(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ピレスロイド系殺虫剤およびオキサジアゾール系殺虫剤から選択される1種以上の害虫防除剤5.0〜30.0重量%、(B)アゾジカルボンアミド、(C)香料成分0.001〜0.05重量%を含有し、(C)香料成分として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする加熱蒸散剤(ただし、テルピネオール0.0005重量%と、リナロール0.004重量%または0.0015重量%、若しくは、テルピネオール0.002重量%とリナロール0.01重量%を含有する加熱蒸散剤は除く)。
(C)香料成分として、β−イオノンまたはα,α−ジメチルフェネチルアルコールのいずれかを必須成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の加熱蒸散剤。
(C)香料成分として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を、加熱蒸散剤に対して0.001〜0.05重量%含有することを特徴とする、(A)ピレスロイド系殺虫剤およびオキサジアゾール系殺虫剤から選択される1種以上の害虫防除剤を5.0〜30.0重量%、(B)アゾジカルボンアミドを含有する加熱蒸散剤(ただし、テルピネオール0.0005重量%と、リナロール0.004重量%または0.0015重量%、若しくは、テルピネオール0.002重量%とリナロール0.01重量%を含有する加熱蒸散剤は除く)を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法。
(C)香料成分として、β−イオノンを必須成分として含有することを特徴とする、請求項3に記載の(A)害虫防除剤、(B)アゾジカルボンアミドを含有する加熱蒸散剤を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1等に記載された技術では、多くの使用者が満足する十分な臭気抑制効果が得られるとまではいい難く、さらなる改善が求められていた。
そこで、本発明は、加熱蒸散剤を加熱して蒸散させる際に発生する、煙臭、薬剤臭といった臭気や、煙や薬剤による刺激を軽減することができる加熱蒸散剤、加熱蒸散剤を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法、加熱蒸散剤を加熱するときに発生する臭気および刺激の軽減剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ある特定の香料を含有する加熱蒸散剤が、加熱して蒸散させる際に発生する、煙臭、薬剤臭といった臭気や、煙や薬剤による刺激を軽減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来の加熱蒸散剤において、香料を配合することは知られていた(例えば、特許文献2)が、本発明は特定の香料を配合することにより、加熱蒸散時の臭気のみならず、煙や薬剤による刺激を軽減できるという今までにない、新たな効果が得られることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.(A)ピレスロイド系殺虫剤およびオキサジアゾール系殺虫剤から選択される1種以上の害虫防除剤5.0〜30.0重量%、(B)アゾジカルボンアミド、(C)香料成分0.001〜0.05重量%を含有し、(C)香料成分として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を含有することを特徴とする加熱蒸散剤(ただし、テルピネオール0.0005重量%と、リナロール0.004重量%または0.0015重量%、若しくは、テルピネオール0.002重量%とリナロール0.01重量%を含有する加熱蒸散剤は除く)。
2.(C)香料成分として、β−イオノンまたはα,α−ジメチルフェネチルアルコールのいずれかを必須成分として含有することを特徴とする1.に記載の加熱蒸散剤。
3.(C)香料成分として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を、加熱蒸散剤に対して0.001〜0.05重量%含有することを特徴とする、(A)ピレスロイド系殺虫剤およびオキサジアゾール系殺虫剤から選択される1種以上の害虫防除剤を5.0〜30.0重量%、(B)アゾジカルボンアミドを含有する加熱蒸散剤(ただし、テルピネオール0.0005重量%と、リナロール0.004重量%または0.0015重量%、若しくは、テルピネオール0.002重量%とリナロール0.01重量%を含有する加熱蒸散剤は除く)を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法。
4.(C)香料成分として、β−イオノンを必須成分として含有することを特徴とする、3.に記載の(A)害虫防除剤、(B)アゾジカルボンアミドを含有する加熱蒸散剤を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱蒸散剤は、含有する特定の(C)香料成分により、加熱蒸散剤を加熱蒸散する際に発生する、煙臭、薬剤臭といった臭気をマスキングして臭気による不快感を軽減することができる。
また、本発明の加熱蒸散剤は、含有する特定の(C)香料成分の機能により、加熱蒸散剤を加熱蒸散する際に発生する、煙や薬剤により喉や鼻の奥がイガイガするような刺激感も軽減することができる。
これらにより、本発明の加熱蒸散剤は、使用後に臭気や刺激等の不快感を感じることが少なく、屋内空間において好適に使用でき、効果的に害虫を駆除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の加熱蒸散剤、加熱蒸散剤を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減方法、加熱蒸散剤を加熱する時に発生する臭気および刺激の軽減剤について詳細に説明する。
【0010】
<(A)害虫防除剤>
本発明の加熱蒸散剤は、(A)害虫防除剤を含有するものである。
本発明の(A)害虫防除剤としては、殺虫剤、防虫剤、忌避剤等が挙げられる。これらは、有機発泡剤である(B)アゾジカルボンアミドの熱分解ガスと一緒に揮散するものであればよく、特に限定されない。
殺虫剤としては、例えば、天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、ビフェントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系殺虫剤;プロポクスル、カルバリル等のカーバメイト系殺虫剤;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系殺虫剤;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫剤;フィプロニル等のフェニルピラゾール系殺虫剤;イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系殺虫剤;アミドフルメト等のスルホンアミド系殺虫剤;クロルフェナピル等のピロール系化合物;メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物;プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物;エクダイソン等の脱皮ホルモン様化合物;クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、ヘキサフルムロン、ブプロフェジン等のキチン合成阻害剤、フィトンチッド、薄荷油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の精油類;イソボルニルチオシアノアセテート(IBTA)、イソボルニルチオシアノエチルエーテル(IBTE)、四級アンモニウム塩、サリチル酸ベンジル等の1種又は2種以上が挙げられる。
中でもピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、オキサジアゾール系殺虫剤およびスルホンアミド系殺虫剤が、揮散がより向上されるので好ましく、特に、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾン、プロポクスル、アミドフルメト、エトフェンプロックスが好ましい。
防虫剤、忌避剤としては、例えば、ディート、ジ−n−ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル−ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)等の1種又は2種以上が挙げられる。
本発明の(A)害虫防除剤は、加熱蒸散剤に対して0.5〜30.0重量%、好ましくは3.0〜27.0重量%、特に好ましくは5.0〜25.0重量%となるように配合すればよい。
【0011】
<(B)アゾジカルボンアミド>
本発明の(B)アゾジカルボンアミドは、有機発泡剤として加熱蒸散剤に配合する。これは、加熱により分解して多量の熱を発生するとともにガスを発生し、(A)害虫防除剤を揮散させる効果を奏する。
本発明の加熱蒸散剤は、(B)アゾジカルボンアミドを50〜97重量%、好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは70〜85重量%含有すると、(A)害虫防除剤が効率よく揮散する。(B)アゾジカルボンアミドの含有量が97重量%を超えると、例えば顆粒など、成形するために別途溶剤などが必要となるため、好ましくない。
本発明の(B)アゾジカルボンアミドは、200℃前後で熱分解してガスを発生するものが好ましく、例えば、ユニフォームAZ(大塚化学社製)や、セルマイク(三協化成社製)等が挙げられる。
【0012】
<(C)香料成分>
本発明の加熱蒸散剤は、(C)香料成分として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、ベンジルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を含有する。
本発明の(C)香料成分は、加熱蒸散剤そのものの香りをよくし、加熱蒸散時に香りを付与するものであり、加熱蒸散時に生じる煙臭、薬剤臭といった臭気をマスキングする効果を有する。さらに、加熱蒸散後に残る煙や薬剤により、喉や鼻の奥がイガイガするような刺激も軽減する効果を奏する。特に、(C)香料成分として、β−イオノンまたはα,α−ジメチルフェネチルアルコールのいずれかを必須成分として含有することが、マスキング効果や刺激軽減効果を得るために好ましい。
本発明の(C)香料成分は、加熱蒸散剤に対して0.001〜5.0重量%の範囲で含有することができ、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%含有すると、加熱蒸散剤を加熱蒸散した時や加熱蒸散後の香気が良好であり、さらに焦げ臭や薬剤刺激臭のマスキング効果にも優れる。また、上記(C)香料成分以外に、効果を奏する限り他の香料成分や、香料成分と溶剤、香料安定化剤などを混合した香料組成物として使用しても良い。
なお、本発明の(C)香料成分である、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコールを全て含有する香料組成物を、本明細書では「香料製品」と称する。
【0013】
(C)以外の香料成分としては、様々な植物や動物から抽出された天然香料や、化学的に合成される合成香料、さらにはこれらの香料成分を多数混合して作られる調合香料等が挙げられる。
香料は様々な文献、例えば、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and Flavor Chemicals(aroma chemicals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」, 中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「香りの百科事典」、谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の香料が使用できる。それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とする。以下に香料の代表例を具体的に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油、ペパーミント油等の天然精油等が挙げられる。
合成香料としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、p−サイメン、テルピノレン、γ−テルピネン、α−フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、エチル−2−メチルバレレート、イソアミルアセテート、テルピニルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、オルト−ter−ブチルシクロヘキシルアセテート、安息香酸リナリル、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、エチルシンナメート、メチルサリシレート、ヘキシルサリシレート、ヘキシルアセテート、ヘキシルブチレート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン類;アニソール、p−クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキノン、メチルオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis−3−ヘキセノール、ヘプタノール、2−オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テトラハイドロゲラニオール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール、ヘキサノール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、イソメントン、チオメントン、アセトフェノン、α−又はβ−ダマスコン、α−又はβ−ダマセノン、α−又はγ−イオノン、α−、β−又はγ−メチルイオノン、メチル−β−ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α−又はβ−イソメチルイオノン、α−、β−又はγ−イロン、マルトール、エチルマルトール、cis−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、ジヒドロカルボン、メチルアミルケトン等のケトン類、1,8−シネオール、アリルアミルグリコレートアリルカプロエートなどが挙げられる。これらの香料は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて、調合香料として使用することもできる。
【0015】
本発明の加熱蒸散剤は、その形態は特に限定されず、例えば、顆粒状、塊状、粒状、粉状、錠剤等の固形状等任意の形態とすることができる。
固形状の加熱蒸散剤とする場合は、各成分を公知の造粒機や成形機を用いて所望の形状に成形すればよい。
本発明の加熱蒸散剤を製造するには、成分(A)〜(C)が所定量となるように混合し、結合剤や溶剤等を用いて造粒、乾燥させて、顆粒剤、粉末剤、微細粒剤等とすればよい。これらを造粒する際には、例えば、顆粒剤であれば粒径を約1〜5mm、長さを約1〜15mmとするのがよい。
造粒の際に用いる結合剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、スターチ等のデンプン系、アラビアゴム等の天然系高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの結合剤は、加熱蒸散剤に対して0.5〜5.0重量%となるように配合すればよい。
溶剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等のグリコールエーテル類、流動パラフィン、n−パラフィン等のパラフィン類、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、その他3−メチル−4−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。また、上記香料成分とともに混合し、香料組成物として使用することもできる。 なお、本発明の(A)害虫防除剤は、造粒時に混合、練り込む以外にも、造粒後に噴霧、浸漬させて保持させることもできる。
【0016】
本発明の加熱蒸散剤には、本発明の効果を奏する限り、任意の成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、蒸散補助剤、崩壊剤、防錆剤、安定化剤、賦形剤、色素等を用いることができる。
蒸散補助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、三酸化アンチモン、デカブロモジフェニレンオキサイド、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ベンゾトリアゾール、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、尿素等が挙げられる。これらを併用することで、害虫防除剤の揮散効率を調整することができる。
崩壊剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ステアリン酸エステル、乳酸エチル、サリチル酸クロロフェニル等の有機酸エステル;乳酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸、コハク酸等の有機酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。崩壊剤を含有すると、加熱による製剤の崩壊が促進され、害虫防除剤の揮散効率を高めることができる。
防錆剤としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、パーライト、タルク、珪藻土、クレイ、ベントナイト、粘土鉱物などの鉱物、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マルチトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール等が挙げられる。
さらに必要であれば、各種界面活性剤、効力増強剤等を配合することができる。
【0017】
本発明の加熱蒸散剤は、例えば、
図1に示すような、自己発熱装置1の形態で使用される加熱蒸散剤7として使用することができる。
自己発熱装置1は、有底円筒状の容器2を備えており、その底部から側部にかけて加水発熱物質8が収容されている。容器2は、底部に複数の通水孔21を有し、通水孔21は通水性を有する部材、例えば不織布シート3によって塞がれている。また、容器2の内部は、仕切部材4により2つの空間に区画されている。仕切部材4は、円筒状で底部が略中空半球状を呈しており、その側壁が容器2の周壁と同心状に配置されている。
加水発熱物質8は、容器2の周壁、仕切部材4及び不織布シート3とで形成される空間に充填され、仕切部材4の内部には加熱蒸散剤7が収容される。また、容器2の上部開放面には、仕切部材4の上部開放面に相当する領域に複数の開口部が形成された蓋部材5が被冠されており、さらに蓋部材5の開口部は通気孔を有する熱溶融フィルム6によって塞がれている。
【0018】
本発明の加熱蒸散剤の加熱温度としては仕切部材4の底部で測定した時に約200〜500℃、好ましくは約300〜400℃とするのがよい。
自己発熱装置1で用いる加水発熱物質8としては、加水発熱反応用液との反応により自己発熱する物質であり、例えば、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、鉄粉と酸化剤との混合物、硫化ソーダと炭化鉄との混合物等が挙げられ、中でも、加水発熱反応用液と反応させたときの反応の速さ、入手の容易さの点から酸化カルシウムを用いるのが好ましい。加水発熱反応用液は、水あるいは水に各種添加剤を加えられた液が挙げられる。本発明において、加熱発熱物質と加水発熱反応用液は、良好に発熱させるのに質量比1:0.01〜1:2で含有させるのがよい。さらに、加水発熱物質に対する加水発熱反応用液のモル比が0.25〜2倍となるようにすることでより良好に発熱させることができる。
このような発熱システムにおいては、加熱蒸散剤7に対して加水発熱物質8を1〜10重量倍を用いるのがよく、具体的には加熱蒸散剤7を5〜100gに対して、加水発熱物質8は50〜300gを目安として用いるのがよい。さらに加水発熱物質8に対して水Wは0.05〜2重量倍となるように加えればよい。
従って、使用に際して、自己発熱装置1を水Wが入った容器9に入れることにより、水Wが通水孔21を通じて容器2に流入し、さらに不織布シート3を浸透して加水発熱物質8と接触し、そのとき発生した反応熱により加熱蒸散剤7が加熱されて、有機発泡剤である(B)アゾジカルボンアミドの熱分解ガスと一緒に薬剤である(A)害虫防除剤が揮散して、熱溶融フィルム6の通気孔を通じて外部(室内等)に放出される。また、熱溶融フィルム6は加熱蒸散剤7からの放熱並びに揮散した薬剤との接触により熱溶融するため、蒸散の比較的早い時期から、揮散した薬剤である(A)害虫防除剤は煙となって蓋部材5の開口部を通じて効率良く外部に放出される。
上記加水発熱システム以外の加熱手段としては、例えば、ニクロム線等の電熱線、平板状やリング状、さらに半導体を利用した加熱ヒーター等を用いた電気加熱システム;鉄粉と塩素酸アンモニウム等の酸化剤とを混合する、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを混合する、鉄と硫酸カリウム、硫酸鉄、金属塩化物、硫化鉄等の混合物を水や酸素と接触させる、鉄よりイオン化傾向が大きい金属と鉄よりイオン化傾向が小さい金属のハロゲン化物との混合物を水と接触させる、金属と重硫酸塩との混合物を水と接触させる、アルミニウムとアルカリ金属硝酸塩との混合物に水を加える、等の酸化反応により発熱するシステム;硫酸ソーダと炭化鉄との混合物を酸素と接触させる金属硫化物の酸化反応を利用して発熱するシステム等を用いて、加熱する方法が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下の実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0020】
<実施例1〜10、比較例1〜6>
[試験検体の作製]
表1(実施例1〜10)、表2(比較例1〜6)に記載の各成分(表1、2中の数字は重量%を意味している。)を混合し、造粒、乾燥し、顆粒状の試験検体となる加熱蒸散剤を作成した。加熱蒸散剤1粒あたりの粒径は約3mm、長さは約7mmである。なお、比較例6は「香料成分」を含有しない加熱蒸散剤である。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
表1に示す実施例1〜10、表2に示す比較例1〜6の組成物の調製に際して、以下の化合物を使用した。
「アゾジカルボンアミド」:ユニフォームAZ(大塚化学社製)
「α化デンプン」:アミコールH(日澱化学社製)
「酸化亜鉛」:酸化亜鉛 1種(正同化学工業社製)
「香料製品」:香料として、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコールを全て含有する香料組成物
「緑茶乾留エキス」:フレッシュE(白井松新薬社製)
【0024】
作製した実施例1〜10、比較例1〜6の加熱蒸散剤をそれぞれ試験検体として、以下の試験方法で煙臭や薬剤臭の臭気の軽減効果と、煙や薬剤による刺激の軽減効果の評価を行った。
[評価試験方法]
天面に15cm×15cmの開閉可能な通気口を開けた0.19m
3(0.65m(縦)×0.5m(横)×0.57m(高さ))の容器(ダンボール製)に、0.06gの顆粒状の試験検体を
図1の自己発熱装置を用いて加熱蒸散した。通気口以外から煙、臭気などが抜けないようにビニールテープで目張りをした。2時間後、容器天面の開口部を開口し、煙臭、薬剤臭、喉や鼻に感じる刺激感について、専門パネラー10名により、次の基準で評価した。
[評価基準]
評価は各専門パネラーが煙臭、薬剤臭、喉や鼻に感じる刺激感を、「感じない(1点)」から「感じる(5点)」までの5段階で点数評価した。その評価点数から平均値を求め、比較例6(香料成分を含有しないブランク検体)に対する変化率を、以下の計算式で算出した。
「変化率(%)」=(各試験検体の平均値−比較例6の平均値)/比較例6の平均値×100
各試験検体の「煙臭」「薬剤臭」「刺激感」の各評価の変化率(香料成分を含有しないブランク検体である比較例6の平均値に比べてどれだけ増減したか)を、実施例については表3に、比較例については表4にそれぞれ数値を示し、
図2には実施例と比較例の各評価をグラフに表した。
なお、この変化率(%)は、マイナス「−」の数値が大きいほど、「煙臭」「薬剤臭」「刺激感」が軽減されていることを表している。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
表3、4および
図2の結果より、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコール、メンチルアセテート、メチルアセテート、ベンジルアセテート、α−テルピネンのいずれか1種以上を含有する実施例1〜10の加熱蒸散剤は、香料を含有しない加熱蒸散剤(比較例6)はもとより、加熱蒸散剤に汎用されている香料、中でもメントール(比較例2)に比べても、煙臭、薬剤臭といった臭気を顕著に軽減することが明らかとなった。
特に、β−イオノンを含有する実施例4、α,α−ジメチルフェネチルアルコールを含有する実施例5、メンチルアセテートを含有する実施例7、メチルアセテートを含有する実施例8や、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、テルピネオール、β−イオノン、α,α−ジメチルフェネチルアルコールを全て含有する実施例6は、この臭気軽減効果や刺激感軽減効果に格別に優れた効果を奏する加熱蒸散剤であることも明らかとなった。