【実施例】
【0085】
以下、特に断りがない限り、MCは、ジクロロメタンを指し、rtは、室温を指す。
【0086】
<化合物の合成>
以下の合成経路で化合物1〜化合物23を合成した。
【化45】
【0087】
[化合物1]
【化46】
【0088】
窒素雰囲気下でマグネシウムバー(13.54g、564mmol)およびジエチルエーテル(100mL)を乾燥した丸底フラスコに入れ、ヨウ素(100mg)を加えた。その後、2’−ブロモ−4−クロロビフェニル(50.00g、187.0mmol)をジエチルエーテル(200mL)に熔解した溶液をフラスコにゆっくりと滴下し、滴下終了後、35℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応液を0℃に降温し、そこにアダマンタノン(22.45g、149mmol)をジエチルエーテル(200mL)に溶解した溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、35℃まで昇温し、6時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、pH<7となるようにそこに5%塩酸を加え、1時間攪拌し、ジエチルエーテル(200mL)を加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品を酢酸エチル/n−ヘプタン(1:2)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の固形である中間体I−A−1を得た(43g、収率85%)。
【0089】
【化47】
【0090】
中間体I−A−1(43g、126.9mmol)、トリフルオロ酢酸(36.93g、380.6mmol)およびジクロロメタン(300mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で2時間攪拌した。その後、pH=8となるように反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、分液し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をジクロロメタン/n−ヘプタン(1:2)を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の固体状の中間体I−Aを得た(39.2g、収率96.3%)。
【0091】
【化48】
【0092】
4−ブロモビフェニル(5.0g、21.0mmol)、4−アミノビフェニル(3.63g、21.45mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.21mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.20g、0.42mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(3.09g、32.18mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。ジクロロメタン/酢酸エチル系で粗品を再結晶して精製し、淡い黄色の固形である中間体II−Aを得た(5.61g、収率81.5%)。
【0093】
【化49】
【0094】
中間体I−A(5.6g、17.46mmol)、中間体II−A(5.61g、17.46mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.16g、0.17mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.14g、0.35mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(2.52g、26.18mmol)をトルエン(40mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、3h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物1を得た(4.35g、収率41%)。質量分析:m/z=606.3[M+H]
+。
1HNMR(400MHz,CD
2Cl
2):8.09(d,1H)、7.91(s,1H),7.74−7.71(m,2H),7.61(d,4H)、7.55(d,4H),7.43(t,4H),7.37−7.30(m,3H),7.25−7.24(m,5H),7.18(dd,1H),2.91(d,2H),2.61(d,2H),2.16(s,1H),1.90(s,3H),1.77(d,2H),1.69(d,2H),1.60(s,2H)ppm.
【0095】
化合物1の合成方法を参照し、且つ、4−ブロモビフェニルの代わりに原料2を使用し、4−アミノビフェニルの代わりに原料1を使用し、化合物2−23を製造した。ここで、化合物2〜化合物23の番号、構造、原料、最終の工程での合成収率、キャラクタリゼーションデータなどを表1に示す。
【0096】
【表1-1】
【0097】
【表1-2】
【0098】
【表1-3】
【0099】
【表1-4】
【0100】
【表1-5】
【0101】
ここで、化合物3の
1H−NMRスペクトルは以下の通りである:
1HNMR(400MHz,CD
2Cl
2):8.09(d,1H),7.94(s,1H),7.90(d,1H),7.84(d,1H),7.73(t,2H),7.61(d,2H),7.56(d,2H),7.51(d,1H),7.45−7.31(m,7H),7.27−7.24(m,3H),7.20(dd,2H),2.91(d,2H),2.60(d,2H),2.15(s,1H),1.88(s,3H),1.76(d,2H),1.67(d,2H),1.60(s,2H)ppm.
【0102】
ここで、化合物7の
1H−NMRスペクトルは以下の通りである:
1HNMR(400MHz,CD
2Cl
2):8.03(d,2H),7.64(d,1H),7.58−7.57(m,2H),7.51(d,1H),7.47(d,1H),7.42−7.39(m,2H),7.36(t,2H),7.33−7.26(m,3H),7.22−7.18(m,4H),7.06(t,2H),7.01−6.99(m,2H),6.89(dd,2H),2.86(d,2H),2.43(d,2H),2.11(s,1H),1.84(s,2H),1.78(s,1H),1.71(d,2H),1.58(d,2H),1.47(s,2H),1.30(s,6H)ppm.
【0103】
以下の合成経路で化合物24〜化合物30を合成した。
【0104】
【化50】
【0105】
[化合物24]
【化51】
【0106】
中間体I−A(20g、62.34mmol)、p−クロロフェニルボロン酸(9.75g、62.34mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.72g、0.62mmol)、炭酸カリウム(17.2g、124.6mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.34g、1.25mmol)、トルエン(160mL)、エタノール(40mL)および脱イオン水(40mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で78℃まで昇温し、8時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、トルエン(100mL)を加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をn−ヘプタンを移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、ジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体I−A−2を得た(18.6g、75%)。
【0107】
【化52】
【0108】
中間体I−A−2(4.32g、10.9mmol)、中間体II−B(2.7、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.58g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で105〜110℃に加熱し、8h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物1を得た(4.35g、65.81%)。質量分析:m/z=606.3[M+H]
+。
【0109】
化合物24の合成方法を参照し、4−アミノビフェニルの代わりに原料3を使用し、ブロモベンゼンの代わりに原料4を使用し、化合物25〜30を製造した。ここで、化合物25〜化合物30の番号、構造、原料、最終の工程での合成収率、キャラクタリゼーションデータなどを表2に示す。
【0110】
【表2-1】
【0111】
【表2-2】
【0112】
[化合物31]
【化53】
【0113】
2−ブロモ−N−フェニルカルバゾール(10.0g、31.0mmol)、2−アミノビフェニル(5.78g、34.1mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.28g、0.31mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.30g、0.62mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(4.47g、46.6mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、4h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/n−ヘプタン系で再結晶して精製し、橙色の固形である中間体II−Cを得た(8.65g、収率67.81%)。
【0114】
【化54】
【0115】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、中間体II−C(4.48g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.57g、16.3mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、10h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液をジクロロメタン/n−ヘプタン(1/5)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧下でカラム溶出液中の溶媒を除去し、ジクロロエタン系で粗品を再結晶して精製し、白色の固形化合物31を得た(5.42g、収率71.5%)。質量分析:m/z=695.3[M+H]
+。
【0116】
[化合物32]
【化55】
【0117】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、ジフェニルアミン(1.85g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.57g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形化合物32を得た(3.06g、収率61.94%)。質量分析:m/z=454.2[M+H]
+。
【0118】
[化合物33]
【化56】
【0119】
3−ブロモジベンゾチオフェン(10.0g、38.0mmol)、4−アミノビフェニル(7.07g、41.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.35g、0.38mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.36g、0.76mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(5.48g、57.0mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、5h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、減圧下で濾液中の溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、淡い黄色として固体中間体II−Dを得た(11.5g、収率86%)。
【0120】
【化57】
【0121】
中間体I−A(3.5g、10.9mmol)、中間体II−D(3.83g、10.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.20g、0.22mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.18g、0.44mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.58g、16.4mmol)をトルエン(30mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、6h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液をジクロロメタン/n−ヘプタン(1/3)を移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧下でカラム溶出液中の溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物33を得た(3.35g、収率47.5%)。質量分析:m/z=636.3[M+H]
+。
【0122】
[化合物34]
【化58】
【0123】
中間体I−A−2(3g、7.6mmol)、ビス(4−ビフェニル)アミン(2.43g、7.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.14g、0.15mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.12g、0.30mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.09g、11.33mmol)をトルエン(25mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物34を得た(2.68g、収率52%)。質量分析:m/z=682.3[M+H]
+。
【0124】
[化合物35]
【化59】
【0125】
3−ブロモジベンゾチオフェン(10.0g、38.0mmol)、2−アミノビフェニル(7.07g、41.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.35g、0.38mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2′,4′,6′−トリイソプロピルビフェニル(0.36g、0.76mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(5.48g、57.0mmol)をトルエン(80mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、1.5h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体II−Fを得た(11.5g、収率 86%)。
【0126】
【化60】
【0127】
中間体I−A−2(3.0g、7.6mmol)、中間体II−F(2.63g、7.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.14g、0.15mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.12g、0.30mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(1.09g、11.33mmol)をトルエン(25mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、3h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をトルエン系で再結晶して精製し、白色の固形化合物35を得た(2.17g、収率42%)。質量分析:m/z=712.3[M+H]
+。
【0128】
[化合物36]
【化61】
【0129】
中間体I−A(3.0g、9.45mmol)、4−クロロ−1−ナフタレンボロン酸(1.3g,6.30mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.15g,0.13mmol)、炭酸カリウム(1.74g,12.6mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.09g,0.31mmol)、トルエン(25mL)、エタノール(6mL)および脱イオン水(6mL)を丸底フラスコに加え、窒素雰囲気下で78℃まで昇温し、16時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、トルエン(30mL)に加えて抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗品をn−ヘプタンを移動相として使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、ジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形である中間体I−A−3を得た(1.89g、収率67%)。
【0130】
【化62】
【0131】
中間体I−A−3(1.3g、2.91mmol)、中間体II−G(1.05g、2.91mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.05g、0.06mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.05g、0.12mmol)およびナトリウム−t−ブトキシド(0.42g、4.36mmol)をトルエン(20mL)に加え、窒素雰囲気下で108℃に加熱し、2h攪拌した。その後、室温に冷却し、反応液を水洗してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濾液を短いシリカゲルカラムに通し、減圧下で溶媒を除去した。粗品をジクロロメタン/酢酸エチル系で再結晶して精製し、白色の固形化合物36を得た(2.05g、91%)。質量分析:m/z=772.4[M+H]
+。
【0132】
<化合物の熱安定性>
化合物は、製造デバイスで量産に使用される場合、蒸着条件下で長時間加熱される必要がある。化合物は、加熱条件下で分子構造の熱安定性が悪い場合、長時間に加熱されると、化合物の純度が低下することがあるので、量産のそれぞれの前・中・後期において製造されたデバイスの性能に大きな違いが生じてしまう。
【0133】
本発明では、以下の方法により本発明に係る窒素含有化合物が量産蒸着場合に長時間にかけて加熱された際の分子構造の安定性を評価した。
【0134】
高真空雰囲気(<10
−6Pa)および5Å/秒の蒸着速度に対応する温度で、それぞれの化合物1〜30に対して200時間の耐熱実験(保温処理)を行った。耐熱実験前後の純度の低下値に基づいて本発明に係る窒素含有化合物の量産条件下での安定性を判断し、また、参照のために、以下の2つの比較例の化合物を使用した。
【0135】
【化63】
【0136】
窒素含有化合物に関する耐熱実験の温度および純度低下値の結果を表3に示す。
【表3】
【0137】
表3に示すように、本発明に係る窒素含有化合物の純度低下値は、いずれも0.7%未満であり、そのほとんどが0.3%未満であった。これに対して、ジフェニルフルオレニル置換基を含有する比較例においては、その純度低下値が、いずれも1%を超えたものであった。このため、本発明に係る窒素含有化合物の熱安定性は、比較例1及び比較例2よりもはるかに優れていることが分かった。
【0138】
これは、フルオレン−トリアリールアミンを含有するタイプの構造では、温度が320℃を超えると、分解速度が大幅に増加するのためであると考えられる。また、表3のデータから、窒素含有化合物の蒸着温度が分子量と正の相関を持っており、320℃の蒸着温度に対応する分子量が約750となることが導き出された。したがって、当該窒素含有化合物に対して高分子量のジフェニルフルオレニル置換基を導入すると、窒素含有化合物の分子量が750を超えることになりやすく、同様な蒸着速度下で化合物の純度がより大きく低下してきたのである。
【0139】
化合物の純度低下値が1%を超えた場合は、デバイスの効率および寿命が著しく低下する恐れがある。したがって、このような熱不安定な化合物が実際に量産に適用した場合、量産のそれぞれの前・中・後期において製造されたデバイスの性能に大きな違いが生じることがある。本発明において、化合物1〜30は、分子量がいずれも小さいので、より低い蒸着温度を持ち、耐熱実験からその純度低下値がいずれも0.7%未満であったことが確認された。このように、本発明に係る窒素含有化合物は、いずれも優れた量産熱安定性を備えているのである。
【0140】
<有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造および評価>
[実施例1]
以下のような方法により青色の有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(厚さ)のサイズに切断し、それを用いてフォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO
2:N
2プラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカム(Scum)を取り除いた。
【0141】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着し、厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物1を真空蒸着し、厚さが1000Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
【0142】
その第1正孔輸送層の上にTCTAを蒸着し、厚さが100Åである第2正孔輸送層を形成した。
【0143】
α,β−ANDを主体として、100:3の膜厚比でBD−1をドープすることにより、厚さが200Åである発光層(EML)を形成した。
【0144】
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åとなるように電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合して、その電子注入層に真空蒸着することにより、厚さが120Åである陰極を形成した。
【0145】
さらに、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにCP−1を蒸着することにより、有機発光デバイスを製造したことに至った。
【0146】
ここで、エレクトロルミネッセンスデバイスを製造する際に、使用された各素材の構造は、以下の通りである。
【0147】
【化64】
【0148】
[実施例2]〜[実施例7]
実施例1における化合物1の代わりに、表4に記載された第1正孔輸送層の素材を使用した以外に、実施例1と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
すなわち、実施例2において、化合物1の代わりに化合物2を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例3において、化合物1の代わりに化合物4を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例4において、化合物1の代わりに化合物6を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例5において、化合物1の代わりに化合物7を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例6において、化合物1の代わりに化合物9を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、および、実施例7において、化合物1の代わりに化合物10を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0149】
[実施例8]〜[実施例13]
実施例1における化合物1の代わりに表4に記載された第1正孔輸送層の素材を使用し、実施例1におけるTCTAの代わりに表2に記載された第2正孔輸送層の素材を使用した以外に、実施例1と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
すなわち、実施例8において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物8を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例9において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物24を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例10において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物25を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例11において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物27を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例12において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物28を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例13において、化合物1の代わりにNPBを使用し、且つ、TCTAの代わりに化合物29を使用して、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0150】
ここで、NPBの構造は、以下の通りである。
【化65】
【0151】
[比較例1]
実施例1における化合物1の代わりにNPBを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0152】
[比較例2]
実施例1における化合物1の代わりに化合物Cを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Cの構造は、以下の通りである。
【化66】
【0153】
[比較例3]
実施例1における化合物1の代わりにNPBを使用し、実施例1におけるTCTAの代わりに化合物Dを使用した以外に、実施例1と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Dの構造は、以下の通りである。
【化67】
【0154】
実施例1〜13および比較例1〜3で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL(current−voltage−luminance)性能を10mA/cm
2の条件下で測定し、20mA/cm
2の定電流密度でT95デバイスの寿命を測定したところ、測定結果を表4に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
表4に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、より低い駆動電圧、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、その駆動電圧が最大9.5%低下し、外部量子効率が少なくとも16.8%向上し、T95寿命が少なくとも69.5%延長した。具体的には、これは、青色光デバイスにとって非常に著しい改善であったと言える。
【0157】
表4に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、より低い駆動電圧、より高い電流効率と外部量子効率、およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、その駆動電圧が最大6.4%低下し、電流効率が少なくとも21.1%向上し、外部量子効率が少なくとも25%向上し、T95寿命が少なくとも69%延長した。これは、青色光デバイスにとって非常に著しい改善であったと言える。
【0158】
ここで、外部量子効率(EQE%、external quantum efficiency)は、下記の式に基づいて求められる。
EQE%=有機エレクトロルミネッセンスデバイスから出射された光子の数/注入された電子の数
【0159】
勿論、以下の方法に基づいても求められる。
EQE%=光取り出し効率 × 内部量子効率(光取り出し効率(light−extraction efficiency )は1未満である)
【0160】
青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、有機発光層として蛍光材が使用されており、蛍光材が、一重項励起子から発光するものであり、その内部量子効率限界が25%となっている。一方、外部へ発光する場合には、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの内での結合などの原因で光損失が発生してしまうことがあるので、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスの外部量子効率の理論限界は25%となっている。理論限界が25%となっていることを前提とすれば、実施例1〜7で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例2と比べ、その外部量子効率が10.7%から少なくとも12.9%まで向上し、その向上の程度が理論限界に対して最大17.6%に達し、非常に著しい改善が達成されたと言える。また、理論限界が25%となっていることを前提とすれば、実施例8〜13で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例1および比較例3と比べ、その外部量子効率が10.4%から少なくとも13.5%まで向上し、その向上の程度が理論限界に対して最大15.9%に達し、非常に著しい改善が達成されたとも言える。
【0161】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0162】
[実施例14]
以下のような方法により赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断し、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO
2:N
2プラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物11を蒸着して厚さが1000Åの第1正孔輸送層を形成した。
【0163】
その第1正孔輸送層の上に化合物TPDを真空蒸着して厚さが850Åとなるように第2正孔輸送層を形成した。
その第2正孔輸送層の上に主体としてCBPを蒸着するとともに、Ir(piq)
2(acac)を100:3の膜厚比でドープすることにより、厚さが350Åとなるように発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合し、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが105Åである陰極を形成した。
【0164】
また、上記の陰極に厚さが650ÅであるCP−1を蒸着して有機コーティング層(CPL)を形成した。
ここで、TPD、CBP、Ir(piq)
2(acac)の構造は、以下の通りである。
【化69】
【0165】
[実施例15]〜[実施例20]
実施例14における化合物11の代わりに、表5に記載された第1正孔輸送層の素材を使用した以外、実施例14と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例15において、化合物11の代わりに化合物12を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例16において、化合物11の代わりに化合物13を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例17において、化合物11の代わりに化合物14を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例18において、化合物11の代わりに化合物18を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例19において、化合物11の代わりに化合物19を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例20において、化合物11の代わりに化合物20を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0166】
[実施例21]〜[実施例30]
実施例14における化合物11の代わりに表5に記載された第1正孔輸送層の素材を使用し、実施例14におけるTPDの代わりに表5に記載された第2正孔輸送層の素材を使用した以外、実施例14と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0167】
即ち、実施例21において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物3を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例22において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物5を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例23において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物15を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例24において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物16を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例25において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物17を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例26において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物21を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例27において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物22を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例28において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物23を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例29において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物26を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例30において、化合物11の代わりにNPBを使用し、且つ、TPDの代わりに化合物30を使用して、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0168】
[比較例4]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0169】
[比較例5]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用し、実施例14におけるTPDの代わりに化合物Eを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Eの構造式は、以下の通りである。
【化70】
【0170】
[比較例6]
実施例14における化合物11の代わりにNPBを使用し、実施例14におけるTPDの代わりに化合物Fを使用した以外、実施例14と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ここで、化合物Fの構造式は、以下の通りである。
【0171】
【化71】
【0172】
上記のように製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL性能を10mA/cm
2の条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cm
2の定電流密度で測定したところ、測定結果を表5に示す。
【0173】
【表5】
【0174】
表5に示すように、色座標CIExの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例14〜20で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例4と比べ、より低い駆動電圧、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例14〜20で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例4と比べ、その駆動電圧が少なくとも4.4%低下し、電流効率が少なくとも20.8%向上し、外部量子効率が少なくとも20.5%向上し、T95寿命が少なくとも163%延長した。
【0175】
表5に示すように、色座標CIExが大きくなかったの状況にあって、実施例21〜30で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例5および比較例6と比べ、より低い駆動電圧、より高い電流効率と外部量子効率、およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例21〜30で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例5および比較例6と比べ、その駆動電圧が少なくとも4.6%低下し、電流効率が少なくとも16.3%向上し、外部量子効率が少なくとも15.7%向上し、T95寿命が少なくとも154%延長した。
【0176】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合に、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0177】
表4および表5に示すように、本発明に係る化合物は、正孔輸送層の素材として使用される場合、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの電圧を効果的に低減し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの効率および寿命を向上させることができたことが分かった。
【0178】
[実施例31]
以下のような方法により青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断して、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO
2:N
2プラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
【0179】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上に化合物2を蒸着して厚さが800Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
その第1正孔輸送層の上にTCTAを蒸着して厚さが300Åである第2正孔輸送層を形成した。
【0180】
α,β−ADNを主体として、4,4’−(3,8−ジフェニルピレン−1,6−ジイルビス(N、N−ジフェニルアニリン)を100:3の膜厚比でドープすることにより、厚さが220Åである発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合して、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが120Åである陰極を形成した。
【0181】
また、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにN−(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)−4’−(9H−カルバゾール−9−イル)−N−フェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンを蒸着した。
【0182】
[実施例32]〜[実施例37]
実施例31における化合物2の代わりに表6に記載された化合物を使用した以外、実施例31と同様にして、それらの青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例32において、化合物2の代わりに化合物31を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例33において、化合物2の代わりに化合物3を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例34において、化合物2の代わりに化合物32を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例35において、化合物2の代わりに化合物33を使用して青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0183】
[比較例7]〜[比較例9]
実施例31における化合物2の代わりに、NPB、NPDおよびTPDをそれぞれ使用した以外、実施例31と同様にして、青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0184】
ここで、NPDおよびTPDの構造は、以下の通りである。
【化72】
【0185】
実施例31〜35および比較例7〜9で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスに対して、IVL性能を10mA/cm
2の条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cm
2の定電流密度で測定したところ、測定結果を表6に示す。
【0186】
【表6】
【0187】
表6に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例31〜35で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例7〜比較例9と比べ、より低い駆動電圧、より高い発光効率、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例31〜35で製造された青色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例7〜比較例9と比べ、その駆動電圧が少なくとも5%低下し、発光効率が少なくとも17%向上し、外部量子効率が少なくとも25.2%向上し、T95寿命が少なくとも67%延長した。
【0188】
このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、発光効率や外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0189】
[実施例36]
以下のような方法により赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
ITO厚さが1500ÅであるITO基板(コーニング社製)を40mm(長さ)×40mm(幅)×0.7mm(高さ)のサイズに切断して、フォトリソグラフィプロセスにより陰極、陽極および絶縁層パターンを備えた実験用基板を製造し、紫外線オゾンおよびO
2:N
2プラズマで表面処理することにより、陽極(実験用基板)の仕事関数を向上させるとともにスカムを取り除いた。
【0190】
その実験用基板(陽極)の上にm−MTDATAを真空蒸着して厚さが100Åとなるように正孔注入層(HIL)を形成し、そして、その正孔注入層の上にNPBを蒸着して厚さが800Åとなるように第1正孔輸送層を形成した。
【0191】
その第1正孔輸送層の上に化合物33を真空蒸着して厚さが850Åである第2正孔輸送層を形成した。
その第2正孔輸送層の上に主体としてCBPを蒸着するとともに、Ir(piq)
2(acac)を35:5の膜厚比でドープすることにより、厚さが350Åである発光層(EML)を形成した。
DBimiBphenとLiQとを1:1の重量比で混合して蒸着することにより厚さが300Åである電子輸送層(ETL)を形成し、その電子輸送層の上にLiQを蒸着して厚さが10Åとなるように電子注入層(EIL)を形成し、その後、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とを1:9の蒸着速度で混合し、その電子注入層の上に真空蒸着することにより、厚さが105Åである陰極を形成した。
【0192】
また、上記の陰極に厚さが650ÅとなるようにN−(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)−4’−(9H−カルバゾール−9−イル)−N−フェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンを蒸着し、有機コーティング層(CPL)を形成した。
【0193】
[実施例37]〜[実施例39]
実施例36で使用した化合物33の代わりに表7に記載された化合物を使用した以外、実施例36と同様にして、それらの赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
即ち、実施例37において、化合物33の代わりに化合物34を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例38において、化合物33の代わりに化合物35を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したこと、実施例39において、化合物33の代わりに化合物36を使用して赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造したことである。
【0194】
[比較例10]
実施例36で使用した化合物33の代わりに、NPDを使用した以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0195】
[比較例11]
実施例36で使用した化合物33の代わりに、TPDを使用した以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
【0196】
[比較例12]
第2正孔輸送層を形成しなかった以外、実施例36と同様にして、赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスを製造した。
上記のように製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスのIVL性能を10mA/cm
2の条件下で測定し、T95デバイスの寿命を20mA/cm
2の定電流密度で測定したところ、測定結果を表7に示す。
【0197】
【表7】
【0198】
表7に示すように、色座標CIEyの差異が大きくなかったの状況にあって、実施例36〜39で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例10〜比較例12と比べ、より低い駆動電圧、より高い発光効率、より高い外部量子効率およびより長い寿命を有していることが分かった。ここで、実施例36〜39で製造された赤色有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、比較例10〜比較例12と比べ、その発光効率が少なくとも20.7%向上し、外部量子効率が少なくとも15.9%向上し、T95寿命が少なくとも59%延長した。このように、本発明に係る窒素含有化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いられた場合、エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧を効果的に低減し、発光効率や外部量子効率を向上させるとともに、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの寿命を延長させることができた。
【0199】
本発明に係る窒素含有化合物では、フルオレンの9位に、超共役効果によりフルオレン環および窒素含有化合物全体の共役系の電子密度を増加させる可能なアダマンタン−2−イル構造を導入したことで、窒素含有化合物の正孔伝導効率を改善し、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスのキャリア伝導効率および寿命を向上させることができた。アダマンタン−2−イルをフルオレンの末端に導入せずにフルオレンの9位に導入し、また本発明に係る窒素含有化合物の末端に導入せずに窒素含有化合物のアミンの各側鎖の間に導入するようにしました。そうして、アダマンタン−2−イルが大きな立体障害を有することで、アミンの各分岐鎖同士の間の角度および共役程度を調整し、さらに窒素含有化合物のHOMO値を調整することができ、これにより、この窒素含有化合物のHOMO値が隣接する膜層と一層合致することが可能となり、そして有機エレクトロルミネッセンスデバイスの駆動電圧が低下するとともに光電変換デバイスの開放電圧が増加することも可能となった。
【0200】
それに加えて、本発明に係る窒素含有化合物では、体積の大きいアルキル基の構造を活用してフルオレン基を修飾することにより、アリール基による修飾の場合と比べ、過剰なπ−πスタッキング効果を回避し、窒素含有化合物の安定性を向上させ、さらに有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの寿命を改善することができた。また、立体障害が大きいアダマンタン−2−イルでフルオレンの9位を修飾することにより、本発明に係る窒素含有化合物の対称性を低減することができ、さらに窒素含有化合物の成膜性を低減することができ、これにより、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび光電変換デバイスの製造が容易となった。