(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む組成物であって、前記シクロスポリンが、前記シクロスポリンの全質量に基づいて、1.0質量%未満の水含有量を有する、組成物。
1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物を調製する方法であって、前記組成物が共溶媒を本質的に含まず、前記方法が、a)シクロスポリンの全質量に基づいて1.0質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップ、およびb)前記シクロスポリンを1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解させるステップを含む、方法。
シクロスポリンの全質量に基づいて1.0質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップa)が、前記シクロスポリンの全質量に基づいて1.6質量%、または1.6質量%より高い水含有量を有するシクロスポリンを乾燥させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
前記シクロスポリンが、前記シクロスポリンの全質量に基づいて、0.8質量%、または0.7質量%、または0.6質量%、または0.5質量%、または0.4質量%未満の水含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
15〜25℃の前記組成物中に溶解したシクロスポリンの濃度が3.0〜4.8mg/mLであって、かつ、前記組成物が0.02mg/mL未満の全残留水含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
前記シクロスポリンと前記1−パーフルオロブチル−ペンタンからなる組成物であって、前記組成物が0.04mg/mL未満の全残留水含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様では、本発明は、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、15〜25℃で決定されるシクロスポリンの濃度が、約2.6mg/mLより高い、またはより好ましくは、3.0mg/mLより高い、組成物に関する。
【0013】
シクロスポリン(同義語としては、サイクロスポリンA、CsA、またはサイクロスポリンが挙げられる)は、実験式C
62H
111N
11O
12および分子量1202.61を有する11アミノ酸を含む環状の非リボソームペプチドである。シクロスポリンは、アレルギー誘発性の臓器移植後に、患者の免疫系の活性を低減させ、それによって臓器拒絶のリスクを低減させるために広く使用されている免疫抑制薬である。シクロスポリンは、典型的に、無色または白色粉末として提供される。
【0014】
好ましくは、組成物の配合および本明細書に記載される実施形態または好ましいもののいずれかのために使用されるシクロスポリンは、シクロスポリンの全質量に基づいて約1.6質量%未満の水含有量を有する。別の実施形態では、本発明の組成物は、約0.04mg/mL未満の全残留水含有量を含む。より好ましくは、組成物の配合および本明細書に記載される実施形態または好ましいもののいずれかのために使用されるシクロスポリンは、シクロスポリンの全質量に基づいて約1.0質量%未満の水含有量を有する。別の実施形態では、本発明の組成物は、約0.03mg/mL未満の全残留水含有量を含む。またさらなる実施形態では、組成物は、残留水含有量を含まない。
【0015】
本明細書で使用される残留水含有量という用語は、シクロスポリンおよび1−パーフルオロブチル−ペンタンなどの、組成物の成分を起源として組成物中に存在し得るわずかなまたは微量の水を指す。
【0016】
組成物中の残留水含有量への主な寄与は、水収着またはシクロスポリンとの会合に起因し得る(例えば、以下に限定されないが、例えば製造過程、またはその輸送および貯蔵に由来する)。医薬用途および配合のために通常利用可能なシクロスポリンは、典型的に、シクロスポリンの質量に基づいて約1.6質量%の水含有量を有する。他方、1−パーフルオロブチルペンタン中の水溶性は本質的に無視できるものであり、すなわち、1−パーフルオロブチルペンタンの質量に基づいて1.20×10
−5質量%未満など、非常に低い量である。
【0017】
シクロスポリン、1−パーフルオロブチル−ペンタン、または1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む本発明の組成物の残留水含有量は、水分分析のために当該技術分野において公知の方法および/または装置、例えば、以下に限定されないが、例えば容積測定または電量測定の、標準的なカール・フィッシャー滴定などの方法を使用して、決定することができる。
【0018】
予想外なことに、室温(すなわち、15〜25℃)で約2.6mg/mLより高い、またはより好ましくは約3.0mg/mLより高い濃度などの高濃度のシクロスポリンは、共溶媒を必要とせずに1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解し得ることが分かった。これは特に、シクロスポリンの残留水含有量が低い場合などの、組成物の全残留水含有量が約0.04mg/mL未満、特に0.03mg/mL未満の場合に、観察された。
【0019】
共溶媒は、シクロスポリンを可溶化するための助けとして有用なことがあり、かつより高い濃度のシクロスポリンの配合物を得ることを可能とすることがあるが、それらの使用を回避できることが好ましい。特に、眼科用途の文脈において、界面活性剤または非水性有機溶媒などの賦形剤を可溶化する液体の形態の共溶媒は、目に外用投与された時に、目の刺激または目の不快感(例えば、視覚のかすみ、または痛み)を引き起こすことがある。シクロスポリンの可溶化を助けるために使用され得る共溶媒の例としては、グリセリドまたはトリグリセリド油(例えば、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、ヒマシ油または甘扁桃油)、鉱油(例えば、ワセリンまたは液体パラフィン)などの油、液状油性脂肪酸、脂肪族アルコールまたはソルビトールエステル、または有機溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはエタノール)が挙げられる。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、上記に定義したものなどの共溶媒を本質的に含まない。本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という用語は、組成物中に共溶媒が存在しないこと、および存在する場合は、本発明の目的に関して技術的長所または関連性を付与しないような極微量または残留量であることを意味する。最も好ましくは、本明細書に記載される組成物は、共溶媒としてエタノールを本質的に含まない。
【0021】
エタノールなどの有機共溶媒が存在しないことは、費用、製造、取扱い、包装、そしてまた患者のコンプライアンスなどの要素の点で、エタノールなどの共溶媒を追加的に含むより複雑な3成分配合物と比べてより単純な2成分配合物(シクロスポリンおよび1−パーフルオロブチル−ペンタンから本質的になる)であるという利点を付与する。
【0022】
得られ得るより高い濃度のシクロスポリンは、患者によって必要とされる投薬頻度を低減させる点で利点を付与することがあり、そしてまた、意図する標的組織、例えば目へのシクロスポリンのより効果的な送達にも繋がり得る。本発明による組成物は、室温または周囲温度、すなわち約15〜25℃での決定で、約2.6mg/mLより高い濃度で1−パーフルオロブチルペンタン中に溶解したシクロスポリンを含み得る。さらなる実施形態では、15〜25℃の組成物中のシクロスポリンの濃度は、好ましくは約3.0mg/mLより高く、あるいは、約2.6〜4.8mg/mL、または2.8〜4.8mg/mL、または好ましくは約3.0〜4.8mg/mLの範囲内であり得る。さらなる好ましい実施形態では、溶解したシクロスポリンの濃度は、15〜25℃での決定で約4.0mg/mLである。溶液中に溶解したシクロスポリンの濃度は、HPLCなどの当該技術分野において公知の方法を使用して定量化することができる。本明細書で使用される場合、溶解したシクロスポリンの濃度、もしくは濃度範囲などのパラメーターに言及するまたはそれに関連する、または、シクロスポリンの全質量に基づく、シクロスポリンの残留水含有量に関しての、または、本発明による組成物中の全残留水含有量に関しての「約」という用語は、正確な値の他に、当該技術およびその分野において公知の標準的な技術および設備を使用するこれらのパラメーターの測定または決定において通常観察される程度のばらつきの範囲内の任意の値を包含し得る。
【0023】
一実施形態では、本発明で使用されるシクロスポリンは、非晶性であり、かつ結晶性でないか、または主に任意の特定の結晶形態である。好ましくは、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンは、乾燥によりシクロスポリンから残留水を低減または除去するステップによって得られる。例えば、約1.0%の全残留水含有量を有するものなどの、本発明による組成物の調製において使用されるシクロスポリンは、真空下の乾燥、吸湿剤または乾燥剤の存在下の乾燥などの、当該技術分野において公知の乾燥方法を使用する乾燥によって得られる。
【0024】
本明細書で理解される透明溶液は、全ての溶質が室温条件下、すなわち15〜25℃で完全に溶解可能または溶解した液体溶液を指す。透明溶液は、いかなる微粒子または固相成分(例えば、溶解していないシクロスポリン)も含まず、好ましくは、室温で水の屈折率(すなわち、1.333)と近似した屈折率を有する。一実施形態では、本発明の組成物が示す透明溶液は、約1.3〜1.4の屈折率を有し得る。
【0025】
特に、透明溶液は、15〜25℃で熱力学的に安定であり、すなわち、平衡下で、シクロスポリンなどの溶解した成分の全てが溶解状態のままであり、かつ、相分離、沈殿、または溶液の物理形態の変化が起こらない。好ましくは、本明細書に記載される発明による透明溶液の形態の組成物は、少なくとも約2週、または約1ヶ月、または3ヶ月、または少なくとも約6ヶ月などの期間にわたって15〜25℃、すなわち室温で貯蔵された時に、熱力学的に安定である。さらに、本発明は、例えば0〜10℃の温度の冷蔵下などのより低い温度で貯蔵された時に部分的に沈殿し得るが、15〜25℃(室温)に戻した時に熱力学的に安定かつ透明な溶液に戻り、全ての以前に沈殿した成分が再び溶解する、組成物を提供し得る。
【0026】
本発明による組成物の液体担体である1−パーフルオロブチル−ペンタンは、化学式F(CF
2)
4(CH
2)
5Hの半フッ化アルカンである。それは不活性の水不溶性の液体であり、25℃で1.284g/cm
3の密度および20℃で1.3204の屈折率を有する。この化合物の代替的な名称としてはF4H5が挙げられ、Fは4つの炭素原子を含む直鎖状の過フッ化アルカンセグメントを示し、Hは5つの炭素原子の直鎖状かつ非過フッ化アルカン炭化水素セグメントを指す。
【0027】
本明細書に記載される組成物または方法のいずれかにおいて特徴付けられる1−パーフルオロブチル−ペンタンは、好ましくは、本質的に水を含まない。そのような場合、本発明による組成物中の残留水の存在は、シクロスポリン、または場合により、存在する場合、機能的に共溶媒ではない1つまたは複数の賦形剤に由来する。より好ましくは、1−パーフルオロブチル−ペンタンはいかなる水も含まず、または、1−パーフルオロブチル−ペンタン中の水の最大溶解度以下の水含有量を有し、例えば、カール・フィッシャー滴定法などの水分分析について当該技術分野において公知の方法による決定で1.6×10
−4mg/mL未満の水含有量を有する。
【0028】
別の態様では、本発明は、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、組成物が約0.04mg/mL未満の残留水含有量を有する、組成物を提供する。
【0029】
さらなる実施形態では、本発明は、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、組成物が約0.03mg/mL未満の残留水含有量を有する、組成物を提供する。
【0030】
さらなる実施形態では、組成物は、0.03mg/mL未満、または0.025mg/mL未満、または0.02mg/mL未満、または0.015mg/mL未満、または0.01mg/mL未満の全残留水含有量を有し得る。
【0031】
特に、実施形態のいずれかに記載される組成物において特徴付けられるおよび本明細書で特徴付けられる残留水含有量に対するシクロスポリンの相対比は、少なくとも約65対1より大きい、または好ましくは、100対1より大きい、または200対1より大きいものであり得る。
【0032】
15〜25℃のそのような組成物中のシクロスポリンの濃度は、好ましくは、約0.5〜4.8mg/mLである。さらなる実施形態では、組成物の室温で決定されるシクロスポリンの濃度は、約2.6〜4.8mg/mL、または好ましくは約3.0〜4.8mg/mLの範囲内であり得る。特にさらに好ましい実施形態では、15〜25℃での溶解したシクロスポリンの濃度は約4.0mg/mLである。1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解した約0.5〜2.6mg/mL、または約0.5〜1.0mg/mLの範囲のシクロスポリンなどの、より低い濃度のシクロスポリンもまた本発明において想定することができる。温度に対する溶解度の依存性により、シクロスポリンなどの活性成分は、溶液がより低い温度条件で貯蔵された時に溶液から沈殿する一般的傾向がある。本発明について記載されるものなどのシクロスポリンの低い水含有量は、有利なことに、1−パーフルオロブチルペンタン中で形成された溶液に改善された物理的安定性を提供することがあり、例えば、冷蔵下(例えば、0〜10℃)などのより低い温度に溶液を貯蔵した時でさえ、生じ得るあらゆる沈殿が、組成物を15〜25℃(室温)に戻した時に容易に再び溶解する。
【0033】
またさらなる実施形態では、その任意の組合せを含めて、本明細書に特徴付けられる実施形態または好ましいもののいずれかに記載される組成物は、1−パーフルオロブチル−ペンタンおよびシクロスポリンから本質的になり、かつ約0.04mg/mL未満の量の残留水含有量を有する。
【0034】
さらに別の実施形態では、その任意の組合せを含めて、本明細書に特徴付けられる実施形態または好ましいもののいずれかに記載される組成物は、1−パーフルオロブチル−ペンタンおよびシクロスポリンから本質的になり、かつ約0.03mg/mL未満の量の残留水含有量を有する。
【0035】
組成物の残留水含有量は、シクロスポリンの残留水含有量に主に起因することがあり、例えば、組成物の残留水含有量の少なくとも99%がシクロスポリンに起因し得る。本明細書で使用される場合、「からなる」(consists)という用語およびこれと関連する「からなる」(consisting)または「からなる」(consist)という用語は、該用語に後続するもの以外の他の特徴が存在しないことを意味するものと理解される。「本質的に」という用語は、存在する場合は、本発明の目的に関して技術的長所または関連性を付与しないような極微量または残留量であることを意味する。
【0036】
その任意の組合せまたは好ましいものを含めて、上記実施形態、および本明細書中の実施形態のいずれかに記載される組成物は、薬剤として、および治療用途のために使用され得る。それを必要とする患者の治療のための医薬または薬剤の製造における前記組成物の使用もまた、本発明の文脈において提供される。
【0037】
乾性角結膜炎、またはその症状の治療のための組成物の使用は特に好ましい。乾性角結膜炎は、ドライアイ疾患もしくは症候群、または涙液機能不全症候群としても公知である。乾性角結膜炎を有する患者は、高浸透圧の涙液、不安定な涙液層または涙液層の脂質層組成の異常のいずれか1つ、または組合せを経験し得る。本明細書において理解される涙液減少型ドライアイ疾患、蒸発性ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、涙腺機能不全、マイボーム腺機能障害は、乾性角結膜炎の範囲内(例えば、サブタイプとして)と考えることができる。
【0038】
角結膜炎の症状としては、以下の任意の1つ、または組合せを挙げることができる:目の乾燥した、かゆい、ざらついた、または砂を含んだような感覚;異物感;痛みまたはただれ;刺すような感覚または灼熱感;かゆみ;まばたきの増加;目の疲労;羞明;視覚のかすみ;潮紅;粘液の排出;コンタクトレンズ不耐性;涙の過剰反射分泌。乾性角結膜炎を患う全ての患者が全ての症状を同時に呈するわけではないことが理解される。それ故、該疾患を診断するための基準の統一されたセットは現在存在しない。しかしながら、本発明の範囲内で、乾性角結膜炎の態様、症状または病態生理学的結果のいずれかが対処され得ることに留意することは重要である。
【0039】
マイボーム腺機能障害、またはその症状の治療のために本明細書に記載される実施形態のいずれかに定義される組成物を使用することもまた好ましい。マイボーム腺機能障害は、腺の過角化およびマイボーム腺管のマイバム脂質分泌物の粘性の増加を通じた腺の閉塞および詰まりによって特徴付けることができる。涙液層のために必要とされる脂質成分の定量的または定性的分泌は、マイボーム腺機能障害を有する患者の場合に変化していることがある。これは、安定かつ連続的な涙液層の形成不全に繋がることがあり、それにさらに、蒸発による喪失および高浸透圧が続くことがある。マイボーム腺機能障害は、原発性眼瞼縁関連疾患に起因することもあるし、あるいは、赤鼻、または脂漏性皮膚炎などの全身性障害に起因する二次性疾患に起因することもある。上記される乾性角結膜炎について上記される症状のいずれか1つに加えて、マイボーム腺機能障害を有する患者は、かゆみ、潮紅、腫脹、痛みまたはただれ、排出物蓄積または眼瞼縁の痂皮形成のいずれか1つまたはこれらの組合せなどの症状も経験することがある。
【0040】
上記使用による組成物は、好ましくは、目の表面、および、角膜または結膜などの、外用投与でアクセス可能であり得る目の任意の領域または組織に外用投与される眼科用組成物である。
【0041】
本明細書に記載される発明の組成物は、キットの一部として提供されてもよく、該キットは、例えば、組成物および組成物を保持するために適した容器を含み、容器は、目または眼科組織への組成物の外用投与のために適した分注手段を有する。場合により、そのようなキットは、例えば貯蔵の間に、安定した残留水含有量を守るための吸湿剤または吸湿手段を含んでもよい。残留水含有量の増加は、シクロスポリンの溶解度に影響することがあり、そしてそれが組成物の安定性に影響することがあり、沈殿を結果としてもたらすことがある。さらに、場合により、乾性角結膜炎もしくはその症状の治療におけるキットの使用のため、またはマイボーム腺機能障害もしくはその症状の治療におけるキットの使用のための説明書もキットの部分として含まれていてもよい。
【0042】
本発明の別の態様では、本発明は、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に、シクロスポリンの全質量に基づいて、約1.6質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを溶解させることによって得られ得る組成物を提供する。本発明のさらに別の態様では本発明は、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に、シクロスポリンの全質量に基づいて、約1.0質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを溶解させることによって得られ得る組成物を提供する。そのような組成物を得るために使用されるシクロスポリンは、他の実施形態では、約0.8質量%、または0.6質量%または0.5質量%または0.4質量%、または0.3質量%未満の水含有量を有し得る。シクロスポリンの質量に基づいて0.4質量%以下の水含有量を有するシクロスポリンを使用して、1−パーフルオロブチル−ペンタン中の溶液、好ましくは透明溶液を得ることが特に好ましい。
【0043】
好ましくは、シクロスポリンが共溶媒の非存在下、例えば、エタノールまたは上記の共溶媒のいずれも存在しない状態で、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解した、上記の実施形態または好ましいもののいずれかなどの組成物が得られる。組成物を得るために15〜25℃で溶解し得るシクロスポリンの濃度は、好ましくは、2.6mg/mLより高い。さらなる実施形態では、得られる組成物は、15〜25℃で3.0mg/mLより高い、または約2.6〜4.8mg/mL、もしくは好ましくは約3.0〜4.8mg/mLの範囲内のシクロスポリンの濃度を有し得る。さらなる好ましい実施形態では、溶解したシクロスポリンの濃度は約4.0mg/mLである。
【0044】
好ましくは、上記の実施形態または好ましいもののいずれかなどの、得られる組成物は、15〜25℃で熱力学的に安定な透明溶液を提供する。
【0045】
上記実施形態のいずれかにしたがって得られ得る組成物は、医薬として使用することができ、または医薬の製造のために使用することができる。特に、組成物は、乾性角結膜炎もしくはその症状の治療における使用のため、またはマイボーム腺機能障害もしくはその症状の治療における使用のために使用することができる。好ましくは、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがって得られ得る組成物は眼科用組成物であり、目の表面、および、角膜または結膜などの、外用投与でアクセス可能であり得る目の任意の領域または組織に外用投与するために使用される。
【0046】
本発明は、a)シクロスポリンの全質量に基づいて約1.6質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップ、およびb)前記シクロスポリンを1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解させるステップを含む、上記実施形態または好ましいもののいずれかに記載される組成物を調製する方法をさらに提供する。
【0047】
この方法のさらなる実施形態は、以下の実施形態による組成物を調製する方法を含み得る:
1.1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が約2.6mg/mLより高い、組成物。
2.組成物の残留水含有量が約0.04mg/mL未満である、項目1に記載の組成物。
3.15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が、約2.6〜4.8mg/mL、または好ましくは約3.0〜4.8mg/mLの範囲内である、項目1または2のいずれかに記載の組成物。
4.1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、組成物が約0.04mg/mL未満の残留水含有量を有する、組成物。
5.15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が約0.5〜4.8mg/mLである、項目4に記載の組成物。
6.共溶媒がエタノールである、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
7.溶液が15〜25℃で熱力学的に安定である、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
【0048】
本発明はさらに、上記実施形態または好ましいもののいずれかに記載される組成物を調製する方法、すなわち、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まない、組成物を調製する方法であって、a)シクロスポリンの全質量に基づいて約1.0質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップ、およびb)前記シクロスポリンを1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解させるステップを含む、方法をさらに提供する。
【0049】
さらなる実施形態では、ステップa)は、シクロスポリンの質量に基づいて、約0.8質量%、または0.7質量%、または0.6質量%、または0.5質量%または好ましくは0.4質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供することであり得る。別の実施形態では、ステップa)は、シクロスポリンの質量に基づいて、約0.3質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供することであり得る。
【0050】
またさらなる実施形態では、上記の方法は、以下の組成物を調製するためのものであり得る:
1.1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が約0.5〜4.8mg/mL、またはより好ましくは約0.5〜3.0mg/mL、または約0.5〜1.0mg/mLである、組成物。
2.1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が約3.0〜4.8mg/mLの範囲内である、組成物。
3.共溶媒がエタノールである、項目1または2のいずれかに記載の組成物。
4.溶液が15〜25℃で熱力学的に安定である、項目1〜3のいずれかに記載の組成物。
【0051】
さらに、方法のステップa)は、シクロスポリンの全質量に基づいて約1.6質量%または約1.6質量%より高い水含有量を有するシクロスポリンを乾燥させることを含み得る。
【0052】
低い残留水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップ、例えば、シクロスポリンの全質量に基づいて約1.0質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップは、より高い水含有量、例えば、シクロスポリンの全質量に基づいて1.6質量%より高い、またはシクロスポリンの全質量に基づいて約1.3質量%、または約1.4質量%または約1.5質量%より高い水含有量を有するシクロスポリンを乾燥させるステップを含み得る。
【0053】
特に、約1.0質量%、0.8質量%、または0.6質量%、または好ましくは0.4質量%未満の水含有量を有するシクロスポリンを提供するステップは、より高い水含有量を有するシクロスポリン、好ましくは、シクロスポリンの全質量に基づいて約1.6質量%、または1.6質量%より高い水含有量を有するシクロスポリンを乾燥処理に供するステップを含み得る。乾燥の方法としては、真空下、場合により吸湿剤または乾燥剤の存在下で、シクロスポリンを乾燥させることが挙げられるがこれに限定されない。乾燥の継続時間、および方法は、シクロスポリンの標的とする水含有量値を提供するために適合させることができる。
【0054】
本発明のさらなる実施形態は以下の通りであり得る:
1.1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解したシクロスポリンを含む透明溶液の形態の組成物であって、組成物が共溶媒を本質的に含まず、かつ、組成物が約0.03mg/mL未満の残留水含有量を有する、組成物。
2.15〜25℃でのシクロスポリンの濃度が約0.5〜4.8mg/mLである、項目1に記載の組成物。
3.共溶媒がエタノールである、任意の先行する項目1または2に記載の組成物。7.
4.溶液が15〜25℃で熱力学的に安定である、任意の先行する項目に記載の組成物。
5.薬剤として使用するための、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
6.乾性角結膜炎もしくはその症状の治療において使用するため、またはマイボーム腺機能障害もしくはその症状の治療において使用するための、項目5に記載の使用のための組成物。
【0055】
以下の実施例は、例を挙げて本発明を説明するためのものであるが、これらは本発明の範囲を制限するものと理解するべきではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
ダブルツイン微小熱量計に挿入された28mmの2チャンバー熱量測定セルを使用して25℃でのシクロスポリンの等温収着熱量測定を行った。真空下、モレキュラーシーブでシクロスポリンを1日乾燥することによって調製した乾燥資料を上(収着)チャンバーに置き、純水を下(気化)チャンバーに注入した。気化チャンバーにおいて記録された蒸発水のパワーから水分活性を算出した。シクロスポリンは99% RHの相対湿度にさらされた時に約8質量%までの水を含み得ることが分かった。
【0057】
図1は、25℃での収着熱量測定で得られたシクロスポリンの水収着を描写する。
図1の挿入図は、より高い相対湿度(RH)レベルでのシクロスポリン収着等温線の拡大区画である。99.25% RHでのシクロスポリンの水含有量は約7.41質量%である。
【0058】
次いで、1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度をその水含有量の関数として決定した。上記の通りに乾燥させた試料を室温下、固定された異なる相対湿度のデシケーター中で5日間インキュベートした。飽和した塩溶液(LiCl、MgCl2、Mg(NO
3)
2、NaCl、K
2SO
4)を使用してデシケーター中で様々な相対湿度に調製した。
【0059】
インキュベーション後に、各試料の過剰のシクロスポリンを1−パーフルオロブチル−ペンタンに加え、各試料を密封し、オービタルシェーカー(IKA KS130 Basic、IKA(登録商標)−Werke GmbH & Co)を使用して一定の攪拌および温度(室温)で3日間インキュベートした。結果として生じた飽和溶液を0.2μmのPTFEシリンジフィルターで濾過し、アセトニトリルでの希釈(50、100または200の希釈係数)した後、逆相HPLC−UVによって濃度を決定した。アセトニトリル中で調製した標準溶液(10〜100μg/mL)の検量線からシクロスポリンの濃度を算出した。シクロスポリンの水収着等温線に基づいて、シクロスポリンの水含有量の関数として1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度を決定することができた。表1は、得られたデータセットを描写する。
【0060】
【表1】
【0061】
図2Aは、相対湿度の関数として1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度を描写し、
図2Bは、シクロスポリン中の水含有量の関数として1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度を描写する1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度は、シクロスポリン中の水含有量残留物がシクロスポリンの全質量に基づいて1.6質量%未満の時から急速に増加し始めることが観察された(
図2B)。
【0062】
乾燥手順前(すなわち、未処理)および乾燥(すなわち、上記の通りに真空下およびモレキュラーシーブの存在下で1日)後のシクロスポリンのカール・フィッシャー滴定測定も得、1−パーフルオロブチル−ペンタン中の最大溶解度を同様に決定した。結果を表2に要約する。
【0063】
【表2】
【0064】
約1.6質量%未満、特に1.0質量%未満などの、低減した低い水含有量を有するシクロスポリンを使用した時に、1−パーフルオロブチル−ペンタン中に溶解した有意により高い濃度、すなわち、約2.6mg/mLより高い、最大4.8mg/mLのシクロスポリンを得ることができる。シクロスポリンの質量に基づいて約0.4質量%の低減した水含有量を有するシクロスポリンを使用して、1−パーフルオロブチル−ペンタン中のシクロスポリンの溶解度の約1.6倍の予想外の増加が観察された。