特許第6869387号(P6869387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869387
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】束ね鉄筋の生産方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/02 20060101AFI20210426BHJP
   E04C 5/07 20060101ALI20210426BHJP
   E04C 5/03 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   E04C5/02
   E04C5/07
   E04C5/03
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-2143(P2020-2143)
(22)【出願日】2020年1月9日
(62)【分割の表示】特願2015-146570(P2015-146570)の分割
【原出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2020-56307(P2020-56307A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 輝勝
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−150687(JP,A)
【文献】 実開昭55−118707(JP,U)
【文献】 特開平02−232469(JP,A)
【文献】 特公昭49−020812(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00−5/20
E04G 21/12
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半割りで内周面にコンクリートよりも引張強度の高い接着剤に対して剥離性を有する剥離層が形成された半円筒体を合わせて円筒体となる型枠を用意し、
同一の外径の複数の鉄筋を用意し、
前記鉄筋の外径に対応した大きさの網目を有する金網を用意し、
前記複数の鉄筋の長手方向両端に前記金網を配置し、前記複数の鉄筋の長手方向両端の端部を、前記複数の鉄筋の外周面が相互に離間するようにして、前記金網の網目に挿入し、
長手方向両端の端部が前記金網の網目に挿入された複数の鉄筋を前記型枠の内部に配置し、前記コンクリートよりも引張強度の高い液状の接着剤を充填し、前記接着剤を硬化させたのち、前記型枠を開いて、前記複数の鉄筋及び硬化させた前記接着を束ね鉄筋として取り出す、
ことを特徴とする束ね鉄筋の生産方法。
【請求項2】
前記コンクリートよりも引張強度の高い接着剤はエポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1記載の束ね鉄筋の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄筋からなる束ね鉄筋の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体を新たに構築する場合、あるいは、既存のコンクリート構造体を補強する場合、設計時に、鉄筋の外径と、本数と、鉄筋挿入箇所が決定される。
この場合、設計された鉄筋の外径が大きい場合、その都度、大きい外径の鉄筋を手配するのでは、工期の短縮化を図り、また、コストの削減化を図る上で不利となる。
そこで、予め均一の外径の鉄筋を多数用意しておき、それら鉄筋を束ねた束ね鉄筋として使用できれば、大きい外径の鉄筋をその都度手配する必要がなくなる。
特許文献1には、複数本の鉄筋が、スパイラル鉄筋で巻回されて構成された束ね鉄筋が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−150630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような束ね鉄筋は、複数本の鉄筋が、スパイラル鉄筋で巻回され締め付けられ、鉄筋相互の外周面が接触しているため、複数本の鉄筋の内側にコンクリートが行き渡り難い。したがって、用いる鉄筋の数が4本、5本、6本と増えるにつれ、各鉄筋の相互の隙間にコンクリートが行き渡り難いことから、定着長を確保する上で不利となる。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、本発明は、定着長を確保する上で有利な束ね鉄筋の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、半割りで内周面にコンクリートよりも引張強度の高い接着剤に対して剥離性を有する剥離層が形成された半円筒体を合わせて円筒体となる型枠を用意し、同一の外径の複数の鉄筋を用意し、前記鉄筋の外径に対応した大きさの網目を有する金網を用意し、前記複数の鉄筋の長手方向両端に前記金網を配置し、前記複数の鉄筋の長手方向両端の端部を、前記複数の鉄筋の外周面が相互に離間するようにして、前記金網の網目に挿入し、長手方向両端の端部が前記金網の網目に挿入された複数の鉄筋を前記型枠の内部に配置し、前記コンクリートよりも引張強度の高い液状の接着剤を充填し、前記接着剤を硬化させたのち、前記型枠を開いて、前記複数の鉄筋及び硬化させた前記接着を束ね鉄筋として取り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、接着剤が複数の鉄筋の隙間から外周にわたって充填され、複数の鉄筋と保持体とが予め一体化され、あたかも太い一本の鉄筋の如く形成されているので、束ね鉄筋に設計通りの定着長を確保する上で有利となる。
また、同一外径の多数の鉄筋、または、複数種類の外径の多数の鉄筋を用意しておけば、コンクリート構造体を新たに構築する際、あるいは、既存のコンクリート構造体を補強する際、設計された鉄筋の外径が大きい場合、その都度、大きい外径の鉄筋を手配する必要がなくなり、工期の短縮化を図り、また、コストの削減化を図る上で有利となる。
本発明によれば、束ね鉄筋の取り扱い時の鉄筋の保護が図られている。
本発明によれば、太い一本の鉄筋と同様に取り扱う上で有利となる。
本発明によれば、定着長の計算を簡単に行なえ、束ね鉄筋を簡単に製作する上で有利となる。
本発明によれば、束ね鉄筋において鉄筋が占める断面積を最適値に設定する上で有利となる
本発明によれば、束ね鉄筋の定着性を確保する上で有利となる。
本発明によれば、太い一本の鉄筋と同様に取り扱うことができるため、コンクリート構造体を新たに構築する際、あるいは、既存のコンクリート構造体を補強する際、設計された鉄筋の外径が大きい場合、その都度、大きい外径の鉄筋を手配する必要がなくなり、工期の短縮化を図り、また、コストの削減化を図る上で有利となる。
本発明によれば、コンクリートとの付着性が高まり、束ね鉄筋の定着性を確保する上で有利となる。
本発明によれば、コンクリートとの付着性に優れる束ね鉄筋を簡単に得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)は第1の実施の形態の束ね鉄筋の斜視図、(B)は(A)のBB断面図である。
図2】第2の実施の形態の束ね鉄筋の断面図である。
図3】第3の実施の形態の束ね鉄筋の断面図である。
図4】第4の実施の形態の束ね鉄筋の断面図である。
図5】実施の形態の束ね鉄筋の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態の束ね鉄筋10Aは、複数の鉄筋12と、それら鉄筋12を保持する保持体14とを含んで構成されている。
複数の鉄筋12は、同一の外径であり、同一の長さを有している。
保持体14は、複数の鉄筋12がそれらの長さを揃え、互いに平行して延在した状態を保持するコンクリートよりも引張強度の高い接着剤で構成されている。
このような接着剤として、例えば、エポキシ樹脂系接着剤を用いることができる。エポキシ樹脂系接着剤は、液状樹脂に硬化剤を混合し、複数の鉄筋12の隙間および周囲にわたって充填され、硬化されることでそれら複数の鉄筋12を保持している。
【0009】
本実施の形態では、複数の鉄筋12は、それらの外周面の相互が離間して配置され、各鉄筋12の外周面の全域にエポキシ樹脂系接着剤が位置しており、複数の鉄筋12と保持体14との一体化がより強固になされている。
なお、本発明では複数の鉄筋12の外周面相互が接触させて配置してもよい。複数の鉄筋12の外周面相互が接触している場合であっても、硬化剤を混合した液状のエポキシ樹脂系接着剤は、コンクリートよりも流動性に優れるため、複数の鉄筋12相互の隙間に確実に充填され一体化される。しかしながら、複数の鉄筋12の外周面の相互を離間して配置した方が、複数の鉄筋12と保持体14とを一体化する上で有利となり、定着長を確保する上で有利となる。
なお、鉄筋12としてねじ節鉄筋を用いると、複数の鉄筋12と保持体14とを一体化する上で有利となり、定着長を確保する上で有利となる。
束ね鉄筋10Aの外周面1002は保持体14で形成され、取り扱い時の鉄筋12の保護が図られている。
また、束ね鉄筋10Aは、本実施の形態では、均一断面の円柱体として形成され、束ね鉄筋10Aの取り扱いが簡単になされるように図られている。
【0010】
このような束ね鉄筋10Aは、例えば、半割りで内周面にエポキシ樹脂系接着剤に対して剥離性を有する剥離層が形成された半円筒体を合わせて円筒体となる型枠を用意する。そして、この型枠の内部に複数の鉄筋12を配置し、液状のエポキシ樹脂系接着剤を充填し、硬化させたのち、半円筒体を開いて取り出すことで製作される。
この場合、例えば、鉄筋12の外径に対応した大きさの網目を有する金網を用意し、複数の鉄筋12の長手方向両端に金網を配置し、鉄筋12の長手方向両端において、それら鉄筋12の端部を金網の網目に挿入し、複数の鉄筋12の外周面の相互を離間して型枠内に配置するようにしてもよい。
【0011】
本実施の形態の束ね鉄筋10Aによれば、エポキシ樹脂系接着剤が複数の鉄筋12の隙間からそれら鉄筋12の外周にわたって充填され、あたかも太い一本の鉄筋の如く円柱体として形成されているので、太い一本の鉄筋と同様に取り扱う上で有利となる。
また、束ね鉄筋10Aを構成する複数の鉄筋12相互は、エポキシ樹脂系接着剤からなる保持体14により一体化されているので、束ね鉄筋10Aを構成する各鉄筋12に設計通りの定着長を確保する上で有利となる。
また、エポキシ樹脂系接着剤は、コンクリートよりも引張強度が高いため、束ね鉄筋10Aの定着長を確保する上で有利となる。
また、複数の鉄筋12は同一の外径を有しているので、束ね鉄筋10Aの定着長の計算を簡単に行なえ、束ね鉄筋10Aを簡単に製作する上で有利となる。
また、コンクリート構造体を新たに構築する際に、束ね鉄筋10Aを、コンクリート型枠内に配置し、その後コンクリートを打設するなど、太い一本の鉄筋と同様に取り扱うことができる。
また、束ね鉄筋10Aの外周面1002は、均一の外径で延在しているので、太い一本の鉄筋と同様に取り扱う上で有利となる。
【0012】
また、コンクリート構造体を補強する際に、コンクリート構造体に鉄筋挿入用孔を形成し、この孔に束ね鉄筋10Aを挿入し、鉄筋挿入用孔の内周面と束ね鉄筋10Aの外周面との間に、モルタルやエボキシ樹脂系接着剤を充填するなど、太い一本の鉄筋と同様に取り扱うことができる。
したがって、同一外径の多数の鉄筋12を用意しておけば、コンクリート構造体を新たに構築する際、あるいは、既存のコンクリート構造体を補強する際、設計された鉄筋の外径が大きい場合、その都度、大きい外径の鉄筋を手配する必要がなくなり、工期の短縮化を図り、また、コストの削減化を図る上で有利となる。
【0013】
(第2の実施の形態)
図2に示すように、第2の実施の形態の束ね鉄筋10Bは、複数の鉄筋12を保持する保持体14がその内部に取着された鋼管16をさらに備えるものであり、複数の鉄筋12と保持体14は、第1の実施の形態と同様である。
鋼管16と複数の鉄筋12とは、保持体14を構成するエポキシ樹脂系接着剤で取着されている。
第2の実施の形態の束ね鉄筋10Bによれば、第1の実施の形態と同様に、太い一本の鉄筋と同様に取り扱うことができるため、コンクリート構造体を新たに構築する際、あるいは、既存のコンクリート構造体を補強する際、設計された鉄筋の外径が大きい場合、その都度、大きい外径の鉄筋を手配する必要がなくなり、工期の短縮化を図り、また、コストの削減化を図る上で有利となる。
また、鋼管16により保持体14の外周面を保護する上で有利となる。
【0014】
(第3の実施の形態)
図3に示すように、第3の実施の形態の束ね鉄筋10Cは、第2の実施の形態の束ね鉄筋10Bを構成する鋼管16に、その外周面と内周面とに貫通する孔1602を鋼管16の周方向および長手方向に間隔をおいて複数形成したものである。
第3の実施の形態の束ね鉄筋10Cによれば、第2の実施の形態と同様な効果が奏されることは無論のこと、複数の孔1602により鋼管16とコンクリートとの付着性が高まり、束ね鉄筋10Cの定着性を確保する上で有利となる。
【0015】
(第4の実施の形態)
図4に示すように、第4の実施の形態は、束ね鉄筋10Dの外周面1002が、保持体14の外周面と、保持体14の外周面に設けられコンクリートとの付着性を高める凹凸部18とで構成されているものである。
このような凹凸部18は、前記の型枠の内面に予め凹凸部を形成しておくことで、束ね鉄筋10Dの外周面1002に設けてもよい。あるいは、図4に示すように、保持体14の外周面を覆うメッシュ材1802を設けることで凹凸部18を形成してもよい。メッシュ材1802として、金属や繊維強化プラスチックが使用可能である。
また、束ね鉄筋10A〜10Dを均一の断面で延在させず、所定の長さ毎に小径部(環状の凹溝)や大径部(環状の凸部)を設けるなど外周面の形状を適宜変化させるようにしてもよい。
第4の実施の形態の束ね鉄筋10Dによれば、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、凹凸部18により束ね鉄筋10Dとコンクリートとの付着性が高まり、束ね鉄筋10Dの定着性を確保する上で有利となる。
【0016】
なお、実施の形態では、束ね鉄筋10A〜10Dの断面が円形である場合について説明したが、束ね鉄筋10A〜10Dの断面は、矩形や多角形など、用途に応じて適宜決定される。
また、実施の形態では、束ね鉄筋10A〜10Dを構成する複数の鉄筋12の外径が同一である場合について説明したが、複数種類(例えば、2〜3種類程度)の外径の鉄筋12を多数用意しておき、束ね鉄筋10A〜10Dを構成する鉄筋12に、複数種類の外径の鉄筋12を組み合わせるなど任意である。
図5では、束ね鉄筋10Eを構成する鉄筋12に、2種類の外径の鉄筋12A、12Bを用いている。
このように束ね鉄筋10Eを構成する鉄筋12に、複数種類の外径の鉄筋12A、12Bを組み合わせることで、鉄筋12A、12Bの外周面相互の間隔を確保しつつ束ね鉄筋10Eにおいて鉄筋が占める断面積を最適値に設定する上で有利となる。
【符号の説明】
【0017】
10A〜10E 束ね鉄筋
12 鉄筋
14 保持体
16 鋼管
1602 孔
18 メッシュ材
図1
図2
図3
図4
図5