特許第6869466号(P6869466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869466
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】温水タンク装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   E03D9/08 J
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-80197(P2017-80197)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-178548(P2018-178548A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸生
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−302752(JP,A)
【文献】 特開2015−048588(JP,A)
【文献】 特開昭63−271060(JP,A)
【文献】 特開2001−324219(JP,A)
【文献】 特開平06−317354(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0150311(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0060743(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
F24H 1/00〜4/06
A47J27/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部洗浄用の水を蓄えるタンクと、
前記タンク内に蓄えられた水を加温するヒータと、
前記タンクの上部に設けられた第1温度センサと、
前記第1温度センサよりも前記ヒータに近接して設けられた第2温度センサと、
前記ヒータを一定時間通電し、前記ヒータの通電前に前記第1温度センサにより検出された温度である第1初期温度と前記ヒータの通電後に前記第1温度センサにより検出された温度である第1判定温度との温度差が第1閾値以上であり、且つ、前記ヒータの通電前に前記第2温度センサにより検出された温度である第2初期温度と前記ヒータの通電後に前記第2温度センサにより検出された温度である第2判定温度との温度差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていると判定する制御装置と、
を備える温水タンク装置。
【請求項2】
請求項1記載の温水タンク装置であって、
前記第1判定温度は、前記ヒータの通電を停止してから所定時間が経過するまでの間に、前記第1温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であり、
前記第2判定温度は、前記ヒータの通電を停止してから前記所定時間が経過するまでの間に、前記第2温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度である、
温水タンク装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の温水タンク装置であって、
前記制御装置は、前記第1初期温度と前記第1判定温度との温度差が前記第1閾値よりも小さい第3閾値未満であり、且つ、前記第2初期温度と前記第2判定温度との温度差が前記第2閾値よりも小さい第4閾値未満である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていないと判定する、
温水タンク装置。
【請求項4】
請求項3記載の温水タンク装置であって、
前記制御装置は、前記第1初期温度と前記第1判定温度との温度差が前記第3閾値以上且つ前記第1閾値未満であるか、前記第2初期温度と前記第2判定温度との温度差が前記第4閾値以上且つ前記第2閾値未満である場合に、前記ヒータを一定時間再通電し、前記第1初期温度と前記ヒータの再通電後に前記第1温度センサにより検出された温度である第3判定温度との温度差が前記第1閾値以上であり、且つ、前記第2初期温度と前記ヒータの再通電後に前記第2温度センサにより検出された第4判定温度との温度差が前記第2閾値以上である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていると判定し、前記第1初期温度と前記第3判定温度との温度差が前記第1閾値未満であるか、前記第2初期温度と前記第4判定温度との温度差が前記第2閾値未満である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていないと判定する、
温水タンク装置。
【請求項5】
請求項4記載の温水タンク装置であって、
前記第3判定温度は、前記ヒータの再通電を停止してから所定時間が経過するまでの間に、前記第1温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であり、
前記第4判定温度は、前記ヒータの再通電を停止してから前記所定時間が経過するまでの間に、前記第2温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度である、
温水タンク装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の温水タンク装置であって、
前記第1および第2温度センサは、前記ヒータの重力方向の上方に設けられている、
温水タンク装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の温水タンク装置であって、
前記制御装置は、前記ヒータを通電しているときに前記第1温度センサにより検出された温度が上限温度を超えた場合に、前記ヒータの通電を停止する、
温水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温水タンク装置としては、温水タンクと、温水タンク内の水を温水にするヒータと、温水タンク内の水位を検知して水位が一定レベルに満たないときには温水タンク内に給水し水位を一定レベル以上に保つためのフロートスイッチとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この温水タンク装置では、温水タンク内の水位が一定レベルに満たないときには、温水タンク内に給水されるまではヒータをオンとしないことにより、空焚き運転を防止している。
【0003】
また、熱伝導材料により形成されたヒータフランジを有して温水タンクの側壁部に差し込まれるヒータと、センサフランジを有して温水タンクの側壁部に差し込まれる温度センサとを備えるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。ヒータは、ヒータフランジが温度センサのセンサフランジと接触するように嵌合されており、温水タンクの温水室が空のときのように、温水室内の水の温度を良好に測温できないとき、ヒータの加熱部の熱をヒータフランジを介して温度センサのセンサ部に伝達することができる。これにより、加熱部の発熱を温度センサの検知温度に基づいて制御でき、加熱部の過剰な発熱を抑制することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−213040号公報
【特許文献2】特開2010−106603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の温水タンク装置では、空焚き運転を防止するためにフロートスイッチを設ける必要があるため、部品点数が増加し、コストアップを招いてしまう。また、装置本体が傾くと、タンク内に水がなくても、フロートスイッチが作動し、空焚き運転を防止できないおそれがある。また、特許文献2記載の温水タンク装置では、ヒータにヒータフランジを設ける必要があり、しかも、温度センサのセンサ部と熱伝導可能とするために高い寸法精度が要求されるため、ヒータのコストアップを招いてしまう。
【0006】
本発明の温水タンク装置は、簡易な構成によりタンク内に必要な量の水が蓄えられているか否かを判定可能な温水タンク装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温水タンク装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の温水タンク装置は、局部洗浄用の水を蓄えるタンクと、前記タンク内に蓄えられた水を加温するヒータと、前記タンクの上部に設けられた第1温度センサと、前記第1温度センサよりも前記ヒータに近接して設けられた第2温度センサと、前記ヒータを一定時間通電し、前記ヒータの通電前に前記第1温度センサにより検出された温度である第1初期温度と前記ヒータの通電後に前記第1温度センサにより検出された温度である第1判定温度との温度差が第1閾値以上であり、且つ、前記ヒータの通電前に前記第2温度センサにより検出された温度である第2初期温度と前記ヒータの通電後に前記第2温度センサにより検出された温度である第2判定温度との温度差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていると判定する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0009】
この本発明の温水タンク装置では、タンクの上部に第1温度センサが設けられ、第1温度センサよりもヒータに近接して第2温度センサが設けられる。そして、ヒータを一定時間通電し、通電前に第1温度センサにより検出された第1初期温度と通電後に第1温度センサにより検出された第1判定温度との温度差が第1閾値以上であり、且つ、通電前に第2温度センサにより検出された第2初期温度と通電後に第2温度センサにより検出された第2判定温度との温度差が第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、タンク内に必要な量の水が蓄えられていると判定する。この結果、簡易な構成によりタンク内に必要な量の水が蓄えられていることを判定することができる。
【0010】
こうした本発明の温水タンク装置において、前記第1判定温度は、前記ヒータの通電を停止してから所定時間が経過するまでの間に、前記第1温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であり、前記第2判定温度は、前記ヒータの通電を停止してから前記所定時間が経過するまでの間に、前記第2温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であるものとしてもよい。こうすれば、ヒータの加熱によるタンク内の温度変化を第1および第2温度センサでより正確に捉えることができる。
【0011】
また、本発明の温水タンク装置において、前記制御装置は、前記第1初期温度と前記第1判定温度との温度差が前記第1閾値よりも小さい第3閾値未満であり、且つ、前記第2初期温度と前記第2判定温度との温度差が前記第2閾値よりも小さい第4閾値未満である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていないと判定するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記第1初期温度と前記第1判定温度との温度差が前記第3閾値以上且つ前記第1閾値未満であるか、前記第2初期温度と前記第2判定温度との温度差が前記第4閾値以上且つ前記第2閾値未満である場合に、前記ヒータを一定時間再通電し、前記第1初期温度と前記ヒータの再通電後に前記第1温度センサにより検出された温度である第3判定温度との温度差が前記第1閾値以上であり、且つ、前記第2初期温度と前記ヒータの再通電後に前記第2温度センサにより検出された第4判定温度との温度差が前記第2閾値以上である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていると判定し、前記第1初期温度と前記第3判定温度との温度差が前記第1閾値未満であるか、前記第2初期温度と前記第4判定温度との温度差が前記第2閾値未満である場合に、前記タンク内に必要な量の水が蓄えられていないと判定するものとしてもよい。このように、ヒータを一定時間通電させただけでは、タンク内の必要な量の水が蓄えられているか否かの判定を確定できないときには、ヒータを再通電させて再判定を行なうため、誤判定を効果的に抑制することができる。さらにこの場合、前記第3判定温度は、前記ヒータの再通電を停止してから所定時間が経過するまでの間に、前記第1温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であり、前記第4判定温度は、前記ヒータの再通電を停止してから前記所定時間が経過するまでの間に、前記第2温度センサにより検出された温度のうち最も高い温度であるものとしてもよい。こうすれば、ヒータの加熱によるタンク内の温度変化を第1および第2温度センサでより正確に捉えることができる。
【0012】
また、本発明の温水タンク装置において、前記第1および第2温度センサは、前記ヒータの重力方向の上方に設けられているものとしてもよい。この場合、ヒータ内に水が蓄えられていれば、ヒータで熱せられた水が上方へ移動して、第1および第2温度センサに熱が伝達され易くなる。このため、比較的短いヒータの通電時間で第1および第2温度センサにより検出される温度に変化を生じさせることができ、タンク内に必要な量の水が蓄えられているか否かを適切に判定することができる。
【0013】
さらに、本発明の温水タンク装置において、前記制御装置は、前記ヒータを通電しているときに前記第1温度センサにより検出された温度が上限温度を超えた場合に、前記ヒータの通電を停止するものとしてもよい。こうすれば、第1温度センサを用いてタンク内の水の異常な温度上昇を監視することができるため、別途サーモスタット等の安全装置を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の温水タンク装置30を含む衛生洗浄装置20の構成の概略を示す構成図である。
図2】温水タンク装置30の外観を示す外観図である。
図3図2の温水タンク装置30のA−A断面およびB−B断面を示す断面図である。
図4】タンク水有無判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5】タンク水有無判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図6】異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の温水タンク装置30を含む衛生洗浄装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、温水タンク装置30の外観を示す外観図であり、図3は、温水タンク装置30の断面を示す断面図である。なお、図3(a)は、図2の温水タンク装置30のA−A断面を示し、図3(b)は、図2の温水タンク装置30のB−B断面を示す。
【0017】
衛生洗浄装置20は、図示しない便座に取り付けられて使用され、図1に示すように、給水管12から洗浄水流路24への水の供給を司る止水電磁弁22と、洗浄水流路24に設けられた温水タンク装置30と、脈動ポンプ42と切替バルブ44と複数のノズル46,48とを有するノズル装置40と、装置全体を制御する制御装置50と、を備える。なお、切替バルブ44は、必要に応じて洗浄の強さを調整する脈動ポンプ42より下流側の洗浄水流路24の洗浄水を複数のノズル46,48のいずれから噴出させるのかを切り替えるものである。また、複数のノズル46,48は、本実施形態では、おしり洗浄用のノズル46と、ビデ用のノズル48と、により構成されている。
【0018】
温水タンク装置30は、図2図3に示すように、洗浄水を導入する図示しない導入口を下部に有すると共に洗浄水を吐出する吐出口33を上部に有するタンク32と、タンク32の下部(底部)付近において側壁を貫通するように取り付けられたヒータ34と、タンク32内部の温度を検出する温度センサとしての第1および第2サーミスタ36,38と、を備える。
【0019】
第1サーミスタ36は、吐出口33付近の水の温度を検出できるようにタンク32の上部に設けられている。第2サーミスタ38は、ヒータ34付近の水の温度を検出できるようにヒータ34に近接して設けられている。第1および第2サーミスタ36,38は、本実施形態では、図3(b)に示すように、ヒータ34の重力方向の上方(ヒータ34を通り重力方向に沿う平面上)に設けられている。
【0020】
制御装置50は、CPU52を中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPU52の他にROM54やRAM56、タイマ58、図示しない入出力ポートなどを備える。制御装置50には、第1および第2サーミスタ36,38からの各温度信号や、洗浄水の加温を指示する温水スイッチ59からのスイッチ信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御装置50からは、止水電磁弁22への駆動信号やヒータ34への駆動信号、脈動ポンプ42への駆動信号、切替バルブ44への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0021】
次に、こうして構成された実施形態の衛生洗浄装置20の動作、特に温水タンク装置30の空焚きを防止するためにタンク内の必要な量の水の有無を判定する動作について説明する。図4は、制御装置50のCPU52により実行されるタンク水有無判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、衛生洗浄装置20の図示しない電源スイッチがオンされたときや温水スイッチ59がオンされたときに実行される。
【0022】
タンク水有無判定ルーチンが実行されると、制御装置50のCPU52は、まず、第1および第2サーミスタ36,38からの温度T1,T2を入力し(S100)、入力した温度T1,T2をそれぞれ第1初期温度Ti1,第2初期温度Ti2に設定する(S110)。そして、CPU52は、ヒータ34をオンとし(S120)、所定時間t1(例えば、7秒)が経過するのを待って(S130)、ヒータ34をオフとする(S140)。即ち、ヒータ34を所定時間t1だけ通電させる。
【0023】
次に、CPU52は、第1判定温度Td1および第2判定温度Td2を値0に初期化した後(S150)、第1および第2サーミスタ36,38からの温度T1,T2を入力し(S160)、入力した温度T1と第1判定温度Td1とのうち大きい方を新たな第1判定温度Td1に設定すると共に入力した温度T2と第2判定温度Td2とのうち大きい方を新たな第2判定温度Td2に設定する(S170)。S150で第1判定温度Td1および第2判定温度Td2が初期化された後、はじめてS160,S170が実行される場合には、入力した温度T1の方が第1判定温度Td1(値0)よりも大きいと判定されると共に入力した温度T2の方が第2判定温度Td2(値0)よりも大きいと判定されるため、入力した温度T1が新たな第1判定温度Td1に設定されると共に入力した温度T2が新たな第2判定温度Td2に設定される。そして、CPU52は、ヒータ34をオフしてから所定時間t2(例えば、30秒)が経過したか否かを判定し(S180)、所定時間t2が経過していないと判定すると、S160に戻ってS160〜S180の処理を繰り返す。このように、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでの間、入力した温度T1と現在の第1判定温度Td1とのうち大きい方を新たな第1判定温度Td1に逐次更新していくことにより、第1判定温度Td1は、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでに第1サーミスタ36により検出された温度のうち最も高い温度となる。また、同様に、入力した温度T2と現在の第2判定温度Td2とのうち大きい方を新たな第2判定温度Td2に逐次更新していくことにより、第2判定温度Td2は、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでに第2サーミスタ38により検出された温度のうち最も高い温度となる。ここで、タンク32内の水が満水状態の場合、ヒータ34により熱せられた水は、膨張して重力方向の上方へ移動する。本実施形態では、第1および第2サーミスタ36,38は、いずれもヒータ34の重力方向の上方に設けられているから、ヒータ34への通電時間(所定時間t1)が短い場合であっても、ヒータ34の加熱による水温変化を第1および第2サーミスタ36,38で正確に捉えることができる。
【0024】
CPU52は、所定時間t2が経過したと判定すると、第1判定温度Td1から第1初期温度Ti1を減じて温度差ΔT1を計算すると共に第2判定温度Td2から第2初期温度Ti2を減じて温度差ΔT2を計算する(S190)。そして、温度差ΔT1が閾値Tr1(例えば、1℃)以上で且つ温度差ΔT2が閾値Tr2(例えば、2℃)以上であるか否か(S200)、温度差ΔT1が閾値Tr3(例えば、0.3℃)未満で且つ温度差ΔT2が閾値Tr4(例えば、0.5℃)未満であるか否か(S210)、をそれぞれ判定する。ここで、閾値Tr1,Tr2は、タンク32内に必要な量の水が有る(満水)と判定するための閾値であり、第2サーミスタ38が第1サーミスタ36よりもヒータ34に近接しているため、閾値Tr2の方が閾値Tr1よりも大きな値に定められている。閾値Tr3,Tr4は、タンク32内に必要な量の水が無い(未満水)と判定するための閾値であり、それぞれ閾値Tr1,Tr2よりも小さな値に定められている。また、第2サーミスタ38が第1サーミスタ36よりもヒータ34に近接しているため、閾値Tr4の方が閾値Tr3よりも大きな値に定められている。
【0025】
CPU52は、温度差ΔT1が閾値Tr1以上で且つ温度差ΔT2が閾値Tr2以上であると判定すると、タンク32内に必要な量の水が有る(満水)と判定して(S220)、タンク水有無判定ルーチンを終了し、温度差ΔT1が閾値Tr3未満で且つ温度差ΔT2が閾値Tr4未満であると判定すると、タンク32内に必要な量の水が無い(未満水)と判定して(S230)、タンク水有無判定ルーチンを終了する。
【0026】
一方、CPU52は、温度差ΔT1が閾値Tr3以上で且つ閾値Tr1未満であると判定するか、温度差ΔT2が閾値Tr4以上で且つ閾値Tr2未満であると判定すると、タンク32内の必要な量の水の有無が確定できないと判断し、S120〜S140の処理と同じ処理を実行して、所定時間t1に亘ってヒータ34を再通電する(S240〜S260)。そして、CPU52は、S150〜S180の処理と同様に、第3判定温度Td3および第4判定温度Td4を値0に初期化した後(S270)、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでの間、第1および第2サーミスタ36,38からの温度T1,T2を入力し、入力した温度T1と第3判定温度Td3とのうち大きい方を新たな第3判定温度Td3に設定すると共に入力した温度T2と第4判定温度Td4とのうち大きい方を新たな第4判定温度Td4に設定するS280〜S300の処理を繰り返す。
【0027】
CPU52は、所定時間t2が経過したと判定すると、第3判定温度Td3から第1初期温度Ti1を減じて温度差ΔT3を計算すると共に第4判定温度Td4から第2初期温度Ti2を減じて温度差ΔT4を計算する(S310)。そして、温度差ΔT3が上述した閾値Tr1以上で且つ温度差ΔT4が上述した閾値Tr2以上であるか否かを判定し(S320)、温度差ΔT3が閾値Tr1以上で且つ温度差ΔT4が閾値Tr2以上であると判定すると、タンク32内に必要な量の水が有る(満水)と判定して(S330)、タンク水有無判定ルーチンを終了し、温度差ΔT3が閾値Tr1未満であるか、温度差ΔT4が閾値Tr2未満であると判定すると、タンク32内に必要な量の水が無い(未満水)と判定して(S340)、タンク水有無判定ルーチンを終了する。このように、ヒータ34を短時間(所定時間t1)通電させただけでは、タンク32内の水の有無を確定できないときには、ヒータ34を更に所定時間t1だけ再通電させ、タンク32内に必要な量の水があれば温度変化が大きくなり易い状況をつくることにより、タンク32内の必要な量の水の有無を誤判定するのを抑制することができる。
【0028】
次に、第1サーミスタ36を用いた温水タンク装置30の異常判定動作について説明する。図6は、制御装置50のCPU52により実行される異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ヒータ34を通電しているときに、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0029】
異常判定ルーチンが実行されると、制御装置50のCPU52は、第1サーミスタ36からの温度T1を入力し(S400)、入力した温度T1が上限温度Tmaxよりも大きいか否かを判定する(S410)。ここで、上限温度Tmaxは、タンク32内の異常な高温状態を判定するための閾値であり、例えば、50℃や55℃に定められている。CPU52は、入力した温度T1が上限温度Tmax以下であると判定すると、タンク32内は正常であると判断して、異常判定ルーチンを終了する。一方、CPU52は、入力した温度T1が上限温度Tmaxよりも大きいと判定すると、タンク32内が異常な高温状態にあると判断し、ヒータ34をオフとして(S420)、異常判定ルーチンを終了する。
【0030】
以上説明した実施形態の温水タンク装置30は、タンク34の上部に第1サーミスタ36を設けられ、第1サーミスタ36よりもヒータ34に近接して第2サーミスタ38が設けられる。そして、電源スイッチや温水スイッチ59がオンされると、ヒータ34を所定時間t1通電し、通電前に第1サーミスタ36により検出された初期温度Ti1と通電後に第1サーミスタ36により検出された第1判定温度Td1との温度差ΔT1が閾値Tr1以上であり、且つ、通電前に第2サーミスタ38により検出された初期温度Ti2と通電後に第2サーミスタ38により検出された第2判定温度Td2との温度差ΔT2が閾値Tr1よりも大きい閾値Tr2以上である場合に、タンク34に必要な量の水が有ると判定する。この結果、2つのサーミスタ36,38を用いた簡易な構成によりタンク34内に必要な量の水が蓄えられていることを判定することができる。しかも、第1および第2サーミスタ36,38は、ヒータ34の重力方向の上方に設けられるため、ヒータ34への通電時間(所定時間t1)が短時間であっても、ヒータ34の加熱による水温変化を第1および第2サーミスタ36,38でより正確に捉えることができる。
【0031】
また、実施形態の温水タンク装置30は、第1初期温度Ti1と第1判定温度Td1との温度差が第1閾値Tr1よりも小さい第3閾値Tr3未満であり、且つ、第2初期温度Ti2と第2判定温度Td2との温度差が第2閾値Tr2よりも小さい第4閾値Tr4未満である場合に、タンク34内に必要な量の水が蓄えられていないと判定する。これにより、2つのサーミスタ36,38を用いた簡易な構成によりタンク34内に必要な量の水が蓄えられていないことを判定することができる。加えて、温度差ΔT1が閾値Tr3以上で閾値Tr1未満であるか、温度差ΔT2が閾値Tr4以上で閾値Tr2未満である場合には、ヒータ34を所定時間t1再通電し、初期温度Ti1と再通電後に第1サーミスタ36により検出された第3判定温度Td3との温度差ΔT3が閾値Tr1以上であり、且つ、初期温度Ti2と再通電後に第2サーミスタ38により検出された第4判定温度Td4との温度差ΔT4が閾値Tr2以上である場合に、タンク34に必要な量の水が有ると判定し、第1初期温度Ti1と第3判定温度Td3との温度差が第1閾値Tr1未満であるか、第2初期温度Ti2と第4判定温度Td4との温度差が第2閾値Tr2未満である場合に、タンク34内に必要な量の水が蓄えられていないと判定する。これにより、ヒータ34を短時間(所定時間t1)通電させただけでは、タンク32内の水の有無を確定できないときには、ヒータ34を更に所定時間t1だけ再通電させ、タンク32内に必要な量の水があれば温度変化が大きくなり易い状況をつくることにより、タンク32内の必要な量の水の有無を誤判定するのを抑制することができる。
【0032】
さらに、実施形態の温水タンク装置30は、タンク34の上部に設けられた第1サーミスタ36によりタンク32内の異常な高温状態を判定するから、別途サーモスタット等の安全装置を設ける必要がない。
【0033】
上述した実施形態では、温度差ΔT1が閾値Tr3以上で閾値Tr1未満であるか、温度差ΔT2が閾値Tr4以上で閾値Tr2未満である場合には、ヒータ34の再通電と、タンク34内の水有無の再判定とを行なうものとした。しかし、温度差ΔT1が閾値Tr1未満であるか温度差ΔT2が閾値Tr2未満である場合に、タンク34に必要な量の水が無いと判定するものとして、ヒータ34の再通電とタンク34内の水有無の再判定を行なわないものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、ヒータ34を通電した後、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでに第1サーミスタ36により検出された温度のうち最も高い温度を第1判定温度Td1に設定し、ヒータ34をオフしてから所定時間t2が経過するまでに第2サーミスタ38により検出された温度のうち最も高い温度を第2判定温度Td2に設定するものとした。しかし、ヒータ34をオフしてから所定時間が経過したタイミングで第1サーミスタ36により検出された温度を第1判定温度Td1に設定してもよいし、ヒータ34をオフしてから所定時間が経過したタイミングで第2サーミスタ38により検出された温度を第2判定温度Td2に設定してもよい。なお、第3判定温度Td3や第4判定温度Td4についても同様である。
【0035】
上述した実施形態では、ヒータ34の通電時間と再通電時間とを同じ時間(所定時間t1)に設定したが、それぞれ異なる時間に設定してもよい。
【0036】
上述した実施形態では、第1および第2サーミスタ36,38を、ヒータ34の重力方向の上方に設けるものとしたが、これに限定されるものではなく、少なくとも、第1サーミスタ36をタンク34の上部に設置し、第2サーミスタ38を第1サーミスタ36よりもヒータ34に近接して設置するものであればよい。この場合、第1サーミスタ36や第2サーミスタ38の設置位置に応じて第1〜第4閾値Tr1〜Tr4を設定するものとすればよい。
【0037】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、タンク32が「タンク」に相当し、ヒータ34が「ヒータ」に相当し、第1サーミスタ36が「第1温度センサ」に相当し、第2サーミスタ38が「第2温度センサ」に相当し、制御装置50が「制御装置」に相当する。
【0038】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、温水タンク装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
12 給水管、20 衛生洗浄装置、22 止水電磁弁、24 洗浄水流路、30 温水タンク装置、32 タンク、33 吐出口、34 ヒータ、36 第1サーミスタ、38 第2サーミスタ、40 ノズル装置、42 脈動ポンプ、44 切替バルブ、46,48 ノズル、50 制御装置、52 CPU、54 ROM、56 RAM、58 タイマ、 59 温水スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6