(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869429
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】車両用の圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20210426BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
G01L19/00 A
G01L19/14
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-517866(P2020-517866)
(86)(22)【出願日】2018年9月12日
(65)【公表番号】特表2020-535427(P2020-535427A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2018074679
(87)【国際公開番号】WO2019068442
(87)【国際公開日】20190411
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】102017217647.4
(32)【優先日】2017年10月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】江藤 昌也
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−11004(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0178474(US,A1)
【文献】
国際公開第2017/098797(WO,A1)
【文献】
特開2009−68350(JP,A)
【文献】
特開2012−65940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の圧力センサ(1)であって、
少なくとも1つのセンサユニット(20)が配置されているハウジング(3)を備え、前記少なくとも1つのセンサユニット(20)は、測定接続部(3.3)に作用する圧力と大気圧との間の圧力差を求め、前記少なくとも1つのセンサユニット(20)は、少なくとも2つの基準圧力孔部(12,14)における大気圧を検出する、圧力センサ(1)において、
センサ排水部(10)が、少なくとも2つの基準圧力孔部(12,14)を相互に接続する接続チャネル(16)を含んでおり、
取り付けられた状態において前記ハウジング(3)内の第1の基準圧力孔部(12)は、第2の基準圧力孔部(14)よりも測地学的に高い位置に配置されており、
前記接続チャネル(16)は、表面張力に基づいてより高い位置にある前記第1の基準圧力孔部(12)から浸透した水分(7)を吸い込み、下方の第2の基準圧力孔部(14)に案内することを特徴とする、圧力センサ(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(3)は、前記センサユニット(20)が配置されている収容空間(3.1)を含む、請求項1記載の圧力センサ(1)。
【請求項3】
前記ハウジング(3)にカバー(5)が接続されており、該カバー(5)は、前記収容空間(3.1)と、前記接続チャネル(16)と、前記少なくとも2つの基準圧力孔部(12,14)とを覆っている、請求項2記載の圧力センサ(1)。
【請求項4】
前記ハウジング(3)は、プラスチック射出成形部品として構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の圧力センサ(1)。
【請求項5】
少なくとも1つのブレーキブースターと、少なくとも1つのブレーキ回路と、少なくとも1つの圧力センサ(1)と、を備えた車両用の制動システムにおいて、
前記少なくとも1つの圧力センサ(1)が、請求項1から4までのいずれか1項記載の圧力センサ(1)である、制動システム。
【請求項6】
第1の圧力センサ(1)が、前記ブレーキブースター内で作用する制動圧と大気圧との間の第1の圧力差を求める、請求項5記載の制動システム。
【請求項7】
第2の圧力センサ(1)が、前記少なくとも1つのブレーキ回路内で作用する制動圧と大気圧との間の第2の圧力差を求める、請求項5または6記載の制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念による、車両用の圧力センサに関する。本発明の対象は、少なくとも1つのそのような圧力センサを備えた車両用の制動システムでもある。
【0002】
従来技術からは、少なくとも1つのセンサユニットが配置されているハウジングを備え、少なくとも1つのセンサユニットは、測定接続部に作用する圧力と大気圧との間の圧力差を求める車両用の圧力センサが公知である。少なくとも1つのセンサユニットは、少なくとも2つの基準圧力孔部における大気圧を検出する。そのような圧力センサは、例えば、ブレーキブースター内で作用する制動圧と大気圧との間の圧力差を求めるために、車両のブレーキブースター内で使用することができる。そのような圧力センサは、走行動作中に雨水にさらされている。この圧力センサのハウジングは、雨水の浸入にもかかわらず圧力センサが正しい大気圧を記録できるように設計されている。それゆえ、圧力センサは通常は、大気圧が印加される少なくとも2つの基準圧力孔部を含んでおり、それによって、圧力センサは、2箇所において、ブレーキブースター内で作用する制動圧と大気圧との間の差圧を直接測定することができる。ここでは、2つの基準圧力孔部は、第1の基準圧力孔部が第2の基準圧力孔部よりも測地学的に高い位置に配置されるように配置されている。重力に基づき水分は、より高い位置に配置された第1の基準圧力孔部からより低い位置に配置された第2の基準圧力孔部に流出し、さらにハウジングから流出する。ただし、浸透した水分は表面張力に基づいて、より低い位置に配置された第2の基準圧力孔部内においても、より高い位置に配置された第1の基準圧力孔部内においても付着したまま留まることが起こり得る。そのため、これらの基準圧力孔部のいずれにおいても大気圧を正しく検出することができなくなる。
【0003】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有する車両用の圧力センサは、少なくとも2つの基準圧力孔部のうちの少なくとも1つから浸透した水分を除去することができるため、圧力センサが大気圧を正しく検出することができるという利点を有する。
【0004】
本発明の実施形態は、少なくとも1つのセンサユニットが配置されているハウジングを備え、少なくとも1つのセンサユニットは、測定接続部に作用する圧力と大気圧との間の圧力差を求める車両用の圧力センサを提供する。少なくとも1つのセンサユニットは、少なくとも2つの基準圧力孔部における大気圧を検出する。ここでは、センサ排水部が、少なくとも2つの基準圧力孔部を相互に接続する接続チャネルを含んでいる。
【0005】
さらに、少なくとも1つのブレーキブースターと、少なくとも1つのブレーキ回路と、少なくとも1つのそのような圧力センサとを含む車両用の制動システムが提案される。
【0006】
従属請求項に記載された手段および発展形態により、独立請求項1に記載された圧力センサならびに独立請求項7に記載された車両用の制動システムの好適な改善形態が可能である。
【0007】
特に好適には、取り付けられた状態においてハウジング内の第1の基準圧力孔部は、第2の基準圧力孔部よりも測地学的に高い位置に配置されてもよい。さらに、接続チャネルは、表面張力に基づいてより高い位置にある第1の基準圧力孔部から浸透した水分を吸い込み、下方の第2の基準圧力孔部に案内することができる。重力に基づき水分は、より高い位置に配置された第1の基準圧力孔部からより低い位置に配置された第2の基準圧力孔部に流出し、さらにハウジングから流出する。さらに、接続チャネルは、より高い位置にある第1の基準圧力孔部から水分を吸い込み、より低い位置にある第2の基準圧力孔部に案内することができる。これにより、より高い位置にある第1の基準圧力孔部における水位と、より高い位置にある接続チャネルの領域における水位とが低下し、それによって、好適には、少なくともより高い位置にある第1の基準圧力孔部において水分がもはやなくなり、圧力センサは第1の基準圧力孔部を介して大気圧を基準圧力として検出することができる。
【0008】
圧力センサの有利な実施形態では、ハウジングは、センサユニットが配置されてもよい収容空間を含むことができる。さらに、カバーがハウジングに接続されてもよく、収容空間と、接続チャネルと、少なくとも2つの基準圧力孔部とを覆ってもよい。このカバーは、例えば走行動作中に水分または湿気がセンサユニットの収納空間内に入るのを防ぐことができる。ただし基準圧力孔部は大気圧にさらされているため、このカバーは、基準圧力孔部が配置されているハウジング領域内に水分や湿気が入るのを防ぐことはできない。
【0009】
圧力センサのさらなる好適な実施形態では、ハウジングは、プラスチック射出成形部品として構成することができる。このことは、ハウジングの安価な大量生産を有利に可能にする。
【0010】
制動システムの有利な実施形態では、第1の圧力センサは、ブレーキブースター内で作用する制動圧と大気圧との間の第1の圧力差を求めることができる。付加的または代替的に、第2の圧力センサは、少なくとも1つのブレーキ回路内で作用する制動圧と大気圧との間の第2の圧力差を求めることができる。
【0011】
本発明の実施例は図面に示されており、以下の明細書でより詳細に説明される。これらの図面において、同一のもしくは類似の機能を発揮するコンポーネントもしくは要素には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による車両用の圧力センサの一実施例の概略的斜視断面図
【
図2】
図1の圧力センサ用のハウジングの上方からの概略的斜視図
【
図3】水分侵入試験の様々な段階中の
図2のハウジングの断面図
【
図4】水分侵入試験の様々な段階中の
図2のハウジングの断面図
【
図5】水分侵入試験の様々な段階中の
図2のハウジングの断面図
【0013】
本発明の実施形態
図1〜
図5から明らかなように、本発明による車両用の圧力センサ1の図示の実施例は、少なくとも1つのセンサユニット20が配置されたハウジング3を備え、少なくとも1つのセンサユニット20は、測定接続部3.3において作用する圧力と大気圧との間の圧力差を求める。少なくとも1つのセンサユニット20は、少なくとも2つの基準圧力孔部12,14における大気圧を検出する。ここでは、センサ排水部10は、少なくとも2つの基準圧力孔部12,14を相互に接続する接続チャネル16を含む。
【0014】
図2からさらに明らかなように、圧力センサ1は、図示の実施例では2つの基準圧力孔部12,14を含んでいる。この場合、ハウジング3内の第1の基準圧力孔部12は、取り付けられた状態において第2の基準圧力孔部14よりも測地学的に高い位置に配置されている。
【0015】
図1および
図2から明らかなように、ハウジング3は、図示の実施例ではセンサユニット20が配置されている収容空間3.1を含む。この収容空間3.1は、シール22を介して測定接続部3.3に向かって密閉されている。さらに、カバー5がハウジング3に接続され、収容空間3.1と、接続チャネル16と、少なくとも2つの基準圧力孔部12,14とを覆っている。図示の実施例では、ハウジング3およびカバー5はそれぞれ、プラスチック射出成形部品として構成されており、それらには導体路が挿入部品として挿入されている。図示の実施例では、センサユニット20は、検出された測定値を処理し、インターフェースを介して所望の圧力差もしくは所望のセンサデータを求めて出力する。センサデータを出力するために、ハウジング3は、対応するプラグが挿入可能である機械的なインターフェースとしてのコンタクト収容部3.2と、センサユニット20に接続されかつプラグ内の対応する対応コンタクト要素との電気的な接続を形成することができるコンタクト要素26とを含んでいる。図示の実施例では、コンタクト収容部3.2はハウジング3に成形されている。
【0016】
以下では、
図3〜
図5を参照して、圧力センサ1用の水分侵入試験の経過を説明する。
【0017】
図3からさらに明らかなように、圧力センサ1のハウジング3は、水分侵入検査において少なくとも基準圧力孔部12,14の区分が水分7で満たされる。次いで、ハウジング3が
図4および
図5に示されている取り付け位置まで回され、それによって、第1の基準圧力孔部12は、第2の基準圧力孔部14よりも高い位置に配置される。
図4からさらに明らかなように、水分7は、重力に基づき、より高い位置に配置された第1の基準圧力孔部12からより低い位置に配置された第2の基準圧力孔部14に流出し、さらにハウジング3から流出する。
図5からさらに明らかなように、接続チャネル16は、表面張力に基づいてより高い位置にある第1の基準圧力孔部12から浸透した水分7を付加的に吸い込み、下方の第2の基準圧力孔部14に案内する。これにより、より高い位置にある第1の基準圧力孔部12における水位と、より高い位置にある接続チャネル16の領域における水位とが低下し、それによって、少なくともより高い位置にある第1の基準圧力孔部12において水分がもはやなくなり、圧力センサ3のセンサユニット20は、第1の基準圧力孔部12を介して大気圧を基準圧力として検出することができる。
【0018】
本発明による圧力センサ1の実施形態は、好適には、少なくとも1つのブレーキブースターと、少なくとも1つのブレーキ回路とを含む車両用の制動システムに使用することができる。そのため、例えば第1の圧力センサ1は、ブレーキブースター内で作用する制動圧と大気圧との間の第1の圧力差を求めることができる。第2の圧力センサ1は、例えば少なくとも1つのブレーキ回路内で作用する制動圧と大気圧との間の第2の圧力差を求めることができる。
【0019】
本発明の実施形態は、取り付けられた状態において、好適には基準圧力孔部のうちの少なくとも1つから浸透した水分が除去され、それによって、圧力センサが大気圧を正しく検出することができる車両用の圧力センサを提供する。