特許第6869139号(P6869139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6869139-二軸混練押出機のシリンダ構造 図000002
  • 特許6869139-二軸混練押出機のシリンダ構造 図000003
  • 特許6869139-二軸混練押出機のシリンダ構造 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869139
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】二軸混練押出機のシリンダ構造
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/48 20060101AFI20210426BHJP
   B29B 7/58 20060101ALI20210426BHJP
   B29C 48/685 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20210426BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20210426BHJP
【FI】
   B29B7/48
   B29B7/58
   B29C48/685
   B29C48/40
   B29C48/25
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-150484(P2017-150484)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-25863(P2019-25863A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】河本 亮
(72)【発明者】
【氏名】増田 英男
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02632892(FR,A1)
【文献】 特開2014−162069(JP,A)
【文献】 特開昭60−168623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/48
B29B 7/58
B29C 48/00 − 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸混練押出機の混練部を形成するシリンダののど部分が、交換可能で外縁部がシリンダ本体に連接するようにシリンダ本体に取り囲まれる取付座に装着され、シリンダ中心方向に突出するチップと、そのチップをシリンダ本体と一体になるように押圧する取付手段と、を有してなる二軸混練押出機のシリンダ構造。
【請求項2】
シリンダ本体のチップ取付座は、そのチップ取付座とチップの外縁部との間の面圧が高くなる構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの損傷を生じ易い部分を交換可能にした二軸混練押出機のシリンダ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料の耐熱性、強度の向上又は高機能化を目的として、樹脂にミクロサイズからナノサイズにわたる炭酸カルシウム、カーボンブラック、アルミナ、タルク、鉄粉あるいは酸化チタンなど、また、μmからcmの長さのガラス繊維や炭素繊維など各種フィラーを含む樹脂材料が製造されている。また、使用される樹脂についても各種材質の樹脂が使用され、樹脂製品の用途範囲が拡大している。これらのフィラーを含む樹脂材料又は樹脂製品は二軸混練押出機を使用して好適に生産することができ、二軸混練押出機のシリンダに求められる耐摩性、耐食性はますます高くなっている。
【0003】
耐摩性、耐食性の高い二軸混練押出機用シリンダとして種々の提案がなされている。例えば、特許文献1に、中空母材と、内表面に接する処理対象物に対する耐腐食、耐摩耗又は強度等の機械的特性に対応した複数のライニング材とから構成される複合中空部材であって、前記ライニング材が少なくとも半径方向と長手方向のいずれか、両方向又はそれらの混合の形態において層構造をなしている複合中空部材が提案されている。この複合中空部材は、例えば、流体輸送域(先端部)を複硼化物を多く含むライニング材とし、遷移域(計量・圧縮部)には硬質物が少なく熱膨張係数の差が小さい高強度材とし、固体輸送域(供給部)には、複硼化物にWやCrの炭化物を組み合わせたライニング材とされる。かかる複合中空部材からなるシリンダは、シリンダ内面に部位別に最適化されたライニング層が形成されるので、優れた耐腐食性、耐摩耗性及び強度を有するとされる。
【0004】
特許文献2に、金属製外筒の内側に一対に並接してそれぞれ第1の軸心と第2の軸心を有する連通したスクリュー孔が設けられた2軸シリンダにおいて、この連通したスクリュー孔が設けられた2軸形状部の外形を円筒形状とした内筒ライナーを形成しその材質をセラミックスで形成し、該内筒ライナーを金属製外筒に焼き嵌め保持させたセラミックス2軸シリンダが提案されている。このセラミックス2軸シリンダは、ライナー本体をサイアロンセラミックスなどから成形することができ、かかるライナー本体のプラスチック成形時に発生する内部(引張り)応力やスクリューの回転衝撃による割れを防止することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-238725号公報
【特許文献2】特開07-12231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二軸押出機のシリンダは、その内面を窒化処理又はクロムメッキなどの表面処理をしたもの、特許文献1に記載する複硼化物、WやCrの炭化物などのセラミックスのライニング材あるいは特許文献2に記載する窒化珪素系のセラミックスのライナーを設けたものが使用されている。かかるセラミックライニング又はライナーを有するシリンダは、内面を表面処理したシリンダより耐摩性、耐食性及びメンテナンス性が優れる。しかしながら、それらのセラミックライニングシリンダが表面処理シリンダより格段に耐摩性、耐食性が優れるというわけでもない。また、二軸混練押出機のシリンダは、生産性や経済性をも考慮に入れて、耐摩性、耐食性及びメンテナンス性に優れたものが求められる。
【0007】
特許文献1に記載の複合中空部材は、耐摩性及び耐食性に優れた二軸押出機用シリンダとして好ましいが、複雑な構造を有し、実際に二軸押出機用シリンダを成形するのは容易でない。また、特許文献2に記載のセラミックス2軸シリンダにおいても焼嵌めにより所定の特性を有するものを成形するのは容易でない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、二軸混練押出機用シリンダの耐摩性、耐食性を要求される部位を、適度に耐摩性、耐食性を有するものであって容易に交換可能な部品にすることにより、耐摩性、耐食性、メンテナンス性及び経済性に優れた二軸混練押出機のシリンダ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る二軸混練押出機のシリンダ構造は、二軸混練押出機の混練部を形成するシリンダののど部分が、交換可能なシリンダ中心方向に突出するチップと、そのチップをシリンダ本体と一体になるように押圧する取付手段と、を有してなる。
【0010】
上記発明において、シリンダ本体のチップ取付座は、そのチップ取付座とチップの外縁部との間の面圧が高くなる構造を有しているのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐摩性、耐食性について所要の特性が維持され、メンテナンス性、経済性に優れた二軸混練押出機のシリンダ構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る二軸混練押出機のシリンダ構造を示す断面図である。
図2図1に示すチップ部分の拡大断面図である。
図3】チップ部分の他の実施例を示す拡大断面図である。
図4】二軸混練押出機のシリンダののど部分の摩耗試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る二軸混練押出機のシリンダにチップが装着されているシリンダ構造を示している。図1(a)は横断面(AA断面)、図1(b)は縦断面を示す。図2は、図1のチップ部分の拡大断面を示す。本発明に係るシリンダ構造は、図1又は図2に示すように、二軸混練押出機の混練部を形成するシリンダ10は、チップ15と、そのチップ15をシリンダ本体11と一体になるように押圧する取付手段20とを有している。そして、チップ15は、シリンダののど部分12に装着されており、取付手段20により着脱され交換可能になっている。
【0014】
シリンダののど部分12は、二軸混練押出機のスクリュエレメントに沿って搬送されてきた混練物に乱れが生じる部分であり、摩耗が最も進行する部位である。チップ15はこのようなシリンダの摩耗が激しいのど部分12に装着される。混練対象物が、アルミナやガラス繊維などのフィラーを含む樹脂、弗素、塩素又は硫黄などの腐食性ガスを発生する樹脂である場合は、のど部分12の摩耗が激しくなる。
【0015】
チップ15は、二軸混練押出機のシリンダの通常ののど部分(チップ15の存在しない部分)と同等の外形形状を有し、シリンダの中心方向に突出している。チップ15の外形部分は高圧で流動する混練物に曝されるので、チップ15とチップ取付座13との間に混練物が侵入しないように、チップ取付座13とチップ15の外縁部との間の面圧が高くなるようにするのがよい。このため、チップ15の底部とチップ取付座13の形状を、例えば、図2又は図3に示す形状にすることができる。図2によれば、チップ取付座13は、中心部に段付き部13bを有し、外縁部13aがすり鉢状になっており、チップ15の底部は上記チップ取付座13にはまり込む形状になっている。この場合、チップ取付座13の外縁部13aの傾斜角を、チップ15の底部の外縁部の傾斜角度よりわずかに大きくし、図2に示すように、チップ15をチップ取付座13に載置した状態では、チップ15の底部とチップ取付座13との間にわずかに隙間が生じるようにするのがよい。これにより、チップ15をチップ取付座13に装着したとき、チップ取付座13とチップ15の外縁部との間の面圧を高くすることができ、混練物がチップ15とチップ取付座13との間に侵入するのを防止することができる。
【0016】
図3は、チップ15の底部の形状を曲面状にした例を示し、チップ取付座13の形状はその曲面形状に沿うようになっている。チップ15の曲面状の底部の曲率半径は、チップ取付座13の曲面部の曲率半径よりわずかに大きくなっている。このため、図2の例と同様に、チップ15をチップ取付座13に載置した状態では、チップ15の底部とチップ取付座13との間にわずかに隙間が生じるようになっている。チップ15は、以下に説明する取付手段20により、チップ取付座13とチップ15の外縁部との間の面圧が所定の範囲になるように装着される。このとき、図2に示す飛出し高さd1、引込み深さd2は、0.2mm以下になるように、取付手段20によりチップ15の高さ位置が調整された後、研磨等の機械加工で境界部分のシリンダ内面の仕上げ(面合わせ)を行う。
【0017】
チップ15は、その使用環境を考慮して、所要の耐摩性、耐食性を有しメンテナンス性、経済性に優れた材質又は表面処理方法が選択される。図4は、従来のシリンダののど部分12の摩耗状況を造粒用として連続稼動で使用する二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製CMPシリーズ)のメンテナンス時に測定した結果の一例を示すグラフである。のど部分12は、0.2mm厚さのCrメッキ又は0.5mm厚さの窒化処理がされている。図4に示すように、
クロムメッキ(Crメッキ)も窒化処理もほぼ同等の耐摩性を有しており、摩耗量は経過年数にほぼ比例している。そして、摩耗によりCrメッキ層又は窒化処理層が摩滅すると急速に摩耗が進んでいることが分かる。すなわち、チップ15は、Crメッキ層又は窒化処理層が摩滅する前に交換することによりシリンダの耐用年数を格段に長くすることができる。チップ15の材質や表面処理をどのようにするかは、経済性、メンテナンス性を考慮して、選択すればよい。
【0018】
チップ15はシリンダ本体11と一体になるように装着されるとともに、着脱が容易になるような取付手段20が採用される。取付手段20は、例えば図2に示すような、チップ15に螺着され回り止めを有するボルトを、図1に示すようにシリンダ10の軸方向に4本設けた構造にすることができる。これにより、チップ15は、シリンダ本体11と一体になり、所定の面圧でチップ取付座13に装着することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 シリンダ
11 シリンダ本体
12 のど部分
13 チップ取付座
15 チップ
20 取付手段
図1
図2
図3
図4