仕上げられている。
【0037】
これら3つの把持部材32a,32b,32cは、FRP緊張材31の軸線方向にほぼ同じ長さとなっており、上記外管33及びくさび34の軸線方向の寸法より長くなっている。そして、軸線方向にほぼ等断面となっている。これらの把持部材32a,32b,32cにはFRP緊張材31が伸長される方向の端面に鋼プレート35が接合され、
図7に示すように所定の間隔を維持して連結されている。この鋼プレート35には、把持部材32a,32b,32cの溝32dの断面と対応した4つの孔35aが形成されている。そして、把持部材32a,32b,32cがこの鋼プレート35で連結された状態で、互いに対向する溝内にわずかの間隙をおいて、又は接触した状態でFRP緊張材31を挿入することができるものとなっている。また、鋼プレート35は、把持部材32の他端側で対向する面の間隔が小さな抵抗で縮小できる程度に曲げ剛性が小さいものである。
なお、複数の把持部材32a,32b,32cを連結する部材は、上記鋼プレート35に限定されるものではなく、合成樹脂、ゴム等の他の材料を使用するものであってもよい。
【0038】
このように3つが組み合わされた把持部材32a,32b,32cには、
図6に示すように、4本のFRP緊張材31の端部を、鋼プレート35で接合された側から対向する溝内に挿入することができる。そして、
図5に示すようにそれぞれのFRP緊張材31を把持部材32a,32b,32cの間に挟み込むことができる。
【0039】
上記外管33は、外周面が円筒曲面となっており、中心軸線に沿って内径が変化する円形断面の貫通孔33aが設けられている。貫通孔33aの内径は、挿通されたFRP緊張31材の端側から該FRP緊張材31が伸長される方向に向かって直線的に縮小するものである。この内周面と緊張力が導入された状態のFRP緊張材31との間にくさび34が押し入れられてFRP緊張材31が固定されるとともに、この外管33から構造部材36に緊張力を伝達することができるものである。
【0040】
上記くさび34は、2つの半割片からなるものであり、対向するように配置されたときに、これらの外周面は円錐曲面に沿った形状になるものである。また、この円錐曲面は、上記貫通孔33aの内周面と対応するものである。
2つの半割片の互いに対向する面には円筒曲面を形成する凹部が設けられている。そして、FRP緊張材31を挟み込んで束ねられた把持部材32a,32b,32cが、上記円筒曲面を形成する凹部に嵌め入れられ、両側から半割片を押し付けることによって、複数のFRP緊張材31を挟み込んだ3つの把持部材32a,32b,32cを強固に把持するものである。
【0041】
このような定着装置では、複数の把持部材32a,32b,32cが鋼プレート35によって連結されているので、複数のFRP緊張材31を挟み込むように該把持部材32a,32b,32cを装着することが容易となる。そして、把持部材32a,32b,32cが装着されたFRP緊張材31の端部を外管33の貫通孔33aに挿通し、貫通孔33aの内周面と把持部材32の外周部との間にくさび34を押し入れるときに、FRP緊張材31の表面を傷つけることがなく、定着部でFRP緊張材31の強度が低下するのを防ぐことができる。
【0042】
また、把持部材32の軸線方向の長さは外管33及びくさび34より長くなっており、把持部材32と外管33との間にくさび34を押し入れたときに、把持部材32はくさび34の先端からFRP緊張材31が伸長される方向に突き出している。そして、先端は鋼プレート35によって複数の把持部材32a,32b,32cの相互間の間隔が保持されているので、把持部材32はくさび4が押圧される範囲では強くFRP緊張材31に強く押し付けられるとともに、くさび34の先端から突き出した部分では把持部材32の弾性変形及び鋼プレート35の変形によってFRP緊張材31への圧接力が徐々に低減される。したがって、把持部材32a,32b,32cがFRP緊張材1に押し付けられる圧接力は急変することなく徐々に変化し、圧接力の急変部でFRP緊張材1の繊維が破断するのが回避される。
【0043】
なお、上記定着装置で用いられる把持部材32a,32b,32cは軸線方向に等断面で、端部が鋼プレート35で連結されているが鋼プレート35の剛性は小さく、把持部材間で軸線方向の相対的な変位を生じさせようとする大きな力が作用したときに、これを拘束することはできない。つまり、外周部の把持部材(外周部材)32a,32cがくさび34によって拘束されても、くさび34が圧接されていない中央部の把持部材(中央部材)32bが、FRP緊張材31とともに外管33及びくさび34から抜け出そうとするのを拘束することができない。これに対し、FRP緊張材31がくさび34から抜け出そうとするときに、くさび34が圧接されていない中央部の把持部材32bと、くさびが圧接される外周部の把持部材32a,32cと、の間で軸線方向の相対的な変位が生じないように拘束する拘束手段を設けることができる。
【0044】
図9(a)に示す把持部材40は、
図6又は
図7に示す把持部材32に代えて用いることができるものであって、3つの把持部材40a,40b,40cを組み合わせて用いられる。それぞれの把持部材40a,40b,40cは、
図7に示す把持部材32a,32b,32cと同じ断面形状を有するものである。そして、先端部は鋼プレート41によって連結されている。これらの把持部材40では、くさび34が圧接されない中央部にある把持部材40bつまり中央部材が後端部に軸線と直角方向への張り出し部40dを備えている。この中央部材の張り出し部40dが、FRP緊張材31の端側でくさび34が圧接される外周部材40a,40cの後端面に突き当てられる。これにより、中央部材40bがFRP緊張材31の緊張力によって伸長される側に抜け出すのを拘束するものとなっている。また、張り出し部40dは、複数の把持部材40a,40b,40cの相互間で軸線と直角方向の相対的な変位を拘束しないので、くさび34によって把持部材40がFRP緊張材31に押し付けられるのを阻害することはない。
【0045】
また、
図9(b)に示す把持部材42は、
図7に示す把持部材32と同じ断面形状を有するもので、先端部は薄い鋼プレート35に代えて、厚い鋼プレート43によって3つの把持部材42a,42b,42cが連結されている。この鋼プレート43は、中央部材42bがFRP緊張材31とともに抜け出そうとするのを拘束することができる程度に厚く、高い剛性を有するものである。また、鋼プレート43で連結するのに代えて、先端の所定の長さの範囲で複数の把持部材が連続するように一体に形成されたものであってもよい。このような把持部材42を用いたときにも、把持部材間の軸線方向における相対的な変位を先端部で拘束することができ、中央部材42bがFRP緊張材31とともに抜け出そうとするのを抑えることができる。これにより、すべての把持部材42a,42b,42cとFRP緊張材31との接触面によってFRP緊張材31の緊張力が把持部材42に伝達される。また、この把持部材42を用いたときには、先端部で連結された把持部材間の角度変化が生じにくくなっており、くさび34によって把持部材42をFRP緊張材31に押し付けるときの変位が阻害されない程度に、くさび34が圧接される範囲から先端部までの範囲で把持部材42が柔軟に変形するように把持部材42の長さ及び曲げ剛性が設定される。
【0046】
一方、複数の把持部材の断面形状は、
図7に示すものの他に、
図10に示すような断面のものを採用することができる。
図10(a)に示す把持部材50は、一つの中央部材51と4つの外周部材52a,52b,52c,52dとを含むものである。そして、中央部材51とそれぞれの外周部材52との間にFRP緊張材31を挟み込んで把持するものとなっている。このような把持部材50では、くさび34によって作用する押圧力により4本のFRP緊張材31をほぼ均等な力で保持することができる。
【0047】
図10(b)に示す把持部材60は、一つの中央部材61と8つの外周部材62とを含むものである。そして、それぞれのFRP緊張材31を3つの外周部材62で三方を囲むように圧接するととともに中央部材61に押圧するものとなっている。このような把持部材60では、外周部材62つまりくさびが圧接される把持部材とFRP緊張材31とが接触している面積を大きくすることができ、外周部材62によってFRP緊張材31を保持する力を大きくすることができる。また、中央部材61を拘束するときには、その拘束力を小さくすることができる。
【0048】
図10(c)に示す把持部材70は、4つの把持部材70a,70b,70c,70dを周方向に配列し、隣り合う把持部材間にそれぞれFRP緊張材31を挟み込むものである。この把持部材70では、すべての把持部材70a,70b,70c,70dにくさび34が圧接され、くさび34と接触しない中央部材を用いることなく、4つのFRP緊張材31を把持部材に挟み込むことができる。そして、FRP緊張材31を挟み込むすべての把持部材70から緊張力がくさび34に伝達されるものとなる。
【0049】
図11は、複数のFRP緊張材を束ねて定着することができる定着装置の他の例を示す断面図である。
この定着装置は、
図5から
図8までに示す定着装置と同様に、4本のFRP緊張材81を把持部材82で挟み込むように束ねて定着するものであるが、くさびを用いておらず、把持部材82の外周部の形状によって把持部材82がくさびの機能を有するものとなっている。なお、外管83は
図5に示す定着装置と同様の貫通孔を有するものが用いられる。
【0050】
本定着装置においても、3つの把持部材82a,82b,82cが組み合わされて、互いに隣り合う把持部材間に2本ずつのFRP緊張材81を挟み込むものとなっている。そして、4本のFRP緊張材81を囲むように束ねられた把持部材82a,82b,82cが形成する外周面は、FRP緊張材81が伸長される側の所定範囲82Aで円筒曲面に沿った形状となり、その後方側の所定範囲82Bでは円錐曲面に沿った形状となっている。つまり、中央部材82bの両側に配置される外周部材82a,82cは、FRP緊張材81の端側に向かって断面が拡大するものとなっており、4本のFRP緊張材81を挟み込んで保持した状態で外周部が外管83の貫通孔の内周面と傾斜角が対応する形状となる。
一方、上記外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分82Aでは、把持部材82はほぼ等断面となっており、曲げ剛性が小さく弾性的に曲げ変形を生じるものである。
【0051】
束ねられた3つの把持部材82a,82b,82cは、先端部が薄い鋼プレート85で連結され、所定の間隔が保持されている。これにより、FRP緊張材81を挟み込むように容易に装着することが可能となっている。
【0052】
この定着装置では、あらかじめ4本のFRP緊張材81の端部を外管83の貫通孔に挿通しておき、該FRP緊張材81の端部に上記把持部材82a,82b,82cを装着する。そして、該FRP緊張材81が貫通孔から引き抜く方向に変位すると、束ねられた把持部材82a,82b,82cの外周部が貫通孔の内周面に圧接される。束ねられた把持部材82a,82b,82cの円錐曲面に沿った形状となる部分はくさびとして機能し、貫通孔の内周面から中心線に向かって押圧力が作用し、FRP緊張材81に圧接される。これによって4本のFRP緊張材81を保持し、緊張力が外管83を介して構造部材86に定着される。
また、外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分は、把持部材82が貫通孔の内周面に圧接されたときに貫通孔から突き出し、弾性的に緩やかな曲げ変形を生じてFRP緊張材81との圧接力が徐々に低減される。
このようにFRP緊張材81を把持して定着することにより、装着時にFRP緊張材81を傷つけること、及び圧接力の急変部で繊維が破断することの防止が可能となるものである。
【0053】
以上に説明した実施の形態では、1本のFRP緊張材を定着するもの又は4本のFRP緊張材を定着するものとなっているが、定着する本数はこれらに限定されるものではなく、2又は3本のFRP緊張材を定着するもの、5本以上のFRP緊張材を定着するものであってもよい。また、把持部材の断面形状、把持部材の数は、上記実施の形態に限定されず、FRP緊張材を挟み込んで把持することができる様々な形状のものを採用することができる。また、くさび、外管の形状についても様々な態様とすることができる。
FRP緊張材は、アラミド繊維を用いるもの、炭素繊維を用いるもの、ガラス繊維を用いるもの、鉱物繊維を用いるもの等があり、いずれについても本発明の定着装置は適用することができるものである。
また、その他の事項に関しても、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:FRP緊張材, 2:把持部材, 3:外管, 3a:外管の貫通孔, 4:くさび, 5:鋼リング, 6:構造部材,
11:FRP緊張材, 12:把持部材, 13:外管, 14:くさび, 15:鋼リング, 16:構造部材, 17:ナット,
21:FRP緊張材, 22:把持部材, 23:外管, 25:鋼リング, 26:構造部材, 22A:FRP緊張材に当接された把持部材の外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分, 22B:FRP緊張材に当接された把持部材の外周部が円錐曲面に沿った形状となる部分,
31:FRP緊張材, 32:把持部材, 32a,32c:外周部材, 32b:中央部材, 32d:把持部材に形成された溝, 33:外管, 33a:外管の貫通孔, 34:くさび, 35:鋼プレート, 36:構造部材,
40:把持部材, 40a,40c:外周部材, 40b:中央部材, 40d:張り出し部, 41:鋼プレート, 42:把持部材, 42a,42c:外周部材, 42b:中央部材, 43:厚い鋼プレート,
50:把持部材, 51:中央部材, 52:外周部材,
60:把持部材, 61:中央部材, 62:外周部材,
70:把持部材,
81:FRP緊張材, 82:把持部材, 82a,82c:外周部材, 82b:中央部材, 82A:束ねられた把持部材の外周部が円筒曲面に沿った形状となる部分, 82B:束ねられた把持部材の外周部が円錐曲面に沿った形状となる部分, 83:外管, 85:鋼プレート, 86:構造部材