(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869229
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】耐火物用骨材、その製造方法、及びそれを用いた耐火物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/44 20060101AFI20210426BHJP
C04B 35/117 20060101ALI20210426BHJP
C04B 35/66 20060101ALI20210426BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
C04B35/44
C04B35/117
C04B35/66
F27D1/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-509421(P2018-509421)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2017013189
(87)【国際公開番号】WO2017170840
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-74343(P2016-74343)
(32)【優先日】2016年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 良三
(72)【発明者】
【氏名】平田 慧
(72)【発明者】
【氏名】小山 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】池田 達哉
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−37327(JP,A)
【文献】
特開2012−72014(JP,A)
【文献】
特開2002−179471(JP,A)
【文献】
寺島 英俊ら,加熱炉用断熱材の高効率施工技術の確立,CAMP-ISIJ,2007年,Vol.20,P.162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/44
C04B 35/66
F27D 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相がCaO・6Al2O3であって、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、JIS R 2205:1992に定められる煮沸法による吸水率が50%以上100%以下であり、かつ嵩密度が0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下であることを特徴とする耐火物用骨材。
【請求項2】
0.02質量%以上0.4質量%以下のホウ素が含有されてなる請求項1記載の耐火物用骨材。
【請求項3】
請求項1または2記載の耐火物用骨材を骨材とし、アルミナセメントを結合材とした耐火物。
【請求項4】
カルシア原料及びアルミナ原料を含む骨材原料を水と混合、成形後、1000℃〜1700℃で焼成して得られる請求項2記載の耐火物用骨材の製造方法であって、前記骨材原料にホウ砂を添加すること特徴とする請求項2記載の耐火物用骨材の製造方法。
【請求項5】
前記骨材原料に加えるホウ砂の添加量が0.1質量%以上4.0質量%以下である請求項4記載の耐火物用骨材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼関連の炉材等の耐火物分野等への利用が可能な、耐火物用骨材、その製造方法、及びそれを用いた耐火物に関するものであり、特に断熱性、施工性、長期安定性を有する耐火物用骨材とその製造方法に関する。
【0002】
耐火物用骨材の大きな利用分野の一つである鉄鋼関連の耐火物分野において、従来の定形耐火物による築炉工法は、近年の機械化による施工の省力化のため、また、補修の省資源化のため、不定形耐火物を使用した築炉方法へと変換している。不定形耐火物を使用した築炉方法において、圧送ポンプを利用した大量施工の必要性が生じてきている。
【0003】
一方、近年、環境問題よりCO
2排出削減に取り組まなければならない状況になってきており、鉄鋼関連での加熱炉等に使用される耐火物の断熱性を高めることにより、CO
2排出量を削減することが検討されている。
【0004】
従来の鉄鋼関連で使用される断熱材としては、断熱性を高めるために耐火物と支持体の間にセラミックファイバーを挿入する方法が主流であったが、2015年11月より労働安全関連法においてリフラクトリーセラミックファイバー(RCF)が「特定化学物質(第2類物質)」の「管理第2類物質」に追加される改定が施行されたこともあり、セラミックファイバーを用いなくても断熱性の高い耐火物の開発が進められている。
【背景技術】
【0005】
特許文献1では、耐火物用骨材にCaO・6Al
2O
3(カルシウムヘキサアルミネート、以後CA6とも記載)を用いることで断熱性に優れた耐火物を提供することが提案されている。提案されている耐火物用骨材は多孔質のCA6粒子であり、断熱性が高く、耐熱性や機械的強度に優れており、セラミックファイバーを用いなくても断熱性の高い耐火物用の骨材として有望である。骨材の単位重さ当たりの気孔の体積が大きい程断熱性が高くなる。単位重さ当たりの気孔の体積はJIS R 2205:1992「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」に定められる煮沸法による吸水率の測定方法で評価することができる。
【0006】
特許文献2では、CaO・6Al
2O
3を結晶相とした多孔質な断熱性骨材が粗粒域に配合され微粒域にはアルミナ質原料及びアルミナセメントが配合された耐火性粉体組成物と、施工水とを含む断熱耐火物が提案されており、鋼片加熱炉や均熱炉のスキッドパイプ又はそれを支えるサポートパイプ等を被覆する断熱材に利用可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/WO00/30999号公報
【特許文献2】特開2009−203090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
不定形耐火物の施工方法の一つとして、耐火物用骨材及びアルミナセメントを含むキャスタブルと水を混合した不定形耐火物用の材料を、型枠へ流し込む施工方法が行なわれている。施工後の強度が不充分であると、耐火物に剥離や崩壊が生じてしまい、断熱性が不充分となることによるCO
2排出量の増大のほか、耐火物の補修によるコストアップが生じてしまう。
【0009】
CA6粒子を骨材とした耐火物は、多孔体であるCA6粒子が周りのアルミナ質原料とアルミナセメントからなるマトリックス部に分散した構造となる。CA6粒子の破壊強度が不充分な場合、またはCA6粒子とマトリックスとの界面の結合が不充分な場合に、耐火物の剥離や崩壊が起こると考えられる。
【0010】
本発明者は、上記課題を解消すべく、鋭意検討した結果、気孔率を高く維持しつつ、かつ嵩密度の低い破砕状のCA6粒子を用いて耐火物を製造した場合に、耐火物内のCA6粒子とマトリックス物質との界面の面積が大きく結合力が強くなり、耐火物の強度が改善される知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0011】
また、本発明者は、CA6粒子の製造において、原料にホウ砂を適量添加することにより、嵩密度の低い破砕状のCA6粒子が得られやすくなり、このCA6粒子を用いて耐火物を製造した場合に、破壊強度が改善される知見を得て、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、結晶相がCA6であって、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、JIS R 2205:1992に定められる煮沸法による吸水率が50%以上100%以下であり、かつ嵩密度が0.40g/cm
3以上0.60g/cm
3以下であることを特徴とする耐火物用骨材であり、好ましくは0.02質量%以上0.4質量%以下のホウ素が含有されてなる不定形耐火物用骨材に関する。
【0013】
また、本発明は、前記耐火物用骨材を用いて、アルミナセメントを結合材とした耐火物にも関する。
【0014】
更に、本発明は、カルシア原料及びアルミナ原料を含む骨材原料を水と混合、成形後、1000℃〜1700℃で焼成して得られる前記耐火物用骨材の製造方法であって、前記骨材原料にホウ砂を添加すること特徴とする耐火物用骨材の製造方法にも関する。この製造方法は、好ましくは、前記骨材原料に加えるホウ砂の添加量が0.1質量%以上4.0質量%以下である耐火物用骨材の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、結晶相がCA6である耐火物用骨材において、気孔率を高く維持しつつ、かつ嵩密度の低い破砕状のCA6粒子とした場合に、耐火物内のCA6粒子とマトリックス物質との界面の面積が大きく結合力が強くなり、耐火物の強度改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の実施例であるCA6粒子のX線回折分析結果を比較例と対比して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
CA6粒子の製造においては、カルシア原料とアルミナ原料等の骨材原料の他、ホウ砂を混合、若しくは混合粉砕して、最終的に合成されるカルシウムアルミネートのCaOとAl
2O
3のモル比がおおよそ1:6の成分割合になるように配合し、水と混練して成形後、1000℃〜1700℃の温度で焼成して得られたものを、粉砕機によって粉砕して製造されることが好ましい。
【0019】
カルシア原料としては、粉末状の石灰石や生石灰、或いはCaO・Al
2O
3(CA)、CaO・2Al
2O
3(CA2)、12CaO・7Al
2O
3(C12A7)、3CaO・Al
2O
3(C3A)等を用いることが可能であり、これらの原料を複数種組み合わせて用いても構わない。
【0020】
アルミナ原料としては、アルミナ(Al
2O
3)、ギブサイト(Al(OH)
3)、ベーマイト(AlO(OH))等を用いることが可能であり、これらの原料を複数種組み合わせて用いても構わない。ただし、多孔体のCA6粒子を合成するにはアルミニウムの水和物であるギブサイトを用いることが優位であることが知られている。ギブサイトを含むアルミナ原料を用いることで、鱗片状のCA6の一次結晶が凝集した多孔体構造のものが得られやすく好ましい。
【0021】
また、より高い断熱性を発現させるためには、より気孔の多いCA6の多孔体を合成することが有効である。その為、原料に造孔剤を添加することが好ましい。例えば、可燃性物質を造孔剤として原料に添加することで、焼成時に造孔剤が燃焼・気化し、合成されたCA6粒子に空隙が形成され、気孔の多いCA6粒子が形成される。造孔剤としては、澱粉(コーンスターチ)、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、ラテックス等を用いることが可能である。中でも澱粉(コーンスターチ)を用いると、比較的安価で数十μmの大きさの空隙を形成することが可能であり好ましい。
【0022】
造孔剤にコーンスターチを用いる場合、その添加量は総原料中の5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。添加量が5質量%より少ないと造孔剤としての充分な効果が得られず、50質量%より多い場合は気孔の体積が大きくなりすぎ、耐火物用骨材としての充分な機械的強度が得られない他、コストアップの要因にもなる為である。
【0023】
本発明の耐火物用骨材の製造方法において、好ましくは骨材原料にホウ砂(Na
2B
4O
5(OH)
4・8H
2O)を添加する。ホウ砂を添加することで、焼成時にフラックスとして作用し、形成された液相を通して各種原料の物質拡散を促し、未反応原料の残留が抑制され、また、鱗片状のCA6の一次結晶間の結合が強くなり、CA6粒子としての強度が高くなるという効果が得られる。
【0024】
骨材原料に加えるホウ砂の添加量は、0.1質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。添加量が0.1質量%より少ないと強度改善の効果が充分得られず、また、4.0質量%より多いと焼結の進行による焼き締まりが起こり、骨材の単位重さ当たりの気孔の体積が低減して充分な断熱性が得られなくなるからである。
【0025】
カルシア原料、アルミナ原料、造孔剤、ホウ砂等の原料を混合する方法としては、特に限定されるものでは無く、各材料を所定の割合になるように配合し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウターミキサー、パン型ミキサー及びオムニミキサー等の混合機を用いて、均一に混合することが可能である。混合時間は、特に限定されるものでは無く、混合機により最適値はあるが、5分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。混合時間の上限の指定は無い。
【0026】
本発明の耐火物用骨材の製造方法では、カルシア原料及びアルミナ原料を含む混合原料を水と混合、成形後、焼成炉に投入し、1000℃〜1700℃で焼成することが好ましい。焼成温度が1000℃より低いと焼成が不充分となり、未反応原料が残留し耐火物としての強度不足や高温使用での安定性不良の原因となる。また、焼成温度を1700℃より高くしようとすると設備的に大掛かりとなってしまう一方で、CA6粒子の物性は1700℃で焼成したものとほとんど変わらない。焼成方法としては、電気炉、シャトルキルン、ロータリーキルン等の設備を用いることが可能である。
【0027】
本発明の耐火物用骨材の製造方法では、焼成したCA6焼成物が粉砕機により適切な粒度に粉砕される。使用する粉砕機としては、限定されるものでは無いが、ボールミル、ハンマーミル、振動ミル、タワーミル、ローラーミル、ジェットミル等の粉砕機が好ましい。
【0028】
本発明者は、ホウ砂を添加して製造されたCA6焼成物を用いて狙いとする粒度に粉砕したときに、嵩密度の低い破砕状のCA6粒子が得られやすく、このCA6粒子を用いて耐火物を製造した場合に、耐火物内のCA6粒子とマトリックス物質との界面の面積が大きく結合力が強くなり、耐火物の強度が改善されることを見出している。
【0029】
CA6焼成物の機械的強度を強くすることで、粉砕時の破面の摩耗が抑制されるようになる為、粉砕後に嵩密度の低い破砕状のCA6粒子の製造が可能になると考えられる。CA6粒子の不定形耐火物用骨材に含まれるホウ素の量は0.02質量%以上0.4質量%以下であることが好ましい。0.02質量%より少ないと強度改善の効果が充分得られにくく、また、0.4質量%より多いと焼結の進行による焼き締まりが起こり、骨材の単位重さ当たりの気孔の体積が低減して充分な断熱性が得られにくいからである。
【0030】
単に嵩密度の低いCA6粒子を製造するだけであれば、例えば、造孔剤の量を増やし、CA6粒子の気孔の体積を上げることで達成可能であるが、気孔が多いとCA6粒子そのものの機械的強度が損なわれる為、耐火物用骨材に用いた時の耐火物の強度が損なわれてしまう。従って、骨材の単位重さ当たりの気孔の体積をある範囲内に抑えたまま、嵩密度を低くすることが耐火物の強度改善に必要である。
【0031】
なお、本発明者は、ホウ砂を添加して製造されたCA6焼成物を用いて粉砕したときに、所望の吸水率(気孔率)と嵩密度のCA6粒子が得られやすいことを見出しているが、ホウ砂以外にも同様の吸水率を維持しつつ硬度が高くなる添加剤を加える、或いは所望の嵩密度が得られるような粉砕方法があれば、本発明の効果は実現可能である。
【0032】
骨材の単位重さ当たりの気孔の体積の目安として、JIS R 2205:1992に定められる煮沸法による吸水率の測定方法で評価することが可能である。本発明者が、耐火物として充分な強度を得るために必要なCA6粒子の吸水率と嵩密度の範囲を調べた結果、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、JIS R 2205:1992に定められる煮沸法による吸水率が50%以上100%以下であって、嵩密度が0.40g/cm
3以上0.60g/cm
3以下の範囲である場合に、耐火物としての強度と断熱性のバランスに優れることを見出した。吸水率が50%より低いと、気孔の体積が小さく断熱性が低くなり、吸水率が100%より大きいとCA6粒子の強度が低くなり耐火物の強度が弱くなる。同様に、嵩密度が0.40g/cm
3より低いとり耐火物の強度が弱くなり、嵩密度が0.60g/cm
3より大きいと断熱性が低くなる。
【0033】
本発明の不定形断熱耐火物は、結晶相がCA6であって、粒径3mm以上6mm未満に篩分けしたときの、JIS R 2205:1992に定められる煮沸法による吸水率が50%以上100%以下であり、かつ嵩密度が0.40g/cm
3以上0.60g/cm
3以下である耐火物用骨材と、アルミナセメントとを含むキャスタブルに所定量の水を添加し、混錬したものを型枠に流し込みことによって成型される。
【0034】
例えば、本発明のCA6粒子を40〜70質量%、アルミナセメントを40〜60質量%、粒径45μm未満のアルミナ微粉を0〜10質量%を含むキャスタブルを使用する。CA6粒子の配合量が70質量%より多いと耐火物としての強度が不足し、40質量%より少ないと充分な断熱性が得られない。また、アルミナセメントの配合量が60質量%より多いと充分な断熱性が得られず、40質量%より少ないと耐火物としての強度が不足する。粒径45μm未満のアルミナ微粉はアルミナセメントとの反応により断熱耐火物のマトリックス成分となり、アルミナ微粉を配合しない場合と比較して強度が改善されるが、アルミナ微粉を10質量%より多くしてもそれ以上強度は改善しない。
【0035】
本発明の不定形断熱耐火物の製造方法における各材料の混合方法は、特に限定されるものでは無いが、通常の不定形耐火物の製造方法に準じ、各構成原料を所定の割合になるように配合し、ボールミル、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウターミキサー、パン型ミキサー、及びオムニミキサー等の混合機を用いて均一混合する方法が可能である。
【0036】
本発明の不定形断熱耐火物の施工において、前記キャスタブルに所定量の水を添加し、配合、混錬する。添加する水の配合量は、キャスタブルの合計量に対して外掛けで40〜60質量%であることが好ましい。40質量%より少ないと充分な流動性が確保できず施工不良となりやすく、また60質量%より多いと耐火物の密度の低下による強度低下を引き起こす為である。
【0037】
以下、実施例に基づき本発明をさらに説明する。
[実施例1〜5、比較例1〜3]
【0038】
カルシア原料として炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムを、アルミナ原料として水酸化アルミニウムを、造孔剤としてコーンスターチを、添加剤としてホウ砂を、表1に示す配合に計量後、ナウターミキサーを用いて混合した。なお、表1に示すカルシア原料とアルミナ原料の比率は、CaO・6Al
2O
3になるように設定されている。
【0039】
<使用材料>
炭酸カルシウム:船尾鉱山製 船尾石灰石
水酸化カルシウム:位登産業製
水酸化アルミニウム:住友化学製 C301N
コーンスターチ:日本コーンスターチ製 Y−3P
ホウ砂:和光純薬工業製 Dehybor
【0040】
混合された原料をパン型造粒機で約φ20mm以下に成形し、アルミナ製の容器に入れ、電気炉中(大気雰囲気)で表1に示す温度で焼成を行った。その後、放冷して得られたCA6焼成物をローラーミルで粉砕してCA6を結晶相とする不定形耐火物用骨材を製造した。得られたCA6粒子の骨材のホウ素含有量はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定した。また、得られたCA6粒子の骨材を、粒径3mm以上6mm未満に篩分けし、吸水率、嵩密度、骨材耐荷重を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
<吸水率測定方法>
JIS R 2205:1992「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」に定められる煮沸法による吸水率の測定方法にて測定した。骨材の吸水率は、それを用いて製造される耐火物の熱伝導率と負の相関関係にあるため、充分低い熱伝導率の耐火物が得られる吸水率が50%以上を○(合格)、50%未満を×(不合格)とした。
【0042】
<嵩密度測定方法>
内容積15.8cm
3のガラス瓶に得られたCA6粒子の骨材をガラス瓶の口から溢れるまで盛った後、数回タッピング(高さ1cmより落下)後、ガラス瓶の口から溢れている骨材をすり切り、ガラス瓶の重さ増分を内容積で割った値を嵩密度とした。
【0043】
<骨材耐荷重測定方法>
3〜6mmのCA6粒子の骨材1粒を水平な定盤の上に置き、定盤と平行な面を持つ荷重計測器でCA6粒子の骨材を押し込み、骨材が破壊されるまでの最大荷重を骨材耐荷重とした。ここで、骨材耐荷重の合否判定基準として、10N以上を○(合格)、10N未満を×(不合格)とした。
【0044】
表1の実施例1〜5より、ホウ素含有量が0.02〜0.4質量%の範囲内にある場合に、骨材耐荷重が10N以上と高くなっていることが分かる。一方、ホウ砂を添加せずにCA6粒子を製造した場合、吸水率が100%を超える程気孔が多い為に骨材耐荷重が10Nより低い値となった。また、比較例2のようにホウ素含有量が0.4質量%を超えた場合、骨材耐荷重が66.3Nと高いものの、吸水率が50%以下の低い値を示し、断熱特性として不利となると考えられる。比較例3のCA6粒子の骨材は0.02質量%以上のホウ素を含有し、吸水率50%以上の気孔を有しているにも関わらず、嵩密度が0.6g/cm
3以上の高い値を示している。このことは焼成温度が低くホウ素添加の効果が不充分となり、CA6焼成物の粉砕時に破砕状のCA6粒子が得られにくくなったためと考えられる。
【0045】
実施例1〜5及び比較例1〜3のCA6粒子の骨材のX線回折分析評価結果を表1に、実施例1、実施例3、比較例3のCA6粒子の骨材のX線回折スペクトルを
図1に示す。実施例1〜実施例5及び比較例1、2のように、焼成温度が1450℃の場合、カルシア原料として炭酸カルシウムを用いても水酸化カルシウムを用いても、ほぼ単相のCA6が形成されていることが分かる。一方、比較例3より、焼成温度が1000℃より低い場合、未反応原料であるAl
2O
3やCaO、及び反応中間体のCaO・2Al
2O
3(CA2)が多く残留しており、焼成温度が低すぎることが分かる。
【0047】
[実施例6〜10、比較例4〜6]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたCA6粒子の骨材を、粒径3mm以上6mm未満(粗粒)、1mm以上3mm未満(中粒)、粒径1mm未満(微粒)に篩分けしたもの、平均粒径2μmのアルミナ微粉、アルミナセメントを、表2に示す配合に計量後、所定量の水を添加し、万能ミキサーを用いて混合した後、40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、温度20℃で硬化、脱枠後、110℃で24時間乾燥させ、CA6粒子を骨材とする耐火物を得た。
【0048】
<使用材料>
アルミナ微粉:昭和電工製 AL−170
アルミナセメント:デンカ製 ハイアルミナセメントスーパー
【0049】
耐火物の実炉使用条件を想定し、得られた耐火物を、電気炉を用いて1400℃の加熱処理を行った後の曲げ強度を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
<曲げ強度の測定方法>
JIS R 2553:1992「キャスタブル耐火物の強さ試験方法」に記載される方法にて測定。ここで、曲げ強度の合否判定基準として、1.5MPa以上を○(合格)、1.5MPa未満を×(不合格)とした。
【0051】
表2の実施例6〜10より、実施例1〜5のCA6粒子の骨材を用いて製造した耐火物では、曲げ強度が1.5MPa以上と高くなっていることが分かる。一方、ホウ砂を添加していない比較例1のCA6粒子の骨材を用いた比較例4の耐火物の場合、曲げ強度が1.5MPaより低い値となった。また、ホウ素含有量が0.5質量%を超えている比較例2のCA6粒子の骨材を用いて製造した比較例5の耐火物の場合、曲げ強度が2.5MPaと高いものの、前述のように、比較例2の吸水率が50%以下の低い値であり、断熱特性として不利となると考えられる。比較例3のCA6粒子の骨材を用いて製造した比較例6の耐火物の場合、骨材耐荷重が10N以上であったにも関わらず曲げ強度が1.5MPaより低い値となった。比較例3のようにCA6粒子の骨材の吸水率が50%以上で、嵩密度が0.60g/cm
3より高い場合において、破砕形状のCA6粒子が得られておらず、耐火物とした場合にマトリックス物質とのCA6粒子との界面の面積が小さく、結合力が弱くなり、耐火物の強度が弱くなったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
CA6粒子の製造において原料にホウ砂を適量添加することにより、CA6粒子の破壊強度が改善されるとともに、ホウ砂を添加して製造されたCA6焼成物を用いて狙いとする粒度に粉砕したときに、嵩密度の低い破砕状のCA6粒子が製造可能であり、このCA6粒子を用いて耐火物を製造した場合に、耐火物内のCA6粒子とマトリックス物質との界面の面積が大きく結合力が強くなり、耐火物の強度が改善される。そのため、本発明は産業上極めて有用である。