【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのトイレシステム1の構成の概略を示す構成図である。トイレシステム1は、住宅に設置される住宅用トイレシステムであり、図示するように、ユーザにより携帯される携帯端末40と、無線ネットワークを介して携帯端末40と通信可能なトイレ装置10とを備える。
【0016】
トイレ装置10は、便器11の上面に設置された便座装置20を備える。便座装置20は、便座装置本体30と、便座装置本体30に対して開閉可能に支持された便座22および便蓋24とを備え、図示しない噴射ノズルから洗浄水を噴射することにより使用者の局部の洗浄可能な温水洗浄便座として構成される。
【0017】
便座装置本体30は、洗浄水を予め加温するための温水洗浄部31と、便座22の上面(着座面)を加温するための便座暖房部32とを有する。温水洗浄部31は、図示しないが、噴射ノズルの上流で洗浄水を貯留する水タンクと、水タンクに内蔵される温水ヒータとを備え、温水ヒータへの通電を制御することにより水タンク内の洗浄水が目標温度となるよう加温する。便座暖房部32は、便座22に内蔵された便座ヒータを備え、便座ヒータへの通電を制御することにより便座22の上面が目標温度となるよう加温する。
【0018】
また、便座装置本体30は、全体の制御を司る制御部34と、データを記憶する記憶部35と、所定の通信規格による通信が可能な通信部36と、携帯端末40から受信した電波の電波強度(RSSI)を測定する電波強度測定部37と、時刻の計時を行なうリアルタイムクロック(RTC)38と、を備える。記憶部35には、ユーザが所持する携帯端末40の識別情報(識別ID)とユーザが希望する利用設定とが対応付けられた設定情報35aが記憶されている。通信部36は、例えば、所定の通信規格としてBluetooth(登録商標)を用いて携帯端末40と無線通信が可能な無線通信モジュールであり、電波到達距離が最大100mのClass1に対応する。なお、通信部36は、便座装置本体30に内蔵されておらず、その近傍に設置されて便座装置本体30に接続されてもよい。電波強度測定部37は、上述の無線通信モジュールに内蔵するセンサを用いて携帯端末40から受信した電波の電波強度RSSIをリアルタイムに測定する。
【0019】
さらに、便座装置本体30は、図示しないが、トイレ室へのユーザの入室を検知する入室検知センサや、ユーザの便座22への着座を検知する着座検知センサなども備えており、各種センサにより検知された信号は、制御部34に入力されるようになっている。
【0020】
携帯端末40は、スマートフォンなどの携帯可能な通信端末であり、
図1に示すように、全体の制御を司る制御部44と、データを記憶する記憶部45と、所定の通信規格(本実施例ではBluetooth(登録商標))による通信が可能な通信部46と、各種情報を表示する表示部48とを備える。記憶部45には、各種アプリケーションプログラム(処理プログラム)45aやデータファイル、携帯端末40を識別するための識別情報(識別ID)45bなどが記憶されている。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のトイレシステム1の動作、特に、トイレ装置10(便座装置20)の制御モードを選択する処理について説明する。
図2は、制御部34により実行されるトイレ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
トイレ制御ルーチンが実行されると、制御部34は、まず、携帯端末40からの電波受信があったか否かを判定する(S100)。制御部34は、電波受信があったと判定すると、電波強度測定部37により測定された電波強度RSSIやリアルタイムクロック38により計時された現在時刻Tを入力し(S110)、入力した電波強度RSSIに基づいて電波受信に係る携帯端末40までの距離Lを推定する(S120)。S120の処理では、例えば、電波強度RSSIと距離Lとの関係を実験などによって予め求めて距離推定用マップとして記憶部35に記憶しておき、電波強度RSSIが与えられると、マップから対応する距離Lを導出するものとした。距離推定用マップの一例を
図3に示す。電波強度RSSIは自由空間において通信距離の二乗に比例して減衰することから、距離推定用マップは、図示するように、電波強度RSSIが弱いほど距離Lの値が大きくなり、電波強度RSSIが強いほど距離Lの値が小さくなるように定められる。
【0023】
次に、制御部34は、所定時間の間に距離Lに変化がみられないか否か(S130)、現在時刻Tが所定時間帯(例えば、23時から6時までの深夜帯)にあるか否か(S140)、をそれぞれ判定する。S130,S140の処理は、ユーザの就寝時間帯において所定時間の間、携帯端末40が同じ場所にとどまっているか否かによって、ユーザが就寝中であるか否かを判定するものである。なお、S100で電波受信があった携帯端末40が複数存在する場合、S130では、複数の携帯端末40に対してそれぞれ推定される距離の全てに変化がみられないか否かを判定する。また、所定時間帯(就寝時間帯)は、ユーザが任意に変更することもできる。
【0024】
制御部34は、所定時間の間に距離Lが変化したと判定するか、現在時刻Tが所定時間帯にないと判定すると、ユーザが就寝中でないと判断し、距離Lが閾値Lref1(例えば、5m)未満であるか否か(S150)、閾値Lref1よりも大きい閾値Lref2(例えば、10m)未満であるか否か(S160)、をそれぞれ判定する。なお、S100で電波受信があった携帯端末40が複数存在する場合、S150、S160の判定で用いる距離Lは、複数の携帯端末40に対してそれぞれ推定される距離のうち最も小さいもの(最も近いもの)が採用される。距離Lが閾値Lref1未満であると判定すると、便座装置20の制御モードとして通常モードを設定して(S170)、本ルーチンを終了する。また、距離Lが閾値Lref1以上で且つ閾値Lref2未満であると判定すると、制御モードとして第1省電力モードを設定して(S180)、本ルーチンを終了する。さらに、距離Lが閾値Lref2以上であると判定すると、制御モードとして第2省電力モードを設定して(S190)、本ルーチンを終了する。ここで、第1省電力モードは、例えば、洗浄水の目標温度や便座の目標温度を通常モードよりも低い温度に設定して温水ヒータや便座ヒータへの通電を制御するモードであり、通常モードよりも待機時の消費電力が低くなる。第2省電力モードは、例えば、温水ヒータや便座ヒータの通電を停止するモードであり、第1省電力モードよりも待機時の消費電力が低くなる。ユーザがトイレ装置10を使用する使用可能性は、距離Lが大きいほど、即ちユーザが所持する携帯端末40がトイレ装置10から離れているほど、低いと考えられる。このため、距離Lが大きいほど、消費電力が低い制御モードを選択することにより、トイレ装置10の使用時における使い勝手や快適性を確保しながら、待機時の消費電力をより低減させることができる。
【0025】
制御部34は、S130,S140で所定時間の間、距離Lに変化がみられず且つ現在時刻Tが所定時間帯にあると判定すると、ユーザが就寝中であると判断し、制御モードを第2省電力モードに設定して(S190)、本ルーチンを終了する。また、制御部34は、S100で携帯端末40からの電波受信がなかったと判定すると、通信可能エリアに携帯端末40がなくユーザが外出中であると判断し、制御モードを第2省電力モードに設定して(S190)、本ルーチンを終了する。このように、ユーザがトイレ装置10を使用する可能性が極めて低いと考えられる場面において、制御モードとして第2省電力モードを設定することにより、消費電力を大幅に低減させることができる。
【0026】
次に、便座装置20の設定をユーザの希望する設定に変更する際の処理について説明する。
図4は、制御部34により実行されるトイレ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、入室検知センサによりユーザのトイレ室への入室が検知されたときに実行される。
【0027】
トイレ設定ルーチンが実行されると、制御部34は、まず、トイレ室内の携帯端末40(距離Lが所定距離以内の携帯端末40)との通信により識別IDが受信されたか否かを判定する(S200)。識別IDを受信していないと判定すると、そのまま本ルーチンを終了する。一方、識別IDを受信したと判定すると、記憶部35に記憶されている設定情報35aから受信した識別IDに対応する設定情報を取得し(S210)、取得した設定情報に基づく設定をトイレ装置10(便座装置20)に反映させる(S220)。
図5は、設定情報35aの一例を示す説明図である。設定情報35aには、図示するように、洗浄水温や洗浄位置、水勢設定、便座温度などが含まれ、携帯端末40の識別IDと対応付けられた状態で記憶部35に記憶されている。記憶部35への設定情報35aの登録は、例えば、ユーザが携帯端末40を操作して各項目ごとに設定情報を入力し、入力した設定情報を識別IDと共に便座装置20に送信することにより行なうことができる。これにより、ユーザは、希望する設定でトイレ装置10を使用することができる。
【0028】
次に、制御部34は、ユーザ操作による設定変更があったか否かを判定する(S230)。なお、設定変更は、トイレ装置10が備える図示しないリモコン装置をユーザが操作することにより行なうことができる。設定変更がないと判定すると、S250の処理に進み、設定変更があったと判定すると、設定情報テーブルのうち設定変更がなされた設定情報を、変更後の内容に更新して(S240)、S250の処理に進む。これにより、同一ユーザが次にトイレ装置10を使用する際には、S200〜S220の処理によって変更後の設定を反映することができるため、使い勝手や快適性を向上させることができる。そして、入室検知センサによりユーザの退室が検知されたか否かを判定し(S250)、退室が検知されていないと判定すると、S230に戻り、退室が検知されたと判定すると、本ルーチンを終了する。
【0029】
以上説明した本実施例のトイレシステム1によれば、携帯端末40との無線通信の際の電波強度RSSIを測定し、測定した電波強度RSSIに基づいて通常モードと省電力モード(第1省電力モード,第2省電力モード)とを含む複数の制御モードの何れかを選択してトイレ装置10(便座装置20)を制御する。電波強度RSSIは携帯端末40とトイレ装置10との距離Lと相関関係を有するから、電波強度RSSIに応じて制御モードを選択することは、携帯端末40とトイレ装置10との距離Lに応じて制御モードを選択するものといえる。このため、電波強度RSSIに基づいて、距離Lが大きいときに小さいときよりも、待機時の消費電力が少ない制御モード(省電力モード)を選択することで、トイレの使い勝手や快適性を確保しつつ、待機時の消費電力を低減させることができる。
【0030】
また、本実施例のトイレシステム1は、現在時刻Tが所定時間帯にあり且つ電波強度RSSIが変化していないとみなせるときに制御モードとして省電力モード(第2省電力モード)を選択する。これにより、ユーザの就寝を判断して省電力モードを選択することで、消費電力をさらに低減させることができる。
【0031】
さらに、本実施例のトイレシステム1は、携帯端末40から電波受信ができないときに制御モードとして省電力モード(第2省電力モード)を選択する。これにより、ユーザの外出を判断して省電力モードを選択することで、消費電力を一層低減させることができる。
【0032】
実施例では、携帯端末40との無線通信にBluetooth(登録商標)を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばWi−Fi(登録商標)などの他の通信規格を用いて無線通信してもよい。
【0033】
実施例では、制御モードとして、通常モードの他に、第1省電力モードとこの第1省電力モードよりも消費電力が低い第2省電力モードとを有するものとしたが、省電力モードを1つだけ有するものとしてもよいし、省電力モードを3つ以上有するものとしてもよい。省電力モードを1つだけ有する場合、
図2のトイレ制御ルーチンを以下のように変更してもよい。即ち、S160の処理を省略し、S100で電波受信がないと判定した場合とS130,S140でユーザが就寝中であると判断した場合とS150で距離Lが閾値Lref1以上であると判定した場合とに制御モードとして第1省電力モードを設定するものとしてもよい。また、省電力モードとして、第1省電力モードと第1省電力モードよりも消費電力が低い第2省電力モードと第2省電力モードよりも消費電力が低い第3省電力モードとを有する場合、
図2のトイレ制御ルーチンを以下のように変更してもよい。即ち、S170で距離Lが閾値Lref2以上のときには更に距離Lが閾値Lref2よりも大きい閾値Lref3以上か否かを判定し、距離Lが閾値Lref3未満のときには第2省電力モードを選択し、距離Lが閾値Lref3以上のときには第3省電力モードを選択してもよい。また、S130,S140でユーザが就寝中であると判断すると、第2省電力モードを選択し、S100で電波受信がないと判定すると、第3省電力モードを選択してもよい。
【0034】
実施例では、電波受信がないと判定した場合に第2省電力モードを選択するものとしたが、通常モードを選択してもよい。
【0035】
実施例では、所定時間の間、距離Lに変化がみられないことと現在時刻Tが所定時間帯にあることの判定によりユーザが就寝中か否かを判断して第2省電力モードを選択するものとしたが、こうした判定を省略してもよい。
【0036】
実施例では、便座装置20は、時刻の計時を行なうリアルタイムクロック38を備えるものとしたが、こうしたリアルタイムクロック38を備えず、携帯端末40から時刻情報を取得するものとしてもよい。
【0037】
実施例では、トイレ設定ルーチンにおいて、入室検知センサによりユーザのトイレ室への入室と退室とを検知するものとしたが、これに代えて、着座センサによりユーザの便座22への着座と脱座とを検知するものとしてもよい。
【0038】
実施例では、ユーザが希望する設定を反映するためのトイレ設定ルーチンを実行するものとしたが、こうしたトイレ設定ルーチンを実行しないものとしてもよい。
【0039】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、トイレ装置10が「トイレ装置」に相当し、通信部36が「無線通信装置」に相当し、制御部34が「制御装置」に相当する。また、記憶部35が「記憶装置」に相当し、温水洗浄部31や便座暖房部32が「トイレ装置が有する機器」に相当する。
【0040】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。