(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869256
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】遠位の柔軟性が制御された操向ツール
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20210426BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 540
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-545831(P2018-545831)
(86)(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公表番号】特表2019-512292(P2019-512292A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】IB2017051040
(87)【国際公開番号】WO2017149416
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2019年8月28日
(31)【優先権主張番号】15/057,329
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516170886
【氏名又は名称】ベンディット テクノロジーズ リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】カビリ,オズ
(72)【発明者】
【氏名】ハンマー,タル
(72)【発明者】
【氏名】メイリ,オデッド
【審査官】
上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−077346(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/095475(WO,A1)
【文献】
特表2002−512534(JP,A)
【文献】
特開平07−255855(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0165162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61B 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部チューブの内側に配置された内部チューブであって、前記内部チューブおよび前記外部チューブが、互いに対して長手軸方向の運動をするように配置され、前記内部チューブの遠位端部が、前記外部チューブの遠位端部に固定して結合される、内部チューブと、
前記内部チューブおよび前記外部チューブの相対的な軸方向運動ならびに前記内部チューブおよび前記外部チューブのうちの少なくとも一方の遠位部分の屈曲を生じさせるように動作可能である、チューブマニピュレータと、
ロック位置とロック解除位置とを切り替えるように動作可能なロック機構であって、前記ロック位置では、前記内部チューブおよび前記外部チューブが互いに対して特定の長手軸方向位置においてロックされ、前記ロック解除位置では、前記内部チューブおよび前記外部チューブの互いに対する抑制されない自由な運動が存在する、ロック機構と、
を備え、
前記ロック機構が、前記内部チューブおよび前記外部チューブの互いに対する部分的に抑制された運動が存在する中間ロック位置を作り出すように動作可能な調整組立体を備え、
前記調整組立体が、前記内部チューブおよび前記外部チューブの互いに対する運動を少なくとも部分的に抑制する付勢力を前記内部チューブおよび前記外部チューブのうちの少なくとも一方に印加するように動作可能な付勢デバイスを備える、操向ツール。
【請求項2】
前記ロック位置と前記中間ロック位置と前記ロック解除位置とを切り替えるために前記調整組立体に動作可能に接続された制御ノブを備える、請求項1に記載の操向ツール。
【請求項3】
前記制御ノブが、様々な位置においてロック可能とされる、請求項2に記載の操向ツール。
【請求項4】
前記制御ノブが、前記内部チューブおよび前記外部チューブのうちの少なくとも一方に取り付けられた当接要素に向かって移動可能であるストッパに接続される、請求項2に記載の操向ツール。
【請求項5】
制御ノブが、前記ロック位置と前記中間ロック位置と前記ロック解除位置とを切り替えるために前記調整組立体に動作可能に接続され、前記制御ノブが、前記内部チューブおよび前記外部チューブのうちの少なくとも一方に取り付けられた当接要素に向かって移動可能であるストッパに接続され、前記ロック位置では、前記付勢デバイスが、前記内部チューブおよび前記外部チューブの互いに対する運動を完全に抑制するのに十分な第1の付勢力を前記当接要素に印加し、前記中間ロック位置では、前記付勢デバイスが、前記当接要素に第2の付勢力を印加して、前記内部チューブおよび前記外部チューブの互いに対する運動を部分的に抑制する、請求項1に記載の操向ツール。
【請求項6】
前記ロック位置では、前記内部チューブおよび前記外部チューブの遠位部分が、固定された変形配向にあり、前記中間ロック位置では、前記内部チューブおよび前記外部チューブの前記遠位部分が、可変の変形配向にある、請求項1に記載の操向ツール。
【請求項7】
前記内部チューブと係合している位相シフトマニピュレータを備え、前記位相シフトマニピュレータの回転が、前記内部チューブにトルクを印加する、請求項1に記載の操向ツール。
【請求項8】
前記チューブマニピュレータおよび前記位相シフトマニピュレータが、互いに独立して動作する、請求項7に記載の操向ツール。
【請求項9】
前記ロック機構が、ハンドルの一部分に形成された歯と選択的に係合または分離する、前記制御ノブに形成された歯を備える、請求項2に記載の操向ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、体腔を通して医療デバイスを進ませるための操向ツールに関し、詳細には、ツールの遠位部分の柔軟性が制御された操向ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者へのPCT特許出願PCT/US2014/071075は、体腔を通して医療デバイスを進ませるための操向ツールについて説明している。操向ツールは、外部チューブの内側に配置された内部チューブを有する。内部チューブおよび外部チューブは、互いに対して長手軸方向の運動をするように配置される。内部チューブの遠位端部は、外部チューブの遠位端部に固定して結合される。内部チューブおよび外部チューブの一方または両方は、その遠位端部の近くにスロットが付けられる。長手軸方向の運動は、チューブの遠位端部の屈曲を生じさせる。内部チューブおよび外部チューブの一方または両方は、その遠位端部の近くにスロットが付けられる。操向ツールは、操向可能性、柔軟性、およびトルク伝達性を兼ね備える、遠位先端を提供する。ツールは、引張り/押込みワイヤ(pull/push wire)の必要性を排除する。
【0003】
操向ツールは、操作ハンドルと、直線スライダなどのチューブマニピュレータとを含む。チューブマニピュレータは、内部チューブおよび外部チューブの相対的な軸方向運動を生じさせる。例えば、チューブマニピュレータを遠位に移動させることにより、内部チューブおよび外部チューブの遠位先端の屈曲が生じる。チューブマニピュレータは、所定の位置でロックされることができ、また、望まれたときにロック位置から解放されて所定の位置で再度ロックされることができる。ロック解除位置では、両方のチューブが自由に動いて操向ツールが(あらゆる種類の湾曲経路などの)体腔の形状に従って屈曲することを可能にすることができるように、体腔内への操向ツールの挿入中の自由な運動が存在する。体腔内の所望の送り先に到達した後、ハンドルは、それ以上屈曲させないためにロックされる。したがって、操向ツールは、カテーテルおよび他のデバイスを案内するための案内ワイヤとして非常に容易に使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以下でより詳細に説明されるように、体腔を通して医療デバイスを進ませるための操向ツールのさらなる改善を実現することを図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一実施形態によれば、外部チューブの内側に配置された内部チューブであって、内部チューブおよび外部チューブが、互いに対して長手軸方向の運動をするように配置され、内部チューブの遠位端部が、外部チューブの遠位端部にしっかりと結合される、内部チューブと、内部チューブおよび外部チューブの相対的な軸方向運動ならびに内部チューブおよび外部チューブのうちの少なくとも一方の遠位部分の屈曲を生じさせるように動作可能である、チューブマニピュレータと、ロック位置とロック解除位置とを切り替えるように動作可能なロック機構であって、ロック位置では、内部チューブおよび外部チューブが互いに対して特定の長手軸方向位置においてロックされ、ロック解除位置では、内部チューブおよび外部チューブの互いに対する抑制されない自由な運動が存在し、また、内部チューブおよび外部チューブの互いに対する部分的に抑制された運動が存在する中間ロック位置を作り出すように動作可能な調整組立体を含む、ロック機構と、を含む、操向ツールが提供される。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、調整組立体は、内部チューブおよび外部チューブの互いに対する運動を少なくとも部分的に抑制する付勢力を内部チューブおよび外部チューブのうちの少なくとも一方に印加するように動作可能な付勢デバイスを含む。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、制御ノブが、ロック位置と中間ロック位置とロック解除位置とを切り替えるために、調整組立体に動作可能に接続される。制御ノブは、様々な位置においてロック可能とされ得る。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、制御ノブは、チューブのうちの少なくとも一方に取り付けられた当接要素に向かって移動可能であるストッパに接続される。
本発明の一実施形態によれば、ロック位置では、付勢デバイスは、内部チューブおよび外部チューブの互いに対する運動を完全に抑制するのに十分な第1の付勢力を当接要素に印加し、中間ロック位置では、付勢デバイスは、当接要素に第2の付勢力を印加して、内部チューブおよび外部チューブの互いに対する運動を部分的に抑制する。
【0009】
ロック位置では、内部チューブおよび外部チューブの遠位部分が、固定された変形配向にあり、中間ロックでは、内部チューブおよび外部チューブの遠位部分は、可変の変形配向にある。
【0010】
本発明は、図面と併せ以下に詳しく説明することから、より詳細に理解されかつ評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の非限定的な実施形態による操向ツールの簡易化した図である。
【
図2A】操向ツールのチューブを完全にもしくは部分的にロックするかまたは全くロックしない(すなわち、チューブが自由に移動することができるように、ロックされない)ための制御ノブを示す、本発明の非限定的な実施形態による操向ツールのハンドルの簡易化した図である。
【
図2B】操向ツールのチューブを完全にもしくは部分的にロックするかまたは全くロックしない(すなわち、チューブが自由に移動することができるように、ロックされない)ための制御ノブを示す、本発明の非限定的な実施形態による操向ツールのハンドルの簡易化した図である。
【
図3A】内部の機構を示す、操向ツールの簡易化した破断図である。
【
図3B】操向ツールの内側チューブおよび外側チューブに取り付けられた当接要素のより拡大した破断図である。
【
図3C】チューブをロックするためにチューブのうちの一方の当接要素に向かって移動可能であるストッパに接続された制御ノブを示す、操向ツールハンドルの簡易化した破断図である。
【
図4A】
図4Aは、ストッパと当接要素との間に取り付けられた付勢デバイスを示す図であって、付勢デバイスが完全に圧縮された位置にあり、チューブが完全にロックされている、操向ツールの簡易化した破断図である。
【
図4B】
図4Bは、ストッパと当接要素との間に取り付けられた付勢デバイスを示す図であって、付勢デバイスが完全に圧縮された位置にあり、チューブが完全にロックされている、操向ツールの簡易化した破断図である。
【
図5A】
図5Aは、付勢デバイスが部分的に圧縮された位置にあり、チューブが部分的にロックされていることを示す、操向ツールの簡易化した破断図である。
【
図5B】
図5Bは、付勢デバイスが部分的に圧縮された位置にあり、チューブが部分的にロックされていることを示す、操向ツールの簡易化した破断図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の別の非限定的な実施形態による操向ツールの簡易化した図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の別の非限定的な実施形態による操向ツールの簡易化した図である。
【
図7】本発明の別の非限定的な実施形態による操向ツールのハンドルの簡易化した斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、操向ツールのチューブの変形に対する未変形の位置における、
図7のハンドルの簡易化した断面図である。
【
図8B】
図8Bは、操向ツールのチューブの変形に対する部分的に変形された位置における、
図7のハンドルの簡易化した断面図である。
【
図8C】
図8Cは、操向ツールのチューブの変形に対する完全に変形された位置における、
図7のハンドルの簡易化した断面図である。
【
図9A】
図9Aは、ロック位置における、
図7のハンドルの制御ノブの簡易化した側面図である。
【
図9B】
図9Bは、ロック解除位置における、
図7のハンドルの制御ノブの簡易化した側面図である。
【
図10】操向ツールのチューブのねじれ形状を制御するために使用される、
図7のハンドルのねじりノブ(twist knob)の簡易化した破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の非限定的な実施形態による操向ツール10を示す
図1〜2Bを参照する。
操向ツール10は、外部チューブ14の内側に配置された内部チューブ12を含む(
図2Bに見られる)。内部チューブ12の遠位端部は、外部チューブ14の遠位端部に固定して結合される。「結合される」という用語は、溶接、超音波溶接、熱接合、接着接合、モールディングなどのような、しかしこれらに限定されない、チューブの材料同士を付着させるあらゆる方法を包含する。内部チューブ12および外部チューブ14は、(結合されたそれらの遠位端部を除いて)互いに対して長手軸方向の運動をするように配置される。
【0013】
操向ツール10は、以下でさらに説明されるように、操向ツール10のチューブ12および14を完全にもしくは部分的にロックするかまたは全くロックしない(すなわち、チューブが自由に移動することができるように、ロックされない)ための制御ノブ18を有する、ハンドル16を含む。制御ノブ18は、チャネル20内で摺動し、また、チャネル20の側面に形成された隆起部23に係合することができる歯22を有する、摺動可能なノブであってもよい(
図2C)。このようにして、制御ノブ18は、様々な位置においてロック可能とされ得る。代替実施形態では、制御ノブ18は、回転要素である場合もあり、その非限定的な例が、以下で挙げられる。「ノブ」という用語は、ノブ、ボタン、ローラ、スイッチなどのような、しかしこれらに限定されない、あらゆる操作用要素を包含する。例えば、以下の実施形態は、機械式ノブに関連して説明されるが、本発明は、その代わりに、電子式の付勢システムを用いて実施されてもよく、その場合、制御ノブは、ボタンまたはタッチパッドなどの電気的スイッチとされ得る。
【0014】
ハンドル16はまた、チューブマニピュレータ24を含み得る。次に
図3Cを参照して(いくつかの部品は
図3Aにも示されている)説明されるように、チューブの遠位部分を屈曲させるか湾曲させるかまたは他の形で変形させるために、チューブマニピュレータ24の回転が、内部チューブ12および外部チューブ14のうちの一方の互いに対する長手軸方向の運動を生じさせる。
【0015】
チューブマニピュレータ24は、外側チューブ14に固着されたチューブ保持器28とねじ式係合している内部スピンドル26を含む。デバイスの長手軸30の周りで内部スピンドル26と一緒にチューブマニピュレータ24が回転することによって、チューブ保持器28を外側チューブ14と一緒に長手軸30に沿って軸方向に移動させる(ねじ式接続は、ねじの前進におけるように、回転運動を軸方向運動に変換する)。内部チューブ12に対する外部チューブ14の長手軸方向の運動は、チューブの遠位部分を屈曲させるか湾曲させるかまたは他の形で変形させる。チューブマニピュレータ24は、あるいは、外側チューブ14ではなく内部チューブ12に接続されて、チューブの遠位部分を屈曲させるか湾曲させるかまたは他の形で変形させるために、外部チューブ14に対する内部チューブ12の長手軸方向の運動を生じさせてもよい。
【0016】
チューブマニピュレータ24は、チューブの遠位部分を屈曲させるか湾曲させるかまたは他の形で変形させるために使用される。したがって、チューブマニピュレータ24は、操向および1つの平面における先端位置を一度に制御する。場合により、操向ツール10は、位相シフトマニピュレータ25と呼ばれる別のマニピュレータを含むことがあり、このマニピュレータは、内部チューブ12に接続されたねじ付き軸27とねじ式係合するノブであり得る。内部チューブおよび外側チューブのうちの一方または両方は、スロットを有して形成され得る。スロットは、互いに対して位相シフトされ得る(すなわち、1つのチューブ上のスロットが、互いに対して位相シフトされてもよく、かつ/または、一方のチューブのスロットが、他方のチューブのスロットに対して位相シフトされてもよい)。位相シフトマニピュレータ25の回転が、内部チューブ12にトルクを印加し、それにより、チューブ間またはスロット間の位相シフトの量が変更され、また、それにより、ねじれたまたは螺旋状の形状が、チューブの遠位先端にもたらされる。チューブマニピュレータ24の(例えば、遠位先端の操向および屈曲をもたらすための)操作、および、位相シフトマニピュレータ25の(例えば、ねじりトルクを生じさせるための)操作は、互いに独立したものであり、したがって、遠位先端の形状を任意の所望の3次元形状にする無限の可能性を外科医に提供する。ねじりトルクはまた、チューブの屈曲部分の剛性を変化させる。
【0017】
操向ツール10は、
図4Aを参照して説明されるように、ロック位置とロック解除位置とを切り替えるロック機構を含む(また、そのうちの一部が、
図3Cに示されている)。ロック位置では、内部チューブ12および外部チューブ14は、互いに対して特定の長手軸方向位置においてロックされ、ロック解除位置では、内部チューブ12および外部チューブ14の互いに対する抑制されない自由な運動が存在する。ロック機構は、内部チューブ12および外部チューブ14の互いに対する部分的に抑制された運動が存在する中間ロック位置を作り出す、調整組立体を含む。
【0018】
ロック機構は、ストッパ32に接続される制御ノブ18と、内側チューブ12に取り付けられた当接要素34とを含む。
図3Bで明らかなように、別の当接要素36が、外側チューブ14に取り付けられる。さらに、またはその代わりに、別のストッパ(または、ストッパ32)が、当接要素36に向かって移動し得る。
【0019】
調整組立体は、内部チューブ12および外部チューブ14の互いに対する運動を少なくとも部分的に抑制する付勢力を内部チューブ12および/または外部チューブ14に印加する、付勢デバイス38を含む。付勢デバイス38は、これらに限定されることはないが、コイルばね、板ばね、またはその引張り状態が可変であるワイヤもしくはバンド(例えば、ニチノール製のワイヤまたはバンド)であり得る。例示された実施形態では、付勢デバイス38は、ストッパ32と当接要素34(または、より具体的には、当接要素34の前に配置された1つまたは複数の座金35)との間に位置決めされたコイルばねである。
【0020】
ロック位置では、付勢デバイス38は、内部チューブ12および外部チューブ14の互いに対する運動を完全に抑制するのに十分な第1の付勢力を当接要素34に印加する。この付勢力は、制御ボタン18をチャネル20(
図2C)内で十分に後方に移動させることによって生成される。中間ロック位置では、付勢デバイス18は、当接要素34に第2の付勢力(第1の付勢力よりも弱い)を印加して、内部チューブ12および外部チューブ14の互いに対する運動を部分的に抑制する。このより弱い付勢力は、制御ボタン18をチャネル20(
図2C)内でより小さく後方に移動させることによって生成される。
【0021】
回転式の制御ノブの場合、制御ノブは、これらに限定されることはないが、付勢デバイスを伸張または弛緩させて付勢力を調整する、回転可能なカムまたは巻上げスプールを含み得る。
【0022】
図4Aおよび4Bで明らかなように、ロック位置では、付勢デバイス38は、完全に圧縮された位置にあり、チューブは、完全にロックされる。
図5Aおよび5Bで明らかなように、中間ロック位置では、付勢デバイス38は、部分的に圧縮された位置にあり、チューブは、部分的にロックされる。
【0023】
ロック位置では、内部チューブおよび外部チューブの遠位部分は、固定された変形配向にあり、中間ロック位置では、内部チューブおよび外部チューブの遠位部分は、可変の変形配向にある。制御ボタン18がチャネル20(
図2C)の遠位端部に移動されるロック解除位置では、両方のチューブの自由な運動が存在する。したがって、体腔内への操向ツール10の挿入中、ロック解除位置は、両方のチューブが自由に動いて操向ツールが(あらゆる種類の湾曲経路などの)体腔の形状に従って屈曲することを可能にすることができるように、使用され得る。体腔内の所望の送り先に到達した後、ハンドルは、それ以上屈曲させないために、部分的にまたは完全にロックされる。したがって、操向ツールは、カテーテルおよび他のデバイスを案内するための案内ワイヤとして非常に容易に使用され得る。
【0024】
図6Aおよび6Bは、上述の操向ツールの別のバージョンを示し、同じ番号は、同じ要素を示す。この実施形態は、制御ノブの配置、および調整組立体のために使用される付勢デバイスのタイプの点で、先の実施形態とは異なる。例えば、この実施形態における付勢デバイスは、先の実施形態におけるコイルばねとは違って、ばねワイヤ(spring wire)または板ばねであり得る。
【0025】
次に、本発明の別の非限定的な実施形態による、上述の操向ツールの内部チューブ12および外部チューブ14を変形させるためのハンドル70を示す
図7〜8Dを参照する。ハンドル70は、ハウジング71を有し、かつ、流体コネクタ、ルアーフィッティングなどのような医療デバイスコネクタ73をハウジング71の近位端面に含み得る。
【0026】
ハンドル70は、ハンドル70の上面に形成された凹部74内で摺動するように構成された制御ノブ72を含む。外部チューブ14は、アダプタ78により外部チューブ搬器76に接続され得る。制御ノブ72の軸方向運動(つまり、ハンドルの長手軸に沿った直線運動)が、外部チューブ14の軸方向運動を生じさせる。制御ノブ72は、アーム80により外部チューブ搬器76に連結されることができ、アーム80は、第1の枢動ピン82によりアーム80の底部においてハウジング71に枢動可能に接続される。アーム80は、アーム80に形成された第1のチャネル86内で移動するように構成された第2の枢動ピン84により、外部チューブ搬器76に枢動可能に接続される。アーム80は、アーム80の頂部においてアーム80に形成された第2のチャネル90内で移動するように構成された第3の枢動ピン88により、制御ノブ72に枢動可能に接続される。
【0027】
図8A〜8Cは、ハンドル70の移動を示す。
図8Aでは、ハンドル70は、その最近位位置にあり、この位置では、外部チューブは、まだ遠位に変位されておらず、そのため、内部チューブ12および外部チューブ14は、変形されていない。
【0028】
図8Bでは、ハンドル70は、中間位置へと遠位に移動されており、したがって、外部チューブ14を遠位に移動させ、そのことが、内部チューブ12および外部チューブ14を部分的に変形させ、また、それらの遠位部分を上述のように部分的に屈曲させる。
【0029】
図8Cでは、ハンドル70は、その最遠位位置へと遠位に移動されており、したがって、外部チューブ14をさらに遠位に移動させ、そのことが、内部チューブ12および外部チューブ14を完全に変形させ、また、それらの遠位部分を上述のように完全に屈曲させる。
【0030】
アーム80は、アーム80の横向き突出部の近位部分および遠位部分にそれぞれ形成された面取り当接面などの、近位ストッパ92および遠位ストッパ94(
図8B)を含み得ることが、留意される。近位ストッパ92および遠位ストッパ94は、それぞれ、制御ノブ72の近位および遠位への移動の終わりにおいて外部チューブ14に(あるいは、外部チューブ搬器76に)当接する。
【0031】
次に、制御ノブ72のロック位置およびロック解除位置をそれぞれ示す
図9Aおよび9Bを参照する。凹部74の上側リムの下面は、下向きの歯96を有して形成され得る。制御ノブ72は、制御ノブ72の側面のうちの1つにそれぞれ配置された2つの板ばね100上に形成された上向きの歯98を含み得る。
図9Aで明らかなように、制御ノブ72に下向きの力が与えられていない場合、制御ノブ72の上向きの歯98は、凹部74の下向きの歯96に係合し、制御ノブ72は、所定の位置にロックされて、軸方向に移動され得ない。
図9Bで明らかなように、制御ノブ72に下向きの力が与えられると、制御ノブ72の上向きの歯98は、凹部74の下向きの歯96から分離し、そして制御ノブ72はロック解除されて、軸方向に自由に移動することができる。
【0032】
チューブの所望の角度が達せられると、使用者は、制御ノブ72への下向きの力を解放し、それにより、制御ノブ72の上向きの歯98は、最も近い係合位置において凹部74の下向きの歯96に再度係合され、制御ノブ72は、所定の位置に再度ロックされる。
【0033】
アーム80は、直線運動の増幅のためのレバーアームとして機能する。例えば、外部チューブの1mmの移動のたびに、制御ノブ72の3mmの移動が必要とされる。この制御ノブ72の増幅されたまたはより長い移動は、チューブ変形のより微細な解像度を提供する。
【0034】
次に、ハンドル70のねじりノブ102を示す
図10を参照するが、このねじりノブ102は、次に説明されるように、内部チューブ12をその長手軸の周りで回転させることにより操向ツールの内部チューブ12および外部チューブ14のねじれ形状を制御するために使用される。
【0035】
内部チューブ14は、アダプタ104(
図8Aに見られる)によりねじりノブ102に接続され得る。アダプタ104はまた(
図8Aに見られるように)、コネクタ73を封止し得る。ハンドルの長手軸の周りでのねじりノブ102の回転運動が、内部チューブ12のその長手軸の周りでの回転運動を生じさせる。
【0036】
したがって、ハンドル70の制御ノブ72は、チューブ12および14の遠位部分を屈曲させるか湾曲させるかまたは他の形で変形させてそれにより操向ツールの操向および先端位置を制御するための、チューブマニピュレータとして機能する。ねじりノブ102は、チューブ間またはスロット間の位相シフトの量を変化させてそれによりチューブの遠位先端にねじれたまたは螺旋状の形状をもたらすための、位相シフトマニピュレータとして機能する。制御ノブ72の(例えば、遠位先端の操向および屈曲を生じさせるための)操作、および、ねじりノブ102の(例えば、ねじりトルクを生じさせるための)操作は、互いに独立したものであり、したがって、遠位先端の形状を任意の所望の3次元形状にする無限の可能性を外科医に提供する。ねじりトルクはまた、チューブの屈曲部分の剛性を変化させる。