(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゼオライトは、CHA(chabazite)、MOR(mordenite)、NaA、NaX、FAU(faujasite)、LTA(Linde Type A)、ANA(analcime)、LTL(Linde Type L)、EMT(EMC−2)、MFI(ZSM−5)、FER(ferrierite)、HEU(heulandite)、BEA(Beta polymorph A)及びMTW(ZSM−12)からなる群より選択される一つ又はこれらの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の放射性核種吸着剤。
【背景技術】
【0002】
現代人類が用いるエネルギー量が大きく増加するによって化石エネルギーを代替する新しいエネルギー源の開発が重大な事案と判断されており、そのうち原子力エネルギーは、既に多い国で広く利用されている。しかし、原子力発展は、核燃料の使用後に発生する年間数千トンの放射性廃棄物及び核燃料の再処理などのような問題を伴っており、実際に原子力関係施設の運転補修及び放射性同位元素の使用過程で発生する放射線同位元素セシウム(
137Cs
+)及びストロンチウムイオン(
90Sr
2+)は、高い水溶性を有しており、核分裂エネルギーが高く、半減期が約30年として長いので(Delacroix,D.;Guerre,J. P.; Leblanc,P.; Hickman,C. Radionuclide and Radiation Protection Data Handbook 2002.Radiat.Prot.Dosim.2002、98、1−168)これらを安全に処理及び貯蔵することは非常に重要な事項である。
【0003】
放射性廃棄物は、放射能準位によって高準位及び低準位放射性廃棄物に分けられ、低準位放射性廃棄物は、その形態によって気体、液体、固体に区分し、そのうち液体廃棄物は、沈澱、蒸発濃縮、吸着及びイオン交換法を通じて濃縮してドラム缶に入れて固めるか化学的に処理した後、大量の水で希釈して放流する(El−Kamash,A.M.;El−Naggar,M.R.:El−Dessouky,M.I.Immobilization of Cesium and Strontium Radionuclides in Zeolite−Cement Blends.J.Hazard.Mater.2006、136、310−316)。このとき発生する地下水及び海水にとけている微量のセシウムイオン(
137Cs
+)を除去するための研究が持続的に行われており、水溶液で放射性核種の除去に無機イオン交換物質及び高分子イオン交換樹脂などを用いることが当技術分野に知られている。
【0004】
特に、無機イオン交換物質は、膨大な量の熱と放射性条件下でも安定であるので(Sylvester,P.:Clearfield,A.The Removal of Strontium and Cesium from Simulated Hanford Groundwater Using Inorganic Ion Exchange Materials。Solvent Extr.Ion Exch.1998、16、1527−1539)、放射性核種吸着剤として広く用いられてきた。代表的な例としては、ゼオライト、クレー(clays)、そして多孔性金属酸化物系(metal oxidic sorbents)物質がある。ゼオライト及びクレーは、低価であるため、常用吸着剤として広く用いられているが、高い濃度の競争イオン条件で放射性核種に対して比較的低い吸着選択性を示すと知られている(Sinha,P.K.;Panicker,P.K.;Amalraj,R.V.;Krishnasamy,V.Treatment of Radioactive Liquid Waste Containing Caesium by Indigenously Available Synthetic Zeolites:A Comparative Study。Waste Manage。1995、15、149−157)。その外にも最近には、より高い選択性を有する多様な無機イオン交換物質が報告された。その例として、シリコンチタネート(silicon titanates、US6110378A)、結晶質チタン化ケイ素(crystalline silicotitanate、CST、UOP IE−911)、バナドシリケート(vanadosilicate、WO2015129941A1)、金属硫化物(metal sulfides、US9056263B2)、金属ヘキサシアノフェレート(metal hexacyanoferrates、EP0575612A1)などを言及することができる。特に、このうち結晶性チタン化ケイ素(CST、crystalline silicotitanate)は、最近福島原電の事故時に流出された放射性核種の除去に適用された物質であって、広いpH範囲で化学的に安定であり、多様な競争イオンの存在下で高いセシウム(Cs
+)及びストロンチウムイオン(Sr
2+)の吸着選択性を示すと知られている。しかし、このようなイオン交換物質は、多様な転移金属(Sn、Sb、In、Ge、V、Tiなど)を含み、既存のゼオライト及びクレーに比べて高価であり、製造方法が複雑なので、応用に多い制約が存在する。したがって、地下水及び海水に存在する多量の競争イオンの存在下で放射性核種の選択的除去が可能な経済的なイオン交換物質に対する技術開発が必要な状況である。
【0005】
さて、本発明者らは、陽イオン交換性質を有したゼオライトに硫黄(sulfur)を混合して硫黄−ゼオライト複合体を製造することで、競争イオンの条件下で放射線核種であるセシウムイオン(Cs
+)及びストロンチウムイオン(Sr
2+)に対して高い吸着選択性を有した吸着剤とその製造方法を提供しようとする。また、これを用いて多量の競争イオン条件及び実際に地下水に存在する競争イオンの存在下で微量のセシウムイオン(Cs
+)及びストロンチウムイオン(Sr
2+)を選択的に除去する方法を提供しようとする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。本発明の目的、特徴、長所は、以下の実施例を通じて容易に理解される。本発明は、ここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化され得る。ここで紹介される実施例は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供されるものである。したがって、以下の実施例によって本発明が制限されてはいけない。
【0018】
他の方式で定義しない限り、本明細書で用いられたすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練された専門家により通常的に理解されることと同一な意味を有する。一般的に、本明細書で用いられた命名法は、本技術分野でよく知られており、通常的に用いられる方法である。
【0019】
本発明の硫黄−ゼオライト複合体は、硫黄(sulfur)及びゼオライトの混合物を熱処理してゼオライトに硫黄を均一に分散させて製造し、このように形成された複合体は、既存のゼオライトに比べて地下水や海水の多様な競争イオン(例えば、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+)の存在下でも一層選択的に放射性セシウムイオン(Cs
+)及びストロンチウム(Sr
2+)を除去することができることを見つけ、本発明を完成するに至った。
【0020】
CsとSrのような放射性物質を処理するために液液抽出法、沈澱法、吸着法などのような多様な方法が研究されて来た。液−液抽出は、金属イオンに対する選択性が高くて除去能に優れるが、多量の有機溶媒を必要とし、溶解度のため液状で有機溶媒が損失される恐れがあるという短所を有している。沈澱法は、凝集剤又は沈澱剤を加えて金属イオンを沈澱させる方法であって、凝集剤と生成物の回収及び凝集剤を繰り返し使用し、沈澱分離において長時間が所要される短所がある。一方、吸着法は、他の工程に比べて低いコストと操作が簡便であると知られており、吸着剤としては、活性炭、イオン交換樹脂、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、クレー(clays)などが代表的に広く用いられている。しかし、このような吸着剤は、高い濃度の競争イオン条件で放射性核種に対して比較的低い吸着選択性を示す問題があった。
【0021】
上記のような問題点を解決するために、本発明は、硫黄とゼオライトの混合物を熱処理して放射性核種吸着剤を製造する方法を提供する。また、ゼオライト内に硫黄が分散された形態の硫黄−ゼオライト複合体を含む放射性核種吸着剤を提供する。
【0023】
本発明は、硫黄とゼオライトの混合物を熱処理するステップを含む放射性核種吸着剤の製造方法を提供する。前記放射性核種は、セシウム又はストロンチウムの二つのうち一つ以上を含むことができる。
【0024】
硫黄とゼオライトの混合物の製造ステップ
前記混合物を製造する前に、ゼオライトは、熱処理を通じて水分子(water molecules)を除去することができるが、これに制限されるものではない。
【0025】
前記混合物は、硫黄とゼオライトを物理的に混合して製造することができる。前記ゼオライトと硫黄(sulfur)を物理的に混合する過程は、元素硫黄(elemental sulfur)を用いることが好ましいが、これに制限されるものではなく、1種以上の硫黄分子(sulfur molecules)を含む混合物と接触して行うことができる。
【0026】
前記方法で、硫黄とゼオライトの混合物の全体重量(100重量%)を基準で硫黄を1〜25重量%又は3〜20重量%で混合することができる。硫黄−ゼオライト複合体中の硫黄の含量が増加するほどセシウムイオンの吸着に有利であるが、約24〜25重量%の硫黄が含まれる場合、ゼオライトのうち最も比表面積が広いNaXの比表面積がほとんど0に近い値になるので、前記上限の範囲がゼオライト内に熱処理(昇華)により硫黄が混入され得る最大量であってもよい。したがって、硫黄の量を前記範囲内で混合することが経済的であり、また、硫黄の含量が1重量%未満である場合には、放射性核種のイオン選択性の増進が微弱である問題がある。
【0027】
また、前記方法で、硫黄とゼオライトの混合物の全体重量(100重量%)を基準で硫黄を4〜12重量%で混合することができる。前記複合体内に硫黄の含量が増加するほどセシウムイオンの吸着には有利であるが、ストロンチウムイオンの吸着には不利な場合があり、前記範囲を維持する場合、最も効率的にセシウムイオンとストロンチウムイオンの同時除去が可能である。
【0028】
前記ゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトであってもよい。本願で用いられる用語「アルミノシリケートゼオライト」とは、その結晶格子の構造内にケイ素原子及びアルミニウム原子を必須的に含むゼオライト物質を意味する。
【0029】
より具体的に、前記ゼオライトは、CHA(chabazite)、MOR(mordenite)、NaA、NaX、FAU(faujasite)、LTA(Linde Type A)、ANA(analcime)、LTL(Linde Type L)、EMT(EMC−2)、MFI(ZSM−5)、FER(ferrierite)、HEU(heulandite)、BEA(Beta polymorph A)及びMTW(ZSM−12)の構造からなる群より選択される一つ又はこれらの組合せであってもよい。
【0030】
前記アルミノシリケートゼオライトのシリコン(Si)/アルミニウム(Al)のモル(mole)比は、1〜100であってもよく、より好ましくは、1〜20であってもよい。モル比が1未満であるゼオライトは存在せず、100を超過するときには、硫黄の分散が不均一である。
【0031】
熱処理
前記熱処理を通じて硫黄を昇華させて、ゼオライト内に硫黄が均一に分散された形態の硫黄−ゼオライト複合体を製造することができる。
【0032】
前記熱処理温度は、50〜700℃であってもよく、好ましくは、90〜500℃であってもよく、より好ましくは、130〜400℃、さらに好ましくは、150〜350℃であってもよい。熱処理温度が50℃未満であるときには、硫黄の分散が不均一であり、700℃を超過するときには、硫黄が蒸発する問題がある。
【0033】
前記熱処理は、1〜48時間の間行うことができる。
【0034】
前記熱処理ステップは、第1熱処理ステップ及び第2熱処理ステップで構成され得る。
【0035】
また、本発明は、ゼオライト内に硫黄が分散された形態の硫黄−ゼオライト複合体を含む放射性核種吸着剤を提供する。
【0036】
前記複合体は、複合体の全体重量(100重量%)を基準で1〜25重量%、又は3〜20重量%の硫黄を含むことができる。硫黄の含量が増加するほどセシウムイオンの吸着に有利であるが、約24〜25重量%の硫黄が含まれる場合、ゼオライトのうち最も比表面積が広いNaXの比表面積がほとんど0に近い値になるので、前記上限の範囲がゼオライト内に熱処理(昇華)により硫黄が混入され得る最大量であってもよい。
【0037】
また、前記複合体は、複合体の全体重量(100重量%)を基準で4〜12重量%の硫黄を含むことができる。前記複合体内に硫黄の含量が増加するほどセシウムイオンの吸着には有利であるが、ストロンチウムイオンの吸着には不利であり、前記範囲を維持する場合、最も効率的にセシウムイオンとストロンチウムイオンの同時除去が可能である。
【0038】
前記ゼオライトは、CHA(chabazite)、MOR(mordenite)、NaA、NaX、FAU(faujasite)、LTA(Linde Type A)、ANA(analcime)、LTL(Linde Type L)、EMT(EMC−2)、MFI(ZSM−5)、FER(ferrierite)、HEU(heulandite)、BEA(Beta polymorph A)及びMTW(ZSM−12)からなる群より選択される一つ又はこれらの組合せであってもよい。
【0039】
前記複合体は、複合体の全体重量(100重量%)を基準で1〜25重量%の硫黄を含むことができ、この場合、吸着する放射性核種は、セシウムイオンであってもよい。ここで、ゼオライトは、NaXであってもよい。
【0040】
また、前記複合体は、複合体の全体重量(100重量%)を基準で4〜12重量%の硫黄を含むことができ、この場合、前記放射性核種は、セシウム及びストロンチウムであってもよい。ここで、ゼオライトは、CHA(chabazite)であってもよい。
【0041】
前記複合体は、硫黄とゼオライトの混合物に対する熱処理を通じて硫黄を昇華させることで製造され得る。
【0042】
また、本発明は、硫黄とゼオライトの混合物を熱処理して製造した硫黄−ゼオライト複合体をセシウムイオン又はストロンチウムイオンを含む溶液に接触させて放射性核種を吸着するステップを含む放射性核種の除去方法を提供する。
【0043】
前記方法は、硫黄−ゼオライト複合体を吸着剤で用い、これを水溶液に分散させるか又は固定層(packed bed)で用いてセシウム(Cs
+)及びストロンチウムイオン(Sr
2+)などの放射性核種を除去することができる。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0045】
<実施例>
実施例1:硫黄−ゼオライト複合体(放射性核種吸着剤)の製造
チャバサイト(Chabazite、「CHA」と名付け)、NaA、NaX、モルデナイト(mordenite、「MOR」と名付け)のゼオライトをそれぞれ2gずつ0.222gの硫黄と室温で30分間混合した。その後、この混合物を433Kで1時間の間、593Kで10時間の間熱処理して、硫黄−ゼオライト複合体を合成した。上記のように製造されたサンプルをそれぞれ「S−CHA」、「S−NaA」、「S−NaX」、「S−MOR」と名付けた。
【0046】
<実験例>
実験例1:X線−回折パターンの分析
ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体の結晶構造をXRD(X−raydiffractometer、Rigaku、D/MAX2100H)を用い分析し、
図2にゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体のX−線回折分析(X−ray diffraction analysis、XRD)結果を示した。全ての硫黄−ゼオライト複合体は、該当ゼオライトと同一の位置の2θで強い回折ピークを示した。これは硫黄−ゼオライト複合体の製造過程でゼオライト骨格が崩れないことを意味する。また、元素硫黄に該当する回折ピークは現われなかったが、これは硫黄が非常に均一で小さくゼオライト内に分散されていることを意味する。
【0047】
実験例2:硫黄−ゼオライト複合体の元素分布の分析
図3は、硫黄−ゼオライト複合体の透過電子顕微鏡の暗視野像(Dark Field image)イメージ及びエネルギー分散分光法(Energy Dispersive Spectroscopy、EDS)で分析した元素分布結果を示した写真である。(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれS−NaA、S−NaX、S−CHA、S−MORを示し、黄色はシリコン(silicon)、赤色は硫黄(sulfur)、青色はナトリウム(sodium)、緑色はアルミニウム(aluminum)元素(element)に対する分布を示す。全てのサンプルで硫黄がゼオライト結晶に均一に分布したことが確認できる。
【0048】
実験例3:水溶液でゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体のセシウムイオン(Cs+)除去能力の評価
実施例1で製造されたゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体のセシウムイオン(Cs
+)除去性能を下記のような水溶液イオン交換方法で評価した。全てのイオン交換吸着実験は、常温でセシウムイオン(Cs
+)100ppmを含む水溶液(CsClを用いて製造)200mLに0.02g〜0.3gに該当するゼオライト又は硫黄−ゼオライト複合体を接触し、3時間の間400rpmの速度で撹拌しながら進行した。撹拌後の溶液のCs
+濃度は、誘導結合プラズマ質量分析器(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)を通じて測定した。
【0049】
図4は、ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体をセシウムイオン(Cs
+)100ppmを含んでいる水溶液に接触したときに得られたイオン交換等温線(ion−exchange isotherm)である。全てのイオン交換吸着実験で、ゼオライトに比べて前記方法によって製造された硫黄−ゼオライト複合体のイオン交換等温線の傾斜が低濃度のCs
+存在下でより急である。これは、セシウムイオン(Cs
+)に対する選択性が硫黄−ゼオライト複合体が該当ゼオライトに比べて顕著に高いことを意味する。
【0050】
表1は、
図4のイオン交換等温線をLangmuir吸着モデルを用いて分析した吸着量(q
max、mgg
zeolite−1)及び吸着整数(b、kg mg
−1)を整理した表である。前記製造された硫黄−ゼオライト複合体の吸着整数が各該当ゼオライトに比べて278〜440%増加したことから、硫黄−ゼオライト複合体のセシウムイオン(Cs
+)に対する選択性がゼオライトに比べて大きく上昇したことが分かる。
【0052】
図4及び表1に示したように、硫黄と複合材料で作ったゼオライト(S−NaA、S−NaX、S−CHA、S−MOR)が該当純粋ゼオライト(NaA、NaX、CHA、MOR)に比べてイオン交換等温線が低い濃度のCs
+でより急に上がり、これにより、一層増進された吸着整数(b、kg mg
−1)を示すことが分かる。この結果は、ゼオライトに分散させた硫黄がイオン交換時にCs
+に対する吸着選択性を増進させたことを意味する。
【0053】
実験例4:ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体の地下水組成でセシウムイオン(Cs+)又はストロンチウムイオン(Sr2+)除去能力の評価
セシウムイオン(Cs+)除去能力の評価
実施例1で製造されたゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体のCs
+除去能力を実際の地下水組成と類似な水溶液でのイオン交換方法で評価した。放射性核種に汚染された地下水条件と類似な(Datta,S.J.;Moon,W.K.;Choi,D.Y.;Hwang,I.C.;Yoon,K.B.A Novel Vanadosilicate with Hexadeca−Coordinated Cs
+ Ions as a Highly Effective Cs
+ Remover。Angew.Chem.Int.Ed.2014、53、7203−7208)1ppm Cs
+、125ppm Na
+、25ppm Ca
2+、10ppm Mg
2+、5ppm K
+を含む溶液をCsCl、NaCl、CaCl
2・2H
2O、MgCl
2・6H
2O、KClを用いて製造した。イオン交換実験は、常温で前記水溶液200mLに0.1gのゼオライト及び0.111gの硫黄−ゼオライト複合体(10%重量の硫黄が含まれた0.111gの硫黄−ゼオライト複合体内のゼオライト重さは、0.1gであるので、硫黄がいない一般ゼオライト0.1gと同一な体積を有する条件である、今後の吸着実験でも多様な%重量の硫黄が含まれた硫黄−ゼオライトの重さは全てゼオライトの重さが同一な条件で実験する。これは、硫黄が含まれた硫黄−ゼオライト複合体がゼオライトに比べて硫黄の重さほどさらに重くなるが、硫黄はゼオライト気孔中に入るので硫黄の有無と関係なく硫黄−ゼオライトの体積変化はなく、実際にコラム適用や使用後の放射性廃棄物の処分時に、吸着剤の重さよりは体積がさらに重要な因子であるので、全ての吸着実験を同一な体積で比較するためにゼオライトの重さを同一にして実験する)を接触し、3時間の間400rpmの速度で撹拌しながら進行した。
図5(a)は、ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体を放射性Cs
+が汚染された地下水と類似な組成(1ppm Cs
+、125ppm Na
+、25ppm Ca
2+、10ppm Mg
2+、5ppm K
+)の溶液に接触させたときのCs
+の分配係数(K
d、mL g
zeolite−1)及びイオン除去率(Cs
+ removal、%)を示す。
図5(a)に示したように、全ての硫黄−ゼオライト複合体が各該当ゼオライトに比べて数等高い分配係数(K
d、mL g
zeolite−1)及び増進されたセシウムイオン除去率(Cs
+ removal、%)を示すことが分かる。これは、HSAB理論によることで、Cs
+が競争イオンである地下水内のNa
+、Ca
2+、Mg
2+、K
+に比べて一層ソフト(more soft/less hard)な酸(acid)であるため、ソフト塩基(soft base)である硫黄と化学的親密度が高くて競争イオンが多い地下水条件でもCs
+除去性能が向上することで、他の種類のゼオライトに対しても同じ効果が予想される。
【0054】
ストロンチウムイオン(Sr2+)除去能力の評価
ゼオライトは、基本的に2価イオン(重金属及びSrなど)とイオン交換がよく行われる物質と知られているので、Cs
+外の重要放射性核種であるSr
2+に対して除去特性を分析し、その結果を
図5(b)に示した。
図5(b)は、実施例1で製造されたゼオライト及び硫黄‐ゼオライト複合体(複合体の全体重量を基準で10重量%の硫黄が含まれる、10S−Zeolite)のSr
2+除去能力を実際の地下水組成と類似な組成(1ppm Sr
2+、125ppm Na
+、25ppm Ca
2+、10ppm Mg
2+、5ppm K
+)の水溶液でのイオン交換方法で評価した。
図5(b)に示したように、硫黄が含まれた4種の硫黄−ゼオライト複合体のSr
2+に対する除去率及び分配係数(K
d)値が多少低下されることで確認された。これは、HSAB理論によることで、Srが基本的にハード酸(hard acid)であるため、ソフト塩基(soft base)である硫黄と化学的親密度が低くて硫黄がたくさん含まれたゼオライトとイオン交換反応がよく行われないことと判断される。
【0055】
硫黄(S)の量とセシウム(Cs)除去効果の関係分析
前記実験結果によると、硫黄(S)が添加される場合、セシウム(Cs)の除去には有利であると確認された。硫黄(S)の量とセシウム(Cs)除去効果の関係を確認するために硫黄の量を増やしながらセシウム(Cs)除去特性の変化をNaXゼオライトを用いて分析した。
【0056】
硫黄−NaXゼオライト複合体の全体重量を基準で硫黄が9.4重量%、17重量%、24重量%が入ったS−NaXを製造した後、それぞれのXRD、比表面積及びTEMイメージを分析し、その結果を
図6に示した。Subは、Sublimation昇華の略字として、硫黄とNaXを混合した後、硫黄を昇華(熱処理)させてNaX気孔内に硫黄を均質に飽和させた状態である。Physは、硫黄を昇華させないでゼオライトと硫黄を物理的に混合させたものであって、この場合、毛細管現象によって硫黄が不均質に混合される(
図6の(c)、(d))。
図6(b)の比表面積分析結果、硫黄が24wt%に入る場合、表面積が0に近い10m
2/gになるが、これはNaXの場合、24wt%が昇華により入られる最大量という意味である。ただし、ゼオライト別に比表面積が異なるため、入られる硫黄の最大量が異なると予想される。
【0058】
下記4種類のゼオライトのミクロ孔容積(micropore volume)の大きさ順序は、NaX > NaA > CHA〜MORとしてNaXが最も多いSが入られるので、他のゼオライトに対する硫黄の最大封入量の順序は、ミクロ孔容積の大きさ順序と同一なNaX > NaA > CHA〜MORであり、ゼオライト重量に対する硫黄の封入量は、約15〜25%の重量と予想される。
【0060】
硫黄(S)が含まれない一般ゼオライトと硫黄−ゼオライト(S−Nax)複合体(9.4、17、24重量%の硫黄を含み)をそれぞれゼオライトの重さを基準で100mgを(例えば、24%重量の硫黄が含まれた硫黄−ゼオライトは、131.6mgを用いるとゼオライトの重さを基準で100mgになる)を用い、Cs
+ 1ppm及びCs
+に対して最大50倍モルのCa
+、Na
+が含まれた蒸溜水200mLで、Cs
+除去率及び分配係数(K
d)値を分析し、その結果を
図7に示した。
【0061】
図7に示したように、硫黄がたくさん添加されるほどCs
+に対する除去率及び分配係数(K
d)値が上昇することで確認された。これは、HSAB理論によることと判断される。熱処理なしに物理的混合のみを行った場合、一般NaXに比べてCs
+除去率及びK
d値が上昇したが、硫黄が非均質的に分散されているので、熱処理を行った複合体よりは性能が落ちることで確認された。また、24重量%の硫黄が含まれたS−NaX複合体の性能が最も良いと確認された。
【0062】
Sr2+及びCs+の同時除去に適合な硫黄の含量分析
硫黄−ゼオライト複合体に硫黄(S)がたくさん含まれるほどCs
+の除去には有利であるが、Sr
2+の除去には有利ではない。これによって、Sr
2+及びCs
+の同時除去に適合な硫黄の含量をさがすために下記実験を行った。
【0063】
硫黄−ゼオライトの全体重量を基準で10重量%、5重量%の硫黄が含まれた硫黄(S)−ゼオライト(CHA)複合体及びゼオライト(CHA)をそれぞれゼオライトの重さを基準で10mgを(例えば、10%重量の硫黄が含まれた硫黄−ゼオライトは、11.11mgを用いるとzeoliteの重さを基準で10mgになる)を用い、Cs
+ 1ppm及び競争イオンであるK
+がCs
+モル数の最大10000倍含まれた蒸溜水20mLでのCs
+除去率及び分配係数(K
d)値を分析し、その結果を
図8の(a)、(b)に示した(参照:K
+のモル数がCs
+に対して1000倍であるとき、K
+の実際の投入量は、561ppmであり、これは、海水内のK
+濃度である500ppmと類似な条件である)。
【0064】
また、硫黄−ゼオライトの全体重量を基準で10重量%、5重量%の硫黄が含まれた硫黄(S)−ゼオライト(CHA)複合体及びゼオライト(CHA)をそれぞれzeoliteの重さを基準で10mgを用い、Sr
2+ 1ppm及び競争イオンであるCa
2+がSr
2+モル数の最大10000倍含まれた蒸溜水20mLでのSr
2+除去率及び分配係数(K
d)値を分析し、その結果を
図8の(c)、(d)に示した(参照:Ca
2+のモル数がSr
2+に対して1000倍であるとき、Ca
2+の実際投入量は、457ppmである。これは、海水内のCa
2+濃度である500ppmと類似な条件である。)。
【0065】
図8に示したように、硫黄の添加量が多いほどCs
+に対する除去率及び分配係数(K
d)値 が上昇することで確認され、Sr
2+に対する除去率及び分配係数(K
d)値は低下することで確認された。これは、HSAB理論によることで、Csが競争イオンに比べてsoft acidであるので、ソフト塩基である硫黄と化学的親密度が高くてCsに対する除去率及び分配係数が上昇し、これに反して 、Srが基本的にハード酸(hard acid)であるので、ソフト塩基(soft base)である硫黄と化学的親密度が低くて硫黄がたくさん含まれたゼオライトとイオン交換反応がよく行われないと判断される。
【0066】
参照で、海水Cs
+条件( K
+がCs
+モル数の1000倍である場合)で、5S−CHAが10S−CHARと類似な除去效率及びK
d値を有することで確認され、海水Sr
2+条件(Ca
2+がSr
2+モル数の1000倍である場合)で、5S−CHAが一般CHAと類似な除去效率及びK
d値を有することで確認された。
【0067】
前の結果を総合的に判断すると、低濃度のCs
+除去(Cs濃度1ppm以下)のためには、硫黄(S)がたくさん入ったゼオライトがよく、Sr
2+とCs
+を同時に除去するためには、5wt%の硫黄が入った硫黄−ゼオライト複合体(5S−Charbazite)が最もよい組成と判断される。その理由は、海水条件でCs
+に対して10S−CHAと類似な除去性能を示し、Sr
2+に対して一般CHAと類似な除去性能を示したからである。
【0068】
以後、硫黄−ゼオライトの全体重量を基準で10重量%、5重量%の硫黄が含まれた硫黄(S)−ゼオライト(CHA)複合体及びゼオライト(CHA)のそれぞれのゼオライトの重さを基準で10mgを用い、Cs
+ 1ppm、Sr
2+ 0.7ppmが含まれた地下水20mLでのCs
+及びSr
2+除去率を分析し、その結果を
図9に示した。
図9に示したように、5重量%の硫黄が含まれる場合(硫黄5wt%、5S−CHA)、Cs
+及びSr
2+同時除去効率が最も優れることで確認された。
【0069】
実験例5:ゼオライト及び硫黄−ゼオライトの吸着速度変化及び最大吸着量の分析
硫黄−ゼオライト(CHA)の全体重量を基準で10重量%、5重量%の硫黄が含まれた硫黄(S)−ゼオライト(CHA)複合体及びゼオライト(CHA)をそれぞれのゼオライトの重さを基準で10mgを用い、Cs
+ 86ppmが含まれた蒸溜水20mLでのCs
+吸着速度変化及びSr
2+ 98ppmが含まれた蒸溜水20mLでのSr
2+吸着速度変化を分析した。硫黄がたくさん混入されるほどCs
+吸着速度(除去速度)及びSr
2+吸着速度が多少遅くなる結果を示した。これは、硫黄がゼオライトの気孔を占めているので、Cs
+又はSr
2+が通過する方向を妨害するからである。
【0070】
また、気孔中に硫黄がたくさん入るほどCs
+が入られる位置を占めるので、Cs
+の最大吸着量は低くなるが、気孔中に硫黄がたくさん入るほどLangmuir constant値(CHA:1.78、5S−CHA:2.7、10S−CHA:6.16)は、増加(傾きが急になる)することで確認された。これは、Cs
+に対する化学的親密度が高くなって選択度は高くなったことを意味する。Sr
2+の場合にも気孔中に硫黄がたくさん入るほどSr
2+が入られる位置を占めるので、Sr
2+最大吸着量は低くなることで確認され、Langmuir constant値は減少(傾きが緩やかになる)することで確認された。これは、Sr
2+に対する親密度が低くなったことを意味する。
【0071】
実験例6:ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体の競争イオンの存在下でのセシウムイオン(Cs+)除去能力の評価
実施例1で製造されたゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体の競争イオン存在下の水溶液でのセシウムイオン(Cs
+)除去性能を下記のようなイオン交換方法で評価した。セシウムイオン(Cs
+)1ppmを含んでいる蒸溜水を製造した後、NaClとCaCl
2・2H
2Oを追加で溶解させて競争イオン(Na
+又はCa
2+):セシウムイオン(Cs
+)のモル数比を0−10000倍で調節した。イオン交換吸着実験は、常温で前記水溶液200mLに0.1gのゼオライト及び0.111gの硫黄−ゼオライト複合体を接触し、3時間の間400rpmの速度で撹拌しながら進行した。
図10は、ゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体をナトリウム(Na
+)及びカルシウム(Ca
2+)を競争イオンで含む1ppmのCs
+溶液に接触させたとき、Cs
+の分配係数(K
d、mLg
zeolite−1)及びイオン除去率(Cs
+ removal、%)を示したグラフである。
図10から分かるように、全ての吸着剤がナトリウム(Na
+)及びカルシウム(Ca
2+)競争イオンの濃度が増加するによってCs
+の分配係数(K
d、mLg
zeolite−1)及び除去率(removal、%)が減少することを確認した。これは、ナトリウム(Na
+)及びカルシウム(Ca
2+)などの競争イオンの存在がゼオライト及び硫黄−ゼオライト複合体の放射性核種のイオン交換に悪い影響を及ぼすことを意味する。しかし、競争イオンの濃度と関係なく全ての硫黄−ゼオライト複合体が各該当ゼオライトに比べて一層高い分配係数及びイオン除去率を示すことから、硫黄−ゼオライト複合体が該当ゼオライトより卓越な放射性核種選択性を有することが分かる。
【0072】
上述した本発明の説明は例示に過ぎず、本発明が属する技術分野の通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解すべきである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。