【文献】
中村 由里,[総特集] 経営に直結させる院内データ最大活用術,月刊新医療,日本,株式会社エム・イー振興協会 杉山 正幸,2019年 5月 1日,Vol.46 No.5,pp.66-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1算出部は、前記所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たす場合に、前記所定の診療報酬が算定可能と判定して、前記算定が可能な回数を算出する、
請求項1に記載の診療報酬分析装置。
前記第1算出部は、前記所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たし、かつ、前記所定の診療報酬が算定不可能な要件を満たさない場合に、前記所定の診療報酬が算定可能と判定して、前記算定が可能な回数を算出する、
請求項2に記載の診療報酬分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療技術の進展とともに、医療が細分化、高度化してきている中、診療報酬点数表は、区分ごとにより詳細かつ膨大なものとなってきている。そのため、診療行為を提供する機会がありながら診療報酬算定の要件を認知していなかったために本来提供できたはずの診療行為を提供できない、あるいは実際に診療報酬の加算対象である特定の診療行為を提供しておきながら、診療報酬の算定に組み入れることすらなく見逃されたりするおそれがあった。
【0008】
例えば、薬剤総合評価調整管理料といった算定項目は所定の条件、すなわち、「入院中の患者以外の患者であって、6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されていたものについて、当該処方の内容を総合的に評価及び調整し、当該患者に処方する内服薬が2種類以上減少した場合に、月1回に限り所定点数を算定する」といった複雑な条件を満たした場合に限り、算定対象となる。この条件を医療関係者が認知できていなければ、実際に当該診療行為を行っていても未算定である、あるいは本来、対象の被保険者が必要と考えられ、かつ、保険医療機関が提供できていたはずの当該診療行為を提供できないおそれがあった。
【0009】
このように被保険者が必要としている可能性のある医療サービスを保険医療機関が認知できていないことは、保険医療機関が本来得るべき診療報酬の減少を招くとともに、被保険者に本来提供することのできた診療行為を提供できないおそれがある。
【0010】
更に本出願の発明者らは、レセプトデータ、もしくは、DPCデータの一方を精査した場合であっても、診療報酬に定める診療行為の適正な提供機会を把握することができない場合があることを発見した。
【0011】
そこで、本発明は、保険医療機関が適正な診療行為や適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析する診療報酬分析装置、診療報酬分析方法及び診療報酬分析プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る診療報酬分析装置は、医療機関が保有する、電子レセプトデータ及びDPCデータの双方を含む診療情報由来のデータセットから、所定期間の診療情報由来のデータを取得する取得部と、所定期間の診療情報由来のデータのうち、所定の診療報酬に関する診療情報由来のデータを抽出する抽出部と、抽出された診療情報由来のデータに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する第1算出部と、所定の診療報酬が算定された回数を算定が可能な回数で除算することで、算定割合を算出する第2算出部と、を備える。
【0013】
本発明における「電子レセプトデータ」とは、保険診療の診療報酬請求を主たる目的として、各患者が一か月に受けた診療項目と、診療項目について診療報酬点数表に基づいて算出された診療報酬を情報として含む、患者ごとに作成された電子的なデータをいう。電子レセプトデータはその目的から、退院時転帰などの情報が含まれない。
【0014】
本発明における「DPCデータ」とは、DPCの導入の影響評価及び今後のDPC制度の見直しを主たる目的として、「厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法」第5項第三号に基づき厚生労働省が収集し管理する情報である。電子レセプトデータは、その目的上、入院および外来の診療報酬の情報を含む一方で、DPCデータは、病院によっては外来の情報を含まない場合がある。
【0015】
この態様によれば、所定の診療報酬について、算定可能な回数に対する実際に算定された回数の割合を算出することで、どの程度の算定機会を逃しているのかを明らかにして、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0016】
また、電子レセプトデータから適正な診療報酬を把握できない場合であっても、全く異なる目的で作成された、DPCデータと、電子レセプトデータという二種類のデータの双方に基づくことにより、一方のデータのみからではなし得ない診療報酬を分析する診療報酬分析装置を提供することが可能になる。
【0017】
上記態様において、第1算出部は、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たす場合に、所定の診療報酬が算定可能と判定して、算定が可能な回数を算出してもよい。
【0018】
この態様によれば、算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち、満たしているかどうか確かめることが困難な条件について満たしていると仮定して、所定の診療報酬が算定可能な回数の最大値を算出することができる。
【0019】
上記態様において、第1算出部は、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たし、かつ、所定の診療報酬が算定不可能な要件を満たさない場合に、所定の診療報酬が算定可能と判定して、算定が可能な回数を算出してもよい。
【0020】
この態様によれば、所定の診療報酬が算定不可能となる要件を満たしていないことを前提として、算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち、満たしているかどうか確かめることが困難な要件について満たしていると仮定して、所定の診療報酬が算定可能な回数の最大値を算出することができる。
【0021】
上記態様において、算定割合を、1又は複数種類のグラフによって表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0022】
この態様によれば、算定割合の大小を視覚的に認識することができ、より直感的に算定割合の大小を把握することができる。
【0023】
上記態様において、表示部は、所定期間における算定割合を、円グラフによって表示してもよい。
【0024】
上記態様において、表示部は、所定期間を複数の部分期間に分割し、複数の部分期間毎に、算定割合の時間変化を表示してもよい。
【0025】
この態様によれば、算定割合の時間変化を視覚的に認識することができ、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように算定割合の時間変化を分析することができる。
【0026】
上記態様において、表示部は、所定期間を複数の部分期間に分割し、複数の部分期間毎に、算定割合の時間変化を、積み上げ棒グラフによって表示してもよい。
【0027】
上記態様において、診療報酬に関する公開情報に基づいて、所定の診療報酬に関する基準統計値を算出する第3算出部と、抽出された診療情報由来のデータに基づいて、所定の診療報酬に関する統計値を算出する第4算出部と、基準統計値及び統計値を、比較可能に表示する表示部と、をさらに備えてもよい。
【0028】
この態様によれば、他の保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する基準統計値と、分析対象としている保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する統計値とを比較して、分析対象としている保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0029】
上記態様において、第3算出部は、公開情報のうち、医療機関が属する病床数区分のデータに基づいて、基準統計値を算出してもよい。
【0030】
この態様によれば、他の保険医療機関のうち病床数区分が分析対象としている保険医療機関と同じ機関について算出した所定の診療報酬に関する基準統計値と、分析対象としている保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する統計値とを比較して、分析対象としている保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0031】
上記態様において、第1算出部は、所定の電子レセプトデータと所定のDPCデータとを関連付ける情報に基づいて取得される、所定の被保険者についての電子レセプトデータを含むデータセットから抽出されたデータ及びDPCデータを含むデータセットから抽出されたデータに基づいて、算定が可能な回数を算出してもよい。
【0032】
この態様によれば、所定の電子レセプトデータと所定のDPCデータとを関連付ける情報を利用するから、所定の被保険者についての電子レセプトデータに加えて、同じ被保険者についてのDPCデータに基づくデータに基づいて、算定が可能な回数を算出することが可能になる。
【0033】
本発明の他の態様に係る診療報酬分析方法は、医療機関が保有する、電子レセプトデータ及びDPCデータの双方を含む診療情報由来のデータセットから、所定期間の診療情報由来のデータを取得することと、所定期間の診療情報由来のデータのうち、所定の診療報酬に関する診療情報由来のデータを抽出することと、抽出された診療情報由来のデータに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出することと、所定の診療報酬が算定された回数を算定が可能な回数で除算することで、算定割合を算出することと、を含む。
【0034】
本発明における「医療機関」とは、医療を提供する施設を示し、具体的には、病院、診療所、介護老人保健施設または調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(在宅専門施設等)を示す。
【0035】
本発明における「診療報酬」とは、「医科診療報酬」、「歯科診療報酬」または「調剤報酬」を示し、好ましくは「医科診療報酬」または「調剤報酬」を示す。
【0036】
この態様によれば、所定の診療報酬について、算定可能な回数に対する実際に算定された回数の割合を算出することで、どの程度の算定機会を逃しているのかを明らかにして、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0037】
また、電子レセプトデータから適正な診療報酬を把握できない場合であっても、全く異なる目的で作成された、DPCデータと、電子レセプトデータという二種類のデータの双方に基づくことにより、一方のデータのみからではなし得ない診療報酬を分析する診療報酬分析方法を提供することが可能になる。
【0038】
本発明の他の態様に係る診療報酬分析プログラムは、診療報酬分析装置に備えられた演算部を、医療機関が保有する、電子レセプトデータ及びDPCデータの双方を含む診療情報由来のデータセットから、所定期間の診療情報由来のデータを取得する取得部、所定期間の診療情報由来のデータのうち、所定の診療報酬に関する診療情報由来のデータを抽出する抽出部、抽出された診療情報由来のデータに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する第1算出部、及び所定の診療報酬が算定された回数を算定が可能な回数で除算することで、算定割合を算出する第2算出部、として機能させる。
【0039】
この態様によれば、所定の診療報酬について、算定可能な回数に対する実際に算定された回数の割合を算出することで、どの程度の算定機会を逃しているのかを明らかにして、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0040】
また、電子レセプトデータ又はDPCデータのみから適正な診療報酬を把握できない場合であっても、全く異なる目的で作成されたDPCデータと電子レセプトデータという二種類のデータの双方に基づくことにより、一方のデータのみからではなし得ない診療報酬を分析する診療方法分析プログラムを提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、保険医療機関が適正な診療行為や適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析する診療報酬分析装置、診療報酬分析方法及び診療報酬分析プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0044】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る診療報酬分析システム100のネットワーク構成を示す図である。診療報酬分析システム100は、診療報酬分析装置10、医療機関端末20、診療報酬オープンデータDB1及び電子レセプトデータベースDB2を含む。診療報酬分析装置10、医療機関端末20及び診療報酬オープンデータDB1は、インターネット等の通信ネットワークNを介して互いに通信可能に接続される。電子レセプトデータベースDB2は、医療機関端末20とイントラネット等により互いに通信可能に接続される。
【0045】
診療報酬分析装置10は、所定の保険医療機関において記録された電子レセプト又はDPCを医療機関端末20から取得し、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析する。診療報酬分析装置10は、汎用のコンピュータで構成されてよい。
【0046】
医療機関端末20は、診療報酬分析装置10による分析の対象となる医療機関に備えられた端末であり、汎用のコンピュータで構成されてよい。電子レセプトデータベースDB2は、所定の保険医療機関において記録された電子レセプトに関するデータベースであり、医療機関端末20に接続される。本実施形態では、診療報酬分析装置10によって電子レセプトを分析する場合について説明するが、診療報酬分析装置10は、DPCを分析してもよい。
【0047】
診療報酬オープンデータDB1は、診療報酬に関する公開情報のデータベースである。診療報酬オープンデータDB1は、例えば、社会医療診療行為別統計であってよい。
【0048】
図2は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10の機能ブロックを示す図である。診療報酬分析装置10は、取得部11、抽出部12、第1算出部13、第2算出部14、第3算出部15、第4算出部16及び表示部10fを備える。
【0049】
取得部11は、医療機関が保有する、診療情報由来のデータセットから、所定期間の診療情報由来のデータを取得する。ここで、診療情報由来のデータセットは、電子レセプトデータ及びDPCデータの少なくともいずれかを含んでよい。診療情報由来のデータセットは、分析対象とする医療機関が保有する電子レセプトデータ及びDPCデータの少なくともいずれかを含んでよい。本実施形態では、診療情報由来のデータセットが、電子レセプトデータである場合について説明する。診療情報由来のデータセットは、データの記録日及び算定された診療報酬を表す情報を少なくとも含むデータセットである。
【0050】
抽出部12は、所定期間の診療情報由来のデータのうち、所定の診療報酬に関する診療情報由来のデータを抽出する。抽出部12は、診療情報由来のデータを、指定された期間及び指定された診療報酬項目で絞り込み、診療情報由来のデータを抽出してよい。
【0051】
第1算出部13は、抽出された診療情報由来のデータに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する。診療報酬の算定が可能か否かは、厚生労働省が公表する診療報酬算定要件に基づいて判定される。
【0052】
第1算出部13は、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たす場合に、所定の診療報酬が算定可能と判定して、算定が可能な回数を算出してよい。診療報酬算定要件には、満たすか否かを診療情報由来のデータのみから判定することが困難な要件が含まれることがある。このような場合であっても、第1算出部13によれば、算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち、満たしているかどうか確かめることが困難な要件について満たしていると仮定して、所定の診療報酬が算定可能な回数の最大値を算出することができる。
【0053】
第1算出部13は、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たし、かつ、所定の診療報酬が算定不可能な要件を満たさない場合に、所定の診療報酬が算定可能と判定して、算定が可能な回数を算出してもよい。診療報酬算定要件には、満たさないことが要求される要件が含まれることがある。このような場合であっても、第1算出部13によれば、所定の診療報酬が算定不可能となる要件を満たしていないことを前提として、算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち、満たしているかどうか確かめることが困難な要件について満たしていると仮定して、所定の診療報酬が算定可能な回数の最大値を算出することができる。
【0054】
第2算出部14は、所定の診療報酬が算定された回数を算定が可能な回数で除算することで、算定割合を算出する。第1算出部13により算出された、所定の診療報酬の算定が可能な回数をNと表し、所定の診療報酬の算定された回数をnと表すとき、第2算出部14は、R=n/Nにより、算定割合Rを算出する。
【0055】
本実施形態に係る診療報酬分析装置10によれば、所定の診療報酬について、算定可能な回数に対する実際に算定された回数の割合を算出することで、どの程度の算定機会を逃しているのかを明らかにして、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0056】
第3算出部15は、診療報酬に関する公開情報に基づいて、所定の診療報酬に関する基準統計値を算出する。第3算出部15は、診療報酬オープンデータDB1に基づいて、所定の診療報酬の算定回数に関する基準統計値を算出してよい。
【0057】
第4算出部16は、抽出部12により抽出された診療情報由来のデータに基づいて、所定の診療報酬に関する統計値を算出する。第4算出部16は、分析対象とする医療機関において記録された所定の診療報酬の算定回数に関する統計値を算出してよい。
【0058】
表示部10fは、基準統計値及び統計値を、比較可能に表示する。これにより、他の保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する基準統計値と、分析対象としている保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する統計値とを比較して、分析対象としている保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。なお、表示部10fは、後に詳細に説明するように、算定割合のグラフを表示してもよく、基準統計値や統計値とともに算定割合を表示してもよい。
【0059】
また、第3算出部15は、公開情報のうち、医療機関が属する病床数区分のデータに基づいて、基準統計値を算出してよい。これにより、他の保険医療機関のうち病床数区分が分析対象としている保険医療機関と同じ機関について算出した所定の診療報酬に関する基準統計値と、分析対象としている保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する統計値とを比較して、分析対象としている保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0060】
図3は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10の物理的構成を示す図である。診療報酬分析装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では診療報酬分析装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、診療報酬分析装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、
図3で示す構成は一例であり、診療報酬分析装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0061】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、分析対象とする保険医療機関に関する診療情報由来のデータセットに基づいて、所定の診療報酬の算定割合を算出するプログラム(診療報酬分析プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0062】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、分析対象とする保険医療機関に関する診療情報由来のデータ等を記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0063】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば診療報酬分析プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0064】
通信部10dは、診療報酬分析装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0065】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0066】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、算定割合を表すグラフや統計値を示すグラフを表示してよい。
【0067】
診療報酬分析プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。診療報酬分析装置10では、CPU10aが診療報酬分析プログラムを実行することにより、
図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、診療報酬分析装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0068】
図4は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10の分析対象となるデータの一例を示す図である。本例では、分析対象とした保険医療機関を受診し、てんかんの診断がされた患者について、「てんかん指導料」が算定された件数と、算定されていない件数とを示している。
【0069】
本例のデータにおいて、てんかんの診断がされた患者の外来件数は「32,355件(3,416人)」であり、そのうち「てんかん指導料」の算定対象となる外来件数は「28,189件(2,477人)」である。本例の場合、「てんかん指導料」が所定の診療報酬であり、「てんかん指導料」の算定対象となる外来件数が、第1算出部13により算出される所定の診療報酬の算定が可能な回数である。
【0070】
「てんかん指導料」の算定対象となる外来件数のうち、実際に「てんかん指導料」の算定がされた件数は「9,551件(834人)」であり、算定がない件数は「18,638件(2,079人)」である。第2算出部14は、「てんかん指導料」が算定された回数(9,551件)を算定が可能な回数(28189件)で除算して、算定割合を33.9%と算出する。
【0071】
図5は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により算出された算定割合の円グラフを示す図である。同図では、
図4に示した「てんかん指導料」のデータに基づき算出された算定割合を円グラフによって示している。
【0072】
図5によると、「てんかん指導料」の算定割合P1は、33.9%であり、その件数は9,551件である。一方、「てんかん指導料」が算定されなかった割合P2は、66.1%であり、その件数は18,638件である。
【0073】
表示部10fは、所定の診療報酬に関する算定割合を、1又は複数種類のグラフによって表示してよく、本例のように、所定期間における算定割合を、円グラフによって表示してよい。算定割合をグラフ表示することで、算定割合の大小を視覚的に認識することができ、より直感的に算定割合の大小を把握することができる。
【0074】
図6は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により算出された診療報酬の算定が可能な回数のうち、実際に算定された回数と未算定の回数を示す図である。同図では、
図4に示した「てんかん指導料」のデータに基づき算出された算定回数を積み上げ棒グラフG1によって示している。
【0075】
図6では、2017年度4月から2018年度9月までについて、「てんかん指導料」が算定された回数と、「てんかん指導料」が算定されなかった回数とを積み上げ棒グラフG1によって示している。積み上げ棒グラフG1では、「てんかん指導料」が算定された回数がグラフの下部に示され、「てんかん指導料」が算定されなかった回数がグラフの上部に示されている。例えば、2018年度4月について、「てんかん指導料」が算定された回数は29回であり、「てんかん指導料」が算定されなかった回数は74回である。
【0076】
図7は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により算出された算定割合の積み上げ棒グラフG2を示す図である。同図では、
図4に示した「てんかん指導料」のデータに基づき算出された算定割合を積み上げ棒グラフG2によって示している。
【0077】
図7では、2017年度4月から2018年度9月までについて、「てんかん指導料」が算定された割合と、「てんかん指導料」が算定されなかった割合とを積み上げ棒グラフG2によって示している。積み上げ棒グラフG2では、「てんかん指導料」が算定された割合がグラフの下部に示され、「てんかん指導料」が算定されなかった割合がグラフの上部に示されている。例えば、2018年度4月について、「てんかん指導料」が算定された割合は28.2%であり、「てんかん指導料」が算定されなかった回数は71.8%である。
【0078】
このように、表示部10fは、所定期間を複数の部分期間に分割し、複数の部分期間毎に、算定割合の時間変化を表示してよい。本例の場合、所定期間は2017年度4月から2018年度9月までであり、部分期間は、1ヶ月である。もっとも、所定期間や部分期間の選び方は任意である。表示部10fは、所定期間を複数の部分期間に分割し、複数の部分期間毎に、算定割合の時間変化を、積み上げ棒グラフによって表示してもよい。このように算定割合の時間変化をグラフ表示することで、算定割合の時間変化を視覚的に認識することができ、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように算定割合の時間変化を分析することができる。
【0079】
図8は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により実行される算定割合算出処理のフローチャートである。はじめに、診療報酬分析装置10は、医療機関の電子レセプトデータベースDB2から、所定期間の電子レセプトを取得する(S10)。なお、診療報酬分析装置10は、医療機関のDPCデータを取得してもよく、以下同様である。
【0080】
診療報酬分析装置10は、所定の診療報酬に関する電子レセプトを抽出し(S11)、抽出された電子レセプトに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する(S12)。所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する処理については、次図を用いて詳細に説明する。
【0081】
その後、診療報酬分析装置10は、所定の診療報酬が算定された回数を算定が可能な回数で割ることで、算定割合を算出する(S13)。そして、診療報酬分析装置10は、算定割合を、1又は複数種類のグラフによって表示する(S14)。
【0082】
図9は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により実行される算定可能回数算出処理のフローチャートである。同図では、
図8の処理S12の詳細を示しており、「てんかん指導料」の算定可能回数を算出する例を示している。なお、「てんかん指導料」の算定要件は、以下の4つである。(1)小児科、神経科、神経内科、精神科、脳神経外科又は心療内科を標榜する保険医療機関において、入院中以外のてんかん患者または家族に対して、治療計画に基づき療養上必要な指導を行った場合、月1回に限り算定できる。(2)第1回目のてんかん指導料は初診料を算定した初診の日又は当該保険医療機関から退院した日からそれぞれ起算して1か月を経過した日以降に算定できる。(3)特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、小児悪性腫瘍患者指導管理料を算定している患者については算定できない。(4)在宅療養指導管理料の各区分に係る指導管理を受けている患者には算定できない。
【0083】
診療報酬分析装置10は、初診の日又は退院の日から1ヶ月経過しているか否かを判定する(S121)。初診の日又は退院の日から1ヶ月経過している場合(S121:YES)、診療報酬分析装置10は、特定疾患療養管理料、小児科療養指導料又は小児悪性腫瘍患者指導管理料を算定しているか判定する(S122)。特定疾患療養管理料、小児科療養指導料又は小児悪性腫瘍患者指導管理料を算定しているかという要件は、所定の診療報酬が算定不可能な要件に相当する。
【0084】
特定疾患療養管理料、小児科療養指導料又は小児悪性腫瘍患者指導管理料を算定していない場合(S122:NO)、診療報酬分析装置10は、在宅療養指導管理料の各区分に係る指導管理を受けているか否かを判定する(S123)。在宅療養指導管理料の各区分に係る指導管理を受けているかという要件は、所定の診療報酬が算定不可能な要件に相当する。
【0085】
在宅療養指導管理料の各区分に係る指導管理を受けていない場合(S123:NO)、診療報酬分析装置10は、所定の診療報酬(本例の場合、てんかん指導料)が算定可能な回数を加算する(S124)。そして、診療報酬分析装置10は、全ての診療機会を判定していない場合(S125:NO)、処理S121〜S124を再び実行する。一方、全ての診療機会を判定した場合(S125:YES)、所定の診療報酬が算定可能な回数の算出処理を終える。
【0086】
図10は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により算出された基準統計値と分析対象としている保険医療機関について算出した統計値とを示す図である。同図では、公開情報のうち、病床数が100から199の医療機関に関するデータに基づいて算出した基準統計値と、分析対象とする医療機関に関する統計値とを示す棒グラフG3を示している。棒グラフG3は、診療報酬分析装置10の表示部10fに表示される。なお、公開情報のうち分析に用いる医療機関の病床数は、分析対象とする医療機関の病床数と同程度となるように選択されてよい。
【0087】
本例で示す基準統計値は、各診療項目に関する算定回数の合計値を初・再診の回数で除算した値である。同様に、分析対象とする医療機関に関する統計値は、各診療項目に関する算定回数の合計値を初・再診の回数で除算した値である。棒グラフG3では、各診療項目の上部に公開情報に基づいて算出した基準統計値を示し、下部に分析対象とする医療機関に関する統計値を示している。
【0088】
例えば、「薬剤情報提供料」に関するデータD1によると、公開情報に基づいて算出した基準統計値は10.20であり、分析対象とする医療機関に関する統計値は1.76である。すなわち、分析対象としている医療機関は、他の医療機関に比べて、「薬剤情報提供料」を17%程度しか請求できていないことが読み取れる。このようにして、他の保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する基準統計値と、分析対象としている保険医療機関について算出した所定の診療報酬に関する統計値とを比較して、分析対象としている保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析することができる。
【0089】
図11は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10により実行される統計値算出処理のフローチャートである。はじめに、診療報酬分析装置10は、診療報酬に関するオープンデータ(診療報酬オープンデータDB1)のうち、医療機関が属する病床数区分のデータを抽出する(S20)。
【0090】
診療報酬分析装置10は、抽出したデータに基づいて、所定の診療報酬に関する基準統計値を算出する(S21)。そして、診療報酬分析装置10は、抽出された電子レセプトに基づいて、所定の診療報酬に関する統計値を算出する(S22)。
【0091】
最後に、診療報酬分析装置10は、基準統計値及び統計値を、比較可能に表示する(S23)。
【0092】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、同一又は類似の機能又は構成を有する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する部分については説明を省略又は簡略化し、異なる部分を中心に説明をする。
【0093】
図12は、本発明の第2実施形態に係る診療報酬分析システム100Aのネットワーク構成を示す図である。診療報酬分析システム100Aは、診療報酬分析装置10A、医療機関端末20A、診療報酬オープンデータDB1、電子レセプトデータベースDB2、DPCデータベースDB3及び統合データベースDB4を含む。電子レセプトデータベースDB2、DPCデータベースDB3及び統合データベースDB4は、医療機関端末20とイントラネット等により互いに通信可能に接続される。
【0094】
診療報酬分析装置10Aは、所定の保険医療機関において記録された電子レセプトデータ、DPCデータ及び統合データを医療機関端末20Aから取得し、保険医療機関が適正な診療報酬請求を実現することができるように診療報酬を分析する。
【0095】
電子レセプトデータベースDB2に格納される電子レセプトデータは、所定のフォーマットに従って構成されており、レセプト共通情報として、例えば、2バイトの「レコード識別情報」、6バイト以下の「レセプト番号」情報、4バイトの「レセプト種別」情報、5バイトの「診療年月」情報、40バイト以下の「氏名」情報、20バイト以下の「カルテ番号等」情報を含む。ここで、「カルテ番号等」には、カルテ番号又は患者ID番号等を記録することとし、その記録は、任意とされている。
【0096】
DPCデータベースDB3に格納されるDPCデータは、電子レセプトデータとは異なるフォーマットに従って構成されており、かつ、電子レセプトデータとは異なる情報を含んでいる。但し、DPCデータは、電子レセプトデータと同一の情報を含んでもよい。具体的には、DPCデータは、患者別匿名化情報と、施設情報を含む。患者別匿名化情報は、診療録情報、医科保険診療以外のある症例調査票、カルテからの日別の匿名化情報、診療報酬請求情報を含んでいる。診療録情報は、データ属性等に係る情報として、データ識別番号、入退院情報として、入院年月日、退院年月日、予定・救急医療情報等、診断情報として主傷病名、入院の契機となった傷病名等、手術情報として、手術名、手術日、麻酔の種類等、診療情報として、患者の身長、体重、喫煙指数等の情報を含んでいる。なお、患者別匿名化情報は、氏名、被保険者証等の記号及び番号等、特定の個人を識別することができる情報を含んでいない。
【0097】
以上のとおりであるから、電子レセプトデータとDPCデータは、同一の患者について、同一の医療機関が異なる目的で作成する診療情報由来の二種類のデータセットである。また、両データは、データのフォーマット、容量が異なる。更に、両データは、いずれにも含まれる情報(例えば、傷病名に関する情報)、電子レセプトデータのみが含む情報(例えば、出来高方式に基づく診療情報、患者の氏名に関する情報等)、DPCデータのみが含む情報(例えば、退院日に関する情報や退院時転帰等)、が存在する。
【0098】
統合データベースDB4は、同一の患者に関する電子レセプトデータとDPCデータとを関連付ける情報を取得する。例えば、統合データベースDB4は、同一の患者について、電子レセプトデータの「カルテ番号等」に関する情報と、DPCデータの「データ識別番号」情報を関連付けるテーブル情報を記録する。
【0099】
なお、DPCデータを作成するときに、DPCデータの「データ識別番号」情報を、電子レセプトデータに含まれる情報に基づいて作成するように構成してもよい。即ち、電子レセプトデータは、第1識別情報を含み、DPCデータは、第2識別情報を含み、この第2識別情報は、第1識別情報に基づいて生成されるように、各データを構成してもよい。このように、電子レセプトデータとは全く異なる目的を有し、匿名化処理されるDPCデータを生成する際に、第2識別情報を第1識別情報に基づいて生成することにより、同一の患者に関する電子レセプトデータとDPCデータを確実に取得させることが可能になる。
【0100】
診療報酬分析装置10Aの機能ブロックは、診療報酬分析装置10の機能ブロックと同様に、取得部、抽出部、第1算出部、第2算出部、第3算出部、第4算出部及び表示部を備える。以下では、異なる機能を発揮する部分について説明し、同様の機能を発揮する部分については説明を省略又は簡略化する。
【0101】
取得部は、DPCデータベースDB3からDPCデータ、電子レセプトデータベースDB2から電子レセプトデータをそれぞれ取得する。また、統合データベースDB4からDPCデータと電子レセプトデータとを関連付けるテーブル情報を取得する。但し、所定のロジックに基づいて、DPCデータに含まれる第2識別情報を、電子レセプトデータに含まれる第1識別情報に基づいて生成している場合、取得部は、そのようなロジックを利用することにより、両データを関連付ける情報を取得しなくてもよい。
【0102】
抽出部は、所定期間の診療情報由来のデータのうち、所定の診療報酬に関する電子レセプトデータ及びDPCデータを抽出する。電子レセプトデータ及びDPCデータは、共通する情報として、傷病名に関する情報を含んでいるため、同一の診療報酬に関する情報(例えば、所定の診療報酬項目に関する情報)を抽出することが可能になる。
【0103】
第1算出部は、抽出された電子レセプトデータ及びDPCデータに対応する複数の被保険者について、所定期間において所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出する。
【0104】
具体的には、第1算出部は、統合データベースDB4に格納されている、同一の患者に関する電子レセプトデータとDPCデータとを関連付ける情報又はロジックに基づいて、同一の患者に関する第1識別情報と第2識別情報を取得することが可能になる。従って、第1算出部は、同一の患者及び同一の診療報酬に関する電子レセプトデータ及びDPCデータを特定し、診療報酬算定要件に必要な情報を、これら電子レセプトデータ及びDPCデータから取得することが可能になる。
【0105】
ここで本出願の発明者らは、電子レセプトデータには、診療報酬算定要件に必要な情報が含まれていない場合がある点に着目した。
【0106】
例えば、上述した「てんかん指導料」の算定要件には、「(2)第1回目のてんかん指導料は初診料を算定した初診の日又は当該保険医療機関から退院した日からそれぞれ起算して1か月を経過した日以降」であることを含んでいる。しかしながら、「保険医療機関から退院した日」を示す情報は、電子レセプトデータには含まれていない。このため、電子レセプトデータからは、上記算定要件を正しく判定できず、本来、「てんかん指導料」を算定してはならない場合にもかかわらず、算定すべきとする誤判定を招く可能性がある。同様に、算定要件によっては、本来算定すべきにもかかわらず、算定してはならないとする誤判定を招く可能性がある。
【0107】
そこで本出願の発明者らは、試行錯誤の結果、DPCデータには、電子レセプトデータに含まれていない情報を含む場合が多いことに着眼した。
【0108】
例えば、第1算出部は、「てんかん指導料」の算定要件(2)の判定において、「初診の日」(診療開始日)に関する情報を電子レセプトデータに含まれるデータから取得し、「退院した日」に関する情報をDPCデータに含まれるデータから取得し、算定要件(2)の充足を判定する。従って、第1算出部は、精度良く、所定の診療報酬の算定が可能な回数を算出することが可能になる。
【0109】
なお、第1算出部は、DPCデータと電子レセプトデータに共通する情報が含まれる場合(例えば、診療行為の日付に関する情報)、両者から取得した情報を照合してもよい。このように構成することにより、異なる診療報酬に関する情報を混同する可能性を小さくすることが可能になる。
【0110】
第1算出部は、第1算出部13と同様に、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち少なくとも一部を満たす場合に、所定の診療報酬が算定可能と判定して、算定が可能な回数を算出してよい。このように構成することによって、所定の診療報酬が算定可能な回数の最大値を算出することができる。更に、第1算出部は、所定の診療報酬が算定可能か否かを判定するための複数の要件のうち全てを満たす場合に、所定の診療報酬が必ず算定可能と判定して、必ず算定が可能な回数を算出してよい。このように、算定可能性を有する最大回数と、必ず算定可能な回数とを、それぞれ算出し、表示部に表示させることにより、精度の高い診療報酬の分析が可能になる。
【0111】
第2算出部、第3算出部、第4算出部及び表示部は、それぞれ、第2算出部14、第3算出部15、第4算出部16及び表示部10fと同様の機能を発揮するので、説明を省略する。
【0112】
また、診療報酬分析装置10Aの物理的構成は、診療報酬分析装置10の物理的構成と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
更に、上述した演算処理を実行するための所定の診療報酬の算定割合を算出するためのコンピュータプログラム(診療報酬分析プログラム)は、半導体メモリ等の情報記録媒体に格納され、CPU等のプロセッサにより実行される。
【0114】
図13は、本実施形態に係る診療報酬分析装置10Aにより実行される算定割合算出処理のフローチャートである。はじめに、診療報酬分析装置10Aは、医療機関の電子レセプトデータベースDB2から、所定期間の電子レセプトを取得し(ステップS20)、DPCデータベースDB3から、DPCデータを取得する(ステップS21)。
【0115】
診療報酬分析装置10Aは、所定の診療報酬に関する電子レセプトデータを抽出し(ステップS22)、同じ診療報酬に関する電子レセプトデータを抽出する(ステップS23)。
【0116】
次いで、統合データベースDB4から、所定の電子レセプトデータと所定のDPCデータとを関連付ける情報を取得する(ステップS24)。
【0117】
診療報酬分析装置10Aは、この情報に基づいて、同一の被保険者に関する電子レセプトデータ及びDPCデータを特定する(ステップS25)。なお、診療報酬分析装置10Aは、ステップS24を実行せずに、所定の電子レセプトデータと所定のDPCデータとを関連付けるロジックに基づいて、同一の被保険者に関する電子レセプトデータ及びDPCデータを特定し、算定可能回数を算出するために必要なデータを取得してもよい。その場合、電子レセプトデータに第1識別情報を含ませ、第1識別情報に基づいて生成された第2識別情報をDPCデータに含ませることにより、同一の患者の同一の診療報酬に関する情報を取得することが可能になる。
【0118】
ステップS26乃至ステップS28は、ステップS12乃至ステップS14とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。但し、表示部は、「てんかん指導料」等の所定の診療報酬を、算定できる可能性を有する最大回数と、確実に算定できる回数と、算定されなかった回数とを、直接的又は間接的に示す情報(最大回数に関する比率を示す情報を含む。)を表示してもよい。
【0119】
以上のとおりであるから、診療報酬分析装置10A及びこれにより実行させる診療報酬分析方法によれば、一方のデータのみからではなし得ない診療報酬を分析することが可能になる。
【0120】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。例えば、診療報酬分析装置10の表示部10fは、診療報酬分析装置10Aの表示部と同様の情報を表示するように構成してもよい。