特許第6869114号(P6869114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869114
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ガス機器
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20210426BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20210426BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F23K5/00 301D
   F24C3/12 U
   F24C3/12 X
   F24C3/12 E
   F16K31/04 K
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-113855(P2017-113855)
(22)【出願日】2017年6月8日
(65)【公開番号】特開2018-204916(P2018-204916A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚久
(72)【発明者】
【氏名】足立 基記
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−267153(JP,A)
【文献】 特開2000−181545(JP,A)
【文献】 特開2003−339195(JP,A)
【文献】 特開平05−280654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F16K 31/04
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数搭載されたバーナの各々に対応して、該バーナに供給される燃料ガスの流量を調節するガス流量調節弁と、該ガス流量調節弁を駆動するステッピングモータとが設けられており、該ステッピングモータを制御して前記バーナの火力を調節するガス機器において、
前記ステッピングモータの電源となる電池と、
前記ステッピングモータの作動に際して、当該ステッピングモータに通電した状態の電池電圧を検出する検出部と、
前記検出部による前記電池電圧の検出値に応じて、前記ステッピングモータの励磁方式を、駆動力の異なる複数の励磁方式の中から設定する設定部と
を備え、
複数設けられた前記ステッピングモータの中には、消費電力が異なるものがあり、
前記設定部は、同時に燃焼中の複数の前記バーナに対応する前記ステッピングモータの中で、最も消費電力が大きい前記ステッピングモータに設定した励磁方式を、燃焼中の他の前記バーナに対応する前記ステッピングモータにも適用する
ことを特徴とするガス機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバーナを搭載したガス機器に関し、特に、各バーナに対応して設けられたガス流量調節弁を駆動するステッピングモータの制御によってバーナの火力を調節するガス機器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを燃焼させるバーナを搭載したガス機器では、バーナに供給される燃料ガスの流量を調節するガス流量調節弁をステッピングモータで駆動するものがあり、ステッピングモータの制御によってバーナの火力を調節することが可能となっている。こうしたステッピングの電源として電池を用いる場合、電池が消耗してくることにより、ステッピングモータの駆動力が不足することがある。そこで、ステッピングモータの励磁方式として、駆動力の異なる複数の励磁方式を用意しておき、ステッピングモータの作動に際して電池電圧を検出し、検出値に応じて励磁方式を設定することが提案されている(特許文献1)。電池電圧の検出値が所定値以上である場合は、駆動性能を十分に出せるので、駆動力の小さい励磁方式を設定することで、電力の消費を抑える。これに対して、電池電圧の検出値が所定値よりも小さい場合は、駆動性能が低下するので、駆動力の大きい励磁方式を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−267153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数のバーナを搭載したガス機器では、各バーナに対応して設けられたステッピングモータの中に、消費電力(駆動力)が異なるものが存在する場合があり、電池が消耗してくると、ステッピングモータの消費電力の違いによって励磁方式の設定を変える必要があることから、複数のバーナを同時に燃焼中における制御が煩雑になることにより、火力調節のタイミングが遅れてしまうという問題があった。また仮に、消費電力が小さいステッピングモータに対して設定した励磁方式のまま変えないで、次に消費電力が大きいステッピングモータを作動させる(励磁する)と、駆動力が不足して正しく火力調節できないことがある。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、電池が消耗してきた際に複数のバーナを同時に燃焼させる場合において、各バーナに対応するステッピングモータの中に消費電力が異なるものが存在しても、制御を煩雑化することなく、励磁方式の設定によって各ステッピングモータの駆動力を確保することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明のガス機器は次の構成を採用した。すなわち、
複数搭載されたバーナの各々に対応して、該バーナに供給される燃料ガスの流量を調節するガス流量調節弁と、該ガス流量調節弁を駆動するステッピングモータとが設けられており、該ステッピングモータを制御して前記バーナの火力を調節するガス機器において、
前記ステッピングモータの電源となる電池と、
前記ステッピングモータの作動に際して、当該ステッピングモータに通電した状態の電池電圧を検出する検出部と、
前記検出部による前記電池電圧の検出値に応じて、前記ステッピングモータの励磁方式を、駆動力の異なる複数の励磁方式の中から設定する設定部と
を備え、
複数設けられた前記ステッピングモータの中には、消費電力が異なるものがあり、
前記設定部は、同時に燃焼中の複数の前記バーナに対応する前記ステッピングモータの中で、最も消費電力が大きい前記ステッピングモータに設定した励磁方式を、燃焼中の他の前記バーナに対応する前記ステッピングモータにも適用する
ことを特徴とする。
【0007】
このような本発明のガス機器では、燃焼中の複数のバーナの各々に対応するステッピングモータの励磁方式の設定を一律に揃えることで、電池が消耗してきた際に同時に燃焼中の複数のバーナを交互に火力調節する場合でも、ステッピングモータの消費電力の違いによって火力調節の度に励磁方式の設定を切り換える必要がないので、ステッピングモータの制御を簡素化することができる。結果として、火力調節の速やかな実行が可能となる。そして、最も消費電力が大きいステッピングモータに適した励磁方式を優先して適用することにより、何れのステッピングモータにおいても駆動力を確保する(駆動力の不足を回避する)ことができる。
【0008】
また、本発明のガス機器では、ステッピングモータの消費電力の比較範囲を、ガス機器に設けられた全てのステッピングモータではなく、その中で燃焼中のバーナに対応するステッピングモータに限定している。これにより、例えば、電池が消耗してきて、ガス機器に設けられた複数のステッピングモータの中で相対的に消費電力が大きいステッピングモータには駆動力の大きい励磁方式が適するような場合でも、その消費電力が大きいステッピングモータに対応するバーナが燃焼中でなければ、燃焼中のバーナに対応する相対的に消費電力が小さいステッピングモータに適した励磁方式が設定されるので、駆動力の小さい励磁方式に設定されることにより、電池の消費を抑えることができ、その結果、電池の寿命を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス機器の例としてガスコンロ1の外観を示した斜視図である。
図2】ガスコンロ1内における燃料ガスの供給経路を模式的に示した説明図である。
図3】本実施例の左コンロバーナ4Lに対応するガス流量調節弁22Lの構造を示した説明図である。
図4】左コンロバーナ4L,右コンロバーナ4R、グリルバーナ7aの火力を調節するための制御ブロック図である。
図5】本実施例のステッピングモータ40L,40R,40Gの励磁方式を示した説明図である。
図6】本実施例のコントローラ50がステッピングモータ40L,40R,40Gを制御するために実行するモータ制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ガス機器の例としてガスコンロ1の外観を示した斜視図である。本実施例のガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに開口する収容空間に嵌め込んで設置されるビルトインタイプであり、収容空間に収容される箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2上に載置されてコンロ本体2の上面を覆う天板3とを備えている。
【0011】
天板3上には、燃料ガスを燃焼させる左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rの上部が、天板3に形成された貫通孔から突出している。本実施例のガスコンロ1では、左コンロバーナ4Lと右コンロバーナ4Rとで大きさが異なり、強火力バーナである左コンロバーナ4Lは、標準バーナである右コンロバーナ4Rよりも一回り大きくなっている。そして、環状に形成された左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rの各々には、中央から突出して鍋底温度センサ5L,5Rが設けられており、五徳6L,6R上に鍋などの調理容器が置かれると、鍋底温度センサ5L,5Rが調理容器の底部に当接して温度を検出することが可能になっている。
【0012】
さらに、コンロ本体2には、グリル7が内蔵されており、ガスコンロ1の前面に設けられたグリル扉7dによって、グリル7の前方側を開閉可能になっている。グリル扉7dの右方には、左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rの各々に対応して、使用者が点火時や消火時、あるいは手動での火力調節時などに操作するコンロ操作ボタン8L,8Rが設けられている。また、コンロ操作ボタン8L,8Rの下方には、左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rにおける調理モードの設定や、調理温度の設定や、タイマの設定などを使用者が行うコンロ設定パネル10が設けられている。
【0013】
一方、グリル扉7dの左方には、使用者がグリル7の点火時や消火時、あるいは手動での火力調節時などに操作するグリル操作ボタン9が設けられている。また、グリル操作ボタン9の下方には、グリル7における調理モードの設定や、調理温度の設定や、タイマの設定などを使用者が行うグリル設定パネル11が設けられている。
【0014】
図2は、ガスコンロ1内における燃料ガスの供給経路を模式的に示した説明図である。本実施例のガスコンロ1では、上述した左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rと、グリル7の熱源として燃料ガスを燃焼させるグリルバーナ7aとが搭載されていることと対応して、燃料ガスを供給するガス通路20が3つに分岐している。左コンロバーナ4Lに対応する分岐路20Lには、分岐路20Lを開閉するガス遮断弁21Lと、ガス遮断弁21Lよりも下流側で分岐路20Lを通過する燃料ガスの流量を調節するガス流量調節弁22Lと、分岐路20Lの末端から燃料ガスを噴射する噴射ノズル23Lとが設けられている。ガス遮断弁21Lおよびガス流量調節弁22Lを開いて噴射ノズル23Lから燃料ガスが噴射されると、燃焼用の一次空気を吸い込みながら左コンロバーナ4Lに混合ガスが供給され、図示しない点火プラグの火花によって燃焼が開始される。
【0015】
同様に、右コンロバーナ4Rに対応する分岐路20Rにも、ガス遮断弁21Rと、ガス流量調節弁22Rと、噴射ノズル23Rとが設けられ、グリルバーナ7aに対応する分岐路20Gにも、ガス遮断弁21Gと、ガス流量調節弁22Gと、噴射ノズル23Gとが設けられている。本実施例のガスコンロ1では、左コンロバーナ4L、右コンロバーナ4R、グリルバーナ7aのうち、何れかを単体で燃焼させることも、同時に複数を燃焼させることも可能になっている。また、これら3つのバーナ4L,4R,7aは、それぞれ対応するガス流量調節弁22L,22R,22Gの開度(燃料ガスの流量)を制御することで、燃焼時の火力を調節することが可能である。
【0016】
図3は、本実施例の左コンロバーナ4Lに対応するガス流量調節弁22Lの構造の一例を示した説明図である。まず、図3(a)には、ガス流量調節弁22Lの断面図が示されている。ガス流量調節弁22Lの内部には、円筒形状の弁室30が形成されており、この弁室30の一端面に、燃料ガスが流入する流入路31が接続され、弁室30の周面に、燃料ガスが流出する流出路32が接続されている。
【0017】
弁室30内には、円柱形状の弁体33が収納されており、弁室30の中心軸に沿った進退方向(図中に白抜きの矢印で示す方向)に移動可能になっている。本実施例のガス流量調節弁22Lは、弁体33の流入路31側の先端部33aがテーパー状に形成された、いわゆるニードルバルブである。弁体33を流入路31側に移動させると、弁室30の流入路31との接続部分に形成された弁座30aに弁体33の先端部33aが当接することで、弁室30への燃料ガスの流入を遮断することが可能である。尚、図3(a)には、弁座30aに先端部33aが当接した弁体33の状態が破線で示されている。
【0018】
一方、弁体33を流入路31とは反対側に移動させると、弁座30aから弁体33の先端部33aが離隔することで、弁室30に流入した燃料ガスが流出路32を通って左コンロバーナ4Lへと供給される。尚、弁室30と弁体33とは、間にOリング36を介在させることで、流出路32よりも流入路31から離れた位置でシールされている。そして、弁体33の移動量に応じて弁座30aの開口面積(弁座30aと弁体33の先端部33aとの隙間)が変わることで、弁室30に流入する燃料ガスの流量が変化するので、左コンロバーナ4Lの火力を調節することができる。
【0019】
図示したガス流量調節弁22Lでは、弁体33の先端部33aとは反対側の端部に、弁体33の進退方向と直交してピン34が挿通されていると共に、このピン34が挿通された弁体33の端部を内部に収容する円筒形状の円筒カム35が設けられており、円筒カム35の周面には、ピン34を通すスリット35aが形成されている。また、この円筒カム35は、ステッピングモータ40Lの回転軸に取り付けられており、ステッピングモータ40Lの駆動によって、弁体33の軸回りに円筒カム35が回転する。尚、弁体33は、図示しないガイド機構によって軸回りに回転不能に進退方向の移動が案内されている。
【0020】
図3(b)には、弁体33および円筒カム35が斜視図で示されている。図示されるようにスリット35aは、円筒カム35の周面に沿って螺旋状に形成されている。そのため、図示した例では、円筒カム35を図中の時計回りに回転させると、ピン34がスリット35aに沿って円筒カム35のステッピングモータ40Lとは反対側に移動して、弁体33は弁座30aに近付く。一方、円筒カム35を図中の反時計回りに回転させると、ピン34がスリット35aに沿って円筒カム35のステッピングモータ40L側に移動して、弁体33は弁座30aから離れる。このようにステッピングモータ40Lの駆動による円筒カム35の回転運動が弁体33の進退方向の直線運動に変換される。
【0021】
尚、ガス流量調節弁22Lは、上述のように円筒カム35を用いたものに限られず、回転運動を直進運動に変換可能であれば、他の機構を採用してもよい。また、本実施例の右コンロバーナ4Rに対応するガス流量調節弁22Rの構造も、上述した左コンロバーナ4Lに対応するガス流量調節弁22Lと基本的には同様である。ただし、前述したように右コンロバーナ4Rが左コンロバーナ4Lよりも一回り小さい(火力が弱い)ことと対応して、ガス流量調節弁22Rは、ガス流量調節弁22Lに比べて、燃料ガスの最大流量が小さく、弁室30や弁体33が小型に形成されている。さらに、本実施例のグリルバーナ7aに対応するガス流量調節弁22Gには、左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rに採用したニードルバルブに代えて、周知のディスクバルブを採用している。
【0022】
図4は、左コンロバーナ4L,右コンロバーナ4R、グリルバーナ7aの火力を調節するための制御ブロック図である。前述したように3つのバーナ4L,4R,7aは、それぞれ対応するガス流量調節弁22L,22R,22Gの開度(燃料ガスの流量)を制御することで、燃焼時の火力を調節することが可能であり、左コンロバーナ4Lのガス流量調節弁22Lを駆動するステッピングモータ(以下、左コンロ用モータ)40Lと、右コンロバーナ4Rのガス流量調節弁22Rを駆動するステッピングモータ(以下、右コンロ用モータ)40Rと、グリルバーナ7aのガス流量調節弁22Gを駆動するステッピングモータ(以下、グリル用モータ)40Gとが、コントローラ50に接続されている。本実施例のガスコンロ1では、これら3つのステッピングモータ40L,40R,40Gの消費電力(必要とされる駆動力)が互いに異なり、左コンロ用モータ40Lが最も大きく、次に右コンロ用モータ40Rが大きく、グリル用モータ40Gが最も小さくなっている。
【0023】
コントローラ50には、ステッピングモータ40L,40R,40Gの電源となる電池51が接続されていると共に、この接続された電池51の電圧(電池電圧)を検出する検出部52が内蔵されている。また、コントローラ50には、前述したコンロ操作ボタン8L,8Rや、グリル操作ボタン9や、コンロ設定パネル10や、グリル設定パネル11が接続されている。さらに、コントローラ50には、左コンロバーナ4Lおよび右コンロバーナ4Rの各々に設けられた鍋底温度センサ5L,5Rや、グリル7内の温度を検出するグリル温度センサ7bが接続されている。
【0024】
コントローラ50は、操作ボタン8L,8R,9の操作や、設定パネル10,11で設定された調理温度と温度センサ5L,5R,7bの検出温度との比較に基づいて、燃焼中のバーナ4L,4R,7aの火力を自動で調節することが可能であり、通電によって対象のステッピングモータ40L,40R,40Gのコイルを励磁する励磁部53がコントローラ50に内蔵されている。この励磁部53は、複数のトランジスタなどを備えており、励磁方式に応じてパルス電流を発生させる。本実施例では、ステッピングモータ40L,40R,40Gの励磁方式として、駆動力が異なる複数の励磁方式を有しており、コントローラ50には、ステッピングモータ40L,40R,40Gの作動に際して、何れかの励磁方式を設定する設定部54が内蔵されている。この設定部54は、検出部52で検出された電池電圧に応じて励磁方式を設定する。
【0025】
図5は、本実施例のステッピングモータ40L,40R,40Gの励磁方式を示した説明図である。本実施例のステッピングモータ40L,40R,40Gは何れも、図5(a)に回路図で示すように、一般的なユニポーラ型モータであり、2つのコイル40a,40bと、ロータ40cとを備えている。それぞれのコイル40a,40bは、中間タップから電源が供給され、一方のコイル40aがA相およびA’相(A相と磁界が逆極性)を成し、他方のコイル40bがB相およびB’相(B相と磁界が逆極性)を成している。そして、A相−B相−A’相−B’相の順に通電する(励磁する)ことで、ロータ40cが回転する。また、励磁の順を反対(B’相−A’相−B相−A相)にすると、ロータ40cが逆回転する。
【0026】
本実施例では、ステッピングモータ40L,40R,40Gの励磁方式として、図5(b)に示す2相励磁と、図5(c)に示す1−2相励磁とを有しており、パルス波形が立ち上がっている状態では通電されている。図5(b)の2相励磁では、次の相とタイミングをパルス幅の半分だけずらしながら、同時に2つの相ずつ励磁する。一方、図5(c)の1−2相励磁では、次の相とタイミングをパルス幅の3分の2だけずらすことで、1つの相だけを励磁する状態と、同時に2つの相を励磁する状態とを交互に繰り返す。
【0027】
図5(b)の2相励磁と図5(c)の1−2相励磁とを比較すると、2相励磁では、常に2つの相ずつ励磁するので、1−2相励磁よりも大きな駆動力が得られるものの、電力を多く消費する。また、1−2相励磁では、1パルスあたりロータ40cの回転角度(ステップ角)が2相励磁の半分になるため、角度制御の精度が高い。
【0028】
図6は、本実施例のコントローラ50がステッピングモータ40L,40R,40Gを制御するために実行するモータ制御処理のフローチャートである。この処理は、操作ボタン8L,8R,9の操作や、設定パネル10,11で設定された調理温度と温度センサ5L,5R,7bの検出温度との比較に基づいて、コントローラ50が3つのバーナ4L,4R,7aの何れかの火力調節が必要と判断すると、開始される。モータ制御処理では、まず、3つのバーナ4L,4R,7aの中で火力調節を行うバーナ(以下、対象バーナ)の他に燃焼中のバーナがあるか否かを判断する(STEP100)。
【0029】
対象バーナの他に燃焼中のバーナがなく、対象バーナの単体の燃焼である場合は(STEP100:no)、3つのステッピングモータ40L,40R,40Gのうち、対象バーナに対応するステッピングモータ(以下、対象モータ)に通電した状態で、電池電圧を検出し(STEP102)、電池電圧の検出値が所定の基準値以上であるか否かを判断する(STEP104)。この基準値は、電池51の消耗を判定するための基準となる値であり、1.5V規格で2個の電池51を用いている本実施例のガスコンロ1では、基準値が2.5Vに設定されている。
【0030】
そして、電池電圧の検出値が基準値以上である場合は(STEP104:yes)、電池51はあまり消耗しておらず、対象モータの駆動性能を十分に出せるため、励磁方式を駆動力の小さい1−2相励磁に設定し(STEP106)、電力の消費を抑える。一方、電池電圧の検出値が基準値よりも小さい場合は(STEP104:no)、電池51の消耗によって対象モータの駆動性能が低下するので、励磁方式を駆動力の大きい2相励磁に設定する(STEP108)。
【0031】
このように電池電圧の検出値に応じて対象モータの励磁方式を設定したら、続いて、対象バーナの火力調節量に応じて対象モータの必要回転量を決定する(STEP110)。前述したように、バーナ4L,4R,7aの火力調節は、対応するガス流量調節弁22L,22R,22Gの開度(燃料ガスの流量)を制御することで行われ、燃料ガスの流量は弁体33の移動量に応じて変化することから、STEP110では、必要とされる弁体33の移動量を得るための対象モータの回転量を算定する。尚、本実施例のステッピングモータ40L,40R,40Gは何れも、2相励磁におけるステップ角(1パルスあたりの回転角度)が1.8度であり、200パルスで1回転する。一方、1−2相励磁におけるステップ角は0.9度であり、200パルスで180度回転する。
【0032】
こうして対象モータの必要回転量を決定すると、設定された励磁方式で対象モータを励磁する(STEP112)。そして、必要回転量まで対象モータを回転させて対象バーナの火力調節を完了したら、対象モータの励磁を停止し、図6のモータ制御処理を終了する。
【0033】
以上では、モータ制御処理を開始した直後のSTEP100の判断で、対象バーナの他に燃焼中のバーナがない場合について説明したが、対象バーナの他に燃焼中のバーナがある場合は(STEP100:yes)、3つのステッピングモータ40L,40R,40Gのうち、燃焼中の他のバーナに対応するステッピングモータ(以下、比較モータ)と、対象モータとで消費電力を比較し、対象モータの消費電力が比較モータよりも大きいか否かを判断する(STEP114)。
【0034】
前述したように本実施例のガスコンロ1では、左コンロ用モータ40Lの消費電力が最も大きく、次が右コンロ用モータ40Rであり、グリル用モータ40Gの消費電力が最も小さくなっている。例えば、対象モータが左コンロ用モータ40Lであり、比較モータ(右コンロ用モータ40Rあるいはグリル用モータ40G)よりも消費電力が大きい場合は(STEP114:yes)、STEP102の処理に進み、対象モータ(左コンロ用モータ40L)に通電した状態で電池電圧を検出する。そして、検出値が基準値以上であれば(STEP104:yes)、励磁方式を1−2相励磁に設定し(STEP106)、検出値が基準値に満たなければ(STEP104:no)、励磁方式を2相励磁に設定する(STEP108)。
【0035】
本実施例のSTEP102では、対象モータに通電した状態で電池電圧を検出することにより、電池51の消耗程度が同じであっても、通電されるステッピングモータ40L,40R,40Gの消費電力の違いによって電池電圧の検出値が異なることがあり、消費電力が大きいステッピングモータの方が電圧降下によって検出値が小さくなる傾向にある。そのため、電池51が消耗してくると、消費電力の小さいグリル用モータ40Gでは検出値が基準値以上となっても、消費電力の大きい左コンロ用モータ40Lでは検出値が基準値を下回ることがある。このような場合に、仮にグリル用モータ40Gに対して設定された駆動力の小さい1−2相励磁のまま励磁方式を変えないで、次に左コンロ用モータ40Lを励磁したとすると、左コンロ用モータ40Lの駆動性能を十分に出せず駆動力が不足する(正しく火力調節できない)ことがある。そこで、比較モータよりも対象モータの消費電力が大きい場合は、改めて励磁方式を設定することにより、対象モータの駆動力を確保することが可能となる。
【0036】
これに対して、STEP114の判断で、例えば、対象モータがグリル用モータ40Gであり、比較モータ(左コンロ用モータ40Lあるいは右コンロ用モータ40R)よりも消費電力が小さい場合は(STEP114:no)、改めて励磁方式を設定することなく、最も消費電力が大きい比較モータに対して設定された励磁方式を、対象モータに適用する(STEP116)。その後、前述したSTEP110およびSTEP112の処理を実行して、図6のモータ制御処理を終了する。
【0037】
以上に説明したように本実施例のガスコンロ1では、3つのバーナ4L,4R,7aのうち複数を同時に燃焼させる場合、燃焼中の複数のバーナに対応するステッピングモータ(40L,40R,40Gのうち2つまたは3つ)の中で、最も消費電力が大きいステッピングモータに対して設定された励磁方式を、他のステッピングモータにも適用するようになっている。このように燃焼中の複数のバーナの各々に対応するステッピングモータの励磁方式の設定を一律に揃えることで、電池51が消耗してきた際に同時に燃焼中の複数のバーナを交互に火力調節する場合でも、ステッピングモータの消費電力の違いによって火力調節の度に励磁方式の設定を切り換える必要がないので、ステッピングモータの制御を簡素化することができる。結果として、火力調節の速やかな実行が可能となる。そして、消費電力が大きいステッピングモータに適した励磁方式を優先して適用することにより、何れのステッピングモータにおいても駆動力を確保する(駆動力の不足を回避する)ことが可能となる。
【0038】
また、本実施例のガスコンロ1では、ステッピングモータの消費電力の比較範囲を、ガスコンロ1に搭載された全てのステッピングモータ40L,40R,40Gではなく、その中で燃焼中のバーナに対応するステッピングモータに限定している。これにより、例えば、電池51が消耗してきて、最も消費電力が大きい左コンロ用モータ40Lには駆動力の大きい2相励磁が適するような場合でも、左コンロバーナ4Lが燃焼中でなければ、左コンロ用モータ40Lよりも消費電力が小さい右コンロ用モータ40Rまたはグリル用モータ40Gに適した励磁方式が設定されるので、駆動力の小さい1−2相励磁に設定されることにより、電池の消費を抑えることができ、その結果、電池51の寿命を延ばすことが可能となる。
【0039】
以上、本実施例のガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0040】
例えば、前述した実施例では、ステッピングモータ40L,40R,40Gの励磁方式として、2相励磁と1−2相励磁とを有していたが、励磁方式はこれらに限られず、1つの相ずつ順番に励磁する1相励磁(図示省略)を有していてもよい。1相励磁では、励磁される相が常に1つずつであるため、2相励磁や1−2相励磁に比べて得られる駆動力が小さいものの、電力の消費が少ない。そして、電池電圧の検出値に応じて、1相励磁と2相励磁とを切り換えたり、あるいは1相励磁と1−2相励磁とを切り換えたりすることも可能である。
【0041】
また、前述した実施例では、3つのバーナ4L,4R,7aの各々に対応してガス流量調節弁22L,22R,22Gと、ステッピングモータ40L,40R,40Gとを備えていたが、これらバーナ、ガス流量調節弁、ステッピングモータの数は、複数であれば3つに限られず、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0042】
また、前述した実施例では、ガス機器としてガスコンロ1を例に説明したが、ガス機器はガスコンロ1に限られない。例えば、複数のバーナを搭載し、各バーナに対応するガス流量調節弁とステッピングモータとを備えた給湯器であってもよく、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
4L…左コンロバーナ、 4R…右コンロバーナ、 5…鍋底温度センサ、
6…五徳、 7…グリル、 7a…グリルバーナ、
7b…グリル温度センサ、 7d…グリル扉、 8…コンロ操作ボタン、
9…グリル操作ボタン、 10…コンロ設定パネル、 11…グリル設定パネル、
20…ガス通路、 21…ガス遮断弁、 22…ガス流量調節弁、
23…噴射ノズル、 30…弁室、 30a…弁座、
31…流入路、 32…流出路、 33…弁体、
33a…先端部、 34…ピン、 35…円筒カム、
35a…スリット、 36…Oリング、 40…ステッピングモータ、
40a…コイル、 40b…コイル、 40c…ロータ、
50…コントローラ、 51…電池、 52…検出部、
53…励磁部、 54…設定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6