特許第6869358号(P6869358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869358
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】伝送線路−導波管転移装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/107 20060101AFI20210426BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20210426BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01P5/107 F
   H01P3/00 100
   H01P3/00 101
   H01P3/08 100
   H01P3/08 200
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-540084(P2019-540084)
(86)(22)【出願日】2018年1月24日
(65)【公表番号】特表2020-506603(P2020-506603A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】KR2018001047
(87)【国際公開番号】WO2018139846
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0012484
(32)【優先日】2017年1月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−ウォン ソ
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−539461(JP,A)
【文献】 特開2005−027299(JP,A)
【文献】 特開2002−344212(JP,A)
【文献】 特開平10−126116(JP,A)
【文献】 特開昭61−142802(JP,A)
【文献】 特開平06−034715(JP,A)
【文献】 実開平03−111008(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/284699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/107
H01P 3/00
H01P 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路−導波管転移装置であって、
伝送線路の信号が伝達される導波管に対応するサイズ及び形状を有する板状の側面及び上面と、
前記側面及び上面によって形成される内部空間に形成され、前記伝送線路と一端がつながり、他端は前記上面に接する斜面を有する板状のリッジとを備え、
前記転移装置は前記伝送線路が形成される基板上に固定的に設けられ、
前記基板上の少なくとも前記転移装置が設けられる部位には、グラウンド面が形成され、
前記基板上の前記転移装置が設けられる部位に形成された前記グラウンド面において、前記リッジに対応する部位には、一部のグラウンド面が除去された形態のグラウンド転移領域が形成され、
前記グラウンド転移領域は、前記リッジと前記伝送線路との間の接触する部位から開始して徐々に幅が狭くなる形で形成されることを特徴とする伝送線路−導波管転移装置。
【請求項2】
前記リッジにて前記伝送線路と当接する部位は、前記伝送線路と、急な角度でなく、緩やかな角度で当接するように形成され、全体的に曲線形態を有するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項3】
前記曲線形態は全体的に「S」字状であることを特徴とする請求項2に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項4】
前記リッジと前記伝送線路の当接する部位ははんだ付け方式、導電性樹脂塗布方式、または接触方式でつながることを特徴とする請求項1に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項5】
前記グラウンド転移領域の周辺には多数のビアホール(via hole)が形成されることを特徴とする請求項に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項6】
前記転移装置は、導波管フランジと結合するためのフランジを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項7】
前記伝送線路はCPW(Coplanar Waveguide)、CPWG(CPW with Ground)、またはマイクロストリップ線路構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【請求項8】
前記伝送線路は、ストリップ線路構造を有し、
前記リッジは、前記伝送線路の基板上に形成されたビアホールを介して前記伝送線路とつながることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伝送線路−導波管転移装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高周波信号の伝送及び処理に用いられるキャビティタイプの導波管に関連する技術であり、特に、マイクロストリップ線路、ストリップ線路、CPW(Coplanar Waveguide)、CPWG(CPW with Ground)などのようなプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)タイプ伝送線路とキャビティタイプの導波管をつなぐ伝送線路−導波管転移装置(transmission line − waveguide transition device)に関する。
【0002】
[謝辞表記]
本研究では、未来創造科学部「汎省庁Giga KOREA事業」の支援を受けて行われた(課題固有番号:1711021003、細部課題番号:GK16NI0100[This work was supported by「The Cross−Ministry Giga KOREA Project」grant from the Ministry of Science、ICT and Future Planning、Korea]
【0003】
導波管構造は、超高周波、例えば、28GHzまたは60GHzなどのミリメートル単位の波長を有するミリ波(Millimeter Wave)帯域にて、少ない損失と高い性能の受動素子(例えば、スロットアレイアンテナ、ホーンアンテナ、フィルタ、ダイプレクサなど)を具現するために主に用いられる。
【0004】
導波路は、遮蔽された空間、すなわち導波管構造自体による共振現象を利用して信号を送信し、約管状の導波管は、該当伝送信号の周波数特性に対応する長さを有するように設計される。このような導波路は、内部に満たされた誘電体に応じて、その種類及び使用用途を区別するとよい。
【0005】
キャビティタイプの導波管は、通常、空気(air)で満たされた内部が空の四角形の金属ブロック構造を有するが、誘電体損失が最も少なく、伝送特性に優れ、高性能具現が可能であるという利点を有する。ところで、通常PCBタイプで具現される他の電子機器と結合するためには(つまり、PCBタイプの伝送線路とつながるためには)、別の転移(transition)の構造が要求される。
【0006】
図1aは、従来の伝送線路−導波管転移装置の一例としては、韓国特許出願番号第10−2009−0026489号(名称:「導波管−マイクロストリップ線路変換装置 」、出願人:サムスンタレス、発明者:バクデソン、出願日:2009年3月27日)に開示した通りである。図1aに示した転移装置は、マイクロストリップ線路a32の信号をPCBa20に具現されたスロットa22を介して導波管a10に伝達する構造である。導波管a10の外部とPCBa20のグラウンドは、ビアホールa24の形で接触している。図1aに示した構造は、伝送線路と導波管が互いに垂直につながる構造であって、伝送線路が設置された基板と平行に導波管を設置するためには、導波管を90度に折り曲げる構造を追加で形成しなければならず、それに伴う全体的な体積の増加及び構造の複雑さが増加することになる。
【0007】
図1bは、従来の伝送線路−導波管転移装置の他の例として、韓国特許出願番号第10−2010−0040863号(名称:「ブロードバンド伝送線路−導波管変換装置」、出願人:サムスン電気、発明者:イジョンオン、出願日:2010年4月30日)に開示した通りである。図1bに示した転移装置は、同軸線b22と導波管との間の転移装置である。同軸線b22と導波管が互いに垂直方向につながり、同軸線b22の中心導体b21aがプローブ(Probe)として導波管の内部に信号を伝達する。この構造も、導波路と同軸線を互いに平行にするためには、例えば、同軸線を90度に折り曲げなければならない。同軸線を90度変形をするようになると、最小回転半径による空間が必要になるのみならず、それによって同軸線の外部導体に一種のクラック(crack)が発生し得る。
【0008】
図1cは、従来の伝送線路−導波管転移装置のまた別の例として、米国特許番号第8188805号(名称:「Triplate line−to−waveguide transducer having spacer dimensions which are larger than waveguide dimensions」、出願人:Hitachi Chemical、発明者:Taketo Nomuraの他多数、特許日:2012年5月29日)に開示した通りである。図1cに示した転移装置は、ツリープレートc1、c4、c5から導波管c6での転移構造を有する。該当構造は、積層型線路構造で導波管c6に信号を伝達する構造である。信号線路c3が積層構造の内部にあり、上面にグランド面c5が存在する。下面c1には、導波管の内部寸法と同様に、開口部があり、導波管c6に信号が伝達される。このような構造においても、信号線路と導波管が互いに垂直な構造であるため、互いに平行な構造に変形をするためには、導波管を90度に変更しなければならず、それに応じ全体サイズの増加などの問題点を有することになる。
【0009】
図1dは、従来の伝送線路−導波管転移装置のまた別の例として、米国特許番号第6917256号(名称:「Low loss waveguide launch」、出願人:Motorola、発明者:Rudy Michael Emrickほか1名、特許日:2005年7月12日)に開示した通りである。図1dに図示した転移装置は、導波管とマイクロストリップ線路の接続のために、比較的広く適用される構造である。いわゆるバックショト(Back−short)の構造を介してマイクロストリップ線路d350の信号を垂直方向の導波管d310に転移させる構造である。このような構造は、導波管の方向が下側に向かう場合に、導波管上側、すなわちマイクロストリップ線路d350の上側に4 /λg(λg:管内波長)程度の共振のためのスペースが必要であり、それによって製品の厚さが厚くなる。
【0010】
このように、伝送線路−導波管転移装置には、様々な構造が提案されており、より簡単で、小型でありながら、より改善された信号伝達性能を有するようにするために不断の研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の少なくとも一部の実施例に係る目的は、より簡単で、より小型で具現することができ、特性の安定化及び製作の簡便性を図るための伝送線路−導波管転移装置を提供する。
【0012】
また、本発明の少なくとも一部の実施例に係る目的は、追加的な導波管折り曲げの構造がなくても、PCB上に形成されるPCBタイプの伝送線路と平行な状態で導波管をつなげるようにするための伝送線路−導波管転移装置を提供する。すなわち、前記図1dに図示したような従来の構造を概略的に示す図2aを参照すると、従来の転移構造は、伝送線路が形成されるPCBと導波管が互いに90度の直角に垂直方向につながるようにする構造を有することが分かる。この時、図2bに示すように、導波管が伝送線路が形成されるPCBと平行に設置するには、追加の導波管折り曲げ構造を有さなければならない。これに比べて、図2cに示すように、本発明の伝送線路−導波管転移装置は非常にシンプルな構造で、PCBと導波管を平行につなげるような構造を提供する。
【0013】
また、本発明の少なくとも一部の実施例に係る目的は、マイクロストリップ線路、ストリップ線路、CPW、CPWGなどのようなさまざまな形態のPCBタイプ伝送線路に汎用的に適用可能な伝送線路−導波管転移装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した目的を達成するために本発明は、伝送線路−導波管転移装置において、伝送線路の信号が伝達される導波管に対応するサイズ及び形状を有する板状の側面及び上面と、前記側面及び上面によって形成される内部空間に形成され、前記伝送線路と一端がつながり、他端は前記上面に接する斜面を有する板状のリッジを含むことを特徴とする。
【0015】
前記リッジにて前記伝送線路と当接する部位は、前記伝送線路と、急な角度でなく、緩やかな角度で当接するように形成され、全体的に曲線形態を有するように形成するとよい。
【0016】
前記伝送線路−導波管転移装置は、前記伝送線路が形成される基板上に、はんだ付け方式またはネジ結合方式で固定的に設けられ、前記基板上に、少なくとも前記転移装置が設けられる部位にグランド面が形成される。
【0017】
前記基板上に、前記転移装置が設けられる部位に形成するグラウンド面で、前記リッジに対応する部位には、一部のグランド面が除去された形態のグラウンド転移領域が形成される。
【発明の効果】
【0018】
前記したように、本発明の少なくとも一部の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置は、PCBタイプの伝送線路上にカバーの形態と同様に付着する方式を用いて導波管に信号を転移させる非常に簡単で効率的な構造を提案することで、伝送線路と導波管を簡単に水平的につなぐことができるようになる。これにより、本発明が適用される製品の厚さを低く保つことができるので、最終的な製品を薄型(low profile)に具現するとよい。
【0019】
また、伝送線路と直接接触する方式で伝送線路から信号の提供を受けて導波管に転移する構造を提案するので、従来の一般的なカップリング構造で、より安定的かつ低い損失で具現が可能である。
【0020】
また、本発明の少なくとも一部の実施例に係る転移装置では、はんだなどの作業がなく、PCB上に組み立てが可能なので、組み立て前の特性の検証及び交換試験等が可能であり、部品の損失率を減らすことができる。これは、製品量産にPCB上にカバーを覆う2次元的な作業の実行するだけが要求されるため、迅速な組立工程を達成するとよい。
【0021】
特に、本発明の転移装置は、様々な形態のPCBタイプ伝送線路に汎用的に適用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a】従来の伝送線路−導波管転移装置の例示図である。
図1b】従来の伝送線路−導波管転移装置の例示図である。
図1c】従来の伝送線路−導波管転移装置の例示図である。
図1d】従来の伝送線路−導波管転移装置の例示図である。
図2a】従来の伝送線路−導波管転移装置に比べた本発明の伝送線路−導波管転移装置の特徴を示した概略的な構造図である。
図2b】従来の伝送線路−導波管転移装置に比べた本発明の伝送線路−導波管転移装置の特徴を示した概略的な構造図である。
図2c】従来の伝送線路−導波管転移装置に比べた本発明の伝送線路−導波管転移装置の特徴を示した概略的な構造図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置及び伝送線路が形成された基板の分離斜視図である。
図4図3のA−A′部分の切断面図である。
図5図3の基板の平面図である。
図6a図3の伝送線路−導波管転移装置の拡大斜視図である。
図6b図3の伝送線路−導波管転移装置の拡大斜視図である。
図7】本発明の第2の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置及び伝送線路が形成された基板の分離斜視図である。
図8】本発明の第3の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置及び伝送線路が形成された基板の分離斜視図である。
図9図8のA−A′部分の切断面図である。
図10】本発明の第4の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置及び伝送線路が形成された基板の分離斜視図である。
図11a】本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置の特性を示したグラフである。
図11b】本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置の特性を示したグラフである。
図11c】本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置の特性を示したグラフである。
図11d】本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置の特性を示したグラフである。
図12a】本発明の様々な実施例に係る転移装置に適用できるリッジ構造の変形例示図である。
図12b】本発明の様々な実施例に係る転移装置に適用できるリッジ構造の変形例示図である。
図12c】本発明の様々な実施例に係る転移装置に適用できるリッジ構造の変形例示図である。
図13図12a、図12b及び図12cのリッジ構造の傾斜面の設計時に適用される関数モデルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施例を添付した図面を参照して詳細に説明する。添付図面では、可能な同一の構成要素については、可能な同一の参照番号を付与し、説明の便宜のために、そのサイズ及び形態などは、多少簡略化したり一部は誇張した。
【0024】
図3は、本発明の第1の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20(以下、「転移装置」と略す)及び伝送線路101が形成された基板10の分離斜視図であり、伝送線路101は、例えば、CPW構造で具現したものを図示した。図4図3のA−A′部分の切断面図であり、転移装置20と伝送線路101が結合した状態の断面形状を示し、図5図3の基板10の平面図である。図6a及び図6bは、図3の伝送線路−導波管転移装置20の拡大斜視図であり、図6bでは、転移装置20の内部の構造をより明確に示すために転移装置20の上面が除去された形で示した。
【0025】
図3ないし図6bを参照すると、本発明の第1の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20は、基本的に、伝送線路101の信号が伝達される規格化された導波管(図4の30)に対応するサイズ及び形状を有する板状の側面202、204及び上面206を有する。つまり、このような側面202、204及び上面206によって形成される内部空間は、規格化された導波管に準ずるサイズ及び形状を有する。
【0026】
また、前記側面202、204及び上面206によって形成される内部空間の中央には、基板10に形成された伝送線路101と一端がつながり、他端は、前記上面206に接する斜面(図4のG)を有する板状のリッジ(ridge)210が形成される。リッジ210の傾斜面Gの幅は、伝送線路101の幅に対応するように、例えば、伝送線路101の幅と同じように設計するとよい。
【0027】
前記リッジ210の傾斜面Gは、伝送線路101から伝達された信号を導波管に転移するための主要な構成として、全体的あらかじめ適切に設計された曲線の形で設計される。すなわち、前記傾斜面Gの曲線形態は、いろんな三角関数曲線の適切な組み合わせによって設計することができ、例えば、伝送線路101と接触する部位(図4のGs)は、少なくとも緩やかな傾斜で始まる曲線の形で設計される。このようなリッジ210の傾斜面Gの曲線形態は、伝送線路の種類及び伝送信号の周波数等に応じて最適化されるように、多数の試験及び解析を経て設計するとよい。
【0028】
特に、リッジ210にて伝送線路101と当接する部位(図4のGs)の曲線形態は伝送線路101と、急な角度でなく、緩やかな角度で当接するように設計することが要求される。これは伝送線路101とリッジ210との間の接続点で接合特性の向上及び反射損失最小化などの効率的な信号伝達を可能にする主要な特徴として、本発明では、このような伝送線路101とリッジ210が緩やかな角度でつながらない場合には、信号伝達特性が非常に悪くなることを発見した。したがって、本発明の実施例では、少なくとも前記リッジ210にて、前記伝送線路101と当接する部位Gsでの曲線の形は、その傾斜角度が実質的に0から徐々に増加する形で設計するとよい。
【0029】
リッジ210と伝送線路101の接続点は、はんだ付け方式や導電性樹脂(例えば、silver epoxy)塗布方式を利用して相互固定するようにつなぐことができる。はんだ付け方法でつなぐ場合には、リッジ210の該当部位には、事前にはんだ付け用メッキ処理が実行される。一方、他にもリッジ210と伝送線路101は、単純な接触方式でつながるように構成してもよい。
【0030】
前記のような構成を有するリッジ210と合わせ、側面202、204及び上面206によって具現される転移装置20は、全体的に導電性金属、例えば、アルミニウム(合金)の材質や銅(合金)製で具現される。場合によっては、前記転移装置20は、信号伝達特性をより良好にするために、銀メッキしてもよい。
【0031】
また、前記転移装置20は、基板10上に固定されるように設けられ、例えば、はんだ付け方法で基板10上に固定される。この場合には、転移装置20の側面202、204の下端部には、事前にはんだ付け用メッキ処理が実行される。または、加えて、転移装置20は、基板10上にネジ結合方式で固定的に設けられる。この場合には、転移装置20の側面202、204には、該当側面全体を上下に貫通する形でネジ穴(図示せず)が形成され、基板10にも同様に対応するようにネジ穴(または溝)が形成され、結合ネジ(図示せず)によって相互に結合する構成を有するとよい。もちろん、他にも転移装置20の側面202、204には、ネジ結合のための別途のフランジ(図示せず)が追加で形成され、これにより、ネジ結合方式で基板10と結合する構造を有してもよい。
【0032】
一方、基板10上に、少なくとも前記転移装置20が設けられる部位にグラウンド面(図3及び図5に示した点線の領域)が形成される。図3ないし図6bに示した実施例では、伝送線路101がCPW構造であり、これにより、基板10の上面がすべてグラウンド面であることが図示されている。
【0033】
この時、図3及び図5に示すように、基板10の上面に形成されたグラウンド面で、転移装置20のリッジ210に対応する部位には、一部のグランド面が除去された形で形成するグラウンド転移領域102が設けられる。前記グラウンド転移領域102は、前記リッジ210と伝送線路101との間の接続点から始まり、徐々に幅が狭くなる形状に形成され、全体的に概ね細長い三角形(たとえば、二等辺三角形)の形で形成される。このようなグラウンド転移領域102は、伝送線路101と導波管との間のインピーダンスマッチング及び信号伝達特性を向上させるために形成する。このような二等辺三角形の形のグラウンド転移領域102は、さらに精密なグラウンド特性整合のために三角形の形の二つの変異、例えば、リッジ210の傾斜面Gとの距離などを考慮して全体的に曲線形態を有してもよい。
【0034】
一方、前記した構造を有する転移装置20は、図4に示すように、導波管30のフランジ(flange)350と結合するためのフランジ250をさらに備えることができる。導波管30は、標準規格(例えば、26.5GHz〜40GHzの帯域では、標準規格「WR−28」は、導波管の内部サイズが縦横「7.11mm x 3.56mm」で定義される)に基づいて設計し、これに対応するように転移装置20及びフランジ250も形成する。一方、転移装置20は、フランジ構造に加えて、導波管30とはんだ付けや溶接などにより付着してもよく、導波管30の末端構造として導波管30と一体的に形成してもよい。
【0035】
前記図3ないし図6bに示すように構成できる本発明の伝送ライン−導波管転移装置20は、例えば、PCB基板10上に、まるで一種のカバーを被せる形で簡単に設置することができることで、これは特性の安定化及び組立の簡便性及び小型化が可能であることが分かる。特に、導波管と水平方向にまっすぐに接続可能であることから、全体的な製品の厚さを低く維持できるようになる。
【0036】
図7は本発明の第2の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20及び伝送線路121が形成された基板12の分離斜視図であり、伝送線路121が、例えば、CPWG構造で具現されたものが図示されている。CPWG構造の基板12には、上面に伝送線路121及びグランド面が形成され、下面にもグラウンド面が形成される。図7の例では、該当伝送線路121の周りにグラウンド特性を向上させるために、多数のビアホール(via hole)124が形成されたものが図示されている。
【0037】
図7を参照すると、本発明の第2の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20は、実質的に前記図3ないし図6bに示した構成と同様に側面202、204、上面206 )及びリッジ210を有し、このとき、リッジ210がCPWG構造の伝送線路121と一端が当接するようになる。また、リッジ210は、第1の実施例の構造と同様に、事前に適切に設計された曲線の形の斜面を有するとよい。
【0038】
また、基板12上に、少なくとも前記転移装置20が設けられる部位にグラウンド面(図7の点線領域)が形成され、転移装置20のリッジ210に対応する部位には、一部のグランド面が除去された形態のグラウンド転移領域122が第1の実施例の構造と同様に形成される。
【0039】
図8は、本発明の第3の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20及び伝送線路141が形成された基板14の分離斜視図であり、伝送線路141が、例えば、ストリップ(strip)線路構造で具現されたものが図示されている、図9は、図8のA−A′部分の切断面図であり、転移装置20及び基板14が結合した状態の断面形状を示す。ストリップ線路構造の基板14には、上面及び下面にグランド面が形成され、その内部層である非導電性誘電体層に伝送線路141を埋め込んだ形で形成される。
【0040】
図8及び図9を参照すると、本発明の第3の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20は、実質的に、以前の他の実施例と同様に側面202、204、上面206及びリッジ210を有する。このとき、リッジ210とストリップ線路構造の伝送線路141をつなぐために、金属のビアホール143が、基板14を貫通して基板内層の伝送線路141の末端とつながるようにさらに形成される。リッジ210は、このような金属ビアホール143と当接することで伝送線路141とつながる。
【0041】
基板14上に、少なくとも前記転移装置20が設けられる部位にグラウンド面(図8の点線領域)が形成され、前記ビアホール143の周辺部位にグランドパターンが除去されるように設けられる。また、転移装置20のリッジ210に対応する部位には、一部のグランド面が除去された形態のグラウンド転移領域142が、他の実施例の構造と同様に形成される。また、図8及び図9に図示した第3の実施例の構造では、前記のグラウンド転移領域142の周辺にグラウンド特性を向上させるために、多数のビアホール(via hole)144が、基板14を貫通して基板の上面グラウンド及び下面グラウンドがつながるように形成される。
【0042】
図10は、本発明の第4の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置及び伝送線路が形成された基板の分離斜視図であり、伝送線路161が、例えば、マイクロストリップ(microstrip)線路構造で具現されたものが図示されている、マイクロストリップ線路構造の基板16には、上面には、基本的に伝送線路161のパターンが形成され、下面にグランド面が形成される。
【0043】
図10を参照すると、本発明の第4の実施例に係る伝送線路−導波管転移装置20は、他の実施例と同様に側面202、204、上面206及びリッジ210を有する。このとき、リッジ210は、このようなマイクロストリップ線路構造の伝送線路161と当接するように設けられる。
【0044】
基板16上に、少なくとも前記転移装置20が設けられる部位に、別途のグラウンド面がさらに形成される。このような基板16の上面にさらに形成されるグラウンド面では、以前の実施例と同様に、リッジ210に対応する部位には、一部のグランド面が除去された形態のグラウンド転移領域162が形成される。また、前記グラウンド転移領域162の周辺にグラウンド特性を向上させるために、多数のビアホール(via hole)164が、基板14を貫通して形成され、基板の上面に、前記さらに形成されたグラウンド面と基板下面のグランド面がつながるようにするとよい。
【0045】
図11a、図11b、図11c及び図11dは、本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置の特性を示したグラフであり、逐次的に、それぞれ前記第1、第2、第3及び第4実施例に係る転移装置20の特性を示している。図11aないし図11dに示すように、転移装置20の各々で、目的の帯域、例えば28GHz帯を目安に、反射損失S11−15dB帯域幅が十分に確保できることが分かる。また、挿入損失S21は、概ね約−0.5dB以内で非常に小さく設計できることが分かる。また、損失の一部は、誘電体基板に起因するものであることから、実際の転移構造の挿入損失は無視できるほど小さいことが類推可能である。
【0046】
前記本発明の第1ないし第4の実施例の構造と同様に、本発明に係る伝送線路−導波管転移装置は、任意形状の単層及び多層構造の基板でCPW、CPWG、ストリップ線路、マイクロストリップ線路などの様々な伝送線路の構造に汎用的に適用可能であることが分かる。
【0047】
図12a、図12b及び図12cは、本発明の様々な実施例に係る転移装置に適用することができるリッジ構造の変形例であり、それぞれリッジの斜面の曲線形態が異なるように設計されることが分かる。すなわち、図12aに図示した転移装置20−1のリッジ210−1の斜面の形態は、直線状であり、図12bに図示した転移装置20−2のリッジ210−2の斜面の形態は、傾斜区間の開始点の傾きが小さく終点の傾きが大きい曲線形態である。図12cに示した転移装置20−3のリッジ210−3の斜面の形態は、傾斜区間の開始点及び終了点の傾きが小さい、三角関数の一部やロジスティック関数の形態に似た「S」字状の曲線の形で具現される。
【0048】
図13図12a、図12b及び図12cのリッジ構造の傾斜面の設計時に適用されるそれぞれの関数モデルを示したグラフである。図13を参照すると、図12aのリッジ210−1の斜面の直線形態は、1次関数を用いて設計することができ、図12bのリッジ210−2の斜面の曲線形態は、2次関数を利用して設計するとよい。図12cのリッジ210−3の斜面の「S」字状の曲線形態は三角関数を利用して設計するとよい。各関数は、例えば、以下の式を満足するように設定される。
【0049】
[数学式]
1次関数:y = B/L*x
2次関数:y =(B/L^2)*x^2
三角関数:y = −0.5*B*cos(π/L*x)+0.5*B
(L:転移構造の長さ、B:転移構造の高さ(つまり、導波管の高さ))
【0050】
図13に図示した各関数によるグラフは、PCBの伝送線路と接触する部分を原点0,0とし、リッジの斜面の形態をモデリングする。このように、原点と斜面の終了点L,B(L:リッジの長さ、B:リッジの高さ)を通る関数を適切に設定することができ、これにより、リッジの斜面を設計するとよい。
【0051】
この場合に、リッジの長さL、すなわち転移構造の長さが短いながらも損失が少ない構造が最適の構造である。前記の例では、転移構造の開始点0,0と終了点L,Bで傾きが小さい三角関数の形態を利用した構造が、その特性に優れている。一方、リッジ構造は、他にも適用される構造及びPCBの厚さ、伝送線路の幅などによって異なる最適化が適用されてもよい。また、リッジの各部分ごとに、それぞれ異なる関数モデルが別々に適用されて全体的なリッジの斜面を設計してもよい。
【0052】
前記のように、本発明の様々な実施例では、転移装置のリッジの形状は様々な関数のグラフの形をモデルにして最適化するとよい。本発明は、単一の転移構造を介して任意のPCB形態の伝送線路で導波管への変換が行われるため、さまざまな関数モデルの中からその特性に優れた関数モデルを導出して適用するとよい。
【0053】
前記のように、本発明の様々な実施例に係る伝送線路−導波管転移装置が構成及び動作することができ、一方、前記の説明では、本発明の具体的な実施例について説明したが、本発明では、他にも様々な実施例や変形例がある。例えば、前記転移装置20の長さや、リッジ210の傾斜面Gの曲面形態などは、製品に要求される特性を考慮して多様に設計するとよい。また、前記実施例に言及した伝送線路に加えて、本発明の転移装置20は、例えば、同軸線路にも適用してよい。この場合に、同軸線路の内部導体がリッジにつながる構造を有してよい。
【0054】
このように、本発明の様々な変形及び変更があり、したがって、本発明の範囲は、説明された実施例によって定めるものではなく、請求の範囲と請求の範囲均等のものによって定めなければならない。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図13