(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6869403
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】柱部材の建て起こし装置および柱部材の建て起こし方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
E04G21/16
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-106615(P2020-106615)
(22)【出願日】2020年6月19日
【審査請求日】2020年9月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 重行
(72)【発明者】
【氏名】小林 聰
(72)【発明者】
【氏名】竹葉 憲
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−184294(JP,A)
【文献】
実開平06−024141(JP,U)
【文献】
特開2019−085845(JP,A)
【文献】
特開平02−144310(JP,A)
【文献】
特開平10−131496(JP,A)
【文献】
実開平07−001195(JP,U)
【文献】
特開2003−118585(JP,A)
【文献】
特開平01−317906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16−21/22
B66C 13/06
B62B 1/00−5/08
B62B 13/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設ヤードに敷設されている敷板と該敷板上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材とからなる走行案内部材と、
前記走行案内部材に沿って前記敷板上を摺動して移動するスライド材と、を具備することを特徴とする柱部材の建て起こし装置。
【請求項2】
前記スライド材は摺動部材と滑り止め部材とからなり、
前記滑り止め部材は前記摺動部材の上面に配置され、
前記スライド材の移動の際には前記摺動部材と前記滑り止め部材とが一体となって移動する、ことを特徴とする請求項1に記載の柱部材の建て起こし装置。
【請求項3】
前記スライド材は前記一対の幅止め材の間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柱部材の建て起こし装置。
【請求項4】
建設ヤードに敷設されている敷板と該敷板上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材とからなる走行案内部材と、
前記走行案内部材に沿って移動するスライド材と、を具備する柱部材の建て起こし装置であって、
前記スライド材の下面には前記幅止め材と同じ方向に複数の棒材が固定され、上記棒材が前記敷板に接してスライドすることを特徴とする柱部材の建て起こし装置。
【請求項5】
前記走行案内部材には潤滑材が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の柱部材の建て起こし装置。
【請求項6】
前記請求項1または前記請求項4に記載の柱部材の建て起こし装置を用いた柱部材の建て起こし方法であって、
前記柱部材の一端を前記スライド材の上面に載置するとともに、他端を前記走行案内部材に沿って載置し、前記他端に揚重機のワイヤを固定し、前記ワイヤ巻き上げることによって前記柱部材を建て起こすことを特徴とする、柱部材の建て起こし方法。
【請求項7】
前記ワイヤは前記走行案内部材に沿って巻き上げることを特徴とする請求項6に記載の柱部材の建て起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場におけるH鋼等の鉄骨柱部材の建て起こし装置および柱部材の建て起こし方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設現場における柱部材は、水平に寝かされた状態で荷台に積載され、トレーラ等の運搬車輛によって建設ヤード内に搬送される。搬送された柱部材は、風雨等に対して安定性を保つため、実際に使用される直前まで水平状態で建設ヤード内の仮置き場に保管される。これら柱部材は、水平に寝かされた状態から、クレーン等の揚重機のブームの旋回、起伏、ワイヤの巻き上げによって吊り上げられ、垂直に建て起こして所定の位置に設置される。
この柱部材の建て起こしは、従来から種々様々な方法で行われてきた。一般に多く行われている方法としては、主たる揚重機で水平に寝かされた柱部材の上方に玉掛けし、吊り上げると同時に、さらにもう一台の揚重機を相番として、柱部材の下方にそのワイヤを玉掛け、吊り上げ、最終的には主たる揚重機のみで垂直に建て起こすという方法である。
また、特許文献1によれば、チェーンブロック等の巻き上げ治具を併用して、主たる揚重機により柱部材の両端を水平に吊り上げた状態で、チェーン操作によって柱部材を起立状態にする方法が開示されている。
さらに、特許文献2によれば、架台の走行レール上を移動する車輪付きL型端部受台車に柱部材の一端部を載せ、水平にした状態で柱部材の他端部に揚重機のワイヤを玉掛けして吊り上げるもので、柱部材の一端部は前記のようにL型端部受台車に載置されているから、この台車を支点として架台上を移動し、柱はクレーンの吊り上げ作業に連動して架台上において建て起す方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−184294号公報
【特許文献2】実開平6−24141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来技術は、相番用の楊重機を必要とするためコストが嵩み、相番用の揚重機を設置するスペースを別途必要とし、施工場所が制約される。さらに、2台のクレーンによる共同作業となるため、操作に熟練を要する。
チェーンブロックを併用する方法は、動力を有する吊り冶具を別途必要とし、楊重機には吊り治具等の荷重の分だけ吊り能力に負荷がかかる。
受台車を用いる方法については、別途走行レールの付いた架台や車輪を有する受台車を必要とするなど設備が煩雑となる。
【0005】
本発明の目的は、施工ヤードに一般に用いられる敷板(敷鉄板)を利用し、敷板が所定の範囲に敷設されていれば、場所を選ばず簡易かつ安全に柱部材の建て起こしを可能とする装置および方法であり、作業性の良い柱部材の建て起こし装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による柱部材の建て起こし装置の一態様は、建設ヤードに敷設されている敷板と該敷板上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材と、からなる走行案内部材と、前記走行案内部材に沿って
前記敷板上を摺動して移動するスライド材と、を具備することを特徴とする
。
【0007】
本発明の一態様である、建設ヤードに敷設されている敷板とその上に一対の幅止め材を平行に配置させた走行案内部材と、走行案内部材に沿って移動するスライド材と、からなる柱部材の建て起こし装置を用いれば、スライド材の上面に、柱部材の一端を載置し、他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げ、必要に応じて楊重機のブームの起立旋回を行うことで、柱部材を走行案内部材上にスムースかつ安全に移動させ、建て起こすことができる。
また、工事現場一般に広く敷設される汎用の敷板(敷鉄板)の任意の空きスペースを利用して溶接等の手段を用いて走行案内部材を敷設することや、逆にガスによる溶融で撤去することも可能であり、場所を選ばず施工の進捗に合せて比較的容易に設置および撤去を行うことができる。
【0008】
また、本発明による柱部材の建て起こし装置の他の態様において、前記スライド材は摺動部材と滑り止め部材とからなり、前記滑り止め部材は前記摺動部材の上面に配置され、前記スライド材の移動の際には前記摺動部材と前記滑り止め部材とが一体となって移動する、ことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、スライド材は摺動部材と滑り止め部材とからなり、スライド材の移動の際に摺動部材の上面に滑り止め材が一体として配置されているので、柱部材の一端を滑り止め材の上面に載置すれば、柱部材の他端を揚重機のワイヤで揚重した際、滑り止め材の滑り止め効果によって、柱部材のスライド材からの離間を抑制しつつ、安定したスライド材の移動を確保できる。
【0010】
また、本発明による柱部材の建て起こし装置の他の態様において、前記スライド材は前記一対の幅止め材の間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、敷板とそれに配置された一対の幅止め材で囲まれた走行案内部材にスライド材が配置されるので、スライド材が走行案内部材から逸脱することを防止することができる。
【0012】
また、本発明による柱部材の建て起こし装置の他の態様
は、建設ヤードに敷設されている敷板と該敷板上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材とからなる走行案内部材と、前記走行案内部材に沿って移動するスライド材と、を具備する柱部材の建て起こし装置であって、前記スライド材の下面には前記幅止め材と同じ方向に複数の棒材が固定され
、上記棒材が前記敷板に接してスライドすることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、スライド材の下面に幅止め材と同じ方向、すなわちスライド材の移動方向に複数の棒材を固定することで、スライド材がより円滑に走行案内部材上を移動することを可能にする。
【0014】
また、本発明による柱部材の建て起こし装置の他の態様において、前記走行案内部材上には潤滑材が塗布されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、走行案内部材上に潤滑材を塗布することで、潤滑材がスライド材と走行案内部材との摩擦軽減に寄与するため、スライド材の走行案内部材上の移動をより円滑にすることができる。
【0016】
また、本発明による柱部材の建て起こし方法の一態様は、前記柱部材の建て起こし装置を用いた柱部材の建て起こし方法であって、前記柱部材の一端を前記スライド材の上面に載置するとともに、他端を前記走行案内部材に沿って載置し、前記他端に揚重機のワイヤを固定し、前記ワイヤ巻き上げることによって前記柱部材を建て起こすことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、敷板と、その上に一対の幅止め材を平行に配置させた走行案内部材と、走行案内部材に沿って移動するスライド材と、からなる柱部材の建て起こし装置を用いているので、スライド材の上面に、柱部材の一端を載置し、他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げ、必要に応じて楊重機のブームの起伏、旋回を行うことで、柱部材を走行案内部材上にスムースかつ安全に移動させ、建て起こすことができる。
【0018】
また、本発明による柱部材の建て起こし方法の他の態様において、前記ワイヤは前記走行案内部材に沿って巻き上げることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、柱部材の一端を載置したスライド材の移動方向である走行案内部材に沿って柱部材の他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げるので、柱部材の一端がスライド材から離間し、かつスライド材が走行案内部材から逸脱することも抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の柱部材の建て起こし装置および方法によれば、施工ヤードに一般に用いられる敷板(敷鉄板)を利用し、敷板が所定の範囲に敷設されていれば、場所を選ばず簡易かつ安全に柱部材の建て起こしを可能とする装置および方法であり、作業性の良い柱部材の建て起こし装置および方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置の断面図(
図1のA−A)である。
【
図3】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置を構成するスライド材のうち、摺動部材の平面図および断面図である((a)は上面、(b)は下面、(c)は正面)。
【
図4】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置を構成するスライド材のうち、滑り止め部材の平面図および断面図である((a)は上下面、(b)は正面)。
【
図5】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置のうち、スライド材の詳細を示す断面図および平面図である((a)は
図1のB−B、(c)は
図5のC−C)。
【
図6】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の断面図のうち、柱部材をスライド材に載置した状況図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の断面図のうち、柱部材を建て起こすまでの状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置および方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0023】
[実施形態に係る柱部材の建て起こし装置]
はじめに、
図1、2を参照して、実施形態に係る柱部材の建て起こし装置の全体概要について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置の平面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置の断面図(
図1のA−A)である。
図1、2に示すように、柱部材の建て起こし装置1は、敷板2と敷板2上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材31,31と、からなる走行案内部材3と、走行案内部材3に沿って移動するスライド材5とを具備することを特徴とする。ここでいう柱部材PはH形鋼である。また、敷板2は、工事現場施工ヤードの地盤G上に、重機のトラフィカビリティ確保や作業性、良好な施工環境を確保する目的で一般に広く用いられている敷鉄板のことであり、複数枚の敷き鉄板を敷き詰め、不図示の平鋼を隣り合う敷き鉄板を跨ぐように配置、周囲を溶接することで敷き鉄板同士の連結を行う。例えば、柱部材の建て起こし装置1は、敷板2上に仮置きされた柱部材Pに隣接したスペースに簡易に設置できる。
まず柱部材の建て起こし装置1を構成する走行案内部材3は、敷板2上に所定の間隔を開けて平行に一対の幅止め材31,31を配置させることで形成されている。幅止め材31,31の前後にそれぞれ一対のストッパ4,4を配置させても良い。幅止め材31,31、ストッパ
4,4ともにL形鋼を使用し、L形鋼材のつま先部がそれぞれ外を向くように、敷板2に直接溶接することで固定している。この敷板2と幅止め材31,31、ストッパ4,4で囲まれた範囲を後述する矩形平板のスライド材5が移動する。ここで、スライド材5の幅は、スライド材5が移動の際、幅止め材31,31に競らない程度とするのが好ましい。
【0024】
次に、
図3~5を参照して、実施形態に係る柱部材の建て起こし装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置を構成するスライド材のうち、摺動部材の平面図および断面図((a)は上面、(b)は下面、(c)は正面)であり、
図4は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置を構成するスライド材のうち、滑り止め部材の平面図および断面図((a)は上下面、(b)は正面)であり、
図5は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし装置のうち、スライド材の詳細を示す断面図および平面図((a)は
図1のB−B、(c)は
図5のC−C)である。
スライド材5は、摺動部材51と滑り止め部材52とからなり、滑り止め部材52は摺動部材51の上面に配置され、スライド材5の移動の際には摺動部材51と滑り止め部材52とが一体となって移動することを特徴とする。
図3より、摺動部材51は、摺動部本体511と係止部512,412,412,412および取手部513とからなる。摺動部本体511は、矩形平鋼板からなり、L形鋼(または平鋼板でも良い)からなる係止部512,412,412,412は摺動部本体511の上面の四隅に、曲げ加工した丸鋼からなる取手部513は摺動部本体511の下面に、それぞれ溶接にて一体に固定されている。また、摺動部本体511の下面には、幅止め材31,31と同じ方向に複数の丸鋼からなる棒材53,43,43,43が溶接によって固定されている。
図4に、滑り止め部材52を示す。滑り止め部材52は、矩形の木製平板で、四隅に切り欠き部521,421,421,421が設けられている。
図5に、敷板2、幅止め材31,31で囲まれた走行案内部材3上に、スライド材5が配置された状態を示す。滑り止め部材52が摺動部材51上に載置されており、係止部512,412,412,412が欠き部521,421,421,421から突出することで滑り止め部材52が摺動部材51に係止され、スライド材5の移動の際には摺動部材51と滑り止め部材52とが一体となって移動することを可能にしている。
また、走行案内部材3には潤滑材6の薄膜が形成されている。潤滑材6は、モップ等で走行案内部材3内の敷板2上にグリスを塗布することで形成する。なお、環境面を考慮した場合、潤滑材6は界面活性剤(業務用洗剤等)であっても良い。
【0025】
[実施形態に係る柱部材の建て起こし方法]
次に、
図6~8を参照して、実施形態に係る柱部材の建て起こし方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の平面図であり、
図7は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の断面図のうち、柱部材をスライド材に載置した状況図であり、
図8は、本発明の実施形態に係る柱部材の建て起こし方法の断面図のうち、柱部材を建て起こすまでの状況図である。
走行案内部材3の敷板上には、予めモップ等にて潤滑材6を塗布しておくことが望ましい。揚重機7(ラフタークレーン、クローラークレーンまたはタワークレーン等)のブーム72から垂下したワイヤ73を水平に仮置きされている柱部材Pの両端部に不図示のスライド治具を介して固定し、ワイヤ73の巻き上げ、ブーム72の起伏、旋回によって、水平状態を維持したまま平行移動し、柱部材Pの一端を前記スライド材5の上面に載置するとともに、他端を走行案内部材3に沿って載置する。このとき、揚重機7は、ワイヤ73を走行案内部材3に沿って巻き上げることができる位置に、揚重機本体71を予め配置しておくことが望ましい。
次に、不図示のスライド治具を外し、柱部材Pの他端に揚重機7のワイヤ73を不図示の吊り治具を介して固定し、ワイヤ73の巻き上げ、ブーム72起伏、旋回も併用して、柱部材Pをゆっくり垂直に建て起こす。
具体的には、柱部材Pがスライドし始めたら(柱部材Pの起伏角度60度前後を目安)、巻き上げを一旦停止し、スライド材5の設置状況および柱部材Pの全体の状況を確認しつつ、ゆっくりと巻き上げを再開する。柱部材Pがほぼ垂直になり、地切りする直前に巻き上げを一旦停止、柱部材Pが垂直になっていることを確認後、ゆっくりと地切りする。このとき、スライド材5は柱部材Pから自然に離れる。柱部材Pの振れ等のないことを確認後、柱部材Pまたは不図示の治具等を介して介錯ロープを取り付ける。ゆっくりと設置個所にブーム72を旋回し、所定の位置に吊り込む。
【0026】
本実施形態の柱部材の建て起こし装置によれば、建設ヤードに敷設されている敷板とその上に一対の幅止め材を平行に配置させた走行案内部材と、走行案内部材に沿って移動するスライド材と、からなる柱部材の建て起こし装置を用いれば、スライド材の上面に、柱部材の一端を載置し、他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げ、必要に応じて楊重機のブームの起立旋回を行うことで、柱部材を走行案内部材上にスムースかつ安全に移動させ、建て起こすことができる。
また、工事現場一般に広く敷設される汎用の敷板(敷鉄板)の任意の空きスペースを利用して溶接等の手段を用いて走行案内部材を敷設することも、ガスによる溶融で撤去することも可能であり、場所を選ばず施工の進捗に合せて比較的容易に設置および撤去を行うことができる。
また、スライド材は摺動部材と滑り止め部材とからなり、スライド材の移動の際に摺動部材の上面に滑り止め材が一体として配置されていれば、柱部材の一端を滑り止め材の上面に載置すれば、柱部材の他端を揚重機のワイヤで揚重した際、滑り止め材の滑り止め効果によって、柱部材のスライド材からの離間を抑制しつつ、安定したスライド材の移動を確保できる。
また、敷板とそれに配置された一対の幅止め材で囲まれた走行案内部材にスライド材が配置されるので、スライド材が走行案内部材から逸脱することを防止することができる。
また、スライド材の下面に幅止め材と同じ方向、すなわちスライド材の移動方向に複数の棒材を固定することで、スライド材がより円滑に走行案内部材上を移動することを可能にする。
さらに、走行案内部材上に潤滑材を塗布することで、潤滑材がスライド材と走行案内部材との摩擦軽減に寄与するため、スライド材の走行案内部材上の移動をより円滑にすることができる。
【0027】
本実施形態による柱部材の建て起こし方法によれば、敷板と、その上に一対の幅止め材を平行に配置させた走行案内部材と、走行案内部材に沿って移動するスライド材と、からなる柱部材の建て起こし装置を用いているので、スライド材の上面に、柱部材の一端を載置し、他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げ、必要に応じて楊重機のブームの起立旋回を行うことで、柱部材を走行案内部材上にスムースかつ安全に移動させ、建て起こすことができる。
また、柱部材の一端を載置したスライド材の移動方向である走行案内部材に沿って柱部材の他端に玉掛けした揚重機のワイヤを巻き上げれば、柱部材の一端がスライド材から離間し、かつスライド材が走行案内部材から逸脱することも抑制できる。
【0028】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。例えば、本実施形態の走行案内部材3は、幅止め材31,31の前後にそれぞれ立設された一対のストッパ4,4を備えているが、ストッパ4は、幅止め材31,31の少なくとも前方にのみ立設されていても良い。ここでいう前方とは、スライド材5の移動開始側を指す。
この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0029】
G 地盤
P 柱部材
1 柱部材の建て起こし装置
2 敷板
3 走行案内部材
31 幅止め材
4 ストッパ
5 スライド材
51 摺動部材
511 摺動部本体
512 係止部
513 取手部
52 滑り止め部材
521 欠き部
53 棒材
6 潤滑材
7 揚重機
71 揚重機本体
72 ブーム
73 ワイヤ
【要約】
【課題】施工ヤードに一般に用いられる敷板(敷鉄板)を利用し、敷板が所定の範囲に敷設されていれば、場所を選ばず簡易かつ安全に柱部材の建て起こしを可能とする装置および方法であり、作業性の良い柱部材の建て起こし装置および方法を提供する。
【解決手段】建設ヤードに敷設されている敷板2と敷板2上に所定の間隔を開けて平行に配置された一対の幅止め材31,31と幅止め材31,31の前後にそれぞれ配置された一対のストッパ32,32と、からなる走行案内部材3と、走行案内部材3に沿って移動するスライド材5と、を具備すること。
【選択図】
図1