特許第6869227号(P6869227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869227
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】改善された導電性を有するインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20210426BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C09D11/52
   H01B1/22 A
   H01B5/14 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-508701(P2018-508701)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公表番号】特表2018-532004(P2018-532004A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】US2016045294
(87)【国際公開番号】WO2017030789
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年8月2日
(31)【優先権主張番号】62/205,843
(32)【優先日】2015年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ジアン、 ホン
(72)【発明者】
【氏名】カトリ、 ヒマル
(72)【発明者】
【氏名】シア、 ボ
(72)【発明者】
【氏名】シャイク、 アジズ
【審査官】 宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/023370(WO,A1)
【文献】 特表2008−531810(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002917(WO,A1)
【文献】 特開2011−243544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B41M
B41J
H01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀成分の少なくとも50%が、100nmより大きく1μm未満の粒径を有する銀で構成されている銀成分、
キャリアおよび
2−ヨードプロパン、1−ヨードプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、2−ヨードブタン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、フルオロベンゼン、2−フルオロエタノール、1−フルオロドデカン、1−フルオロヘキサン、1−フルオロヘプタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機ハロゲン導電性促進剤を含む導電性インク組成物。
【請求項2】
銀成分中の銀として、アミン化合物と、前記アミン化合物をアルキル化する作用を示す化合物とによって被覆されている銀は除かれる、請求項1に記載の導電性インク組成物。
【請求項3】
有機ハロゲン導電性促進剤が、室温で液体である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
ハロゲンがヨウ化物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
有機ハロゲン導電性促進剤が、ハロゲン化低級アルカンである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項6】
有機ハロゲン導電性促進剤が、12個までの炭素原子を有するハロゲン化化合物によって表される、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
有機ハロゲン導電性促進剤、150℃未満の沸点を有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項8】
有機ハロゲン導電性促進剤が、銀成分と接触して導電性を改善する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項9】
キャリアが、熱可塑性樹脂である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項10】
キャリアが、熱硬化性樹脂である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項11】
溶剤をさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項12】
インク組成物の導電性を改善する方法であって、以下の工程、
銀成分の少なくとも50%が、100nmより大きく1μm未満の粒径を有する銀で構成されている銀成分、および
キャリアを含むインク組成物を提供する工程、および
2−ヨードプロパン、1−ヨードプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、2−ヨードブタン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、フルオロベンゼン、2−フルオロエタノール、1−フルオロドデカン、1−フルオロヘキサン、1−フルオロヘプタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機ハロゲン導電性促進剤を銀成分およびキャリアに提供し、有機ハロゲン導電性促進剤を銀成分と接触させて、インク組成物に電流を通すときに導電性を改善する工程を含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載のインク組成物が配置された基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、改善された導電性を有するインク組成物を提供する。改善された導電性は、有機ハロゲン化合物の組成物への添加に起因する。
【背景技術】
【0002】
<関連技術の簡単な説明>
導電性インク組成物は公知である。これらの組成物に導電性を付与するために使用される主成分の1つは銀である。近年、銀の価格が大きく変動し、メーカーが製品ラインを管理することが困難になっている。したがって、近年、導電性に関わる研究開発が盛んに行われている。
【0003】
これまで、導電性インク組成物を作り、そのような組成物の導電性を改善するための様々なアプローチが用いられてきた。例えば、銀錯体が組成物中に導入され、次いで、組成物は、銀錯体を分解するために、150℃を超えるような高温条件に供されている。銀錯体の分解後、そのまま銀ナノ粒子が形成され、導電性を高めることができる。しかし、多くの熱に敏感な用途では、150℃未満の処理温度が必要である。
【0004】
水性系が使用されてきており、イオン性ハロゲン塩、酸およびイオン性ハロゲンポリマーが導電性インク組成物の成分を形成する。イオン性成分は、特に過酷な環境条件下で、電子デバイスの早期故障を引き起こすことが知られている。
【0005】
感熱性基板の使用が電子業界でより一般的になるにつれて、150℃未満の温度で処理された後に高い導電率を有する材料が強く求められている。例えば、モバイル技術の進歩に伴い、タッチスクリーンセンサのベゼル幅を減少させ、ベゼルラインの導電性を向上させることが急務である。ベゼル幅を狭くすると、それ以外は同じであるが、スクリーンの寸法を最大にする機会が増える。しかし、ベゼル幅が減少すると、ベゼルラインの導電性も低下し、タッチパネルの感度が低下する。
【0006】
したがって、導電性インク組成物中の導電性が達成される方法の改善を提供する必要性に対する代替の解決法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して言えば、本発明は、銀成分の少なくとも約50%が、約100nmより大きく約1μm未満の粒径を有する銀で構成されている銀成分、キャリアおよび有機ハロゲン化合物を含む導電性インク組成物を提供する。
【0009】
有機ハロゲン化合物は、インク組成物の導電性を改善し、銀成分の充填量を低減しながら導電性を維持するのに有用である。
【0010】
別の態様では、本発明は、インク組成物の導電性を改善する方法であって、以下の工程、
銀成分の少なくとも約50%が、約100nmより大きく約1μm未満の粒径を有する銀で構成されている銀成分、および
キャリアを含むインク組成物を提供する工程、および
有機ハロゲン化合物を銀成分およびキャリアに提供し、有機ハロゲン化合物を銀成分と接触させて、インク組成物に電流を通すときに導電性を改善する工程を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<詳細な説明>
上記のように、本発明は、銀成分の少なくとも約50%が、約100nmより大きく約1μm未満の粒径を有する銀で構成されている銀成分、キャリアおよび有機ハロゲン化合物を含む導電性インク組成物を提供する。
【0012】
有機ハロゲン化合物は、インク組成物の導電性を改善し、銀成分の充填量を低減しながら導電性を維持するのに有用である。
【0013】
銀成分は、市販されている任意の形状であってもよい。例えば、銀の球状、楕円形、粉末状、およびフレーク状の形状が有用である。銀は、適切な液体媒体中の分散液として、または乾燥形態の固体として供給および維持してもよい。
【0014】
銀は、Ames Goldsmith Corporation、Glenn Falls、NY、Inframat Advanced Materials、Manchester,CTまたはMetalor Technologies USA Corporation、North Attleboro、MAなどの商業的供給者の種々のもの由来であってもよい。Amesから市販されている11000−25の混合物およびInframat Advanced Materials、Manchester、CTから市販されている47MR−23Sなどの異なるサイズの銀フレークの混合物も同様に使用することができる。D50およびD95は、特定の粒子サイズを有する銀の業界で認識された表示である。例えば、D50は、特定のサイズよりも小さい銀粒子を約50%有し、D95は、特定サイズよりも小さい銀粒子を約95%有する。
【0015】
銀成分は、組成物の約40〜約80重量%の範囲、例えば組成物の約60〜約75重量%の範囲で使用することができる。
【0016】
キャリアは、銀成分と有機ハロゲン化合物とが分散した媒体(vehicle)である。キャリアは、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。キャリアとしての使用に適する熱可塑性樹脂の例には、ESTANE 5700シリーズ、例えば、ESTANE 5703のようなESTANEの商品名でThe Lubrizol Company、Cleveland、OHから市販されている熱可塑性ポリウレタンが含まれる。
【0017】
他の熱可塑性樹脂も同様に用いることができ、例えば、InChem Corp、Rocky Hill、SCからフェノキシ樹脂として市販されているエピクロロヒドリンおよびビスフェノールの熱可塑性ポリマー;VITEL 2000シリーズ、例えばVITEL 2700BのようなVITELの商品名でBostik、Wauwatosa、Wlから市販されているポリエステル樹脂;Ashland、Wilmington、DEからのEC N7などのエチルセルロース(EC)などのセルロース;Eastman Chemicals、Kingsport、TNからの例としてのCAB−531−1などのセルロースアセテートブチレート;Paraloid A14などのParaloidの商品名で、Dow Chemical、Midland、MIから市販されているアクリル樹脂;S−LEC Bシリーズ、例えば、S−LEC BL−1などの積水化学工業(株)、東京、日本からのポリビニルブチラール樹脂;S−LEC kシリーズ、例えば、S−LEC KS−1等の積水化学工業(株)、東京、日本からのポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。
【0018】
組成物は、任意に、エポキシ官能化樹脂、アクリレート、シアネートエステル、シリコーン、オキセタン、マレイミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の熱硬化性樹脂をさらに含むことができる。
【0019】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型固体型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂系多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂およびそれらの混合物を含む種々のエポキシ官能化樹脂が適している。例示的なエポキシ官能化樹脂には、脂環式アルコールのジエポキシド、水素化ビスフェノールA、ヘキサヒドロフタル酸無水物の二官能性脂環式グリシジルエステルおよびそれらの混合物が含まれる。
【0020】
適切な(メタ)アクリレートには、以下の一般構造Iを有する化合物が含まれる。
【0021】
【化1】
式中、RはHまたはメチルであり、Xは(a)8〜24個の炭素原子を有するアルキル基である、または(b)
【0022】
【化2】
(式中、Rは、Hまたはメチルであり、R’は、独立してHまたはメチルから選択され、xは2〜6の整数である)の化合物である。望ましくは、(メタ)アクリレートは、トリデシルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレートおよびそれらの混合物から選択される。
【0023】
適切なシアネートエステルは、2つ以上の環形成シアネート(−O−C=N)基を含有し、加熱により置換トリアジン環を形成する。使用可能なシアネートエステルは、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ブタン、1,3−ビス−2−(4−シアナトフェニル)プロピルベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、4,4’−ジシアナトジフェニル、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、トリス(4−シアナトフェニル)エタン、シアネートノボラック、1,3−ビス4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン)ベンゼン、シアネートフェノール−ジシクロペンタジエン付加物およびこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
適切なシリコーンは、ヒドリド末端ポリシロキサンとビニル末端ポリシロキサンとの実質的に化学量論的な混合物が挙げられ、ヒドリド末端ポリシロキサンが、ヒドリド末端ポリジメチルシロキサンであり、ビニル末端ポリシロキサンがジビニル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0025】
適切な樹脂には、オキセタン含有モノマーおよび/またはオリゴマーも含まれる。
【0026】
適切なマレイミド樹脂としては、Designer Molecules Inc.、San Diego、CAからのBMI−1500およびBMI−3000などのビスマスイミドが挙げられ、以下にその構造を示す。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
キャリアは、約0.5〜15重量%の量で使用されるべきである。
【0030】
有機ハロゲン化合物は、室温で液体でなければならない。通常、有機ハロゲン化合物は、約150℃未満、例えば約120℃未満、望ましくは約100℃未満、好適には約70℃以上の沸点を有する。
【0031】
有機ハロゲン化合物は、望ましくは、1個以上のヨウ素原子が結合している。望ましくは、有機ヨウ化物化合物にはただ1つのヨウ素原子が結合している。
【0032】
有機ハロゲン化合物の有機部分は、アルキルまたはアリールであってもよい。それがアルキルである場合、アルキル部分が12個までの炭素原子である低級アルキルでなければならない。
【0033】
有機ハロゲン化合物の代表例としては、2−ヨードプロパン、1−ヨードプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、2−ヨードブタン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、フルオロベンゼン、2−フルオロエタノール、1−フルオロドデカン、1−フルオロヘキサン、1−フルオロヘプタンおよびトリフルオロ酢酸である。もちろん、これらの有機ハロゲン化合物の任意の2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0034】
有機ハロゲン化合物は、5重量%以下の量で使用すべきである。望ましくは、約0.05〜2重量%などである。例えば、約0.25重量%が特に有効であることが判明している。
【0035】
本発明の導電性インク組成物をより分配しやすくするために、組成物を適切な溶剤に希釈することがしばしば望ましい。希釈は、約5部の溶剤に対して約1部の組成物であるべきである。溶剤が有機ハロゲン化合物と相溶性である限り、多くの溶剤が本発明の組成物に使用するのに適しており、溶剤選択に特別な制限はない。
【0036】
溶剤の代表例には、ジプロピレングリコールメチルエーテル、カルビトールアセテート、ジメチルアジペート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0037】
導電性インク組成物の粘度は、種々の増粘剤またはチキソトロピー剤を用いて所望に応じて調整することができる。例えば、本発明のインク組成物が約10Pa・s〜約100Pa・sの範囲の粘度を有し、高速印刷プロセスでのその使用を最適化することが、いくつかの商業的用途において望ましい場合がある。
【0038】
適切な増粘剤およびチキソトロープ剤の例には、ISCATHIX ISPなどの種々の商品名の水素化ヒマシ油、ISCA UK Lte、Wales、UKからのISCATHIX SRなどの種々の商品名での有機アミド、Cabot Corp.、Boston、MAからのCab−O−Sil TS720を含むヒュームドシリカが挙げられる。これらの増粘剤およびチキソトロープは、約0.05重量%〜2重量%の量で使用すべきである。
【0039】
導電性インク組成物の粘度は、様々な分散剤を用いて所望に応じて調節することもでき、導電性充填剤を適切に分散させて均一な充填剤を確実にし、凝集を最小限に抑える。適切な分散剤の例には、DISPERBYK 1111およびDISPERBYK 168などのDISPERBYK商品名で入手可能なAltanaからのものが含まれる。
【0040】
表面張力調整剤は、加工および硬化後の基材の濡れおよび表面の質感を改善するために配合物中にしばしば使用される。表面張力調整剤の例は、Dupont、Willmington、DEからのCapstoneシリーズなどのフッ素化界面活性剤;Dow Chemical、Midland、MIからの非イオン性オクチルフェノールエトキシレートTritonシリーズ;およびAltanaからのBYK333のなどの表面添加剤を含有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0041】
本発明の導電性インク組成物は、PETおよびPCなどのプラスチック基板上に高い導電性が要求される用途に適している。
【実施例】
【0042】
表Iは、本発明の範囲内の導電性促進剤として有用な有機ハロゲン化合物のリストを提供する。沸点が約150℃未満の有機ハロゲン化合物は、硬化した導電性インク中の最小の残留物を促す。
【0043】
【表1】
【0044】
表2は、有機ハロゲン導電性促進剤有無の両方の導電性インク組成物を提供する。サンプルは、各成分を容器に添加し、混合物を室温で約1時間均質化することによって調製した。
【0045】
【表2】
【0046】
120℃で30分間硬化した後の、対照サンプルと比較した体積抵抗率の低下における効果は、サンプルBおよびCを参照して分かるように、0.2重量%および0.3重量%の2−ヨードプロパンの充填で非常に顕著である。これらのサンプルは、対照よりもそれぞれ10〜20倍優れた導電性を示す。より具体的には、Ω・cmで測定した体積抵抗率は、対照サンプルでは、2.9×10−4であり、サンプルA、BおよびCでは、それぞれ2.1×10−4、2.5×0−5および1.4×10−5である。
【0047】
体積抵抗率は以下の方法で測定した。
1.きれいなスライドガラス3枚を取る。
2.全長および幅の40%を覆うように3MScotch Magicテープのピースを各スライドに置く。
3.3MScotch Magicテープの2番目のピースをテープの端が約3mm離れるように最初のテープのピースに平行に置く。
4.最初の層の上に3MScotch Magicテープの2番目の層を置き、テープ間およびテープとガラスの間に異物や空気を挟み込まないように注意する。
5.3mmトレンチに材料を適用する。別のスライドガラスを用いて、スライドガラスをテープの向こう側に動かすことによって余分な材料をこすり取る。
6.特定の時間と温度でテープと硬化材料を除去する。
7.スライドを室温まで冷却してから試験する。
8.材料断片の中心にマルチメーターのプローブを5.0 cm離して置き、抵抗をΩ単位で測定する。
9.顕微鏡またはキャリパーで線幅を測定する。
10.キャリパーで厚さを測定する。
11.VR(Q−cm)=R(Q)×幅(cm)×厚み(cm)/5(cm)を算出する。
【0048】
表IIIに、体積抵抗率に対する導電性インクの種々の硬化条件の影響を示す。
【0049】
【表3】
【0050】
体積抵抗率に対する硬化条件の影響を表IIIに示し、2−ヨードプロパンは、80℃〜120℃の範囲の温度でインクを硬化させた後に体積抵抗率を一桁低下させることができる。電気導電性の向上は、硬化時間を100℃で5分から30分まで変化させたときにも観察される。低い硬化温度および短い硬化時間の下での高い電気導電性は、PETおよびPCなどの感熱プラスチック基板に対して非常に望ましい。
【0051】
表IVに、体積抵抗率に対するAg Vol%の効果を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
導電性インク組成物中の有機ハロゲンの使用は、たとえ低い銀充填量であっても電気導電性を著しく改善する。典型的には、導電性インク組成物中に、銀は約55〜約75体積%の範囲で存在する。サンプルNo.1は、(v/w)基準で69.5の銀含有量を有する代表的な導電性インク組成物である。(サンプルNo.1〜6の残りの成分は、樹脂、溶剤および分散剤である。)サンプルNo.1〜4は、2−ヨードプロパンなどの有機ハロゲンが存在しない場合、銀体積パーセントが69.5%から48.7%に減少するにつれて、体積抵抗率が増加することを示している。48.7%では、体積抵抗が非常に高く、材料はもはや導電性とされない。しかし、0.25重量%のヨードプロパンをサンプルNo.4に添加すると(サンプルNo.5になる)、サンプルNo.5は、導電性が非常に高くなり、体積抵抗率測定値は1.67×10−5Ω・cmとなる。この値は、20体積%以上の銀の充填レベル(69.5体積%)を有するサンプルNo.1よりも導電性である。サンプルNo.6では、ヨードプロパンを0.25重量%添加して、銀の体積パーセントをさらに44%に減少させた。サンプルNo.6は、25体積%以上の銀充填量(69.5体積%)を有するサンプルNo.1で示したのと同じ体積抵抗率を達成した。