特許第6869240号(P6869240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869240筋破壊を低下させるための食品およびその方法
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  • 特許6869240-筋破壊を低下させるための食品およびその方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869240
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】筋破壊を低下させるための食品およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20210426BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20210426BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20210426BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20210426BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20210426BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01N33/50 Z
   G01N33/15 Z
   A23K50/40
   A23K20/158
   A61P21/00
   A61K38/02
   A61P43/00 121
   A61P3/02
   A61K31/19
   A61P43/00 171
   A23K20/147
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-525592(P2018-525592)
(86)(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公表番号】特表2019-509464(P2019-509464A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2016057782
(87)【国際公開番号】WO2017103905
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】1522304.3
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アラウェイ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヒューソン−ヒューズ,エイドリアン
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/092716(WO,A1)
【文献】 特表2006−510708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0111877(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0253342(US,A1)
【文献】 特表2013−516188(JP,A)
【文献】 特開2015−156846(JP,A)
【文献】 PETERSON, ME,DON'T LET YOUR SENIOR CAT BECOME A SKINNY OLD KITTY,2015年 9月19日,URL,:http://feline-nutrition.org/nutrition/dont-let-your-senior-cat-become-a-skinny-old-kitty
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50
A23K 20/147
A23K 20/158
A23K 50/40
A61K 31/19
A61K 38/02
A61P 3/02
A61P 21/00
A61P 43/00
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)ネコに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する食品を給餌する工程、および
(b)前記食品の給餌の前後で、前記ネコからの血液サンプル中の3−メチルヒスチジンのレベルを測定する工程、
を有してなる方法であって、
3−メチルヒスチジンのレベルの食後の低下および/または維持が、ネコにおけるサルコペニアの低下および/または予防に使用するための食品を表すものである、方法。
【請求項2】
前記ネコが、少なくとも8歳を超える高齢である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記3−メチルヒスチジンのレベルが、前記食品が前記ネコに給餌される1時間前から直前の間に少なくとも一回、および該食品が該ネコに給餌された後の少なくとも30分から5時間の間に少なくとも一回、測定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記食品が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.33から1:0.55のタンパク質対脂肪の比を有する、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記食品が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.45のタンパク質対脂肪の比を有する、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記食品が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.37のタンパク質対脂肪の比を有する、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記食品が(a)群および(b)群のそれぞれから選択される1種類以上の栄養素を含み、
前記(a)群の栄養素が、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンであり、
前記(b)群の栄養素が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸であって、
前記(a)群対前記(b)群の比が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.006から1:4.5のペット用食品である、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記食品を前記ネコに給餌する前に、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.33から1:0.55のタンパク質対脂肪の比を有する食品を配合する工程をさらに含む、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパニオンアニマルの食餌の前後で3−メチルヒスチジンのレベルを決定する方法であって、その食餌が、3−メチルヒスチジンのレベルを食後に低下させるのに有用であり、ここに記載されたような有益な効果を有する、特定のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品である方法に関する。そのペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する。記載されたペット用食品は、サルコペニアの低下および/または予防に使用するために、コンパニオンアニマルに給餌される。本発明は、記載されたペット用食品を給餌する方法および/またはサルコペニアを低下させるおよび/または予防する恩恵をコンパニオンアニマルに提供するための食餌療法にも関する。
【背景技術】
【0002】
正常な健康状態では、全組織で起こるタンパク質分解の持続的速度のバランスをとるために、新たなタンパク質の合成との間で持続しているバランスがある。食物摂取後の期間において、摂取したタンパク質は、持続している分解のバランスをとるために新たなタンパク質の合成のための前駆体として働くアミン酸を供給できる。このバランスを妨げるまたは乱すどんなものによっても、タンパク質分解が増加し得る。ヒトおよび動物の健康と満足できる生活状態に対する影響に関して、増加したタンパク質分解および/または減少したタンパク質合成は、骨格筋量の減少(サルコペニアと称される)をもたらし、それゆえ、健康に有害であることが認識されている。サルコペニア(骨格筋量/強度の減少)は、衰弱と弱さ、免疫機能の障害、生活の質の低さおよび死にさえ関連する。その上、コンパニオンアニマルにとって、衰弱、食欲不振、体重減少および生活の知覚される質の低下などの骨格筋の減少に関連する有害な影響は、飼い主による安楽死の決断の主要原因である(非特許文献1)。したがって、安楽死の選択肢のために、骨格筋量の減少および関連する病的状態は、ネコおよびイヌの生存において、さらに重要な役割を果たすであろう。
【0003】
骨格筋は、その機能構造的役割および機械的役割に加え、全身代謝に中心的役割も果たす。骨格筋は、特に吸収後の状態の最中および絶食/飢餓において、主要組織および器官におけるタンパク質合成を維持できるアミノ酸の主要貯蔵部としての機能を果たす。ヒトにおける絶食中に、骨格筋由来のアミノ酸は、タンパク質合成のための基質を提供するだけでなく、肝臓でのグルコース新生によりグルコース合成の前駆体としても働く。ネコにおいて、グルコース新生は、空腹に対する単なる反応ではなく、むしろ、炭水化物が比較的不足している自然の食餌(小動物の餌)で進化してきた種において、脳などの主要器官にグルコースを提供するために、構成的に活性な経路であると示唆されてきた。ネコは、速いタンパク質酸化速度および増加したタンパク質の代謝回転などのネコの他の公知の代謝的適応のために、サルコペニアを起こす傾向があるであろう。したがって、吸収後の状態で主要組織および器官のタンパク質の代謝回転を維持し、潜在的に、供給された状態と絶食状態の両方におけるグルコース新生の基質を提供するために、所要のアミノ酸を供給するのに、適切な骨格筋量が必須である。
【0004】
したがって、特に、骨格筋が維持されるように骨格筋の分解を低下させるために、コンパニオンアニマルにおいて、健康な運動機能、適切な代謝機能、および生活の最適な質を維持する必要がある。
【0005】
中間代謝またはタンパク質合成のために再利用されず、よって、骨格筋の分解のマーカーとしてしばしば使用される3−メチルヒスチジンが、アクトミオシン分解の直接的尺度である(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mallery et al 1999, J Am Vet Med Assoc. 214: 1201-1204
【非特許文献2】Nedergaard,et al., 2013
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以下の工程:(a)コンパニオンアニマル、特にネコに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する食品を給餌する工程、および(b)その食品の給餌の前後で、そのコンパニオンアニマルからの血液サンプル中の3−メチルヒスチジンのレベルを測定する工程を有してなる方法であって、3−メチルヒスチジンのレベルの食後の低下および/または維持は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアの低下および/または予防に使用するための食品を表すものである、方法に関する。
【0008】
そのコンパニオンアニマルは、好ましくはネコであり、特に、高齢の、例えば、少なくとも8歳を超えたネコである。
【0009】
3−メチルヒスチジンのレベルは、食品がコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌される1時間前から直前までの間に少なくとも一回、および食品がコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌された少なくとも30分後から5時間後の間に少なくとも一回、測定される。
【0010】
その食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.33から1:0.55のタンパク質対脂肪の比を有することがある。その食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.45のタンパク質対脂肪の比を有することがある。その食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.37のタンパク質対脂肪の比を有することがある。その食品が栄養バランスのとれたペット用食品であることが好ましい。特に、その食品は低いカロリー密度を有する。
【0011】
その方法は、コンパニオンアニマル(すなわち、ネコ)に食品を給餌する前に、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する食品を配合する工程をさらに含む。
【0012】
本発明はまた、サルコペニアの低下および/または予防に使用するために、コンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌するための、第一段階のペット用食品および第二段階のペット用食品を含む食餌療法であって、その第一段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第1のカロリー密度を有し、第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第2のカロリー密度を有し、その第一段階のペット用食品は、1歳から約8歳のコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌するためのものであり、その第二段階のペット用食品は、8歳を超えるコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌するためのものであり、第2のカロリー密度が第1のカロリー密度より低い、食餌療法にも関する。
【0013】
その第一段階または第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.33から1:0.55のタンパク質対脂肪の比を有することがある。その第一段階または第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.45のタンパク質対脂肪の比を有することがある。その第一段階または第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.37のタンパク質対脂肪の比を有することがある。
【0014】
本発明はさらに、サルコペニアの低下および/または予防に使用するための、第一段階のペット用食品および第二段階のペット用食品、並びにその第一段階のペット用食品および第二段階のペット用食品を別々の収容するためのパッケージを備えたキットであって、その第一段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第1のカロリー密度を有し、第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第2のカロリー密度を有し、その第2のカロリー密度が第1のカロリー密度より低く、その第一段階のペット用食品は、1歳から約8歳のコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌するためのものであり、その第二段階のペット用食品は、8歳の年齢を超えるコンパニオンアニマル、好ましくはネコに給餌するためのものである、キットに関する。
【0015】
そのキットは、給餌説明書を含む、第二段階のペット用食品の区画に配置された挿入物をさらに備えることがある。
【0016】
本発明はさらに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、高いカロリー密度を有するペット用食品、および8歳の年齢からの(すなわち、高齢の)コンパニオンアニマル、好ましくはネコに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、低いカロリー密度を有するペット用食品を給餌するための説明書を備えたキットに関する。
【0017】
いくつかの実施の形態において、そのペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアの低下および/または予防に使用するためのものである。サルコペニアの低下および/または予防は、そのコンパニオンアニマルの血液サンプル中の3−メチルヒスチジンのレベルの低下および/または維持により示される。
【0018】
コンパニオンアニマルはネコであり、コンパニオンアニマルが高齢であることが好ましく、高齢(8歳以上)のネコであることが最も好ましい。そのペット用食品が、完全食の栄養バランスのとれたペット用食品であることが好ましい。
【0019】
いくつかの実施の形態において、本発明は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアを低下させるおよび/または予防する方法であって、そのコンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有するペット用食品が給餌される方法に関する。サルコペニアの低下および/または予防は、そのコンパニオンアニマルの血液サンプル中の3−メチルヒスチジンのレベルの低下および/または維持により示される。
【0020】
コンパニオンアニマルはネコであり、コンパニオンアニマルが高齢であることが好ましく、高齢(8歳以上)のネコであることが最も好ましい。
【0021】
コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアを低下させるおよび/または予防するために記載された方法に使用するためのおよび/または使用されるペット用食品は、完全食の栄養バランスのとれたペット用食品である。
【0022】
そのペット用食品は、(a)群および(b)群から選択される1種類以上の栄養素をさらに含むことがあり、ここで、(a)群の栄養素は、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンであり、(b)群の栄養素は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸である。好ましくは、そのペット用食品は、(a)群からの1種類の栄養素および(b)群からの1種類の栄養素を含み、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.006から1:4.5の比を有する、またはそのペット用食品は、(a)群から選択された2種類の栄養素および(b)群から選択された2種類の栄養素を含み、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.014から1:3.5の比を有する、またはそのペット用食品は、(a)群から選択された3種類の栄養素および(b)群から選択された3種類の栄養素を含み、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.025から1:2.5の比を有する。
【0023】
いくつかの実施の形態において、本発明は、サルコペニアの低下および/または予防に使用するためにコンパニオンアニマルに給餌するための食餌療法であって、そのコンパニオンアニマルに、少なくとも2種類のペット用食品の組合せが給餌され、一方のペット用食品は、ウェットまたはドライであり、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第2のペット用食品は、ウェットまたはドライであり、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、組み合わされた場合、そのコンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の全体比で給餌される、食餌療法に関する。
【0024】
本出願の発明者等は、食餌における食餌タンパク質および脂肪の含有量および比率が、代謝産物の3−メチルヒスチジンのレベルに影響を与えること、およびこのバイオマーカーにおけるそのような安定化および/または低下は、コンパニオンアニマルにおける骨格筋の分解および骨格筋量の減少(すなわち、サルコペニア)の低下および/または予防に直接関連付けることができることを発見した。
【0025】
第1の態様において、本発明は、コンパニオンアニマルにおける食餌の前後の3−メチルヒスチジンのレベルを決定する方法であって、その食餌が、3−メチルヒスチジンのレベルを食後に低下させるのに有用であり、ここに記載されたような有益な効果がある、特定のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品である方法に関する。
【0026】
本発明の方法は、以下の工程:(a)コンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する食品(すなわち、ここに記載されたようなペット用食品)を給餌する工程、および(b)その食品の給餌の前後で、そのコンパニオンアニマルからの血液サンプル中の3−メチルヒスチジンのレベルを測定する工程を有してなる方法であって、3−メチルヒスチジンの食後の低下は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアの低下および/または予防に使用するための食品を表すものである。
【0027】
本発明の方法の目的は、そのペット用食品が、コンパニオンアニマルにおける3−メチルヒスチジンのレベルを低下させる効果を与える要因であり、それゆえ、そのようなペット用食品は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアを低下させるおよび/または予防する有益な効果を提供するのに有用であり得るという診断法を提供することにある。
【0028】
本発明は、全ての態様に関して、どのコンパニオンアニマルにも関する。特に、本発明は、イヌやネコなどのコンパニオンアニマルに関する。特に、そのコンパニオンはネコである。
【0029】
そのペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する。
【0030】
本発明者等は、意外なことに、コンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品を給餌することは、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアの低下および/または予防に有益であることを発見した。
【0031】
筋肉の収縮タンパク質(アクチンおよびミオシン)内のペプチド結合合成後のヒスチジン残留物の翻訳後メチル化により、3−メチルヒスチジンが産生される。筋タンパク質の分解(proteolysis)(分解(breakdown))中のアクチンおよびミオシンの細胞内分解(degradation)により、3−メチルヒスチジンが血中に放出され、尿中に未変化で排泄される。3−メチルヒスチジンは、さらに異化も、中間代謝またはタンパク質合成のために再利用もできないので、それは、骨格筋の分解の有効なマーカーを表す。
【0032】
本発明は、コンパニオンアニマル、特にネコに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品を給餌することによって、骨格筋の分解のバイオマーカーである3−メチルヒスチジンの血漿中濃度の食後の増加がなく、空腹時濃度が低下することを証明する。
【0033】
3−メチルヒスチジンは、哺乳類における筋破壊および/または筋肉量の直接的な尺度を提供する周知のバイオマーカーである。
【0034】
絶食状態および食後の状態の両方における筋破壊の程度を低下させる食餌療法が、筋肉量をサポートするのに役立つであろう。筋肉には、数多くの重要な代謝機能並びに運動機能があるので、筋肉量を維持することには多くの恩恵がある。ここに記載されたようなペット用食品は、この恩恵を与える。
【0035】
本発明は、本発明に記載されたように、コンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品を給餌した場合、3−メチルヒスチジンの食後レベルが低下し、したがって、安定化することを示す。3−メチルヒスチジンバイオマーカーのこのような低下は、ここに記載されたようなペット用食品は、健康な運動機能、適切な代謝機能および生活の最適な質を維持するために、コンパニオンアニマルに、骨格筋の分解を減少させるおよび/または骨格筋量の減少を防ぐ恩恵を与えることを示す。
【0036】
骨格筋の分解を低下させることの恩恵は、コンパニオンアニマルの老化に一般に関連する、衰弱、弱さおよび活動の低下の回避に寄与する正常な骨格筋量を、その動物の寿命においてより長く維持できることである。吸収後の状態における主要組織および器官のタンパク質の代謝回転を維持し、潜在的に、供給された状態と絶食状態の両方におけるグルコース新生の基質を提供するために、所要のアミノ酸を供給するのに、適切な骨格筋量が必須であるので、骨格筋の分解の防止/低下も有益である。
【0037】
そのペット用食品は、どの年齢のコンパニオンアニマルにも給餌することができる。特に、そのペット用食品は、高齢のコンパニオンアニマルに給餌できる。イヌやネコは、その動物が8歳を超える年齢である場合、高齢であると考えられる。本発明は、高齢のネコに給餌されることが好ましい。
【0038】
サルコペニア(筋肉量/強度の損失)は、コンパニオンアニマルの老化において一般的であり、特に、ネコはサルコペニアに罹りやすい。
【0039】
したがって、本発明は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアを予防するため、および/または特に高齢の、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアの影響を低下させるために、使用することができる。
【0040】
ここに記載されたペット用食品は、サルコペニアの予防および/または低下に、特に、コンパニオンアニマルの筋破壊の低下に使用するためのものである。
【0041】
そのペット用食品は、どの年齢のコンパニオンアニマルにも、またコンパニオンアニマルの寿命のどの段階でも、給餌することができる。特に、ここに記載されたペット用食品は、5歳におよび/または8歳を超えた高齢に到達したときに、コンパニオンアニマルに給餌され、例えば、コンパニオンアニマルに、5歳に到達するまでは、どの食品を給餌しても差し支えなく、次いで、コンパニオンアニマルの寿命の後期にサルコペニアの影響を低下させるのに役立てるために、ここに記載されたペット用食品に切り換えることができる。
【0042】
ここに記載されたペット用食品は、1:0.27から1:0.63、1:0.28から1:0.62、1:0.29から1:0.61、1:0.30から1:0.60、1:0.31から1:0.59、1:0.32から1:0.58、1:0.33から1:0.57、1:0.34から1:0.56、1:0.35から1:0.55、1:0.36から1:0.54、1:0.37から1:0.53、1:0.38から1:0.52、1:0.39から1:0.51、1:0.40から1:0.50、1:0.41から1:0.49、1:0.42から1:0.48、1:0.43から1:0.47、1:0.44から1:0.46、および/またはその組合せに及ぶことがある、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムでのタンパク質対脂肪の比を有することがある。そのペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.33から1:0.55に及ぶタンパク質対脂肪の比を有することが好ましいであろう。そのペット用食品が有することのあるタンパク質対脂肪の比は、1:0.27、1:0.28、1:0.29、1:0.30、1:0.31、1:0.32、1:0.33、1:0.34、1:0.35、1:0.36、1:0.37、1:0.38、1:0.39、1:0.40、1:0.41、1:0.42、1:0.43、1:0.44、1:0.45、1:0.46、1:0.47、1:0.48、1:0.49、1:0.50、1:0.51、1:0.52、1:0.53、1:0.54、1:0.55、1:0.56、1:0.57、1:0.58、1:0.59、1:0.60、1:0.61、1:0.62、または1:0.63から選択することができる。そのペット用食品のタンパク質対脂肪の比が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約および/またはほぼ1:0.45であることが好ましく、そのペット用食品のタンパク質対脂肪の比が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約および/またはほぼ1:0.37であることが最も好ましいであろう。
【0043】
ここに記載されたペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.33から1:0.55のタンパク質対脂肪の比からなり得る。
【0044】
ここに記載されたペット用食品が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.45のタンパク質対脂肪の比からなり得ることが好ましい、または供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで約1:0.37のタンパク質対脂肪の比からなり得ることが最も好ましい。
【0045】
そのペット用食品は、完全食の栄養バランスのとれたペット用食品であり得る。
【0046】
その食品は、ドライタイプの食品、セミモイストタイプの食品、ウェットタイプの食品、または液体などの、コンパニオンアニマルが摂取するどのタイプであっても差し支えなく、任意の栄養補助食品、スナックまたはおやつも含む。これは、液体を含む標準的な食品、並びにペットフード用スナック(例えば、スナックバー、ペット向け噛み物、ザクザクしたおやつ、シリアルバー、スナック、ビスケットおよび甘い製品)を含む。
【0047】
そのペット用食品がドライタイプの食品またはウェットタイプの食品の形態にあることが好ましいであろう。本発明の第1の態様の食品は、特に、栄養バランスのとれた食品および/または栄養補助食品、例えば、ペット用食品および/またはペット用栄養補助食品である。
【0048】
その食品がペット向け製品であることが好ましい。そのような製品が、コンパニオンアニマル、特に、ネコまたはイヌに給餌/投与するための製品として販売されることが好ましい。
【0049】
そのペット用食品中のタンパク質および/または脂肪の含有量は、タンパク質対脂肪の最終比が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63であるという条件で、所望のペット用食品のどの尺度および/または質量百分率であっても差し支えない。
【0050】
典型的なドライタイプのペット用食品は、約10〜40%の粗タンパク質および約5〜40%の脂肪を含有し、残りは、食物繊維および灰分を含む炭水化物である。典型的なウェットまたはモイストタイプの製品は(乾燥物質基準で)、約40%の脂肪、50%のタンパク質を含有し、残りは繊維および灰分である。その食品は、ドライタイプの製品(約5から約15%の水分を有する)、セミモイストタイプの製品(約15から約70%の水分を有する)、またはウェットタイプの製品(約70から約90%の水分を有する)であることがある。
【0051】
上述したように、そのペット用食品中のタンパク質および/または脂肪の含有量は、タンパク質対脂肪の最終比が、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63であるという条件で、所望のペット用食品のどの尺度および/または質量百分率であっても差し支えない。例えば、ウェットタイプのペット用食品は、1:0.27から1:0.63に及ぶ、供給基準のグラム:グラムのタンパク質対脂肪の比を有することがあり、ここで、タンパク質の含有量は供給基準で10g/100gであり、脂肪の含有量は、供給基準で2.7g/100gから6.3g/100gであり得、供給基準で約4.5g/100gであることが最も好ましい。例えば、そのペット用食品は、1:0.27から1:0.63に及ぶ、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムのタンパク質対脂肪の比を有するドライタイプのペット用食品であることがあり、ここで、タンパク質の含有量は供給基準で32g/100gであり、脂肪の含有量は、供給基準で8.6g/100gから20.2g/100gであり得、供給基準で約14.4g/100gであることが最も好ましい。
【0052】
その食品が調理済み製品であることが好ましい。その製品が、肉または動物由来材料(牛肉、鶏肉、七面鳥の肉、子羊の肉、魚、血漿、骨髄など、またはその1つ以上のような)を含むことがある。あるいは、その製品は、タンパク源を提供するために、肉を含まない(大豆、トウモロコシ・タンパク質または大豆製品などの肉の代用食品を含むことが好ましい)ことがある。その食品は、大豆タンパク質濃縮物、乳タンパク質、グルテンなどの追加のタンパク質源を含有することがある。その食品は、鶏脂、七面鳥の脂、牛脂、アヒルの脂、豚の脂、子羊の脂など、魚油、ヒマワリ油、植物油などの1つ以上のような脂肪源も含有することがある。その食品は、1種類以上の穀物(例えば、小麦、トウモロコシ、米、オート麦、大麦など)などのデンプン源も含有しても、もしくはデンプンを含まなくてもよい。
【0053】
そのペット用食品が低いカロリー密度を有することが好ましい。食品のカロリー密度(またはエネルギー密度)は、その食品の質量(グラムまたはオンス)当たりの平均カロリーの尺度である。カロリー密度が低い食品は、水が多く、脂肪が少ない傾向にある。その食品は、要求されるカロリー密度を含むように、非消化性繊維または炭水化物などの増量剤も含むことがある。
【0054】
その食品は、単独で使用しても、または例えば、National Research Council, 2006, Nutrient Requirements for Dogs and Cats, National Academy Press, Washington DC (ISBN:0-309-08628-0);またはAssociation of American Feed Control Officials, Official Publication 2015に記載されているように、問題のコンパニオンアニマルにとって推奨されているビタミンおよびミネラルの全てを提供する、完全食のバランスのとれた食品と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本記載は、ここに記載されたようなペット用食品を調製する方法を含む。ここに記載されたような食品の製造のための過程は、当該技術分野で公知のどの方法により行っても差し支えない。
【0056】
その食品の残りの成分は本発明に必須ではなく、典型的な標準製品が含まれ得る。本発明による食品の合計成分が、問題の特定の動物にとって推奨されているビタミンおよびミネラルの全て(完全食のバランスのとれた食品)を提供できる。
【0057】
そのペット用食品は、(a)群および(b)群から選択される1種類以上の栄養素を含むことがあり、ここで、(a)群の栄養素は、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンであり、(b)群の栄養素は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸である。
【0058】
例えば、下記の表に、二組の栄養素の群が提示されている。
【0059】
そのペット用食品は、(a)群および(b)群からの栄養素のどの組合せを含んでもよい。そのペット用食品は、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンもしくはその任意の組合せ、並びにミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸もしくはその任意の組合せを含んでよい。
【0060】
そのペット用食品は、(a)群からの1種類の栄養素(すなわち、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンである)および(b)群からの1種類の栄養素(すなわち、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸)を含むことがある。特に、そのペット用食品が(a)および(b)群の各々から1種類の栄養素を含む場合、その栄養素は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.006から1:4.5の(a)群の栄養素対(b)群の栄養素の比で提供できる。
【0061】
そのペット用食品は、(a)群からの2種類の栄養素(すなわち、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンである)および(b)群からの2種類の栄養素(すなわち、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸)を含むことがある。特に、そのペット用食品が(a)および(b)群の各々から2種類の栄養素を含む場合、その栄養素は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.014から1:3.5の(a)群の栄養素対(b)群の栄養素の比で提供できる。
【0062】
そのペット用食品は、(a)群からの3種類の栄養素(すなわち、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンまたはプロリンである)および(b)群からの3種類の栄養素(すなわち、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸またはリノレン酸)を含むことがある。特に、そのペット用食品が(a)および(b)群の各々から3種類の栄養素を含む場合、その栄養素は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.025から1:2.5の(a)群の栄養素対(b)群の栄養素の比で提供できる。
【0063】
血液サンプルは、食前に少なくとも一回、および食後に一回以上、コンパニオンアニマルから採取する。特に、血液サンプルは、食後の少なくとも30分から5時間の間で選択された間隔(例えば、15分毎、30分毎、1時間毎、もしくは20分間の食餌の終わりから15分後、60分後、120後および300分後)で、食後に一回以上採取して差し支えない。ここに述べられた食餌は、特定のタンパク質対脂肪のレベルを有する、記載されたペット用食品である。コンパニオンアニマルから採取された各血液サンプルは、バイオマーカー、例えば、3−メチルヒスチジンの濃度レベルを決定するために、当該技術分野で公知の標準検定法を使用して検査される。サンプルが採取され、GIP濃度が測定される時間間隔は、厳密に時刻が決められるべきではなく、時間は近似である。
【0064】
食後(すなわち、コンパニオンアニマルに、ここに記載されたような特定のタンパク質対脂肪の比を有する食餌が給餌された後)の血液サンプル中の3−メチルヒスチジンの濃度レベルは、コンパニオンアニマルに、ここに記載されたような特定のタンパク質対脂肪の比を有さない食餌が給餌された場合に測定された3−メチルヒスチジンの測定値と比べて、減少している。具体的には、3−メチルヒスチジンの濃度は、コンパニオンアニマルに、ここに記載されたもの以外の他のタンパク質対脂肪の比を有する食品を給餌した場合に測定された3−メチルヒスチジンの測定値と比べて、著しく減少している。
【0065】
コンパニオンアニマル、特にネコに、ここに記載されたような特定のタンパク質対脂肪の比を有するペット用食品を給餌すると、3−メチルヒスチジンの食後レベルが著しく減少し、それゆえ、サルコペニア、例えば、コンパニオンアニマルにおける筋破壊および消耗の防止および/または低下などの有益な健康効果がコンパニオンアニマルに与えられる。
【0066】
前記方法は、本発明に使用されるペット用食品を調製する工程を含み得る。本発明に使用される食品の製造のための過程は、当該技術分野に公知のどの方法により行っても差し支えない。
【0067】
記載されたような本発明の方法は、ネコに食品を給餌する工程の前に行われる、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質対脂肪の比を有する食品(ここに記載されたような)を配合する工程も含み得る。
【0068】
そのペット用食品は、食餌療法の形態で使用することもでき、ここで、その食餌療法は、ウェットタイプおよびドライタイプ両方の食品の摂取により、コンパニオンアニマルが、ここに記載されたような特定のタンパク質:脂肪の比を達成することを可能にするウェットタイプの食品およびドライタイプの食品を含む。そのウェットタイプおよびドライタイプの食品の各々は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63の範囲内のタンパク質:脂肪の比を有する。
【0069】
その食品は、ウェットタイプおよびドライタイプ両方の食品の摂取により、動物が、両方のタイプの食品を同じ食餌で食べて、ここに記載されたような特定のタンパク質対脂肪の比を達成できるように、同時に提供されることがある。あるいは、例えば、ウェットタイプの食品が朝に与えられ、ドライタイプの食品が午後または夕方の別の食餌として与えられることがあり、これは、24時間の過程で、その動物が、記載されたような特定のタンパク質:脂肪の比を達成することを意味する。
【0070】
この食餌療法において与えられる食品により、本発明の好ましいタンパク質:脂肪の比(供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63)は、コンパニオンアニマルが、それに与えられるウェットタイプおよび/またはドライタイプの食品の各々の必要量を自己選択することによって達成されることがある。その好ましいタンパク質:脂肪の比は、ウェットタイプの食品のみ、またはドライタイプの食品のみの摂取により、もしくはコンパニオンアニマルに与えられるウェットタイプおよびドライタイプの食品の各々の組合せにより、達成されることがある。
【0071】
3−メチルヒスチジンのレベルは、1つの測定値を得るために、一日の始まり、コンパニオンアニマルに給餌する前、およびその日の最初の食餌の後の食後に測定され、次に、第2の読み取り値を得るために、コンパニオンアニマルにその日の二回目の食餌を給餌する前、およびその日の二回目の食餌の後の食後に測定することができる。ウェットタイプおよびドライタイプの食品の各々は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63の範囲内のタンパク質:脂肪の比を有し、よって、3−メチルヒスチジンのレベルは、一回目と二回目の両方の食餌の後の食後に減少する。
【0072】
本発明は、そのような食餌療法に使用するための、ウェットタイプの食品を含む第1のパッケージおよびドライタイプの食品を含む第2のパッケージを有してなるキットも提供する。そのウェットタイプおよびドライタイプの食品の各々は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63の範囲内、および/または組み合わされたときに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63の範囲内のタンパク質:脂肪の比を与える、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63の範囲の下または上のタンパク質:脂肪の比を有する。
【0073】
本発明はさらに、サルコペニアの低下および/または予防に使用するための、第一段階のペット用食品および第二段階のペット用食品、並びにその第一段階のペット用食品および第二段階のペット用食品を別々の収容するためのパッケージを備えたキットであって、その第一段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第1のカロリー密度を有し、第二段階のペット用食品は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、第2のカロリー密度を有し、その第2のカロリー密度が第1のカロリー密度より低く、その第一段階のペット用食品は、1歳から約8歳のネコに給餌するためのものであり、その第二段階のペット用食品は、8歳を超えるネコに給餌するためのものである、キットに関する。
【0074】
その食品は、要求されるカロリー密度を含むように、非消化性繊維または炭水化物などの増量剤も含むことがある。
【0075】
その第一段階のペット用食品の第1のカロリー密度は、その食品の質量当たりより多いカロリー(すなわち、食品のグラム当たりより多いカロリー)を含有するという点で、高く、例えば、より多くの炭水化物およびより多くの脂肪を含有することがある。
【0076】
その第二段階のペット用食品の第2のカロリー密度は、その食品の質量当たりより少ないまたは少量のカロリー(すなわち、食品のグラム当たりより少ないまたは少量のカロリー)を含有するという点で、低く、例えば、より多くの水およびより少ない脂肪を含有することがある。
【0077】
記載されたようなキットは、給餌説明書、例えば、そのコンパニオンアニマルが約8歳の年齢(すなわち、高齢)に到達したら、第一段階のペット用食品の給餌を第二段階のペット用食品に切り換える説明書を含む、第二段階のペット用食品の区画に配置された挿入物をさらに備えることがある。
【0078】
本発明は、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、高いカロリー密度を有するペット用食品(すなわち、第一段階のペット用食品)、および約8歳の年齢からのネコに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有し、低いカロリー密度を有するペット用食品を給餌するための説明書を備えたキットも提供する。
【0079】
記載されたようなペット用食品は、コンパニオンアニマル、特に高齢のコンパニオンアニマル(例えば、8歳および/またはそれより上の年齢の高齢ネコ)に給餌される。記載されたペット用食品をコンパニオンアニマル、特にネコに給餌すると、3−メチルヒスチジンの食後レベルが著しく減少するおよび/または維持されることが示された。
【0080】
本発明は、コンパニオンアニマルにおけるサルコペニアを予防するおよび/または低下させる方法であって、そのコンパニオンアニマルに、供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の特定の比を有するペット用食品が給餌(投与)される方法にも関する。
【0081】
本発明の好ましい特徴は、必要な変更を加えて、適用される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】時間の経過による規定食が給餌されたネコにおける3−メチルヒスチジンの血漿中濃度を示すグラフ
【実施例】
【0083】
本発明を、以下の実施例および図面を参照して、さらに説明する。それらの実施例および図面は、説明目的のために与えられており、本発明に対する限定と解釈すべきではない。
【0084】
図1:時間の経過による規定食が給餌されたネコにおける3−メチルヒスチジンの血漿中濃度を示すグラフ。このグラフは、規定食4(供給または乾燥物質基準のグラム:グラムで1:0.37のP:Fを有する)を給餌したネコが、他の規定食と比べて、筋破壊産物の3−メチルヒスチジンの低く安定した血漿中濃度を得たことを示す。y軸は、倍率変化測定である。倍率変化は、初期値から最終値までどれだけ量が変化するかを記載する尺度である。例えば、30の初期値および60の最終値は、1の倍率変化(または同等に、2倍への変化)、もしくは一般的な用語では、1倍の増加に相当する。
【0085】
この研究の目的は、ネコにおける主要栄養素規定食からの異なる恩恵を判定し、ネコにおける食後の代謝産物プロファイルに対する主要栄養素組成物における差を調査することであった。
【0086】
代謝作用の様々な態様に対する5つの規定食の影響を調査するために、1歳と2歳の間の年齢の19匹のネコに研究を行った。様々な範囲のタンパク質対脂肪の比を提供するために、異なる比率であるが同じ原材料を使用して、5つの規定食(規定食1、規定食2、規定食3、規定食4、および規定食5と表示される)を製造した。
【0087】
全てのネコに無作為クロスオーバー計画で14日間の5つの連続段階で給餌し、各ネコに、5つの規定食の各々を順々に給餌した。全てのネコは、試験の開始時に理想体重の5%以内であった。各段階の最初の13日間について、ネコに、安定な健康体重を維持する量で、一日当たり2回の食餌を給餌した。各段階の14日目に、5つの時点(ベースラインとしての給餌前の一回と、次いで、20分間の食餌の終わりから15分後、60分後、120分後および300分後)で、ネコから血液サンプルを採取した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
全てのサンプルに2つのタイプの質量分析を行った。GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析;Agilent 5973 MS−Systemに連結されたAgilent 6890 GC、独国、ヴァルトブロン、Agilent)およびLC−MS/MS(液体クロマトグラフィー−MS/MS;Applied Biosystems API4000 MS/MS−System(独国、ダルムシュタット、Applied Biosystems)に連結されたAgilent 1100 HPLC−System(独国、ヴァルトブロン、Agilent))を広いプロファイリングのために使用した(van Ravenzwaay et al. 2007)。
【0091】
タンパク質は、沈殿によって血漿サンプル(60μl)から除去した。その後、水、およびエタノールとジクロロメタンの混合物を添加することによって、GC−MSおよびLC−MS/MSの両方の分析のために、極性画分および非極性画分を分離した。GC−MS分析について、非極性画分を酸性条件下でメタノールにより処理して、遊離脂肪酸および加水分解複合脂質の両方に由来する脂肪酸メチルエステルを生成した。極性および非極性画分を、O−メチル−ヒドロキシアミン塩化物(ピリジン中20mg/ml、50μl)でさらに誘導体化して、オキソ基をO−メチルオキシムに転化させ、その後、GC−MS分析の前にシリル化剤(MSTFA、50μl)で誘導体化した。LC−MS/MS分析については、両方の画分を適切な溶媒混合物中で再構成した。逆相分離カラムにメタノール/水/ギ酸を使用した勾配溶離によって、高速LC(HPLC)を行った。米国特許第7196323号明細書に記載されているように、質量分析検出技術を適用した。これは、標的高感度「多重反応モニタリング」のフルスクリーン分析への同時のプロファイリングを可能にする。GC−MSおよびLC−MS/MS両方のプロファイリングにおける装置間および装置内の変動を考慮して、データを、その種からの全てのサンプルのアリコートから形成したプールに由来する基準サンプルの中央値に正規化した。プールした基準サンプルを全過程に亘り平行して試験した。検出限界および半定量的測定のダイナミックレンジは、方法開発中に希釈およびスパイク実験により決定した。毎日、代謝産物が「半定量的」と考えられるように、15の信号対雑音(S/N)比の閾値を使用した。
【0092】
データ分析
データ分析は、単変量統計(混合線形モデル)および多変量解析(主成分分析(PCA))を含んだ。
【0093】
多変量統計
全ての代謝産物データを対数変換し(近似正規分布を確実にするために)、中央揃えし、単位変化に対してスケーリングした。ソフトウェアのSimca(バージョン13;スウェーデン国、ウメオ、Umetrics AB)を使用して、多変量解析を行った。
【0094】
単変量統計
全データセットおよび統計学的に分析すべき一つ一つの群について、最小値、最大値、平均値および中央値を決定した。平均値および中央値を対数尺度で計算し、次いで、非対数尺度に逆変換した。図は、95%の信頼区間で、JMP内で構成した。
【0095】
結果
この研究は、意外なことに、1:0.37のタンパク質対脂肪の比を有する規定食(規定食4)を給餌したネコが、食物摂取後に増加しなかった3−メチルヒスチジン(筋破壊のマーカー)の低い空腹時濃度を有することを示した。対照的に、異なるタンパク質:脂肪の比を有する他の規定食の摂取により、3−メチルヒスチジンの空腹時濃度が増加した、3−メチルヒスチジンの食後濃度が増加した、またはその両方であった。低レベルの3−メチルヒスチジンは最小の筋破壊を示すのに対し、3−メチルヒスチジンの増加したレベルは筋タンパク質の増加した分解と一致する。
【0096】
したがって、その結果は、食品におけるタンパク質対脂肪の比は、ネコにおける筋タンパク質の分解に著しい影響を及ぼし得ることを示す。これらの結果に基づいて、規定食4と同じタンパク質対脂肪の比(すなわち、1:0.37)を有する規定食および規定食4の比の両側の範囲内(すなわち、1:0.27から1:0.63)の比を有する規定食は、他の規定食と比べて、筋破壊を減少させる恩恵をネコに与え、したがって、筋肉の代謝回転を最小にし得、摂動に対するより良好な代謝反応、より健康的な寿命および改善された老化による結果をもたらすであろう。
【0097】
規定食1、2、3および5の食後の全てのサンプル時点で、3−メチルヒスチジン濃度は、規定食4の後よりも、著しく高かった。食後30分から1時間、食後325分まで、規定食1、2、3および5の後のGIPのレベルは、規定食4の後よりも著しく高かった(図1)。
【0098】
本発明に記載されたような1:0.27から1:0.63のタンパク質:脂肪の比を有する規定食を給餌することにより骨格筋の分解を低下させる/防止する恩恵は、コンパニオンアニマルにおける老化に一般に関連する衰弱、弱さおよび活動の低下の回避に寄与する正常な格筋量を、動物の寿命においてより長く維持できることである。吸収後の状態で主要組織および器官のタンパク質の代謝回転を維持し、潜在的に、供給された状態と絶食状態の両方におけるグルコース新生の基質を提供するために、所要のアミノ酸を供給するのに、適切な骨格筋量が必須であるので、骨格筋の分解を防止する/低下させることも有益である。
図1