(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給物がバイオ系グリセリンに由来するバイオアリルアルコール、非バイオ系グリセリンに由来する非バイオアリルアルコール、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概要
本開示は、グリセリンで作られたアリルアルコールからの1,4−ブタンジオール(BDO)の製造に関する。
【0009】
アリルアルコールからのBDO(および/またはMPD)の製造
アリルアルコールは、
図1に示された化学的経路を介して発生する1,4−ブタンジオール(BDO)の製造に用いられる。
図1に示したように、ヒドロホルミル化反応において、アリルアルコール(AA)は、ヒドロホルミル化触媒の存在下にCO・H
2ガス混合物(本明細書では「合成気体」または「合成ガス(syngas)」とも称される)と反応して4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA;ヒドロキシブタナールとも呼ぶ)を形成する。続いて、HBAは、例えば水抽出によって触媒から分離された後、水素化されて1,4−ブタンジオール(BDO)を形成することができる。ヒドロホルミル化工程の1つの短所は、所望するHBA線状生成物に加えて、他の共生成物または副生成物も生成されるということである。アリルアルコールのヒドロホルミル化は、通常、一部の3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド(HMPA;メチルヒドロキシプロパン(MHPA)ともお知られている)を生成し、これは分岐状共生成物(co−byproduct)、たとえば、n−プロパノール(NPA、n−Pr)およびプロピオンアルデヒド(プロパノール;PA)などのC3副生成物であることができ、これらに限定されない。HMPAが水素化されて有用な物質である1,3−メチルプロパンジオール(MPD)を生成することができるが、MPD共生成物によってBDOの収率を減少させる。副生成物の形成は、工程における他の収率の損失を効果的に示し、これはプロセスの経済性に悪影響を及ぼすことができる。
【0010】
アリルアルコールのHBA(およびHMPA)へのヒドロホルミル化
本開示によれば、BDOが生成されるアリルアルコールの少なくとも一部は、グリセリンに由来するものである。アリルアルコールは、ヒドロホルミル化触媒との接触によりヒドロホルミル化されることができる。例えば、ヒドロホルミル化方法および触媒は、米国特許第4,064,145号;第4,215,077号;第4,238,419号;第4,567,3054号;第4,678,857号;第5,290,743号;第4,678,857号;第7,294,602号;第7,271,295号;第7,279,606号;第7,612,241号;第7,655,821号;第7,790,932号;第8,791,305号および第8,779,211号に記載されており、これら各々の開示は、本開示に反しない目的のためにその開示全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0011】
前述したように、ヒドロホルミル化反応のために多様な触媒系が使用されてきた。かかるヒドロホルミル化触媒およびプロセスの一部は、ホスフィンリガンドと一緒にロジウム錯物を用いる。実施形態において、本開示の方法は、溶媒およびヒドロホルミル化触媒系の存在下にアリルアルコールをヒドロホルミル化することを含む。実施形態において、ヒドロホルミル化触媒系は、ロジウム錯物およびホスフィンリガンドを含む。このようなホスフィンリガンドは、モノホスフィンリガンドであるトリフェニルホスフィン等の三置換ホスフィンを含む。実施形態において、ホスフィンリガンドは、ジホスフィンリガンド、モノホスフィン、およびこれらの組み合わせから選ばれた1つ以上を含むことができる。実施形態において、(たとえば、後述するレニウム触媒を介して)グリセリンに由来するアリルアルコールの少なくとも一部は、米国特許第7,294,602号;第7,271,295号;第7,279,606号;第7,612,241号、第7,655,821号;第7,790,932号および/または第8,779,211号に開示されているようにヒドロホルミル化触媒を介してヒドロホルミル化される。
【0012】
実施形態において、ヒドロホルミル化触媒系は、ロジウム錯物およびジホスフィンリガンド、たとえば米国特許第7,294,602号および第7,279,606号に開示されているように、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン)を含む。実施形態において、ジホスフィンリガンドは、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン(これはトランス−1,2−ビス[(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタンとも呼ぶ)を含む。トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタンは、下記のような化学構造を有する。
【0014】
前記式において、Rはn−アルキル基である。実施形態において、Rは、メチル、エチルまたはプロピールである。実施形態において、ジホスフィンリガンドは、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン)またはトランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジエチル−フェニル)ホスフィノメチル)シクロブタンであることができる。トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタンは、可能な如何なる方法で製造されてもよい。たとえば、トランス−1,2−シクロブタンジメタノール、ビス(トルエンスルホネート)をリチウムジ(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィンと反応させることで製造されることができる。本明細書に記述されたリガンドおよび触媒組成物は、市販中であるか、もしくは文献[Smith, M., & March, J. (2007). Marchs Advanced organic chemistry: Reactions, mechanisms, and structure. Hoboken, NJ: Wiley−Interscience; Regalbuto, J.R. (2007) Handbook of catalyst preparation. Boca Raton: Taylor & Francis; and Kamer, P.C., (2012) Phosphorus(III) Ligands in Homogeneous Catalysis: Design and Synthesis. Wiley]に説明された方法、過程およびプロセスによって製造されることができる。
【0015】
実施形態において、ヒドロホルミル化触媒系は、ロジウム錯物をさらに含む。該ロジウム錯物は、リガンド基に付着されたロジウムを含有することができる。実施形態において、ロジウム錯物は溶媒に可溶性である。ロジウム錯物に付着されたリガンドの選択に関して特に限定はない。たとえば、このようなリガンドは、水素化物、カルボニル、置換もしくは非置換シクロペンタジエニル、2,4−アルカンジオネート、トリアルキルまたはトリアリールホスフィン、ジホスフィン、およびこれらの混合物が挙げられる。実施形態において、ロジウム錯物に付着されたリガンドは、カルボニル、アセチルアセトネート(2,4−ペンタンジオネート)、トリフェニルホスフィン、およびこれらの混合物から選ばれる。ロジウム錯物の例としては、(アセチルアセトナト)ジカルボニールロジウム(I)(ジカルボニール−アセチルアセトナト−ロジウム(I))、ジカルボニールロジウム(I)2,4−ペンタンジオネート、Rh(CO)
2(acac)およびロジウム(I)ジカルボニールアセチルアセトネートとも知らせている)、およびトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムカルボニールヒドリドが挙げられ、これらに限定されない。
【0016】
ロジウム錯物は、[ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)−ホスフィノメチル)シクロブタン]リガンドが、ロジウム錯物の一部を形成するようにヒドロホルミル化反応に用いる前にホスフィン(例えば、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン)とあらかじめ関連付けるか、あるいは別途添加されることができる。しかし、実施形態において、ロジウム錯物はホスフィンリガンド(たとえば、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン)とは別途添加される。実施形態において、ホスフィンリガンド:ロジウム錯物(たとえば、トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン:ロジウム錯物)のモル比は、0.5:1〜5:1の範囲であることができる。
【0017】
実施形態において、ヒドロホルミル化触媒系は、ロジウム錯物および1つ以上のジホスフィンリガンドを含み、ロジウム錯物はRh(CO)
2(acac)を含んでおり、Rh(CO)
2(acac):ジホスフィンリガンドのモル比は、0.1:1〜1:5、0.9:1.5〜1:3、または1:1.9〜1:2.1の範囲である。
【0018】
実施形態において、ヒドロホルミル化反応触媒系は、ヒドロホルミル化触媒溶液に添加される補助リガンドの存在化にさらに遂行されるよう、補助リガンドをさらに含むことができる。実施形態において、補助リガンドはモノホスフィンを含む。
【0019】
実施形態において、モノホスフィン化合物は、下記式で表される三置換ホスフィンである。
(R
1)
3P,
前記式において、R
1は、アルキルまたはアリール基である。脂肪族R
1基は、メチル、エチル、n−ブチル、sec−ブチル、オクチルおよび/またはデシルを含むことができる。芳香族R
1基は、フェニル、トリルおよび/またはナフチルを含むことができる。前記R
1基は、同一でも異なっていてもよい。実施形態において、モノホスフィンは、三置換アリールホスフィンである。実施形態において、モノホスフィンは、トリフェニルホスフィンまたはトリトリルホスフィンである。実施形態において、モノホスフィンはトリフェニルホスフィンである。
【0020】
実施形態において、ヒドロホルミル化触媒系は、ジホスフィンリガンドおよびモノホスフィンを含み、モノホスフィンは、ジホスフィン:モノホスフィンの比が、1:1〜1:3、1:1.2〜1:2、もしくは1:1.4〜1:1.6の範囲にあるように存在する。
【0021】
ヒドロホルミル化は、ヒドロホルミル化反応溶媒の存在下に行われる。通常の溶媒は、ロジウム錯物を溶解させることができ、ヒドロホルミル化ステップで生成されるヒドロキシアルデヒドに反応しないものである。溶媒は、非常に低いか最小限の水溶性を有する有機溶媒を含むことができる。実施形態において、ヒドロホルミル化反応溶媒は、C5−C20脂肪族炭化水素、C6―C20芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、またはこれらの混合物から選ばれる。実施形態において、ヒドロホルミル化反応溶媒は、トルエン、シクロヘキサン、メチルt−ブチルエテール、キシレンまたはこれらの混合物から選ばれるが、これらに限定されない。実施形態において、ヒドロホルミル化反応溶媒は、乾燥脱気トルエンである。
【0022】
ヒドロホルミル化ステップの典型的な反応条件は、分岐状の(‘b’)3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド(HMPA)反応生成物よりは、線状の(‘1’)4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA)の形成を促すように緩和させたものである。実施形態において、ヒドロホルミル化反応条件は、20〜120℃、45〜85℃、50〜80℃、35〜120℃、45〜95℃、または50〜70℃の範囲、もしくは55℃、60℃または65℃以上の温度を含む。実施形態において、ヒドロホルミル化反応条件は、20psig〜600psig、30psig〜400psig、40psig〜300psig、100psig〜400psig、あるいは120psig〜300psigの範囲、若しくは180psig、190psig、または200psig以上の圧力を含む。
【0023】
一酸化炭素:水素(CO:H
2)のモル比は、略1:1であることができるが、その比はかなり変動可能である。実施形態において、合成ガスは0.5:1.5〜1.5:0.5、0.8:1.2〜0.9:1.1、または0.95:1.05〜0.98:1.12、もしくは1:1以上の範囲の一酸化炭素:水素のモル比を含む。
【0024】
COの分圧は5〜100psigの範囲内にあることができる。水素の分圧は、40〜200psigの範囲内にあることができる。実施形態において、ヒドロホルミル化反応は、アリルアルコールの反応の方がたとえば60〜99.9モル%優勢になるまでこれらの条件下で行われ、生成物は、主に4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA)と、一部の分岐状反応生成物とを含む。反応時間の量は重要なものではないかもしれないが、0.5〜4時間の反応時間が好適である。
【0025】
実施形態において、供給物を基準に、ヒドロホルミル化反応溶媒のアリルアルコールの出発濃度は、溶媒中で5〜40重量%の範囲であり;実施形態において、5〜10重量%範囲の供給物を基準に、ヒドロホルミル化反応溶媒のアリルアルコールの出発濃度を用いることができる。
【0026】
実施形態において、アリルアルコールのヒドロホルミル化は液相中のCO濃度([CO]
liq)がヒドロホルミル化中に4mmol/l(0.004M)超を維持するように行われる。[CO]
liqの値は、米国特許第6,225,509号に定義されており、その教示は、本開示に反しない目的で本明細書に参考として組み込まれる。実施形態において、液相水素:一酸化炭素のモル比は、10:1〜1:2、または5:1〜1:2の範囲である。
【0027】
アリルアルコールのヒドロホルミル化生成物への転換率は次のように定義されることができる:
AA転換率=(([AA]
供給物−[AA]
未反応)/[AA]
供給物))×100%% (3)
ここで、[AA]
供給物は、ヒドロホルミル化反応に対する供給物中のアリルアルコールのモル量であり、[AA]
未反応は、ヒドロホルミル化反応生成物における未反応アリルアルコールのモル量である。実施形態において、アリルアルコールのヒドロホルミル化生成物への転換率は、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、または99.8モル%以上である。
【0028】
実施形態において、ヒドロホルミル化生成物中にHBA:HMPAのモル比は、10:1、10.5:1、11:1または11.5:1以上である。実施形態において、ヒドロホルミル化生成物は、n−プロパノール、プロピオンアルデヒド、およびこれらの組み合わせを含むC3生成物から選ばれた1つ以上の副生成物をさらに含む。実施形態において、前記1つ以上の副生成物(すなわち、HBAおよびHMPAの生成物)の合計量は、0.5、0.4または0.3モル%以下である。
【0029】
ヒドロホルミル化生成物の水素化
実施形態において、ヒドロホルミル化ステップに引き続いて、HBA生成物は例えば抽出容器での水抽出によって溶媒およびヒドロホルミル化触媒系から分離される。如何なる水抽出方法でも使用可能であり、ミキサーセットラー、パッキングまたはトレー型抽出カラム、回転ディスクコンタクターなどの任意の手段によって行われてもよく、あるいは前記混合物を水相および有機相に分離するために沈降タンクに送られることもできる。HBAおよび任意のHMPAは、水(水性)相に可溶性状態で維持され、溶媒(有機)相から分離される。
【0030】
ヒドロホルミル化生成物中のHBA(および/または任意のHMPA)は水素化されてBDO(および/またはMPD)を提供することができる。したがって、実施形態において、HBA(および任意のHMPA)反応生成物は、水素化触媒の存在下にHBAを水素化してBDOを生成する追加ステップを経る。水素化は、例えば米国特許第6,969,780号または第5,504,261号に記載されているように、如何なる適切な方法で遂行されてもよく、各々の全文は、本開示の内容に反しない目的で本明細書に組み込まれる。
図1の概略図に示したように、水素は水素化のために反応容器に添加されることができる。このような水素化触媒は、ニッケル、コバルト、ルテニウム、白金、およびパラジウムのような第VIII族金属だけではなく、銅、亜鉛、およびクロム、並びにこれらの混合物および合金を含む。実施形態において、水素化触媒はニッケル触媒から選択される。実施形態において、水素化触媒は、RANEY(登録商標)型ニッケルおよび固定相ニッケル触媒から選択される。
【0031】
実施形態において、水素化反応は60〜200℃、80〜140℃、または95〜105℃範囲の温度で遂行される。実施形態において、水素化は、200〜1000psig、300〜1000psig、または700〜900psig範囲の圧力で行われる。実施形態において、水素化は1〜10時間の範囲の水素化反応時間の間行われる。水素化反応中にBDOおよびMPDが形成される。実施形態において、少量の他の共生成物・副生成物(例えば、n−プロパノール)と一緒に、線状生成物:分岐状生成物(すなわち、BDO:MPD)の高い割合が達成される。実施形態において、水素化生成物のうちBDO:MPDのモル比は10:1、10.5:1、11:1または11.5:1以上である。実施形態において、水素化はn−プロパノールを含むC3生成物から選択された1つ以上の副生成物をさらに含む。実施形態において、1つ以上の副生成物(すなわち、BDOおよびMPD以外の生成物)の合計量は0.5、0.4または0.3モル%以下である。
【0032】
グリセリンからのアリルアルコールの生成
本開示によれば、BDOを生成するためにヒドロホルミル化されるアリルアルコールの少なくとも一部は、グリセリン(たとえば、バイオ燃料、一例としてバイオディーセルに由来するバイオグリセリン、生成物および/または通常の石油化学プロセスに由来する非バイオグリセリンを含む任意の供給源から生成または由来するグリセリン)から生成または由来する。実施形態において、BDOを生成するために本開示によってヒドロホルミル化されるアリルアルコールの少なくとも一部はバイオグリセリンから生成または由来し、よって、本明細書では「バイオアリルアルコール」と見なされ、後で生成されたBDOは、「バイオBDO」と見なされることができる。実施形態において、本開示によってBDOに転換されたアリルアルコールの少なくとも20、30、40、50、60、70、80または90モル%は、バイオグリセリンに由来するものである。実施形態において、本開示によってBDOに転換されたアリルアルコールの少なくとも20、30、40、50、60、70、80または90モル%は、非バイオグリセリンに由来するものである。
【0033】
本開示の方法は、グリセリン、例えばバイオおよび/または非バイオグリセリンからアリルアルコールを含有する供給物中においてアリルアルコールの少なくとも一部を生成することをさらに含むことができる。アリルアルコールは如何なる操作可能な方法によって任意の作用可能な触媒を用いてグリセリンから生成されることができる。グリセリンからのアリルアルコールの製造は、任意の操作可能な方法論、たとえば、(i)グリセリンをアクロレインから脱水する第1のステップと、アクロレインをアリルアルコールに水素化する第2のステップと、を含む二段階の反応メカニズム、(ii)アクロレインを介することなく、グリセリンからのアリルアルコールの直接製造、および/または(iii)触媒を使用せずにグリセリンからのアリルアルコールの製造によって行われることができる。アリルアルコールの様々な報告された製造方法の課題は、高価の触媒(たとえば、メチルトリオキソレニウム)、高レベルの不純物(たとえば、オクテン等の副生成物)、および/または低い収率のアリルアルコールが挙げられる。たとえば、グリセリンのアリルアルコール(AA)への転換は、Shiramizu and Toste 2012 (Angew. Chem. Int. Ed. 2012, Vol. 51, pp. 8082−8086); ); Arceo, Marsden, Bergman, and Ellman 2009 (Chemical Communications, 2009, 23, 3357); Yi, Liu, and Abu−Omar 2012 (ChemSusChem, 2012, 5, 1401)に報告されている。
【0034】
実施形態において、本開示によってヒドロホルミル化されたアリルアルコールの少なくとも一部はたとえばTosteらによって記述されているように、グリセリン(たとえばバイオおよび/非バイオグリセリン)をMTO触媒と接触させることにより生成される。かかる実施形態において、メチルトリオキソレニウム(MTO)は、過量(10当量以上)の3−オクタノール等の第二級アルコールが還元剤および溶媒として使用される反応に用いられることができ、このとき、反応は170℃を超える温度で密閉容器内で遂行する。酸化的脱水素反応によって生成される3−オクタノンの他に、副生成物のオクテン異性体が脱水反応の結果で形成されることができる。Tosteらは触媒としてMTOを使用し、溶媒として3−オクタノールを使用すれば、グリセリンを90%の選択率でAAに転換できると報告している。しかし、生成されたAAの各モルに対して1.1モルの3−オクタノールもオクテン異性体に転換された。
【0035】
実施形態において、本開示によってヒドロホルミル化されたアリルアルコール(の少なくとも一部)は、例えばArceo、Marsden、Bergman、およびEllmanによって記述されているようにグリセリン(たとえば、バイオおよび/または非バイオグリセリン)のアルデヒドアルコールへのギ酸媒介転換を用いて製造される。
【0036】
実施形態において、本開示によってヒドロホルミル化されたアリルアルコール(の少なくとも一部)は、
図2に示したように、グリセリン(たとえば、バイオおよび/または非バイオグリセリン)を触媒の存在下に所望の温度(たとえば、140℃を超える温度)に露出させてアリルアルコールを含む生成物を生成することで製造される。本開示によってヒドロホルミル化されたアリルアルコールの少なくとも一部または全体が生成されることができ、および/または本開示に反しない目的のためにその全文が本明細書に参考として組み込まれる米国特許出願第62/635,364号に記載されているアリルアルコールを製造するための方法および触媒の生成物であることができる。実施形態において、用いられる触媒は、二酸化レニウム(レニウム(IV)酸化物またはReO
2ともいう)および/または三酸化レニウム(レニウム(VI)酸化物またはReO
3ともいう)を含み、ヒドロホルミル化されたアリルアルコールの少なくとも一部は、三酸化レニウム、二酸化レニウムまたはこれらの組み合わせを含む触媒の存在下にグリセリン(たとえば、バイオおよび/または非バイオグリセリン)を転換条件に適用してアリルアルコールを含む生成物を生成することで製造される。
【0037】
実施形態において、二酸化レニウムおよび/または三酸化レニウムを含む触媒は、グリセリン総モルの0.5〜10モル%、2.5〜7.5モル%、3〜5モル%、4〜5モル%、または4.5〜5モル%の範囲内に存在する。実施形態において、二酸化レニウムおよび/または三酸化レニウムを含む触媒は、2、3、4または5モル%以下のレベルで存在する。
【0038】
化学式HOCH
2(CHOH)CH
2OHで表されるグリセリンも、トリヒドロキシプロパンまたはグリセロールと称される。本明細書に開示された触媒および方法によってアリルアルコールへ転換されるグリセリンの純度が本開示の範囲を限定するわけではないが、反応副生成物の生成を減少させるための実施形態では80重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上であることができる。実施形態において、グリセリンは植物性油、アルコールのエステル交換反応によってバイオディーゼルの合成から副生成物として得られる。このようなグリセリンは、バイオグリセリンまたは粗グリセリンと呼ばれ、これによって製造されたアリルアルコールは「バイオアリルアルコール」として見なされることができる。本明細書で使用された「バイオグリセロール」、「バイオグリセリン」、「粗グリセリン(crude glycerol)」は、バイオディーゼル製造の副生成物として得られたグリセリンを意味し、「バイオアリルアルコール」はバイオグリセリルから抽出したアリルアルコールを意味する。実施形態において、本明細書に開示の方法によってアリルアルコール(および後でBDO)に転換されたグリセリンは、バイオグリセリンを含有し、生成物はバイオアリルアルコールを含有し;実施形態において、本明細書に開示の方法によってアリルアルコール(および後でBDO)に転換されたグリセリンは、非バイオグリセリンを含有し、生成物は、非バイオアリルアルコールを含有し、実施形態において、本明細書に開示の方法によってアリルアルコール(および後でBDO)に転換されたグリセリンは、バイオおよび非バイオグリセリンを含有し、生成物は、バイオアリルアルコールおよび非バイオアリルアルコールを含有する。
【0039】
本開示の実施形態に係るグリセリンのアリルアルコールへの転換は、液相反応であってもよく、転換条件は140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃または200℃を超える反応温度を含むことができる。反応は大気圧下で行われることができ、反応温度は触媒(たとえば、ReO
2および/またはReO
3触媒)の存在下に30分以内に動作温度まで増加されることができる。
【0040】
グリセリンのアリルアルコールへの転換は、溶媒の存在下または不在下に行われることができる。実施形態において、グリセリンは溶媒の存在下に反応温度に曝される。実施形態において、触媒系はReO
3および溶媒を含み;実施形態において、触媒系はReO
2および溶媒を含み;実施形態において、触媒系はReO
2および/またはReO
3、並びに溶媒を含む。実施形態において、溶媒は第二級アルコールを含む。実施形態において、溶媒は3−オクタノールを含む。溶媒を含む実施形態において、溶媒:グリセリンの初期モル比は、30〜1、20〜1、15〜1、5〜1、1〜1の範囲であるか、15:1、10:1または6:1以下であることができる。
【0041】
アリルアルコール(AA)選択率は、次のように定義されることができる。
AA選択率=(([AA]
生成)/([グリセリン]
供給物−[グリセリン]
未反応)))×100%% (1)
ここで、(([AA]
生成とは、生成されたアリルアルコールのモル量であり、[グリセリン]
供給物とは、反応に対するグリセリン供給物中のグリセリンのモル量であり、[グリセリン]
未反応とは、反応生成物中の未反応グリセリンのモル量である。アリルアルコールに対する選択率は、実施形態では50%、60%、70%、80%、または90%以上であることができる。
【0042】
グリセリン転換率は、次のように定義されることができる。
グリセリン転換率=(([グリセリン]
供給物)−[グリセリン]
未反応/([グリセリン]
供給物))×100% (2)
ここで、[グリセリン]
供給物とは、反応に対する供給物中のグリセリンのモル量であり、[グリセリン]
未反応とは、反応生成物中の未反応グリセリンのモル量である。グリセリン転換率は、実施形態では50、60、70、75または80モル%以上、または50〜100モル%、60〜100モル%、70〜100モル%、70〜90モル%、または80〜90モル%の範囲であることができる。
【0043】
アリルアルコールの収率(AA選択率で掛け算したグリセリン転換率によって定義される)は、実施形態では60%、70%、80%、85%または90%以上であることができる。
【0044】
前述のごとく、Tosteらは、3−オクタノール等の過量の第二級アルコールが溶媒として使用される反応において、メチルトリオキソレニウム(MTO)の使用によって、脱水反応の結果として形成された副生成物のオクテン異性体と一緒に、酸化的脱水素反応に起因する3−オクタノンの生成をもたらしたと報告した。生成されたアリルアルコールの各モルに対して、1モルの3―オクタノールは、所望しないオクテンオクテン異性体に転換された。オクテン異性体の形成は、アリルアルコール生成物(またはさらなる下流生成物)からのこれらのオクテン異性体の除去に起因して、MTO/3−オクタノール触媒系を用いたアリルアルコールの製造コストを高くすることができる。
【0045】
前記したレニウム触媒および方法の利用は、3−オクタノールを使用する実施形態では、メチルトリオキソレニウム(MTO)触媒を用いる同一の方法に比して減少されたモル量のオクテン異性体をさらに含むアリルアルコールを含有する生成物を提供する。例えば、実施形態では、アリルアルコールを含有する生成物は、生成されたアリルアルコール1モル当たり1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、0.11または0.10モル未満のオクテン異性体を含む。
【0046】
溶媒として3−オクタノールを使用する場合、アリルアルコールを含有する生成物は、副生成物として3−オクタノンをさらに含むことができる。これらの実施形態において、アリルアルコールを含有する生成物中の3−オクタノン副生成物:アリルアルコールのモル比は、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1または1.0:1以下であることができる。実施形態において、3−オクタノンは、アリルアルコールを含有する生成物から分離される。分離された3−オクタノンの少なくとも一部は、水素化されて3−オクタノールを提供することができ、それを溶媒・還元剤として使用するために再循環され得る。3−オクタノンは、再循環および/または再使用のために3−オクタノールに容易に再度転換できるため該3−オクタノンの生成は、オクテン異性体の生成よりも好ましく、これはアリルアルコールを含有する生成物から分離できるが、主に燃料に用いられる。
【0047】
本開示によってヒドロホルミル化されたアリルアルコールは、任意の操作可能な単一または複数の容器または単一または複数の反応器を用いて製造されることができる。例えば、当業者が使用するバッチ式反応器、連続攪拌タンク反応器および栓流反応器から選ばれた任意の1つ以上を使用でき、これらの種類および組み合わせはこれらに限定されない。
【0048】
特徴/潜在的な利益
本明細書に開示の方法は、グリセリン(バイオおよび/または非バイオグリセリン)に由来するアリルアルコールからBDOを生成しうるようにし;実施形態において、本開示によってBDOが生成されるアリルアルコールの少なくとも一部はバイオグリセリンに由来するものである。実施形態において、アリルアルコールはレニウム触媒を用いてグリセリンをアリルアルコールに転換させることにより生成され、および/またはその生成物である。
【0049】
以下の実施例は、単に本開示のシステムおよび方法を例示する。当業者は本開示の精神および特許請求の範囲内で多様な変形が可能であることを認識するはずである。
【実施例】
【0050】
実施例1:グリセリンに由来するバイオアリルアルコールの触媒的ヒドロホルミル化
グリセリンから生成されたアリルアルコール(AA)を用いたヒドロホルミル化実験は、ロジウムの量によって決められる化学量論で無水トルエン中で行った。典型的な実験において、ロジウム錯物Rh(CO)
2(acac)(1当量)を、乾燥脱気トルエン(15g)およびジホスフィンリガンド;トランス−1,2−ビス(ビス(3,5−ジ−n−アルキルフェニル)ホスフィノメチル)シクロブタン)(2当量)の溶液に添加した。続いて、この溶液を50mLのParrオートクレーブに移した。続いて、オートクレーブを1:1CO・H
2混合物で3回フラッシングし、180psigとなるように押圧し、オートクレーブを指定の温度、たとえば65℃となるまで攪拌しながら加熱した。所望の温度が少なくとも5分間安定に達成されれば、低級オクテン異性体の存在下にアリルアルコール溶液(35mL)を注入し、CO:H
2ガス混合物を用いてオートクレーブの圧力を200psigに増加させた。続いて、反応器を一定した200psigの圧力で維持させ、追加のガス吸収がなくなるまで経時的にガスの吸収をモニタリングした。反応器を冷却および減圧させ、生成された溶液をガスクロマトグラフィで分析を行い、HBA、HMPAおよびC3生成物(n−プロパノールおよびプロピオンアルデヒド)を含む反応生成物を決定した。グリセリンに由来するバイオAAをヒドロホルミル化反応の遂行1および2に用いた。遂行1および2の性能を非バイオアリルアルコール(すなわち、SIGMA ALDRICHから購入した標準アリルアルコール)の性能とともに表1に示した。ヒドロホルミル化の結果は、バイオAAが規則的(つまり、非バイオ)アリルアルコールと実質的に同一に作用し、オクテン等の不純物はヒドロホルミル化反応に実質的に影響を及ぼさなかったことを示している。
【0051】
【表1】
【0052】
追加の開示
上に開示された特定の実施形態はあくまで例証であり、本開示は、本教示の利益を享受する当業者には明らかな、相違するけれども等価の方法で修正されおよび実施可能である。さらに、ここに示した構造または設計の詳細に対して、以下の請求項に記載された内容以外のいかなる限定も意図するものではない。それゆえ、上に開示された特定の例示的な実施形態は変更または修正され得、およびそのような変更はすべて本開示の範囲および精神の中にあると見なされることが明白である。実施形態の諸特徴の組み合わせ、統合、および/または省略から生ずる代替実施形態も、該開示の範囲内である。組成物および方法は、様々な成分またはステップを「有する(having)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、または「含む(including)」という広義の用語で記載されているが、また「実質的に…からなる」(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」という用語で記載されることもできる。請求項における任意の要素に対して「選択的に」という用語の使用は、該要素が必要であること、あるいは該要素が必要でないことを意味し、これらの両方の選択肢は該請求項の範囲内にある。
【0053】
本開示の数値および範囲は多少変化し得る。下限値と上限値のある数値範囲が開示された場合、任意の数値および任意のその範囲内に収まる範囲は明確に開示される。特に、本開示のすべての値の範囲(「約a〜約b」、または等価の「約a〜b」、または等価の「約a〜b」の形式)は、より広い値の範囲に包含されるすべての数字と範囲を規定すると理解されるべきである。また、請求項中の用語は、特許権者によって別途明示的および明確に定義されない限り、一般的かつ通常の意味を有する。さらに、請求項中で使用された不定冠詞「a」、「an」は、本開示では紹介される1つ以上の要素を意味すると定義される。本明細書と1つ以上の特許または他の文書とにおいて単語または用語の使用において、任意の矛盾がある場合、本明細書に整合する定義を採用すべきである。
【0054】
本明細書に開示の実施形態は以下を含む:
【0055】
A:グリセリンに由来するアリルアルコールを含有する供給物中のアリルアルコールを合成ガスでヒドロホルミル化して、4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA)および3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド(HMPA)を含有するヒドロホルミル化生成物を生成することと、該ヒドロホルミル化生成物の少なくとも一部の水素化によってBDOおよび1,3−メチルプロパンジオール(MPD)を含有する1,4−ブタンジオール(BDO)生成物を生成することと、を含む方法。
【0056】
B:バイオグリセリンに由来するバイオアリルアルコールを含有する供給物中のアリルアルコールを合成ガスでヒドロホルミル化して、4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA)および3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド(HMPA)を含有するヒドロホルミル化生成物を生成することと、該ヒドロホルミル化生成物の少なくとも一部の水素化によってBDOおよび1,3−メチルプロパンジオール(MPD)を含有する1,4−ブタンジオール(BDO)生成物を生成することと、を含む方法。
【0057】
C:バイオグリセリンに由来するバイオアリルアルコールを含有する供給物中のバイオアリルアルコールを合成ガスでヒドロホルミル化して、4−ヒドロキシブチルアルデヒド(HBA)および3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド(HMPA)を含有するヒドロホルミル化生成物を生成することと、ヒドロホルミル化生成物の少なくとも一部の水素化によってBDOおよび1,3−メチルプロパンジオール(MPD)を含有する1,4−ブタンジオール(BDO)生成物を生成することと、バイオアリルアルコールをヒドロホルミル化する前に、BDO生成物から、若しくはその両方から、バイオアリルアルコールの副生成物を除去することと、を含む方法。
【0058】
実施形態A、B、およびCの各々は、以下の追加の構成要素のうち1つ以上を有し得る:
【0059】
構成要素1:前記供給物はバイオ系グリセリンに由来するバイオアリルアルコール、非バイオ系グリセリンに由来する非バイオアリルアルコール、あるいはこれらの組み合わせを含む。構成要素2:アリルアルコールを含有する前記供給物はアクロレイン、乳酸、オクテン異性体、またはこれらの組み合わせをさらに含み、前記方法は、アリルアルコールのヒドロホルミル化前に前記供給物から、前記BDO生成物から、またはその両方からアクロレイン、乳酸、オクテン異性体或いはこれらの組み合わせを除去することをさらに含む。構成要素3:ヒドロホルミル化はロジウム触媒を用いて、無水トルエン中で、ホスフィンリガンド、もしくは両方の存在下に行われる。構成要素4:前記ヒドロホルミル化は、Rh(CO)
2(acac)および1つ以上のホスフィンリガンドを含むロジウム触媒を含んでなる触媒溶液の存在下に行われる。構成要素5:前記1つ以上のホスフィンリガンドは、ジホスフィンを含み、Rh(CO)
2(acac):ジホスフィンリガンドのモル比は、0.1:1〜1:5、0.9:1.5〜1:3または1:1.9〜1:2.1である。構成要素6:前記ジホスフィンリガンドは、トランス−1,2−ビス[ジ(3,5ージメチルフェニル)ホスフィノメチル]シクロブタンを含む。構成要素7:前記ヒドロホルミル化は、触媒溶液に添加される補助リガンドの存在下に追加で行われる。構成要素8:前記補助リガンドは、モノホスフィンを含む。構成要素9:前記モノホスフィンは、前記ジホスフィン:前記モノホスフィンの比が1:1〜1:3、1:1.2〜1:2、または1.4:1.6の範囲にあるように存在する。構成要素10:前記モノホスフィンは、トリフェニルホスフィンを含む。構成要素11:前記ヒドロホルミル化は、20psig〜600psig、100psig〜400psig、あるいは120psig〜300psigの範囲、あるいは180psig、190psig、または200psig以上の圧力および、35℃〜120℃、45℃〜95℃の範囲、または50℃〜70℃、または55℃、60℃または65℃以上の温度で行われる。構成要素12:AA転換率=(([AA]
供給物−[AA]
未反応)/([AA]
供給物))×100%で定義されるアリルアルコールのヒドロホルミル化生成物への転換率は、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、または99.8モル%以上である。構成要素13:ヒドロホルミル化生成物中のHBA:HMPAのモル比は10、10.5、11または11.5以上である。構成要素14:前記ヒドロホルミル化生成物は、n−プロパノール、プロピオンアルデヒドおよびこれらの組み合わせを含むC3生成物から選択された1つ以上の副生成物をさらに含み、前記1つ以上の副生成物の合計量は0.5、0.4または0.3モル%以下である。構成要素15:合成ガスは、0.5:1.5〜1.5:0.5、0.8:1.2〜0.9:1.1または0.95:1.05〜0.98:1.12の範囲、若しくは1:1以上の一酸化炭素:水素のモル比を含む。構成要素16:触媒の存在下、グリセリンを140℃以上の温度に曝してアリルアルコールを含有する生成物を生成することで、グリセリンに由来するアリルアルコールを含有する供給物中でアリルアルコールの少なくとも一部を生成することをさらに含む。構成要素17:前記触媒は、三酸化レニウム、二酸化レニウム、メチルトリオキソレニウム(MTO)またはこれらの組み合わせを含む。構成要素18:前記グリセリンは、溶媒の存在下に140℃より高い温度に曝される。構成要素19:前記溶媒は第二級アルコールを含む。構成要素20:前記第二級アルコールは、3−オクタノールを含む。構成要素21:前記触媒は、三酸化レニウム、二酸化レニウムまたはこれらの組み合わせを含み、アリルアルコールを含有する前記生成物は、メチルトリオキソレニウム(MTO)触媒を使用する同一の方法により減少されたモル量のオクテン異性体を含む。構成要素22:前記減少されたモル量のオクテン異性体は、生成されたアリルアルコール1モル当たり1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または0.2、0.15、0.11または0.10モル未満のオクテン異性体を含む。構成要素23:AA選択率=(([AA]
生成)/([グリセリン]
供給物−[グリセリン]
未反応)))×100%で定義されるアリルアルコール(AA)の選択率は、50%、60%、70%、80%または90%以上である。構成要素24:アリルアルコールを含有する前記生成物は3−オクタノン副生成物をさらに含む。構成要素25:アリルアルコールを含有する生成物から3−オクタノンを分離することと、前記分離された3−オクタノンの少なくとも一部を水素化して3−オクタノールを提供することと、をさらに含む。構成要素26:アリルアルコールを含有する生成物中の3−オクタノン副生成物:アリルアルコールのモル比は、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1または1.0以下である。構成要素27:前記溶媒:グリセリンの初期モル比は、30〜1、20〜1、15〜1、5〜1、1〜1の範囲、または6〜1以下である。構成要素28:前記触媒は、0.5〜10、2.5〜7.5、3〜5、4〜5、または4.5〜5モル比の範囲、もしくは2、3、4または5モル%以下で存在する。構成要素29:グリセリン転換率=(([グリセリン]
供給物)−[グリセリン]
未反応/([グリセリン]
供給物))×100%で定義されるグリセリン転換率は、50、60、70、75または80モル%以上、もしくは50〜100、60〜100、70〜100、70〜90または80〜90モル%の範囲である。構成要素30:前記グリセリンの少なくとも一部は、バイオグリセリンを含み、アリルアルコールを含有する生成物はバイオアリルアルコールを含み、バイオアリルアルコールを含有する前記生成物は、アクロレイン、乳酸、オクテン異性体またはこれらの組み合わせをさらに含む。構成要素31:前記アリルアルコールのヒドロホルミル化前にアリルアルコールを含有する生成物から、BDO生成物から、またはその両方からアクロレイン、乳酸、オクテン異性体若しくはこれらの組み合わせを除去することをさらに含む。構成要素32:前記バイオグリセリンは、溶媒の存在下に140℃より高い温度に曝される。構成要素33:前記副生成物は、アクロレイン、乳酸、オクテン異性体またはこれらの組み合わせを含む。構成要素34:触媒の存在下、バイオグリセリンを140℃を超える温度に曝してバイオアリルアルコールを含有する生成物を生成することで前記供給物中のバイオアリルアルコールの少なくとも一部を生成することをさらに含む。構成要素35:前記バイオグリセリンは、溶媒の存在下に140℃より高い温度に曝される。
【0060】
以上、幾つかの実施形態が提示されて説明されたが、その変形が本開示の教示を逸脱することなく当業者によって可能である。
【0061】
他の多数の修正、均等物、および代替物は、前記開示が十分に理解できれば、当業者にとって自明になるであろう。以下の添付の特許請求の範囲は、適切な場合、そのような全ての修正、均等物、および代替物を包含することを意図することを理解されたい。従って、保護の範囲は上述した説明により限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は該特許請求の範囲の主題の均等物をすべて包含する。