(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管理制御部は、前記電池部材の前記劣化情報に基づいて、前記電池部材のうち少なくとも前記検出劣化部材の経年による劣化傾向を推定し、前記劣化傾向に基づいて前記検出劣化部材の現在からの使用可能期間を推定し、前記使用可能期間が経過する前に、前記劣化燃料電池システム群の運転を停止させる、請求項1に記載の燃料電池制御システム。
前記補機は、前記原燃料の前記改質器への供給を行う原燃料ポンプ、前記改質水の前記改質器への供給を行う改質水ポンプ、及び、前記空気の前記セルスタックへの供給を行うエアブロアの少なくともいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池制御システム。
前記管理制御部は、前記補機の制御によっても前記劣化推定部材の使用寿命期間が延びない場合は、前記劣化推定部材を前記検出劣化部材として検出する、請求項7に記載の燃料電池制御システム。
前記管理制御部は、前記電池部材それぞれの劣化情報が、前記電池部材それぞれに対して設定されている劣化閾値に対して、前記電池部材の劣化を示している場合、当該電池部材を前記検出劣化部材として検出する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池制御システム。
原燃料を改質水により水蒸気改質して燃料ガスに変化させる改質器と、前記改質器からの燃料ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、前記原燃料の前記改質器への供給、前記改質水の前記改質器への供給及び前記空気の前記セルスタックへの供給を含む前記セルスタックでの発電の補助を行う補機とを有する複数の燃料電池システムと、
前記複数の燃料電池システムとネットワークを介して通信可能に接続されており、前記燃料電池システムを構成する、前記セルスタック及び前記補機を含む電池部材それぞれの製造ロット番号と各電池部材を備える燃料電池システムそれぞれとを対応づけた電池部材対応表を記憶する記憶部と、前記燃料電池システムを制御する管理制御部とを有する管理装置と、
を備える燃料電池制御システムにおける燃料電池制御方法であって、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも1つの燃料電池システムが有する劣化取得手段は、前記セルスタックの劣化状態及び前記補機の劣化状態の少なくともいずれかを含む劣化情報を取得し、
前記管理制御部は、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも一の燃料電池システムから、当該燃料電池システムを構成する前記電池部材の前記劣化情報を前記ネットワークを介して取得し、
前記電池部材のうちから、前記劣化情報に基づいて劣化していると判定した検出劣化部材を検出し、
前記電池部材対応表において前記検出劣化部材の製造ロット番号に対応している複数の電池部材を複数の劣化部材として特定し、前記複数の劣化部材それぞれを備える燃料電池システム群である劣化燃料電池システム群を前記検出劣化部材の前記劣化情報に基づいて停止する、燃料電池制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、セルスタックの劣化情報をどのように取得するかを開示しているものの、当該劣化情報を利用して燃料電池システムを如何に制御するかについては開示していない。
【0005】
そこで、本発明は、劣化情報の新たな利用方法を提供する燃料電池制御システム及び燃料電池制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池制御システムの特徴構成は、
複数の燃料電池システムと、
前記複数の燃料電池システムとネットワークを介して通信可能に接続されている管理装置と、
を備える燃料電池制御システムであって、
各燃料電池システムは、
原燃料を改質水により水蒸気改質して燃料ガスに変化させる改質器と、
前記改質器からの燃料ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、
前記原燃料の前記改質器への供給、前記改質水の前記改質器への供給及び前記空気の前記セルスタックへの供給を含む前記セルスタックでの発電の補助を行う補機とを有し、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも1つの燃料電池システムは、
前記セルスタックの劣化状態及び前記補機の劣化状態の少なくともいずれかを含む劣化情報を取得する劣化取得手段を有し、
前記管理装置は、
前記燃料電池システムを構成する、前記セルスタック及び前記補機を含む電池部材それぞれの製造ロット番号と各電池部材を備える燃料電池システムそれぞれとを対応づけた電池部材対応表を記憶する記憶部と、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも一の燃料電池システムから、当該燃料電池システムを構成する前記電池部材の前記劣化情報を前記ネットワークを介して取得し、前記電池部材のうちから、前記劣化情報に基づいて劣化していると判定した検出劣化部材を検出し、前記電池部材対応表において前記検出劣化部材の製造ロット番号に対応している複数の電池部材を複数の劣化部材として特定し、前記複数の劣化部材それぞれを備える燃料電池システム群である劣化燃料電池システム群を前記検出劣化部材の前記劣化情報に基づいて停止する管理制御部とを有する点である。
【0007】
上記特徴構成によれば、管理装置と燃料電池システムとは、ネットワークを介して接続されている。よって、管理装置は、燃料電池システムを構成する電池部材の劣化情報を、燃料電池システムからネットワークを介して取得できる。そのため、例えばサービスマン等が、各燃料電池システムが備え付けられている場所を訪問することなく、燃料電池システムを構成している電池部材の劣化情報を収集することができる。
また、管理制御部は、燃料電池システムから取得した劣化情報に基づいて、当該燃料電池システムを構成している電池部材のうちから検出劣化部材を検出できるだけでなく、この検出劣化部材と同様の劣化状態を有している可能性が高い、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の電池部材を劣化部材として特定することができる。
【0008】
そして、検出劣化部材の使用によって、それが備えられている燃料電池システムが劣化するのと同様に、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群もまた、当該劣化部材の使用によって同様の劣化状態となる可能性が高い。そこで、管理制御部は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群とし、劣化燃料電池システム群の運転を検出劣化部材の劣化情報に基づいて一括して停止する。これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
なお、検出劣化部材が備えられている燃料電池システムの運転は、例えば、当該燃料電池システムの運転制御部によって停止される。あるいは、管理制御部が、検出劣化部材が備えられている燃料電池システムの運転を停止してもよい。
【0009】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記管理制御部は、前記電池部材の前記劣化情報に基づいて、前記電池部材のうち少なくとも前記検出劣化部材の経年による劣化傾向を推定し、前記劣化傾向に基づいて前記検出劣化部材の現在からの使用可能期間を推定し、前記使用可能期間が経過する前に、前記劣化燃料電池システム群の運転を停止させる点にある。
【0010】
セルスタック及び補機の少なくともいずれかの検出劣化部材の使用可能期間が経過した後も、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群の運転を継続すると、発電出力が悪化するだけでなく、故障を招く。よって、検出劣化部材の使用可能期間が経過する前に劣化燃料電池システム群の運転を一括して停止する。
【0011】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記電池部材は、前記燃料電池システムの筐体を冷却するための冷却手段と、前記セルスタックで発電した直流電圧を交流電圧に変換する電力変換装置と、をさらに含み、
前記劣化取得手段は、前記冷却手段の劣化状態及び前記電力変換装置の劣化状態の少なくともいずれかをさらに取得し、
前記劣化情報には、前記冷却手段の劣化状態及び前記電力変換装置の劣化状態の少なくともいずれかがさらに含まれ、
前記管理制御部は、
前記検出劣化部材の使用可能期間が所定期間未満であり、かつ前記検出劣化部材が前記セルスタック及び前記補機の少なくともいずれかである場合は、前記劣化燃料電池システム群の運転を即座に停止させ、
前記検出劣化部材の使用可能期間が所定期間未満であり、かつ前記検出劣化部材が前記冷却手段及び前記電力変換装置の少なくともいずれかである場合は、前記使用可能期間が経過するまでに、前記劣化燃料電池システム群の運転を徐々に停止させる点にある。
【0012】
検出劣化部材がセルスタック及び補機の少なくともいずれかである場合、それらは発電に直接関連する部材である。このような検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群の運転を、残りの使用可能期間を経過した後も継続すると、劣化燃料電池システム群の発電出力の悪化及び故障を招く。そこで、セルスタック及び補機の少なくともいずれかである検出劣化部材が劣化しており、その使用可能期間が所定期間未満である場合には、管理制御部は、劣化燃料電池システム群の運転を即座に停止させる。
【0013】
一方、検出劣化部材がセルスタック及び補機以外の冷却手段及び電力変換装置である場合、それらは燃料電池システムの発電出力の悪化及び故障等に直接的に影響する部材ではない。よって、検出劣化部材である冷却手段及び電力変換装置が残りの使用可能期間まで使用可能であれば、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群には問題は生じない。そこで、冷却手段及び電力変換装置の少なくともいずれかである検出劣化部材が劣化しており、その使用可能期間が所定期間未満である場合には、管理制御部は、劣化燃料電池システム群の運転を徐々に停止させる。これにより、劣化燃料電池システム群を即時に停止させる場合に比べて、劣化燃料電池システム群の故障などの悪影響を抑制できる。
【0014】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記補機は、前記原燃料の前記改質器への供給を行う原燃料ポンプ、前記改質水の前記改質器への供給を行う改質水ポンプ、及び、前記空気の前記セルスタックへの供給を行うエアブロアの少なくともいずれかである点にある。
【0015】
原燃料ポンプ、改質水ポンプ及びエアブロアは、セルスタックが発電するために必要な原燃料、改質水及び空気等の材料を供給する。これらの発電に直接的に関連する材料を供給するための補機が劣化した状態で燃料電池システムの運転を継続すると、燃料電池システムの発電出力が悪化し、ひいては、故障する可能性がある。そして、検出劣化部材がこれらの補機である場合、この検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群もまた、前述と同様に発電出力が悪化し、ひいては、故障する可能性がある。
【0016】
そこで、管理制御部は、検出劣化部材がこれらの補機である場合には、この検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群を、これらの補機の劣化情報に基づいて停止する。これにより、劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障するのを未然に防止できる。
【0017】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記電池部材を製造する製造装置がさらにネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記管理制御部は、前記製造装置で製造された、前記検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する少なくとも一つの劣化部材が、市場へ流出し及び新たに製造されるかの少なくともいずれかを阻止するための阻止情報を前記製造装置に送信する点にある。
【0018】
管理制御部が、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が市場へ流出し及び新たに製造されるかの少なくともいずれかを阻止するための阻止情報を製造装置に送信する。そのため、これらの劣化部材が、製造装置から搬出され、市場に流通し、また新たに製造されるのを阻止できる。
【0019】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記電池部材を製造する製造装置と、
前記製造装置で製造された電池部材を格納する保管装置と、
がさらにネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記管理制御部は、前記製造装置で製造された、前記検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する少なくとも一つの劣化部材が、市場へ流出し及び新たに製造されるかの少なくともいずれかを阻止するための阻止情報を前記保管装置に送信する点にある。
【0020】
管理制御部が、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が市場へ流出し及び新たに製造されるかの少なくともいずれかを阻止するための阻止情報を保管装置に送信する。そのため、これらの劣化部材が、保管装置から搬出され、市場に流通し、また新たに製造されるのを阻止できる。
【0021】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記管理制御部は、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも一の燃料電池システムを構成する前記電池部材についての前記劣化情報に基づいて、前記電池部材の経年による劣化傾向を推定し、
前記劣化傾向に基づいて前記電池部材の使用寿命期間を特定し、前記使用寿命期間が前記電池部材の設計寿命期間又は前記燃料電池システムの設計寿命期間より短いと判定すると、当該電池部材を劣化推定部材と特定し、前記劣化推定部材の使用寿命期間を延ばすように、前記補機の制御によって、前記原燃料の前記改質器への供給量、前記改質水の前記改質器への供給量及び前記空気の前記セルスタックへの供給量の少なくともいずれかを調整する点にある。
【0022】
管理制御部は、電池部材の劣化傾向に基づいて特定した電池部材の使用寿命期間が、電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システムの設計寿命期間より短いと判定すると、当該電池部材を劣化推定部材として特定する。そして、管理制御部は、劣化推定部材の使用寿命期間を延ばすように補機を制御する。これにより、劣化推定部材の使用寿命期間の延長を見込むことができる。
【0023】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記管理制御部は、前記補機の制御によっても前記劣化推定部材の使用寿命期間が延びない場合は、前記劣化推定部材を前記検出劣化部材として検出する点にある。
【0024】
補機を制御することによっても劣化推定部材の使用寿命期間を延ばすことができない場合は、劣化推定部材の使用を継続すると燃料電池システムが、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては、故障する場合がある。そこで、管理制御部は、当該劣化推定部材を検出劣化部材として検出し、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている劣化燃料電池システム群の運転を検出劣化部材の劣化情報に基づいて一括して停止する。これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
【0025】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記管理制御部は、前記電池部材それぞれの劣化情報が、前記電池部材それぞれに対して設定されている劣化閾値に対して、前記電池部材の劣化を示している場合、当該電池部材を前記検出劣化部材として検出する点にある。
【0026】
劣化閾値を基準とすることで、検出劣化部材か否かを容易に判断できる。
【0027】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記セルスタックは、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードに挟まれた電解質とを含む燃料電池セルの積層により構成され、
前記セルスタックは、第1燃料電池セルと第2燃料電池セルとを含み、
前記劣化取得手段は、前記電池部材が前記セルスタックである場合には、前記第1燃料電池セルの両端のアノードとカソードとの間の第1電圧と、前記第2燃料電池セルの両端のアノードとカソードとの間の第2電圧との関係に基づいて、前記セルスタックの劣化状態を取得する点にある。
【0028】
例えば、第1燃料電池セルにおいて検出される第1電圧と、第2燃料電池セルにおいて検出される第2電圧との電圧差が大きくなるほどセルスタックの劣化が進行している。逆に、電圧差がほとんどない場合は、セルスタックの劣化が進行していない。このようにセルスタックの劣化状態を取得することで、セルスタックの劣化及び故障等を事前に把握できる。
【0029】
本発明に係る燃料電池制御システムの更なる特徴構成は、
前記補器には、前記補器の実際の駆動量を検出する検出器が設けられており、
前記劣化取得手段は、前記電池部材が前記補機である場合には、前記補器の駆動量を制御する指示駆動量を前記補器に指示し、前記指示駆動量と、前記検出器が検出した当該補器の実際の駆動量との実測差分に基づいて、当該補器の劣化状態を取得する点にある。
【0030】
補機への指示駆動量と、補機の実際の駆動量との実測差分が大きくなるほど、補機の劣化が進行している。例えば、補機の劣化により所定量の原燃料及び空気等がセルスタックに供給できない場合には、セルスタックが劣化して発電出力が低下し、ひいてはセルスタックが故障する可能性がある。補機の劣化状態を取得することで、セルスタックの劣化及び故障等を事前に把握できる。
【0031】
本発明に係る燃料電池制御方法の特徴構成は、
原燃料を改質水により水蒸気改質して燃料ガスに変化させる改質器と、前記改質器からの燃料ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、前記原燃料の前記改質器への供給、前記改質水の前記改質器への供給及び前記空気の前記セルスタックへの供給を含む前記セルスタックでの発電の補助を行う補機とを有する複数の燃料電池システムと、
前記複数の燃料電池システムとネットワークを介して通信可能に接続されており、前記燃料電池システムを構成する、前記セルスタック及び前記補機を含む電池部材それぞれの製造ロット番号と各電池部材を備える燃料電池システムそれぞれとを対応づけた電池部材対応表を記憶する記憶部と、前記燃料電池システムを制御する管理制御部とを有する管理装置と、
を備える燃料電池制御システムにおける燃料電池制御方法であって、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも1つの燃料電池システムが有する劣化取得手段は、前記セルスタックの劣化状態及び前記補機の劣化状態の少なくともいずれかを含む劣化情報を取得し、
前記管理制御部は、
前記複数の燃料電池システムのうち少なくとも一の燃料電池システムから、当該燃料電池システムを構成する前記電池部材の前記劣化情報を前記ネットワークを介して取得し、
前記電池部材のうちから、前記劣化情報に基づいて劣化していると判定した検出劣化部材を検出し、
前記電池部材対応表において前記検出劣化部材の製造ロット番号に対応している複数の電池部材を複数の劣化部材として特定し、前記複数の劣化部材それぞれを備える燃料電池システム群である劣化燃料電池システム群を前記検出劣化部材の前記劣化情報に基づいて停止する点にある。
【0032】
前述と同様に、管理制御部は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群とし、劣化燃料電池システム群の運転を検出劣化部材の劣化情報に基づいて一括して停止する。これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る燃料電池制御システム及び燃料電池制御方法について、図面を参照して説明する。
図1は、燃料電池制御システムの構成図である。
【0035】
(1)燃料電池制御システムの全体構成
燃料電池制御システム100は、管理装置10と、製造装置20と、複数の燃料電池システム30(30a、30b・・・)とが、ネットワーク40を介して接続されて構成されている。ネットワーク40は、装置間でデータの通信が可能な通信網であり、例えばWAN(Wide Area Network)などが挙げられるが、その形態は無線及び有線を問わない。
【0036】
本発明に係る燃料電池制御システム100では、管理装置10が、燃料電池システム30を構成する電池部材の劣化情報を、ネットワーク40を介して燃料電池システム30から取得する。電池部材は、燃料電池システム30を構成する、後述の電力発電部300a、貯湯タンク300b及び電力変換装置120等のあらゆる部材であり、例えば、後述のセルスタック50a、原燃料ポンプ41、空気ブロア43及び改質水ポンプ83等である。
【0037】
また、管理装置10は、少なくとも一の燃料電池システム30の電池部材のうち、当該電池部材の劣化情報に基づいて劣化傾向を推定する。また、管理装置10は、劣化傾向から推定した当該電池部材の使用寿命期間が燃料電池システム30等の設計寿命期間より短い場合は、当該電池部材を劣化推定部材として特定し、後述の遠隔チューニングを行う。そして、遠隔チューニングを行ってもセルスタック50aの劣化傾向が改善しない場合には、管理装置10は、当該劣化推定部材の現在の劣化状態に基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
【0038】
管理装置10は、当該電池部材を検出劣化部材と特定した場合には、この検出劣化部材の製造ロット番号を特定する。そして、管理装置10は、検出劣化部材の製造ロット番号と同一の製造ロット番号が付された少なくとも一の劣化部材を特定する。また、管理装置10は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された少なくとも一の劣化部材を備える燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群として特定する。さらに、管理装置10は、検出劣化部材の劣化情報に基づいて、劣化燃料電池システム群を停止する。
これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
なお、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30の運転は、例えば、当該燃料電池システム30の図示しない運転制御部によって停止される。あるいは、管理装置10が、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30の運転を停止してもよい。
【0039】
(2)各部の構成
(2−1)燃料電池システム
以下に、例えば、各家庭などの施設に備えられている燃料電池システム30(30a、30b・・・)について説明する。
図2は、燃料電池システムの構成図である。
燃料電池システム30は、これを構成する複数の電池部材から構成されており、大きくは、電力発電部300aと、貯湯タンク300bと、電力変換装置120とを備えている。
【0040】
(2−2)各部の構成
以下、燃料電池システム30の各部の構成について説明する。
電力発電部300aは、基本的に、原燃料(例えば、都市ガス13A)を改質した燃料ガス及び酸素ガスを反応させて発電する燃料電池50と、燃料電池50から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱交換器60と、熱交換器60による熱回収後の燃焼排ガスからの凝縮水を回収して精製する水精製器70と、水精製器70により精製された凝縮水を回収する改質水タンク80と、凝縮水とは独立に、改質水タンク80へ水を供給可能な水供給部90と、燃料電池システム30の筐体温度を低下させるための換気ファン66a(冷却手段)及び換気ファン66aの実際の回転数を測定する検出器211を含む換気部66とを備えている。
【0041】
燃料電池50は、原燃料流路51を介して供給される原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器52と、燃料ガス流路53を介して改質器52で生成された燃料ガスが供給されるアノード55と、空気流路54を介して空気(酸素ガスの一例)が供給されるカソード56と、アノード55とカソード56との間に介在させる電解質57と、を有しており、供給された燃料ガス及び空気を反応させて発電するようになっている。そして、これらアノード55、カソード56及び電解質57により1つの燃料電池セル50a1が構成されており、そして複数個の燃料電池セル50a1により後述のセルスタック50aが構成されている。
【0042】
そして、燃料電池50は、アノード55とカソード56とから発電反応に用いられた後にそれぞれ排出される燃料ガス及び空気が供給される燃焼部58を備え、この燃焼部58により燃料ガス中に残存する燃料成分が燃焼されて燃焼排ガスが生じるようになっている。
【0043】
なお、後述するように、改質器52には水供給路82を介して改質水タンク80から水が供給されるようになっており、改質器52は、改質水タンク80からの水を用いて原燃料の水蒸気改質を行うようになっている。
【0044】
また、原燃料流路51には、改質器52に所定量の原燃料を供給するための原燃料ポンプ41と、原燃料ポンプ41が供給する原燃料の実際の供給量を測定する検出器201とが設けられている。
また、原燃料流路51には、マイコンメータ46が設けられている。マイコンメータ46は、各家庭に供給される燃料の供給量を計測するメータであり、燃料電池50への燃料の供給量、その他のガス機器などへの燃料の供給量を計測する。よって、
図2では図示を省略しているが、マイコンメータ46が設けられている原燃料流路51は、燃料電池50に接続されるだけでなく、他のガス機器にも接続されている。
マイコンメータ46は、通常、所定のガス漏洩判定期間(例えば、30日間など)にわたって燃料の流量の計測値が所定値以下とならなかった場合には、燃料の漏洩があると検知する。この場合、燃料電池50が長期間継続的に運転して、燃料の供給が継続すると燃料の漏洩が生じていないのにマイコンメータ46が漏洩として誤検知する場合がある。そこで、燃料電池50での発電を停止させ、原燃料流路51を介した燃料電池50への燃料の供給を停止する燃料供給停止期間を設けている。この燃料供給停止期間においてマイコンメータ46が燃料を検出すると、ガス漏洩を正確に検知することができる。燃料供給停止期間は、例えば1か月に1回、1日の期間で設定されている。
さらに、空気流路54には、カソード56に所定量の空気を供給するための空気ブロア43と、空気ブロア43が供給する空気の実際の供給量を測定する検出器203とが設けられている。
【0045】
熱交換器60には、燃料電池50から排出される燃焼排ガスが排ガス供給路61を介して供給され、熱回収後の燃焼排ガスが排ガス排出路62を介して排気されるようになっている。そして、熱交換器60には、湯水を貯える貯湯タンク300bと熱交換器60との間で湯水を循環させる循環路63を介して貯湯タンク300bからの湯水が供給されるようになっており、熱交換器60は、燃料電池50から排出される燃焼排ガスと湯水とを熱交換させるようになっている。なお、循環路63には、貯湯タンク300bからの湯水を熱交換器60に供給する循環ポンプ64と、循環ポンプ64での湯水の実際の供給量を測定する検出器205と、放熱ファン65a及び放熱ファン65aの実際の回転数を測定する検出器207を備えるラジエータ65と、図示しない温度センサとが設けられている。また、貯湯タンク300bには、貯湯タンク300b中の湯水を出湯するための出湯路31、及び、湯水の出湯に応じて貯湯タンク300bに給水するための給水路32が設けられている。
【0046】
改質水タンク80は、燃料電池50から排出された燃焼排ガスから生じる凝縮水を回収するためのものであり、本実施形態では、熱交換器60による熱回収後の燃焼排ガスから凝縮水を回収するようになっている。また、本実施形態では、改質水タンク80に供給される凝縮水を水精製器70により精製するようになっており、具体的には、排ガス排出路62を流れる燃焼排ガスから凝縮水回収路71を介して凝縮水を水精製器70に回収して、水精製器70により精製された凝縮水が凝縮水回収路81を介して改質水タンク80に回収されるようになっている。改質水タンク80と改質器52との間は、水供給路82及び水供給路85により接続されており、水供給路82と水供給路85との間に設けられた改質水ポンプ83の運転により、改質水タンク80に貯留された凝縮水(及び水供給部90から供給される水)が改質器52に供給可能になっている。水供給路85には、改質水ポンプ83が供給する改質水の実際の供給量を測定する検出器209が設けられている。また、改質水タンク80には水位検出器84が設けられており、改質水タンク80における水位を検出可能になっている。
【0047】
また、改質水タンク80には、凝縮水とは独立に、水供給部90から水を供給可能になっている。具体的には、水供給部90は水道水を供給するようになっており、注水運転として、注水指令に応じて運転制御部が弁92を開動作させることで水供給部90から補給水供給路91を介して水が供給されるようになっている。そして、流量計93により注水運転開始からの注水量を計測して、この注水量が予め定めた目標注水量に達するまで注水が行われるようになっている。また、水道水は凝縮水に比べ不純物が多い可能性が高いため、水供給部90は、注水運転において、水精製器70を経由して改質水タンク80へ水を供給可能にして、不純物が取り除かれた後の水が改質水タンク80に供給されるようになっている。
【0048】
上述の燃料電池システム30を構成する電池部材のうち、原燃料ポンプ41、空気ブロア43、改質水ポンプ83、循環ポンプ64及び放熱ファン65aは、燃料電池50のセルスタック50aが発電を行うのを補助する補機である。特に、これらの補機の中でも、燃料電池50に原燃料を供給する原燃料ポンプ41と、燃料電池50に空気を供給する空気ブロア43と、燃料電池50に改質水を供給する改質水ポンプ83は、燃料電池50が発電を行うための原燃料、空気及び改質水を供給する重要補機である。なお、重要補機は、燃料電池50が発電を行うための原材料を供給するために必要な補機であれば、上記の補機に限定されない。
また、換気ファン66aは燃料電池システム30の筐体を冷却するための電池部材であり、また、電力変換装置120は直流電圧を交流電圧に変換する電池部材である。本実施形態では、換気ファン66a及び電力変換装置120は燃料電池50での発電に直接関与しない電池部材とし、補機とは区別している。
【0049】
さらに、燃料電池システム30は、上述の電力発電部300a及び貯湯タンク300b以外に、電力変換装置120を備えている。電力変換装置120は、燃料電池システム30と商用電力系統との間で連系運転可能なように、燃料電池システム30で発電された直流電力の直流電圧を、商用電力系統の商用電力の交流電圧(系統電源)に変換する。また、電力変換装置120は、直流電圧から交流電圧への実際の変換効率を検出する検出器121が設けられている。
【0050】
(2−3)劣化情報の取得
前述の通り、補機である、原燃料ポンプ41、空気ブロア43、循環ポンプ64、放熱ファン65a及び改質水ポンプ83には、それぞれ検出器201、203、205、207、209が対応して設けられている。そして、これらの補機と前述の検出器201、203、205、207、209は劣化取得手段200に接続されている。
また、換気ファン66aには検出器211が対応して設けられており、換気ファン66a及び検出器211は劣化取得手段200に接続されている。
また、電力変換装置120には、電力変換装置120での実際の電力変換効率を検出するための検出器121が設けられており、電力変換装置120及び検出器121は劣化取得手段200に接続されている。
さらに、後述の
図3に示すように、燃料電池セル50a1が積層されたセルスタック50aは、後述の第1電圧検出手段131及び第2電圧検出手段133を介して劣化取得手段200に接続されている。
【0051】
このように接続された劣化取得手段200は、次のようにしてセルスタック50aの劣化状態及び補機の劣化状態の少なくともいずれかを含む電池部材の劣化情報を取得する。また、劣化取得手段200は、例えば数分毎などの所定の時間ごとに電池部材の劣化情報を取得する。なお、以下では、個々の電池部材の劣化の状態をいう場合は劣化状態といい、複数の電池部材の劣化状態は総称して劣化情報というものとする。
【0052】
劣化取得手段200は、原燃料ポンプ41に所定の指示供給量(指示駆動量)の原燃料を改質器52に供給するように指示し、検出器201に原燃料ポンプ41が供給する原燃料の実際の供給量(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、原燃料ポンプ41による原燃料の指示供給量と検出器201が検出した原燃料の実際の供給量との実測差分に基づいて、原燃料ポンプ41の劣化状態を取得する。
【0053】
また、劣化取得手段200は、空気ブロア43に所定の指示供給量(指示駆動量)の空気を改質器52に供給するように指示し、検出器203に空気ブロア43が供給する空気の実際の供給量(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、空気ブロア43による空気の指示供給量と検出器203が検出した空気の実際の供給量との実測差分に基づいて、空気ブロア43の劣化状態を取得する。
【0054】
また、劣化取得手段200は、改質水ポンプ83に所定の指示供給量(指示駆動量)の改質水を改質器52に供給するように指示し、検出器209に改質水ポンプ83が供給する改質水の実際の供給量(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、改質水ポンプ83による改質水の指示供給量と検出器209が検出した改質水の実際の供給量との実測差分に基づいて、改質水ポンプ83の劣化状態を取得する。
【0055】
また、劣化取得手段200は、循環ポンプ64に所定の指示供給量(指示駆動量)の湯水を循環するように指示し、検出器205に循環ポンプ64が循環させる湯水の実際の供給量(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、循環ポンプ64による湯水の指示供給量と検出器205が検出した湯水の実際の供給量との実測差分に基づいて、循環ポンプ64の劣化状態を取得する。
【0056】
また、劣化取得手段200は、放熱ファン65aに所定の指示回転数(指示駆動量)で回転するように指示し、検出器207に放熱ファン65aの実際の回転数(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、放熱ファン65aの指示回転数と検出器207が検出した実際の回転数との実測差分に基づいて、放熱ファン65aの劣化状態を取得する。
【0057】
また、劣化取得手段200は、換気ファン66aに所定の指示回転数(指示駆動量)で回転するように指示し、検出器211に換気ファン66aの実際の回転数(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、換気ファン66aの指示回転数と検出器211が検出した実際の回転数との実測差分に基づいて、換気ファン66aの劣化状態を取得する。
【0058】
また、劣化取得手段200は、電力変換装置120に所定の指示電力変換効率(指示駆動量)で直流電圧を交流電圧に変換するように指示し、検出器121に電力変換装置120での実際の電力変換効率(実際の駆動量)を測定させる。そして、劣化取得手段200は、電力変換装置120の所定の指示電力変換効率と検出器121が検出した実際の電力変換効率との実測差分に基づいて、電力変換装置120の劣化状態を取得する。
なお、上記において劣化取得手段200は、実測差分が大きくなるほど各電池部材の劣化が進行していると判断し、劣化状態を取得する。
【0059】
次に、セルスタック50aの劣化状態の取得について説明する。
図3は、セルスタックの劣化状態を取得するための構成の一例を示す構成図である。
図3に示すように、1つの燃料電池セル50a1が、アノード55、カソード56及び電解質57を一組として構成されており、複数の燃料電池セル50a1が積層されることでセルスタック50aが構成されている。
複数のセルスタック50aは、中央より一方側(左側)の複数のセルスタック50aと、中央より他方側(右側)の複数のセルスタック50aとに分けられる。
図3では、一方側のセルスタック50a及び他方側のセルスタック50aを構成する燃料電池セル50a1の数は、それぞれ3個である。第1電圧検出手段131は、一方側のセルスタック50aの中央部(カソード56)及び左他端(アノード55)の間の電圧を検出する。同様に、第2電圧検出手段133は、他方側のセルスタック50aの中央部(アノード55)及び右他端(カソード56)の間の電圧を検出する。
【0060】
劣化取得手段200は、第1電圧検出手段131が検出した電圧と、第2電圧検出手段133が検出した電圧との電圧差に基づいて、セルスタック50aの劣化状態を取得する。ここで、セルスタック50aの劣化が進行していない場合は、電圧差はほとんどない。逆に、電圧差が大きくなるほどセルスタックの劣化が進行している。
【0061】
なお、一方側のセルスタック50aの数と、他方側のセルスタック50aの数とが異なる場合は、第1及び第2電圧検出手段131、133で検出された電圧を、各側のセルスタック数で除算する。これにより、一方側及び他方側のそれぞれについて、1つの燃料電池セル50a1における電圧を検出できる。そして、一方側の1つの燃料電池セル50a1の電圧と、他方側の1つの燃料電池セル50a1の電圧との差に基づいて、セルスタック50aの劣化状態を取得できる。
【0062】
(2−4)製造装置
次に、製造装置20について説明する。製造装置20は、製造制御部21と記憶部22とを備えている。
製造制御部21は、上述した各種電池部材の製造を制御する。各種電池部材としては、例えば、セルスタック50aと、原燃料ポンプ41、空気ブロア43、改質水ポンプ83、循環ポンプ64、及び放熱ファン65a等の補機と、換気ファン66aと、電力変換装置120とが挙げられる。製造制御部21は、例えば、各電池部材ごとに分けられた製造ラインを駆動し、各電池部材の製造を制御する。そして、製造制御部21は、同一の製造ラインにおいて、例えば同一の材料、同一の型及び同一の製造方法等で製造され、概ね同一とみなせる複数の電池部材に対して、同一の製造ロット番号を付与する。概ね同一とみなせる複数の電池部材は、同様の性能を発揮するとともに、同様の欠陥も有すると考えられ、同様の劣化傾向を示す可能性が高い電池部材といえる。
【0063】
記憶部22は、各電池部材と、製造ロット番号とを対応づけた製造ロット番号表を記憶している。図示は省略するが、記憶部22は、例えば同一の材料、同一の型及び同一の製造方法等で製造され、概ね同一とみなせる複数の電池部材と、同一の製造ロット番号とを対応づけて記憶している。なお、例えば材料の配合が変更されて複数の電池部材が製造された場合等には、当該電池部材には、前述の製造ロット番号とは別の、同一の製造ロット番号が対応づけられている。
【0064】
(2−5)管理装置
次に、管理装置10について説明する。管理装置10は、管理制御部11と記憶部12とを備えている。
【0065】
(2−5−1)記憶部
以下に、まず記憶部12について説明する。
記憶部12は、燃料電池システム30と、それを構成する各種電池部材の製造ロット番号とを対応づけた電池部材対応表を記憶している。
図4は、各燃料電池システムと、各種電池部材の製造ロット番号とを対応づけた電池部材対応表である。
図4に示すように、各燃料電池システムA、B、C・・・それぞれについて、セルスタック50a、原燃料ポンプ41及び空気ブロア43などの電池部材の製造ロット番号が対応づけられている。例えば、燃料電池システムAについては、セルスタック50aに製造ロット番号“S0001”が、原燃料ポンプ41に製造ロット番号“F0001”が、空気ブロア43に製造ロット番号“A0001”が、改質水ポンプ83に製造ロット番号“R0001”が、換気ファン66aに製造ロット番号“V0001”が対応づけられている。
【0066】
そして、この電池部材対応表からは、同一の製造ロット番号を有する電池部材がどの燃料電池システム30で用いられているかを把握することができる。例えば、燃料電池システムBのセルスタック50aの製造ロット番号“S0002”と、燃料電池システムCのセルスタック50aの製造ロット番号“S0002”とが同じであり、燃料電池システムB、Cには同一の製造ロット番号を有するセルスタック50aが使用されていることが把握できる。
また、記憶部12は、管理制御部11が推定した後述の各種電池部材の経年の劣化傾向を記憶する。
【0067】
(2−5−2)管理制御部
次に、管理制御部11について説明する。
管理制御部11は、少なくとも一の燃料電池システム30について、当該燃料電池システム30を構成する各種電池部材の経年の劣化傾向を推定する。また、管理制御部11は、当該電池部材の劣化傾向に基づいて推定した当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間より短いと判定すると、当該電池部材を劣化推定部材と特定する。次に、管理制御部11は、劣化推定部材を特定すると、後述の遠隔チューニングを行う。この遠隔チューニングによっても劣化推定部材の使用寿命期間が延びず、セルスタック50aの劣化傾向が改善しない場合は、管理制御部11は、当該劣化推定部材の現在の劣化状態に基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
ここで、このような検出劣化部材を備える燃料電池システム30の運転を継続すると、当該燃料電池システム30での発電出力が所定値以下となる、また、当該燃料電池システム30が故障等する可能性がある。
【0068】
そこで、管理制御部11は、劣化推定部材が検出劣化部材と特定された場合は、検出劣化部材の製造ロット番号を特定する。さらに、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する複数の電池部材を複数の劣化部材として特定し、複数の劣化部材それぞれを備える燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群として特定する。そして、管理制御部11は、劣化燃料電池システム群を検出劣化部材の劣化状態に基づいて停止する。これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
まずは、各種電池部材の劣化傾向の推定について具体的に以下に説明する。その後、管理制御部11による劣化燃料電池システム群の制御について説明する。
【0069】
(a)管理制御部による劣化傾向の推定
管理制御部11は、セルスタック50a及び補機を含む各種電池部材の劣化状態を、燃料電池システム30の劣化取得手段200からネットワーク40を介して取得する。さらに、管理制御部11は、電池部材それぞれについて、取得した劣化状態に基づいて経年による劣化傾向を推定する。
管理制御部11は、例えば数分毎に劣化状態を劣化取得手段200から取得し、数分毎の劣化状態の変化に基づいて経年による劣化傾向を推測する。例えば、経年の劣化傾向は、数分毎の劣化状態の変化を、数年の劣化状態の変化に引き延ばすことで得ることができる。
その他、数分毎の劣化状態の変化と、数年の劣化状態の変化との関係を示す複数のテーブルを予め用意しておく。そして、実際に取得した数分毎の劣化状態の変化と最も適合する数分毎の劣化状態の変化をテーブルから検索し、それに対応する数年の劣化状態の変化を抽出し、これを経年の劣化傾向として取得してもよい。
【0070】
以下に、経年の劣化傾向の一例について、燃料電池システム30を構成する電池部材のうち、セルスタック50a、原燃料ポンプ41、空気ブロア43及び換気ファン66aを例に挙げて説明する。
【0071】
(a1)セルスタックの経年の劣化傾向
図5は、セルスタックの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。
管理制御部11は、セルスタック50aの劣化状態として、
図3の第1電圧検出手段131と、第2電圧検出手段133との電圧差を、例えば数分毎に劣化取得手段200から取得する。管理制御部11は、取得した数分毎の電圧差から、例えば
図5に示すセルスタック50aの経年の劣化傾向を推定する。なお、電圧差が大きくなるほどセルスタック50aの劣化が進行している。そのため、電圧差と発電出力とは相関関係を有しており、電圧差が大きくなるほどセルスタック50aが劣化して発電出力が低下し、ひいてはセルスタック50aが故障等する可能性がある。
【0072】
図5では、横軸が経年である。また、
図5の縦軸が電圧差に対応する発電出力であり、例えば定格出力700Wに対する発電出力の割合(%)が示されている。
図5によると、燃料電池システム30の使用開始から年数が経つにつれて、セルスタック50aの発電出力が低下している。例えば、燃料電池システム30の使用開始、つまりセルスタック50aの使用開始から2年が経過すると発電出力が定格出力の80%となっており、使用開始から6年が経過すると発電出力が定格出力の70%となっている。
【0073】
現状のセルスタック50aを使用すると発電出力が許容範囲外となり、燃料電池システム30が故障等する場合の基準として臨界値が設定されている。言い換えれば、セルスタック50aの臨界値は、当該セルスタック50aの使用が劣化により限界となるときの基準値である。そして、燃料電池システム30の使用開始、つまりセルスタック50aの使用開始から発電出力が臨界値に達するまでの期間が、当該セルスタック50aの使用寿命期間となる。
図5の場合、発電出力が定格出力の70%である場合が臨界値であるため、当該セルスタック50aの使用寿命期間は6年である。
【0074】
(a2)原燃料ポンプの経年の劣化傾向
図6は、原燃料ポンプの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。
管理制御部11は、原燃料ポンプ41の劣化状態として、原燃料ポンプ41への原燃料の指示供給量と検出器201が検出した原燃料の実際の供給量との実測差分を、例えば数分毎に劣化取得手段200から取得する。管理制御部11は、取得した数分毎の実測差分から、例えば
図6に示す原燃料ポンプ41の経年の劣化傾向を推定する。なお、実測差分が大きくなるほど、原燃料ポンプ41の劣化が進行している。原燃料ポンプ41の劣化により指示供給量の原燃料がセルスタック50aに供給できない場合には、セルスタック50aが劣化して発電出力が低下し、ひいてはセルスタック50aが故障等する可能性がある。
【0075】
図6では、横軸が経年である。また、
図6の縦軸が実測差分である。
図6によると、燃料電池システム30の使用開始、つまり原燃料ポンプ41の使用開始から年数が経つにつれて、実測差分が大きくなっており原燃料ポンプ41の劣化が進行している。
【0076】
現状の原燃料ポンプ41を使用すると、劣化状態が許容範囲外となり、燃料電池システム30が故障等する場合の基準として臨界値が設定されている。言い換えれば、原燃料ポンプ41の臨界値は、当該原燃料ポンプ41の使用が劣化により限界となるときの基準値である。そして、燃料電池システム30の使用開始、つまり原燃料ポンプ41の使用開始から実測差分が臨界値に達するまでの期間が、当該原燃料ポンプ41の使用寿命期間となる。
図6の場合、原燃料ポンプ41の使用寿命期間は3年である。
【0077】
(a3)空気ブロアの経年の劣化傾向
図7は、空気ブロアの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。
管理制御部11は、空気ブロア43の劣化状態として、空気ブロア43への空気の指示供給量と検出器203が検出した空気の実際の供給量との実測差分を、例えば数分毎に劣化取得手段200から取得する。管理制御部11は、取得した数分毎の実測差分から、例えば
図7に示す空気ブロア43の経年の劣化傾向を推定する。なお、実測差分が大きくなるほど、空気ブロア43の劣化が進行している。空気ブロア43の劣化により指示供給量の空気がセルスタック50aに供給できない場合には、セルスタック50aが劣化して発電出力が低下し、ひいてはセルスタック50aが故障等する可能性がある。
【0078】
図7では、横軸が経年である。また、
図7の縦軸が実測差分である。
図7によると、燃料電池システム30の使用開始、つまり空気ブロア43の使用開始から年数が経つにつれて、実測差分が大きくなっており空気ブロア43の劣化が進行している。
【0079】
現状の空気ブロア43を使用すると、劣化状態が許容範囲外となり、燃料電池システム30が故障等する場合の基準として臨界値が設定されている。言い換えれば、空気ブロア43の臨界値は、当該空気ブロア43の使用が劣化により限界となるときの基準値である。そして、燃料電池システム30の使用開始、つまり空気ブロア43の使用開始から実測差分が臨界値に達するまでの期間が、当該空気ブロア43の使用寿命期間となる。
図7の場合、空気ブロア43の使用寿命期間は8年である。
【0080】
(a4)換気ファンの経年の劣化傾向
図8は、換気ファンの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。
管理制御部11は、換気ファン66aの劣化状態として、換気ファン66aへの指示回転数と検出器211が検出した実際の回転数との実測差分を、例えば数分毎に劣化取得手段200から取得する。管理制御部11は、取得した数分毎の実測差分から、例えば
図8に示す換気ファン66aの経年の劣化傾向を推定する。なお、実測差分が大きくなるほど、換気ファン66aの劣化が進行している。換気ファン66aが劣化すると、燃料電池システム30の筐体を十分に冷却できない。
【0081】
図8では、横軸が経年である。また、
図8の縦軸が実測差分である。
図8によると、燃料電池システム30の使用開始、つまり換気ファン66aの使用開始から年数が経つにつれて、実測差分が大きくなっており換気ファン66aの劣化が進行している。
【0082】
現状の換気ファン66aを使用すると、劣化状態が許容範囲外となり、燃料電池システム30が故障等する場合の基準として臨界値が設定されている。言い換えれば、換気ファン66aの臨界値は、当該換気ファン66aの使用が劣化により限界となるときの基準値である。そして、燃料電池システム30の使用開始、つまり換気ファン66aの使用開始から実測差分が臨界値に達するまでの期間が、当該換気ファン66aの使用寿命期間となる。
図8の場合、換気ファン66aの使用寿命期間は7年である。
【0083】
(b)管理制御部による劣化燃料電池システム群の制御
(b−1)劣化燃料電池システム群の全体制御
次に、管理制御部11による劣化燃料電池システム群の全体制御について説明する。
図9は、管理制御部による劣化燃料電池システム群の全体制御の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS10:管理制御部11は、例えば一の燃料電池システム30に着目する。そして、管理制御部11は、上述したように、一の燃料電池システム30を構成するセルスタック50aの劣化状態及び補機の劣化状態を含む各種電池部材の劣化情報を、当該燃料電池システム30の劣化取得手段200から取得する。そして、管理制御部11は、劣化状態に基づいて各種電池部材それぞれについて経年による劣化傾向を推定する。
【0084】
ステップS11:管理制御部11は、電池部材の劣化傾向に基づいて、電池部材を使用開始してから、劣化により使用することが限界となるまでの使用寿命期間を推定する。そして、管理制御部11は、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間を記憶部22から読み出す。設計寿命期間は、耐久性等を考慮して設計時に導き出される製品の寿命である。
【0085】
また、管理制御部11は、当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間より短いか否かを判定する。このとき、管理制御部11は、当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間より短いか否かを判定してもよいし、当該電池部材の使用寿命期間が、燃料電池システム30の設計寿命期間より短いか否かを判定してもよい。あるいは、管理制御部11は、当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間のいずれか短い方よりも短いか否かを判定してもよい。
【0086】
管理制御部11は、当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間より短いと判定すると、当該電池部材を劣化推定部材として検出する。この場合、管理制御部11はステップS12に処理を進める。
【0087】
一方、管理制御部11は、当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間以上と判定すると、当該電池部材を劣化推定部材とは特定しない。この場合、管理制御部11はステップS10に処理を進める。
【0088】
例えば、セルスタック50aについて検討すると、
図5に示すように、セルスタック50aの発電出力が臨界値となる使用寿命期間は6年である。ここで、例えば、燃料電池システム30の設計寿命期間が10年であるとする。この場合、セルスタック50aの使用寿命期間(6年)は、燃料電池システム30の設計寿命期間(10年)より短い。よって、管理制御部11は、当該セルスタック50aを劣化推定部材として検出し、ステップS12に処理を進める。
一方、例えば、セルスタック50aの使用寿命期間が12年である場合は、燃料電池システム30の設計寿命期間(10年)より長い。よって、管理制御部11は、当該セルスタック50aを劣化推定部材と特定せず、ステップS10に処理を進める。
【0089】
次に、例えば、原燃料ポンプ41について検討すると、
図6に示すように、原燃料ポンプ41の臨界値から使用寿命期間は3年と分かる。ここで、例えば、燃料電池システム30の設計寿命期間が10年であるとする。この場合、原燃料ポンプ41の使用寿命期間(3年)は、燃料電池システム30の設計寿命期間(10年)より短い。よって、管理制御部11は、当該原燃料ポンプ41aを劣化推定部材として検出し、ステップS12に処理を進める。
【0090】
その他の電池部材についても同様に、劣化推定部材であるか否かを判定し、ステップS10又はステップS12に処理を進める。
【0091】
ステップS12:管理制御部11は、劣化推定部材の使用寿命期間を延ばすように補機を制御する遠隔チューニングを行う。このような遠隔チューニングを行うことで、例えば、燃料電池システム30での発電出力が所定値より多くなり、燃料電池システム30の故障等が抑制される等し、燃料電池システム30を正常又は正常に近い状態で運転できることが期待できる。
【0092】
遠隔チューニングとしては、次のようなものが挙げられる。
例えば、セルスタック50aが劣化推定部材として検出された場合には、管理制御部11は、原燃料ポンプ41を制御し、原燃料ポンプ41から改質器52への原燃料の実際の供給量を調整する。原燃料ポンプ41からの原燃料の実際の供給量は、例えば、原燃料ポンプ41への指示供給量を最適値に変換するなどして制御される。その他、管理制御部11は、例えば、空気ブロア43を制御してセルスタック50aへの空気の実際の供給量を調整し、また、改質水ポンプ83を制御して改質器52への改質水の実際の供給量を調整する。このような制御により、セルスタック50aの劣化傾向が改善し、燃料電池50での発電出力が向上するように制御する。
【0093】
また、その他、例えば、循環ポンプ64、放熱ファン65a及び換気ファン66a等の電池部材が劣化推定部材として検出された場合にも同様に、各電池部材を駆動するための指示駆動量を最適値に変換するように制御し、セルスタック50aの劣化傾向が改善するように制御する。
なお、空気ブロア43にはフィルタが設けられているため、管理制御部11は、空気ブロア43の回転を逆回転にしてフィルタの閉塞を改善するように制御し、また、フィルタに対して水を噴霧してフィルタの閉塞を改善するように制御することもできる。そして、これによりセルスタック50aの劣化傾向が改善するように制御する。
【0094】
上記のような遠隔チューニングによってセルスタック50aの劣化傾向が改善した場合には、管理制御部11は、ステップS10に処理を戻す。
図10は、遠隔チューニングによって劣化傾向が改善した場合のセルスタックの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。遠隔チューニング前の
図5では、セルスタック50aの使用寿命期間は6年である。一方、遠隔チューニング後の
図10では、セルスタック50aの発電出力が臨界値となる使用寿命期間は8年である。よって、遠隔チューニングにより、臨界値に達するまでの期間が延び、セルスタック50aの使用寿命期間が延び、セルスタック50aの劣化傾向が改善している。
一方、管理制御部11は、セルスタック50aの劣化傾向が改善しなかった場合には、ステップS14に処理を進める。
【0095】
ステップS14:管理制御部11は、セルスタック50aの劣化傾向が改善しなかった場合には、劣化推定部材の現在の劣化状態(実測値)と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
例えば、セルスタック50aが劣化推定部材の場合において、当該セルスタック50aの現在の劣化状態について検討する。例えば、
図5において、セルスタック50aが劣化していると判定される基準である定格出力の80%が、セルスタック50aの劣化閾値と設定されている。劣化閾値は、例えば、現状のセルスタック50aを使用すると発電出力が低下するが、許容範囲内であり、燃料電池システム30が故障等するまでには至らない場合の基準である。よって、劣化閾値は、臨界値よりも劣化が進んでいない場合の値である。ここで、劣化取得手段200が取得した前述のセルスタック50aの電圧差は、燃料電池システム30が発電する発電出力と相関関係を有している。よって、定格出力の80%に相当するセルスタック50aの電圧差が、セルスタック50aの劣化閾値となる。
【0096】
よって、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得したセルスタック50aの現在の電圧差と、セルスタック50aの劣化閾値とを比較し、現在の電圧差が劣化閾値よりも悪化している場合、つまり、現在の電圧差が劣化閾値以下となった場合に、劣化推定部材である当該セルスタック50aを検出劣化部材と特定する。
一方、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の電圧差が劣化閾値未満の場合に、劣化推定部材である当該セルスタック50aを検出劣化部材とみなさず、ステップS10に戻る。
【0097】
また、例えば、原燃料ポンプ41が劣化推定部材の場合において、当該原燃料ポンプ41の現在の劣化状態について検討する。例えば、原燃料ポンプ41の劣化閾値としてある値が設定されている。劣化閾値は、例えば、現状の原燃料ポンプ41を使用すると発電出力が低下するが、許容範囲内であり、燃料電池システム30が故障等するまでには至らない場合の基準である。よって、劣化閾値は、臨界値よりも劣化が進んでいない場合の値である。
管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した原燃料ポンプ41の現在の実測差分と、原燃料ポンプ41の劣化閾値とを比較し、現在の実測差分が劣化閾値よりも悪化している場合、つまり、現在の実測差分が劣化閾値以上となった場合に、劣化推定部材である当該原燃料ポンプ41を検出劣化部材と特定する。
一方、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の実測差分が劣化閾値未満の場合に、劣化推定部材である当該原燃料ポンプ41を検出劣化部材とみなさず、ステップS10に戻る。
ステップS15:管理制御部11は、ステップS14において検出劣化部材を特定した場合、当該検出劣化部材に付与されている製造ロット番号を特定する。
例えば、管理制御部11は、着目した燃料電池システム30の検出劣化部材について、
図4に示す電池部材対応表から製造ロット番号を特定する。例えば、燃料電池システムAに着目しており、セルスタック50aが検出劣化部材として検出されている場合は、管理制御部11は、製造ロット番号として“S0001”を特定する。
【0098】
その他、例えば、管理制御部11は、着目している燃料電池システム30の劣化取得手段200に、検出劣化部材の製造ロット番号を送信するように指示してもよい。指示を受信した劣化取得手段200が、検出劣化部材から製造ロット番号を取得し、管理制御部11に送信する。この場合、例えば、燃料電池システム30に、電池部材の製造ロット番号を格納する記憶部があり、劣化取得手段200が当該検出劣化部材の製造ロット番号を記憶部から読み出して、管理制御部11に送信する。
【0099】
ステップS16:管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する複数の電池部材を特定し、この複数の電池部材を複数の劣化部材として特定する。さらに、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群として特定する。そして、管理制御部11は、劣化燃料電池システム群に対して、運転の停止処理を行う。
管理制御部11による劣化燃料電池システム群の停止処理の詳細については後述する。なお、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30の運転は、例えば、当該燃料電池システム30の図示しない運転制御部によって停止される。あるいは、管理制御部11が、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30の運転を停止してもよい。
【0100】
ステップS17:管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が市場へ流出するのを阻止するように制御する。具体的には、例えば、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する複数の劣化部材が、市場へ流出するのを阻止するための阻止情報を製造装置20に送信する。阻止情報には、例えば、検出劣化部材の製造ロット番号と、当該製造ロット番号が付与された劣化部材の搬出を阻止する指令とが含まれている。製造装置20の製造制御部21は、阻止情報を受信すると、製造後に保管されている電池部材のうち、該当する製造ロット番号の劣化部材の搬出を停止させる。これにより、劣化部材が、製造装置20から搬出され、市場に流通するのを阻止できる。
また、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が新たに製造されるのを阻止するように、阻止情報を製造装置20に送信する。阻止情報には、例えば、検出劣化部材の製造ロット番号と、当該製造ロット番号が付与された劣化部材の新たな製造を阻止する指令とが含まれている。製造装置20の製造制御部21は、阻止情報を受信すると、該当する製造ロット番号の劣化部材の新たな製造を停止させる。
【0101】
上記処理において、ステップS10〜S15の処理は、一の燃料電池システム30に着目して行われているが、順次的又は並列的に、当該燃料電池システム30以外の複数の燃料電池システム30に対して行われてもよい。
【0102】
(b−2)劣化燃料電池システム群の停止処理
次に、ステップS16における劣化燃料電池システム群の停止処理について説明する。なお、劣化燃料電池システム群は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群である。
図11は、管理制御部による劣化燃料電池システム群の停止処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS16a:管理制御部11は、検出劣化部材に付与されている製造ロット番号と、
図4の電池部材対応表とを比較する。これにより、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付与された劣化部材が使用されている燃料電池システム30を特定する。
【0103】
例えば、着目した燃料電池システムAにおいて、原燃料ポンプ41が検出劣化部材として検出されているとする。この場合、
図4の電池部材対応表を参照すると、燃料電池システムAの検出劣化部材である原燃料ポンプ41は、製造ロット番号“F0001”を有している。同一の製造ロット番号“F0001”が付与された原燃料ポンプ41は、燃料電池システムC、Dにおいても使用されている。そこで、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号“F0001”が付与された原燃料ポンプ41が使用されている燃料電池システムC、Dを、劣化燃料電池システム群として特定する。
【0104】
その他、例えば、着目した燃料電池システムBにおいて、換気ファン66aが検出劣化部材と検出されているとする。この場合、
図4の電池部材対応表を参照すると、燃料電池システムBの検出劣化部材である換気ファン66aは、製造ロット番号“V0002”を有している。同一の製造ロット番号“V0002”が付与された換気ファン66aは、燃料電池システムC、Dにおいても使用されている。そこで、管理制御部11は、同一の製造ロット番号“V0002”が付与された換気ファン66aが使用されている燃料電池システムC,Dを、劣化燃料電池システム群として特定する。
【0105】
ステップS16b:管理制御部11は、検出劣化部材の経年の劣化傾向に基づいて、検出劣化部材の現時点からの使用可能期間がX年以上あるか否かを判定する。X年は、特に限定されないが、例えば数年おきに行われる定期メンテナンスに応じて、例えば3年に設定されている。管理制御部11は、使用可能期間がX年以上の場合はステップS16hに処理を進める。一方、管理制御部11は、使用可能期間がX年未満の場合はステップS16cに処理を進める。
【0106】
例えば、検出劣化部材が原燃料ポンプ41であり、現時点が燃料電池システム30の使用開始から2年9か月と10日が経過しているとする。管理制御部11は、
図6の原燃料ポンプ41の劣化傾向を参照し、原燃料ポンプ41の使用寿命期間として3年を取得する。そして、管理制御部11は、現時点から使用寿命期間(3年)を満了するまでの期間が1か月未満であるため、X年(3年)未満と判定する。この場合、管理制御部11は、ステップS16cに処理を進める。
【0107】
ステップS16c:管理制御部11は、検出劣化部材の経年の劣化傾向に基づいて、検出劣化部材の現時点からの使用可能期間がY年以上あるか否かを判定する。Y年は、特に限定されないが、X年よりも短い期間であり、例えば1か月に1回(1日)で設定された燃料供給停止期間に応じて、例えば1/12年(1か月)に設定されている。管理制御部11は、使用可能期間がY年以上の場合はステップS16gに処理を進める。一方、管理制御部11は、使用可能期間がY年未満の場合はステップS16dに処理を進める。
【0108】
例えば、検出劣化部材が原燃料ポンプ41であり、現時点が燃料電池システム30の使用開始から2年9か月と10日が経過しているとする。前述と同様に、原燃料ポンプ41の使用寿命期間は3年である。そして、管理制御部11は、使用寿命期間(3年)を満了するまでの期間が1か月(Y年)未満であるため、ステップS16dに処理を進める。
【0109】
ステップS16d:管理制御部11は、検出劣化部材がセルスタック50a又は重要補機であるか否かを判定する。なお、重要補機とは、燃料電池50が発電を行うための原燃料、空気及び改質水を供給する補機であり、例えば、原燃料ポンプ41、空気ブロア43及び改質水ポンプ83が挙げられる。重要補機以外の電池部材としては、例えば、循環ポンプ64、放熱ファン65a、換気ファン66a及び電力変換装置120等が挙げられる。
検出劣化部材がセルスタック50a又は重要補機である場合には、管理制御部11はステップS16eに処理を進める。一方、管理制御部11は、検出劣化部材がセルスタック50a又は重要補機以外の電池部材である場合には、ステップS16fに処理を進める。
【0110】
ステップS16e:管理制御部11は、検出劣化部材がセルスタック50a又は重要補機である場合には、劣化燃料電池システム群を即時に停止させる。劣化燃料電池システム群には、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている。劣化燃料電池システム群の停止は、例えば、劣化燃料電池システム群への原燃料、改質水及び空気等の発電に必要な原材料の供給停止により行う。
【0111】
セルスタック50a及び重要補機は、発電に直接関連する部材であり、使用可能期間を経過した後も劣化燃料電池システム群の運転を継続すると、発電出力の悪化だけでなく、劣化燃料電池システム群の故障等を招く。そこで、セルスタック50a及び重要補機の少なくともいずれかが検出劣化部材として検出され、使用可能期間が所定期間(Y年)未満である場合には、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群の運転を即座に停止させる。これにより、検出劣化部材の使用可能期間が経過する前に劣化燃料電池システム群の運転を一括して停止し、劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障するのを未然に防止できる。
【0112】
ステップS16f:管理制御部11は、検出劣化部材がセルスタック50a又は重要補機以外の電池部材である場合には、劣化燃料電池システム群を現時点から使用可能期間までの間に徐々に停止させる。例えば、劣化燃料電池システム群への原燃料、改質水及び空気等の供給を徐々に減らすことで、劣化燃料電池システム群を徐々に停止させる。
【0113】
セルスタック50a及び重要補機以外の換気ファン66a及び電力変換装置120は、使用可能期間を経過した後も劣化燃料電池システム群の運転を継続しても、発電出力の悪化及び劣化燃料電池システム群の故障等に直接的に影響する部材ではない。よって、検出劣化部材である換気ファン66a及び電力変換装置120は、使用可能期間まで使用可能であれば、劣化燃料電池システム群には問題は生じない。そこで、換気ファン66a及び電力変換装置120の少なくともいずれかである検出劣化部材が劣化しており、使用可能期間が所定期間(Y年)未満である場合には、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群の運転を徐々に停止させる。これにより、劣化燃料電池システム群を即時に停止させる場合に比べて、劣化燃料電池システム群の故障などの悪影響を抑制できる。
【0114】
ステップS16g:管理制御部11は、検出劣化部材の使用可能期間がX年(3年)未満であり、かつY年(1か月)以上であるため、例えば1か月に1回(1日)で設定された燃料供給停止期間に合わせて劣化燃料電池システム群を停止させる。なお、燃料供給停止期間は、マイコンメータ46が原燃料が漏洩している誤検知しないようにするために、燃料電池50での発電を停止させ、原燃料流路51を介した燃料電池50への燃料の供給を停止する期間である。
【0115】
ステップS16h:管理制御部11は、検出劣化部材の使用可能期間がX年(3年)以上であるため、例えば3年などの数年に1回の定期メンテナンスに合わせて劣化燃料電池システム群を停止させる。
【0116】
なお、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30は、例えば、当該燃料電池システム30の図示しない運転制御部によって停止される。あるいは、管理制御部11が、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30の運転を停止してもよい。停止方法は、上記のステップS16bからS16hと同様である。
【0117】
上記本実施形態によれば、管理装置10と燃料電池システム30とは、ネットワーク40を介して接続されている。よって、管理装置10は、燃料電池システム30を構成する電池部材の劣化情報を、燃料電池システム30からネットワーク40を介して取得できる。そのため、例えばサービスマン等が、各燃料電池システム30が備え付けられている場所を訪問することなく、燃料電池システム30を構成している電池部材の劣化情報を収集することができる。
【0118】
また、管理制御部11は、燃料電池システム30から取得した劣化情報に基づいて、当該燃料電池システム30を構成している電池部材のうちから検出劣化部材を検出できるだけでなく、この検出劣化部材と同様の劣化状態を有している可能性が高い、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の電池部材を劣化部材として特定することができる。
【0119】
そして、検出劣化部材の使用によって、それが備えられている燃料電池システム30が劣化するのと同様に、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群もまた、当該劣化部材の使用によって同様の劣化状態となる可能性が高い。そこで、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された複数の劣化部材それぞれが備えられている燃料電池システム群を劣化燃料電池システム群とし、劣化燃料電池システム群の運転を検出劣化部材の劣化情報に基づいて一括して停止する。これにより、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材が備えられている劣化燃料電池システム群が、例えば発電出力が悪化した状態で運転され、ひいては故障してしまうのを未然に防止できる。
【0120】
特に上記実施形態では、電池部材の経年による劣化傾向を推定することで、実際に電池部材が劣化して使用困難となる前に検出劣化部材として検出できる。よって、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号の劣化部材を備える劣化燃料電池システム群を、検出劣化部材の劣化情報に応じて一括して、故障等が生じる前に未然に停止できる。
同様に、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30もまた、当該燃料電池システム30の運転制御部又は管理制御部11によって、当該検出劣化部材の劣化情報に応じて、故障等が生じる前に未然に停止される。
さらに、事前に検出劣化部材として特定できることで、検出劣化部材の種類に応じて、また、検出劣化部材の残りの使用可能期間に応じてなど、検出劣化部材の劣化状態に応じて、劣化燃料電池システム群を停止できる。また、検出劣化部材が備えられている燃料電池システム30もまた同様に、検出劣化部材の種類等に応じて停止できる。
【0121】
[別実施形態]
(1)上記実施形態では、管理制御部11は、当該電池部材の劣化傾向に基づいて推定した当該電池部材の使用寿命期間が、当該電池部材の設計寿命期間又は燃料電池システム30の設計寿命期間より短いか否かを判定する。判定の結果、管理制御部11は、使用寿命期間が設計寿命期間より短い場合は、当該電池部材を劣化推定部材と特定する。そして、管理制御部11は、劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う。
しかし、管理制御部11は、電池部材の現在の劣化状態に基づいて遠隔チューニングを行ってもよい。
図12は、電池部材の現在の劣化状態に基づいて劣化推定部材を特定する処理を含む全体制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0122】
図12の処理では、
図9のステップS11の処理に代えて、電池部材の現在の劣化状態に基づいて劣化推定部材を特定するステップS111の処理が行われる。
また、
図12の処理では、
図9のステップS14の処理に代えて、ステップS114の処理が行われる。ステップS114では、ステップS13においてセルスタック50aの劣化傾向が改善しなかった場合に、管理制御部11は、ステップS111において特定した劣化推定部材を、検出劣化部材として特定する。
図12のステップS111及びステップS114以外の処理については
図9と同様であるので、説明を省略する。
図12のステップS111での劣化推定部材を特定する方法として、例えば以下の方法が挙げられる。
【0123】
(1−1)
図12において、ステップS111では、管理制御部11は、電池部材の現在の劣化状態(実測値)と劣化閾値とに基づいて劣化推定部材か否かを判定する。
例えば、セルスタック50aの現在の劣化状態について検討する。例えば、
図5において、セルスタック50aが劣化していると判定される基準である定格出力の80%が、セルスタック50aの劣化閾値であり、この劣化閾値に相当する電圧差が、セルスタック50aの劣化閾値となる。電圧差とは、劣化取得手段200が取得した前述のセルスタック50aの電圧差である。
よって、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の電圧差と、セルスタック50aの劣化閾値とを比較し、現在の電圧差が劣化閾値よりも悪化している場合、つまり、現在の電圧差が劣化閾値以下となった場合に、当該セルスタック50aを劣化推定部材と特定する。この場合、管理制御部11は、ステップS12に進み、当該劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う。
一方、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の電圧差が劣化閾値未満の場合に、当該セルスタック50aを劣化推定部材とみなさず、ステップS10に戻る。
【0124】
また、例えば、原燃料ポンプ41の現在の劣化状態について検討する。例えば、原燃料ポンプ41の劣化閾値としてある値が設定されている。管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した原燃料ポンプ41の現在の実測差分と、原燃料ポンプ41の劣化閾値とを比較し、現在の実測差分が劣化閾値よりも悪化している場合、つまり、現在の実測差分が劣化閾値以上となった場合に、当該原燃料ポンプ41を劣化推定部材と特定する。この場合、管理制御部11は、ステップS12に進み、当該劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う。
一方、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の実測差分が劣化閾値未満の場合に、当該原燃料ポンプ41を劣化推定部材とみなさず、ステップS10に戻る。
【0125】
その他の補器を含む電池部材に対しても、現在の劣化状態に基づいて劣化推定部材か否かを判定し、判定結果に基づいて遠隔チューニングを行うか否かを決定する。
【0126】
(1−2)上記とは異なり、
図12において、ステップS111では、管理制御部11は、電池部材の劣化傾向と劣化閾値とに基づいて劣化推定部材か否かを判定する。
例えば、セルスタック50aについて検討する。
図13は、劣化閾値が示されたセルスタックの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。各種電池部材の劣化傾向の取得方法は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
図13では、前述と同様に、セルスタック50aが劣化していると判定される基準である定格出力の80%が、セルスタック50aの劣化閾値と設定されている。
現時点が燃料電池システム30の使用開始から3年である場合、
図13を参照すると、セルスタック50aの劣化状態の指標となる発電出力は、定格出力の約75%であり劣化閾値(80%)未満である。この場合は、管理制御部11は、当該セルスタック50aを劣化推定部材と特定し、ステップS12に処理を進めて当該劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う。
一方、現時点が燃料電池システム30の使用開始から1年である場合、
図13を参照すると、セルスタック50aの劣化状態の指標となる発電出力は、定格出力の約90%であり劣化閾値(80%)以上である。この場合は、管理制御部11は、当該セルスタック50aを劣化推定部材とみなさず、ステップS10に戻る。
【0127】
また、例えば、原燃料ポンプ41について検討する。
図14は、劣化閾値が示された原燃料ポンプの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。
図14では、燃料電池システム30の使用開始から3年が、原燃料ポンプ41の劣化閾値と設定されている。
現時点が燃料電池システム30の使用開始から2年半である場合、原燃料ポンプ41の劣化状態は劣化閾値以上である。この場合は、管理制御部11は、当該セルスタック50aを劣化推定部材と特定し、ステップS12に処理を進めて当該劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う。
一方、現時点が燃料電池システム30の使用開始から1年である場合、原燃料ポンプ41の劣化状態は劣化閾値未満である。この場合は、管理制御部11は、当該原燃料ポンプ41を劣化推定部材とみなさず、ステップS10に戻る。
【0128】
その他の補器を含む電池部材に対しても、劣化傾向と劣化閾値とに基づいて劣化推定部材か否かを判定し、判定結果に基づいて遠隔チューニングを行うか否かを決定する。
【0129】
(2)上記実施形態では、管理制御部11は、
図9において、劣化推定部材を検出すると、劣化推定部材に対して遠隔チューニングを行う(
図9のステップS12)。そして、遠隔チューニングによってもセルスタック50aの劣化傾向が改善しない場合は(
図9のステップS13)、管理制御部11は、劣化推定部材の現在の劣化状態(実測値)と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定する(
図9のステップS14)。管理制御部11は、当該劣化推定部材を検出劣化部材として特定した場合、当該検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が備えられた劣化燃料電池システム群を、検出劣化部材の劣化状態に基づいて停止する(
図9のステップS15、S16)。
【0130】
しかし、セルスタック50aの劣化傾向が改善するように遠隔チューニングを行う処理は、必ずしも必要ではない。例えば、管理制御部11は、検出劣化部材を特定すると、遠隔チューニングを行わず、劣化燃料電池システム群を検出劣化部材の劣化状態に基づいて停止してもよい。
図15は、遠隔チューニングを行わない全体制御の流れの一例を示すフローチャートである。
図15の処理では、
図9のステップS11の処理に代えて、ステップS112において検出劣化部材を特定する処理が行われる。また、
図15では、ステップS112において検出劣化部材が特定されると、
図9の遠隔チューニングに関するステップS12、S13及び検出劣化部材の特定に関するステップS14を行わず、ステップS15、S16、S17の処理が行われる。
図15において、ステップS10、S15,S16,S17の処理は
図9と同様であるので説明を省略する。
検出劣化部材を特定する方法として、例えば以下の方法が挙げられる。
【0131】
(2−1)
図15において、ステップS112では、管理制御部11は、電池部材の現在の劣化状態(実測値)と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
例えば、セルスタック50aの現在の劣化状態について検討する。例えば、
図5において、セルスタック50aが劣化していると判定される基準である定格出力の80%が、セルスタック50aの劣化閾値であり、この劣化閾値に相当する電圧差が、セルスタック50aの劣化閾値となる。電圧差とは、劣化取得手段200が取得した前述のセルスタック50aの電圧差である。
よって、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の電圧差と、セルスタック50aの劣化閾値とを比較し、現在の電圧差が劣化閾値よりも悪化している場合、つまり、現在の電圧差が劣化閾値以下となった場合に、当該セルスタック50aを検出劣化部材と特定する。この場合、管理制御部11は、ステップS15に処理を進める。
一方、管理制御部11は、劣化取得手段200から取得した現在の電圧差が劣化閾値未満の場合に、当該セルスタック50aを検出劣化部材とみなさず、ステップS10に戻る。
その他の補器を含む電池部材に対しても、現在の劣化状態に基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
【0132】
(2−2)
図15において、ステップS112では、管理制御部11は、電池部材の劣化傾向と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定する。
例えば、セルスタック50aについて検討する。
図13は、劣化閾値が示されたセルスタックの経年の劣化傾向の一例を示すグラフである。各種電池部材の劣化傾向の取得方法は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0133】
図13では、前述と同様に、セルスタック50aが劣化していると判定される基準である定格出力の80%が、セルスタック50aの劣化閾値と設定されている。
現時点が燃料電池システム30の使用開始から3年である場合、
図13を参照すると、セルスタック50aの劣化状態の指標となる発電出力は、定格出力の約75%であり劣化閾値(80%)未満である。この場合は、管理制御部11は、当該セルスタック50aを検出劣化部材と特定し、ステップS15に処理を進める。
一方、現時点が燃料電池システム30の使用開始から1年である場合、
図13を参照すると、セルスタック50aの劣化状態の指標となる発電出力は、定格出力の約90%であり劣化閾値(80%)以上である。この場合は、管理制御部11は、当該セルスタック50aを検出劣化部材とみなさず、ステップS10に戻る。
その他の補器を含む電池部材に対しても、劣化傾向と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定し、判定結果に基づいて遠隔チューニングを行うか否かを決定する。
【0134】
(3)上記実施形態では、
図9のステップS13において、セルスタック50aの劣化傾向が改善しなかった場合には、ステップS14において、管理制御部11は、電池部材の現在の実測値と劣化閾値とに基づいて検出劣化部材か否かを判定する。しかし、管理制御部11は、
図9のステップS14において、セルスタック50aの劣化傾向が改善しなかった場合には、ステップS11で特定された当該劣化推定部材を検出劣化部材として検出し、ステップS15に処理を進めてもよい。
【0135】
また、検出劣化部材か否かを判定するステップS14の処理は、
図9において、ステップS11とステップS12との間に行われてもよい。例えば、ステップS11において電池部材が劣化推定部材として特定され、かつ、ステップS11の次に行われるステップS14において当該電池部材が検出劣化部材として検出されたとする。この場合、ステップS14の次に行われるステップS12において、管理制御部11は、当該検出劣化部材の使用寿命期間を延ばすように補機を制御する遠隔チューニングを行う。そして、管理制御部11は、ステップS13においてセルスタック50aの劣化傾向が改善しなかったと判定した場合には、ステップS15において、当該検出劣化部材に付与されている製造ロット番号を特定する。
【0136】
(4)上記実施形態では、各燃料電池システム30それぞれが、劣化取得手段200、検出器201、203、204、207、209、211等を備えている。よって、各燃料電池システム30が劣化取得手段200により、各種電池部材の劣化状態を取得することができる。しかし、劣化取得手段200、検出器201、203、204、207、209、211等は、全ての燃料電池システム30に備えられている必要はなく、複数の燃料電池システム30のうち少なくとも1つの燃料電池システム30に備えられていればよい。1つの燃料電池システム30の劣化取得手段200が取得した電池部材の劣化状態に基づいて検出劣化部材を特定できれば、管理制御部11は、検出劣化部材と同一の製造ロット番号が付された劣化部材を備える劣化燃料電池システム群を停止できる。
【0137】
(5)上記実施形態では、
図9において、検出劣化部材の製造ロット番号が特定されると(ステップS15)、劣化燃料電池システム群の停止処理(ステップS16)と、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材の市場への流出の阻止及び新たな製造の阻止が行われる(ステップS17)。しかし、劣化燃料電池システム群の停止処理か、あるいは前記劣化部材の市場への流出の阻止及び新たな製造の阻止のいずれかの処理が行われてもよい。
【0138】
(6)上記実施形態の
図9に示す劣化燃料電池システム群の制御では、一の燃料電池システム30に着目し(
図9のステップS10)、当該燃料電池システム30の電池部材のうちから劣化推定部材を検出している(
図9のステップS11)。そして、この一の燃料電池システム30の劣化推定部材に対して、セルスタック50aの劣化傾向を改善するように遠隔チューニングを行っている(
図9のステップS12)。しかし、一の燃料電池システム30において劣化推定部材が特定された場合、当該劣化推定部材と同一の製造ロット番号を有する電池部材それぞれが備えられた劣化燃料電池システム群の全てに対して、遠隔チューニングを行ってもよい。これにより、劣化燃料電池システム群の全てに対して、セルスタック50aの劣化傾向の改善を見込むことができる。
【0139】
(7)上記実施形態では、管理装置10の管理制御部11は、燃料電池システム30の劣化取得手段200から、各種電池部材の劣化状態を取得する。そして、管理制御部11が、各種電池部材の劣化状態に基づいて、電池部材それぞれについて経年による劣化傾向を推定する。しかし、電池部材の劣化傾向の推定は、燃料電池システム30が行ってもよい。この場合、例えば燃料電池システム30の劣化取得手段200が、電池部材の劣化傾向の推定を行ってもよい。劣化傾向の推定方法は上述と同様である。
【0140】
(8)上記実施形態では、現在時点からの使用可能期間に応じて、劣化燃料電池システム群の運転を停止させる。しかし、現在時点からの使用可能期間に関わらず、劣化燃料電池システム群の運転を即時に停止させてもよい。
【0141】
(9)上記実施形態では、管理装置10の管理制御部11が、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材の市場への流通及び新たな製造を阻止するための阻止情報を、製造装置20に送信している。しかし、検出劣化部材と同一の製造ロット番号を有する劣化部材が、製造装置20とは異なる保管装置に格納されている場合には、管理制御部11は、保管装置に阻止情報を送信してよい。この場合、管理装置10と保管装置とはネットワーク40を介して通信可能に接続されている。これにより、保管装置から劣化部材が市場に流通するのを阻止でき、また劣化部材の新たな製造を阻止できる。
【0142】
(10)上記実施形態では、補機は、原燃料ポンプ41、空気ブロア43、改質水ポンプ83、循環ポンプ64及び放熱ファン65aである。しかし、補機は、燃料電池50のセルスタック50aが発電を行うのを補助するための機器であればこれに限定されない。例えば、供給路における原燃料及び空気の供給量を調整するための電磁弁等もまた、補機に含まれる。
【0143】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。