(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、フラット状の載置面を有する複数のリンクをピンで連結したチェーンを、吸引部上を走行し、載置面に開口する吸着孔から被搬送物を吸着して搬送するバキュームコンベヤが知られている(特許文献1,2参照)。バキュームコンベヤ用のチェーンは、缶、ペットボトルの底面を載置面上に載置し、上記吸引部の負圧を吸着孔から上記載置面上の缶、ペットボトルに作用し、缶等を傾斜面、鉛直面に沿うように搬送することを可能とする。
【0003】
特許文献1のものは、フラット状のリンク(平板体)に同一径(ストレート状)の貫通孔(吸引孔)と位置決め用突起が形成され、傾斜した位置に配置された真空度の低い吸引ボックスを走行する際、上記吸引孔からの吸着力が低下した被搬送物であるペットボトルが自重によりずらされて、一定間隔あけて配置された上記位置決め用突起に当接して、該ペットボトルを搬送方向及び横方向に位置決めして揃える。
【0004】
特許文献2のものは、空のペットボトルを1列の直立状態で搬送するためのコンベヤであって、2列のトップチェーンによって移動方向の中央に溝状の吸引溝路を形成してある。これにより、1列状のペットボトルに対して、圧力損失を低減してボトル底部に対する吸着力が強くなり、ペットボトルを安定して搬送することを可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものは、フラット状のリンク(平板体)に形成された吸引孔が、その表面(載置面)から裏面(吸引ボックス側面)まで同一径のストレート状の貫通孔からなり、1列状の空のペットボトルであれば十分な吸着力を得ることが可能であるとしても、特に複数列の被搬送物及び缶等の比較的重い被搬送物を搬送する場合、吸着面積が小さいために十分な吸着力を得ることができず、安定した搬送ができない虞がある。
【0007】
特許文献2のものは、1列状の空のペットボトルを対象とするため、複数列の被搬送物が並ぶ可能性のある幅広のチェーン及び製缶工程に用いられるバキュームコンベヤ用チェーンの場合、適用は困難である。
【0008】
そこで、本発明は、被搬送物に対して十分な吸着力を有して、安定した搬送を可能とするバキュームコンベヤ用チェーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被搬送物を載置するフラット状の表面(A)と吸引部(6)に対向する裏面(B)とを有する複数のリンク(11)を連結部材(12)で無端状に連結したバキュームコンベヤ用チェーン(2)において、
前記リンク(11)に、前記表面(A)の開口面積(F)が大きく、前記裏面(B)側の開口面積(G)が小さい吸着孔(15)を複数個形成してなる、
ことを特徴とするバキュームコンベヤ用チェーンにある。
【0010】
例えば
図4,
図5を参照して、前記吸着孔(15)は、前記表面(A)側がテーパ部(15a)であり、前記裏面(B)側が前記テーパ部の最小断面積側端に連通した同一径のストレート部(15b)である。
【0011】
例えば
図2〜
図4を参照して、前記リンク(11)は、走行方向の前及び後側に前記連結部材(12)が挿通して連結する連結部(11d,11e)を有し、前記前及び後の連結部の間に前記フラット状の表面(A)を構成する板部(11b)を有し、
前記板部の前記裏面側に円筒部(11k)が一体に成形され、前記板部(11b)に前記吸着孔のテーパ部(15a)が形成され、前記円筒部(11k)に前記ストレート部(15b)が形成されてなる。
【0012】
前記吸着孔(15)は、前記表面(A)での開口面積をFとし、前記裏面(B)側での開口面積をGとして、
F/Gが4〜9の範囲にある。
【0013】
前記吸着孔(15)は、該吸着孔の軸方向全長をLとし、前記ストレート部(15b)の軸方向長さをMとして、
M/Lが、0.5
以上である。
【0014】
例えば
図1〜
図3を参照して、前記リンク(11,11
1,11
2)は、幅方向に3個以上並んで配置されて、前記表面(A)に幅方向複数個の被搬送物(9)を吸着し得る幅広のチェーン(2)を構成してなる。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載された構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本発明によると、吸着孔は表面の開口面積が大きいので、リンク表面に載置する被搬送物に対して大きな吸着面積で吸着して、被搬送物を安定して搬送することができる。また、上記吸着孔の裏面側開口面積は、比較的小さいので、吸引抵抗が大きくなり、被搬送物に接触しない吸着孔からの圧力低下を少なくして、比較的小さい吸引装置を用いて吸引部の真空度(低圧力)を維持して、被搬送物の安定搬送を保持することができる。
【0017】
また、吸着孔は、表面側がテーパ部からなり、裏面側が同一の径からなるストレート部からなるので、該ストレート部により吸引抵抗を高めて、吸着孔からの圧力低下を少なくして、例えば幅広のチェーンにより複数列の缶の搬送を安定して行うことができる。
【0018】
更に、テーパ部を有する板部の裏面側に円筒部を一体に成形し、該円筒部にストレート部を形成したので、所定長さのストレート部が容易に得られて、圧力低下を確実に防止することができ、かつ一体成形されたリンクの剛性を保持して、バキュームコンベヤ用チェーンの耐久性を向上することができる。
【0019】
請求項
2に係る本発明によると、吸着孔の吸着面積と吸引抵抗をバランスして、例えば製缶工程での缶の搬送を安定して維持することができる。
【0020】
請求項
3に係る本発明によると、吸着孔全長に対する、ストレート部の長さの割合を適正にして、吸着面積を維持しつつ吸引抵抗を適正な値に保持することができる。
【0021】
請求項
4に係る本発明によると、リンクを3個以上横方向に並べて配置した幅広のチェーンを用いて、横方向に複数個の被搬送物を吸着して効率的に缶等の被搬送物を搬送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。本発明を適用し得るバキュームコンベヤ1は、
図1に示すように、無端状のチェーン2が走行ガイドに案内され、かつスプロケット3,5の間を巻掛けられている。チェーン2は、フラット状の載置面を有する多数のリンクが屈曲自在に連結されており、上記スプロケット3,5の少なくとも一方の回転により駆動されて、走行ガイドに案内されて走行する。上記載置面を表面とすると、その裏面側に対向するようにかつチェーン2の搬送側に沿って、吸引室(吸引部)6…が配置されている。吸引室6には送風ファン等の吸引装置(負圧装置)7…が連通されており、該吸引装置7により吸引室6は所定負圧(大気圧より低圧)状態となっている。チェーン2の各リンクにはそれぞれ吸着孔が貫通して形成されており、上記吸引室6からの負圧が吸着孔を通して載置面(表面)上の缶等の被搬送物9に作用し、被搬送物9をチェーン2に吸着して搬送する。
【0024】
本実施の形態にあっては、吸引室6は、バキュームコンベヤ1の全搬送側に沿って連通した1個の室からなり、吸引装置7も1個としたが、これを複数に分割してもよい。例えば、吸引室は複数個に分かれており、それぞれ異なる吸引装置に連通している。これにより、チェーン2が水平面にある吸引室は、吸引装置の負圧を弱くしても、被搬送物が落ちたりずれることはなく、鉛直面に近い部分の吸引室は、吸引装置により強い負圧を作用して、被搬送物を強く吸着して自重による落下、ズレを防止し、その間の連絡部である傾斜面部分の吸引室に、吸引装置により中間の負圧を作用する。
【0025】
チェーン2は、
図2(A)〜(D)並びに
図3に示すように、リンク11(11
1,11
2)を横方向(幅方向)及び縦方向(走行方向)にピン12で連結して無端状に構成されている。リンク11は、長リンク11
1と短リンク11
2の2種類からなり、長リンク11
1は短リンク11
2の2倍の長さからなる。なお、長リンク11
1と短リンク11
2とは長さが異なることを除いて同じ形状なので、長リンク11
1と短リンク11
2と区別する必要がある場合を除いて単にリンク11と表記する。リンク11は、射出成形により成形された合成樹脂からなり、フラット状の表面Aからなる載置面11aを有する板部11bと、該板部11bの走行方向前及び後に形成されたピン孔11c(
図4参照)を有する連結部11d,11eとを備えている。前後の連結部11d,11eは、幅方向に所定間隔をあけて板部11bから交互に突出しており、各連結部が前後に隣接するリンクの連結部の間の空間11fに嵌め合せられる。これにより、横方向に整列した前後のリンク11の連結部11d,11eのピン孔11cにピン12が挿通して、リンク11が横方向及び縦方向に連結される。リンク11の端面にはプラグ13が係合し得る凹部11gに形成されており、上記ピン12の両端は上記凹部11gに係合されるプラグ13に嵌合してピン12が位置決めされる。
【0026】
本実施の形態にあっては、横方向に3個の長リンク11
1とその両端にそれぞれ1個の短リンク11
2とが組合せられた列11Aと、横方向に4個の長リンク11
1が並べられた列11Bとが前後方向に交互に揃えられて連結されている。これにより、複数のリンク11を横方向に並べた幅広のチェーン2にあっても、横方向に隣接するリンクの合せ目C,Dが前後のリンク列11A,11Bでずれることにより、横方向にリンクが離れる方向の力を担持する。即ち、各リンク11の連結部11d,11eが交互に噛合うことにより、各リンクが横方向に離れる方向の力が支持される。
【0027】
各リンク11の表面Aの載置面11aと反対側の裏面B側(
図2(C)参照)には互い違いに突出する前後の連結部11d,11eの端部を連結するようにリブ11h,11hが板部11bから突出して形成されている。これにより、板部11bの裏面Bは、前後の各連結部毎に所定凹部11iが形成されている。該リンク裏面Bの横方向に仕切られた多数の凹部11iは、所定の間隔で円筒部11kが板部11bの裏面から突出するように一体成形されており、残りの凹部11iは空間となっている。これら円筒部11kを有する凹部と空間となる凹部11iとは、前後方向に揃えられ、空間となる凹部11iの所定列にスプロケット3,5の歯が係合して、チェーン2は駆動される。
【0028】
リンク11の板部11bの上記円筒部11kと対応する位置には吸着孔15が形成されている。吸着孔15は、
図4に示すように、板部11b部分がテーパ部15aとなっており、該テーパ部は載置面11aに開口し、該開口面積が大きく、板部11bの裏面側の断面積が小さい。上記吸着孔15は、上記円筒部11kの所定長さの内周面からなる同一径のストレート部15bを有しており、該ストレート部15bは、上記テーパ部15aの最小断面積部に連通して同一径で裏面B側に延び先端で開口している。該吸着孔15の裏面開口部は、リンク11の裏面Bまで又は僅かに短い位置まで延びている。なお、走行方向前後は、チェーン2のコンベヤ1への装着により異なるため、仮に規定したものであり、前後はどちらでもよい。
【0029】
上記吸着孔15は、
図5に示すように、板部11bに形成されたテーパ部15aと円筒部11kに形成されたストレート部15bからなる。該吸着孔15の表面側の開口は、テーパ部15aの最大面積(開口面積)Fであり、裏面側の開口は、テーパ部15aの最小面積に連通し、該最小面積と同じ径のストレート部15bが延びており、従って裏面B側に開口する開口面積は、ストレート部15bの内径断面積Gである。本実施の形態であっては、吸着孔15の両端開口の面積比、F(例えばφ7)/G(例えばφ3)は、約5.44である。板部11bの板厚はt(例えば2.3mm)であり、該板部に形成されたテーパ部15aの軸方向長さNは上記板厚tより小さい値である(N<t)。即ち、テーパ部15aは板部11bの表面A側に形成され、円筒部11kに形成されたストレート部15bは僅かに板部11bの板厚部分に延び、テーパ部15aにその最小面積Gで連通している。本実施の形態にあっては、上記テーパ部15aの軸方向長さNは、例えば1.5mmである。板部11bの裏面に一体形成されている円筒部11kは、リンク11の板厚T(例えば9mm)と同じ長さまで延びており、吸着孔15の軸方向全長Lは、上記リンク厚Tと実質的に同じであり、ストレート部15bの長さMは、T−N(9−1.5)で、7.5mmとなる。従って、本実施の形態による吸着孔15の全長Lに対するストレート部15bの軸方向長Mの比M/Lは、約0.83である。なお、テーパ部15aの軸方向長さNは、板厚tとほぼ同一であってもよい。また、テーパ部15aの軸方向長さNは、板厚tよりも大きい、つまり、テーパ部15aにおけるストレート部15bに連通する部分は、円筒部11kに形成されてもよい。
【0030】
本実施の形態によるバキュームコンベヤ1は、チェーン2の載置面に缶等の被搬送物9を載置して走行する。吸引装置7により負圧が与えられている吸引室6上を走行する際、チェーン2のリンク11に形成された吸着孔15により載置面上の被搬送物が吸着されて、傾斜面及び鉛直面にあっても、被搬送物を落としたりずらしたりすることなく安定して搬送する。
【0031】
リンク11に形成された吸着孔15は、上記載置面11aである表面Aにテーパ部15aの大きな面積Fで開口しており、吸引室6からの負圧は、上記吸着孔15の大きな開口面積Fにより缶等の被搬送物9に作用する。吸着孔15は、
図2(A)に示すように、走行方向である縦方向及び幅方向である横方向に多数設けられており、被搬送物9が載置(吸着)されない吸着孔15も多数存在する。これら吸着されない吸着孔15から空気が吸引室6に吸引され、吸引室6の負圧(低圧)を弱くするが、上記吸着孔15は、吸引室6に対向する側である裏面B側の開口は小面積Gからなり、該吸着孔15を通る空気の流れに対して抵抗力を生じる。更に、上記吸着孔15の裏面B側は、上記小面積Gの断面積からなるストレート部15bとなっており、該ストレート部の軸方向長さMは、吸着孔15の全長Lに対して8割程度の長さの小面積断面となって、大きな吸引抵抗を発生する。
【0032】
これにより、吸引室6の圧力低下(大気圧との差)を小さく保持したまま、上記小面積Gのストレート部15bの断面積(裏面側開口面積)に対して5倍強の大きな面積Fからなる表面開口により缶等の被搬送物9は強く吸着されて、例え鉛直面であっても安定して搬送することができる。また、上記大きな吸着面積及び低い圧力低下により、その分吸引室6に負圧を与える吸引装置7を小型かつ省エネルギのものを用いることが可能となる。特に、本実施の形態のように、横方向に一列状に32個の吸着孔15を備えた幅広のチェーン2にあっても、上記大きな吸着面積及び低い圧力低下による強い吸着力を保持して缶等の被搬送物を横方向に複数個載置して高い効率で被搬送物を搬送することが可能となる。
【0033】
図6は、各種形状の吸着孔による吸着力を解析して比較した表である。該解析は、各形状の吸着孔を通過する風量を一定にさせ、その時の風速及び圧力分布を算出した。その結果、各吸着孔の両開口部分の圧力差を解析し、該圧力と吸着孔の表面側となる開口面積の積を吸着力として算出した。No.1は、板部11bの板厚tと同じ長さで、裏面B側の開口面積Gと同じ断面積のストレート状の貫通孔からなる吸着孔で、圧力低下は少ないが、吸着面積が小さく、十分な吸着力が得られない。No.2は、同じく、小さな断面積Gからなり、リンク11の厚さTと同じ厚さからなるストレート状の吸着孔で、圧力低下は更に小さくなるが、吸着面積が小さいため、十分な吸着力が得られない。
【0034】
No.3は、板部11bの板厚tと同じ長さで、表面に大面積Fからなる開口を有し、裏面に小面積Gからなる開口を有するテーパ部からなる吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下が少し大きいが、吸着面積が大きく、比較的良い吸着力を有する。No.4は、リンク11の板厚Tと同じ長さからなり、表面に大面積F、裏面に小面積Gからなる開口を有するテーパ部からなる吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下は上記No.3に比して若干大きくなるが、大きな吸着面積を備え、上記No.3より僅かに劣るが比較的良い吸着力を有する。
【0035】
No.5は、表面側にテーパ部を有し、裏面側にストレート部を有する吸着孔からなる。該吸着孔は、テーパ部の軸方向長さが板部11bの厚さtであり、表面開口が大面積Fからなり、吸着孔の全長はリンク11の全長L(=T)と同じであり、その断面積は小面積Gと同じである。該吸着孔は、小さな圧力低下と大きい吸着面積とを備え、強い吸着力を有する。No.6は、前述した本発明の実施の形態に相当するものであり、表面側が大面積Fの開口を有し、長さが板部11bの板厚tより小さい(N)テーパ部からなり、裏面側が長さMからなるストレート部を有する吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下が小さく、大きな吸着面積を備え、No.5より大きな強い吸着力を有する。
【0036】
No.7は、表面に小さな面積Gからなる開口を有し、裏面に大きな面積Fからなる開口を有する逆テーパの吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下が大きく、吸着面積を小さく、吸着力は、小さい。No.8は、表面に小面積Gより僅かに大きい開口を有し、裏面に小面積Gの開口を有し、長さがリンク11の厚さTと同じで、小さい傾斜角の逆テーパからなる吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下はそれほどでもないが、吸着面積が小さいため、十分な吸着力は得られない。No.9は、断面が6角形で、長さが板部11bの厚さtからなるストレート状の吸着孔である。該吸着孔は、圧力低下は低いが、吸着面積が小さく、十分な吸着力は得られない。なお、上述した吸着孔、特にNo.2,No.4,No.5,No.6,No.7,No.8に示すリンク11の厚さTと同じ長さからなるものは、板部に円筒部を一体成形したものでもよいことは勿論である。
【0037】
図7は、上記
図6に示す解析結果を示すグラフである。該グラフから明らかなように、No.3,No.4,No.5,No.6のものが、他のものに比して際立って大きな吸着力を有し、十分な吸着力を備えるが、特にNo.5,No.6のテーパ部とストレート部からなる吸着孔が優れている。
【0038】
ついで、
図8,
図9に沿って、従来の技術である
図6のNo.1の吸着孔と、本発明の実施の形態の吸着孔15(No.6参照)とを比較した試験について説明する。まず、試験装置について
図8に沿って説明する。試験装置20は、脚21により支持された吸引室22を有する。吸引室22の下部にはモータ23を備えた吸引ファン25が設けられている。吸引室22の上面にはチェーンに相当する測定用治具26が取付けられる。該測定用治具26には同じ数の各種形状の吸引孔が形成された複数のものが用いられ、本試験には、上記No.1による従来の技術の吸着孔の測定用治具と本実施の形態による吸着孔(No.6参照)の測定用治具が用いられる。該測定用治具26の上方には被吸着物27が載置される。該被吸着物27の上方にはロッド29aを介してフォースゲージ(吸着力測定装置)29が配置されている。
【0039】
上記試験装置20を用いて吸引室22の負圧を変化して、上記No.1の吸着孔を有する測定用治具26と上記No.6による本発明の吸着孔を有する測定用治具26とを測定した。これら測定用治具26の吸着孔による被吸着物27の吸着力がフォースゲージ29により測定される。測定結果を
図9に示す。負圧の低い側での従来の技術に対する本発明の吸着孔による吸着力Jは約40%アップし、負圧の大きい側での吸着力Kは約60%アップした。
【0040】
図10は、本発明の実施の形態による各種吸着孔15の概略を示す。本発明による吸着孔は、表面Aの開口面積が大きく、裏面B側の開口面積が小さい。
図10(A),(B)は、テーパ部15aのみからなる吸着孔15
2,15
3を示す。(A),(B)は、吸着孔の軸方向長さ、従ってテーパ角が異なるものであり、(A)の吸着孔15
2の長さは板部11bの板厚tであり、(B)の吸着孔15
3の長さはリンク11の厚さTである。
【0041】
図10(C),(D)は、吸着孔がテーパ部とストレート部からなる吸着孔15
1,15
2を示す。(C),(D)は、テーパ部とストレート部の長さの比が異なるものであり、(C)の吸着孔15
1は、(D)の吸着孔15
2に対してストレート部15bの長さ割合が大きい。
図10(E)に示す吸着孔15
4は、表面A側の開口面積の大きい部分がテーパ部ではなく、大径の円筒孔15cからなり、ストレート部15bは、該円筒孔15cの底面に連通し、断面積の小さい円筒孔からなる。なお、上記
図10(B)〜(E)の吸着孔は、リンクの板厚Tに相当する長さからなるが、円筒部により吸着孔特にストレート部が形成されてもよい。また、
図10(A)〜(E)の吸着孔は、長さが板部の板厚t又はリンクの厚さTに限るものではなく、任意の長さでもよい。また、表側の開口面積が面積Fに限らず、裏面側の開口面積も面積Gに限らない。
【0042】
なお、上述した実施の形態は、多数のリンク11を幅方向に連結した幅広のチェーンについて説明したが、これに限らず、チェーンの幅はどのようなものにも適用可能である。また、吸着孔の断面は円形からなるが、これに限らず、多角形、楕円、長円等の他の断面形状でもよい。
【0043】
また、吸着孔の表面の開口面積Fと裏面側の開口面積Gとの比F/Gは、5.44に限らず、所定範囲、例えば4〜9の範囲であればよい。上記比F/Gが、4以下であると吸着面積が不足し、また9以上であると、吸着孔の吸引抵抗が大きくなり過ぎ、十分な吸着力を得ることができない。吸着孔の軸方向全長Lに対するストレート部の長さMの比M/Lは、0.83に限らず、所定範囲、例えば0.5〜0.8の範囲であればよい。上記比M/Lが0.5以下であると、十分な吸引抵抗が得られず、0.8以上であると、表面側の大面積部分(テーパ部)の長さが確保できず、該表側での滑らかな流体の流れに支障を来す虞がある。