(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869437
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】リザーバを備えたユニットを有する加工機械およびリザーバを操作する方法
(51)【国際特許分類】
B41F 31/02 20060101AFI20210426BHJP
B41F 31/04 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B41F31/02 Z
B41F31/04
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-531072(P2020-531072)
(86)(22)【出願日】2018年12月7日
(65)【公表番号】特表2021-505442(P2021-505442A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】EP2018083986
(87)【国際公開番号】WO2019110807
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2020年7月6日
(31)【優先権主張番号】102017222158.5
(32)【優先日】2017年12月7日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014188
【氏名又は名称】ケーニッヒ ウント バウアー アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Koenig & Bauer AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ プフォアテ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ハルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン テラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター イェンチュ
【審査官】
亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−037854(JP,A)
【文献】
米国特許第04854234(US,A)
【文献】
国際公開第2017/121852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/02
B41F 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ壺を備えた印刷ユニットを有する加工機械であって、
前記インキ壺は、印刷インキ用のインキ室(04)を画定するインキ移しローラ(01)、インキ壺底部(03)および端面壁(05)を有しており、
前記インキ壺は、上方に向かって開いており、かつ
前記インキ移しローラ(01)と共に前記印刷インキ用のインキ流出ギャップ(13)を形成するように、前記インキ壺底部(03)の縁部に沿って1つまたは複数のインキスライダ(06)が配置されている、加工機械において、
前記1つまたは複数のインキスライダ(06)の領域および/または端面壁(05)と前記インキ移しローラ(01)との間の縁部(26)の領域に、前記印刷インキに対して前記インキ室(04)を封止する空圧手段が設けられており、
前記空圧手段により、周囲圧力に比べて高められ、前記印刷インキの侵入に抗して作用する過剰圧力が、インキスライダ(06)同士の間のギャップ(25)および/または端面壁(05)とインキスライダ(06)との間のギャップ(25)および/または端面壁(05)と前記インキ移しローラ(01)との間のギャップ(27)に発生可能でありかつ/または発生させられており、
前記1つまたは複数のインキスライダ(06)および/または前記端面壁(05)と前記1つまたは複数のスライダ(06)とに設けられた孔(20,21)により、圧縮ガス導管が形成されることを特徴とする、加工機械。
【請求項2】
前記空圧手段は、前記インキ室(04)を画定する一方の端面壁(05)から、反対側に位置する、前記インキ室(04)を画定する端面壁(05)まで延在している、請求項1記載の加工機械。
【請求項3】
インキスライダ(06)同士の側面(08)、および/または端面壁(05)とインキスライダ(06)の側面(08)は、互いに対を成して平行に対向して位置している、請求項1および/または2記載の加工機械。
【請求項4】
2つのインキスライダ(06)の互いに向かい合う側面(08)により画定された少なくとも1つのギャップ(25)に圧縮ガスを供給可能な圧縮ガス導管(20,21,22)が設けられている、請求項1、2および/または3記載の加工機械。
【請求項5】
圧縮ガス導管(20,21,22)は、インキスライダ(06)を貫通して一方の側面(08)から他方の側面(08)まで延在する孔(20)を有している、請求項1、2、3および/または4記載の加工機械。
【請求項6】
インキスライダ(06)は、インキ壺の端面壁(05)の間に一列に配置されており、互いに向かい合う、前記端面壁(05)のうちの一方の側面(08)と、前記インキスライダ(06)のうちの1つの側面(08)とにより画定されたギャップ(25)に、圧縮ガス導管(20,21,22)を介して圧縮ガスを供給可能である、請求項1、2、3、4および/または5記載の加工機械。
【請求項7】
圧縮ガス導管(20,21,22)は、インキ壺の少なくとも一方の端面壁(05)に孔(21,22)を有している、請求項1、2、3、4、5および/または6記載の加工機械。
【請求項8】
前記インキ壺は、正確には2つの端面壁(05)を有しておりかつ/または各端面壁(05)は、圧縮ガス導管の孔(21,22)を有している、請求項1、2、3、4、5、6および/または7記載の加工機械。
【請求項9】
前記インキ壺は、正確には2つの一体の端面壁(05)を有しており、これらの端面壁(05)には、前記インキ移しローラ(01)に対する一方の端面壁(05)の各封止面(27)に配置された溝(30)に供給するための分岐孔(28)が設けられている、請求項1、2、3、4、5、6、7および/または8記載の加工機械。
【請求項10】
一方の端面壁(05)と前記インキ移しローラ(01)との間のギャップ(27)は、圧縮ガス導管(20,21,22)に接続されている、請求項1、2、3、4、5、6、7および/または9記載の加工機械。
【請求項11】
ローラ(01)および底部(03)が、媒体用のリザーバの蓄え室(04)を画定しており、かつ
前記ローラ(01)と共に前記媒体用の流出ギャップ(13)を形成するように、前記底部(03)の縁部に沿って1つまたは複数のスライダ(06)が配置されている、加工機械のユニットに設けられたリザーバを操作する方法において、
前記1つまたは複数のスライダ(06)の領域に、空圧手段により、前記媒体に対して前記蓄え室(04)を封止する圧縮ガスを噴射し、
前記圧縮ガスを、スライダ(06)同士の間のギャップ(25)および/または端面壁(05)とスライダ(06)との間のギャップ(25)内に前記媒体が侵入しないように作用させ、前記圧縮ガスは、一方の端面壁(05)と1つのスライダ(06)の側面(08)の間のギャップ(25)および/またはスライダ(06)同士の側面(08)の間のギャップ(25)から前記媒体を除去し、前記圧縮ガスを、孔(20,21,22)を介して案内し、前記1つまたは複数のスライダ(06)を変位させて前記流出ギャップ(13)を調整し、前記圧縮ガスを、前記1つまたは複数のスライダ(06)のあらゆる位置において互いにオーバラップし合う孔(20,21)を通して案内し、かつ/または
前記圧縮ガスを、端面壁(05)と前記ローラ(01)との間のギャップ(27)内に前記媒体が侵入しないように作用させ、前記圧縮ガスは、一方の端面壁(05)と前記ローラ(01)との間のギャップ(27)から前記媒体を除去し、前記圧縮ガスを、溝(30)を介して案内することを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記圧縮ガスは、前記流出ギャップ(13)以外の前記底部(03)の下側の前記1つまたは複数のスライダ(06)の領域から、前記媒体を除去する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮ガスを、一方の端面壁(05)と1つのスライダ(06)の、互いに反対の側に対を成して位置する側面(08)の間および/またはスライダ(06)同士の、互いに反対の側に対を成して位置する側面(08)の間に噴射する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮ガスを供給する間に前記1つまたは複数のスライダ(06)を変位させて前記流出ギャップ(13)を調整する、請求項11、12または13記載の方法。
【請求項15】
前記リザーバはインキ壺であり、前記底部(03)はインキ壺底部(03)であり、前記蓄え室(04)はインキ室(04)であり、前記ローラ(01)はインキ移しローラ(01)であり、複数のインキスライダ(06)は、前記インキ移しローラ(01)に向かって半径方向に変位可能であり、これにより、前記インキ流出ギャップ(13)の幅をゾーン毎に制御する、請求項11、12、13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバを備えたユニットを有する加工機械、特に印刷機および加工機械、特に印刷機のユニットに設けられたリザーバを操作する方法に関する。
【0002】
インキ壺には従来、運転中にインキ、特にUV印刷インキにより満たされるインキ室を画定する、インキ移しローラおよびインキ壺底部が含まれる。インキ壺底部の下縁部に沿って一列に複数のインキスライダが配置されており、インキスライダはインキ移しローラと共にインキ室のインキ壺底部にギャップを形成しており、インキ移しローラの回転により、インキ室からギャップを介してインキが送り出される。インキスライダとインキ移しローラとの間の間隔は、インキ室から送り出されるインキ膜の厚さを決定する。この間隔は、インキスライダ毎に個別に調整可能であり、これにより、ゾーン毎に可変の厚さのインキ膜が得られる。
【0003】
各インキスライダは、インキ室内のインキに直接に接触すると共に互いに可動である必要があるため、インキが、側方部材とインキスライダとの間または2つのインキスライダの間に侵入し、インキ交換時に必要なインキ壺の洗浄を困難にするかまたはそれどころかインキスライダの変位を妨げる、という可能性が生じる。これを防ぐために、目下インキスライダには取付け時にグリースが塗布されるため、グリースが、側方部材とインキスライダとの間およびインキスライダ同士の間のギャップ内でインキの経路を塞ぐことになる。グリースは、時間の経過と共にインキに移るため、定期的なグリース補充が必要とされている。
【0004】
独国実用新案第6947168号明細書もしくは独国特許出願公開第1961033号明細書から公知の、印刷機用のインキローラに設けられた封止装置では、固定の封止フレームとインキ移しローラとの間に、過剰圧力下でインキの溢流を防ぐ空気のための環状の切欠きを備えた封止面が設けられている。
【0005】
独国特許出願公開第3241124号明細書から公知の、輪転印刷機のインキ壺に設けられたインキ分配楔では、インキ壺ローラに適合された封止端面に、長手方向溝が設けられており、長手方向溝には、ホースを介して圧縮空気源に接続された複数の孔が開口している。
【0006】
国際公開第2017121852号から公知の、フレキソ印刷機のドクタブレード室用の封止部材では、ローラ本体に接触する封止面が、流れ流出開口を有しており、流体が、封止面とローラ本体との間に封止流体膜を形成するように、流れ流出開口において、機械運転中に流体の過剰圧力を形成することができるようになっている。
【0007】
独国特許出願公告第1269138号明細書から公知の、可撓性のインキブレードを備えた印刷機用インキ壺では、インキブレードの下側に、インキブレードに沿って延在する、空圧式に操作可能な本体が取り付けられており、この場合、個別に調整可能な複数の部材を介してその都度局所的に、空圧に抗して作用する力を生ぜしめることができるようになっている。
仏国特許発明第1416866号明細書から公知の、印刷機用のインキ壺は、膨張可能な本体を有しており、本体の膨張は、インキブレードをその個々の調整位置から移動させると同時に、その縁部をローラに対して均一に押圧する。これにより、洗浄を簡単にしかつ再始動を速めようとする。この場合、膨張可能な本体は、インキブレードの個々の調整を妨げることなしにインキブレードを持ち上げたり、前の位置に戻るように変位させたりする。
米国特許第4854234号明細書から公知のインキ壺閉鎖システムは、インキゾーンレバーを介して流出ギャップを閉じるための空圧手段を有している。この場合、インキゾーンレバーの調整部材は、やはり無効にもなる。
独国特許出願公開第102007003943号明細書から公知の、印刷機の印刷ユニットに印刷インキを供給するインキ容器では、側方部材もしくはインキ部材が封止手段を介してインキローラに接続している。封止手段は、圧縮空気供給手段に接続された圧縮空気室を有しており、圧縮空気室は、容積変化時に封止作用を生ぜしめる。
独国実用新案第8817107号明細書からは、インキ膜をゾーン毎に調量する調量ブレードが公知である。
【0008】
前記各構成でもって、スライダ、特にインキスライダの領域、もしくはスライダと側壁との間の領域において封止作用を得ることはできない。
【0009】
本発明の根底を成す課題は、ユニットを備えた代替的な加工機械もしくは加工機械のユニット、特に印刷ユニットに設けられたリザーバを操作する代替的な方法を提供することにある。
【0010】
この課題は本発明に基づき、独立装置請求項に記載の特徴を備えた装置または独立方法請求項に記載の特徴を備えた方法により解決される。有利な構成は、下位請求項、説明および図面から明らかである。
【0011】
本発明は、リザーバを有するユニットを備えた代替的な加工機械、特に印刷機もしくはユニット、特に印刷ユニットに設けられたリザーバを操作する代替的な方法が提供される、という利点を有する。特に、対応するユニット、特に印刷ユニットを備えた加工機械、特に枚葉印刷機および/またはオフセット印刷機が提供される。
【0012】
加工機械、特に枚葉印刷機および/またはオフセット輪転印刷機は、基体を加工する少なくとも1つのユニット、特に印刷ユニットまたはラッカユニットを有している。好適には、送られてくる基体を連続的に加工するために、機械は例えば同じ構成の前記のようなユニットを複数有している。このようなユニット内には、ローラと底部とを有するリザーバが配置されており、ローラと底部とは共に、基体に供給されるべき媒体のための蓄え室を画定している。底部の縁部に沿って配置された1つまたは複数のスライダを介して、ローラと共に媒体用の流出ギャップが形成され、媒体は流出ギャップを通り、例えば分配システムを介して基体に被着可能である、もしくは被着される。
【0013】
この場合、スライダもしくは端面の領域に、リザーバ内の媒体に対してリザーバもしくは蓄え室を封止するための空圧手段が設けられている。好適には、空圧手段は、特に流出ギャップもしくは端面の封止面以外の、底部の下側のスライダの領域から媒体を除去することができる。特に好適には、空圧手段は、一方の側面とスライダとの間の自由空間および/またはスライダの面同士の間の自由空間から媒体を除去する。この場合、空圧手段により過剰圧力が形成されてもよく、この圧力は、周囲圧力を上回る圧力である。この過剰圧力は、自由空間、特にギャップ内への媒体、特に印刷インキもしくはUV印刷インキの侵入を減じるもしくは阻止するように放出もしくは解放される。この場合、空圧手段は、特に好適には中断されずに、蓄え室を画定する側壁の間に設けられたスライダまたは全てのスライダにわたって延在している。
【0014】
好適には、加工機械、特に枚葉印刷機もしくはオフセット輪転印刷機は、内部に各1つのインキ壺が配置された、1つまたは複数の印刷ユニットを備えて形成される。インキ壺は、インキ移しローラの他に、特にインキ壺底部と2つの側方部材とを有しており、インキ壺底部と側方部材とは共に、上方に向かって開いたインキ室を形成している。すなわち、インキ壺内にはインキ移しローラに対する、印刷インキ用の唯一のギャップが形成されているだけに過ぎない、つまり、特に対向して位置する閉鎖ドクタブレードは一切設けられていない。この場合、好適には複数のインキスライダが、インキ壺底部の、インキ移しローラに面した側に沿って形成されており、これらのインキスライダは、インキ移しローラと共に、インキ流出ギャップを形成している。この場合、1つまたは複数のインキスライダの領域および/または端面壁とインキ移しローラとの間のギャップの領域に、インキ壺内の印刷インキに対してインキ壺もしくはインキ室を封止するための空圧手段が設けられている。この場合、空圧手段は、圧縮ガス導管により形成されていてもよく、例えば協働する孔であってもよい。
【0015】
特に有利には、インキスライダ同士の間のギャップ内に圧縮ガス、特に圧縮空気を好適には連続して噴射することにより、インキ壺内のインキ、特にUV印刷インキの静的な液圧に抗して作用しかつインキのギャップ内への侵入を阻止することができる、動的な逆圧を形成することができる。圧縮ガスの供給は、インキスライダへのグリース塗布を不要にすることができると共に、これによりインキ壺の保守にかかる作業手間を大幅に減らすことができる。
【0016】
圧縮ガス導管は、好適には大部分が、インキスライダを貫通して一方の側面から他方の側面まで延在する複数の孔により形成されていてもよい。この場合、スライダ、特にインキスライダの各側面は、好適には平行に対向して位置するように配置されている。一方のインキスライダから他方のインキスライダにかけて孔が互いにオーバラップし合うことにより、一貫して延びる導管もしくは圧縮ガス導管が形成される。
【0017】
1つまたは複数のインキスライダが、インキ壺の端面壁の間に一列に配置されていると、一方の端面壁とインキスライダの、対向して位置する特に平行な側面により画定されるギャップに、1つまたは複数の圧縮ガス導管を介して圧縮ガスを供給することができ、これによりギャップからインキを除去することができる。
【0018】
圧縮ガス導管には、インキ壺の少なくとも一方の端面壁に設けられた孔が含まれていてもよい。端面壁は、そこに圧縮ガス供給用の供給接続手段を配置するために良好に適している。
【0019】
このような供給接続手段は、特に空圧差込みコネクタにより形成されていてもよい。
【0020】
以下に、本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】インキ移しローラの軸線に対して垂直な第1の平面に沿ったインキ壺の断面I−Iを示す概略断面図である。
【
図2】インキ移しローラの軸線に対して垂直な第2の平面に沿ったインキ壺の断面II−IIを示す概略断面図である。
【
図3】インキ移しローラの軸線により張設される平面に沿ったインキ壺の部分断面を示す部分断面図である。
【
図4】インキ壺の操作側の端面壁の構成を示す図である。
【
図5】インキ壺の駆動装置側の端面壁の構成を示す図である。
【0022】
枚葉加工機械(詳しくは図示せず)、例えば特にユニット構成形式およびライン構成形式の枚葉オフセット輪転印刷機の場合、内部に適当なリザーバが配置された、1つまたは複数の印刷ユニットおよび場合により1つまたは複数のラッカユニットが設けられていてもよい。特に、各印刷ユニットにおいてリザーバは、上方に向かって開いた、印刷インキ、特にUV印刷インキ用のインキ室04を共に画定しているインキ移しローラ01、側壁およびインキ壺底部03を有するインキ壺として形成されていてもよい。しかしまたさらに、カバー等がインキ壺を覆うように設けられていてもよい。好適には、この機械は基体、特に被印刷材、例えば枚葉紙またはウェブ紙、フィルム等に塗布される印刷インキ用のドライヤを有している。特に、好適に使用されるUV印刷インキを乾燥もしくは硬化させるためには、UVドライヤもしくはUV中間ドライヤが機械に設けられている。
【0023】
この場合、インキ壺底部03の縁部に沿って配置された少なくとも1つの、ただし好適には複数の、インキ壺のインキスライダ06が、インキ移しローラ01と共に、印刷インキ用のインキ流出ギャップ13を形成しており、インキ流出ギャップ13を通り、印刷インキは例えば印刷ユニットに設けられたローラミルを介して版胴もしくはプレートシリンダに送られる。例えば中判の機械では、約35のインキスライダ06が相並んで一列に配置されていてもよく、これに対応して、個別に制御可能な多数のインキゾーンが形成されることになる。大判の機械では、より多くのインキスライダ06、例えば最大49またはそれ以上のインキスライダ06が使用され得る。
【0024】
例えば、印刷ユニットに設けられたインキ装置は、薄膜インキ装置として、または好適には呼出しインキ装置として形成されていてもよく、この場合、(インキ壺ローラとも呼ばれる)インキ移しローラ01は、印刷インキをローラミルの後続のローラに移すインキ呼出しローラと協働する。ローラミルのローラは、印刷インキを可能な限り均一に分布させる周知の摩擦ローラおよび揺動ローラを有していてもよい。ローラミルはさらに、版胴と表面接触している複数のインキ着けローラを有していてもよく、インキ着けローラは印刷インキを、版胴に張設された版板に移す。さらにインキ装置は、湿し装置を備えたインキ・湿し装置として形成されていてもよい。例えばインキ移しローラ01は、印刷運転中にインキ移しローラ01を駆動するための専用の駆動装置を有していてもよい。特にこの駆動装置は、単独でインキ移しローラ01を回転駆動するインキ移し用個別駆動装置として形成されていてもよい。この場合、個別駆動装置はインキ移しローラ01を、変速伝動装置を介して駆動してもよい。
【0025】
図1には、例えば印刷機用、特に例えば上述したような枚葉印刷機用のインキ壺が示されており、このインキ壺は、
図1および
図2の平面に対して垂直な軸線02を中心として時計回りに回転駆動されるインキ移しローラ01と、インキ移しローラ01に対して急傾斜のインキ壺底部03とを有している。インキ移しローラ01とインキ壺底部03とは、インキ室04の長辺を形成している。インキ室04の端面は各端面壁05により形成されており、これらの端面壁05のうちの一方に、
図2に示す断面II−IIが延在している。インキ壺の端面壁05、インキ壺底部03および/またはインキスライダ06は、印刷インキ、特にUV印刷インキと直接に接触していてもよい。択一的に、これらの要素のうちの1つまたは複数または全ては、例えばインキ壺内に設けられたフィルム等を介して間接的にインキと接触していてもよい。
【0026】
インキ壺底部03の、インキ移しローラ01に面した下縁部に沿って、少なくとも1つの、特に複数のインキスライダ06が、好適には一列に配置されている。インキスライダ06は、インキ移しローラ01に向かって傾斜して収縮した端面を備える、例えばほぼ直方体形の各1つのヘッド07と、軸線02に対して垂直に向けられた2つの側面08(
図3参照)と、軸線02から半径方向に離反して延びる軸部09とを有している。インキスライダ06のヘッド07は、例えばインキ壺底部03の下縁部において軸線02の方向に延在する溝10内に収容されており、軸部09の直径は、ヘッド07の各側面08の間の間隔よりも小さくなっており、軸部09は、溝10の底部から半径方向に、軸線02から離反して延びる孔11内に延在している。
【0027】
各ヘッド07の端面は、インキ室04のインキと直接に接触している。この端面の、インキ移しローラ01に面した縁部は、好適には例えば超硬合金等の耐摩耗性の材料から成る条片12により形成されている。条片12とインキ移しローラ01との間のインキ流出ギャップ13の幅は、数10μmである。インキ移しローラ01の周面に対する条片12の間隔(インキ流出ギャップ13)を調整することにより、当該のインキゾーンにおいてインキ壺から流出する印刷インキの膜厚さが調整される。好適には、いくつかまたは全てのヘッド07もしくはインキスライダ06は、同一構成で形成されていてもよい。
【0028】
孔11内には特にばね14が収納されており、ばね14は、軸線02から離反する方向に向けられた力をインキスライダ06に加えると共に、インキスライダ06を、調整装置16に設けられたストッパにおいて保持する。ばね14は、特に軸部09を包囲して延在しかつ孔11のショルダと、軸部09に被せ嵌められたスナップリング15との間に緊締されたコイルばねであってもよい。
【0029】
各インキスライダ06の調整装置16は、他の調整装置16とは関係無く操作可能であり、これにより、インキ流出ギャップ13の幅をゾーン毎に制御することができるようになっている。ここに示すケースでは、調整装置16は、軸線02に対して平行な軸線17を中心として偏心的に回動可能なピン18を有しており、ピン18は軸部09の、ヘッド07とは反対の側の端部に設けられたフォーク19に係合している。択一的に、調整装置16は調整動作を別の方法で、例えば所定の輪郭が与えられた表面を介して、インキスライダ06に伝達することもできる。特に、調整装置16はインキスライダ06を、インキ移しローラ01の軸線02もしくは回転軸線に対して平行に配置された旋回軸線を中心として変位もしくは旋回させることができる。
【0030】
インキスライダ06のヘッド07を貫通して、インキ移しローラ01の軸線02もしくは回転軸線に対して平行に、孔20が延在している。インキスライダ06同士が互いに相対的に占めることができるあらゆる位置においてインキスライダ06の孔20がオーバラップすることを保証するために、孔20の直径は、インキスライダ06の変位運動の自由度よりも大きくなっていてもよい。
【0031】
図3に見られるように、孔20は、少なくとも1つの端面壁05に設けられた軸方向の孔21ともオーバラップしている。この軸方向の孔21は、
図2に示す断面内に延在する孔22に連通している。ここでは、孔22は例えば端面壁05の、軸線02とは反対の側の縁部に設けられた空圧差込みコネクタ23のところで終わっている。孔20,21,22は、共に1つの圧縮ガス導管を形成している。差込みコネクタ23は、差込みコネクタ23に相補的なコネクタ24を介して、例えばコンプレッサ等の圧縮空気源を接続するために設けられている。しかしまた択一的には、空圧の接続は、別の箇所において、もしくは対応する適当な接続手段を用いて行われてもよい。この場合、圧縮空気源は、例えば少なくともほぼ2barの圧力をインキ壺に供給することができる。
【0032】
インキスライダ06の側面08ならびに端面壁05の、インキスライダ06に対向して位置する内面は、各ヘッド07の間ならびに端面壁05と、端面壁05の隣のヘッド07との間のギャップ25の幅、ひいてはインキ室04内のインキがギャップ25に侵入する傾向を最小限に抑えるために、好適には研磨されている。通常、この傾向がこのようにして完全に抑制され得ることはない。それというのも、ギャップ25内への侵入を毛管力が促進するからである。ただし、孔22、21を介して孔20に圧縮空気が供給されることにより、ギャップ25においてそれぞれ、孔20から半径方向外側に向けられた空気流が維持され、この空気流は、インキの侵入に抗して作用する過剰圧力をギャップ25内に生ぜしめる。改良型では、ギャップ25内に流出する空気流は、特にヘッド07の賦形に基づき方向付けられてもよい、もしくは少なくとも部分的に制限されてもよい。
【0033】
空気流が強くなるほど、ギャップ25は広幅になり、互いに対向して位置する研磨された側面08の残留リップルは、強められた空気流により自動的に相殺されることになる。よって側面08の平坦性に対する要求は、固定のグリース層により封止されたギャップ25を備えたインキ壺におけるよりも低くてもよい。
【0034】
端面壁05は、インキ移しローラ01の周面に対向して位置する、封止面として作用する各1つの凹状の縁部26を有している。インキスライダ06間と同様に、この縁部26と周面との間のギャップ27も、ギャップ27へのインキの侵入に抗して作用するように、可能な限り狭いことが望ましい。1つの好適な構成では、この縁部26と、端面壁05の内部の孔22との間に分岐孔28が延在しており、分岐孔28を介して圧縮空気がギャップ27にも供給される。インキ移しローラ01の回転は、ギャップ27内での空気の伝搬を回転方向に促進するため、分岐孔28の出発点29は、縁部26の上端部に位置していてもよい。
【0035】
縁部26に沿って圧縮空気の分布を促進しかつギャップ27の、特に分岐孔28の出発点29から大きく離れた下端部付近からインキを除去するために、縁部26には、周方向に延在する溝30が設けられていてもよい。
【0036】
端面壁05の製造を簡単にするために、両方の端面壁05には同一の孔21,22,28が設けられていてもよい。軸方向の孔21は、一方の端面壁05の主表面から他方の端面壁05の主表面まで延在しており、孔21の、インキスライダ06とは反対側の各端部にはそれぞれ、閉鎖手段31が設けられている。この場合はさらに、インキスライダ06の孔20に両側から圧縮空気が供給され得る。このことは、一方の端面壁05のみを介して孔20に供給すると、インキスライダ06の配置長さにわたり顕著な圧力降下が発生する恐れがあるほど孔20が狭いかまたは孔20間のオーバラップが小さい場合に、全てのギャップ25および/またはギャップ27に対して圧縮空気の十分な供給を保証するために必要なことがある。
【0037】
ただし好適には、ギャップ25もしくはギャップ27にわたる孔20からの空気流出量は、とりわけインキ室04のインキ中に気泡が湧き起こり、これらの気泡がインキ流出ギャップ13を通過するとインキ膜厚さの変動をもたらす場合がある、ということを回避するために、孔20に沿って大幅な圧力降下が生じない程度に少ないことが望ましい。例えば2つの端面壁05の間に配置されたギャップ25および/または端面壁05とインキ移しローラ01との間に配置されたギャップ27は、圧力降下がギャップ25およびギャップ27にわたり、所定の値、特に25%に制限されているように寸法設定されていてもよい。
【0038】
図4には、加工機械、特にオフセット印刷機、好適には例えば上述したようなユニット構成形式およびライン構成形式の枚葉オフセット輪転印刷機の印刷ユニットに設けられたインキ壺の一方の端面壁05の1つの構成が示されている。この端面壁05は、例えば機械の操作側に配置されていてもよく、インキ壺のインキ室04を画定していてもよい。端面壁05は、インキスライダ06の孔20に供給する孔21に連通した孔22を有している。孔21は、ここでは端面壁05の、インキスライダ06に面した側面08にのみ配置されており、非連続的に形成されているときもある。
【0039】
孔22に対して角度を成して、特に直交して、別の孔、特に分岐孔28が設けられており、分岐孔28は別の孔と共に、端面壁05の、インキ移しローラ01の方を向いた封止面、特にインキ移しローラ01の方を向いた縁部26に形成された溝30に対する出発点29を形成している。溝30は、ここでは特に端面壁05の凹状の縁部26に沿って延在している。出発点29は、特に溝30のほぼ中心に配置され、これにより負圧が、出発点29から溝30に沿って均一に形成されるようになっている。溝30は、例えばほぼ3mmの、特に均一な深さおよび/または幅を有していてもよい。溝30は、一方の端部または好適には両端部に、例えば10mmの曲率半径を備えて形成されていてもよい。出発点29を形成する孔は、図示の実施形態では水平線に対して少なくともほぼ20°の角度で端面壁05内に形成されていてもよくかつ/または少なくともほぼ3mmの直径を有していてもよい。
【0040】
端面壁05は、ここで断面A−Aに示すように、別の孔を有していてもよい。この孔は、端面壁の孔22に空圧を供給するために、追加的または択一的に使用され得る。この孔が空圧供給に用いられる場合、好適には孔22の入口開口が閉じられる。断面B−Bに示す分岐孔28の入口開口も、機械の運転中は同様に閉じられる。
【0041】
図5には、特に上述したようなインキ壺の端面壁05の1つの構成が示されている。この端面壁05は、例えば機械の駆動側に配置されていてもよく、インキ壺のインキ室04を画定していてもよい。端面壁05は、インキスライダ06の孔20に供給する孔21に連通した孔22を有している。孔21は、ここでは端面壁05の、インキスライダ06に面した側面08にのみ配置されており、非連続的に形成されているときもある。
【0042】
孔22に対して角度を成して、特に直交して、別の孔、特に分岐孔28が設けられており、分岐孔28は別の孔と共に、端面壁05の、インキ移しローラ01の方を向いた封止面、特にインキ移しローラ01の方を向いた縁部26に形成された溝30に対する出発点29を形成している。溝30は、ここでは特に端面壁05の凹状の縁部26に沿って延在している。出発点29は、特に溝30のほぼ中心に配置され、これにより負圧が、出発点29から溝30に沿って均一に形成されるようになっている。溝30は、例えばほぼ3mmの、特に均一な深さおよび/または幅を有していてもよい。溝30は、一方の端部または好適には両端部に、例えば10mmの曲率半径を備えて形成されていてもよい。出発点29を形成する孔は、図示の実施形態では水平線に対して少なくともほぼ20°の角度で端面壁05内に形成されていてもよくかつ/または少なくともほぼ3mmの直径を有していてもよい。
【0043】
端面壁05は、ここで断面A−Aに示すように、別の孔を有していてもよい。この孔は、端面壁の孔22に空圧を供給するために、追加的または択一的に使用され得る。この孔が空圧供給に用いられる場合、好適には孔22の入口開口が閉じられる。断面B−Bに示す分岐孔28の入口開口も、機械の運転中は同様に閉じられる。
【0044】
両端面壁05は、例えばそれぞれ横方向においてインキ壺底部03に続いていてもよく、この場合はインキ壺底部03とインキ移しローラ01と共に、内部に媒体、特に印刷インキ、特にUV印刷インキが保持される、上方に向かって開いたインキ室04を形成していてもよい。この場合、インキ壺は、好適には特に一体に形成されたもしくは一体の、正確には2つの端面壁05を有している。
【0045】
空圧接続手段、例えば差込みコネクタ23を介して、特に両端面壁05に圧縮ガス、特に圧縮空気が供給される。圧縮ガス、特に圧縮空気は、例えば差込みコネクタ23から取外し可能な1つまたは2つのコネクタ24を介して供給され得る。この場合は両側に、例えば約2barの一定の圧力が加えられてもよい。ただし必要に応じてさらに、圧縮ガス、特に圧縮空気の強さおよび/または作用時間を調整しかつ/または変更することもできる。ただし特に圧縮ガス、特に圧縮空気の強さおよび/または作用時間は、リザーバ、特にインキ壺の全てのギャップ25およびギャップ27に、媒体、特に印刷インキを封止するように働く十分な量の空気流が生ぜしめられるように選択される。
【0046】
この場合はスライダ、特にインキスライダ06も、圧縮ガス、特に圧縮空気の供給中に流出ギャップ13を調整するために変位させられてもよい。スライダ、特にインキスライダ06が複数の場合、これらは各流出ギャップ13を調整するために別個の調整装置16により個別に変位させられるようになっており、この場合、ローラ、特にインキ移しローラ01は機械の運転中、軸線02を中心として回転駆動されている。
【符号の説明】
【0047】
01 インキ移しローラ
02 軸線
03 インキ壺底部
04 インキ室
05 端面壁
06 インキスライダ
07 ヘッド
08 側面
09 軸部
10 溝
11 孔
12 条片
13 インキ流出ギャップ
14 ばね
15 スナップリング
16 調整装置
17 軸線
18 ピン
19 フォーク
20 孔
21 孔
22 孔
23 差込みコネクタ
24 コネクタ
25 ギャップ
26 縁部
27 ギャップ
28 分岐孔
29 出発点
30 溝
31 閉鎖手段