特許第6869307号(P6869307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869307
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】微生物担体
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/10 20060101AFI20210426BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20210426BHJP
   C12N 1/02 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C02F3/10 Z
   !C12M1/00 Z
   !C12N1/02
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-184000(P2019-184000)
(22)【出願日】2019年10月4日
(65)【公開番号】特開2020-59021(P2020-59021A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2019年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-189395(P2018-189395)
(32)【優先日】2018年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306023716
【氏名又は名称】ヴェオリア・ジェネッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 穣
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−055562(JP,A)
【文献】 特開2009−066592(JP,A)
【文献】 特開2001−180(JP,A)
【文献】 特開2004−358328(JP,A)
【文献】 特開2006−219541(JP,A)
【文献】 特開2007−197471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/02 − 3/10
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
C08J 9/00 − 9/42
5/04 − 5/10
5/24
B29B 11/16
15/08 − 15/14
C12M 1/00
C12N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、前記ポリオレフィンと相溶しないポリスチレンと、無機充填材とを含む、微生物担体であって、
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含み、
前記無機充填材が、炭酸カルシウムを含み、
前記ポリスチレンの含有量が、前記ポリオレフィン及び前記ポリスチレンの合計100質量%に対して、16質量%以上18質量%以下であり、
下記式(i)によって表される気泡率が25%以上であり、かつ、
下記式(ii)によって表される独立気泡率が20%以下である、微生物担体。
気泡率=(1−ρB/ρA)×100・・・(i)
(式(i)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示す。)。
独立気泡率=(1−ρA(ρC−ρB)/(ρA−ρB))×100・・・(ii)
(式(ii)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示し、ρCはアルキメデス法により導き出される注水密度(g/cm3)を示す。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水処理、特に好気的手段による廃水中の生物化学的酸素要求量(BOD)の低減には、処理効率が高く処理槽容積が少ないことや、微生物が担体に付着しているので活性汚泥法のように流亡しないことから、流動性担体を充填した流動床法等が用いられている。
【0003】
流動床法に用いられる流動性担体は、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール及びポリウレタン等の各種合成樹脂や、セルロース誘導体等を、必要に応じて、発泡剤や充填材と共に含む組成物を発泡することによって得られる。流動性担体の形状としては、通常、粒状、円筒状及び円柱状等が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、流動性担体として、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンを発泡して得られた排水処理用微生物担体が記載されている。特許文献1では、比表面積を増大させた排水処理用微生物担体を用いることで、微生物の担持量を増やし、処理効率を上げようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の排水処理用微生物担体は、微生物が入り込めない程度の大きさの開口を有する気泡を内部に多く有し、そのような気泡内に微生物を担持することが困難である。その結果、担体の表面は、比表面積が示すほど有効に微生物を担持できておらず、処理水や汚染物に対する処理効率が悪い。また、上記のような開口の大きさに起因して、水が気泡内部に浸透するまで時間を要する。そのため、特許文献1に記載の担体は、水没又は水中に懸濁し難く、処理時間が長くなる。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理水や汚染物に対する処理効率が高く、容易に、液中に沈むことができ、又は、懸濁できる微生物担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリオレフィンを含み、特定の気泡率及び独立気泡率を有する微生物担体により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の内容を含む。
[1] ポリオレフィンと、前記ポリオレフィンと相溶しない熱可塑性樹脂と、を含む微生物担体であって、前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリオレフィン及び前記熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、12質量%以上30質量%以下であり、下記式(i)によって表される気泡率が25%以上であり、かつ、下記式(ii)によって表される独立気泡率が20%以下である、微生物担体。
気泡率=(1−ρBA)×100・・・(i)
(式(i)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示す。)。
独立気泡率=(1−ρA(ρC−ρB)/(ρA−ρB))×100・・・(ii)
(式(ii)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示し、ρCはアルキメデス法により導き出される注水密度(g/cm3)を示す。)。
【0010】
[2] 円柱状又は略円柱状の前記微生物担体の一方の底面から他方の底面に流通させた空気の量から算出する空気透過率が0.5mL/(mm2・sec)以上である、[1]に記載の微生物担体。
[3] 円柱状又は略円柱の形状を有し、前記円柱又は略円柱の高さが3mm以下である、[1]又は[2]に記載の微生物担体。
[4] 前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、又はこれらの混合物を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の微生物担体。
【0011】
[5] 前記熱可塑性樹脂がポリスチレンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の微生物担体。
[6] 有機充填材及び/又は無機充填材を更に含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の微生物担体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理水や汚染物に対する処理効率が高く、容易に、液中に沈むことができ、又は、懸濁できる微生物担体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0014】
〔微生物担体〕
本実施形態の微生物担体(以下、単に「担体」ともいう。)は、ポリオレフィンと、ポリオレフィンと相溶しない熱可塑性樹脂と、を含む、微生物担体であって、
熱可塑性樹脂の含有量が、ポリオレフィン及び熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、12質量%以上30質量%以下であり、
下記式(i)によって表される気泡率が25%以上であり、かつ、下記式(ii)によって表される独立気泡率が20%以下である。
気泡率=(1−ρBA)×100・・・(i)
(式(i)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示す。)。
独立気泡率=(1−ρA(ρC−ρB)/(ρA−ρB))×100・・・(ii)
(式(ii)中、ρAは微生物担体を構成する材料の真密度(g/cm3)を示し、ρBは微生物担体の見掛け密度(g/cm3)を示し、ρCはアルキメデス法により導き出される注水密度(g/cm3)を示す。)。
【0015】
(気泡率)
本実施形態の微生物担体は、担体の表面に通じており、外部を減圧すると脱気できる非独立気泡(u)と、担体の表面と通じておらず、外部を減圧しても脱気ができない独立気泡(v)とを有する。気泡率(Rb)は、担体の体積に対する、非独立気泡(u)と独立気泡(v)との両方の気泡の全体積の割合を示す。
ここで、微生物担体の単位体積あたりの質量、すなわち微生物担体の見掛け密度ρB(g/cm3)は、微生物担体を構成する材料の真密度ρA(g/cm3)と、空気の密度ρair(g/cm3)と、気泡率(Rb)を用いて、下記の式で表すことができる。
ρB=Rb・ρair/100+(1−Rb/100)・ρA
この式より、気泡率(Rb)は下記のように誘導され、
気泡率(Rb)=((ρB−ρA)/(ρair−ρA))×100
ρairがρAより十分に小さいことから、下記の式(i)を導き出すことができる。
気泡率(Rb)=(1−ρB/ρA)×100・・・(i)
【0016】
本実施形態の微生物担体は、処理効率の点から、上記の気泡率が25%以上であり、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上限については、通常50%以下である。なお、具体的な気泡率の算出方法は、実施例に記載のとおりである。
【0017】
本実施形態の微生物担体は、気泡率が上記の範囲内であり、微生物が入り込める程度の大きさの開口を有する非独立気泡を内部に多く有するため、内部の非独立気泡の壁面まで微生物を担持することができる。そのため、従来の担体に比して、微生物の担持量を多くでき、処理水や汚染物(以下、「処理水等」と表記する。)に対する処理効率を上げることができる。
【0018】
なお、製造時に水で冷却される微生物担体の場合、微生物担体は水を含んでいるので、発泡担体を完全に乾燥した後に気泡率及び後述の独立気泡率を算出する。
【0019】
(独立気泡率)
本実施形態において、独立気泡率(Ri)とは、微生物担体における、独立気泡及び非独立気泡のような全空隙の体積を分母とし、微生物担体の表面に通じていない独立気泡のような空隙の体積の割合を意味する。
ここで、微生物担体の表面に通じていない独立気泡のような空隙は、微生物担体を減圧雰囲気下で水没させて表面に通じた非独立気泡に注水をし、残った空隙の体積を調べる、いわゆるアルキメデス法を用いて、注水密度(g/cm3)として測定することができる。すなわち、微生物担体を容器の中で減圧し、ほぼ空気を排出した状態で微生物担体を水没させることで、微生物担体の表面に通じた非独立気泡に注水する。その後、微生物担体を容器より取り出し、注水した微生物担体の質量と、この微生物担体を水に浸漬したときの排除体積とから、注水密度(g/cm3)が計算される。
そして、この注水密度ρC(g/cm3)は、材料の密度(真密度)ρA(g/cm3)と、注水された水の密度ρ水(g/cm3)と、独立気泡部の空気密度ρair(g/cm3)と、気泡率(Rb)と、独立気泡率(Ri)を用いて、体積分率による加重平均(下記式)で表すことができる。
ρC=(1−Rb/100)・ρA+Rb/100・((1−Ri/100)・ρ水+Ri/100・ρair
この式に、上記の(i)式を代入し、更に、ρ水が1であり、ρairが十分に小さいことから、独立気泡率(Ri)は、下記の式(ii)で表すことができる。
独立気泡率(Ri)=(1−ρA(ρC−ρB)/(ρA−ρB))×100・・・(ii)
【0020】
本実施形態の微生物担体は、処理効率の点から、上記の独立気泡率が20%以下であり、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。下限については、通常1%以上である。なお、具体的な独立気泡率の算出方法は、実施例に記載のとおりである。
【0021】
本実施形態の微生物担体は、独立気泡率が上記の範囲内であることで、処理水等に浸透しやすく、容易に、液中に沈むことができる。そのため、担体投入時から早期に安定した懸濁状態を得ることができる。
【0022】
また、処理水等に容易に浸透することから、処理水等が微生物と早期に接触し、担体投入時から早期に処理水等を処理することが可能である。そのため、本実施形態の微生物担体によれば、従来の担体に比して、処理効率を高めることができる。
【0023】
(空気透過率)
本実施形態において、空気透過率とは、担体を円柱状又は略円柱状とした場合において、その担体の断面間に一定の差圧をかけたときに通過する断面積・時間あたりの空気透過量を意味する。
【0024】
本実施形態の微生物担体は、処理水等への馴染みの速さ、及び処理効率の点から、円柱状又は略円柱状の微生物担体の一方の底面から他方の底面に流通させた空気の量から算出する空気透過率が0.5(mL/(mm2・sec))以上であることが好ましく、より効率よく処理水等を処理できる点から、0.76(mL/(mm2・sec))以上であることがより好ましく、0.93(mL/(mm2・sec))以上であることが更に好ましく、1.2(mL/(mm2・sec))以上であることが更により好ましい。本実施形態の微生物担体において、空気の透過率が高いほど処理能力が上がるので、上限については、微生物担体における気泡率を考慮すると、通常5.0(mL/(mm2・sec))程度である。なお、具体的な空気透過率の算出方法は、実施例に記載のとおりである。
【0025】
本実施形態の微生物担体の空気透過率が上記の範囲内にあると、担体への処理水等の浸透が速く、目的とする懸濁状態又は沈降状態に早期に到達させることができるため、好ましい。
【0026】
(形状)
本実施形態の微生物担体の形状は、特に限定されず、球状、略球状、立方体、略立方体、直方体、略直方体、円柱、略円柱、円筒又は略円筒、あるいは不定形などいずれの形状であってもよい。また、微生物担体の大きさも特に限定されない。本実施形態の微生物担体は、処理水や汚染物に対する処理効率がより高く、より容易に、液中に沈むことができ、又は、懸濁でき、機械強度に優れる点と、生産性が優れる点から、円柱又は略円柱の形状を有することが好ましい。また、円柱又は略円柱の形状を有することは、処理槽に微生物担体を充填した場合、例えば、円筒状又は略円筒状を有する担体に比べて、担体固体部分の体積は大きいことから、担体に対する微生物の担持量が多くなり、処理効率が向上することからも好ましい。円柱又は略円柱の形状を有し、その高さが6mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、円柱又は略円柱の形状を有し、その高さが2.5mm以下であることが更に好ましい。円柱又は略円柱の高さの下限は、通常、処理槽から処理水等が流出する際に担体を処理水等と分離するための方法として、スクリーン分離法、浮上分離法、及び沈降分離法等があり、いずれの分離方式にあっても、小さい担体程分離することが困難である。また、機械強度の点も考慮すると、円柱又は略円柱の高さの下限は、1.5mm以上であることが好ましい。円柱又は略円柱の高さが上記下限未満になると、担体製造時及び使用時に割れや欠けが生じるおそれがある。また、円柱又は略円柱の断面積は、実際の処理槽に使用するに際しては、微生物担持量の点から、25〜450mm2であることが好ましく、50〜350mm2であることがより好ましく、80〜300mm2であることが更に好ましい。
【0027】
また、微生物担体の形状が円柱又は略円柱である場合、断面だけでなく、それらの形状の側面(二つの断面間をつなぐ曲面)についても、後述のメルトフラクチャーによって、凹凸を有するように製造することが好ましい。微生物担体の表面に凹凸を有すると、表面に多数の細孔を生じさせることができ、気泡率を増大させ、独立気泡率を低減させることができる。また、微生物担体の表面に多数の凹凸を有するため、円柱又は略円柱でありながら、優れた空気透過率を有する。そのため、処理水や汚染物に対して、良好な処理効率を有することができる。
【0028】
(ポリオレフィン)
本実施形態の微生物担体は、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンとしては、特に限定されず、公知のものを使用できる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。ポリオレフィンとしては、独立気泡率の調整が容易であり、真密度が通常1.0g/cm3以下であり密度調整がしやすいことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンとポリプロピレンとの混合物が好ましい。
また、ポリエチレン及びポリプロピレンとしては、後述のメルトフラクチャーによって、微生物担体(ストランド)の表面を荒らして表面積を増大させ、また多数の細孔を生じさせ、独立気泡率を低減させることができることから、ASTM D1238に準拠し230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜10(g/10分)であることが好ましく、0.3〜5.0(g/10分)であることがより好ましく、0.4〜3.0(g/10分)であることが更に好ましい。
【0029】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の微生物担体は、処理水等への担体の浸透を促進する微細な亀裂を生じさせるために、ポリオレフィンと相溶しない熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂を用いて微細な亀裂を生じさせることで、より多くの微生物を担持することが可能となり、処理水等が多くの微生物と接触できるため、担体投入時から早期に処理水等を処理することが可能となる。そのため、本実施形態の微生物担体によれば、従来の担体に比して、処理効率を高めることができる。また、一般的に、流動床式廃水処理装置においては、処理槽の出口にスクリーン又は網目状の分離手段を設け、処理槽から流出する処理水等から担体を分離し、処理槽からの微生物担体の流出を防いでいる。微生物担体はスクリーン等の分離手段の開口部に詰まり、処理槽の壁面に衝突することもあり、物理的な衝撃に耐えることを要する。この点を考慮すると、熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエステル及びポリアミド等が好ましく、汎用性が高く、かつ、溶融温度が低く成型しやすいため亀裂をより好適に生じさせることが可能となることから、ポリスチレンを使用することがより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0030】
熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂とポリオレフィンとで形成する界面において、気体及び処理水の透過を助ける微細な亀裂を好適に得ることができる点から、ポリオレフィン及び熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、12質量%以上含まれる。一方、微生物担体の強度を高く維持し、製造時及び使用時において割れ及び欠けが生じるのを抑制する観点から、熱可塑性樹脂の含有量は、ポリオレフィン及び熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、30質量%以下で含まれる。30質量%を超えると担体が物理的に脆くなり、使用中の割れや欠けを生じるおそれがある。熱可塑性樹脂の含有量は、ポリオレフィン及び熱可塑性樹脂の合計100質量%に対して、樹脂間の界面と亀裂の形成、および担体の強度のバランスの点から、14〜20質量%で含まれることが好ましく、16〜18質量%で含まれることがより好ましい。
【0031】
(充填材)
本実施形態の微生物担体は、微生物担体を、容易に、液中に沈ませることができ、又は、懸濁させることができ、処理水等に対する微生物担体の密度(以下、「処理水等に対する微生物担体の密度」とも称す)を制御できることから、充填材を更に含むことが好ましく、真比重が1より大きい粉状の充填材を含むことがより好ましい。本実施形態において、微生物担体に処理水が浸透し、処理水等に対する微生物担体の密度が処理水の密度と近くなると、処理水中に懸濁しやすく、処理水等に対する微生物担体の密度が処理水の密度より大きくなると沈降しやすくなる。微生物担体に配合される充填材の種類及び比率によって、処理水等に対する微生物担体の密度を制御することができる。充填材としては、有機充填材及び無機充填材が挙げられ、公知の充填材を用いることができる。充填材としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、活性炭、木粉、焼却灰、及びペーパースラッジ焼却灰等が挙げられる。これらの充填材は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0032】
本実施形態では、微生物担体の比重を調節したり発泡の核剤として用いたりするために、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等の粉状の充填材を用いることが好ましい。また、これらの充填材は、微生物担体に含まれることにより、微生物との親和性向上、微生物に対する微量栄養素の供給源、コスト低減等の効果も奏するので、好ましい。
【0033】
充填材は、処理水等に対する微生物担体の密度を容易に制御できる点から、本実施形態の微生物担体100質量%中に、5〜50質量%含まれることが好ましく、担体の強度と発泡制御が更に可能となる点から、10〜40質量%含まれることがより好ましく、12〜35質量%含まれることが更に好ましい。
【0034】
(界面活性剤)
本実施形態の微生物担体は、微生物担体に対して処理水等との親和性及び水濡れ性をより良好に付与できることから、用途に応じて、界面活性剤を更に含むことができる。微生物担体表面への処理水等の濡れ性は、微生物との親和性、及び担体の水面浮上現象に関与し、その濡れ性を高めることにより、微生物担体の表面に通じた非独立気泡への処理水等の侵入を促進することができる。界面活性剤は、微生物担体の用途に応じて、適宜選択することができ、公知のものを用いることができる。例えば、非イオン系の界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、X,X'-ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン〔アルキルジエタノールアミン〕、y-2-ヒドロキシエチル-y-2-ヒドロキシアルキルアミン〔ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン〕、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアマイド;アニオン系界面活性剤として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート;カチオン系界面活性剤として、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩;両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アルキルイミダソリウムベタイン等が挙げられる。これらの中でも、環境負荷および作業性の点から、非イオン系の界面活性剤を用いることが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。
【0035】
界面活性剤は、微生物との親和性が良好に得られることから、本実施形態の微生物担体100質量%中に、0.1〜5質量%含まれることが好ましい。
【0036】
(その他の成分)
本実施形態の微生物担体は、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、上述されていないオリゴマー、エラストマー類等の種々の高分子化合物;上述されていない難燃性の化合物;添加剤のようなその他の成分を含んでもよい。その他の成分は一般に使用されているものであれば、特に限定されない。例えば、難燃性の化合物としては、例えば、メラミンやベンゾグアナミン等の窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物、及びリン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等が挙げられる。添加剤としては、例えば、ステアリン酸モノステアレート、ステアリン酸ジエタノールアミン、ラウリン酸ジエタノールアミド等の帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、表面調整剤、光沢剤、重合禁止剤、熱硬化促進剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の微生物担体におけるその他の成分の含有量は特に限定されないが、通常、本実施形態の微生物担体100質量%中に、それぞれ0.01〜10質量%である。
【0037】
〔微生物担体の製造方法〕
本実施形態の微生物担体の製造方法としては、例えば、前記した各成分、及び必要に応じて発泡剤を、例えば、押出機に配合して、押し出し、ダイス形状により棒状、管状、糸状、板状等に押出成形された発泡ストランドを所定の大きさに切断して担体を得る方法が挙げられる。また、発泡ストランドを水槽に沈め、所定の速度で発泡ストランドを引き取りながら、冷却固化し、その後、所定の長さに切断して微生物担体を得てもよい。本実施形態において、ポリオレフィンのMFR、熱可塑性樹脂の配合量、発泡ストランドの引き取り速度、発泡剤の量、及び押出機のダイス圧力並びに温度を管理することによって、気泡率、独立気泡率及び気泡の大きさをコントロールすることができる。発泡率は、発泡剤量を増加させることで高くなる。また、気泡は、ダイ圧力を高くし、ダイ穴からの線速度を大きくすることでスウェル比が増大し、大きくすることができる。
【0038】
また、発泡ストランドの冷却固化の段階で延伸することで、気泡率及び空気透過率を増大させることができる。たとえば、溶融した樹脂が押出機ダイスから出た後、水中で固化する前に、巻き取り速度を上げると、内部の気泡を延伸方向に長く変形させることができる。その結果、カッターによって裁断した微生物担体の破断面から、より内部まで続く気泡を生成させることができる。これによって、気泡率及び空気透過率は増大し、水処理時の処理水等の浸入を容易にすることができ、容易に、液中に沈ませることができ、又は、懸濁させることでき、処理水や汚染物に対する処理効率を向上させることができる。
【0039】
また、発泡ストランドを固化して得られたストランドを屈曲させることによって、ストランドの側面から内部に向かって微細な亀裂を生じさせ、独立気泡率を下げることができる。例えば、ストランドがカッターまで引き取られる間に、ストランドがS字状に屈曲して引き取られるように、複数の自由に回転するガイドローラーを組み合わせて挟みこむ方法がある。これにより内部の独立気泡が破れ、生じたクレーズによってカッターによる破断面でなくストランドの側面との間で空気が透過できるようになる。本実施形態の微生物担体では、ポリオレフィンに対して、ポリオレフィンと相溶しない熱可塑性樹脂を所定量配合しているため、クレーズを、より効率よく発生させることができる。したがって、独立気泡率は低下し、水処理時の処理水等の浸入を容易にすることができ、容易に、液中に沈ませることができ、又は、懸濁させることでき、処理水や汚染物に対する処理効率を向上させることができる。
【0040】
また、材料の組成、樹脂温度(ポリオレフィンのMFR)、ダイス圧力及び温度を調整することで、ストランドの表面状態を制御することができる。本実施形態においては、いわゆるメルトフラクチャーによって、表面を荒らして表面積を増大させ、また多数の細孔を生じさせ、独立気泡率を低減させることが好ましい。独立気泡率を低減させることで、処理時における処理水等の浸入を容易にでき、処理水等への馴染みを早期できるため、処理効率を向上させることができる。なお、本実施形態において、メルトフラクチャーとは、微生物担体の成形時に、成形品の吹き出し口におけるずり応力が臨界値を越すと発生し、微生物担体の表面が波立つ現象を指す。メルトフラクチャーは、主原料として、比較的低いMFR値を有するポリプロピレン及び/又はポリエチレンを用い、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンの樹脂温度を下げることで好適に発生させることができる。
【0041】
発泡剤としては、プラスチックの発泡に用いられる公知のものを用いることができ、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、水、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤、液化ガス発泡剤、ガス発泡剤、小麦粉などの穀物粉等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0042】
また、微生物担体の製造時には、必要に応じて各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、例えば、充填材の分散性を向上させることができる。前記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザー等の分散を目的とした攪拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0043】
〔微生物担体の使用方法〕
本実施形態の微生物担体は、種々の流動床式廃水処理装置に好ましく使用される。使用にあたっては、微生物担体を処理水等100質量%に対して、通常10〜30質量%充填し、処理槽の水相容積あたり、通常5〜50%の嵩容積になるように充填すると、高い廃水処理効率を発現するので好ましい。
【0044】
また、本実施形態において、微生物担体は、使用される流動床式廃水処理装置のシステムの特性により、水中浮上性の担体及び水中沈降性の担体のいずれにおいても用いることができる。いずれにしても、水中で比重が一定値に達したときの微生物担体の比重が水の比重に近いことが好ましい。微生物担体の比重が水の比重に近いと廃水処理槽内で微生物担体の均一な流動分布が得られる。本実施形態において、水中で比重が安定した後の吸水した担体の見掛け比重が、0.90〜1.50の範囲のものが好ましい。
【0045】
(微生物担体の用途)
本実施形態の微生物担体は、例えば、工場等の排水処理;水族館及び陸上養殖場の循環水処理;食品工場、ホテル、レストラン及びオフイス厨房などから排出される廃食品処理及び廃液処理等に好適である。
【0046】
本実施形態の微生物担体を工場などの排水処理に用いる場合、排水曝気槽の中で懸濁させるため、水中で比重が安定した後の吸水した担体の見掛け比重が、0.95〜1.05の範囲のものが好ましい。
【0047】
本実施形態の微生物担体を循環水処理に用いる場合、処理プールに沈めて用いるため、水中で比重が安定した後の吸水した担体の見掛け比重が、1.10〜1.50の範囲のものが好ましい。
【0048】
本実施形態の微生物担体を廃食品処理に用いる場合、廃食品と混合して用いるため、水中で比重が安定した後の吸水した担体の見掛け比重が、0.90〜1.50の範囲のものが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0050】
〔評価方法〕
〔1〕気泡率(%)
気泡率を、次の方法により算出した。
(1)実施例又は比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体を熱風で乾燥(90℃、約3時間)し、小型押出機にて再造粒を行い、脱気した後、2gを230℃にてプレス成型(10MPa)することによって、気泡を包含しない円盤状サンプル(厚み2mm、直径:30mm)を作製した。この円盤状サンプルについて、23℃の純水(密度:1.0g/cm3)を用いて、アルキメデス法によって密度を測定し、微生物担体を構成する材料の「真密度」ρA(g/cm3)とした。
(2)実施例又は比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体を熱風で乾燥(90℃、約3時間)し、室温まで冷却した。その後、23℃の純水(密度:1.0g/cm3)を用いて、該微生物担体5gの「見掛け密度」をアルキメデス法により測定し、ρB(g/cm3)とした。
(3)実施例又は比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体を熱風で乾燥(90℃、約3時間)し、室温まで冷却した。その後、三方コックを装着したナス型フラスコに該微生物担体を充填し、三方コックの一方から、真空ポンプにて100Pa以下になるまで減圧し、その状態で5分間保持した。コックを閉じ、もう一方から、23℃の純水(密度:1.0g/cm3)をフラスコ内に誘導し、該微生物担体を完全に水没させた。その後、該微生物担体を水中から速やかに取り出し、アルキメデス法により、注水した該微生物担体の質量と、この微生物担体を水に浸漬したときの排除体積とから、該微生物担体5gの「注水密度」を算出し、ρC(g/cm3)とした。
(4)前記(1)〜(3)の操作を5回繰り返し、ρA、ρB及びρCのそれぞれの平均値ρAA(平均真密度)、ρBB(平均見かけ密度)及びρCC(平均注水密度)を算出した。
(5)ρAA及びρBBから、次の式(iii)により気泡率を算出した。
気泡率=(1−ρBB/ρAA)×100・・・(iii)
【0051】
〔2〕独立気泡率(%)
前記〔1〕の気泡率で得られたρAA、ρBB及びρCCから、独立気泡率を次の式(iv)により算出した。
独立気泡率=(1−ρAA(ρCC−ρBB)/(ρAA−ρBB))×100・・・(iv)
【0052】
〔3〕空気透過率(mL/mm2・sec)
空気透過率は、実施例又は比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体を用いて、次の方法により算出した。
(1)真空ポンプに耐圧真空用ゴム管(アラム株式会社製)を装着した。一方、実施例又は比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体の側面に二液性エポキシ接着剤(Araldite社製)を塗布して硬化させた。エポキシ接着剤を硬化した後の耐圧真空用ゴム管の真空ポンプが装着されていない側からその耐圧真空用ゴム管内に、該微生物担体を、その側面が耐圧真空用ゴム管の内壁面と接するように挿入した。なお、エポキシ接着剤は、耐圧真空用ゴム管と該微生物担体との間の空隙から、空気を吸引しないようにするために用いられた。
(2)コック付きPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製バック(テドラー社製20リットルバック)に16リットルの空気を充填し、耐圧真空用ゴム管の真空ポンプに装着されていない側及び該微生物担体を覆うように、かつ空気が外部に漏れないようにコック付きPVDF製バックを装着した。
(3)真空ポンプを起動した後に空気が流れ始めた時から、16リットルの空気の全量が排気された時までの時間t(秒)を測定した。なお、真空度は、1000Pa以下であった。
(4)時間t(秒)を用いて、空気透過率を次の式(v)により算出した。
空気透過率=16リットル/(担体断面積(mm2)×排気時間t(秒)・・・(v)
【0053】
〔4〕処理水におけるBOD除去率(%)
処理水におけるBOD除去率を、次の方法により算出した。
(1)水処理用微生物、及び実施例及び比較例で得られた略円柱の形状を有する微生物担体を馴養槽(20リットル)に入れた。馴養1ヶ月後、活性汚泥を処分し、微生物担体(0.4リットル)を3リットル流動槽に充填した。
(2)食品工場の実排水にて調製したBOD500mg/リットルの実験用処理水(2リットル)を同流動槽に充填した。
(3)同流動層に空気を10リットル/分の流量で24時間吹き込んだ。
(4)24時間後の処理水中のBODを測定し、(100%−([24時間後のBOD濃度]÷[投入時のBOD濃度]))にて、BOD除去率を算出した。
【0054】
(実施例1)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン、MFR:0.5(g/10分))100質量部と、ポリスチレン(PSジャパン(株)製ホモポリスチレン)20質量部と、帯電防止剤(花王(株)社製ステアリン酸モノステアレート)0.8質量部と、炭酸カルシウム(白石工業(株)社製)20質量部に、発泡剤としてアゾジカルボンアミド1.4質量部を混合し、40mmφベント付きフルフライトスクリュー押出機にて、3mmφの孔4個を有するストランドダイより押し出して発泡ストランドを得た。この発泡ストランドを水槽に沈め、引き取り速度が50cm/秒にて発泡ストランドを引き取りながら、冷却固化した後、カッターにて直径5mm(断面積:19.6mm2)、略円柱高さ5mmに切断して、略円柱の形状を有する微生物担体を得た。
【0055】
前記気泡率の評価方法に準じて測定したところ、平均真密度は1.03g/cm3であり、平均見掛け密度は0.61g/cm3であり、平均注水密度は1.01g/cm3であった。これらの数値を用いて、気泡率及び独立気泡率を算出しところ、それぞれ41%及び4%であった。また、前記空気透過率の評価方法に準じて測定したところ、空気透過率は0.81mL/mm2・secであった。
【0056】
得られた微生物担体を用いて水処理実験を行った。水処理用微生物及び得られた微生物担体を馴養槽(20リットル)に入れたところ、76時間で安定した懸濁状態を得た。馴養1ヶ月後、前記処理水におけるBOD除去率の評価方法に準じてBOD除去率を測定したところ、80%であった。結果を表1に示す。なお、表1において、「PO」、「PP」、「PS」及び「PE」は、それぞれポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリエチレンの略記である。
【0057】
(実施例2)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン、MFR:0.5(g/10分))100質量部と、ポリスチレン(PSジャパン(株)製ホモポリスチレン)20質量部と、炭酸カルシウム(白石工業(株)社製)69質量部に、発泡剤としてアゾジカルボンアミド2.0質量部を混合し、40mmφベント付きフルフライトスクリュー押出機にて、3mmφの孔4個を有するストランドダイより押し出して発泡ストランドを得た。この発泡ストランドを水槽に沈め、引き取り速度が50cm/秒にて発泡ストランドを引き取りながら、冷却固化した後、カッターにて直径5mm(断面積:19.6mm2)、略円柱高さ5mmに切断して、略円柱の形状を有する微生物担体を得た。
【0058】
前記の評価方法に準じて、得られた微生物担体を用いて、気泡率、独立気泡率及び空気透過率を算出したところ、それぞれ25%、6%及び0.80mL/mm2・secであった。
【0059】
また、得られた微生物担体を用いて、実施例1と同様にBOD除去率を測定したところ、72%であった。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
発泡剤としてアゾジカルボンアミドの添加量を1.4質量部から2.0質量部に変更し、発泡ストランドの引き取り速度を1.3倍に上げた以外は、実施例1と同様にして微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)の代わりに、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製PL500A(商品名)、MFR:5.0(g/10分))を用い、発泡ストランドの引き取り速度を0.8倍に下げた以外は、実施例1と同様にして微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
発泡ストランドを固化して得られたストランドを、引き取り方向に対して平行に近接する3本のローラー(直径60mm)の間を、互い違いに蛇行するように通して、S字に変形させた。その後、カッターにて直径5mm(断面積:19.6mm2)、略円柱高さ5mmに切断して、略円柱の形状を有する微生物担体を得た。この微生物担体に対して、実施例1と同様にして、気泡率、独立気泡率、空気透過率及びBOD除去率を算出した。それらの結果を表1に示す。
【0063】
(実施例6)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)の代わりに、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製PB170A(商品名)、MFR:0.3(g/10分))を用い、発泡ストランドの引き取り速度を0.8倍に下げ、樹脂温度を10℃下げた以外は、実施例1と同様にして微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例7)
発泡ストランドの引き取り速度を0.7倍に下げた以外は、実施例6と同様にして微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例8)
発泡ストランドの引き取り速度を1.2倍に上げた以外は、実施例6と同様にして微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例9〜12)
カッター刃の回転数を変えることで、略円柱高さを変更する以外は実施例1と同様にして、微生物担体をそれぞれ製造した。それらの結果を表1に示す。
【0067】
(実施例13)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)100質量部の代わりに、ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製ノバテック(登録商標)UE320(商品名)、MFR:1.0(g/10分))100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例14)
ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製ノバテック(登録商標)UE320(商品名))の代わりに、ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製LF640MA(商品名)、MFR:5.0(g/10分))を用い、発泡ストランドの引き取り速度を0.8倍に下げた以外は、実施例13と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例15)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)100質量部の代わりに、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン、MFR:0.5(g/10分))50質量部及びポリエチレン(日本ポリエチレン社製ノバテック(登録商標)UE320(商品名)、MFR:1.0(g/10分))50質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例16)
ポリエチレン(日本ポリエチレン社製ノバテック(登録商標)UE320(商品名))の代わりに、ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製LF640MA、MFR:5.0(g/10分))を用い、発泡ストランドの引き取り速度を0.8倍に下げた以外は、実施例15と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例17)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)100質量部の代わりに、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン、MFR:0.5(g/10分))104質量部を用い、ポリスチレン(PSジャパン社製ホモポリスチレン)20質量部の代わりに、ポリスチレン(PSジャパン社製ホモポリスチレン)16質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例18)
ポリスチレン(PSジャパン(株)製ホモポリスチレン)20質量部の代わりに、ポリスチレン(PSジャパン(株)製ホモポリスチレン)18質量部を用い、炭酸カルシウム(白石工業(株)社製)20質量部の代わりに、タルク(日本タルク(株)製L1K(商品名))19質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例19)
炭酸カルシウム(白石工業(株)社製)20質量部を用いず、帯電防止剤(花王(株)社製ステアリン酸モノステアレート)0.8質量部の代わりに、帯電防止剤(花王(株)社製ステアリン酸モノステアレート)0.7質量部を用い、発泡剤としてアゾジカルボンアミド1.4質量部の代わりに、発泡剤としてアゾジカルボンアミド1.2質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
発泡剤としてアゾジカルボンアミド1.4質量部の代わりに、アゾジカルボンアミド0.7質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
微生物担体(デンカエンジニアリング(株)製バイオリアクター(商品名))を用いて、前記の評価方法に準じて、気泡率、独立気泡率及び空気透過率を算出した。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例3)
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)100質量部の代わりに、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製ホモポリプロピレン)120質量部を用い、ポリスチレン(PSジャパン社製ホモポリスチレン)20質量部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、微生物担体を製造した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】