(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載のシステムのように、分散型電源設備が電力の逆潮流を停止させる又は逆潮流する電力を低減させる制御を行った場合、その分散型電源設備の運用者は、売電によって得ることができるはずであった経済的メリットを得ることができなくなる。また、そのような制御を行うためには、電源装置の出力電力を例えば定格電力よりも低下させる必要がある。つまり、電源装置を高効率な状態では運転できないため、高い省エネルギ性を得ることができなくなる。
【0007】
尚、同一の変圧器の二次側の電力系統での系統電圧は例えばその変圧器の二次側の電力系統での電力の需給バランスによって増減する。そのため、一つの分散型電源設備が特許文献2に記載のように電力の逆潮流を停止するなどしても、同一の変圧器の二次側の電力系統に連系されている他の分散型電源設備による供給電力及び他の負荷による負荷電力によっては、系統電圧が低下せずに高い値で維持される可能性もある。
【0008】
また、同一の変圧器の二次側の電力系統での系統電圧は、その電力系統の全て箇所で同一になる訳ではなく、例えば分散型電源設備が数多く連系されている地域等や集合住宅等では局所的に系統電圧が高くなり、分散型電源設備が殆ど連系されていない地域等では局所的に系統電圧が低くなる可能性もある。そのため、一つの分散型電源設備が電力の逆潮流を停止しても、他の地域では系統電圧がそれほど高くなっておらず、それらの地域に連系されている他の分散型電源設備は電力の逆潮流を停止していない可能性もある。
【0009】
このように、一つの分散型電源設備が電力の逆潮流を停止するなどしても、系統電圧が高い状態を解消できないという問題がある。また、系統電圧などの電力品質を良い状態に保つ必要があるという課題は、同一の変圧器の二次側の電力系統に連系されている全ての分散型電源設備に共通する課題であるにも関わらず、少数の分散型電源設備のみが電力の逆潮流を停止するなどして経済的メリット等を得られないという問題もある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の分散型電源設備を最適に運転させつつ、地域全体において電力系統の電力品質を良好に保つことができる分散型電源管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る分散型電源管理システムの特徴構成は、複数の分散型電源設備と、複数の前記分散型電源設備との間で通信回線を介して情報の送受信を行うことができるサーバー装置とを備え、
前記分散型電源設備では、発電部を含む電源装置と電力負荷装置とが接続される電力線が電力系統に連系され、
前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれが、どの変圧器の二次側の前記電力系統に連系されているのかを示す情報を記憶し、
前記電源装置は、連系点電圧が所定の上限電圧を超えている間、動作モードを、前記分散型電源設備から前記電力系統への電力供給を停止する逆潮流停止モードに設定して出力電力を制御し、前記連系点電圧が前記上限電圧以下である第1設定電圧以上であることを含む所定の高電圧条件を満たしている間、又は、前記サーバー装置から逆潮流抑制指令が伝達された後、前記サーバー装置から前記逆潮流抑制指令の解除が伝達されるまでの間、動作モードを、前記分散型電源設備から前記電力系統への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御し、前記連系点電圧が前記第1設定電圧未満であることを含む所定の低電圧条件を満たしている間、動作モードを、前記分散型電源設備から前記電力系統への供給電力を抑制しない逆潮流非抑制モードに設定して出力電力を制御し、
前記サーバー装置は、同一の前記変圧器の二次側の前記電力系統に連系されている複数の前記分散型電源設備で構成される特定の設備群について、それら複数の前記分散型電源設備から伝達された前記連系点電圧を含む動作情報に基づいて、前記逆潮流抑制モードを実行させる全体抑制実施条件が満たされたと判定すると前記逆潮流抑制指令を前記特定の設備群を構成する複数の前記分散型電源設備に伝達し、全体抑制解除条件が満たされたと判定すると前記逆潮流抑制指令の解除を前記特定の設備群を構成する複数の前記分散型電源設備に伝達する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、電源装置は、連系点電圧が上限電圧以下である第1設定電圧以上であることを含む所定の高電圧条件を満たしている間、動作モードを、電力系統への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統の系統電圧を適正な値にするために貢献できる。
また、電源装置は、連系点電圧が所定の上限電圧を超えている間、動作モードを、電力系統への電力供給を停止する逆潮流停止モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統の系統電圧を適正な値にするために特に貢献できる。
【0013】
更に、サーバー装置は、同一の変圧器の二次側の電力系統に連系されている複数の分散型電源設備で構成される特定の設備群について、それら複数の分散型電源設備から伝達された連系点電圧を含む動作情報に基づいて、逆潮流抑制モードを実行させる全体抑制実施条件が満たされたと判定すると逆潮流抑制指令を特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備に伝達する。そして、電源装置は、サーバー装置から逆潮流抑制指令が伝達された後、サーバー装置から逆潮流抑制指令の解除が伝達されるまでの間、動作モードを、分散型電源設備から電力系統への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統の系統電圧を適正な値にするために貢献できる。つまり、電源装置は、それ自身の連系点電圧が第1設定電圧以上であることを含む所定の高電圧条件を満たしていないとしても、即ち、本来ならば分散型電源設備から電力系統への供給電力の抑制を行う必要がないにも関わらず、サーバー装置からの指令に応じて、動作モードを、分散型電源設備から電力系統への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統の系統電圧を適正な値にするために貢献できる。このように、同一の変圧器の二次側の電力系統に連系されている全ての分散型電源設備において、分散型電源設備から電力系統への供給電力の抑制が共通して行われるので、複数の分散型電源設備を最適に運転させつつ、地域全体において電力系統の電力品質を良好に保つことができる分散型電源管理システムを提供できる。
【0014】
本発明に係る分散型電源管理システムの別の特徴構成は、前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれでの前記第1設定電圧を記憶し、前記特定の設備群を構成する複数の前記分散型電源設備のうちの何れかについて、伝達された前記連系点電圧が、記憶している前記第1設定電圧以上である期間が所定期間以上継続するとき、前記全体抑制実施条件が満たされていると判定する点にある。
【0015】
各分散型電源設備では、連系点電圧が第1設定電圧以上になると、電源装置の動作モードが逆潮流抑制モードに設定されて出力電力の制御が行われる。ところが、その後も、連系点電圧が第1設定電圧以上である期間が継続するのであれば、それは、一つの分散型電源設備だけでは電力系統の系統電圧を下げることができていないことを意味する。
そこで本特徴構成では、サーバー装置は、特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備のうちの何れかについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第1設定電圧以上である期間が所定期間以上継続するとき、全体抑制実施条件が満たされていると判定する。その結果、逆潮流抑制指令が、特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備に伝達されて、それらの分散型電源設備でも電源装置の動作モードが逆潮流抑制モードに設定されて電源装置の出力電力の制御が行われる。
【0016】
本発明に係る分散型電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれでの、前記第1設定電圧よりも高く且つ前記上限電圧以下である第2設定電圧を記憶し、前記特定の設備群を構成する複数の前記分散型電源設備のうちの何れかについて、伝達された前記連系点電圧が、記憶している前記第2設定電圧以上であるとき、前記全体抑制実施条件が満たされていると判定する点にある。
【0017】
各分散型電源設備では、連系点電圧が第1設定電圧以上になると、電源装置の動作モードが逆潮流抑制モードに設定されて出力電力の制御が行われる。ところが、その後、連系点電圧が第1設定電圧よりも高く且つ上限電圧以下である第2設定電圧以上にまで上昇するのであれば、それは、一つの分散型電源設備だけでは電力系統の系統電圧を下げることができていないことを意味する。
そこで本特徴構成では、サーバー装置は、特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備のうちの何れかについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第2設定電圧以上であるとき、全体抑制実施条件が満たされていると判定する。その結果、逆潮流抑制指令が、特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備に伝達されて、それらの分散型電源設備でも電源装置の動作モードが逆潮流抑制モードに設定されて電源装置の出力電力の制御が行われる。
【0018】
本発明に係る分散型電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれでの前記第1設定電圧を記憶し、前記特定の設備群を構成する複数の前記分散型電源設備の全てについて、伝達された前記連系点電圧が、記憶している前記第1設定電圧未満であるとき、前記全体抑制解除条件が満たされていると判定する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、サーバー装置は、特定の設備群を構成する複数の分散型電源設備の全てについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第1設定電圧未満であるとき、全体抑制解除条件が満たされていると判定する。その結果、全ての分散型電源設備において、電源装置の動作モードが、分散型電源設備から電力系統への供給電力を抑制しない逆潮流非抑制モードに設定されて、分散型電源設備から電力系統への電力の逆潮流を自在に行えるようになる。
【0020】
本発明に係る分散型電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれでの前記第1設定電圧を記憶し、前記分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第1期間内に前記連系点電圧が前記第1設定電圧以上になった回数が設定回数以上になったとき、前記第1設定電圧を高電圧側に変更し、当該分散型電源設備に変更後の前記第1設定電圧を伝達する点にある。
【0021】
分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第1期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上になった回数が設定回数以上になったということは、その第1設定電圧が元々低すぎる値に設定されていたとも言える。
そこで本特徴構成では、サーバー装置は、分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第1期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上になった回数が設定回数以上になったとき、第1設定電圧を高電圧側に変更し、当該分散型電源設備に変更後の第1設定電圧を伝達する。その結果、分散型電源設備では連系点電圧が変更後の第1設定電圧以上にはなり難くなるため、電力系統へ電力を逆潮流できる機会が増加する。
【0022】
本発明に係る分散型電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記サーバー装置は、複数の前記分散型電源設備のそれぞれでの前記第1設定電圧を記憶し、前記分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第2期間内に前記連系点電圧が前記第1設定電圧以上にならなかったとき、前記第1設定電圧を低電圧側に変更し、当該分散型電源設備に変更後の前記第1設定電圧を伝達する点にある。
【0023】
分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第2期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上にならなかったということは、その第1設定電圧が元々高すぎる値に設定されていたとも言える。
そこで本特徴構成では、サーバー装置は、分散型電源設備の一つについて、過去の直近の第2期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上にならなかったとき、第1設定電圧を低電圧側に変更し、当該分散型電源設備に変更後の第1設定電圧を伝達する。その結果、分散型電源設備では連系点電圧が変更後の第1設定電圧以上になり易くなるため、分散型電源設備から電力系統への電力の逆潮流を抑制させる機会を増加させて、電力系統の電力品質を高めるようにできる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る分散型電源管理システムについて説明する。
図1は、分散型電源管理システムの構成を示す図である。図示するように、分散型電源管理システムは、複数の分散型電源設備10と、複数の分散型電源設備10との間で通信回線3を介して情報の送受信を行うことができるサーバー装置4とを備える。
図1に示す例では、電力系統1に複数の分散型電源設備10が連系されている。例えば柱上変圧器などの変圧器2(2A,2B)が電力系統1の途中に設けられている。変圧器2Aの二次側の電力系統1には、複数の分散型電源設備10で構成される設備群G1(G)が連系され、変圧器2Bの二次側の電力系統1には、複数の分散型電源設備10で構成される設備群G2(G)が連系される。よって、例えば変圧器2Aの二次側の電力系統1での系統電圧は、その変圧器2Aの二次側の電力系統1での電力の需給バランスによって増減する。尚、図示は省略しているが、実際の電力系統1では、同一の変圧器2の二次側の電力系統1には、電力負荷装置12のみを有する一般の需要者や、電源装置13及び電力負荷装置12を有する他の需要者などが多数接続されている。
【0026】
〔分散型電源設備10〕
分散型電源設備10では、発電部13aを含む電源装置13と電力負荷装置12とが接続される電力線11が電力系統1に連系される。本実施形態では、電源装置13は、発電部13aと制御部13bと記憶部13cと通信部13dとを有する。
発電部13aは、例えば、燃料電池や、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備えて構成される装置などである。その場合、発電部13aは、燃料を消費して運転される装置であるため、発電部13aの発電電力は自在に調節できる。発電部13aの動作は制御部13bが制御する。
【0027】
制御部13bには、電力系統1に対する電力線11の連系点での電圧(連系点電圧)を測定する電圧測定部15の測定結果が伝達され、電力系統1から電力線11へと流れる電流を測定する電流測定部14の測定結果が伝達される。制御部13bは、電圧測定部15の測定結果と電流測定部14の測定結果とに基づいて、電力系統1から電力線11へと供給される電力(受電電力)を導出する。例えば、分散型電源設備10において、電源装置13の出力電力(発電部13aの発電電力)が電力負荷装置12の負荷電力よりも小さいとき、制御部13bが導出する受電電力は正の値、即ち、電力系統1から電力を購入していることになる。それに対して、分散型電源設備10において、電源装置13の出力電力が電力負荷装置12の負荷電力よりも大きいとき、制御部13bが導出する受電電力は負の値、即ち、電力系統1へ電力を販売(逆潮流)していることになる。
【0028】
制御部13bは、通信部13d及び通信回線3を介して、遠隔地にあるサーバー装置4との間で情報の送受信を行うことができる。例えば、制御部13bは、上述のように測定した連系点電圧を記憶部13cに記憶しておき、所定のタイミングでサーバー装置4へ送信する。このように、記憶部13cには、上記連系点電圧や、後述する第1設定電圧や、後述する逆潮流抑制指令をサーバー装置4から受けているか否かなど、その分散型電源設備10の電源装置13で取り扱われる情報が記憶される。
【0029】
〔電源装置13の動作モード〕
制御部13bは、電源装置13の動作モードを、逆潮流停止モード及び逆潮流抑制モード及び逆潮流非抑制モードの何れかに設定して、電源装置13の出力電力を制御する。
図2〜
図4は、電源装置13の動作モードを切り替えた場合での電源装置13の出力電力及び電力負荷装置12の負荷電力の推移例を示すグラフである。
【0030】
具体的に説明すると、制御部13bは、連系点電圧が所定の上限電圧(例えば107Vなど)を超えている間、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への電力供給を停止する逆潮流停止モードに設定して電源装置13の出力電力を制御する。連系点電圧が所定の上限電圧を超えているということは、電力系統1での電力需要が相対的に少なくなっており、分散型電源設備10から電力系統1への逆潮流電力が過剰になっていることを意味する。そのため、制御部13bは、分散型電源設備10から電力系統1への電力供給を停止することで、連系点電圧を下げるように試みる。例えば、制御部13bは、電圧測定部15の測定結果と電流測定部14の測定結果とに基づいて導出する、電力系統1から電力線11へと供給される電力がゼロ又は正の値になるように、電源装置13から電力線11への出力電力(即ち、発電部13aの発電電力)を調節する。
【0031】
図2に示した例では、制御部13bは、時刻t1から時刻t2までの間、電源装置13の動作モードを逆潮流停止モードに設定し、電力系統1から電力線11へと供給される電力がゼロになるように、電源装置13から電力線11への出力電力(即ち、発電部13aの発電電力)を調節する。つまり、電源装置13から電力線11への出力電力と、電力負荷装置12の負荷電力とが等しくなっている。
【0032】
また、制御部13bは、連系点電圧が上限電圧以下である第1設定電圧以上(例えば106V以上など)であることを含む所定の高電圧条件を満たしている間、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して電源装置13の出力電力を制御する。連系点電圧が上限電圧(107V)を超えてはいないが、第1設定電圧(106V)以上であるということは、連系点電圧が上限電圧に近付いていることを意味する。そのため、制御部13bは、分散型電源設備10から電力系統1への電力供給を停止させる必要はないが少なくとも抑制することで、連系点電圧を下げるように試みる。例えば、制御部13bは、電圧測定部15の測定結果と電流測定部14の測定結果とに基づいて導出する、分散型電源設備10から電力系統1へと供給される電力が所定の上限値(即ち、逆潮流電力の上限値)になるように、電源装置13から電力線11への出力電力(即ち、発電部13aの発電電力)を調節する。他には、制御部13bは、電源装置13から電力線11への出力電力を、最大出力よりも小さい所定電力で一定に、例えば、発電部13aの発電電力を定格発電電力の75%値や50%値などの所定電力にさせる。このように、動作モードが逆潮流抑制モードに設定されることで、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力の大きさには制限が加えられるため、連系点電圧が第1設定電圧(106V)よりも低くなることを期待できる。
【0033】
図3に示した例では、制御部13bは、時刻t3以前及び時刻t4以後、電源装置13の動作モードを逆潮流抑制モードに設定し、電源装置13から電力線11への出力電力(即ち、発電部13aの発電電力)を350Wで一定になるように調節する。この場合、制御部13bは、発電部13aの定格発電電力が700Wであるので、発電部13aの発電電力を定格発電電力の50%値に抑制している。
また、
図4に示した例では、制御部13bは、時刻t5から時刻t6の間、分散型電源設備10から電力系統1へと供給される逆潮流電力が所定の上限値:ΔPになるように、電源装置13から電力線11への出力電力(即ち、発電部13aの発電電力)を調節する。つまり、電源装置13から電力線11への出力電力は、電力負荷装置12の負荷電力よりもΔPだけ大きくなっている。
【0034】
更に、制御部13bは、連系点電圧が第1設定電圧未満(例えば106V未満)であることを含む所定の低電圧条件を満たしている間、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制しない逆潮流非抑制モードに設定して電源装置13の出力電力を制御する。連系点電圧が第1設定電圧(106V)未満であるということは、分散型電源設備10から電力系統1への電力供給が許容できる範囲であることを意味する。そのため、制御部13bは、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制しない。例えば、制御部13bは、分散型電源設備10から電力系統1への逆潮流電力が最も大きくなるように、発電部13aの発電電力を例えば定格発電電力にさせる。その結果、分散型電源設備10では、電力を電力系統1へと販売することによる経済的メリットが大きくなる。
【0035】
図2〜4に示した例では、制御部13bは、電源装置13の動作モードが逆潮流非抑制モードに設定されている間、電源装置13の出力電力(発電部13aの発電電力)を定格発電電力である700Wにさせる。この場合、電源装置13から電力線11への出力電力が電力負荷装置12の負荷電力を上回っていれば、その上回った分の電力が逆潮流電力となって電力系統1へと売電される。
【0036】
尚、各分散型電源設備10で測定される連系点電圧は、それぞれが連系されている各変圧器2の二次側の電力系統1での電力の需給バランスによって増減する。この需給バランスには、
図1に示したような他の分散型電源設備10による逆潮流電力及び受電電力や、図示していない他の電力負荷装置の負荷電力や電源装置の出力電力も関与する。そのため、一つの分散型電源設備10が受電電力や逆潮流電力を変化させても、その分散型電源設備10の連系点電圧が殆ど変化しない可能性もある。
【0037】
また、同一の変圧器2の二次側の電力系統1での系統電圧、即ち、各分散型電源設備10の連系点電圧は、その電力系統1の全て箇所で同一になる訳ではなく、例えば分散型電源設備10が数多く連系されている地域等や集合住宅等では局所的に系統電圧が高くなり、分散型電源設備10が殆ど連系されていない地域等では局所的に系統電圧が低くなる可能性もある。そのため、一つの分散型電源設備10が上記逆潮流停止モードで動作して電力の逆潮流を停止しても、他の地域では系統電圧がそれほど高くなっておらず、それらの地域に連系されている他の分散型電源設備10は上記逆潮流非抑制モードで動作して電力の逆潮流を抑制していない可能性もある。
【0038】
このように、一つの分散型電源設備10が上記逆潮流停止モードで動作して電力の逆潮流を停止するなどしても、電力系統1の系統電圧が高い状態を解消できないこともある。また、系統電圧などの電力品質を良い状態に保つ必要があるという課題は、同一の変圧器2の二次側の電力系統1に連系されている全ての分散型電源設備10に共通する課題であるにも関わらず、少数の分散型電源設備10のみが電力の逆潮流を停止するなどして経済的メリット等を得られないという問題もある。そこで、本実施形態の分散型電源管理システムでは、後述するようなサーバー装置4の関与により、複数の分散型電源設備10を最適に運転させつつ、地域全体において電力系統1の電力品質を良好に保てるようにする。
【0039】
〔サーバー装置4〕
サーバー装置4は、複数の分散型電源設備10のそれぞれが、どの変圧器2の二次側の電力系統1に連系されているのかを示す情報を記憶する。そして、サーバー装置4は、同一の変圧器2の二次側の電力系統1に連系されている複数の分散型電源設備10で構成される特定の設備群Gについて、それら複数の分散型電源設備10から伝達された連系点電圧を含む動作情報に基づいて、逆潮流抑制モードを実行させる全体抑制実施条件が満たされたと判定すると逆潮流抑制指令を特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10に伝達し、全体抑制解除条件が満たされたと判定すると逆潮流抑制指令の解除を特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10に伝達する。
これら全体抑制実施条件及び全体抑制解除条件の内容については後述する。
【0040】
そして、分散型電源設備10では、電源装置13の制御部13bは、サーバー装置4から逆潮流抑制指令が伝達された後、サーバー装置4から逆潮流抑制指令の解除が伝達されるまでの間、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して電源装置13の出力電力を制御する。つまり、分散型電源設備10で独自の判断で行われる制御と併せると、制御部13bは、連系点電圧が上限電圧以下である第1設定電圧以上(例えば106V以上など)であることを含む所定の高電圧条件を満たしている間、又は、後述するように、サーバー装置4から逆潮流抑制指令が伝達された後、サーバー装置4から逆潮流抑制指令の解除が伝達されるまでの間、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して電源装置13の出力電力を制御する。
【0041】
〔全体抑制実施条件〕
サーバー装置4は、例えば以下の表1に示すような情報を記憶している。具体的には、
図1の設備群G1を構成する分散型電源設備10A〜10Cに関して例示すると、サーバー装置4は、複数の分散型電源設備10A〜10Cのそれぞれでの第1設定電圧を記憶している。例えば、第1設定電圧は、分散型電源設備10Aでは106.0Vであり、分散型電源設備10Bでは105.9Vであり、分散型電源設備10Cでは105.8Vである。また、上限電圧は分散型電源設備10A〜10Cの全てで107.0Vで同一である。
加えて、サーバー装置4は、複数の分散型電源設備10A〜10Cのそれぞれでの、第1設定電圧よりも高く且つ上限電圧以下である第2設定電圧を記憶している。例えば、第2設定電圧は、分散型電源設備10Aでは106.5Vであり、分散型電源設備10Bでは106.4Vであり、分散型電源設備10Cでは106.3Vである。
更に、サーバー装置4は、各分散型電源設備10A〜10Cから受信したそれぞれでの連系点電圧を動作情報として記憶している。また、その連系点電圧が第1設定電圧以上である場合には、経過情報(動作情報)としてその継続期間も記憶している。この経過情報は、分散型電源設備10から伝達される高電圧条件を満たした履歴についての情報である。このように、動作情報には、電圧の情報と時間の情報とが含まれている。
【0043】
例えば、表1に示した例の場合、分散型電源設備10Aでは、連系点電圧(106.0V)がその第1設定電圧(106.0V)以上になっているため、分散型電源設備10Aの電源装置13の制御部13bは、電源装置13の動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して分散型電源設備10Aの電源装置13の出力電力を制御している。それに対して、分散型電源設備10Bでは連系点電圧(105.7V)がその第1設定電圧(105.9V)以上になっておらず、分散型電源設備10Cでは連系点電圧(105.6V)がその第1設定電圧(105.8V)以上になっていないため、分散型電源設備10B,10Cの電源装置13の制御部13bは、それぞれの電源装置13の動作モードを逆潮流非抑制モードに設定している。
【0044】
また、サーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10のうちの何れかについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第1設定電圧以上である期間が所定期間以上(例えば30分間以上など)継続するとき、全体抑制実施条件が満たされていると判定する。例えば、表1に示した例の場合、サーバー装置4は、分散型電源設備10Aにおいて、連系点電圧(106.0V)がその第1設定電圧(106.0V)以上になっている期間が所定期間以上(30分間以上)継続しているため、全体抑制実施条件が満たされていると判定する。そして、サーバー装置4は、逆潮流抑制指令を特定の設備群G1を構成する複数の分散型電源設備10A〜10Cに伝達する。その結果、分散型電源設備10B,10Cでも、電源装置13の動作モードが逆潮流抑制モードに設定される。
【0045】
或いは、サーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10のうちの何れかについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第2設定電圧以上であるとき、全体抑制実施条件が満たされていると判定するように構成してもよい。例えば、表1に示した例の場合、分散型電源設備10A〜10Cの何れでも、連系点電圧はそれぞれの第2設定電圧未満になっているため、サーバー装置4は、全体抑制実施条件が満たされていないと判定する。
【0046】
〔全体抑制解除条件〕
サーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10の全てについて、伝達された連系点電圧が、記憶している第1設定電圧未満であるとき、全体抑制解除条件が満たされていると判定する。例えば、表1に示した例の場合、サーバー装置4は、分散型電源設備10Aでの連系点電圧がその第1設定電圧(106.0V)未満になり、且つ、分散型電源設備10Bでの連系点電圧がその第1設定電圧(105.9V)未満になり、且つ、分散型電源設備10Cでの連系点電圧がその第1設定電圧(105.8V)未満になると、全体抑制解除条件が満たされたと判定する。そして、サーバー装置4は、逆潮流抑制指令の解除を特定の設備群G1を構成する複数の分散型電源設備10A〜10Cに伝達する。その結果、分散型電源設備10A〜10Cでは、電源装置13の動作モードが逆潮流非抑制モードに設定される。
【0047】
〔第1設定電圧の決定処理〕
サーバー装置4は、複数の分散型電源設備10で用いられる第1設定電圧の決定処理を行う。具体的には、第1設定電圧を高電圧側に変更するときの処理と、第1設定電圧を低電圧側に変更するときの処理とがある。
【0048】
例えば、分散型電源設備10の一つについて、過去の直近の第1期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上になった回数が設定回数以上になったということは、その第1設定電圧が元々低すぎる値に設定されていたとも言える。そこで、サーバー装置4は、分散型電源設備10の一つについて、過去の直近の第1期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上になった回数が設定回数以上になったとき、第1設定電圧を高電圧側に変更し、当該分散型電源設備10に変更後の第1設定電圧を伝達する。その結果、分散型電源設備10では連系点電圧が変更後の第1設定電圧以上にはなり難くなるため、電力系統1へ電力を逆潮流できる機会が増加する。
【0049】
それに対して、分散型電源設備10の一つについて、過去の直近の第2期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上にならなかったということは、その第1設定電圧が元々高すぎる値に設定されていたとも言える。そこで、サーバー装置4は、分散型電源設備10の一つについて、過去の直近の第2期間内に連系点電圧が第1設定電圧以上にならなかったとき、第1設定電圧を低電圧側に変更し、当該分散型電源設備10に変更後の第1設定電圧を伝達する。その結果、分散型電源設備10では連系点電圧が変更後の第1設定電圧以上になり易くなるため、分散型電源設備10から電力系統1への電力の逆潮流を抑制させる機会を増加させて、電力系統1の電力品質を高めるようにできる。
【0050】
〔電源装置13の動作モード設定処理〕
次に、各分散型電源設備10の電源装置13が行う動作モード設定処理について説明する。
図5は、分散型電源設備10で行われる動作モード設定処理を説明するフローチャートである。
工程#10において電源装置13の制御部13bは、連系点電圧が第1設定電圧以上(例えば106V以上など)であるか否かを判定する。そして、制御部13bは、連系点電圧が第1設定電圧以上である場合(工程#10において「Yes」の場合)には工程#12に移行し、連系点電圧が第1設定電圧以上ではない場合(工程#10において「No」の場合)には工程#11に移行する。
【0051】
工程#12において制御部13bは、連系点電圧が第1設定電圧より高い上限電圧(例えば107V)を超えているか否かを判定する。そして、制御部13bは、連系点電圧が上限電圧を超えている場合には工程#14に移行して、電源装置13の動作モードを逆潮流停止モードに設定する。それに対して、制御部13bは、連系点電圧が上限電圧を超えていない場合には工程#13に移行して、動作モードを逆潮流抑制モードに設定する。
【0052】
また、工程#11において制御部13bは、サーバー装置4から逆潮流抑制指令を受けているか否かを判定する。そして、制御部13bは、サーバー装置4から逆潮流抑制指令を受けている場合には工程#13に移行して、電源装置13の動作モードを逆潮流抑制モードに設定する。それに対して、制御部13bは、サーバー装置4から逆潮流抑制指令を受けていない場合には工程#15に移行して、電源装置13の動作モードを逆潮流非抑制モードに設定する。
【0053】
〔サーバー装置4の全体抑制判定処理〕
次に、サーバー装置4が行う全体抑制判定処理について説明する。
図6は、サーバー装置4で行われる全体抑制判定処理を説明するフローチャートである。
工程#20においてサーバー装置4は、各分散型電源設備10から伝達される動作情報に基づいて、各分散型電源設備10の状態を解析する。例えば、サーバー装置4は、各分散型電源設備10の連系点電圧、及び、連系点電圧が第1設定電圧以上である場合にはその継続期間などの動作情報を解析する。そして、サーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10に対して逆潮流抑制指令を伝達済みであるか否かを判定して(工程#21)、逆潮流抑制指令を伝達済みである場合には工程#24に移行し、逆潮流抑制指令を伝達済みでない場合には工程#22に移行する。
【0054】
工程#22においてサーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10において、全体抑制実施条件が満たされているか否かを判定する。そして、サーバー装置4は、全体抑制実施条件が満たされている場合には工程#23に移行して、逆潮流抑制指令をその特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10に対して伝達する。それに対して、サーバー装置4は、全体抑制実施条件が満たされていない場合にはこのフローチャートの最初にリターンする。
【0055】
工程#24においてサーバー装置4は、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10において、全体抑制解除条件が満たされているか否かを判定する。そして、サーバー装置4は、全体抑制解除条件が満たされている場合には工程#25に移行して、逆潮流抑制指令の解除をその特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10に対して伝達する。それに対して、サーバー装置4は、全体抑制解除条件が満たされていない場合にはこのフローチャートの最初にリターンする。
【0056】
以上のように、電源装置13は、サーバー装置4から逆潮流抑制指令が伝達された後、サーバー装置4から逆潮流抑制指令の解除が伝達されるまでの間、動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統1の系統電圧を適正な値にするために貢献できる。つまり、電源装置13は、それ自身の連系点電圧が第1設定電圧以上であることを含む所定の高電圧条件を満たしていないとしても、即ち、本来ならば分散型電源設備10から電力系統1への供給電力の抑制を行う必要がないにも関わらず、サーバー装置4からの指令に応じて、動作モードを、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力を抑制する逆潮流抑制モードに設定して出力電力を制御することで、電力系統1の系統電圧を適正な値にするために貢献できる。このように、同一の変圧器2の二次側の電力系統1に連系されている全ての分散型電源設備10において、分散型電源設備10から電力系統1への供給電力の抑制が共通して行われるので、複数の分散型電源設備10を最適に運転させつつ、地域全体において電力系統1の電力品質を良好に保つことができる分散型電源管理システムを提供できる。
【0057】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、分散型電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成については適宜変更可能である。
例えば、電源装置13が発電部13aに加えて、バッテリーなどの充放電部を有していてもよい。その場合、発電部13aの発電電力と充放電部の充放電電力とを調節することで、電源装置13の出力電力を調節できる。例えば、発電部13aの発電電力が一定であっても、充放電部の充電電力を増加又は放電電力を減少させれば、電源装置13の出力電力を減少させることができる。同様に、発電部13aの発電電力が一定であっても、充放電部の充電電力を減少又は放電電力を増加させれば、電源装置13の出力電力を増加させることができる。
【0058】
<2>
上記実施形態では、具体的な数値を例示して本発明に係る分散型電源管理システムの動作について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0059】
<3>
上記実施形態では、電源装置13の動作モードを逆潮流抑制モードに設定するときの指標となる高電圧条件の例として、連系点電圧が上限電圧以下である第1設定電圧以上(例えば106V以上など)であるという内容を例示したが、その内容は適宜変更可能である。例えば、連系点電圧が上限電圧以下である第1設定電圧以上である期間が所定時間以上継続したこと等を高電圧条件としてもよい。
また、上記実施形態では、電源装置13の動作モードを逆潮流非抑制モードに設定するときの指標となる低電圧条件の例として、連系点電圧が第1設定電圧未満(例えば106V未満)であるという内容を例示したが、その内容は適宜変更可能である。例えば、連系点電圧が第1設定電圧未満である期間が所定時間以上継続したこと等を低電圧条件としてもよい。
【0060】
<4>
上記実施形態では、全体抑制実施条件の例として、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10のうちの何れかについて、連系点電圧が第1設定電圧以上である期間が所定期間以上継続するという内容を例示したが、その内容は適宜変更可能である。例えば、特定の設備群Gを構成する複数の分散型電源設備10のうちの何れかについて、連系点電圧が第1設定電圧以上であることだけを全体抑制実施条件としてもよい。
【0061】
<5>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。