(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載の1以上の一般式(I)のポリエーテル、又は請求項4〜7のいずれかに記載の1以上の反応生成物の、微粒子状固体を含む組成物中の該微粒子状固体のための湿潤剤及び分散剤としての使用。
請求項1又は2のいずれかに記載の1以上の一般式(I)のポリエーテル、又は請求項3に記載の1以上の湿潤剤及び/若しくは分散剤、又は請求項4〜7のいずれかに記載のプロセスによって獲得可能な1以上の反応生成物と、さらに顔料及び/又は充填剤と、を含む、組成物。
前記式(I)のポリエーテル、前記湿潤剤及び分散剤、又は請求項4〜7に記載のプロセスのいずれかに記載の反応生成物は、組成物の総重量基準で0.1〜10重量%の量で存在する、請求項10〜12のいずれかに記載の組成物。
前記組成物は、三水酸化アルミニウム、白亜、粘土、硫酸バリウム、及び水酸化マグネシウムから成る群から選択される1以上の充填剤を含む、請求項10〜14のいずれかに記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
用語「有機ラジカル」は本明細書において、脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族ラジカルを表す。
【0021】
用語「脂肪族ラジカル」は本明細書において、IUPAC命名法(キーワード:「脂肪族化合物」、ピュアアンドアプライドケミストリ(Pure&Appl.Chem.)、第67巻(8/9)(1995年)、p.1307−1375、1313)に従い、当該ラジカルが炭素化合物の非環式又は環式、飽和又は不飽和、非芳香族ラジカルであるということを意味する。したがって、脂肪族ラジカルの概念はまた、環状脂肪族ラジカル(脂環式ラジカルともいう)をも含む。カルボキシル基(COOH基)は炭素化合物、即ちギ酸の非芳香族ラジカルであるので、カルボキシル基が明白に除外されていないラジカルについては、脂肪族ラジカルは原則としてカルボキシル基であってもよい。脂肪族ラジカルは慣例上、炭素原子と共に水素原子を含有する。さらに、脂肪族ラジカルはまた、ヘテロ原子を含んでもよく、このような場合のラジカルはヘテロ脂肪族ラジカルと呼ばれる。
【0022】
用語「芳香族ラジカル」は本明細書において、慣例的な意味に従い、当該ラジカルが、ヒュッケル則に従い、共役二重結合、自由電子対、又は非占有p軌道において、4n+2(n≧0)の数の非局在化電子を含有する、炭素化合物の環系のものであることを示す。芳香族ラジカルは慣例上、炭素原子と共に水素原子を含有する。さらに、芳香族ラジカルはまたヘテロ原子を含んでもよく、このような場合のラジカルはヘテロ芳香族ラジカルと呼ばれるものである。ヘテロ芳香族中の好ましいヘテロ原子は、例えば窒素原子及び/又は酸素原子である。
【0023】
用語「芳香脂肪族ラジカル」は本明細書において、1以上の芳香族ラジカルで置換された脂肪族ラジカルを示す。
【0024】
用語「炭化水素ラジカル」は本明細書において、IUPAC命名法に従い、炭素原子及び水素原子のみを含有するラジカルを表す。このようなラジカルが追加で1以上のヘテロ原子(例えばエーテル酸素原子)を含んでいてもよいか又はヘテロ原子基(例えば水酸基)を含有する1以上のラジカルで置換されている場合には、この事実は明白に言及される。
【0025】
ラジカルR
1
カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、イミノ、及びまた一級及び二級のアミノ基を含まない、一価の有機ラジカルR
1は好ましくは、炭素数1〜80又は1〜50、より好ましくは1〜20、及び非常に好ましくは1〜16、なおより好ましくは炭素数1〜12の有機ラジカル、炭素数6〜30又は6〜20、より好ましくは1〜16、及び非常に好ましくは炭素数1〜12の芳香族ラジカル、又は炭素数7〜40又は7〜30、より好ましくは7〜20、及び非常に好ましくは炭素数7〜12の芳香脂肪族ラジカルである。記載されたラジカルが上記の条件を満たす場合、それらは定義に従い、例えばポリオキサゾリンラジカルのようにヘテロ原子も含んでよい。
【0026】
一価の有機ラジカルR
1が脂肪族ラジカルである場合、それは好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは1〜20、及び非常に好ましくは1〜10の分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素ラジカルであるか、又は炭素数2〜40、より好ましくは2〜20、及び非常に好ましくは2〜10の分枝状又は非分枝状の不飽和炭化水素ラジカルであり、分枝状脂肪族ラジカルは当然、少なくとも3個の炭素原子を有する。
【0027】
使用される脂肪族エチレン性不飽和ラジカルR
1はまた、アリル又はビニル基を含有するラジカルであってもよい。例えばアクリロイル又はメタクリロイルラジカルを含有するラジカルR
1は、例えばラジカルH
2C=CH−(CO)−O−CH
2CH
2又はH
2C=C(CH
3)−(CO)−O−CH
2CH
2のような、それらのラジカルのサブグループである。このようなラジカルを導入することにより、例えば式(I)のポリエーテルを、放射線硬化性組成物、特に放射線硬化性コーティング材料組成物に確実に導入することが可能となる。
【0028】
一価の有機ラジカルR
1が芳香族ラジカルである場合、それは好ましくは炭素数6〜30又は6〜20、より好ましくは6〜16、及び非常に好ましくは6〜10の炭化水素ラジカルである。この芳香族ラジカルはこの場合、置換基として脂肪族炭化水素ラジカルを有していてもよく、この場合それらの炭素数は上述した芳香族ラジカル中の炭素原子数に含まれる。故に、例えばメチルフェニルラジカルは炭素数7の芳香族ラジカルである。
【0029】
一価の有機ラジカルR
1が芳香脂肪族ラジカルである場合、それは好ましくは炭素数7〜40又は7〜30、より好ましくは7〜20、及び非常に好ましくは7〜12の炭化水素ラジカルである。例えばベンジルラジカルとも呼ばれるフェニルメチルラジカルは、炭素数7の芳香脂肪族ラジカルである。この場合のラジカルは置換基として、芳香環上に、さらなる例えば脂肪族炭化水素ラジカルを有していてもよく、この場合それらの炭素数は上述した芳香脂肪族ラジカルの炭素原子数に含まれる。故に、例えばパラメチルベンジルラジカルは炭素数8の芳香脂肪族ラジカルである。
【0030】
本発明の文脈において、式(I)の一般構造中で実現されるラジカルR
1は特に、前述の脂肪族ラジカルであり、及びとりわけ、前述の好ましい、より好ましい、及び非常に好ましい脂肪族炭化水素ラジカルである。特に好ましくは、これらのラジカルはヘテロ原子を含まない。
【0031】
ラジカルR
1については、重合性の炭素炭素二重結合又は重合性の炭素炭素三重結合を有し得るのが一般的であるが、ラジカルR
1は好ましくは、重合性の炭素炭素二重結合又は重合性の炭素炭素三重結合を含まない。
【0032】
ラジカルR
2(u=0)
u=0の場合、R
2は式CHR
2aCHR
2bの二価の有機ラジカルである。本明細書においては好ましくはラジカルR
2a及びR
2bの少なくとも一方は水素である。
【0033】
u=0の場合にラジカルR
2a及びR
2bの両方が水素である場合には、ラジカルCHR
2aCHR
2bはエチレンラジカルCH
2CH
2である。
【0034】
逆に、u=0の場合にラジカルR
2a及びR
2bのうちの一方のみが水素である場合、他方の非水素ラジカルは好ましくは、炭素数1〜20、好ましくは1〜16、より好ましくは1〜10又は1〜9の、分枝状又は非分枝状、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の脂肪族ラジカル、炭素数6〜16、より好ましくは6〜12、及び非常に好ましくは6〜10の芳香族ラジカル、又は炭素数7〜18、好ましくは7〜14、及びより好ましくは7〜12の芳香脂肪族ラジカルである。
【0035】
u=0であり且つラジカルR
2a及びR
2bのうちの厳密に一方が水素である場合、前記脂肪族ラジカルのうち、炭素数1〜20、好ましくは1〜16、より好ましくは1〜10又は1〜9の好ましくは飽和の炭化水素ラジカルであるものが好ましい。ラジカルR
2a又はR
2bのうちの厳密に一方が水素であり且つ他方がメチル基である場合、ラジカルCHR
2aCHR
2bはイソプロピレンラジカルである。
【0036】
脂肪族、好ましくは飽和炭化水素ラジカルはまた、1以上のエーテル酸素原子−O−及び又は1以上のカルボン酸エステル基−O−C(=O)−を含有してもよい。他のヘテロ原子、特に窒素原子は好ましくは、これらのラジカルには含まれない。エーテル酸素原子又はカルボン酸エステル基が存在する場合には、対応するラジカルは好ましくは厳密に1つのエーテル酸素原子又は厳密に1つのカルボン酸エステル基を含有する。カルボン酸エステル基の場合、その中の炭素原子はそのラジカル中の炭素原子の総数に加算される。前述した好ましい脂肪族ラジカルR
2a又はR
2bは、エーテル酸素原子もカルボン酸エステル基も含有しないか又は厳密に1つのエーテル酸素原子又は1つのカルボン酸エステル基を含有する、炭化水素ラジカルであることが好ましい。
【0037】
脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族ラジカルR
2a又はR
2bが厳密に1つのエーテル酸素原子又は厳密に1つのカルボン酸エステル基を有するラジカルである場合、これらのラジカルは式CH
2−O[CO]
i−R
2cを有することが特に好ましく、式中iは0又は1であり、R
2cは炭素数1〜18、好ましくは1〜14、及びより好ましくは1〜10の炭化水素ラジカルである。i=0の場合には、ラジカルR
2cは厳密に1つのエーテル酸素原子を含有し、i=1の場合には、ラジカルR
2cは厳密に1つのカルボン酸エステル基を含有する。非常に好ましくはこれらの基においてi=0である。
【0038】
炭化水素ラジカルR
2cが脂肪族ラジカルである場合、それは分子状又は非分枝状である。炭化水素ラジカルR
2cが非分枝状の脂肪族ラジカルである場合、好ましくは1〜19、より好ましくは1〜15、又は非常に好ましくは1〜9又は1〜8個の炭素原子を含有する。ラジカルR
2cが分枝状の脂肪族ラジカルである場合、それは好ましくは3〜19、より好ましくは3〜15、又は非常に好ましくは3〜9又は4〜8個の炭素原子を含有する。
【0039】
炭化水素ラジカルR
2cが芳香族ラジカルである場合、それは好ましくは6〜14、より好ましくは6〜12、又は非常に好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する。
【0040】
炭化水素ラジカルR
2cが芳香脂肪族ラジカルである場合、それは好ましくは7〜16、より好ましくは7〜12、又は非常に好ましくは7〜10個の炭素原子を含有する。
【0041】
u=0に対する式(I)中、異なる種類のラジカルCHR
2aCHR
2bが示される場合、それらはブロック状、ランダム状、又は勾配状に配列されてよい。例えばv=20であり且つ例えば20個のラジカルCHR
2aCHR
2bのうち10個についてはR
2a=R
2b=Hが成り立つ、及び20個のラジカルCHR
2aCHR
2bのうち残りの10個についてはR
2a=H及びR
2b=CH
3が成り立つ場合には、ラジカル(O−R
2)
20はいずれの場合にも10個のエチレンオキシドユニット及び10個のプロピレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドラジカルであり、これらの20個のユニットは、2つ以上のブロックにおいてランダム状に又は勾配状に配列されることができる。
【0042】
ラジカルR
2(u=1)
u=1の場合、R
2は好ましくは、炭素数2〜24、より好ましくは2〜16、より好ましくは2〜8、及び非常に好ましくは4又は5の、分枝状又は非分枝状、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の、脂肪族炭化水素ラジカルである。
【0043】
u=1に対する式(I)において、異なる種類のラジカルR
2が示される場合、それらはブロック状、ランダム状、又は勾配状に配列されていてよい。
【0044】
u=0及びu=1の場合のラジカルR
2は式(I)において同時に実現される
v個のラジカル[O−(C=O)
u−R
2]のいくつかについてはu=0且つv個のラジカル[O−(C=O)
u−R
2]のうちその他のものについてはu=1が同時に成り立つ場合には、上記の記述が等しく当てはまる。さらに[O−R
2]及び[O−(C=O)−R
2]ラジカルも同様に、ブロック状、ランダム状、又は勾配状に配列されていてよい。しかしながら、[O−R
2]ラジカル及び[O−(C=O)−R
2]ラジカルが別のブロック中に存在することが好ましい。この好ましい配列内で、それらのブロック内の[O−R
2]ラジカルは同様にブロック状又はランダム状であり、及びそれらのブロック内の[O−(C=O)−R
2]ラジカルは好ましくはブロック状又はランダム状である。好ましくはu=1に対するブロックのうち少なくとも1つはラジカルR
1に結合されている。
【0045】
一般にはラジカル[O−(C=O)
u−R
2]については、u=0であると好ましい。
【0046】
ラジカルR
3、R
4、R
7、及びR
8
ラジカルR
3、R
4、R
6、R
7、及びR
8は互いに独立して、水素又は一価の有機ラジカルであり、後者は炭素数1〜8の脂肪族ラジカル、炭素数6〜8の芳香族ラジカル、又は炭素数7〜10の芳香脂肪族ラジカルから成る群から選択される。
【0047】
特に好ましくはラジカルR
3、R
4、R
7、及びR
8は水素又は炭素数1〜8の非分枝状アルキルラジカル又は炭素数3〜8の分枝状アルキルラジカルである。非常に好ましくはラジカルR
3、R
4、R
7、及びR
8は水素及び/又はメチルであり、最も好ましくは水素である。
【0048】
ラジカルR
5
ラジカルR
5はラジカルR
5a又はR
5bである。
【0049】
本明細書において、R
5aは、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、イミノ、及びまた一級及び二級のアミノ基を含ず、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素ラジカル、炭素数6〜12の芳香族炭化水素ラジカル、及び炭素数7〜24の芳香脂肪族炭化水素ラジカルから成る群から選択される一価の有機ラジカルであり、この際上述の全ての炭化水素ラジカルはエーテル酸素原子を含有していてもよい。当該ラジカル中の水素原子はハロゲン原子、好ましくは塩素原子によって置換されていてもよく、かかる置換基が存在する場合、モノクロロ置換ラジカルが好ましい。
【0050】
特に好ましくは、R
5aは分枝状又は非分枝状ラジカルCH
2−O−(C
1−10アルキル)又はラジカルCH
2−O−フェニルである。
【0051】
ラジカルR
5aがエーテル酸素原子を含有する場合、このラジカル好ましくはラジカルCH
2−O−R
5dであり、式中R
5dは、エーテル酸素原子もカルボキシル、ヒドロキシル、チオール、イミノも、また一級及び二級のアミノ基をも含まず、好ましくは炭素数1〜8の脂肪族炭化水素ラジカル、炭素数6〜8の芳香族炭化水素ラジカル、炭素数7〜20の芳香脂肪族炭化水素ラジカルから成る群から選択される一価の有機ラジカルである。ラジカルR
5dはしかしながら、例えば、このラジカルR
5dに割り当てられた基C=Oを介してラジカルCH
2−O−R
5d中の酸素原子に結合されていてもよい。ラジカルR
5dはまた、例えばラジカル−S(=O)
2−フェニルであってもよい。
【0052】
ラジカルR
5bはラジカルCH
2−O−R
5cであり、式中R
5cは水素であるか又は1以上の水酸基を含有し及び好ましくは1以上のエーテル酸素原子を含有し、炭素数1〜24の脂肪族ラジカル、炭素数6〜14の芳香族ラジカル、及び炭素数7〜18の芳香脂肪族ラジカルから成る群から選択される一価の有機ラジカルである。
【0053】
ラジカルR
5bが1以上の水酸基及び1以上のエーテル酸素原子を含有する一価のラジカルである場合には、このラジカルは、ラジカルR
5b=CH
2−O−R
5c(R
5c=H)、即ちラジカルCH
2−OHから出発して、例えばオキシラン、ラクトン、ラクチド、又はオキセタン、特にヒドロキシオキセタンの開環重合によって、又はヒドロキシカルボン酸の縮合によって構築され得る。この目的のために好適な種については一般式(IV)、(V)、(Va)、(Vb)、及び(VII)として後述する。
【0054】
R
5cが水素である場合には、v+wユニットの最大で50%、より好ましくは1〜30%、及び非常に好ましくはv+wユニットの1〜20%についてこのことが当てはまることが好ましい。即ち、例えばv+w=4+12=16の場合には、12の「wユニット」のうち8以下のユニットにおいてR
5cが水素であるのが好ましいということになる。
【0055】
好ましいラジカルR
5bのうちでも1以上の水酸基を含有し及び/又は1以上のエーテル酸素原子を含有するものが好ましい。次に、これらのうち、そのエーテル酸素原子が最短鎖において2又は3個の炭素原子によりさらなるエーテル酸素原子又はOH基に接続されているもの、即ち、炭素原子上の可能な置換基又は水素原子とは独立に、以下のモチーフ:−O
*−C−C−O
**−又は−O
*−C−C−C−O
**−を有するものが好ましい。本明細書において、*の付された酸素原子は少なくとも1つのエーテル酸素原子であり、**の付された酸素原子はさらなるエーテル酸素原子又はOH基中の酸素原子である。OH基が部分的に又は完全にラジカルOTに変換される場合には、OH基についての上述の記載がまた、ラジカルOTに対しても有効である。
【0056】
非常に好ましくは1以上のエーテル酸素原子及び1以上の水酸基を含有する有機ラジカルR
5cは一般式(II)のラジカルであり:
【0058】
式中R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9は互いに独立してそれぞれ、上記又は下記で定義され、pは1〜10、好ましくは1〜6、及びより好ましくは1〜3である。好ましくは、w+pは≦30の値、より好ましくは1〜20の値、非常に好ましくは1〜10の値、及びなお良好には1〜8、1〜6、又は1〜5の値である。こうしたラジカルは、ヒドロキシルラジカル、より特には式CH
2−O−R
5c(R
5c=H)、即ちCH
2−OH中のヒドロキシルラジカルへの下記にて後述する一般式(VII)のオキシランの付加反応によって導入されてよい。
【0059】
ラジカルR
6
ラジカルR
5がラジカルR
5bである場合には、ラジカルR
6は好ましくはラジカルR
5aと同様に定義されるか、又は水素である。特に好ましくは、ラジカルR
6は炭素数1〜10、非常に好ましくは2〜6、及びなお良好には2〜4、より特には2のアルキルラジカルである。
【0060】
連結されたラジカルR
5及びR
6
ラジカルR
5及びR
6は環閉鎖によって連結されていてもよい。こうした環は好ましくは4又は5個の炭素原子及び任意でN−アルキル化窒素原子を含有する。
【0061】
一般式(I)及び(II)におけるラジカルR
9
ラジカルR
9は水素であるか、又は炭素数1〜24の脂肪族ラジカル、炭素数6〜14の芳香族ラジカル、及び炭素数7〜18の芳香脂肪族ラジカルから成る群から選択される一価の有機ラジカルである。ラジカルR
9中の水酸基は好ましくは、全体又は一部が−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、及び−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aから成る群から選択されるラジカルOTに転換されていてもよく、式中、xは0、1、又は2であり、yは0又は1であり、sは0又は1であり、tは0又は1であり、s=0のときまたt=0であり、式中T
aは任意で以下のラジカルCOO
・−Z
・+、−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、及び−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y(上述の定義を有する)のうち1つ以上を含んでいてもよい炭素数1〜100の一価の有機ラジカルであり、及びラジカルZ
・+は互いに独立してアルカリ金属カチオン、好ましくはLi
+、Na
+、又はK
+、式
+N(R
9a)
4のカチオンであり、式中、ラジカルR
9aは互いに独立して水素又は有機ラジカルである。4つのラジカルR
9a全てが水素である場合には、このイオンはアンモニウムイオンである。ラジカルR
9aの全てが炭化水素ラジカル、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素ラジカルである場合には、このラジカルは四級アンモニウムラジカルの特定の実施形態と呼ばれる。
【0062】
ラジカルR
9が炭素数1〜24の脂肪族ラジカルである場合には、特に好ましくはそれは式:[R
9b(CO)
mO]
nR
9cのラジカルであり、式中、R
9bはR
2と同様に定義されれ、R
9cは水素であるか又はTと同様に定義され、mはuと同様に定義され、及びnはvと同様に定義され、且つR
9bはR
2とは独立に選択され、R
9cはTとは独立に選択され、mはuとは独立に選択され、及びnはvとは独立に選択される。
【0063】
一般式(I)及び(II)中のラジカルTの少なくとも1つは必ず、ラジカルP(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又はS(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yを含むかそれらから成る。
【0064】
基OTによる水酸基の置換
上述したように、上記のラジカルR
5b及びR
9を介して又は加水分解的に除去可能なラジカルの除去の結果として発生した水酸基の10〜100モル%、好ましくは20%〜100モル%、より好ましくは30%〜100モル%は、(i)ラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、(ii)ラジカル−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、及び/又は(iii)ラジカル−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
a(これらのラジカルの定義は上述の通り)によって置換され、上記ラジカルTの少なくとも1つはラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又はラジカル−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yであるか、又はラジカルT
aがラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又は−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yのうちの少なくとも1つを含む。式(I)の種において異なるラジカル(i)、(ii)及び(iii)が発現されることも可能であるが、典型的には式(I)のあるポリエーテルにおいて、ラジカル(i)、(ii)、又は(iii)のうちの1種又は2種のみが存在することが好ましい。1種のみのラジカルが存在する場合、当該ラジカルは−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又は−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yである。その場合における全てのパーセンテージの特定もまた、(i)、(ii)及び(iii)単独に対する限定を表す。このことは、即ち、ヒドロキシルラジカルが全体的に又は部分的にラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xのみによって置換される限りにおいて、限定「10〜100モル%」、「20%〜100モル%」、及び「30%〜100モル%」はまたこれらの種単独に対して有効であるということを意味する。しかしながら、水酸基の各5モル%が、例えば種−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又は−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yによって置換され、それによって合計で、同様に下限値の10モル%を実現するということも考えられる。
【0065】
上記のラジカルR
5b及びR
9を介して又は加水分解的に除去可能なラジカルの除去の結果として発生する水酸基の好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20%〜100モル%、及び非常に好ましくは30%〜100モル%は、ラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、又は上記の2つのラジカルのうちの少なくとも1つを含むラジカルT
aのうちの少なくとも1つによって置換されている。
【0066】
上記のラジカルR
5b及びR
9を介して又は加水分解的に除去可能なラジカルの除去の結果として発生する水酸基のうち、非常に好ましくは10〜100モル%、なお良好には20%〜100モル%、及び理想的には30%〜100モル%は、少なくとも1つのラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又は少なくとも1つのラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xを含むラジカルT
aによって置換されている。
【0067】
式(I)又は(II)の種がラジカル−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aを含む場合、そのT
aがCOOH及び−COO
・−Z
・+ラジカルを含まないことが好ましい。
【0068】
v、w、及びpの値
v、w及びpの積算値は一般式(I)の各個別の種において発現される。特に、v、w及びpが小さな値の場合、一般式(I)のポリエーテルは、数平均分子量と重量平均分子量とが等しい分子的に均質な生成物を表し得る。v、w、及びpが大きな値の場合、個々の種の数値平均に相当する、v、w、及びpについての平均値のみが特定可能であり得る。v、w、及びpについて数平均の値が存在する場合には、それらはv、w、及びpの値について特定される限定の範囲内になくてはならない。
【0069】
好ましくはvの値は1〜50であり、より好ましくはvは2〜45、非常に好ましくは6〜40の値を有する。
【0070】
好ましくはwの値は1〜15であり、より好ましくはvは1〜10、非常に好ましくは1〜6の値を有する。
【0071】
分子量
一般式(I)のポリエーテルは好ましくは800〜5000g/mol、より好ましくは900〜4000g/mol、非常に好ましくは1000〜3500g/molの重量平均分子量M
w(実験の項に詳述するGPCにより決定)を有する。多分散性P
Dは同様にGPCにより決定可能であり、好ましくは1.05〜2.0、より好ましくは1.05〜1.8、及び非常に好ましくは1.1〜1.6である。
【0072】
特に好ましい式(I)のポリエーテル
上述したラジカル及び添え字の値は原則として上記で特定した範囲内で自由に組み合わせることができるが、特に親水性及び疎水性の範囲を式(I)のポリエーテル及び/又は本発明の湿潤剤及び分散剤の各適用プロファイルに良好に適合できるようにするために、下記に述べる組み合わせが、色素性の組成物、特に色素性のコーティング材料組成物の分野に対して特に有利であることが分かってきた。
【0073】
式(I)のポリエーテルにおいて特に好ましくは:
R
1は、炭素数1〜20、なお良好には1〜16又は1〜12の分枝状又は非分枝状アルキルラジカル、又は炭素数6〜10の芳香族ラジカルであり、
uは好ましくは0であり、
R
2は好ましくはエチレンラジカル及び/又はプロピレンラジカルであり、
vは好ましくは4〜50の値、より好ましくは6〜40の値を有し、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は好ましくは水素であり、
R
5は好ましくはラジカルR
5b、即ちラジカルCH
2−O−R
5cであり、式中R
5cは好ましくは、水素であるか、好ましくは2〜24個の炭素原子を含有し及び任意で1以上の水酸基及び1以上の酸素原子を含有する一価の脂肪族炭化水素ラジカルであるか、又は炭素数6〜8の芳香族ラジカルであり、
R
6は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは2〜5、及び非常に好ましくは2、3、又は4のアルキルラジカルであり、及び
R
9は好ましくはHであり、好ましくはラジカルR
5b及びR
9を介して又は加水分解的に除去可能なラジカルの除去の結果として発生する水酸基の10〜100モル%は基P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xによって置換されており、式中x及びZ
+は上記で定義した通りである。
【0074】
本発明のポリエーテルを含む又はそれらから成る湿潤剤及び/若しくは分散剤
本発明はまた、1以上の一般式(I)のポリエーテルを含むか又はそれらから成る湿潤剤及び/若しくは分散剤に関する。それらを本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤ともいう。
【0075】
それらの湿潤剤及び/若しくは分散剤は下記の項において述べるようにして製造される。これらの湿潤剤及び分散剤は好ましくは一般式(I)のポリエーテルから成る。しかしながら、それらの湿潤剤及び/若しくは分散剤はまた溶解された形態で存在してもよい。保存安定性が必要とされる場合には、かかる溶液は、溶解されている固体に関して不活性な溶媒を用いて調製される。好適な有機溶媒は、例えばエーテル、エステル、芳香族及び脂肪族の炭化水素であるが、水も使用できる。本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤のエチレン性不飽和モノマー性化合物(反応性希釈剤として知られる)中の溶液も同様に可能である。式(I)のポリエーテルの合成の文脈において記載される溶媒又は前記溶媒の混合物を使用することも可能である。
【0076】
特定の状況下では、以下に述べる合成に従って製造された湿潤剤及び/若しくは分散剤は副生成物を含む場合があり、そのため、反応生成物は100重量%が一般式(I)の種から成るのではない場合がある。一般式(I)の種は好ましくは反応生成物の主な構成成分であり、即ち、以下に記載する合成は好ましくは、反応生成物の重量基準で50重量%よりも多い、より好ましくは少なくとも60、又は少なくとも65重量%、及び非常に好ましくは少なくとも70重量%の式(I)を満たす種を含有する反応生成物をもたらす。基準点は反応生成物の重量であるため、これらの特徴は、例えば反応生成物において化学的に結合されない、溶媒及び触媒等のいずれかの補助剤の最初の質量を含んでいない。この重量百分率はしたがって、反応物の最初の質量の合計マイナス反応水又はアルコール等の形成されたいずれかの除去生成物を基準としている。理想的なシナリオにおいては、反応生成物は一般式(I)の種から成る。いずれかの副生成物が存在する場合、それらは一般に除去される必要はない。このような場合、いずれかの副生成物を含む反応生成物が湿潤剤及び/若しくは分散剤として採用される。
【0077】
本発明の湿潤剤及び分散剤又は一般式(I)ポリエーテルの製造プロセス
本発明に従って採用される式(I)のポリエーテル、又はこれらのポリエーテルを含むかそれらから成る本発明の湿潤剤及び分散剤は、好ましくは開環重合によって、非常に好ましくはカチオン開環重合によって得られる。カチオン重合は当業者に既知の慣例的な方法によって行われる。好適なプロセスパラメータ、触媒、及び反応媒体は国際公開第2002/040572号及びそこに記載された参考文献を含む刊行物中に見出すことができる。
【0078】
以下の例は、本発明に従って採用される式(I)のポリエーテル、及び、これらのポリエーテルをそれぞれ含む又はそれらから成る本発明の湿潤剤及び分散剤の、対応するプロセススキームによる製造を、一般的な形態において述べている。
【0079】
以下で使用されるラジカルの表記、及び添え字の使用は、式(I)のポリエーテルに関連したラジカルの上記の定義の全てに対応する。故に、例えば式(I)中のラジカルR
1は式R
1OH中のラジカルR
1に対応する。したがって、全ての以下の表記は式(I)に関する表記と同一である。式(I)において定義されたラジカル及び添え字の特定の実施形態が製造プロセスに関して与えられる限りにおいて、それらはまた、式(I)の特定の実施形態でもあると考えるべきである。このことは、特定の化合物から直接誘導可能であるラジカルにも等しく当てはまる。
【0080】
本発明の式(I)のポリエーテル又はこれらのポリエーテルを含む又はそれらから成る本発明の湿潤剤及び分散剤の製造は典型的に、式(III)のモノアルコールから出発する:
【0082】
ラジカルR
1は、上述した式(I)の条件を有する、炭素数1〜100の一価の有機ラジカルである。このラジカルの好ましい実施形態は、上記の見出し「ラジカルR
1」の項に記載されている。このラジカルは例えば、基(O−R
2)とは異なるポリオキサゾリン基又はポリエーテル基を含有してもよいが、好ましくはヘテロ原子を含まない。
【0083】
構造ユニット[O−(C=O)
u−R
2]
vは好ましくはu=0に対する式(IV)のオキシランの開環反応によって合成され:
【0085】
式中、R
2a及びR
2bは互いに独立して水素、炭素数1〜20の脂肪族ラジカル、炭素数6〜10の芳香族ラジカル、又は炭素数7〜10の芳香脂肪族ラジカルである。ラジカルR
2a及びR
2bの好ましい実施形態は上述の見出し「ラジカルR
2」の項に記載されている。
【0086】
一般式(IV)の種の一般式(III)の種に対する付加反応によって得られる付加物は、式(IV)の単一の種又は式(IV)の異なる種を用いて得ることができる。後者のケースでは、前記異なる種は同時に使用することができ、これは一般にランダムな分布をもたらすか、又は連続して一般にブロック状の構成をもたらし、又は式(IV)の1つの種が最初に式(IV)のもう1つの別の種よりも過剰に使用され及びその後は不足した割合で存在するような供給の仕方で使用することができ、これにより一般に勾配状の構成がもたらされる。
【0087】
R
2a及びR
2bがそれぞれ水素である場合には、ユニット[O−R
2]はエチレンオキシドユニットである。R
2aが水素であり且つR
2bがメチル基である場合には、ユニット[O−R
2]はプロピレンオキシドユニットである。それにより得られる特に好ましい生成物は、それに応じて、R
1でキャッピングされたポリエチレンオキシド、R
1でキャッピングされたポリプロピレンオキシド、又はR
1でキャッピングされたランダム、ブロック、又は勾配状ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)付加物である。
【0088】
オキセタン重合の出発ユニットとして使用される(III)及び(IV)の付加物はまた、アルコキシル化アルコールから選択することができる。かかるアルコキシル化モノアルコール(例えばバスフ(BASF SE、ルードヴィヒスハーフェン)から商標名ルテンゾル(Lutensol)(登録商標)として入手可能)はエチレンオキシド又はプロピレンオキシド又は両方の、メタノール、ブタノール、n−デカノール、イソデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、又はゲルベアルコール等のアルコール上での塩基触媒開環によって得られる。使用される塩基性アルコキシル化触媒は一般にKOH、NaOH、CsOH、又はKOtBu及びNaOCH
3である。反応は慣例的に80〜140℃の温度及び2〜10バールの圧力で行われる。
【0089】
構造ユニット[O−(C=O)
u−R
2]
vはまた、u=1に対する式(V)のラクトンの開環重合によっても合成されてもよく:
【0091】
式中R
2は上記に定義した通りであり、及びより好ましくは炭素数4〜6の脂肪族炭化水素ラジカルである。
【0092】
例えば式(III)の末端水酸基への縮合反応により結合され得るヒドロキシカルボン酸(Va)も同様に採用可能であるが、遊離される反応水を考慮するとあまり好ましくない:
【0094】
それ自身は水酸基を有さないラジカルR
2に結合された一般式(Va)中の水酸基は、ラジカルR
2中のいずれかの所望の位置において結合されてよい。例えばヒマシ油、又は例えば12−ヒドロキシステアリン酸のようなそれらの水素化された類縁体において生ずる不飽和ヒドロキシカルボン酸が好適である。
【0095】
式(Vb)に表されるようなα−ヒドロキシカルボン酸の環式ジエステル(ラクチドとも言われる)もまた採用可能である。
【0097】
それらの一例として乳酸のジエステルが挙げられ、この場合R
2はCH−CH
3である。
【0098】
ラジカルR
2の好ましい実施形態は上述の見出し「ラジカルR2」の項に述べられている。
【0099】
一般式(III)の化合物への、一般式(V)及び(Vb)の種の単一の又は複数の付加によって、又は式(Va)の種の単一の又は複数の縮合によって得られる付加物は、式(V)、(Va)、及び(Vb)の1以上の種を用いて得てもよい。同時に2以上の異なる種が使用される場合、これによって一般にはそれらが形成する鎖内のラジカルのランダムな分布がもたらされ、それらが連続して使用される場合には、これによって一般にはブロック状の構成がもたらされる。それらが、最初は式(V)、(Va)、又は(Vb)のうちの1種がもう1つの別の種よりも過剰に使用され且つその後でこの種が不足した割合で存在するような態様で供給される場合、一般にはそれによって勾配状の構成がもたらされる。
【0100】
R
2がラジカル(CH
2)
5である場合、一般式(V)の種はε−カプロラクトンであり、及び式(Va)の場合には、それは6−ヒドロキシヘキサン酸である。R
2がラジカル(CH
2)
4である場合、一般式(V)の種はδ−バレロラクトンであり、又は式(Va)の場合には、それは5−ヒドロキシ吉草酸である。それらから得られる好ましい生成物は、それらに応じて、R
1でキャッピングされたポリカプロラクトン、R
1でキャッピングされたポリバレロラクトン、又はR
1でキャッピングされたランダム、ブロック状又は勾配状ポリ(カプロラクトン/バレロラクトン)付加物である。
【0101】
まず一般式(III)の1以上の化合物を式(IV)の1以上の種と反応させ、その後得られた付加物を式(V)、(Va)、及び/又は(Vb)の1以上の種と反応させることも可能である。
【0102】
まず一般式(III)の1以上の化合物を式(V)、(Va)、及び/又は(Vb)の1以上の種と反応させ、次いで得られた付加物を式(IV)の1以上の種と反応させることも同様に可能である。
【0103】
このようにして、例えば、ポリエーテルブロック(u=0)及びポリエステルブロック(u=1)から構成されるブロック状の構成の構造を合成することが可能であり、上述したようにそれらは次にはそれらのブロック内において、ランダム、ブロック、又は勾配状の構成とされ得る。2以上のポリエーテル及び/又はポリエステルブロックが交互となるようにすることも可能である。
【0104】
式(III)の化合物及び式(IV)のオキシラン又は式(V)、(Va)、及び/又は(Vb)の種の選択を通して、下記式(VI)の種内で親水性と疎水性の構造とを組み合わせることも可能である。
【0105】
得られる生成物は好ましくは下記の式(VI)の構造を有する:
【0107】
式(VI)の種に対して、次に1以上の式(VII)のオキセタンを付加することが可能である:
【0109】
ラジカルR
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は式(I)について定義した通りである。ラジカルR
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8の好ましい実施形態は上述の見出し「ラジカルR
3、R
4、R
7、及びR
8」、「ラジカルR
5」及び「ラジカルR
6」、及びそれぞれ、「連結されたラジカルR
5及びR
6」の項で示した通りである。
【0110】
非常に好ましくは、ラジカルR
3、R
4、R
7、及びR
8はメチル又は水素であり、最も好ましくは水素である。
【0111】
ラジカルR
5aの好ましい例は、炭素数1〜20、好ましくは2〜10又は2〜8の直鎖アルキルラジカル、炭素数3〜20、好ましくは4〜10の分枝状又は環状アルキルラジカル、炭素数6〜10のアリールラジカル、炭素数7〜14のアリールアルキルラジカル、炭素数7〜14のアルキルアリールラジカルである。これらのラジカル中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。その場合には、当該ハロゲンは好ましくは塩素である。好ましくは、1つの水素原子だけがハロゲン原子で置換されている。しかしながら特に好ましくは、ラジカルR
5aはハロゲン原子を含まない。
【0112】
同様に好ましいラジカルR
5aはラジカルCH
2−O−R
5dであり、式中R
5dはラジカルR
5a、より特には前の段落中で好ましいとされたラジカルR
5aのうちの1つである。基R
5dが例えばt−ブチル基等の加水分解条件下で容易に除去可能なアルキル基である場合、付加反応が起こった後で除去されてもよく、この場合、式CH
2−OHの基R
5bが形成される。保護基とも呼ばれるさらに容易に除去可能な基は、当業者には既知である。得られる水酸基もまたラジカルOTによる10〜100モル%の範囲までの置換のための水酸基に加算される。
【0113】
この種の市販されている化合物の例として、3−エチル−3−((フェノキシ)メチル)オキセタン(東亞合成株式会社(日本)製、OXT−211)及び3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン(東亞合成株式会社(日本)製、OXT−212)が挙げられる。
【0114】
非常に好ましくはR
5はラジカルR
5bであり及びR
6はR
5aである。
【0115】
式(VII)のオキセタンのカチオン重合は慣例的に、式(VI)の種上で又は式(I)の種において好ましくはその場形成される水酸基上で、触媒の存在下溶媒を加えずに開環により行われる。重合は、しかしながら、重合条件下で不活性である溶媒の使用を伴って行われてもよく、これについては下記で詳細に述べる。
【0116】
開環によりカチオン重合可能な式(VII)の種の付加の順番によって、ラジカル
[C(R
3)(R
4)−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−O]
w
内でランダム、ブロック又は勾配状の構成を得ることが可能である。
【0117】
指数wは式(I)と同様に定義される。
【0118】
式(VI)の種の式(VII)の種との反応は、R
9=H、即ち末端水酸基を有する式(I)の種をもたらす。
【0119】
追加でR
5=R
5bの一般式(I)の種を用いる場合、ラジカルR
5bを介して導入されたさらなる水酸基を含有する種が得られる。
【0120】
これらの水酸基は、式(I)のポリエーテルにおいて末端にあるのではなく、ポリエーテル(I)のポリエーテル骨格上のヒドロキシ官能性側鎖基の形で存在する。
【0121】
ラジカルR
5b中のこれらのペンダント水酸基上に、しかしまたR
9=Hである末端水酸基OR
9上にも、次に式(IV)のオキシラン、式(V)のラクトン、又は式(VI)のオキセタンを付加することも可能であり、このことは結局は、ポリエーテル上のヒドロキシル含有側鎖基から、水酸基とエーテル酸素原子とを含有する側鎖を生成することが可能であること、及び/又はその結果R
9=Hである末端水酸基OR
9が少なくとも1つのさらなる水酸基の形成を伴って変性される、ということを意味している。
【0122】
このようにしてペンダント又は末端水酸基上に付加される式(IV)のオキシラン、式(V)、(Va)、及び(Vb)の種、又は式(VI)のオキセタンがそれ自体水酸基を含有しない場合には、側鎖はモノヒドロキシ官能性のままであり、及び/又は主鎖が延長される。
【0123】
しかし、ペンダント又は末端水酸基上にこのようにして付加される式(VI)のオキセタンがそれ自身水酸基を含有する(これらのオキセタンはまた以下ではヒドロキシオキセタンとも呼ばれる)場合には、このようなヒドロキシオキセタンの各付加は、開環の結果として、すでに存在する水酸基の増殖だけでなく、このヒドロキシオキセタン上に既に存在する水酸基の導入も伴う。開環によって形成される水酸基及びヒドロキシオキセタン上に既に存在する水酸基の両方に対して、それ自身がヒドロキシ官能性、好ましくはモノヒドロキシ官能性であるさらなる式(IV)のオキシラン、式(V)、(Va)、及び/又は(Vb)の種、又は式(VI)のオキセタン、より特には式(VI)のオキセタンが付加されてもよい。この場合、式(I)のポリエーテル上に分枝状の、好ましくは高度に分枝された、又は準樹状の、ヒドロキシオキセタン系構造がペンダント状に又は末端に構築される。ヒドロキシオキセタンの付加反応によって単一の水酸基又は2〜3のペンダント又は末端水酸基が形成されるだけか又は分枝状又は高度分枝状の構造が生成されるかは、使用されるヒドロキシオキセタンの量によって制御することができる。有利には、非ヒドロキシ基含有オキセタンから構成される疎水性のブロックによってヒドロキシオキセタン系ブロックが導入されてもよい。
【0124】
結局は、ヒドロキシ官能性オキセタンの使用又は「非使用」に応じて、得られる生成物の全体の官能性はモノヒドロキシ又はポリヒドロキシとなり、及び本明細書における水酸基は、以下で記載するように、基OTによって完全に又は部分的に(少なくとも水酸基の10モル%)置換することができる。
【0125】
一般には、厳密に直鎖状の式(I)のポリエーテルが得られる事象においては、ヒドロキシオキセタンは採用されず、言い換えるとラジカルR
5bを有する式(VII)のオキセタンは使用されないということを見出すことができる。こうした種はポリオキセタンセグメントにおいて疎水性の性質を有する傾向がある。それでもなお式(I)の両親媒性の種を生成するためには、このような場合におけるR
2a及びR
2bは好ましくは水素であろう。言い換えると、親水性のポリエチレンオキシドセグメントによってポリオキセタンセグメントが導入される。
【0126】
式(I)のポリエーテルの調製時の中間体に存在する水酸基のうち、最終生成物において少なくとも10モル%が基OTで置換されている。ラジカルOTを含有するこの種の式(I)のポリエーテルは、コーティング材料組成物において、しかしまた、特には高固体又は溶媒非含有系及び特に好ましくはSMC及びBMCにおいても、採用することができる。
【0127】
式(I)のポリエーテルの定義に従い、ラジカルR
5b及びR
9中の水酸基の10〜100モル%が以下から成る群から選択されるラジカルOTによって置換される:
(i)ラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、式中xは0、1、又は2である、
(ii)ラジカル−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、式中yは0又は1である、及び
(iii)ラジカル−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
a、式中sは0又は1、tは0又は1であって、s=0のときまたt=0であり、式中T
aは炭素数1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30又は1〜20、及び非常に好ましくは1〜10の一価の有機ラジカルであり、及び任意で以下のラジカルCOO
・−Z
・+、COOH、−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、及び−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yのうちの1以上を含む、
及び、上記ラジカルZ
・+は互いに独立してアルカリ金属カチオン、アンモニウムイオン、又はプロトン化若しくは四級化アミンであり、但しラジカルOTの少なくとも1つはラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又は−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yの少なくとも1つを含むか又はそれらから成る。
【0128】
(i)で特定されるラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xは、例えば無水ポリリン酸、ポリリン酸、又は塩化ホスホリルを用いた水酸基の完全な又は部分的なリン酸化によって導入されてよい。
【0129】
(ii)で特定されるラジカル−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yを導入するためには、水酸基を濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、又はクロロスルホン酸を用いて反応させてもよい。
【0130】
スルホン酸基(ii)及びリン酸基(i)を導入するための他の方法は、例えばジャーナルオブポリマーサイエンス(Journal of Polymer Science):パートA(Part A):ポリマーケミストリー(Polymer Chemistry)2001年、第39巻、p.955−963に記載されている。
【0131】
スルホン酸基(ii)及びリン酸基(i)の導入は、COO
・−Z
・+又はCOOHの導入(選択肢(iii)のラジカルT
aを介した)よりも好ましい。
【0132】
ラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、及び−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aが導入されることがとりわけ好ましく、後者の場合のラジカルT
aはラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x及び−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yの少なくとも1つを有する。排他的に−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x又はラジカル−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aであるラジカルOTによるOH基の部分的又は完全な置換が最も好ましく、式中T
aは1以上の基−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xを含む。
【0133】
ラジカル(iii)−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aは同様に種々の方法で導入され得る。s=t=1である場合、これらの水酸基を式T
a−N=C=Oのイソシアネートと反応させてもよい。例えばステアリルイソシアネート等の比較的長鎖のアルキルイソシアネートで変性することにより、ポリマーの極性を疎水性の方向に変性して、例えば非極性熱可塑性物質中でのポリマーの使用を容易にするようにしてもよい。逆に、式(I)のポリエーテルのフリーの水酸基を、例えばトリレンジイソシアネートモノ付加物等の親水性化合物と、完全に又は部分的に、反応させることによって、親水性の増大及び任意で水溶性の改善が達成される。例えばトリレンジイソシアネート(TDI)の、メタノールを出発物質として調製されるポリエチレングリコールとの反応から得られるモノ付加物が好適である。親水変性及び疎水変性の対応する混合によって、両親媒性の式(I)のポリエーテルを製造することも可能である。
【0134】
s=1及びt=0であるラジカル(iii)−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aの導入は、例えば式(I)のポリエーテル上のフリーの水酸基の、モノカルボン酸又はポリカルボン酸及び/又はそれらの無水物、ハロゲン化物、特に塩化物、又はエステルとの反応によって可能である。
例えば、フリーの水酸基は全体的又は部分的に酢酸とエステル化されてよく、この場合T
aはメチル基である。
【0135】
前述のモノカルボン酸、それらの無水物、ハロゲン化物、特に塩化物、又はエステルの代わりにポリカルボン酸、それらの無水物、ハロゲン化物、特に塩化物、又はエステルを使用することにより、ラジカルCOO
・−Z
・+を含有するラジカルT
aを導入することが可能である。この目的のために特に好適であるポリカルボン酸及び/又はそれらの無水物は、無水コハク酸、無水トリメリット酸、及び無水マレイン酸等の環式カルボン酸無水物である。
【0136】
本発明に従って採用される式(I)のポリエーテルは好ましくは、前述したコハク酸モノエステル基、トリメリット酸モノエステル基、又はマレイン酸モノエステル基以外のエステル基を有さない。前述した基の中でもコハク酸モノエステル基及びトリメリット酸モノエステル基は不飽和炭素炭素二重結合を含まないため好ましい。
【0137】
フリーの水酸基の無水マレイン酸との上述の反応及び例えば硫化ナトリウムを用いたその後のスルホン化を通して、スルホンスクシネート基を既知の方法により導入することができる。その場合ラジカルT
aは、ラジカルCOO
・−Z
・+だけでなくラジカル−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
yも含有する。
【0138】
水素化ナトリウム及びクロロ酢酸ナトリウムを用いてカルボキシメチル基(T
a=CH
2COOH)を導入してもよい。
【0139】
COOH−又はCOO
・−Z
・+含有ラジカルT
aを導入するためのさらなる方法は、t−ブチルアクリレート又はアクリロニトリルの付加反応とその後の加水分解、及び必要に応じて塩化である。
【0140】
同様に当業者に既知のプロセスによって行われ得る水酸基のエステル化によって、s=t=0の種を生成することが可能である。
【0141】
添え字x及びyが0の値を採用する場合、存在する種はフリーの酸である。しかしながら塩化によってこれらを負に荷電された基に変換することもことも有利である。特に分散すべき顔料及び/又は充填剤が負に荷電されたアンカー基に強い親和性を有する場合に、このことが当てはまる。
【0142】
種々の酸基の酸性の水素原子は、塩基との反応によって対応する塩に変換することができる。
【0143】
好適な塩としては、1以上の自由酸基の、アンモニウムとの、又は好適な有機アミン、三級アミン、好ましくはトリエチルアミン、アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン、水酸化アンモニウム、又は水酸化テトラアルキルアンモニウム等、との反応によって調製される、アンモニウム塩が挙げられる。例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、又は例えば炭酸カリウム等の対応する炭酸塩、又はジ炭酸カリウム等のジ炭酸塩もまた酸基との反応のために好適である。
【0144】
本発明の式(I)のポリエーテルは好ましくは少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを有し、2つ以上の親水性ブロック及び2つ以上の疎水性ブロックが存在する場合、それらのブロックは好ましくは交互に配列される。
【0145】
カチオン開環重合において分枝状構造ユニットを導入することが目的である場合には、そのカチオン重合は好ましくは式(III)又は(VI)の出発分子の助けを借りて開始され、好ましくはR
5=R
5aである式(VII)のオキセタンの重合を用いて正確に対応する疎水性ブロックを形成し、その後R
5=R
5bである式(VII)のオキセタンから構成される分枝状親水性構造のブロックを形成する。
【0146】
本発明に従い採用される式(I)のポリエーテルは、ラジカルR
5b及びR
9中に好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8、非常に好ましくは2〜6、及び最も好ましくは3〜4個の水酸基を有し、及びこれらの水酸基のうちの10〜100モル%、好ましくは20%〜100モル%、より好ましくは30%〜100モル%が反応されて、上述のラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
x、−O−S(O
2)(OH)
1−y(O
・−Z
・+)
y、及び/又は−O−(C=O)
s−(NH)
t−T
aとなっている。ラジカル−O−P(O)(OH)
2−x(O
・−Z
・+)
xを生ずる反応が特に好ましい。
【0147】
式(I)の種の好ましい一実施形態において、ラジカルR
5b及びR
9中の水酸基の10〜90モル%、より好ましくは20〜80モル%、非常に好ましくは30〜70モル%がラジカルOTによって置換されている。
【0148】
本発明の式(I)のポリエーテル又は本発明の湿潤剤及び分散剤を製造するための本発明のプロセスにおける典型的な反応条件
オキセタン重合のための出発ユニットとして使用されるモノアルコールはまた、上記で既に述べたように、アルコキシル化アルコールから選択することもできる。
【0149】
式(IV)の種として例えばフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、又はグリシジルエステルを使用する場合、例えば米国特許出願公開第2011/257326号において包括的に記載されているように、開環反応が行われ得る。
【0150】
一般式(VII)のオキセタンの一般式(III)又は好ましくは(VI)の種上での開環重合は好ましくは、約30℃〜130℃、好ましくは約50℃〜110℃で、少なくとも1つの触媒の存在下での、カチオン性のオキセタン開環重合により達成される。
【0151】
R
5がR
5a又はR
5b又はそれらの混合物である式(VII)のオキセタンを好ましくは、少なくとも1つの一般式(III)の種又は好ましくは少なくとも1つの一般式(VI)の種及び少なくとも1つの触媒を既に含有している予熱された反応混合物中に供給する。
【0152】
一般式(I)のポリエーテルのオキセタンに基づく部位における疎水性及び親水性構造ユニットの制御された構成を達成することが狙いならば、対応する親水性又は疎水性の式(VII)のオキセタンを互いに別々に及び連続して、任意でそれら異なるオキセタンモノマー間に時間をおいて供給する。
【0153】
式(VII)のオキセタンのカチオン開環重合による本発明の式(I)のポリエーテルの合成は好ましくは、式(III)又は(VI)の特定の出発分子の選択によって容易となる。
【0154】
この反応レジメは特に、一般にはu=0及びv≧2、好ましくはv≧6、より好ましくはv=8〜40の一般式(VI)の出発分子を用いて達成される。特に好ましくは、アルキルオキシポリアルキレンオキシド又はアリールオキシポリアルキレンオキシドを使用することが可能である。好ましい例としては、C
1−12アルコキシポリアルキレンオキシド、より特には例えばメトキシポリエチレンオキシド等のC
1−12アルコキシポリ(C
2−3アルキレンオキシド)が挙げられる。
【0155】
反応の終わりに、生成物を冷却し及び任意で触媒を塩基の添加により中和する。これはまた、塩基性イオン交換を用いて達成することもできる。塩又は固体触媒を例えばろ過によって反応混合物から除去してもよい。
【0156】
オキセタンのカチオン開環重合のための好適な触媒としては例えばルイス酸、特にAlCl
3、BF
3、TiCl
4、ZnI
2、SiF
4、SbF
5、PF
5、AsF
5、又はSbCl
5等、及びまた例えばハロゲン酸、特にFSO
3H、ClSO
3H、HClO
4、HIO
4、又はCF
3SO
3H等、及びまた他のブロンシュテット酸(例えばp−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等)、又はヘテロポリ酸、例えば12−タングストホスホン酸又は例えば一般組成式H
4XM
12O
40(X=Si、Ge;M=W、Mo)若しくはH
3XM
12O
40及びH
6X
2M
18O
62(X=P、As;M=W、Mo)のヘテロポリ酸が挙げられる。特に、触媒的に活性なヘテロポリ酸は1モル以上の結晶水を含むことができる。使用できる他の触媒は、例えばスルホニウム塩、オキソニウム塩、及び/又はヨードニウム塩等のオニウム塩である。こうした化合物の例としては、ベンジルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、及びベンジルテトラメチレンスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートが挙げられる。使用される好ましい触媒は12−タングストリン酸である。オキセタンのカチオン重合においてこの触媒を使用することの利点は、比較的低い反応温度及びそれに関連した生成物の低い熱負荷である。しかし、特に強調するに値する触媒品質は、例えば褐色化又は黒化することによって、生成物の色に悪影響を有さないことである。さらにこの触媒は、モノマー中及び生成物中の芳香族置換基の破壊又は化学的変更(けん化、置換、求電子的付加)を引き起こさない。
【0157】
本発明の式(I)のポリエーテルの調製において溶媒を使用することが可能である。これらの溶媒はしかしながら、オキセタン環を開環させるカチオン重合に影響してはならない。好適な溶媒の例としては、活性水素原子を含有せず、重合性の環を含有せず、及び式(VII)のオキセタン、より特にはヒドロキシオキセタン(少なくとも1つのラジカルR
5bを含有)の水酸基と、式(III)、又は好ましくは式(VI)の出発分子と、又は中間体若しくは得られる式(I)のポリエーテルと、反応し得る基を含有しないものが挙げられる。好ましくは脂肪族、環状脂肪族、及び芳香族溶媒、ケトン、及びブロック状ポリエーテルを溶媒として用いることができる。
【0158】
溶媒の選択もまた、その後の本発明の湿潤剤及び分散剤の使用目的によって導かれ得る。その後に得られる式(I)のポリエーテル又は本発明の湿潤剤及び分散剤が、例えば放射線硬化性の、特にUV硬化性の組成物、より特にはこれらの種類のコーティング材料組成物の場合において、100%製剤の形態で採用されることになる用途の場合に留去を容易にするように、低沸点溶媒を用いると好ましい。目標とする種は好ましくは1以上の溶媒の存在下で調製される。
【0159】
本発明の組成物における本発明のポリエステル及び本発明の湿潤剤及び分散剤の使用
本発明の組成物は、特に微粒子状の固体、好ましくは顔料及び/又は充填剤を分散させる目的で、上記で定義した本発明の一般式(I)のポリエステル、及び/又は本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤を含む。
【0160】
本発明の組成物は好ましくは25℃で液体である。25℃で液体である本発明の組成物は本発明の式(I)のポリエーテル、又はこれらのポリエーテルから成るか若しくはそれらを含む湿潤剤及び分散剤を、組成物の総重量を基準として好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%、非常に好ましくは0.5〜5重量%、又は0.5〜3重量%の量で含む。本文脈における本発明の組成物中の湿潤剤及び分散剤の量に対する言及はいずれも、溶媒を含まない湿潤剤及び分散剤に基づき、言い換えれば本発明のプロセスの反応生成物に基づく。
【0161】
好ましくは本発明の組成物は、好ましくは分散された顔料及び/又は充填剤を含む、水性の、溶媒を含まない、又は溶媒性のコーティング製剤又はそれらの製造用の練り顔料、又は、特にSMC及びBMC等のモールディングコンパウンド用の製剤である。
【0162】
本組成物が好適であるような多くの用途が存在する。例えば、汎用着色ペースト、顔料表面修飾剤、カラーフィルター用カラーレジスト、顔料濃縮物、又は特にCaCO
3、BaSO
4等の無機充填剤若しくは酸化アルミニウム及び/若しくは三水酸化アルミニウム(ATH)等の無機難燃剤を含む組成物の製造のためには、有機溶媒中又は水中等、種々の液体媒体中で安定な顔料及び充填剤分散物を可能にする湿潤剤及び/若しくは分散剤であって、且つそれに応じて、さらなる配合のためにさらに水性媒体、溶媒非含有、又は溶媒含有媒体中に組み込むこともできる湿潤剤及び/若しくは分散剤が、優先的に必要とされる。例えば、カラーレジストの加工においては、メトキシプロピルアセテート等の有機溶媒中に容易に可溶であること、及び界面活性剤を含有する可能性もあるアルカリ性の水性溶液中で迅速に溶解することが求められる。それに応じて採用される本発明の組成物は、最終生成物の性質に直接影響する。
【0163】
このことはまた、その加工のために高い顔料含有量にもかかわらず低粘度が要求される色素性の塗料の製造にも当てはまる。特定の要件は、高充填ポリマー組成物について、それらが流動可能な状態を維持し及び最大の充填剤含有量において容易に加工可能であるように、粘度を大きく低下させることである。本発明の組成物はこれらの及びさらなる要件を満たし、そのため問題なく且つ性質を改善しながら多様な用途のために採用することができる。この一例は、前処理なしの又は前処理された基剤、より特には金属基剤、ガラス、又はプラスチックへのコーティングの接着を含み得るコーティングの接着;他のコーティング、特に古い塗料、ベースコート、及び陰極電着塗装に対するコーティングの接着;及びコーティング又はポリマー組成物のそれ自身との内部凝集力(cohesion)、の複合現象である。湿潤剤及び/若しくは分散剤の適切な選択を通して、粒子の湿潤を改善し、有機マトリックスと顔料及び充填剤との媒介を強化し、及び標的化された方法で分離効果を回避することができるため、特に凝集及び接着に対してよい影響を及ぼすことが可能である。
【0164】
したがって、本発明のポリエーテル又は本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤は、例えば塗料、印刷インク、紙コーティング、皮革及び織物インク、ペースト、顔料濃縮物、セラミック、又は化粧用調製剤の系が固体として顔料及び/又は充填剤を含む場合に、それらの製造又は加工において採用され得る。
【0165】
それらはまた、ポリ塩化ビニル、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等、のような合成、半合成、又は天然巨大分子物質を主体とするキャスティングコンパウンド及び/又はモールディングコンパウンドの製造又は加工において使用することができる。分散された顔料及び/又は充填剤及び任意で他の添加剤を含む本発明の組成物は、例えばキャスティング化合物、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、回路基板、工業塗料、木材、及び家具用ワニス、ビヒクル仕上げ材、船用塗料、腐食防止塗料、缶コーティング及びコイルコーティング、修飾塗料、及び建築塗料中に、適切な場合にはさらなる結合剤の付加後に、非常に効果的に分散させることができる。慣例的なさらなる結合剤の例としては、ポリウレタン、硝酸セルロース、アセト酪酸セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、塩素化ゴム、エポキシ樹脂、及びポリアクリレートを主体とする樹脂が挙げられる。
【0166】
水性コーティング製剤の例としては、例えば自動車車体用の陰極性又は陽極性電着塗料である。さらなる例は、レンダー、ケイ酸塗料、乳化塗料、水希釈可能なアルキド樹脂を主体とする水性塗料、アルキド樹脂エマルション、ハイブリッド系、2成分系、ポリウレタン分散物、及びアクリレート樹脂分散物が挙げられる。
【0167】
本発明の組成物はまた、特に、例えば顔料濃縮物等の固体濃縮物用の基材としても好適である。この目的のためには、上述したコポリマーを、有機溶媒、可塑剤、及び/又は水等の分散媒体中に導入し、及び分散すべき固体、好ましくは顔料及び/又は充填剤を撹拌しながら添加する。追加で、さらなる結合剤及び/又は他の補助剤をこれらの組成物に添加してもよい。しかし、本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤以外の結合剤を含まない組成によって、既に安定である顔料濃縮物が確保されることが好ましい。
【0168】
本発明の組成物を流動可能な固体濃縮物として使用することも可能である。この目的のために、有機溶媒、可塑剤、及び/又は水をさらに含有していてもよい顔料プレスケーキを本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤と混合し、得られた混合物を分散させる。種々の経路によって製造される本発明の固体濃縮物はその後、例えばアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂等の種々の組成物に組み込むことができる。しかしながら、本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤を用いて、顔料を無水又は無溶媒で直接分散させることも可能である。本発明のこれらの組成物はそして、熱可塑性及び熱硬化性ポリマー製剤の色素化に特に好適である。
【0169】
本発明の組成物はまた、サーマルインクジェット及びバブルジェット(登録商標)プロセス等の「ノンインパクト」プリンティングプロセス用インクの製造において有利に使用することができる。これらのインクは例えば、水性インク製剤、溶媒性インク製剤、UV用途向け溶媒非含有又は低溶媒インク、及びまた、ワックス様インクであってもよい。
【0170】
本発明の組成物はまた、液晶ディスプレイ及び液晶スクリーン用、色解像装置用、センサー用、プラズマスクリーン用、SEDに基づく表示装置(表面伝導型電子放出表示装置)用、及びMLCC(多層セラミック化合物)用の、カラーフィルターの製造において使用されてもよい。この場合、カラーレジストとも呼ばれる液体カラーフィルターワニスを、スピンコーティング、ナイフコーティング、これら2つの組み合わせ、又は例えばインクジェットプロセスのような「ノンインパクト」プリンティングプロセス等の多種多様な塗布方法のいずれかによって塗布してもよい。MLCC技術はマイクロチップ及び回路基板の製造において使用される。
【0171】
本発明の組成物を例えばメークアップ、パウダー、リップスティック、ヘアカラー、クリーム、マニキュア、及び日焼け止め製品等の化粧用調製剤において使用することもできる。これらの製品は通常の形態で存在してもよい。上記で定義した本発明のポリエーテルを二酸化チタン又は酸化鉄等の顔料用の湿潤剤及び/若しくは分散剤として含む本発明の調製剤は、美容術において慣例的なキャリア媒体中、例えば水、ヒマシ油、又はシリコーンオイル中に組み込まれてもよい。
【0172】
本発明のさらなる主題はまた、固体用、より好ましくは顔料及び/又は充填剤用の湿潤剤及び/若しくは分散剤としての又はそれらにおける、或いは相媒介物としての、1以上の本発明のポリエーテルの使用である。本発明の組成物を含むこれらの本発明の顔料分散物は基材上に色素性のコーティングを製造するために使用することができ、この場合色素性の塗料を基材上に塗布して、そこで焼成又は硬化し、又は架橋する。
【0173】
本発明のさらなる主題はしたがって、本発明の組成物及び/又は本発明のポリエーテル及び/又は本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤と、1以上の被分散顔料と、有機溶媒及び/又は水と、さらに任意で慣例的なコーティング補助剤を含むさらなる結合剤と、を含む、コーティング材料組成物、ペースト、及びモールディングコンパウンドである。
【0174】
本発明の顔料ペーストはまた本発明の顔料分散物から製造されてもよく、このペーストは分散物を主体とする。
【0175】
本発明の組成物は単独で又は他の慣例的な結合剤と共に使用することができる。例えばポリオレフィン中で使用する場合、低分子量の対応するポリオレフィンをキャリア材料として本発明の組成物に添加すると有利である場合がある。
【0176】
本発明のさらなる主題はまた、粉末及び/又は繊維形態の微粒子状固体、特に、本発明のポリエーテルで又は本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤でコーティングされたプラスチック充填剤等の顔料又は充填剤のものに関する。有機又は無機固体のこのコーティングは例えば欧州特許出願公開第0270126号に記載されるような既知の方法で行われてよい。分散媒体は、得られる本発明の組成物から除去されても、又は残留してペーストを形成してもよい。顔料の場合、顔料表面のこのコーティングは、顔料の合成中又は合成後に、本発明のポリエーテル又は本発明の湿潤剤及び/若しくは分散剤を例えば顔料懸濁液に添加することによって、或いは顔料コンディショニング中又はその後に、行われてよい。
【0177】
このようにして得られる本発明の組成物は、配合用の前処理された顔料又は充填剤として格別に好適であり、及び注目すべき点は、未処理の顔料と比較して、改良された粘度、凝集、及び光沢挙動、及びより高い色強度である。
【0178】
顔料の例としては例えば、モノ、ジ、トリ、及びポリアゾ顔料、オキサジン、ジオキサジン、及びチアジン顔料、ジケトピロロピロール類、フタロシアニン類、ウルトラマリン、及び他の金属錯体顔料、インジゴ顔料、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンタン、アクリジン、キナクリドン、及びメチン顔料、アントラキノン、ピラントロン、ペリレン、及び他のポリ環式カルボニル顔料が挙げられる。有機顔料のさらなる例は下記の論文中に記載されている:W.ハーブスト(Herbst)、K.ハンガー(Hunger)、「インダストリアルオーガニックピグメント(Industrial Organic Pigment)」1997年(発行元:ワイリー(Wiley)−VCH、ISBN:3−527−28836−8)。無機顔料の例としては例えば、カーボンブラック、黒鉛、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛を主体とする顔料;ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウムを主体とする混合酸化金属(例えばニッケルチタンイエロー、ビスマスバナジン酸モリブデン酸イエロー、又はクロムチタンイエロー)が挙げられる。さらなる例は下記の論文中に挙げられている:G.バクスバウム(Buxbaum)、「インダストリアルインオーガニックピグメント(Industrial Inorganic Pigment)」1998年(発行元:ワイリー(Wiley)−VCH、ISBN:3−527−28878−3)。他の可能な無機顔料としては、純粋な鉄、酸化鉄、及び酸化クロム、又は混合酸化物を主体とする磁性顔料;アルミニウム、亜鉛、銅、又は真鍮を含む金属エフェクト顔料;及びまた、パール剤顔料;蛍光及び燐光発光顔料が挙げられる。
【0179】
微粒子状固体のさらなる例は、100nm未満の粒子径を有するナノスケールの有機又は無機固体、例えば、ある種のカーボンブラック又は金属若しくは半金属の酸化物及び/若しくは水酸化物から成る粒子、並びにまた、混合金属及び/若しくは半金属の酸化物及び/又は金属及び/若しくは半金属の水酸化物から成る粒子である。この種の極めて微細に分割された固体は、例えばアルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタン等の酸化物及び/又は酸化水酸化物及び/又は水酸化物を用いて製造され得る。これらの酸化性及び/又は水酸化性及び/又は酸化水酸化性粒子を製造するためのプロセスは、例えばイオン交換操作、プラズマ操作、ゾルゲルプロセス、沈殿、粉砕(例えばグリンディングによる)、又は火炎加水分解等の、種々の方法のいずれかを介して行われてよい。これらのナノスケール固体はまた、無機コア及び有機シェル、又はその逆から成る、いわゆるハイブリッド粒子であってもよい。
【0180】
粉末又は繊維形態の充填剤の例としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、ケイ質土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、雲母、パーライト、長石、天然スレート粉、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、方解石、ドロマイト、ガラス、又は炭素の粉状又は繊維状粒子で構成されるものが挙げられる。顔料又は充填剤の他の例としては、例えば欧州特許出願公開第0270126号に記載されている。例えばアルミニウム又はマグネシウム水酸化物等の難燃剤もシリカ等の艶消し剤も同様に、顕著に分散され及び安定化され得る。
【0181】
同様に本発明の主題は、熱成形型中、加圧下で硬化されて成形品を形成する繊維強化及び充填剤含有反応性樹脂から成るシートモールディングコンパウンド(SMC)及びバルクモールディングコンパウンド(BMC)における、本発明の湿潤剤及び分散剤の使用である。使用される繊維としては、ガラス繊維の他に、炭素繊維、バサルト繊維、及び天然繊維、及びさらには、ルース繊維スニペット、配向連続繊維、繊維マット、敷設繊維スクリム、繊維ニットの形態で1プライ以上で採用される、強化繊維が挙げられる。
【0182】
使用される樹脂成分としては、同様にハイブリッド系において他の樹脂成分と共に採用され得る、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、又はエポキシ樹脂が挙げられる。製剤の多くは白亜、粘土、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、又は水酸化マグネシウム等の充填剤を含み、これらは別々に又は混合されて使用される。
【0183】
かかるモールディングコンパウンドの製造及び加工は、独国特許第3643007号及び論文P.F.ブルインズ(Bruins)、「アンサチュレーテッドポリエステルテクノロジー(Unsaturated Polyester Technology)」、ゴードンアンドブリーチサイエンスパブリッシャーズ(Gordon and Breach Science Publishers)1976年、p.211〜238において、例として不飽和ポリエステルを用いて例示基準で記載されている。
【0184】
繊維含量及び充填剤含量の増大はしばしば、剛性を増大させ及び表面品質を改良するように働く。結果として起こる樹脂/充填剤混合物の粘度上昇が相当高いために、従来の系においては強化繊維がもはや完全且つ完璧に表面湿潤されず、混合物からの空気の除去が損なわれ、及び系のポットライフがさらに減少される。この様な場合、このことは最終成形品における例えば曲げ強さの引張強度等の機械特性の質の低下につながる。
【0185】
本発明の湿潤剤及び分散剤の使用は、樹脂充填剤混合物の粘度の顕著な減少をもたらし、高い充填剤含量を有する製剤の場合に完璧な繊維湿潤及び膨潤を確実にする。
【0186】
故に、本発明の湿潤剤及び分散剤の使用を通して、例えば三水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の採用可能な難燃剤の量を、完全に硬化された成形品における難燃特性の顕著な改善を可能にするような程度にまで上昇させることも同様に可能である。これによって、そのような構成成分は、例えばアンダーライターズラボラトリーズ(Underwriters Laboratories)のUL94法(DIN EN60695−11−10に従う)又は輸出において典型的に使用される他の方法(例えば「ファイアビヘビアーオブビルディングマテリアルズアンドコンポーネンツ(Fire Behavior of Building Materials and Components)」、DIN4102参照)に従って測定可能な、高い等級の防火分類に割り当てられ、及び従ってこのようなSMC及びBMC成形品向けのさらなる新規な使用分野を可能にする。
【実施例】
【0187】
略語
MeOH=メタノール
BuOH=n−ブタノール
MPG=フェノキシエタノール
MPEG500/750=メトキシポリ(エチレングリコール)(それぞれ数平均分子量M
n=500g/mol又は750g/mol)
エチレンオキシド=EO
プロピレンオキシド=PO
3−エチル−3−((フェノキシ)メチル)オキセタン=PhOx
3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン=2−EHOx
3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン=TMPOx
3−エチル−3−(ポリトリ(オキシエチレン)ヒドロキシメチル)オキセタン=3EO−TMPOx
【0188】
ダイアモンド結晶を用いるATR測定プローブを備えたABB MB−Rx機器を使用してオンラインIR測定を行うことにより、下記の条件下で開環オキセタン重合の反応率を調べた。ここで、選択された反応条件下ではモノマーの蓄積がないことが分かった。供給中に存在しオキセタン官能性に帰属されるモノマー信号は、選択された反応条件下では2〜3分以内に消滅し、この場合したがって、完全なモノマー変換が推測できる。対応するオキセタン数の滴定分析測定により、オキセタンモノマーの完全な反応が確認された。
【0189】
本発明のポリエーテルは以下の測定方法を用いて特性決定された。
【0190】
エンドポイント決定のためのオキセタン基の滴定
約0.03〜0.04グラムの試料を80mlのビーカーに正確に秤量し、10mlのクロロホルム及び40mlの濃酢酸中に溶解した。試料を50℃に加熱した(ヒートブロック中で15分)。2.5gのセチルトリメチルアンモニウムブロミドを添加した後、試料を磁性攪拌機上に配置し、電極を十分に挿入し、熱条件下で酢酸中0.1N過塩素酸を用いて滴定を行った。当量>30000で反応は完了したと見られた。
オキセタン当量=最初の質量(g)×1000/(消費量(ml)×n×f)
n=滴定剤の規定度
f=滴定剤のファクター
【0191】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
反射率測定器(ウォーターズ(Waters)410)下で高速液体クロマトグラフィポンプ(ビスホフ(Bishoff)HPLC2200)を用いて、40℃にてゲル浸透クロマトグラフィを行った。移動相は流速1mm/分のテトラヒドロフランとした。ポリスチレン標準溶液を用いて従来の較正を行った。NTeqGPCプログラムに従って数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及び多分散性P
D=Mw/Mnを計算した。
【0192】
NMR測定
BrukerDPX300にて300MHz(
1H)又は75MHz(
13C)でNMR測定を行った。溶媒として重クロロホルム(CDCl
3)及び重ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)を用いた。
【0193】
下記の項において、本発明に従って採用されるポリエーテルの調製を対応するプロセスによって説明する。発明例1〜12及び比較例13
*及び14
*のポリエーテルの構造バリエーションの概要は表1に見ることができる。
【0194】
【表1】
【0195】
合成例S1「直鎖ポリエーテル(実施例2)」
分散剤を調製するために、攪拌機、凝縮器、温度計、及び滴下ロートを備えた250mlの四つ口フラスコに、50.0g(0.1mol)のMPEG500(メタノールから出発して調製されたモノヒドロキシ官能性EOポリエーテル、Mn500g/mol、クラリアント製)を30mgのイオノール(Ionol)CPと共に窒素雰囲気下で85℃で加熱した。20分後、混合物を120mgのPW12(12タングストリン酸水和物、Sigma Aldrich P4006、CAS12501−23−4)と混合した。次いで、非常にゆっくりと(4時間かけて)、57.6g(0.3mol)のPhOxを滴下ロートを介して滴下した。実験中、反応混合物は無色からわずかに黄みがかった状態を維持した。その後2時間反応させた後、混合物を冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和した。次いで混合物をろ過した。
【0196】
攪拌機、凝縮器、及び温度計を備えた250mlの四つ口フラスコに、15.0g(約13.9mmol)のブロックコポリマーを1.56g(4.6mmol)のポリリン酸(モル質量は形式上テトラポリリン酸に基づく)と共に秤量した。窒素下80℃にて3時間撹拌を行った。生成物は、フリーのリン酸との混合物中の粘性油として得られる。
【0197】
合成例S2「分枝状、ブロック状ポリエーテル(実施例8)」
分散剤を調製するために、攪拌機、凝縮器、温度計、及び滴下ロートを備えた250mlの四つ口フラスコ中で、12.4g(0.02mol)のルテンゾール(Lutensol)ON110(C10オキソ法アルコールから出発して調製されたモノヒドロキシ官能性EOポリエーテル、Mn625g/mol、BSF製)を30mgのイオノールCPと共に窒素雰囲気下で85℃で加熱した。20分後、この混合物を30mgのPW12(12タングストリン酸水和物、Sigma Aldrich P4006、CAS12501−23−4)と混合した。その後、非常にゆっくりと(1時間かけて)、4.8g(0.04mol)のTMPOを添加した。等温反応段階を30分間継続した後、12.6g(0.065mol)のPhOxを滴下ロートを介してゆっくりと滴下した。実験中、反応混合物は無色からわずかに黄みがかった状態を維持した。その後2時間反応させた後、混合物を冷却し炭酸水素ナトリウムで中和した。その後混合物を30mLのTHFで希釈してろ過し、回転エバポレータ(65℃、30mbar)にて溶媒から分離した。
【0198】
攪拌機、凝縮器、及び温度計を備えた250mlの四つ口フラスコに、15.0g(約19.8mmol)のブロックコポリマーを2.23g(6.6mmol)のポリリン酸(モル質量は形式上テトラポリリン酸に基づく)と共に秤量した。窒素下80℃で3時間撹拌を行った。生成物は、フリーのリン酸との混合物中の粘性油として得られる。
【0199】
合成例S3「ε−カプロラクトンの添加によるグラフティング(実施例7の前段階)」
攪拌機、凝縮器、及び温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、MPEG750と一当量のTMOPx(OHN=102.4mgKOH/g)との付加物205.0g(約0.19mol)を、42.6g(0.37mol)のε−カプロラクトンと共に導入し、この最初の仕込み分を穏やかな窒素流下で90℃に加熱した。0.3gのドデシルベンゼンスルホン酸を触媒として添加した。固体含量の測定によってカプロラクトンの転換をモニタリングした(150℃で20分)。12時間後、固体含量99%にて反応を冷却し、わずかに黄みがかった生成物を排出した。その後のリン酸塩処理は合成例S2と同様に強酸性の媒体中でどうにか進行するので、例えばアミンの添加による生成物中和、塩基性イオン交換、又は水性のワークアップは省略した。
【0200】
比較例15
*及び16
*(本発明によらない)
発明によらない先行技術による比較例として、米国特許出願公開第2013/289195号のメディエータ添加剤例13及び36を採用した。含まれるコポリマーはそれぞれカルボン酸官能化末端基を有するオキセタン含有コポリマーである。
【0201】
使用例
高充填SMC/BMCコンパウンドにおける無機充填剤及び難燃剤のための湿潤及び分散添加剤としての、本発明のポリエーテルの使用
下記の使用例において、本発明に従って採用される分散剤の使用を、充填剤含有及び/又は難燃化、不飽和ポリエステル系における添加剤として、本発明に従って使用することができない分散剤と比較して、試験及び評価した。
【0202】
【0203】
下記の使用例において、本発明に従って採用される分散剤の使用を、充填剤含有飽和ポリエステル樹脂における添加剤としての、本発明によらない標準分散剤V2(欧州特許第417490号の実施例12)との比較において試験した。
【0204】
本発明の化合物の活性の効果を、本使用に関する技術分野の状況を表す本発明によらない標準分散剤と比較するために、この化合物を用いて異なる製剤を製造し、この製剤の粘度を粘度計を使用して比較法により測定した(ブルックフィールドBVII、スピンドル5−6、10−20rpm)。
【0205】
使用した製剤は以下のようにして製造した。
【0206】
樹脂成分を導入しスパチュラで均質化した。次いで本発明の化合物又は本発明によらない標準分散剤を添加して、同様にスパチュラを用いた手動撹拌により均質化した。製剤に応じて、プロセス添加剤又はステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛を添加して撹拌する。
この液体製剤に充填剤を加えてPendraulik−5HWM−FDe80N12−2高速攪拌機(直径40±10mmの溶解用ディスクによる)を用いて下記の条件下で分散させる:930rpm±50rpmのスピードで60秒±10秒、次いでさらに1865rpm±125rpmのスピードで(周囲スピード3.9±0.3m/s)120秒±10秒。
完全に均質化した製剤を密閉可能なアルミニウムビーカーに移し、粘度測定の間温度30C±5℃の水浴中で30分±5分間密閉保存する。
【0207】
製剤1
70部のパラプレグP17−02
30部のパラプレグH814−01
4.5部のZn101/06
180部のミルカルブOG
0〜2部の湿潤剤及び分散剤(本発明による又は本発明によらない)
【0208】
【表2】
【0209】
表2から分かるように、本発明の湿潤及び/又は分散添加剤を用いて製造された製剤は有意に低い粘度を有し、したがってよりよい加工品質を有する。
【0210】
製剤2
70部のパラプレグP17−02
30部のパラプレグH814−01
4.5部のZn101/06
100部のミルカルブOG
100部のMartinalON912
0〜2部の湿潤剤及び分散剤(本発明による又は本発明によらない)
【0211】
【表3】
【0212】
表3から分かるように、本発明の湿潤及び/又は分散添加剤を用いて製造された製剤は有意に低い粘度を有し、したがってよりよい加工品質を有する。
【0213】
製剤3
70部のパラプレグP17−02
30部のパラプレグH814−01
4.5部のZn101/06
280部のMartinalON912
0〜2部の湿潤剤及び分散剤(本発明による又は本発明によらない)
【0214】
【表4】
【0215】
表4から分かるように、本発明の湿潤及び/又は分散添加剤を用いて製造された製剤は有意に低い粘度を有し、したがってよりよい加工品質を有する。
【0216】
製剤4
68部のパラプレグP18−03
30部のパラプレグH2681−01
2部のパラプレグH1080−1
4.5部のセアジット1
210部のミルカルブOG
0〜2部の湿潤剤及び分散剤(本発明による又は本発明によらない)
【0217】
【表5】
【0218】
表5から分かるように、本発明の湿潤及び/又は分散添加剤を用いて製造された製剤は有意に低い粘度を有し、したがってよりよい加工品質を有する。