【実施例】
【0015】
図1は便座装置10の構成図であり、
図2は便座装置10の制御に関するブロック図である。便座装置10は、
図1,
図2に示すように、便器1の上面後方に設置される本体12と、本体12に対して開閉可能に支持された便座14および便蓋16と、便座装置10の作動を制御する制御装置20とを備える。この便座装置10は、使用者の局部に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄ノズル22と、臭気を脱臭する脱臭ファン24と、使用者の局部に温風を吹き付けて乾燥させる乾燥ファン26とを備える温水洗浄便座装置として構成されている。また、便座装置10は、使用者が衣服を着脱する際の着脱音や排泄する際の排泄音などをマスキングするためのマスキング音を出力可能に構成されており、マスキング対象の音を含む便座装置10の周囲の音を検出可能な検出マイク(マイクロフォン)28と、マスキング音として流水音や鳥の鳴き声などの再生音を出力可能なスピーカ29とを備える。
【0016】
制御装置20は、図示しない操作リモコンに設けられた各操作ボタンからの操作信号などが入力され、入力された操作信号に基づいて、洗浄ノズル22や脱臭ファン24、乾燥ファン26の作動の開始や作動の停止などを制御する。操作リモコンには、マスキング音の再生有無の選択が可能なマスキング音操作ボタン19が設けられており、制御装置20には、マスキング音操作ボタン19からの選択信号が入力される。また、便座14には、便座装置10が配置された室内への使用者の入室を検知する入室検知センサ17と、使用者の着座を検知する着座検知センサ18とが設けられている。制御装置20には、入室検知センサ17からの入室検知信号や着座検知センサ18からの着座検知信号が入力される。また、制御装置20は、マスキング音の再生に関する各種音響制御を行うマスキング音再生制御部30を有する。マスキング音再生制御部30には、検出マイク28により検出された音が入力される。また、マスキング音再生制御部30は、マスキング音を出力するようスピーカ29を制御する。
【0017】
ここで、
図3は、マスキング音再生制御部30の機能に関するブロック図である。図示するように、マスキング音再生制御部30は、フィルタ処理部31と、音解析部32と、音記憶部35と、音制御部36とを備える。
【0018】
フィルタ処理部31は、例えばバンドストップフィルタなどで構成されており、検出マイク28で検出された音の音信号から所定の音に対応する周波数を除去(減衰)可能となっている。このフィルタ処理部31は、便座装置10の作動音に対応する周波数として、洗浄ノズル22の洗浄音31aに対応する周波数と、脱臭ファン24の脱臭音31bに対応する周波数と、乾燥ファン26の乾燥音31cに対応する周波数とを除去可能に構成されている。また、フィルタ処理部31は、作動音以外の音に対応する周波数として、後述する特定音源35dからの特定マスキング音31dに対応する周波数を除去可能に構成されている。
【0019】
音解析部32は、検出マイク28で検出されてフィルタ処理部31により周波数除去された音信号を入力して解析処理を行う。音解析部32は、入力した音信号にFFT(高速フーリエ変換)などの周知の処理を施すなどにより、入力された音信号の音圧を解析する音圧解析部33と、入力された音信号の周波数を解析する周波数解析部34とを備える。音解析部32による解析処理の解析結果は、音制御部36に入力される。なお、音解析部32をパスして、検出マイク28で検出された音信号を音制御部36に入力することもでき、音信号の入力により音制御部36は検出マイク28が音を検出していることを認識することができる。
【0020】
音記憶部35は、単一音源での再生使用や複数音源の組合せでの再生使用とが可能な複数種の音源として、第1音源35aと第2音源35bと第3音源35cの3種類の音源を記憶している。また、音記憶部35は、予め定められた再生パターンで使用される特定音源35dを記憶している。さらに、音記憶部35は、第1音源35aと第2音源35bと第3音源35cの再生パターンとして、単一音源での再生を繰り返す単一音源再生パターン35xと、複数音源の組合せでの再生を繰り返す複数音源再生パターン35yとを記憶している。なお、第1〜第3音源35a〜35cは、音の周波数帯が異なり、例えば、第1音源35aは比較的高い周波数帯の音で構成され、第2音源35bは比較的低い周波数帯の音で構成され、第3音源35cは第1音源35aと第2音源35bとの中間程度の周波数帯の音で構成されている。また、特定音源35dは、マスキング音としての流水音などの典型的な擬音を、所定音量で出力するために記憶されたティピカルな音源である。
【0021】
音制御部36は、検出マイク28で検出されフィルタ処理部31により周波数除去されて音解析部32により解析された音信号が入力される。なお、上述したように、音制御部36には、検出マイク28で検出されてフィルタ処理部31により周波数除去された音信号を入力することもできる。この音制御部36は、音記憶部35に記憶されている音源からの音信号や再生パターンなどが入力される。音制御部36は、スピーカ29が再生(出力)する再生音を音記憶部35から選択する再生音選択部37と、スピーカ29が再生(出力)する再生音の再生パターンを音記憶部35から選択する再生パターン選択部38と、スピーカ29が再生(出力)する音量を調整する音量調整部39とを備える。音量調整部39は、例えば増幅回路などにより構成されており、解析結果に応じた音量または予め定められた所定音量でマスキング音を出力するようスピーカ29の出力を調整する。
【0022】
こうして構成された便座装置10では、制御装置20は、例えばマスキング音操作ボタン19によりマスキング音の再生有りが選択されている場合に、マスキング音再生制御部30に次のようにマスキング音の再生に関する各種音響制御を行わせる。マスキング音再生制御部30は、まず、入室検知センサ17からの入室検知信号に基づいて使用者の入室が検知されたときに、特定音源35dからの特定マスキング音をスピーカ29から出力する。マスキング音再生制御部30は、特定音源35dからの特定マスキング音を出力する際には、一定の音量、例えば、この後に第1〜第3音源35a〜35cからのマスキング音を出力する際よりも小さな所定音量で音を出力する。このように、使用者が入室したことに基づいて特定マスキング音としてティピカルなマスキング音を出力するから、衣服を着脱する際の着脱音などを適切にマスキングすることができる。また、小さな所定音量で特定マスキング音を出力するから、使用者の意図しない過大なマスキング音が出力されるのを防止することができる。なお、使用者の入室に基づいて特定音源35dからの特定マスキング音を出力するか否かを、使用者に選択可能とするものなどとしてもよい。
【0023】
次に、着座検知センサ18からの着座検知信号に基づいて使用者の着座が検知されている場合には、マスキング音再生制御部30は、検出マイク28により検出される音をマスキングするためのマスキング音を再生するよう各種音響制御を行う。ここで、検出マイク28により検出される音には、例えば使用者が排泄する際の排泄音の他、便座装置10の作動音として洗浄ノズル22の洗浄音や脱臭ファン24の脱臭音、乾燥ファン26の乾燥音などがある。また、使用者の入室に基づいて、特定音源35dからの特定マスキング音(ティピカルなマスキング音)を出力するため、その音も検出することになる。そこで、マスキング音再生制御部30は、フィルタ処理部31の機能により、検出マイク28で検出された音信号から洗浄ノズル22の洗浄音31aや脱臭ファン24の脱臭音31b、乾燥ファン26の乾燥音31c、特定音源35dの特定マスキング音31dに対応する周波数を除去する。これらの音(周波数)を除去してから、音解析部32の音圧解析部33と周波数解析部34との機能により、音圧解析と周波数解析とを行う。このため、マスキングが不要な便座装置10の作動音や特定マスキング音を除去した上で、使用者がマスキングしたい排泄音などに絞って音圧解析と周波数解析とを適切に行うことができる。したがって、マスキング音が必要以上に広範囲の周波数帯の音となったり必要以上に大きな音量となったりするのを防止することができる。
【0024】
そして、マスキング音再生制御部30は、再生音選択部37と再生パターン選択部38との機能により、音解析部32の解析結果の周波数をマスキングするのに最も近い周波数の音源を、音記憶部35の第1〜第3音源35a〜35cのいずれかから選択する。このため、マスキング対象の音の周波数の高低が使用者の体調などによって異なったり使用者毎に異なったりする場合でも、マスキングに適した音源を選択することができる。なお、再生音選択部37は、選択した一の音源の周波数を調整する周波数調整機能を有していてもよい。その場合、再生音選択部37は、選択した一の音源の周波数を、例えば周波数解析結果の周波数よりも若干低い周波数となるように周波数をシフトすることで調整してもよい。このように、音解析部32の解析結果の周波数よりも若干低い周波数とすることにより、マスキング音再生制御部30は、低周波の音で高周波の音をマスキングする周波数マスキングを適切に行うことができる。また、再生パターン選択部38は、一の音源でマスキングが可能であれば、単一音源での再生を繰り返す単一音源再生パターン35xを選択し、複数音源の組合せでのマスキングの方が効果的であれば、複数音源の組合せでの再生を繰り返す複数音源再生パターン35yを選択する。このため、再生音選択部37と再生パターン選択部38との機能により、マスキング対象の音に応じて第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と音再生パターンとを適切に選択(設定)することができる。
【0025】
また、マスキング音再生制御部30は、音量調整部39の機能により、音解析部32の解析結果に応じた音量でマスキング音が出力されるようスピーカ29を制御する。このため、マスキングに必要な範囲の音量でマスキング音を出力することができる。したがって、マスキング音の音量が大きすぎるために使用者に不快感を与えたり、マスキング音が小さすぎるために十分にマスキングできなかったりするのを防止することができる。また、使用者の操作によらずに音量を調整して、使用者の音量調整の手間を省くことができる。
【0026】
以上説明した実施例の便座装置10は、検出マイク28で検出した音信号に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定してスピーカ29を制御する。これにより、便座装置10を使用する際の種々の使用音を適切にマスキングすることができる。
【0027】
また、実施例の便座装置10は、検出マイク28で検出された音信号の音圧を解析し、解析した音圧に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定してスピーカ29から出力される音を制御する。このため、マスキングの対象音の音圧に応じて適切にマスキング音を出力することができる。
【0028】
また、実施例の便座装置10は、検出マイク28で検出された音信号の周波数を解析し、解析した周波数に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定してスピーカ29から出力される音を制御する。このため、マスキングの対象音の周波数に応じて適切にマスキング音を出力することができる。
【0029】
また、実施例の便座装置10は、検出マイク28で検出された音信号から、便座装置10の作動音として洗浄ノズル22の洗浄音31aや脱臭ファン24の脱臭音31b、乾燥ファン26の乾燥音31cを除去した音に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定してスピーカ29から出力される音を制御する。このため、マスキングの必要性が低い音を除外して、マスキングの必要な音をより適切にマスキングすることができる。
【0030】
また、実施例の便座装置10は、使用者の入室を検知したことに基づいて、特定音源35dからの特定マスキング音を出力するから、衣服を着脱する際の着脱音などを適切にマスキングすることができる。また、検出マイク28で検出された音信号から、特定マスキング音31dを除去するから、特定音源35dからの特定マスキング音を出力していても、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを適切に設定することができる。
【0031】
実施例では、検出マイク28で検出した音信号に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定したが、これに限られるものではない。検出マイク28で検出した音信号に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とのうち、少なくともいずれか1つを設定するものであればよい。このため、音制御部36は、再生音選択部37と再生パターン選択部38と音量調整部39とをいずれも備えるものに限られず、設定する機能に合わせて少なくともいずれか1つを備えるものとしてもよい。なお、再生音を設定しない場合には、一の音源のみを記憶しておきその音源を再生するものとしたり、再生パターンを設定しない場合には、常に単一の音源での再生を行うパターンとしたり、音量を設定しない場合には、一定の音量でマスキング音を出力するものとしたりすればよい。
【0032】
実施例では、検出マイク28で検出された音信号の音圧と周波数とを解析し、解析した音圧と周波数とに基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とを設定したが、これに限られるものではない。検出マイク28で検出された音信号から音圧または周波数の一方を解析し、解析した結果に基づいて、第1〜第3音源35a〜35cからの再生音と、音再生パターンと、音量とのうち、少なくともいずれか1つを設定するものとしてもよい。
【0033】
実施例では、検出マイク28で検出された音信号から、便座装置10の作動音として3種類の作動音(洗浄音31aや脱臭音31b、乾燥音31c)を除去したが、これに限られるものではない。例えば、いずれか1種類または2種類の作動音を除去してもよいし、他の作動音を除去してもよい。あるいは、便座装置10の作動音を除去することなく、検出マイク28で検出された音信号をそのまま解析してもよい。また、検出マイク28で検出された音信号から、特定マスキング音31dを除去することなく、音信号を解析してもよい。
【0034】
実施例では、入室検知センサ17からの入室検知信号に基づいて使用者の入室を検知したことに基づいて、特定音源35dからの特定マスキング音を出力したが、これに限られず、着座検知センサ18からの着座検知信号に基づいて使用者の着座を検知したことに基づいて、特定音源35dからの特定マスキング音を出力してもよい。あるいは、このような特定マスキング音(ティピカルなマスキング音)を出力しないものとしてもよい。その場合、音記憶部35が特定音源35dを記憶しないものとし、フィルタ処理部31が検出マイク28で検出された音信号から特定マスキング音31dを除去しないものなどとすればよい。
【0035】
実施例では、マスキング音操作ボタン19によりマスキング音の再生有りが選択されている場合にマスキング音を出力するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、操作リモコンにマスキング音操作ボタン19を設けないものとし、入室検知センサ17からの入室検知信号に基づいて使用者の入室が検知されている場合や着座検知センサ18からの着座検知信号に基づいて使用者の着座が検知されている場合に、マスキング音を出力するものとしてもよい。
【0036】
なお、便座装置10は、音を検出する検出手段と、音を記憶する記憶手段と、音を出力する出力手段と、検出手段により検出された音の周波数を解析する周波数解析手段と、解析された音の周波数に基づいて、検出された音をマスキングする周波数の音を記憶手段の音を用いて出力手段から出力するよう制御する制御手段と、を備えるものとしてもよい。こうすれば、便座装置を使用する際の音を検出し、検出した音に適した周波数の音をマスキング音として出力することができるから、便座装置を使用する際の種々の音を適切にマスキングすることができる。なお、記憶手段が周波数の異なる複数種の音源を記憶しており、それらの音源のうちマスキングに適した周波数に最も周波数の近い一の音源を選択して、周波数調整をしてから出力するものとしてもよいし、周波数調整をすることなく出力するものとしてもよい。あるいは、記憶手段が1種類の音源のみを記憶しており、その音源を用いて周波数調整してから出力するものとしてもよい。
【0037】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、検出マイク28が「検出手段」に相当し、スピーカ29が「出力手段」に相当し、音記憶部35が「記憶手段」に相当し、音制御部36(再生音選択部37、再生パターン選択部38、音量調整部39)が「制御手段」に相当する。また、音解析部32(音圧解析部33、周波数解析部34)が「解析手段」に相当する。また、フィルタ処理部31が「フィルタ手段」に相当する。入室検知センサ17(着座検知センサ18)が「検知手段」に相当する。
【0038】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。