特許第6869463号(P6869463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869463
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】燃料電池セルの接続部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20210426BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20210426BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20210426BHJP
   H01M 8/025 20160101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01M8/0202
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102B
   H01M8/0247
   H01M8/025
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-40287(P2017-40287)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-147648(P2018-147648A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】林 知延
【審査官】 上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−079519(JP,A)
【文献】 特開2011−210632(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/114050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
H01M 8/0247
H01M 8/025
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの燃料電池セルの一方のアノード層に電気的に接続される第1集電部と、前記2つの燃料電池セルの他方のカソード層に電気的に接続される第2集電部とを備え、複数の前記燃料電池セルを隣り合わせに電気的かつ機械的に接続する燃料電池セルの接続部材において、
前記第1および第2集電部は、
前記アノード層に定められた被接触部または前記カソード層に定められた被接触部を部分的に包囲すると共に該被接触部の表面に接触するように形成された接触保持部と、
前記被接触部に対して弾性的に押し付けられるように前記接触保持部から延出されたクランプ部と、
前記クランプ部と対向すると共に該クランプ部よりも前記接触保持部から離間するように該接触保持部から延出された平坦な組付ガイド部とをそれぞれ含む燃料電池セルの接続部材。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記燃料電池セルは、円筒型燃料電池セルであり、
前記接触保持部は、半円筒状に形成され、
前記クランプ部は、前記接触保持部の一方の端部から延出され、
前記組付ガイド部は、前記接触保持部の他方の端部から該他方の端部における接線方向に延出されている燃料電池セルの接続部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記第1および第2集電部を前記燃料電池セルの長手方向において互いに離間するように電気的かつ機械的に接続する連結部を更に備え、
前記第1集電部は、前記組付ガイド部が前記クランプ部よりも前記連結部に近接するように前記燃料電池セルの配列方向における該連結部の一側に設けられ、
前記第2集電部は、前記組付ガイド部が前記クランプ部よりも前記連結部に近接するように前記配列方向における該連結部の他側に設けられている燃料電池セルの接続部材。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記連結部は、前記燃料電池セルの前記長手方向に沿って延在する平板部を含み、
前記第1および第2集電部の前記組付ガイド部は、それぞれ空間を隔てて前記平板部と平行に対向する燃料電池セルの接続部材。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記連結部は、
前記平板部および前記第1集電部の前記組付ガイド部と直交するように延在して両者を繋ぐ第1中継部と、
前記平板部および前記第2集電部の前記組付ガイド部と直交するように延在して両者を繋ぐ第2中継部とを含む燃料電池セルの接続部材。
【請求項6】
請求項3から5の何れか一項に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記第1集電部、前記第2集電部および前記連結部は、導電性材料により一体に成形されている燃料電池セルの接続部材。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の燃料電池セルの接続部材において、
前記アノード層および前記カソード層は、それぞれ筒状に形成されると共に、前記アノード層は、前記カソード層の両端部から突出するように該カソード層の内側に配置され、
前記カソード層の端部から突出した前記アノード層の端部には、有底筒状の集電部材が電気的に接続され、
前記アノード層の前記被接触部は、前記集電部材の外周面であり、前記カソード層の前記被接触部は、該カソード層の外周面の一部である燃料電池セルの接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明は、複数の燃料電池セルを隣り合わせに電気的かつ機械的に接続する燃料電池セルの接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接続部材として、燃料電池セルの空気極である外側電極層の外周面と電気的に接続される第1の集電部と、第1の集電部から隣接する燃料電池セルの端部に向けて延びると共に燃料極である内側電極層に取り付けられた内側電極端子と電気的に接続される第2の集電部と、第1および第2の集電部を電気的に接続する連接部とを含む集電体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この集電体において、第1および第2の集電部は、燃料電池セルに沿って長手方向に延びる平面部と、当該平面部の左右からそれぞれ鉛直方向に延びると共に燃料電池セルに沿って長手方向に延びる一対の側面部と、各側面部から燃料電池セルに沿って円周方向に半円弧状に湾曲して延びると共に外側電極層または内側電極端子に取り付けられる把持部とを有する。また、対をなす把持部の一方には、燃料電池セルの外周を取り囲むように当該燃料電池セルに沿って円周方向に延びる2つの突出部が形成されており、他方には、当該2つの突出部と対向する1つの突出部が形成されている。更に、各突出部の先端には、第1または第2の集電部の内側方向から外側方向へ延びる曲面部を有した爪部が形成されている。
【0003】
また、燃料電池セルの接続部材としては、複数の取付孔と、各取付孔に設けられた複数の弾性片とを有する集電体(金属板)も知られている(例えば、特許文献2参照)。この集電体の各取付孔には、対応する燃料電池セルの端部が挿入され、集電体は、弾性片の弾性力によってセル配列に対して取り付けられる。そして、各弾性片は、燃料電池セルの電極に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−79519号公報
【特許文献2】特開2015−170499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された集電体を用いて複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する場合、1つの燃料電池セルに4つの集電体が組み付けられるが、生産性に鑑みれば、1つの燃料電池セルに対して4つの集電体を同時に(一遍に)に組み付けることが好ましい。ただし、特許文献1に記載された集電体の各集電部には、それぞれ2つまたは1つの爪部を有する2つの把持部が設けられており、1つの燃料電池セルと4つの集電体との組み付けに際して、当該1つの燃料電池セルを合計8つの把持部に当接させる必要がある。このため、燃料電池セルと集電体との組み付けに際し、燃料電池セルや集電体の製造公差等に起因した各把持部と燃料電池セルとの干渉により各接続部材で様々な方向の応力が発生し、1つの燃料電池セルに対して4つの集電体に対して同時かつスムースに組み付けることが困難となる。一方、特許文献2に記載された集電体を用いた場合、特許文献1に記載された集電体を用いた場合に比べて組付性を改善することができるものの、集電体(弾性片)と電極との接触面積の不足により電気抵抗が増大化し、発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本開示の発明は、複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する接続部材と燃料電池セルとの組付性を向上させると共に当該燃料電池セルの発電効率の低下を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池セルの接続部材は、2つの燃料電池セルの一方のアノード層に電気的に接続される第1集電部と、前記2つの燃料電池セルの他方のカソード層に電気的に接続される第2集電部とを備え、複数の前記燃料電池セルを隣り合わせに電気的かつ機械的に接続する燃料電池セルの接続部材において、前記第1および第2集電部は、前記アノード層に定められた被接触部または前記カソード層に定められた被接触部を部分的に包囲すると共に該被接触部の表面に接触するように形成された接触保持部と、前記被接触部に対して弾性的に押し付けられるように前記接触保持部から延出されたクランプ部と、前記クランプ部と対向すると共に該クランプ部よりも前記接触保持部から離間するように該接触保持部から延出された平坦な組付ガイド部とをそれぞれ含むものである。
【0008】
この接続部材と燃料電池セルとの組み付けに際しては、接続部材の第1または第2集電部と、燃料電池セルのアノード層またはカソード層の非接触部とを互いに接近させる。この際、第1および第2集電部の組付ガイド部がクランプ部よりも接触保持部から離間するように形成されていることで、燃料電池セルの非接触部は、まず第1または第2集電部の組付ガイド部の端部に接触し、当該組付ガイド部によりガイドされながら第1または第2集電部の接触保持部に接近する。更に、燃料電池セルの非接触部は、クランプ部を押し広げるようにして接触保持部に入り込み、当該接触保持部の表面に接触する。そして、クランプ部が被接触部に対して弾性的に押し付けられることで、燃料電池セルは、接触保持部、クランプ部、および組付ガイド部によりしっかりと保持される。
【0009】
このように、第1および第2集電部の組付ガイド部をクランプ部よりも接触保持部から離間するように形成することで、接続部材と燃料電池セルとの組付開始時における接触箇所の数を減らすことが可能となる。これにより、燃料電池セルや接続部材の製造公差等に起因した第1および第2集電部と燃料電池セルとの干渉により接続部材で発生する応力を低減化し、接続部材と燃料電池セルとの組付性を向上させることができる。従って、複数の接続部材に対して1つの燃料電池セルを同時かつスムースに取り付けることが可能となり、生産性をより向上させることができる。更に、この接続部材では、接触保持部と燃料電池の被接触部との接触面積を確保して、電気抵抗の増大化を抑制することが可能となる。この結果、複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する接続部材と燃料電池セルとの組付性を向上させると共に当該燃料電池セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記燃料電池セルは、円筒型燃料電池セルであってもよく、前記接触保持部は、半円筒状に形成されてもよく、前記クランプ部は、前記接触保持部の一方の端部から延出されてもよく、前記組付ガイド部は、前記接触保持部の他方の端部から該他方の端部における接線方向に延出されてもよい。これにより、接続部材の燃料電池セルに対する組付性をより向上させると共に、接触保持部と燃料電池の被接触部との接触面積を充分に確保することが可能となる。
【0011】
更に、前記接続部材は、前記第1および第2集電部を前記燃料電池セルの長手方向において互いに離間するように電気的かつ機械的に接続する連結部を備えてもよく、前記第1集電部は、前記組付ガイド部が前記クランプ部よりも前記連結部に近接するように前記燃料電池セルの配列方向における該連結部の一側に設けられてもよく、前記第2集電部は、前記組付ガイド部が前記クランプ部よりも前記連結部に近接するように前記配列方向における該連結部の他側に設けられてもよい。これにより、複数の接続部材に対して複数の燃料電池セルを組み付けていく際に、第1および第2集電部と燃料電池セルとの干渉により接続部材で発生する応力を各接続部材内で互いに打ち消し合わせることが可能となり、接続部材と燃料電池セルとの組付性をより一層向上させることができる。
【0012】
また、前記連結部は、前記燃料電池セルの前記長手方向に沿って延在する平板部を含んでもよく、前記第1および第2集電部の前記組付ガイド部は、それぞれ空間を隔てて前記平板部と平行に対向してもよい。これにより、第1集電部の組付ガイド部と連結部の平板部との間の空間や、第2集電部の組付ガイド部と連結部の平板部との間の空間を、当該接続部材を位置決めするための位置決め部(治具)が差し込まれる空間として利用することが可能となり、接続部材に対する燃料電池セルの組付に際して当該接続部材を精度よく位置決めすることができる。
【0013】
更に、前記連結部は、前記平板部および前記第1集電部の前記組付ガイド部と直交するように延在して両者を繋ぐ第1中継部と、前記平板部および前記第2集電部の前記組付ガイド部と直交するように延在して両者を繋ぐ第2中継部とを含むものであってもよい。これにより、組付ガイド部と連結部の平板部との間の空間に差し込まれた位置決め部(治具)に対して第1、第2中継部を当接させることで、接続部材に対する燃料電池セルの組付に際して当該接続部材をより精度よく位置決めすると共に組み付けの作業性をより向上させることが可能となる。
【0014】
また、前記第1集電部、前記第2集電部および前記連結部は、導電性材料により一体に成形されてもよい。
【0015】
更に、前記アノード層および前記カソード層は、それぞれ筒状に形成されると共に、前記アノード層は、前記カソード層の両端部から突出するように該カソード層の内側に配置されてもよく、前記カソード層の端部から突出した前記アノード層の端部には、有底筒状の集電部材が電気的に接続されてもよく、前記アノード層の前記被接触部は、前記集電部材の外周面であってもよく、前記カソード層の前記被接触部は、該カソード層の外周面の一部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の燃料電池セルの接続部材を含む燃料電池スタックを示す概略構成図である。
図2図1の燃料電池スタックに含まれる燃料電池セルを示す部分断面図である。
図3】本開示の燃料電池セルの接続部材を示す平面図である。
図4】本開示の燃料電池セルの接続部材を示す平面図である。
図5】本開示の燃料電池セルの接続部材を示す正面図である。
図6】本開示の燃料電池セルの接続部材を示す側面図である。
図7】複数の接続部材を用いて複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する手順を示す平面図である。
図8】複数の接続部材を用いて複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する手順を示す平面図である。
図9】複数の接続部材を用いて複数の燃料電池セルを電気的かつ機械的に接続する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
図1は、本開示の燃料電池セルの接続部材を含む燃料電池スタックFCSを示す概略構成図である。同図に示す燃料電池スタックFCSは、複数の燃料電池セル1と、複数の接続部材10,10′とを含み、当該複数の接続部材10を用いて複数の燃料電池セル1を電気的かつ機械的に接続することにより組み立てられている。本実施形態において、燃料電池セル1は、円筒型の固体酸化物形燃料電池セルとして構成されており、図2に示すように、それぞれ長尺の円筒状に形成された固体電解質層2、アノード層(内側電極層)3、およびカソード層(外側電極層)4を含む。
【0019】
固体電解質層2は、アノード層3とカソード層4との間に配置され、アノード層3は、固体電解質層2よりも内側に配置される。アノード層3の内部には、水素を含むアノードガス(燃料ガス)が供給され、当該アノード層3は、負極として機能する。また、カソード層4は、その周囲に供給される例えば空気等の酸素を含むカソードガス(酸化剤ガス)と接触し、正極として機能する。燃料電池セル1は、アノード層3における水素の酸化反応とカソード層4における酸素の還元反応により発電する。
【0020】
固体電解質層2は、Y,Sc,Ca等の希土類元素から選ばれる1種または2種以上をドープした安定化ジルコニアや、Gd,Y,Sm等の希土類元素から選ばれる1種または2種以上をドープしたセリア、La,Sr,Ga,Mg,Coから選ばれる1種または2種以上をドープしたランタンガレート等により形成される。
【0021】
アノード層3は、例えばNiやFeといった触媒金属とY,Sc,Ca等の希土類元素から選ばれる1種または2種以上をドープした安定化ジルコニアとの混合体や、NiやFe等の触媒金属とGd,Y,Sm等の希土類元素から選ばれる1種または2種以上をドープしたセリアとの混合体、NiやFe等の触媒金属とLa,Sr,Ga,Mg,Coから選ばれる1種または2種以上をドープしたランタンガレートとの混合体等により形成される。
【0022】
カソード層4は、例えばSrを含有するペロブスカイト型酸化物により形成される。ペロブスカイト型酸化物として、例えば、La1-xSrxCo1-yFey3系酸化物(例えば、x=0.4、y=0.8)や、La1-xSrxCoO3系酸化物(例えば、x=0.4)、La1-xSrxFeO3系酸化物(例えばx=0.4)、La1-xSrxMnO3系酸化物(例えば、x=0.2)、Sm1-xSrxCoO3系酸化物(例えば、x=0.5)等が挙げられる。なお、固体電解質層2とカソード層4との間には、例えば、GDC(ガドリニウムドープセリア)、YDC(イットリアドープセリア)、SDC(サマリウムドープセリア)といった希土類をドープしたセリア混合体により形成された図示しない反応防止層が設けられてもよい。
【0023】
また、燃料電池セル1は、両端部に設けられた2つの集電キャップ(集電部材)5を含む。各集電キャップ5は、導電性を有する金属により略有底筒状に形成されており、図2に示すように、円盤状の底板部5aと、底板部5aの外周から軸方向に延出された円筒状の筒状部5bと、底板部5aの中央から筒状部5bとは反対側に延出された延出管部5cとを有する。延出管部5cには、当該延出管部5cを貫通して筒状部5bの内部に連通するガス流通孔(貫通孔)5dが形成されている。
【0024】
本実施形態において、燃料電池セル1の固体電解質層2およびアノード層3の両端部は、カソード層4の両端部から外方に突出しており、固体電解質層2およびアノード層3の各端部は、アノード層3の端面が集電キャップ5の底板部5aの内底面に当接するように筒状部5b内に挿入される。そして、筒状部5bと固体電解質層2およびアノード層3との間には、銀やパラジウム等を含む銀ペーストが充填され、当該銀ペーストを高温下(例えば、150℃程度)で乾燥させると共に焼成させることにより環状の導電性シール部6が形成される。これにより、アノード層3と集電キャップ5とが直接的かつ導電性シール部6を介して電気的に接続される。また、一方の集電キャップ5の延出管部5cのガス流通孔5dには、アノードガスが供給される。これにより、当該一方の集電キャップ5のガス流通孔5dからアノード層3の内部にアノードガスを供給すると共に、他方の集電キャップ5の延出管部5cのガス流通孔5dからアノード層3を通過したアノードオフガスを流出させることができる。
【0025】
更に、図2に示すように、燃料電池セル1には、アノード層3と集電キャップ5との間の隙間を封止するためのガスシール部7が設けられている。ガスシール部7は、例えば、燃料電池セル1の作動温度域(例えば、600〜1000℃程度)において熱により溶融するガラス材により形成された緻密層であり、固体電解質層2の外周面と集電キャップ5の筒状部5bの端面とに沿って環状に延在する。アノード層3と集電キャップ5との間の隙間としては、アノード層3の端面と集電キャップ5の底板部5aとの間の微小な隙間や、固体電解質層2およびアノード層3の外周面と導電性シール部6との間に形成された微小な隙間、導電性シール部6と集電キャップ5の筒状部5bの内周面との間に形成された微小な隙間等が挙げられる。
【0026】
図3は、接続部材10を示す平面図であり、図4は、接続部材10′を示す平面図である。また、図5は、接続部材10を示す正面図であり、図6は、接続部材10を示す側面図である。これらの図面に示す接続部材10,10′は、ステンレス等の導電性金属板をプレス成形することにより形成されており、それぞれ単独で2つの燃料電池セル1を隣り合わせに電気的かつ機械的に接続可能なものである。図3および図4に示すように、接続部材10,10′は、一体に成形された第1集電部11、第2集電部12および連結部13を含む。第1集電部11は、接続対象となる2つの燃料電池セル1の一方のアノード層3に電気的に接続され、第2集電部12は、当該2つの燃料電池セルの他方のカソード層4に電気的に接続される。また、連結部13は、第1および第2集電部11,12を燃料電池セル1の長手方向(軸方向)において互いに離間するように電気的かつ機械的に接続する。ここで、接続部材10′は、接続部材10を鏡像反転させた構造を有するものであることから、以下、接続部材10を例にとって両者の構成について説明する。
【0027】
図3図5および図6に示すように、接続部材10の第1集電部11は、燃料電池セル1のアノード層3に定められた被接触部としての集電キャップ5の筒状部5bを部分的に包囲すると共に当該筒状部5bの表面に接触するように形成された接触保持部110を含む。接触保持部110は、図5に示すように、半円筒状に形成されており、半円弧状の断面形状を有する。また、接触保持部110の内周面は、上記筒状部5bの外周面の曲率半径よりも僅かに大きい曲率半径を有する凹円柱面状に形成されている。
【0028】
更に、接続部材10の第1集電部11は、接触保持部110から延出されたクランプ部111と、クランプ部111と対向するように接触保持部110から延出された平板状の組付ガイド部112とを含む。クランプ部111は、図5に示すように、接触保持部110(半円筒)の一方の端部(図5における破線部参照)から部分的に組付ガイド部112に近接するように当該接触保持部110の内周面とは反対側に延出されている。組付ガイド部112は、図5に示すように、接触保持部110(半円筒)の他方の端部(図5における破線部参照)から当該接触保持部110の内周面とは反対側に延出されている。そして、組付ガイド部112は、クランプ部111よりも接触保持部110から離間した位置まで当該接触保持部110(半円筒)の内周面や外周面の上記他方の端部における接線方向に延在する。組付ガイド部112のクランプ部111と対向する表面は、平坦に形成されており、クランプ部111と組付ガイド部112とは、接触保持部110の内周面の曲率半径の2倍よりも若干短い間隔をおいて対向する。
【0029】
また、図3図5および図6に示すように、接続部材10の第2集電部12は、燃料電池セル1のカソード層4に定められた被接触部としての当該カソード層4の表面を部分的に包囲すると共に当該カソード層4の表面に接触するように形成された接触保持部120を含む。接触保持部120は、図5に示すように、半円筒状に形成されており、半円弧状の断面形状を有する。また、接触保持部120の内周面は、カソード層4の表面の曲率半径よりも僅かに大きい曲率半径を有する凹円柱面状に形成されている。
【0030】
更に、接続部材10の第2集電部12は、接触保持部120から延出されたクランプ部121と、クランプ部121と対向するように接触保持部120から延出された平板状の組付ガイド部122とを含む。クランプ部121は、図5に示すように、接触保持部120(半円筒)の一方の端部(図5における破線部参照)から部分的に組付ガイド部122に近接するように当該接触保持部120の内周面とは反対側に延出されている。組付ガイド部122は、図5に示すように、接触保持部120(半円筒)の他方の端部(図5における破線部参照)から当該接触保持部120の内周面とは反対側に延出されている。そして、組付ガイド部122は、クランプ部121よりも接触保持部120から離間した位置まで当該接触保持部120(半円筒)の内周面や外周面の上記他方の端部における接線方向に延在する。組付ガイド部122のクランプ部121と対向する表面は、平坦に形成されており、クランプ部121と組付ガイド部122とは、接触保持部120の内周面の曲率半径の2倍よりも若干短い間隔をおいて対向する。
【0031】
また、接続部材10の連結部13は、燃料電池セル1の長手方向に沿って延在する比較的短尺の平板部130と、平板部130の長手方向における一端から当該長手方向と直交する方向に延出されると共に第1集電部11の組付ガイド部112に繋がる第1中継部131と、当該平板部130の長手方向における他端から当該長手方向と直交するように第1中継部131とは反対側に延出されると共に第2集電部12の組付ガイド部122に繋がる第2中継部132とを含む。第1中継部131は、平板部130の図5における上端と組付ガイド部112の図5における上端との間で当該平板部130および組付ガイド部112と直交するように延在する。また、第2中継部132は、平板部130の図5における上端と組付ガイド部122の図5における上端との間で当該平板部130および組付ガイド部122と直交するように延在する。
【0032】
これにより、図3および図5に示すように、第1集電部11は、組付ガイド部112がクランプ部111よりも連結部13(平板部130)に近接するように燃料電池セル1の配列方向における当該連結部13の一側(図3および図5における左側)に設けられる。また、第2集電部12は、組付ガイド部122がクランプ部121よりも連結部13(平板部130)に近接するように燃料電池セル1の配列方向における当該連結部13の他側(図3および図5における右側)に設けられる。更に、第1および第2集電部11,12の組付ガイド部112,122は、図5に示すように、それぞれ略矩形状の断面形状を有する空間133,134を隔てて連結部13の平板部130と平行に対向する。
【0033】
続いて、図7から図9を参照しながら、複数の接続部材10,10′を用いて複数の燃料電池セル1を電気的かつ機械的に接続して燃料電池スタックFCSを組み立てる手順について説明する。
【0034】
複数の接続部材10,10′を用いて複数の燃料電池セル1を接続するに際して、本実施形態では、図7に示すような組付治具90が用いられる。組付治具90は、平板状のベース部91と、ベース部91上に設置された2つの第1位置決め部92と、ベース部91における2つの第1位置決め部92の間のスペースに配設された複数の第2位置決め部95とを含む。2つの第1位置決め部92は、ベース部91に対して垂直に設置された長尺の板体であり、燃料電池セル1の一方の集電キャップ5の端面から他方の集電キャップ5の端面までの長さに応じた間隔をおいて互いに平行に延在する。また、各第1位置決め部92の端面(上端面)には、燃料電池セル1の配列ピッチに応じた間隔をおいて複数(=燃料電池セル1の配列数)の位置決め凹部93が形成されている。各位置決め凹部93は、燃料電池セル1の集電キャップ5の延出管部5cが嵌まり込むように形成されている。
【0035】
組付治具90の第2位置決め部95は、ベース部91に対して垂直に設置された短尺の板体である。図7に示すように、ベース部91上には、燃料電池セル1の配列ピッチに応じた間隔をおいて複数(燃料電池セル1の配列数−1個)の第2位置決め部95が一方の第1位置決め部92に沿って配設されると共に、当該配列ピッチに応じた間隔をおいて複数(燃料電池セル1の配列数−1個)の第2位置決め部95が他方の第1位置決め部92に沿って配設される。本実施形態において、各第2位置決め部95は、接続部材10,10′の第2集電部12の組付ガイド部122と連結部13の平板部130との間の空間134(図5参照)の幅よりも若干小さい厚みを有する。また、第2位置決め部95の端面(上端面)には、接続部材10,10′の第2中継部132が嵌まり込む凹部96が形成されている。
【0036】
燃料電池スタックFCSの組み立てに際して、組付治具90には、図7に示すように、一方(図中上側)の第1位置決め部92に沿って複数の接続部材10が組み付けられると共に、他方(図中下側)の第1位置決め部92に沿って複数の接続部材10′が組み付けられる。すなわち、接続部材10,10′は、第2集電部12の組付ガイド部122と連結部13の平板部130との間の空間134に凹部96の底面が第2中継部132に当接するように第2位置決め部95を差し込むことによりベース部91上に位置決めされる。このように、接続部材10,10′では、第2集電部12の組付ガイド部122と連結部13との間の空間134が第2位置決め部95を差し込む空間として利用される。これにより、組付治具90に対して接続部材10,10′を精度よく位置決めすることができる。また、空間134に差し込まれた第2位置決め部95(凹部96の底面)に第2中継部132を当接させることで、組付治具90に対して接続部材10,10′をより精度よく位置決めすると共に組み付けの作業性をより向上させることが可能となる。
【0037】
次いで、各接続部材10,10′の接触保持部110,120の内周面等に銀ペーストを塗布した上で、組付機械あるいは手作業により燃料電池セル1を対応する複数の接続部材10,10′に対して順次組み付けていく。上述のように、接続部材10,10′では、第1および第2集電部11,12の組付ガイド部112,122がクランプ部111,121よりも接触保持部110,120から離間するように形成されている。従って、合計4つの接続部材10,10′に対して燃料電池セル1を組み付ける場合、接続部材10,10′の第1、第2集電部11,12に対して燃料電池セル1を接近させていくと、燃料電池セル1のカソード層4や集電キャップ5の筒状部5bは、まず第1、第2集電部11,12の組付ガイド部112,122の端部に接触する(図9において破線で示すカソード層4参照)。更に、燃料電池セル1すなわちカソード層4や筒状部5bは、平坦な組付ガイド部112,122によりガイドされながら第1または第2集電部11,12の接触保持部110,120に接近し、クランプ部111,121を押し広げるようにして接触保持部110,120に入り込んで当該接触保持部110,120の内周面(表面)に接触する。そして、クランプ部111,121がカソード層4や筒状部5bに対して弾性的に押し付けられることで、燃料電池セル1は、接触保持部110,120、クランプ部111,121および組付ガイド部112,122によりしっかりと保持される(図9において破線で示す筒状部5b参照)。
【0038】
上述のように、第1および第2集電部11,12の組付ガイド部112,122をクランプ部111,121よりも接触保持部110,120から離間するように形成することで、接続部材10,10′と燃料電池セル1との組付開始時における接触箇所の数を減らすことが可能となる。すなわち、合計4つの接続部材10,10′に対して1つの燃料電池セル1を組み付ける場合、接続部材10,10′と燃料電池セル1との組付開始時における接触箇所は、合計4箇所(それぞれ2つの組付ガイド部112,122)となる。これにより、燃料電池セル1や接続部材10,10′の製造公差等に起因した第1および第2集電部11,12と燃料電池セル1との干渉により接続部材10,10′で発生する応力を低減化し、接続部材10,10′に対する燃料電池セル1の組付性をより向上させることができる。従って、複数の接続部材10,10′に対して1つの燃料電池セル1を同時かつスムースに取り付けることが可能となり、生産性をより向上させることができる。更に、接続部材10,10′では、凹円柱面状の内周面を有する接触保持部110,120とカソード層4や筒状部5bとの接触面積を充分に確保して、電気抵抗の増大化を良好に抑制することが可能となる。
【0039】
また、接続部材10,10′において、第1集電部11は、組付ガイド部112がクランプ部111よりも平板部130に近接するように燃料電池セル1の配列方向における連結部13の一側に設けられ、第2集電部12は、組付ガイド部122がクランプ部121よりも平板部130に近接するように燃料電池セル1の配列方向における連結部13の他側に設けられる。これにより、複数の接続部材10,10′に対して複数の燃料電池セル1を組み付けていく際に、第1および第2集電部11,12と燃料電池セル1との干渉により接続部材10,10′で発生する応力を各接続部材10,10′内で互いに打ち消し合わせることが可能となり、接続部材10,10′に対する燃料電池セル1の組付性をより一層向上させることができる。
【0040】
以上説明したように、複数の燃料電池セル1を電気的かつ機械的に接続する接続部材10,10′によれば、当該接続部材10,10′に対する燃料電池セル1の組付性を向上させると共に当該燃料電池セル1の発電効率の低下を抑制することができる。
【0041】
なお、上記接続部材10,10′のように、組付ガイド部112,122をクランプ部111,121よりも連結部13(平板部130)に近接させることで、接続部材10,10′の構造をより容易に形成可能なものとすることができるが、接続部材10,10′の構成は、これに限られるものではない。すなわち、接続部材10,10′は、クランプ部111,112が連結部13(平板部130)に近接すると共に組付ガイド部112,122が外側に位置するように形成されてもよい。
【0042】
また、接続部材10,10′において、カソード層4に対応した第2集電部12の接触保持部120等の表面積をアノード層3に対応した第1集電部11の接触保持部110等の表面積よりも大きくしてもよい。この場合、第2集電部12の熱膨張を考慮して、図3および図4において二点鎖線で示すように、第2集電部12の接触保持部120、クランプ部121および組付ガイド部122にスリットが形成されてもよい。
【0043】
更に、上記実施形態では、第2集電部12の組付ガイド部122と連結部13との間の空間134が第2位置決め部95を差し込む空間として利用されるが、これに限られるものではない、すなわち、組付治具90に対する接続部材10,10′の位置決めに際して、第1集電部11の組付ガイド部112と連結部13との間の空間133が第2位置決め部95を差し込む空間として利用されてもよい。
【0044】
また、上述の燃料電池セル1は、円筒型の固体酸化物形燃料電池セルであるが、接触保持部110,120の形状を変更することで、接続部材10,10′を円筒型の以外の燃料電池セルに適用し得ることはいうまでもない。更に、燃料電池セル1は、カソード層が電解質層の内側に配置されると共に、カソードガスを通過させる集電キャップ(集電部材)に当該カソードの端部が挿入されるものであってもよい。また、燃料電池セル1は、固体酸化物形以外の形式の燃料電池セルであってもよい。
【0045】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示の発明は、燃料電池スタックの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 燃料電池セル、2 固体電解質層、3 アノード層、4 カソード層、5 集電キャップ、5a 底板部、5b 筒状部、5c 延出管部、5d ガス流通孔、6 導電性シール部、7 ガスシール部、10,10′ 接続部材、11 第1集電部、12 第2集電部、110,120 接触保持部、111,121 クランプ部、112、122 組付ガイド部、13 連結部、130 平板部、131 第1中継部、132 第2中継部、133,134 空間、90 組付治具、91 ベース部、92 第1位置決め部、93 凹部、95 第2位置決め部、96 凹部、FCS 燃料電池スタック。
図1
図2
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図9