前記グリル構造体は、前記2辺集合部が二次元的に広がった構造を含むサブメッシュが二次元的に連続した構造を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内に配置される室内機と、室内機に対して空気調和のための冷媒を供給し、室外に配置される室外機とを備える。室外機は、圧縮機、熱交換器、ファン、ファンモータ、四方弁、蒸発弁、およびこれらの機器のための制御装置などを収容する。
【0003】
室外機の圧縮機は、室内機から戻された冷媒を圧縮して熱交換器に供給する。熱交換器は、ファンにより供給される外気との間で熱交換を行って冷媒状態を要求される空気調和要求に適合するように調整した後、冷媒を室内機へと循環し、室内の空気調和を行っている。ファンは、熱交換器に対して外気を供給する目的でファンモータにより回転駆動するため、室外機の筐体内に配置される。そして、筐体のファン側にグリル構造体を配置することで、ファンといった回転物からユーザや作業者を保護している。
【0004】
また、室外機は、室外に設置され、グリル構造体は、外気の取り込みや吹出しの効率から、通常では開放空間に向いて配置される。このため、室外機のグリル構造体は、室外機の中でもユーザにより外観的に認識される部分であり剛性などの性能上の要求に加え、ユーザの感性に対してアピールできるデザイン性も要求される。
【0005】
これまで空気調和機の室外機が検討されてきており、例えば、特開2009−127919号公報(特許文献1)には、箱状のケーシングと、箱状のケーシングの側面部に設けられた吸込みグリル構造体を備える室外機が記載されている。特許文献1に記載された吸込グリル構造体は、室外機内部の構造を、外部から遮断すると共にドレンホースの取付性を改善している。
【0006】
また、特許第6225953号明細書(特許文献2)には、運搬者が吹出グリル構造体の把持部をユニット正面から確認しやすくした吹出グリル構造体が記載されている。
【0007】
この他、欧州登録意匠第6763645号(非特許文献1)、第2942243号(非特許文献2)には、グリル構造体を備えた室外機が記載されている。
【0008】
欧州意匠登録第6763645号は、均一な高さで、等間隔に配置された主軸となる横桟に、ランダムに配置された縦桟を特徴としたグリル構造体を備えた室外機を記載する。非特許文献1のグリル構造体は、開口部が各々違うためファンガードとして指を通さない機能、すなわちフィンガープルーフ性を、設計段階から総ての開口について行わなければならないという非効率さがある。
【0009】
また、欧州登録意匠第2942243号は、縦桟が等間隔に配置されているため、すべての開口が同じ条件を与える。このため、開示された室外機は、ファンガードとして指を通さないという機能が一か所で確認できれば他の部分に適用できるため、設計段階で総ての開口にて計算をする必要は生じない。しかしながら、ファンガードの形状は縦と横の桟が井桁状に交差する形状とされており、パターンの柔軟性を提供することができない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、実施形態を用いて説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
図1は、例示的な実施形態の空気調和機100の概略図である。例示的な本実施形態の空気調和機100の形式は特に限定されることは無く、パッケージエアコン(PAC)、ルームエアコン(RAC)、ビル用マルチエアコン(VRF)、冷凍機として実装することができる。
【0023】
空気調和機100は、室内機(IDU)110と、室外機120と、室内機110と室外機120とを連結する冷媒配管140とを含む。室内機110は、空気調和が行われる室内に配置され、ユーザが操作するリモコン130といった遠隔操作端末により、ユーザが所望する空気調和を提供する。
【0024】
室内機110は、筐体111内にフィルター113、ファン114および室内熱交換器(図示せず)を収容し、その室内側前面及び上面に吸込みグリル112が配置されている。室内機110は、空気調和のための空気を吹出グリル115から室内に供給し、室内空気を、吸込みグリル112を通して吸い込んで、室内空気の空気調和を可能とする。
【0025】
また空気調和機100は、室外機(ODU)120を備えている。室外機120は、筐体121内に、圧縮機126と、熱交換器(HEX)125と、ファン122と、ファンモータ123とを収容する。圧縮機126は、室内空気の空気調和後に室内機110から戻された冷媒を圧縮し、熱交換器125に送付して冷媒の熱力学的状態を、提供すべき空気調和を可能とするように調整する。ファン122は、ファンモータ123により駆動され、室外機120の背面から外気を吸引して熱交換器125に吹き付け、熱交換器125内を通過する冷媒との間の熱交換を可能とする。
【0026】
さらに室外機120は、電気箱127を備える。電気箱127は、室外機120が備える各種電気機器の制御を行う電子機器を収容し、適切なファームウェアにより室外機120を制御する。室外機120は、ファン122が配置される前面側がグリル構造体124により覆われていて、ユーザや作業者の手指が室外機120内に入らないように保護している。またグリル構造体124は、ユーザ、作業者の手指が接触した場合、外部物体の衝突、または搬送時に室外機120の内部要素を保護するために必要な強度を備えている。
【0027】
図2は、例示的な実施形態での室外機120の概略的な機能ブロック200である。室外機120は、筐体121内に
図1で説明したファン122と、ファンモータ123と、圧縮機126と、熱交換器125とを収容する。グリル構造体124は、室外機120前面で室外機120の内部にアクセスするための要素が配置された部分を除き、室外機120の前面の大部分を覆っている。グリル構造体124は、熱交換効率の観点から、外気の放出に対して可能な限り抵抗を発生させないことが要求されるので、複数の開口部が所謂メッシュ状に配置された構造を有する。
【0028】
室外機120のグリル構造体124は、室外機120の配置される場所の開放された側に向けて配置される。このため、室外機120のグリル構造体124は、ユーザや作業者の目に触れやすく、またユーザや作業者が触れやすい位置に配置される。一方、グリル構造体124のメッシュ構造は、ユーザや作業者の手指が侵入しないように全体にわたり、所謂フィンガーテストと言われる安全性試験が行われる。本開示において、フィンガーテストとは、専用治具を使用してグリル構造体124のメッシュ状の開口部に指が通るか通らないかを1つずつ実際に確認する試験を意味する。また、本開示では、以下、フィンガーテストが確保されていることを、フィンガープルーフ性として参照する。
【0029】
上述したように室外機120のグリル構造体124は、室外機120の中でも最も人目に触れる部分である。このため、室外機120のグリル構造体124は、ユーザを引き付けるためデザイン性を付与することが望ましい。グリル構造体124のデザイン性を改善するためには、非特許文献1のようにグリル構造体124を構成する開口部の形状を不規則にするなどの方法が想定される。
【0030】
しなしながら、開口部の大きさや形状を個別的に変更することは、開口部全部に対してフィンガーテストを適用しなければならなくなるという点で効率的ではない。また、開口部の大きさが不規則に異なる場合、グリル構造体全体の強度について都度複雑な強度計算を行って強度を確認する必要が生じ、この点でも効率的にグリル構造体124を設計することはできない。さらに、開口部の大きさが不規則に異なる場合、通風性も開口部ごとに異なる。そのため、複雑な開口率に関する計算を行うか、送風試験を何度も繰り返さなければならず、この点でも効率的にグリル構造体124を設計することはできない。
【0031】
以上、室外機120のグリル構造体124に要求される特性を纏めると、以下のとおりである。
(1)グリル構造体124の概観を向上させるためデザイン性を改善すること。
(2)設計から製造までの効率を損なわないこと。すなわち、グリル構造体124全体の強度及び送風性能を満たしつつ、全ての開口におけるフィンガープルーフ性を確保したグリル構造体124を効率的に設計すること。
【0032】
本発明者らは上記の要求を満たすべく鋭意検討を加えた結果、グリル構造体124の同一の形状を有する矩形の開口部を、所定の数学的関係を持たせて配置する。本構成により、設計から製造までの効率を損なうことなくグリル構造体124のデザイン性が確保できることを見出し、本発明に至った。
【0033】
グリル構造体124の強度と言う観点からは、縦方向辺を垂直方向に重合させることが好ましい。しかしながら、本発明者らによるシミュレーションの結果、矩形の頂点の位置を相対的に横方向または縦方向にずらして配置しても、重大な強度低下が発生しないことが見出された。
【0034】
さらに、フィンガーテストをパスした矩形をグリル構造体124全体に二次元方向に連続させることで、グリル構造体124の全開口についてフィンガープルーフ性を確保させることができる。従って、グリル構造体124全体のフィンガーテストを排除するか、フィンガーテストを実施したとしても、フィンガーテストに合格できずグリル構造体124の設計をやり直す事態を減らすことができるため、設計効率を改善することができる。
【0035】
図3は、例示的な本実施形態のグリル構造体124を備える室外機120の実施形態300の正面図である。
図3に示すように、本実施形態のグリル構造体124は、複数の矩形の開口部が二次元的に連続した構造を備える。以下、本開示において開口部を、ユニット320として参照し、同一の高さレベルで複数のユニット320が連続して形成される構造体をセット330として参照する。
【0036】
なお、本開示においては、縦方向とは、室外機120の上下方向を意味する。また、横方向とは、室外機120の横方向を意味する。これらの方向を共に
図3に示す。また、グリル構造体124は完全な平面である場合に限らず、室外機120の前後方向に立体的な形状であってもよい。本開示において、複数の矩形の開口部が二次元的に連続した構造とは、平面または曲面を形成するように開口部が連続する構造を意味し、グリル構造体124が室外機120の前後方向に立体的な形状を含まない意味ではない。
【0037】
さらに、複数のセット330が縦方向に並んで形成されるグリル構造体124の正面部分をメッシュ310として参照する。また、メッシュ310の任意の一部分をサブメッシュ340として参照する。他の実施形態では、メッシュ310は、複数のサブメッシュ340を連結して形成することもできる。
【0038】
図3に示した例示的実施形態300の室外機110は、グリル構造体124の右手側に圧縮機126などの内部要素にアクセスするためのドア350が設けられており、ドア350の下側に電力を供給するための接続要素360を備える。なお、室外機120のドア350、接続要素360については本実施形態に関連しないので、詳細な説明を省略する。
【0039】
図4は、本実施形態のメッシュ310、ユニット320、セット330の詳細な構成を示す。例示的な実施形態では、
図1に示すように、グリル構造体124は、横桟が横方向に延びた構成を有する。他の実施形態においては、グリル構造体124は、縦桟が縦方向に延びた構成を有してもよい。
図4(A)では、複数のユニット320が一次元方向に連続して1つのセット330を形成する。なお、好ましい実施形態では、ユニット320は、互いに平行な縦方向辺と、互いに平行な横方向辺とにより、矩形として形成されている。さらに説明する例示的な実施形態では、
図4(B)に示すようにユニット320は、水平方向が垂直方向よりも長い矩形形状を有する。しかしながら、他の実施形態では、メッシュ310は、水平方向が垂直方向より短い、縦長の矩形形状を有していてもよい。さらに他の実施形態では、ユニット320は、縦方向辺を食い違い配置で配置したときに強度を低下させることがない範囲で正方形、平行四辺形とすることができる。
【0040】
図4(C)は、さらに他の実施形態のユニット320−1を示す。
図4(C)に示す実施形態のユニット320−1は、
図4(B)に示したユニット320の中間に縦方向辺320−2を備えている。この縦方向辺320−2は、デザイン上の多様性を付与すると共に、ユニット320−1の強度を改善する機能を有する。本実施形態では、デザインの多様性を付与するためにユニット320、ユニット320−1それぞれが二次元的に連続してメッシュ310を形成する。また他の実施形態では、ユニット320、ユニット320−1またはさらに異なる構造を有するユニットを、デザイン性を考慮しながら混在させてメッシュ310を形成することもできる。本開示において、メッシュ310が異なる形状やサイズの開口部を有することができる。本実施形態においては、形状の異なる一方の開口部を第1の開口部として参照し、他方の開口部を、第2の開口部として参照する。また、小さい方の開口部が連続して第2の開口部の形状を構成してもよい。
【0041】
図5は、本実施形態のメッシュ310の一部を拡大して示した図である。なお、
図5は、特定の実施形態では、
図4に示したサブメッシュ340の構造にも相当する。
図5に示すように、1つのセット330は、同一の高さレベルで横方向に連続して配置されたユニット320を備える。また、メッシュ310は、縦方向に連続して配置された複数のセット330を備える。例示的な実施形態は、
図5に示すように、メッシュ310は、ユニット320を、その縦方向辺が同一位置に重合しないように一定の数学的関係によりゆらぎを発生させて構成する。本実施形態で用語「ゆらぎ」とは、グリル構造体124を正面から見た場合に、ユニット320が直線的または千鳥状に並ばず、横方向または縦方向に所定範囲で複数の幅で変位することを意味する。
【0042】
この結果、例示的な本実施形態では、4辺が交差して集合する部分(以下、4辺集合部として参照する。)ではなく、
図5のサークル510で示す2辺が交差して集合する部分(以下、2辺集合部として参照する。)がメッシュ310に形成される。なお、後述する所定の数学的関係によっては、4辺集合部および2辺集合部が混在して形成される態様も想定され、本実施形態は、4辺集合部の存在を排除するわけではない。
【0043】
図5に示した実施形態では、セット330を構成するユニット320は同一形状の矩形とされる。この結果、フィンガーテストを全てのユニット320について実施せずに済むか、フィンガーテストを実施したとしても、テストに合格できずグリル構造体124の設計をやり直す事態を減らすことができる。一方、
図5を見ると理解されるように、複数の同一形状のユニット320がランダムにゆらぐ場合、ランダムなゆらぎの視覚的作用により、同一のユニット320であっても異なる大きさのユニット320が連続するような錯覚が生じる。本実施形態ではこのような錯覚の誘導を可能とすることでデザインの多様化を提供することができる。
【0044】
図6は本実施形態のメッシュ310またはサブメッシュ340を生成する方法のフローチャートである。
図6の処理はステップS600から開始し、ステップS610で生成するメッシュ310(またはサブメッシュ340)を構成するセット数およびユニット数を指定する。セット数、ユニット数は、要求されるメッシュ310またはサブメッシュ340のサイズや要求性能に応じて適宜選択することができる。
【0045】
ステップS620で、生成しようとするメッシュ310内の適切な位置に基準位置Iを定義する。この基準位置Iは、ゆらぎを計算するための基準位置である。本実施形態では、基準位置Iを位置基準として所定の数学的関係によりユニット320の位置にゆらぎを与える。さらに、セット330の上側からセット330の順序を指定するための縦位置M(Mは、正の整数である。)を規定する。ステップS630で、セット330中に規定すべきユニット320の最左端の左端部位置を所定の数学的関係に従い計算する。
【0046】
ここで、所定の数学的関係とは、例示的な実施形態ではセット330の縦位置Mに依存する関数で与えられる関係を意味する。また他の実施形態で、グリル構造体124が縦に延びる縦桟構造を有している場合、縦位置Mを、最左端のセット330からの位置を規定する横位置MLに置き換えることができる。例示的な実施形態におけるこのような関数としては、乱数発生関数、正弦関数、余弦関数、正接関数、剰余演算関数を挙げることができるが、本開示は特定の数学的関係に限定されることはない。
図5に示したメッシュ310は、特定の実施形態において縦位置Mを変数とする乱数発生関数を使用して乱数を発生して、最左端のユニット320の位置をシフトさせることによりゆらぎを生成することができる。
【0047】
図7は、本実施形態のユニット320の位置決め計算を説明する図である。
図7(A)において、ユニット320の位置決めの基準とする基準位置Iを、生成しようとするメッシュ310(またはサブメッシュ340)内の適切な位置に定義する。この位置はメッシュ310の領域内部であれば限定されないが、計算処理のプログラミングの観点から、左端側または右端側に定義することが好ましい。説明する実施形態では、
図7(A)に示すように左端側で、さらに左側には、ユニット320の横方向長さLの余地がない位置に基準位置Iを規定している。
【0048】
そして、メッシュ310を構成するセット数をNとする。
図7(A)で示す例示的な実施形態は、N=21である。また
図7(A)に示すように、セット330の縦位置Mは、上から順に1〜Nとして定義する。
【0049】
また、例示的な実施形態では、説明の便宜上ゆらぎの大きさの基準としてユニット320の幅Lを使用し、−1/2≦F≦1/2Lの範囲でゆらぎFを与えるものとして説明する(Fは、ゆらぎの大きさを示す実数である。)。なお、ゆらぎの大きさFの最大値は、フィンガープルーフ性、強度の要求に応じて適宜設定することができる。
【0050】
(第1実施形態)
第1実施形態を、ユニット320にランダムなゆらぎを提供する実施形態として説明する。第1実施形態は、1からNまでの整数の乱数を発生させる関数としてVB(ビジュアルベーシック(登録商標))のRANDBETWEEN()を、縦位置Mの範囲である1、Nを引数として使用する。RANDBETWEEN()関数は、引数の間の値を有する整数乱数を生成する関数である。生成した乱数をここでRとして定義する。そして生成した乱数Rが偶数の場合には「+」、基数の場合には「−」の符号を与えるように関数を(−1)
Rで定義する。さらに、生成された乱数Rに対応するシフト量をC×Rで定義する(Cは、正の実定数である。)。例えば、N行のセットにおいて左右のシフト量をユニット320の横方向長さLに抑えたい場合、C=L/(2N)とすることができる。ただし、定数Cの値は、特定の用途に応じて適宜設定することができる。
【0051】
上記定義の下で、下記式(1)により、上からM番目のセット330におけるユニット320の最左端の左端部位置を、Edge_Pos(M)で定義する。Edge_Pos(M)は、以下の関数とすることができる。
【0053】
以上の処理を使用することで、M番目のセット330における最左端のユニット320の左端上位置がランダムに生成できる。
【0054】
1つのセット330がP個のユニット320で形成される場合、説明する実施形態ではM行目のセット330のP列目のユニット320の左端上の位置座標(M,Q(P))は、下記式(2)で与えられる。(P−1)を変数とするのは、1番目のユニット320のゆらぎ量はEdge_Pos(M)で与えられるからである。
【0056】
図7(B)は、第1実施形態で生成したメッシュ310の実施形態である。
図7(A)に示した基準位置Iから上記の数学的関係に基づき、最左端のユニット320の左端上位置が決定され、その位置に縦方向辺が生成されている。さらに最左端の位置からL離間して第2のユニット320における左側の縦方向辺が生成される。この処理を繰り返すことで、特定のユニット320の配置を含むセット330を生成できる。
【0057】
再度
図6に戻って説明すると、ステップS640で対象のセット330内で上記式(2)を使用してユニットの左端位置を計算し、セット構造を生成する。その後、ステップS650で、生成したセット構造をメッシュのセット数分並べてメッシュ構造を生成し、ステップS660で処理を終了する。この処理の後、例えばM番目のセット330の基準位置として、上辺を採用すると、メッシュ310を構成するユニット320の左上端の位置座標は(M、Q(P))マトリックスとして生成できる。
【0058】
例えば
図7(B)の位置座標720は、
図6の処理で生成されたM=5、P=0の位置に相当し、5番目のセット330のM=5、P=1の位置座標で指定される位置は、
図7(B)の○730で示される位置である。また、M=10、P=1の位置座標は、
図7(B)の●740で示される位置であり、
図7(B)の●750で示される位置は、M=15、P=4の位置座標を有する位置である。これらの位置にそれぞれ縦方向辺を定義することで、メッシュ310が生成される。なお、メッシュ310の上記に生成したマトリックスデータは、CSVなどの形式で容易にCADソフトウェアなどに提供でき、設計効率が改善できる。
【0059】
このようにして生成されたメッシュ310は、それぞれのユニット320がフィンガープルーフを満足しているため、メッシュ全体にわたってフィンガーテストを実施する必要がないか、フィンガーテストを実施したとしても、テストに合格できずグリル構造体124の設計をやり直す事態を減らすことができる。また、ユニット320自体は、その大きさ、各辺の厚さ、奥行きなどがグリル構造体124に要求される強度を有するように設計されている。これらのユニット320は、本実施形態に従い、矩形のユニット320を横方向にずらして配置しても十分な強度を提供することができる。
【0060】
さらに、複数のユニット320は、正面から見てランダムに横方向のゆらぎを与える。この結果、同一形状のユニット320が連続していたとしても視覚的作用により、異なる大きさのユニット320が連続するような錯覚を生じる。このため、本実施形態では、デザインの多様化を提供することができる。
【0061】
(第2実施形態)
さらに他の実施形態においては、ユニット320に対して正弦関数で、正面から見た場合にゆらぎを与えることができる。正弦関数としてゆらぎを生成する場合、ユニット320の左端部位置Edge_Pos(M)は、下記式(3)で計算することができる。
【0063】
上記式中、ωは、縦方向のセット330に沿った反復周期を与える定数であり、大きいほど縦方向のピッチは細かくなる。Cは、C=L/2である。C=L/2とする場合、ユニット320のゆらぎの大きさは、最大でユニット320の横方向長さLとなる。ただし、第1実施形態と同様、定数Cの値は、特定の用途に応じて適宜設定することができる。
【0064】
また、特定のセット330内でのユニット320の位置座標は、第1実施形態と同様に、下記式(4)で与えられる。
【0066】
また、第2実施形態においてもメッシュ310上のユニット320の左端上座標は、(M、Q(P))マトリックスで与えられる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態よりもユニット320の正面から見た場合のゆらぎの程度は低いものの、ユニット320内に追加の縦方向辺を備えるユニット320−1を使用する場合に好ましく用いることができる。第3実施形態では、M番目のセット330の最左端のユニットの左端部位置Edge_Pos(M)は、下記式で与えられる。
【0069】
上記式(5)中、MOD()は、剰余を計算するMOD関数であり、実施形態では2の剰余、すなわち0,1を返す関数である。Cは、例示的な実施形態ではゆらぎの大きさをL/2に収める目的ではC=L/2とすることができる。第3実施形態では、セット330の縦位置Mの偶奇に応じて、Mが奇数の場合にはユニット320の左端部が、L/2だけ左側にシフトされ、Mが偶数の場合には、ユニット320の左端が、基準となる基準位置Iに保持される。また、変形例では、Mが偶数の場合に、右側にL/2シフトさせることもできるし、シフト量を与えるCは、L/2以外の適切な自然数、またはMに依存した乱数とすることもできる。さらに、除数2は、さらなる多様性を付与するために、他の整数とすることができる。
【0070】
図8は、本実施形態の第1実施形態に従って生成した室外機120の他の実施形態を示す。
図8に示す実施形態では、室外機120は、ランダムに横方向にゆらぎの生じたユニット320が横方向に並んだセット330を備える。さらに、ユニット320の位置がランダムにゆらいだセット330が縦方向に連続してメッシュ310が形成されている。さらに他の変形例では、セット330を所定の数だけ縦方向に一定の周期で繰り返して、ランダム性と周期性と言う複数のゆらぎを含むメッシュ310を有するグリル構造体124を提供することができる。
図8に示した実施形態では、ランダム性の中にさらに周期性を導入することにより、複数のゆらぎを導入して、さらにデザイン性を改善することができる。
【0071】
図9は、本実施形態において第2実施形態により生成されたグリル構造体124を有する室外機120の実施形態である。
図9に示すように、メッシュ310は、セット330の縦方向の連続に対応してユニット320の位置ゆらぎにより全体として波状の外観を与えており、室外機120のグリル構造体124のデザイン性を改善している。なお、変形例では、正弦波構造の位相が、互いに横に並んだユニット320の列で違っていてもよい。
【0072】
図10は、本実施形態の第3実施形態により生成されたメッシュ310を備えるグリル構造体124を含む室外機120を示す。
図10に示したメッシュ310では、ユニット320は、セット330の位置の偶奇に応じて、L/2だけゆらいだ配置とされている。また、
図10に示した実施形態では、ユニット320として追加の縦方向辺を有するユニット320−1が使用されている。この結果として、L/2のゆらぎに加えて、追加の縦方向辺のゆらぎが加えられ、千鳥状に互い違いの外観が与えられている。
図10に示される室外機120のグリル構造体124は、
図8、
図9とは異なる外観を与えており、本実施形態によりさらに多様なデザイン性を提供できることが示されている。
【0073】
なお、
図10に示したユニット320の構造を、
図8、
図9のデザインと組み合わせてグリル構造体124を提供することもできる。
【0074】
また、本実施形態のグリル構造体124は、そのメッシュ310を構成するユニット320のゆらぎが、上記式1〜5で与えられるセット330の縦方向位置を変数とした数学的関係で再現できれば足りる。本実施形態は、必ずしも、上記式(1)〜(5)で使用する限定的なパラメータを使用してその形状が再現できなければならないというものではない。例えば、ゆらぎは、縦に並んだユニット320の一群の横方向位置に関連して、適切に選択した基準位置の周りに上記式(1)〜(5)の関係でフィッティングを行った場合、所定の信頼限界(例えば90%信頼限界)以上の適合性が得られることで本実施形態のゆらぎを充足するものと判断できる。
【0075】
さらに、本実施形態について、セット330が横方向に延在し、ユニット320に横方向のゆらぎを与える実施形態をもって説明した。しかしながら、セット330を横方向ではなく、縦方向に延在させ、ユニット320を縦方向にシフトさせることでゆらぎを発生させることもできる。この実施形態の場合でも、ゆらぎを生じさせるパラメータとしては、セット330の位置を使用することできる。
【0076】
また、本実施形態では、グリル構造体124を室外機のファングリルに適用される構造体として説明してきた。しかしながら、本実施形態のグリル構造体124は、ルームエアコンの室内機110の吸込みグリル112としても使用することができる。また、本実施形態のグリル構造体124は、天井据付型空気調和機の室内機用の吸込みグリルとしても使用することができる。
【0077】
本発明の室外機120のグリル構造体124を設計するためのプログラムは、例えばVB(ビジュアルベーシック(登録商標))、C、VisualC、C++、Java(登録商標)などのプログラミング言語で記述することができ、生成したメッシュ構造データは、CSVなどの汎用データフォーマットで、CADソフトウェアに提供することができる。以上、本発明によれば、多様なデザイン性有し、適切な強度、フィンガープルーフ性を有し、効率的に設計・製造することが可能なグリル構造体および空気調和機が提供できる。
【0078】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【解決手段】本発明の空気調和機100は、室内機110と、室外機120とを含んでおり、室外機120は、筐体121内にファン122と、ファンモータ123と、圧縮機126とを収容する。筐体121のファン122側にはグリル構造体124を備えている。グリル構造体124は、縦方向辺と横方向辺とを備える同一形状の複数の開口部を備え、隣接する複数の開口部の縦方向辺と横方向辺とが交差する2辺集合部が所定のゆらぎをもって二次元的に広がった構造を含んでいる。