特許第6869402号(P6869402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6869402窒素含有化合物、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869402
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】窒素含有化合物、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/54 20060101AFI20210426BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20210426BHJP
   C07D 209/82 20060101ALI20210426BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20210426BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20210426BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20210426BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C07C211/54
   C07D307/91CSP
   C07D209/82
   C07D333/76
   C07D405/12
   C07D409/12
   C09K11/06 620
   C09K11/06 635
   C09K11/06 640
   C09K11/06 645
   C09K11/06 655
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   H01L31/04 154A
   H01L31/04 154D
   H01L31/04 154C
   H01L31/04 154B
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】111
(21)【出願番号】特願2020-101272(P2020-101272)
(22)【出願日】2020年6月10日
(65)【公開番号】特開2020-205419(P2020-205419A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】201910515733.1
(32)【優先日】2019年6月14日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201910755507.0
(32)【優先日】2019年8月15日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201910765403.8
(32)【優先日】2019年8月19日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520207310
【氏名又は名称】シャンシー ライト オプトエレクトロニクス マテリアル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shaanxi Lighte Optoelectronics Material Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人サカモト・アンド・パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】テンテン マ
(72)【発明者】
【氏名】キキ ニー
(72)【発明者】
【氏名】ホンギャン リ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン フェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァンイ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シュンシャン シャ
【審査官】 二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2020/050623(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第107459466(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第109438350(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2019−0035567(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第106008424(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104583176(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103108859(CN,A)
【文献】 CHEN, C. H. et al.,Synthesis and characterization of spiro(adamantane-2,9'-fluorene)-based triaryldiamines: thermally stable hole-transporting materials,Synthetic Metals,2004年,Vol. 143,pp. 215-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/91
C07C 211/54
C07D 209/82 − 409/12
C09K 11/06
H01L 51/46 − 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が次の一般式1で表されるものであることを特徴とする窒素含有化合物。
【化1】
〔式中、Lは、単結合、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜12のアリーレン基から選ばれる基を示し、
ArおよびArは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数12〜20のヘテロアリール基から選ばれる基を示し、
前記Ar、ArおよびLの置換基は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基及びメチル基から選ばれる基であり、
前記置換の炭素原子数6〜12のアリーレン基は、当該アリーレン基およびその置換基の合計炭素原子数が〜12であり、
前記置換の炭素原子数6〜20のアリール基は、当該アリール基およびその置換基の合計炭素原子数が〜20であり、
前記置換の炭素原子数12〜20のヘテロアリール基は、当該ヘテロアリール基およびその置換基の合計炭素原子数が13〜20である。〕

【請求項2】
Lが、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のナフチレン基、置換若しくは無置換のビフェニリレン基ら選ばれる基を示す、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【請求項3】
前記窒素含有化合物の相対分子質量が750以下である、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【請求項4】
Lが、単結合又は以下のような置換基から選ばれる基を示す、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【化2】
〔式中、
【化3】
は、化学結合を表す。
*は、上記の置換基が
【化4】
に結合されることを表す。
**は、上記の置換基が
【化5】
に結合されることを表す。〕
【請求項5】
少なくともArおよびArのいずれか1方が、置換の環構成炭素原子数6〜12のアリール基から選ばれる基を示し、且つ、前記置換の環構成炭素原子数6〜12のアリール基における置換基が、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数6〜12のヘテロアリール基から選ばれる基である、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【請求項6】
ArおよびArが、それぞれ独立に以下のような置換基から選ばれる基を示す、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【化6】
【請求項7】
前記窒素含有化合物が、以下の化合物からなる群から選ばれるものである、ことを特徴とする請求項1記載の窒素含有化合物。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【請求項8】
対向に設置された陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設置され、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の窒素含有化合物を含む機能層と、を備える、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項9】
前記機能層が、前記窒素含有化合物を含む正孔輸送層を含む、ことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項10】
前記正孔輸送層が、第1正孔輸送層と第2正孔輸送層とを含み、且つ、前記第1正孔輸送層が、第2正孔輸送層の前記陽極に近い表面に設置され、
前記第1正孔輸送層又は第2正孔輸送層が、前記窒素含有化合物を含む、ことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項11】
前記機能層が、前記窒素含有化合物を含む正孔注入層を含む、ことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項12】
対向に設置された陽極および陰極と、陽極と陰極との間に設置され、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の窒素含有化合物を含む機能層と、を備える、ことを特徴とする光電変換デバイス。
【請求項13】
前記機能層が、前記窒素含有化合物を含む正孔輸送層を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の光電変換デバイス。
【請求項14】
前記光電変換デバイスが、太陽電池である、ことを特徴とする請求項12に記載の光電変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の技術分野に関し、特に窒素含有化合物、この窒素含有化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイス(Organic Electro Luminescence Device)およびこの窒素含有化合物を用いた光電変換デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発展および材料科学の進歩に伴い、エレクトロルミネッセンス又は光電変換を実現するための電子部品の利用範囲は広まりつつある。このような電子部品は、通常、対向に設置された陰極および陽極と、陰極と陽極との間に設置された機能層と、を備えるものである。この機能層は、複数層の有機若しくは無機膜層から構成されており、且つ、一般的にエネルギー変換層と、エネルギー変換層と陽極との間に位置する正孔輸送層と、エネルギー変換層と陰極との間に位置する電子輸送層と、を含んでいる。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスを例とすれば、一般的に、順次に積層されている陽極、正孔輸送層、エネルギー変換層であるエレクトロルミネッセンス層、電子輸送層および陰極が含まれる。陰極および陽極に電圧が印加される場合は、2つの電極に電場が発生し、電場の作用によって、陰極側の電子が、エレクトロルミネッセンス層へ移動し、陽極側の正孔が発光層へ移動し、電子および正孔が、エレクトロルミネッセンス層で結合して励起子を形成し、励起子が、励起状態になってエネルギーを放出し、さらにエレクトロルミネッセンス層が外部へ発光するのである。
【0004】
先行技術のKR1020190035567A、CN107459466A、CN106008424A、CN104583176A、CN103108859Aなどには、有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて正孔輸送層を製造する可能な材料が開示されているが、電子部品の性能をさらに向上させるために、続いて新規な材料を開発することが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】KR1020190035567A
【特許文献2】CN107459466A
【特許文献3】CN106008424A
【特許文献4】CN104583176A
【特許文献5】CN103108859A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの性能を向上させるための窒素含有化合物、この窒素含有化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよびこの窒素含有化合物を用いた光電変換デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術態様を取っている。
本発明の第1の態様では、構造が次の一般式1で表されるものである窒素含有化合物を提供する。
【0008】
【化1】
〔式中、Lは、単結合、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜30のヘテロアリーレン基から選ばれる基を示す。
ArおよびArは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜35のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数3〜35のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜30のヘテロアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜30のヘテロアリール基から選ばれる基を示す。
前記Ar、ArおよびLの置換基は、それぞれ独立に、二重水素(deuterium)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数3〜40のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜40のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のヘテロアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜40のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜40のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜40のアラルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜24のヘテロアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜45のアルキルシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜50のアリールシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールチオ基から選ばれる基である。〕
【0009】
本発明において、前記Arが、9,9−ジフェニルフルオレニルではなく、前記Arが、9,9−ジフェニルフルオレニルではない。
【0010】
本発明の第2の態様では、対向に設置された陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設置され、上記の窒素含有化合物を含む機能層と、を備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供する。
【0011】
本発明の第3の態様では、対向に設置された陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設置され、上記の窒素含有化合物を含む機能層と、を備える光電変換デバイスを提供する。
【0012】
本発明により提供される窒素含有化合物、この窒素含有化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよびこの窒素含有化合物を用いた光電変換デバイスによければ、窒素含有化合物が、良好な正孔輸送特性を有し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの陽極とエネルギー変換層との間に適用されることにより、陽極とエネルギー変換層との間の正孔輸送効率を向上させ、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスの発光効率および光電変換デバイスの発電効率を向上させることができる。さらに、当該窒素含有化合物は、より高い電子耐性および成膜性を有することで、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの効率および寿命を向上させることができる。それに加えて、当該窒素含有化合物は、より優れた熱安定性も有することで、高温で長期間に構造安定性を維持することができ、異なる段階で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの性能の均一性および安定性を確保するとともに、量産の後期において製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの性能が低下しないことも確保することが可能になる。
【0013】
本発明における上述の、またはさらに他の特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスの構造を示す模式図である。
図2図2は本発明の実施形態に係る光電変換デバイスの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施例の例示についてさらに詳しく説明するが、これらの実施例の例示は、種々変更可能であり、本明細書に記載の形態例に限定されるものとして理解されるべきではない。一方、これらの実施例は、本発明を一層全面的且つ完全に掲載するとともに、実施例の例示の思想を全面的に当業者に伝えるために提供されたものに過ぎず、説明される特徴、構成又は特性が、任意の適切なやり方で1つ又は複数の実施例に組み合わせされることが可能である。また、以下の説明では、本発明に係る実施例が完全に理解されるように、多くの具体的な細部のものが提供される。
なお、図面では、明瞭のために、領域および層の厚さを誇張することがある。図面における同じ図面符号は、同じ又は類似する要素を示しているから、それらの詳細な記述を省略している。
【0016】
説明される特徴、構成又は特性は、任意の適切なやり方で1つ又は複数の実施例に組み合わせされることが可能である。以下の説明では、本発明に係る実施例が完全に理解されるように、多くの具体的な細部のものが提供されるが、そのうちの1つ又は複数の特定の細部を抜くこと、あるいは、別の方法、要素、材料などを採用することにしても、本発明に係る態様を実施することも可能であることが、当業者にとって明らかである。他に、本発明の主要な技術思想をあいまいしてしまたことを避けるように、周知の構成、材料又は操作を詳しく表示や説明していない場合がある。
【0017】
本発明は、構造が次の一般式1で表されるものである窒素含有化合物を提供する。
【化2】
〔式中、Lは、単結合、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜30のヘテロアリーレン基から選ばれる基を示す。
ArおよびArは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜35のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数3〜35のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜35のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜30のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜30のヘテロアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜30のヘテロアリール基から選ばれる基を示す。
前記Ar、ArおよびLの置換基は、それぞれ独立に、二重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数3〜40のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜40のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜40のヘテロアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜40のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜40のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜40のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜40のアラルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜24のヘテロアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜45のアルキルシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜50のアリールシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜30のアリールチオ基から選ばれる基である。〕
【0018】
本発明において、前記Arは、9,9−ジフェニルフルオレニルではなく、前記Arは、9,9−ジフェニルフルオレニルではない。
【0019】
本発明において、L、ArおよびArの炭素原子数とは、すべての炭素原子の数を指す。例えば、Lが置換の炭素原子数12のアリーレン基から選ばれる場合、アリーレン基およびその置換基の合計炭素原子数は12である。
【0020】
選択的に、無置換の炭素原子数1〜35のアルキル基とは、炭素原子数1〜35の直鎖のアルキル基、又は炭素原子数1〜13の分岐鎖を含むアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。置換の炭素原子数1〜35のアルキル基とは、少なくともその1つの水素原子が二重水素原子、F、Cl、I、CN、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基で置換されているものを指す。一部の実施形態において、アルキル基は、炭素原子数1〜4のアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基が挙げられる。
【0021】
選択的に、無置換の炭素原子数2〜35のアルケニル基とは、炭素原子数2〜35のアルケニル基、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子数2〜35の直鎖のアルケニル基、又は、炭素原子数1〜13の分岐鎖を含むアルケニル基を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基などが挙げられる。置換の炭素原子数2〜35のアルケニル基とは、少なくともその1つの水素原子が二重水素原子、F、Cl、I、CN、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基などで置換されているものを指す。
選択的に、無置換の炭素原子数2〜35のアルキニル基とは、炭素原子数2〜35のアルキニル基、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子数2〜35の直鎖のアルキニル基、又は、炭素原子数1〜10の分岐鎖を含むアルキニル基を指し、例えば、エチニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。置換の炭素原子数2〜35のアルキニル基とは、少なくともその1つの水素原子が二重水素原子、F、Cl、I、CN、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基などで置換されているものを指す。
【0022】
本発明に係る窒素含有化合物は、良好な正孔輸送効率を有するので、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスに正孔輸送材料として使用することができる。例えば、本発明に係る窒素含有化合物は、陽極における正孔を有機エレクトロルミネッセンス層に輸送するように、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの陽極と有機エレクトロルミネッセンス層との間に適用することができる。選択的に、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの正孔注入層、正孔輸送層および電子阻止層のいずれかの1つ又は複数の層に適用することができる。さらに例えば、本発明に係る窒素含有化合物は、光電変換層における正孔を陽極に輸送するように、光電変換デバイスの陽極と光電変換層との間に適用することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記Ar、ArおよびLの置換基が、それぞれ独立に、二重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数3〜33のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜33のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜33のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜33のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜33のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数2〜33のヘテロアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜33のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のアルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜33のアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素原子数7〜33のアラルキルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のヘテロアリールアミノ基、置換若しくは無置換の炭素原子数1〜33のアルキルシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜33のアリールシリル基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜33のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜33のアリールチオ基から選ばれる基を示す。
【0024】
本発明の一実施形態において、Lが、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のナフチレン基、置換若しくは無置換のビフェニリレン基、置換若しくは無置換のターフェニレン基(terphenylene)、置換若しくは無置換のフルオレニリデン基(fluorenylidene)から選ばれる基を示す。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明に係る窒素含有化合物が良好な熱安定性を有することを確保し、本発明に係る窒素含有化合物が長時間蒸着プロセスにおいて構造安定性を維持するために、前記窒素含有化合物の相対分子質量(relative molecular mass)を750以下とする。
【0026】
本発明の一実施形態においては、Lが、単結合、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜12のアリーレン基から選ばれる基を示す。選択的に、Lが、単結合又は無置換の炭素原子数6〜12のアリーレン基から選ばれる基を示す。これにより、本発明に係る窒素含有化合物の調製の難しさおよびコストが低減され、大規模に電子部品に適用される時のコストパフォーマンスが改善され、そして電子部品、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスのコストが低減される。
【0027】
本発明の一実施形態においては、Lが、単結合又は以下のような置換基から選ばれる基を示す。
【化3】
〔式中、
【化4】
は、化学結合を表す。
*は、上記の置換基が
【化5】
に結合されることを表す。
**は、上記の置換基が
【化6】
に結合されることを表す。〕
【0028】
例えば、化合物
【化7】
において、Lは、
【化8】
である。
【0029】
本発明の一実施形態においては、ArおよびArが、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜20のアリール基、置換若しくは無置換の炭素原子数12〜20のヘテロアリール基から選ばれる基を示す。
【0030】
本発明の一実施形態においては、ArおよびArが、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素原子数6〜25のアリール基から選ばれる基を示し、且つ、前記Arが、9,9−ジフェニルフルオレニルではなく、前記Arが、9,9−ジフェニルフルオレニルではない。
【0031】
本発明の一実施形態においては、少なくともArおよびArのいずれかの1方が、置換の環構成炭素原子数6〜12のアリール基から選ばれる基を示し、且つ、前記置換の環構成炭素原子数6〜12のアリール基における置換基が、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数6〜12のヘテロアリール基から選ばれる基である。例えば、Ar
【化9】
である場合、Arは、置換の環構成炭素原子数6のアリール基であり、且つ、前記置換の環炭素原子6のアリール基における置換基は、炭素原子数12のヘテロアリール基である。
【0032】
本発明の一実施形態においては、ArおよびArが、それぞれ独立に、以下のような置換基から選ばれる基を示す。
【化10】
【0033】
本発明の一実施形態においては、ArおよびArが、それぞれ独立に以下のような置換基から選ばれる基を示す。
【化11】
【0034】
本発明の一実施形態においては、ArおよびArが、それぞれ独立に以下のような置換基から選ばれる基を示す。
【化12】
【0035】
本発明の一実施形態においては、前記窒素含有化合物が、以下の化合物から選ばれるものである。
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】
【化19】
【0042】
【化20】
【0043】
【化21】
【0044】
【化22】
【0045】
【化23】
【0046】
【化24】
【0047】
【化25】
【0048】
【化26】
【0049】
【化27】
【0050】
【化28】
【0051】
【化29】
【0052】
【化30】
【0053】
【化31】
【0054】
【化32】
【0055】
【化33】
【0056】
【化34】
【0057】
【化35】
【0058】
【化36】
【0059】
【化37】
【0060】
【化38】
【0061】
【化39】
【0062】
【化40】
【0063】
【化41】
【0064】
【化42】
【0065】
【化43】
【0066】
【化44】
【0067】
本発明に係る窒素含有化合物では、フルオレンの9位に、超共役効果によりフルオレン環および窒素含有化合物全体の共役系の電子密度を増加させる可能なアダマンタン−2−イル構造を導入したことで、窒素含有化合物の正孔伝導効率を改善し、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスのキャリア伝導効率および寿命を向上させることができた。アダマンタン−2−イルをフルオレンの末端に導入せずにフルオレンの9位に導入し、また本発明に係る窒素含有化合物の末端に導入せずに窒素含有化合物のアミンの各側鎖の間に導入するようにしました。そうして、アダマンタン−2−イルが大きな立体障害を有することで、アミンの各分岐鎖同士の間の角度および共役程度を調整し、そして窒素含有化合物のHOMO値を調整することができ、これにより、この窒素含有化合物のHOMO値が隣接する膜層と一層一致することが可能となり、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧が低下したこと、又は、光電変換デバイスの開放電圧が増加することが可能となった。
【0068】
また、本発明に係る窒素含有化合物では、体積の大きいアルキル基の構造を活用してフルオレン基を修飾することにより、アリール基による修飾の場合と比べ、過剰なπ−πスタッキング効果(π−stacking effect)を回避することが可能となるとともに、本発明に係る窒素含有化合物の対称性を低減することができ、さらに窒素含有化合物の成膜性を向上させることができる。それに加えて、アダマンタン−2−イルは、本発明に係る窒素含有化合物が適切な分子量を有することを確保し、さらに本発明に係る窒素含有化合物が適切なガラス転移温度を有することを確保し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの製造時の物理的および熱的な安定性を向上させることができる。
【0069】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスをさらに提供する。ここで、図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、対向に設置された陽極100および陰極200と、陽極100と陰極200との間に設置され、本発明により提供される窒素含有化合物を含む機能層300と、を含む。
【0070】
本発明の一実施形態において、本発明により提供される窒素含有化合物は、機能層300の少なくとも1つの有機膜層を形成するのに用いられることにより、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの性能、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を改善させ、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの発光効率を向上させ、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を低減するか、又は、量産された有機エレクトロルミネッセンスデバイスの性能の均一性および安定性を確保することができる。
【0071】
本発明の一実施形態において、機能層300は、本発明により提供される窒素含有化合物を含む正孔輸送層320を含む。ここで、正孔輸送層320は、本発明により提供される窒素含有化合物から構成されてもよく、本発明により提供される窒素含有化合物と他の素材とから構成されてもよい。
【0072】
選択的に、正孔輸送層320が、第1正孔輸送層321と第2正孔輸送層322とを含み、且つ、第1正孔輸送層321が、第2正孔輸送層322の陽極100に近い表面に設置される。第1正孔輸送層321又は第2正孔輸送層322が、本発明により提供される窒素含有化合物を含む。ここで、第1正孔輸送層321又は第2正孔輸送層322のいずれかの1方が本発明により提供される窒素含有化合物を含むことにしてよいし、第1正孔輸送層321および第2正孔輸送層322の両方とも本発明により提供される窒素含有化合物を含むにしてもよい。第1正孔輸送層321又は第2正孔輸送層322が、他の素材を含んでもよいし、他の素材を含まなくてもよいことを理解されたい。
【0073】
さらに、選択的に、第1正孔輸送層321又は第2正孔輸送層322が、本発明により提供される窒素含有化合物から構成される。
【0074】
本発明の一実施形態においては、機能層300が、正孔注入層310を含み、正孔注入層310が、本発明により提供される窒素含有化合物を含むことができる。ここで、正孔注入層310は、本発明により提供される窒素含有化合物から構成されてもよく、本発明により提供される窒素含有化合物と他の素材とから構成されてもよい。
【0075】
選択的に、正孔注入層310が、本発明により提供される窒素含有化合物から構成される。
【0076】
本発明の一実施形態においては、陽極100が、以下の陽極素材を含み、前記陽極素材が、正孔を機能層に注入することに寄与する、大きな脱出仕事(仕事関数、work function)を有する素材であることが好ましい。陽極素材の具体例としては、以下に限定されないが、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛および金などのような金属又はそれらの合金、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)および酸化インジウム亜鉛(IZO)などのような金属酸化物、ZnO:Al又はSnO:Sbなどのような金属と酸化物との組み合わせ、又は、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどのような導電重合体が挙げられる。さらに、陽極として酸化インジウム錫(インジウムスズ酸化物、indium tin oxide)(ITO)を含む透明電極が好ましく挙げられる。
【0077】
本発明の一実施形態においては、陰極200が、以下の陰極素材を含み、前記陰極素材が電子を機能層に注入することに寄与する小さな脱出仕事を有する素材である。陰極素材の具体例としては、以下に限定されないが、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などのような金属又はそれらの合金、又は、LiF/Al、Liq/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/AlおよびBaF/Caなどの多層の素材が挙げられる。さらに、陰極としてはアルミニウムを含む金属電極を用いることが好ましい。
【0078】
本発明の一実施形態においては、図1に示すように、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、順次に積層されている陽極100と、正孔注入層310と、正孔輸送層320と、有機エレクトロルミネッセンス層330と、正孔阻止層340と、電子輸送層350と、電子注入層360と、陰極200とを含むことが可能である。ここで、本発明に係る窒素含有化合物は正孔注入層310および正孔輸送層320の少なくとも1方に含まれる。
【0079】
本発明は、光電変換デバイスをさらに提供し、図2に示すように、この光電変換デバイスは、対向に設置された陽極100および陰極200と、陽極100と陰極200との間に設置され、本発明により提供される窒素含有化合物を含む機能層300と、を含むことが可能である。
【0080】
本発明の一実施形態において、本発明により提供される窒素含有化合物は、機能層300のうちの少なくとも1つの有機膜層を形成するのに用いることで、光電変換デバイスの性能、特に光電変換デバイスの寿命を改善し、光電変換デバイスの開放電圧を向上させるか、又は、量産された光電変換デバイスの性能の均一性および安定性を確保することができる。
【0081】
本発明の一実施形態において、前記機能層300が、本発明に係る窒素含有化合物を含む正孔輸送層320を含む。ここで、正孔輸送層320は、本発明により提供される窒素含有化合物から構成されてもよく、本発明により提供される窒素含有化合物と他の素材とから構成されてもよい。
【0082】
選択的に、正孔輸送層320の正孔輸送性能を向上させるために、正孔輸送層320に、無機ドープ素材をさらに含ませることができる。
【0083】
本発明の一実施形態において、図2に示すように、光電変換デバイスは、順次に積層されている陽極100、正孔輸送層320、光電変換層370、電子輸送層350および陰極200を含むことが可能である。
【0084】
選択的に、光電変換デバイスが、太陽電池であってもよく、特に、有機薄膜太陽電池であってもよい。
【実施例】
【0085】
以下、特に断りがない限り、MCは、ジクロロメタンを指し、rtは、室温を指す。
【0086】
<化合物の合成>
以下の合成経路で化合物1〜化合物23を合成した。
【化45】
【0087】
[化合物1]
【化46】
【0088】
窒素雰囲気下でマグネシウムバー(13.54g、564mmol)およびジエチルエーテル(100mL)を乾燥した丸底フラスコに入れ、ヨウ素(100mg)を加えた。その後、2’−ブロモ−4−クロロビフェニル(50.00g、187.0mmol)をジエチルエーテル(200mL)に熔解した溶液をフラスコにゆっくりと滴下し、滴下終了後、35℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液を0℃に降温し、そこにアダマンタノン(22.45g、149mmol)をジエチルエーテル(200mL)に溶解した溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、35℃まで昇温し、6時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、pH<7となるようにそこに5%塩酸を加え、1時間攪拌し、ジエチルエーテル(200mL)を加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品を酢酸エチル/n−ヘプタン(1:2)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の固形である中間体I−A−1を得た(43g、収率85%)。
【0089】
【化47】
【0090】
中間体I−A−1(43g、126.9mmol)、トリフルオロ酢酸(36.93g、380.6mmol)およびジクロロメタン(300mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で2時間攪拌した。その後、pH=8となるように反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、分液し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をジクロロメタン/n−ヘプタン(1:2)を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の固体状の中間体I−Aを得た(39.2g、収率96.3%)。
【0091】
【化48】
【0092】
4−ブロモビフェニル(5.0g、21.0mmol)、4−アミノビフェニル(3.63g、21.45mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.21mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.20g、0.42mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(3.09g、32.18mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。ジクロロメタン/酢酸エチル系で粗品を再結晶して精製し、淡い黄色の固形である中間体II−Aを得た(5.61g、収率81.5%)。
【0093】
【化49】
【0094】
中間体I−A(5.6g、17.46mmol)、中間体II−A(5.61g、17.46mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.16g、0.17mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.14g、0.35mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(2.52g、26.18mmol)をトルエン(40mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、3h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物1を得た(4.35g、収率41%)。質量分析:m/z=606.3[M+H]HNMR(400MHz,CDCl):8.09(d,1H)、7.91(s,1H),7.74−7.71(m,2H),7.61(d,4H)、7.55(d,4H),7.43(t,4H),7.37−7.30(m,3H),7.25−7.24(m,5H),7.18(dd,1H),2.91(d,2H),2.61(d,2H),2.16(s,1H),1.90(s,3H),1.77(d,2H),1.69(d,2H),1.60(s,2H)ppm.
【0095】
化合物1の合成方法を参照し、且つ、4−ブロモビフェニルの代わりに原料2を使用し、4−アミノビフェニルの代わりに原料1を使用し、化合物2−23を製造した。ここで、化合物2〜化合物23の番号、構造、原料、最終の工程での合成収率、キャラクタリゼーションデータなどを表1に示す。
【0096】
【表1-1】
【0097】
【表1-2】
【0098】
【表1-3】
【0099】
【表1-4】
【0100】
【表1-5】
【0101】
ここで、化合物3のH−NMRスペクトルは以下の通りである:HNMR(400MHz,CDCl):8.09(d,1H),7.94(s,1H),7.90(d,1H),7.84(d,1H),7.73(t,2H),7.61(d,2H),7.56(d,2H),7.51(d,1H),7.45−7.31(m,7H),7.27−7.24(m,3H),7.20(dd,2H),2.91(d,2H),2.60(d,2H),2.15(s,1H),1.88(s,3H),1.76(d,2H),1.67(d,2H),1.60(s,2H)ppm.
【0102】
ここで、化合物7のH−NMRスペクトルは以下の通りである:HNMR(400MHz,CDCl):8.03(d,2H),7.64(d,1H),7.58−7.57(m,2H),7.51(d,1H),7.47(d,1H),7.42−7.39(m,2H),7.36(t,2H),7.33−7.26(m,3H),7.22−7.18(m,4H),7.06(t,2H),7.01−6.99(m,2H),6.89(dd,2H),2.86(d,2H),2.43(d,2H),2.11(s,1H),1.84(s,2H),1.78(s,1H),1.71(d,2H),1.58(d,2H),1.47(s,2H),1.30(s,6H)ppm.
【0103】
以下の合成経路で化合物24〜化合物30を合成した。
【0104】
【化50】
【0105】
[化合物24]
【化51】
【0106】
中間体I−A(20g、62.34mmol)、p−クロロフェニルボロン酸(9.75g、62.34mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.72g、0.62mmol)、炭酸カリウム(17.2g、124.6mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.34g、1.25mmol)、トルエン(160mL)、エタノール(40mL)および脱イオン水(40mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で78℃まで昇温し、8時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、トルエン(100mL)を加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をn−ヘプタンを移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、ジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体I−A−2を得た(18.6g、75%)。
【0107】
【化52】
【0108】
中間体I−A−2(4.32g、10.9mmol)、中間体II−B(2.7、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.58g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で105〜110℃に加熱し、8h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物1を得た(4.35g、65.81%)。質量分析:m/z=606.3[M+H]
【0109】
化合物24の合成方法を参照し、4−アミノビフェニルの代わりに原料3を使用し、ブロモベンゼンの代わりに原料4を使用し、化合物25〜30を製造した。ここで、化合物25〜化合物30の番号、構造、原料、最終の工程での合成収率、キャラクタリゼーションデータなどを表2に示す。
【0110】
【表2-1】
【0111】
【表2-2】
【0112】
[化合物31]
【化53】
【0113】
2−ブロモ−N−フェニルカルバゾール(10.0g、31.0mmol)、2−アミノビフェニル(5.78g、34.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.28g、0.31mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.30g、0.62mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(4.47g、46.6mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、4h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/n−ヘプタン系で再結晶して精製し、橙色の固形である中間体II−Cを得た(8.65g、収率67.81%)。
【0114】
【化54】
【0115】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、中間体II−C(4.48g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.57g、16.3mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、10h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液をジクロロメタン/n−ヘプタン(1/5)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧下でカラム溶出液中の溶媒を除去し、ジクロロエタン系で粗品を再結晶して精製し、白色の固形化合物31を得た(5.42g、収率71.5%)。質量分析:m/z=695.3[M+H]
【0116】
[化合物32]
【化55】
【0117】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、ジフェニルアミン(1.85g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.57g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形化合物32を得た(3.06g、収率61.94%)。質量分析:m/z=454.2[M+H]
【0118】
[化合物33]
【化56】
【0119】
3−ブロモジベンゾチオフェン(10.0g、38.0mmol)、4−アミノビフェニル(7.07g、41.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.35g、0.38mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.36g、0.76mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(5.48g、57.0mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、5h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、淡い黄色として固体中間体II−Dを得た(11.5g、収率86%)。
【0120】
【化57】
【0121】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、中間体II−D(3.83g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.58g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、6h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液をジクロロメタン/n−ヘプタン(1/3)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧下でカラム溶出液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物33を得た(3.35g、収率47.5%)。質量分析:m/z=636.3[M+H]
【0122】
[化合物34]
【化58】
【0123】
中間体I−A−2(3g、7.6mmol)、ビス(4−ビフェニル)アミン(2.43g、7.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.14g、0.15mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.12g、0.30mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.09g、11.33mmol)をトルエン(25mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物34を得た(2.68g、収率52%)。質量分析:m/z=682.3[M+H]
【0124】
[化合物35]
【化59】
【0125】
3−ブロモジベンゾチオフェン(10.0g、38.0mmol)、2−アミノビフェニル(7.07g、41.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.35g、0.38mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.36g、0.76mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(5.48g、57.0mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、1.5h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体II−Fを得た(11.5g、収率 86%)。
【0126】
【化60】
【0127】
中間体I−A−2(3.0g、7.6mmol)、中間体II−F(2.63g、7.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.14g、0.15mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.12g、0.30mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.09g、11.33mmol)をトルエン(25mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、3h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物35を得た(2.17g、収率42%)。質量分析:m/z=712.3[M+H]
【0128】
[化合物36]
【化61】
【0129】
中間体I−A(3.0g、9.45mmol)、4−クロロ−1−ナフタレンボロン酸(1.3g,6.30mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.15g,0.13mmol)、炭酸カリウム(1.74g,12.6mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.09g,0.31mmol)、トルエン(25mL)、エタノール(6mL)および脱イオン水(6mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で78℃まで昇温し、16時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、トルエン(30mL)に加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をn−ヘプタンを移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、ジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体I−A−3を得た(1.89g、収率67%)。
【0130】
【化62】
【0131】
中間体I−A−3(1.3g、2.91mmol)、中間体II−G(1.05g、2.91mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.05g、0.06mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.05g、0.12mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(0.42g、4.36mmol)をトルエン(20mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形化合物36を得た(2.05g、91%)。質量分析:m/z=772.4[M+H]
【0132】
<化合物の熱安定性>
化合物は、製造デバイスで量産に使用される場合、蒸着条件下で長時間加熱される必要がある。化合物は、加熱条件下で分子構造の熱安定性が悪い場合、長時間に加熱されると、化合物の純度が低下することがあるので、量産のそれぞれの前・中・後期において製造されたデバイスの性能に大きな違いが生じてしまう。
【0133】
本発明では、以下の方法により本発明に係る窒素含有化合物が量産蒸着場合に長時間にかけて加熱された際の分子構造の安定性を評価した。
【0134】
高真空雰囲気(<10−6Pa)および5Å/秒の蒸着速度に対応する温度で、それぞれの化合物1〜30に対して200時間の耐熱実験(保温処理)を行った。耐熱実験前後の純度の低下値に基づいて本発明に係る窒素含有化合物の量産条件下での安定性を判断し、また、参照のために、以下の2つの比較例の化合物を使用した。
【0135】
【化63】
【0136】
窒素含有化合物に関する耐熱実験の温度および純度低下値の結果を表3に示す。
【表3】
【0137】
表3に示すように、本発明に係る窒素含有化合物の純度低下値は、いずれも0.7%未満であり、そのほとんどが0.3%未満であった。これに対して、ジフェニルフルオレニル置換基を含有する比較例においては、その純度低下値が、いずれも1%を超えたものであった。このため、本発明に係る窒素含有化合物の熱安定性は、比較例1及び比較例2よりもはるかに優れていることが分かった。
【0138】
これは、フルオレン−トリアリールアミンを含有するタイプの構造では、温度が320℃を超えると、分解速度が大幅に増加するのためであると考えられる。また、表3のデータから、窒素含有化合物の蒸着温度が分子量と正の相関を持っており、320℃の蒸着温度に対応する分子量が約750となることが導き出された。したがって、当該窒素含有化合物に対して高分子量のジフェニルフルオレニル置換基を導入すると、窒素含有化合物の分子量が750を超えることになりやすく、同様な蒸着速度下で化合物の純度がより大きく低下してきたのである。
【0139】
化合物の純度低下値が1%を超えた場合は、デバイスの効率および寿命が著しく低下する恐れがある。したがって、このような熱不安定な化合物が実際に量産に適用した場合、量産のそれぞれの前・中・後期において製造されたデバイスの性能に大きな違いが生じることがある。本発明において、化合物1〜30は、分子量がいずれも小さいので、より低い蒸着温度を持ち、耐熱実験からその純度低下値がいずれも0.7%未満であったことが確認された。このように、本発明に係る窒素含有化合物は、いずれも優れた量産熱安定性を備えているのである。
【0140】
<有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造および評価>
[実施例1]
以下のような方法により青色の有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(厚さ)のサイズに切断し、それを用いてフォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO:Nプラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカム(Scum)を取り除いた。
【0141】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着し、厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物1を真空蒸着し、厚さが1000Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
【0142】
その第1正孔輸送層の上にTCTAを蒸着し、厚さが100Åである第2正孔輸送層を形成した。
【0143】
α,β−ANDを主体として、100:3の膜厚比でBD−1をドープすることにより、厚さが200Åである発光層(EML)を形成した。
【0144】
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åとなるように電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合して、その電子注入層に真空蒸着することにより、厚さが120Åである陰極を形成した。
【0145】
さらに、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにCP−1を蒸着することにより、有機発光デバイスを製造したことに至った。
【0146】
ここで、エレクトロルミネッセンスデバイスを製造する際に、使用された各素材の構造は、以下の通りである。
【0147】
【化64】
【0148】
[実施例2]〜[実施例7]
実施例1における化合物1の代わりに、表4に記載された第1正孔輸送層の素材を使用した以外に、実施例1と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
すなわち、実施例2において、化合物1の代わりに化合物2を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例3において、化合物1の代わりに化合物4を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例4において、化合物1の代わりに化合物6を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例5において、化合物1の代わりに化合物7を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例6において、化合物1の代わりに化合物9を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、および、実施例7において、化合物1の代わりに化合物10を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0149】
[実施例8]〜[実施例13]
実施例1における化合物1の代わりに表4に記載された第1正孔輸送層の素材を使用し、実施例1におけるTCTAの代わりに表2に記載された第2正孔輸送層の素材を使用した以外に、実施例1と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
すなわち、実施例8において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物8を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例9において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物24を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例10において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物25を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例11において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物27を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例12において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物28を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例13において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物29を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0150】
ここで、NPBの構造は、以下の通りである。
【化65】
【0151】
[比較例1]
実施例1における化合物1の代わりにNPBを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0152】
[比較例2]
実施例1における化合物1の代わりに化合物Cを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Cの構造は、以下の通りである。
【化66】
【0153】
[比較例3]
実施例1における化合物1の代わりにNPBを使用し、実施例1におけるTCTAの代わりに化合物Dを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Dの構造は、以下の通りである。
【化67】
【0154】
実施例1〜13および比較例1〜3で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL(current−voltage−luminance)性能を10mA/cmの条件下で測定し、20mA/cmの定電流密度でT95デバイスの寿命を測定したところ、測定結果を表4に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
表4に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、より低い駆動電圧、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、その駆動電圧が最大9.5%低下し、外部量子効率が少なくとも16.8%向上し、T95寿命が少なくとも69.5%延長した。具体的には、これは、青色光デバイスにとって非常に著しい改善であったと言える。
【0157】
表4に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、より低い駆動電圧、より高い電流効率と外部量子効率、およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、その駆動電圧が最大6.4%低下し、電流効率が少なくとも21.1%向上し、外部量子効率が少なくとも25%向上し、T95寿命が少なくとも69%延長した。これは、青色光デバイスにとって非常に著しい改善であったと言える。
【0158】
ここで、外部量子効率(EQE%、external quantum efficiency)は、下記の式に基づいて求められる。
EQE%=有機エレクトロルミネッセンスデバイスから出射された光子の数/注入された電子の数
【0159】
勿論、以下の方法に基づいても求められる。
EQE%=光取り出し効率 × 内部量子効率(光取り出し効率(light−extraction efficiency )は1未満である)
【0160】
青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、有機発光層として蛍光材が使用されており、蛍光材が、一重項励起子から発光するものであり、その内部量子効率限界が25%となっている。一方、外部へ発光する場合には、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの内での結合などの原因で光損失が発生してしまうことがあるので、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスの外部量子効率の理論限界は25%となっている。理論限界が25%となっていることを前提とすれば、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、その外部量子効率が10.7%から少なくとも12.9%まで向上し、その向上の程度が理論限界に対して最大17.6%に達し、非常に著しい改善が達成されたと言える。また、理論限界が25%となっていることを前提とすれば、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、その外部量子効率が10.4%から少なくとも13.5%まで向上し、その向上の程度が理論限界に対して最大15.9%に達し、非常に著しい改善が達成されたとも言える。
【0161】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0162】
[実施例14]
以下のような方法により赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断し、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO:Nプラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物11を蒸着して厚さが1000Åの第1正孔輸送層を形成した。
【0163】
その第1正孔輸送層の上に化合物TPDを真空蒸着して厚さが850Åとなるように第2正孔輸送層を形成した。
その第2正孔輸送層の上に主体としてCBPを蒸着するとともに、Ir(piq)(acac)を100:3の膜厚比でドープすることにより、厚さが350Åとなるように発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合し、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが105Åである陰極を形成した。
【0164】
また、上記の陰極に厚さが650ÅであるCP−1を蒸着して有機コーティング層(CPL)を形成した。
ここで、TPD、CBP、Ir(piq)(acac)の構造は、以下の通りである。
【化69】
【0165】
[実施例15]〜[実施例20]
実施例14における化合物11の代わりに、表5に記載された第1正孔輸送層の素材を使用した以外、実施例14と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例15において、化合物11の代わりに化合物12を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例16において、化合物11の代わりに化合物13を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例17において、化合物11の代わりに化合物14を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例18において、化合物11の代わりに化合物18を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例19において、化合物11の代わりに化合物19を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例20において、化合物11の代わりに化合物20を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0166】
[実施例21]〜[実施例30]
実施例14における化合物11の代わりに表5に記載された第1正孔輸送層の素材を使用し、実施例14におけるTPDの代わりに表5に記載された第2正孔輸送層の素材を使用した以外、実施例14と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0167】
即ち、実施例21において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物3を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例22において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物5を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例23において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物15を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例24において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物16を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例25において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物17を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例26において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物21を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例27において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物22を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例28において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物23を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例29において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物26を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例30において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物30を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0168】
[比較例4]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0169】
[比較例5]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用し、実施例14におけるTPDの代わりに化合物Eを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Eの構造式は、以下の通りである。
【化70】
【0170】
[比較例6]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用し、実施例14におけるTPDの代わりに化合物Fを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Fの構造式は、以下の通りである。
【0171】
【化71】
【0172】
上記のように製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL性能を10mA/cmの条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cmの定電流密度で測定したところ、測定結果を表5に示す。
【0173】
【表5】
【0174】
表5に示すように、色座標CIExの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例14〜20で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例4と比べ、より低い駆動電圧、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例14〜20で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例4と比べ、その駆動電圧が少なくとも4.4%低下し、電流効率が少なくとも20.8%向上し、外部量子効率が少なくとも20.5%向上し、T95寿命が少なくとも163%延長した。
【0175】
表5に示すように、色座標CIExが大きくなかったの状況にあって、実施例21〜30で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例5および比較例6と比べ、より低い駆動電圧、より高い電流効率と外部量子効率、およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例21〜30で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例5および比較例6と比べ、その駆動電圧が少なくとも4.6%低下し、電流効率が少なくとも16.3%向上し、外部量子効率が少なくとも15.7%向上し、T95寿命が少なくとも154%延長した。
【0176】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合に、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0177】
表4および表5に示すように、本発明に係る化合物は、正孔輸送層の素材として使用される場合、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの電圧を効果的に低減し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの効率および寿命を向上させることができたことが分かった。
【0178】
[実施例31]
以下のような方法により青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断して、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO:Nプラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
【0179】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物2を蒸着して厚さが800Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
その第1正孔輸送層の上にTCTAを蒸着して厚さが300Åである第2正孔輸送層を形成した。
【0180】
α,β−ADNを主体として、4,4’−(3,8−ジフェニルピレン−1,6−ジイルビス(N、N−ジフェニルアニリン)を100:3の膜厚比でドープすることにより、厚さが220Åである発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合して、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが120Åである陰極を形成した。
【0181】
また、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにN−(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)−4’−(9H−カルバゾール−9−イル)−N−フェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンを蒸着した。
【0182】
[実施例32]〜[実施例37]
実施例31における化合物2の代わりに表6に記載された化合物を使用した以外、実施例31と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例32において、化合物2の代わりに化合物31を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例33において、化合物2の代わりに化合物3を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例34において、化合物2の代わりに化合物32を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例35において、化合物2の代わりに化合物33を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0183】
[比較例7]〜[比較例9]
実施例31における化合物2の代わりに、NPB、NPDおよびTPDをそれぞれ使用した以外、実施例31と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0184】
ここで、NPDおよびTPDの構造は、以下の通りである。
【化72】
【0185】
実施例31〜35および比較例7〜9で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスに対して、IVL性能を10mA/cmの条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cmの定電流密度で測定したところ、測定結果を表6に示す。
【0186】
【表6】
【0187】
表6に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例31〜35で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例7〜比較例9と比べ、より低い駆動電圧、より高い発光効率、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例31〜35で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例7〜比較例9と比べ、その駆動電圧が少なくとも5%低下し、発光効率が少なくとも17%向上し、外部量子効率が少なくとも25.2%向上し、T95寿命が少なくとも67%延長した。
【0188】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、発光効率や外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0189】
[実施例36]
以下のような方法により赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断して、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO:Nプラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
【0190】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上にNPBを蒸着して厚さが800Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
【0191】
その第1正孔輸送層の上に化合物33を真空蒸着して厚さが850Åである第2正孔輸送層を形成した。
その第2正孔輸送層の上に主体としてCBPを蒸着するとともに、Ir(piq)(acac)を35:5の膜厚比でドープすることにより、厚さが350Åである発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合し、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが105Åである陰極を形成した。
【0192】
また、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにN−(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)−4’−(9H−カルバゾール−9−イル)−N−フェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンを蒸着し、有機コーティング層(CPL)を形成した。
【0193】
[実施例37]〜[実施例39]
実施例36で使用した化合物33の代わりに表7に記載された化合物を使用した以外、実施例36と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例37において、化合物33の代わりに化合物34を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例38において、化合物33の代わりに化合物35を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例39において、化合物33の代わりに化合物36を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0194】
[比較例10]
実施例36で使用した化合物33の代わりに、NPDを使用した以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0195】
[比較例11]
実施例36で使用した化合物33の代わりに、TPDを使用した以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0196】
[比較例12]
第2正孔輸送層を形成しなかった以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
上記のように製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL性能を10mA/cmの条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cmの定電流密度で測定したところ、測定結果を表7に示す。
【0197】
【表7】
【0198】
表7に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例36〜39で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例10〜比較例12と比べ、より低い駆動電圧、より高い発光効率、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例36〜39で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例10〜比較例12と比べ、その発光効率が少なくとも20.7%向上し、外部量子効率が少なくとも15.9%向上し、T95寿命が少なくとも59%延長した。このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いられた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、発光効率や外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0199】
本発明に係る窒素含有化合物では、フルオレンの9位に、超共役効果によりフルオレン環および窒素含有化合物全体の共役系の電子密度を増加させる可能なアダマンタン−2−イル構造を導入したことで、窒素含有化合物の正孔伝導効率を改善し、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスのキャリア伝導効率および寿命を向上させることができた。アダマンタン−2−イルをフルオレンの末端に導入せずにフルオレンの9位に導入し、また本発明に係る窒素含有化合物の末端に導入せずに窒素含有化合物のアミンの各側鎖の間に導入するようにしました。そうして、アダマンタン−2−イルが大きな立体障害を有することで、アミンの各分岐鎖同士の間の角度および共役程度を調整し、さらに窒素含有化合物のHOMO値を調整することができ、これにより、この窒素含有化合物のHOMO値が隣接する膜層と一層合致することが可能となり、そして有機エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧が低下するとともに光電変換デバイスの開放電圧が増加することも可能となった。
【0200】
それに加えて、本発明に係る窒素含有化合物では、体積の大きいアルキル基の構造を活用してフルオレン基を修飾することにより、アリール基による修飾の場合と比べ、過剰なπ−πスタッキング効果を回避し、窒素含有化合物の安定性を向上させ、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの寿命を改善することができた。また、立体障害が大きいアダマンタン−2−イルでフルオレンの9位を修飾することにより、本発明に係る窒素含有化合物の対称性を低減することができ、さらに窒素含有化合物の成膜性を低減することができ、これにより、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの製造が容易となった。
【符号の説明】
【0201】
100 陽極
200 陰極
300 機能層
310 正孔注入層
320 正孔輸送層
321 第1正孔輸送層
322 第2正孔輸送層
330 有機エレクトロルミネッセンス層
340 正孔阻止層
350 電子輸送層
360 電子注入層
370 光電変換層
図1
図2