(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の各実施形態及び各変形例の相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付してある。又、説明に用いる各図は、概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0010】
第一実施形態の車両用自動変速装置10(以下、単に「装置10」とも称呼する。)は、
図1に示すように、入力軸Nと出力軸Tとを備える。入力軸N及び出力軸Tは、固定部材としてのトランスミッションケースHに対して、入力軸Nの軸線Lの周りに回転可能に支持されている。入力軸Nは、図示省略のクラッチ装置等を介して動力源(例えば、エンジン又は電動機等)からの回転駆動力を入力する軸部材である。出力軸Tは、入力軸Nと同軸上に配置され、変速された回転駆動力を図示省略の差動装置等を介して駆動輪に出力する軸部材である。
【0011】
又、装置10は、入力軸Nと出力軸Tとの間に、入力軸Nの軸線Lに沿って順に配置された四つのシングルピニオン式の第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4を備える。そして、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4は、この順で入力軸Nから出力軸Tに向けて並設されている。更に、装置10は、第一クラッチCL1、第二クラッチCL2、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4と、第一ブレーキB1、第二ブレーキB2及び第三ブレーキB3と、の七つの係合要素を備えている。
【0012】
第一プラネタリ機構P1は、軸線Lと同軸に回転可能に支持された第一要素としての第一サンギヤS1、第三要素としての第一リングギヤR1、及び、第一サンギヤS1と第一リングギヤR1とに噛合する第一ピニオンギヤQ1を回転可能に支持する第二要素としての第一キャリアC1により構成される。第二プラネタリ機構P2は、軸線Lと同軸に回転可能に支持された第三要素としての第二サンギヤS2、第一要素としての第二リングギヤR2、及び、第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とに噛合する第二ピニオンギヤQ2を回転可能に支持する第二要素としての第二キャリアC2により構成される。第三プラネタリ機構P3は、軸線Lと同軸に回転可能に支持された第一要素としての第三サンギヤS3、第三要素としての第三リングギヤR3、及び、第三サンギヤS3と第三リングギヤR3とに噛合する第三ピニオンギヤQ3を回転可能に支持する第二要素としての第三キャリアC3により構成される。第四プラネタリ機構P4は、軸線Lと同軸に回転可能に支持された第一要素としての第四サンギヤS4、第三要素としての第四リングギヤR4、及び、第四サンギヤS4と第四リングギヤR4とに噛合する第四ピニオンギヤQ4を回転可能に支持する第二要素としての第四キャリアC4により構成される。
【0013】
第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4は、複数の要素同士を選択的に係脱可能な係合要素である。第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4は、常開型であり、供給される油圧によって作動する油圧式となっている。これにより、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4は、トランスミッションECU(TM−ECU)による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから入力軸NやトランスミッションケースHに形成された油路を介して油圧が供給されると、図示しない複数のクラッチ板を接触させて、対象の要素間で駆動力が伝達されるように要素同士を係合する。そして、クラッチ板同士を離間させることにより、対象の要素間で駆動力が伝達されないように要素同士を離脱させる。
【0014】
第一クラッチCL1は、
図1に示すように、入力軸Nと第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とを係脱可能に連結する。第二クラッチCL2は、第二プラネタリ機構P2を一体回転させるものであり、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2、第二リングギヤR2及び第二キャリアC2のうちの二つの要素を係脱可能にする。具体的に、本実施形態において、
図1に示すように、第二クラッチCL2は、第二サンギヤS2と第二キャリアC2とを係脱可能に連結する。第三クラッチCL3は、後述する第八連結部材J8及び第九連結部材J9の一方と係脱可能に連結するものであり、
図1に示すように、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3及び出力軸Tと第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4とを係脱可能に連結する。第四クラッチCL4は、第一プラネタリ機構P1を一体回転させるものであり、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1、第一リングギヤR1及び第一キャリアC1のうちの二つの要素を係合可能にする。具体的に、本実施形態において、
図1に示すように、第四クラッチCL4は、第一リングギヤR1と第一キャリアC1とを係脱可能に連結する。
【0015】
第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3は、トランスミッションケースHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3は、供給される油圧によって作動する油圧式となっている。これにより、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3は、TM−ECUによる制御指令に基づいて作動する油圧ポンプからトランスミッションケースHに形成された油路を介して油圧が供給されると、図示しないディスクにパッドを押圧して、対象とする所定の要素の回転を制動する。そして、ディスクからパッドを離間させることにより、所定の要素の回転を許容する。
【0016】
第一ブレーキB1は、
図1に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1をトランスミッションケースHに対して係脱可能にする。第二ブレーキB2は、
図1に示すように、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2をトランスミッションケースHに対して係脱可能にする。第三ブレーキB3は、
図1に示すように、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3をトランスミッションケースHに対して係脱可能にする。
【0017】
又、装置10においては、
図1に示すように、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4をそれぞれ構成する各要素S1,S2,S3,S4,R1,R2,R3,R4,C1,C2,C3,C4は、第一連結部材J1〜第十二連結部材J12の何れかを介して別のプラネタリ機構の何れかの要素と連結される。又、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4は、第一連結部材J1〜第十一連結部材J11の何れかを介して第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の何れかの要素と連結される。更に、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3は、第一連結部材J1〜第十一連結部材J11の何れかを介して第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の何れかの要素と連結される。
【0018】
具体的に、第一連結部材J1は、
図1に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1をトランスミッションケースHに設けられた第一ブレーキB1と係脱可能な連結状態にする。第二連結部材J2は、
図1に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2とを連結する。第三連結部材J3は、
図1に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1と入力軸Nとを連結する。
【0019】
第四連結部材J4は、
図1に示すように、第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3とを連結する。第五連結部材J5は、
図1に示すように、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3と出力軸Tとを連結する。第六連結部材J6は、
図1に示すように、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3をトランスミッションケースHに設けられた第三ブレーキB3と係脱可能な連結状態にする。第七連結部材J7は、
図1に示すように、第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4とを連結する。第八連結部材J8は、
図1に示すように、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4と入力軸Nとを連結する。
【0020】
第九連結部材J9は、
図1に示すように、第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4を第五連結部材J5に設けられた第三クラッチCL3を介して出力軸Tと係脱可能な連結状態にする。第十連結部材J10は、
図1に示すように、第四クラッチCL4を第三連結部材J3に連結する。第十一連結部材J11は、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2をトランスミッションケースHに設けられた第二ブレーキB2と係脱可能な連結状態にする。第十二連結部材J12は、第五連結部材J5と出力軸Tとを連結する。
【0021】
以上のように構成される本実施形態の装置10は、第一クラッチCL〜第四クラッチCL4及び第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3のうちの三つの係合要素が係合されることにより、リバース(High及びLow)と、一速から六速のアンダードライブと、七速から十速のオーバードライブと、を有する前進十段後進二段の変速段を形成可能な自動変速装置である。具体的に、装置10において、
図2に示すように、第一ブレーキB1、第二ブレーキB2及び第三ブレーキB3のみが係合されると、入力軸Nの回転に対して出力軸Tの回転を逆転させ、リバース(Low)により車両をリバース走行させるようになっている。又、第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第二ブレーキB2及び第三ブレーキB3のみが係合されると、入力軸Nの回転に対して出力軸Tの回転を逆転させ、リバース(Low)よりも回転数の大きなリバース(High)により車両をリバース走行させるようになっている。
【0022】
又、装置10において、
図2に示すように、第二クラッチCL2のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第三ブレーキB3のみが係合されると一速に、第一クラッチCL1及び第二クラッチCL2のみが係合されるとともに第三ブレーキB3のみが係合されると二速になるようになっている。又、第一クラッチCL1のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第三ブレーキB3のみが係合されると三速に、第一クラッチCL1及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第三ブレーキB3のみが係合されると四速になるようになっている。又、第一クラッチCL1及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1のみが係合されると五速に、第一クラッチCL1、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3が係合されると六速になるようになっている。
【0023】
更に、装置10において、
図2に示すように、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1のみが係合されると七速に、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第二ブレーキB2のみが係合されると八速になるようになっている。又、第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第二ブレーキB2のみが係合されると九速に、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第二ブレーキB2のみが係合されると十速になるようになっている。
【0024】
ところで、装置10においては、上述した従来の車両用自動変速装置における各ギヤ比を変更することなく、High側のギヤ比に対するLow側のギヤ比の比(=(Low側のギヤ比)/(High側のギヤ比))を表すスプレッドを広げて前進十速化が可能となる。以下、このことを
図2及び
図3に示す速度線図に基づいて具体的に説明する。尚、
図3に示す速度線図は、各変速段における第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の三要素の速度比を表し、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素を横軸方向及び縦軸方向にギヤ比(λ)に対応させた間隔(1:λ)で配置し、縦軸方向に各要素に対してその速度比を取ったものである。又、
図3にて太実線により示した速度線は、第四クラッチCL4が係合状態になる場合の速度線を示す。
【0025】
装置10(上述した従来の車両用自動変速機も同様)が九速を形成する場合、
図3に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1が第三連結部材J3によって連結された入力軸N(
図1を参照)から回転が入力され、第一サンギヤS1が第一ブレーキB1によって固定されている。これにより、第一プラネタリ機構P1においては、第一キャリアC1の回転数が作られる。又、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2とが第二連結部材J2によって連結されており(
図1を参照)、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2が第十一連結部材J11を介して第二ブレーキB2によって固定されている。これにより、第二プラネタリ機構P2においては、第二リングギヤR2の逆回転数が作られる。
【0026】
又、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4は、第八連結部材J8によって連結された入力軸Nから回転が入力され(
図1を参照)、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4と第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とが第四連結部材J4及び第七連結部材J7によって連結されている(
図1を参照)。これにより、第四プラネタリ機構P4においては、第四リングギヤR4の回転数が作られる。第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とが第四連結部材J4によって連結され(
図1を参照)、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3と第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4とが第五連結部材J5及び第九連結部材J9を介して第三クラッチCL3によって連結される。これにより、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3の回転数が作られる。尚、九速形成時においては、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3は第三ブレーキB3によって固定されていないので自由回転する。第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3は、第五連結部材J5及び第十二連結部材J12を介して出力軸Tに連結されているので、第三キャリアC3の回転数が出力軸Tに伝達される。
【0027】
これに対して、装置10が十速を形成する場合、
図2及び
図3に示すように、上述した九速を形成する場合と比べて、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1が第一ブレーキB1によって固定されていない点で異なる。又、装置10が十速を形成する場合、上述した九速を形成する場合と比べて、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1及び第一キャリアC1が第十連結部材J10を介して第四クラッチCL4によって連結されて、第一プラネタリ機構P1が一体回転する点で異なる。
【0028】
これにより、
図3に示すように、九速形成時に比べて、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2の回転数が増加し、第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2の逆回転数も増加する。同様に、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4及び第四リングギヤR4と、第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3及び第三キャリアC3の回転数も増加し、増加した第三キャリアC3の回転数が出力軸Tに伝達される。これにより、
図3に示すように、装置10におけるスプレッドが広がる。
【0029】
又、装置10がリバース(High)を形成する場合にも、
図2及び
図3に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1及び第一キャリアC1が第十連結部材J10を介して第四クラッチCL4によって連結されて一体回転する。従って、増加した第三キャリアC3の回転数が出力軸Tに伝達されることにより、装置10においてリバース(High)を形成することが可能となる。
【0030】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の車両用自動変速装置10は、入力軸Nと、出力軸Tと、入力軸Nと出力軸Tとの間に配置されて、第一要素としての第一サンギヤS1、第二リングギヤR2、第三サンギヤS3及び第四サンギヤS4、第二要素としての第一キャリアC1、第二キャリアC2、第三キャリアC3及び第四キャリアC4、及び、第三要素としての第一リングギヤR1、第二サンギヤS2、第三リングギヤR3及び第四リングギヤR4をそれぞれ有する第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4と、第一クラッチCL1、第二クラッチCL2、第三クラッチCL3、第四クラッチCL4、第一ブレーキB1、第二ブレーキB2及び第三ブレーキB3の七つの係合要素と、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1と固定部材としてのトランスミッションケースHとを係脱可能な連結状態にする第一連結部材J1と、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2とを連結状態にする第二連結部材J2と、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1と入力軸Nとを連結状態にする第三連結部材J3と、第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3とを連結状態にする第四連結部材J4と、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3と出力軸Tとを連結状態にする第五連結部材J5と、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3とトランスミッションケースHとを連結状態にする第六連結部材J6と、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4と第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3とを連結状態にする第七連結部材J7と、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4と入力軸Nとを連結状態にする第八連結部材J8と、第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4と出力軸Tとを連結状態にする第九連結部材J9と、を備え、第一ブレーキB1は、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1をトランスミッションケースHに対して係脱可能とし、第二ブレーキB2は、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2をトランスミッションケースHに対して係脱可能とし、第三ブレーキB3は、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3をトランスミッションケースHに対して係脱可能とし、第一クラッチCL1は、入力軸Nと第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とを係脱可能に連結し、第二クラッチCL2は、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2、第二キャリアC2及び第二リングギヤR2のうちの二つの要素である第二サンギヤS2と第二キャリアC2とを係脱可能に連結し、第三クラッチCL3は、第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4と、第八連結部材J8及び第九連結部材J9のうちの一方である第九連結部材J9と、を係脱可能に連結し、第四クラッチCL4は、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4のそれぞれの、第一サンギヤS1、第二サンギヤS2、第三サンギヤS3及び第四サンギヤと、第一キャリアC1、第二キャリアC2、第三キャリアC3及び第四キャリアC4と、第一リングギヤR1、第二リングギヤR2、第三リングギヤR3及び第四リングギヤR4とのうちの二つの要素である第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第一リングギヤR1とを係脱可能に連結し、七つの係合要素のうちの三つの係合要素を係合する、ように構成される。
【0031】
そして、この場合、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4は、入力軸Nの軸線Lに沿って、入力軸Nの側から出力軸Tの側に向けて第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4の順に配置される。
【0032】
これらによれば、車両用自動変速装置10における各変速段を形成するギヤ比を変更することなく、スプレッドを広げることができる。これにより、車両用自動変速装置10のステップ比が大きくなることがなく、変速時における変速ショックを悪化させることがない。従って、車両用自動変速装置10においては、極めてスムーズな変速を実現することができる。又、車両用自動変速装置10においては、スプレッドを広げるためにギヤ比を変更する必要がないので、駆動源であるエンジンが駆動力を発生する際に、効率の良いエンジンの回転数域を使用することができる。これにより、車両の燃費を悪化させることがない。
【0033】
又、第四クラッチCL4が、入力軸Nの軸線Lに沿って、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4の順で配置される第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1、第一キャリアC1及び第一リングギヤR1のうちの第一キャリアC1と第一リングギヤR1を連結することにより、第一プラネタリ機構P1を一体に回転させることができる。これにより、車両用自動変速装置10のスプレッドを過度に広げすぎることなく適切に広げることができ、多変速段化に伴うステップ比の増大を抑制することができる。
【0034】
又、この場合、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4は、シングルピニオン式のプラネタリ機構のみで構成することができる。これにより、第一プラネタリ機構P1、第二プラネタリ機構P2、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4の構造を簡略化することができる。
【0035】
(第一実施形態の第一変形例)
次に、第一実施形態の第一変形例の構成について、
図1に対応させて示す
図4を参照して説明する。ここで、第一変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一キャリアC1が第二要素であり、第一リングギヤR1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二サンギヤS2が第一要素であり、第二キャリアC2が第二要素であり、第二リングギヤR2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0036】
従って、第一変形例の車両用自動変速装置11においては、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1が第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置11においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0037】
このような構成の車両用自動変速装置11においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0038】
(第一実施形態の第二変形例)
次に、第一実施形態の第二変形例の構成について、
図1に対応させて示す
図5を参照して説明する。ここで、第二変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一キャリアC1が第二要素であり、第一リングギヤR1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二サンギヤS2が第一要素であり、第二キャリアC2が第二要素であり、第二リングギヤR2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0039】
従って、第二変形例の車両用自動変速装置12においては、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1が第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置12においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置12においては、第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4は第九連結部材J9によって第五連結部材J5及び第十二連結部材J12即ち出力軸Tと連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0040】
更に、車両用自動変速装置12においては、第二クラッチCL2が第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2と第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置12においては、第三クラッチCL3が第八連結部材J8を介して、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4と入力軸Nとを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0041】
このような構成の車両用自動変速装置12においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0042】
(第一実施形態の第三変形例)
次に、第一実施形態の第三変形例の構成について、
図1に対応させて示す
図6を参照して説明する。第三変形例の車両用自動変速装置13においては、第一プラネタリ機構P1をダブルピニオン式に変更した点で装置10と異なる構成となっている。このため、第三変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一リングギヤR1が第二要素であり、第一キャリアC1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二サンギヤS2が第一要素であり、第二キャリアC2が第二要素であり、第二リングギヤR2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0043】
従って、車両用自動変速装置13においては、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1が第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置13においては、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1が入力軸Nと第三連結部材J3によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置13においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0044】
更に、車両用自動変速装置13においては、第一クラッチCL1が第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置13においては、第二クラッチCL2が第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2と第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。更に、車両用自動変速装置13においては、第三クラッチCL3が第四連結部材J4及び第七連結部材J7を介して、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2と第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0045】
このような構成の車両用自動変速装置13においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0046】
(第一実施形態の第四変形例)
次に、第一実施形態の第四変形例の構成について
図1に対応させて示す
図7を参照して説明する。第四変形例の車両用自動変速装置14においては、第一プラネタリ機構P1に加えて第二プラネタリ機構P2もダブルピニオン式に変更した点で装置10と異なる構成となっている。このため、第三変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一リングギヤR1が第二要素であり、第一キャリアC1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二サンギヤS2が第一要素であり、第二リングギヤR2が第二要素であり、第二キャリアC2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0047】
従って、車両用自動変速装置14においては、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1が第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置14においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0048】
更に、車両用自動変速装置14においては、第一クラッチCL1が第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1に第三連結部材J3を介して連結される入力軸Nと第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。更に、車両用自動変速装置14においては、第二ブレーキB2が第十一連結部材J11を介して第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2の回転を制動するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0049】
このような構成の車両用自動変速装置14においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0050】
(第一実施形態の第五変形例)
次に、第一実施形態の第五変形例の構成について、
図1に対応させて示す
図8を参照して説明する。ここで、第五変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一キャリアC1が第二要素であり、第一リングギヤR1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二サンギヤS2が第一要素であり、第二キャリアC2が第二要素であり、第二リングギヤR2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0051】
従って、第五変形例の車両用自動変速装置15(以下、単に「装置15」とも称呼する。)においては、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3が第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4と第五連結部材J5によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、装置15においては、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3が第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4と第七連結部材J7によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、装置15においては、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1が第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、装置15においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0052】
更に、装置15においては、第三クラッチCL3が第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4と入力軸Nとを第八連結部材J8を介して係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0053】
このような構成の装置15においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0054】
(第一実施形態の第六変形例)
次に、第一実施形態の第六変形例の構成について、
図8に対応させて示す
図9を参照して説明する。第六変形例の車両用自動変速装置16においては、出力軸Tが入力軸Nの軸線Lと直交する方向に延在するように変更した点で装置15と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置16においては、第四プラネタリ機構P4が第三プラネタリ機構P3の外周側で入力軸Nの軸線Lの周りに回転可能に設けられる、即ち、入力軸Nの軸線Lに直角になるように変更した点で装置15と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置16においては、シングルピニオン式の第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4が、シングルピニオン式の第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3の外周側に一体に配置されることにより、第七連結部材J7を形成するように変更した点で装置15と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置16においては、第九連結部材J9が第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4と第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3とを連結し、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3を介して第五連結部材J5と連結するように変更した点で装置15と異なる構成となっている。
【0055】
更に、車両用自動変速装置16においては、第二クラッチCL2が第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2と第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とを第二連結部材J2を介して係脱可能に連結するように変更した点で装置15と異なる構成となっている。
【0056】
このような構成の車両用自動変速装置16においても、第一実施形態の装置10(第五変形例の装置15)と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。そして、車両用自動変速装置16は、第四プラネタリ機構P4が入力軸Nの軸線Lに対して直角に設けられることにより、前輪駆動(FF)用の自動変速装置として構成することが可能となる。
【0057】
(第一実施形態の第七変形例)
次に、第一実施形態の第七変形例の構成について、
図8に対応させて示す
図10を参照して説明する。ここで、第七変形例では、第一プラネタリ機構P1において、第一サンギヤS1が第一要素であり、第一キャリアC1が第二要素であり、第一リングギヤR1が第三要素である。又、第二プラネタリ機構P2において、第二リングギヤR2が第一要素であり、第二キャリアC2が第二要素であり、第二サンギヤS2が第三要素である。又、第三プラネタリ機構P3において、第三サンギヤS3が第一要素であり、第三キャリアC3が第二要素であり、第三リングギヤR3が第三要素である。更に、第四プラネタリ機構P4において、第四サンギヤS4が第一要素であり、第四キャリアC4が第二要素であり、第四リングギヤR4が第三要素である。
【0058】
従って、第七変形例の車両用自動変速装置17においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2が第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置15と異なる構成となっている。又、車両用自動変速装置17においては、第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置15と異なる構成となっている。
【0059】
このような構成の車両用自動変速装置17においても、第一実施形態の装置10(第五変形例の装置15)と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0060】
尚、上記第一実施形態の第五変形例、第六変形例及び第七変形例における車両用自動変速装置15,16,17においても、例えば、
図6及び
図7に示したように、第一プラネタリ機構P1をダブルピニオン式に変更したり、第二プラネタリ機構P2をダブルピニオン式に変更したりすることが可能である。
【0061】
(第一実施形態の第八変形例)
次に、第一実施形態の第八変形例の構成について、
図1に対応させて一部を示す
図11を参照して説明する。第八変形例の車両用自動変速装置18においては、第四クラッチCL4が、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1と第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1とを係脱可能に連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0062】
このような構成の車両用自動変速装置18においても、第四クラッチCL4によって第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1と第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1とが連結されることにより、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1、第一リングギヤR1及び第一キャリアC1を一体に回転させることができる。従って、車両用自動変速装置18においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0063】
(第一実施形態の第九変形例)
次に、第一実施形態の第九変形例の構成について、
図1に対応させて一部を示す
図12を参照して説明する。第九変形例の車両用自動変速装置19においては、第四クラッチCL4が、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1と第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1とを係脱可能に連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0064】
このような構成の車両用自動変速装置19においても、第四クラッチCL4によって第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1と第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1とが連結されることにより、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1、第一リングギヤR1及び第一キャリアC1を一体に回転させることができる。従って、車両用自動変速装置19においても、第一実施形態の装置10と同様、
図2に示すように、第一クラッチCL1〜第四クラッチCL4、及び、第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3の七つの係合要素のうちの三つの係合要素を選択的に係合して、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素の回転を規制することにより、前進十速段、後進二速段の変速段を形成することができる。
【0065】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の車両用自動変速装置20(以下、単に「装置20」とも称呼する。)は、
図13に示すように、第一プラネタリ機構P1及び第二プラネタリ機構P2をダブルピニオン式に変更した点で、
図1に示す上記第一実施形態の装置10と異なる構成となっている。又、装置20においては、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1(第二要素)が第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2(第三要素)と第二連結部材J2によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、装置20においては、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2(第一要素)が第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3(第一要素)と第四連結部材J4によって連結されるように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0066】
又、装置20においては、第一クラッチCL1が第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1(第三要素)に第三連結部材J3を介して連結される入力軸Nと第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2(第二要素)とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。又、装置20においても、第二クラッチCL2が第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2と第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とを係脱可能に連結する。更に、車両用自動変速装置20においては、第二ブレーキB2が第十一連結部材J11を介して第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2の回転を制動するように変更した点で装置10と異なる構成となっている。
【0067】
更に、装置20においては、第四クラッチCL4が第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2と第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3とを係脱可能に連結するように変更した点で装置10と異なっている。
【0068】
以上のように構成される第二実施形態の装置20は、第一クラッチCL〜第四クラッチCL4及び第一ブレーキB1〜第三ブレーキB3のうちの三つの係合要素が係合されることにより、リバースと、一速から八速のアンダードライブと、九速から十二速のオーバードライブと、を有する前進十二段後進一段の変速段を形成可能な自動変速装置である。具体的に、装置20において、
図14に示すように、第一ブレーキB1、第二ブレーキB2及び第三ブレーキB3のみが係合されると、入力軸Nの回転に対して出力軸Tの回転を逆転させ、リバースにより車両をリバース走行させるようになっている。
【0069】
又、装置20において、
図14に示すように、第二クラッチCL2のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第三ブレーキB3のみが係合されると一速に、第一クラッチCL1及び第二クラッチCL2のみが係合されるとともに第三ブレーキB3のみが係合されると二速になるようになっている。又、第一クラッチCL1のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第三ブレーキB3のみが係合されると三速に、第一クラッチCL1及び第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第三ブレーキB3のみが係合されると四速になるようになっている。又、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第三ブレーキB3のみが係合されると五速に、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第一ブレーキB1のみが係合されると六速になるようになっている。又、第一クラッチCL1及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1のみが係合されると七速に、第一クラッチCL1、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3が係合されると八速になるようになっている。
【0070】
更に、装置20において、
図14に示すように、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1のみが係合されると九速に、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第二ブレーキB2のみが係合されると十速になるようになっている。又、第三クラッチCL3のみが係合されるとともに第一ブレーキB1及び第二ブレーキB2のみが係合されると十一速に、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4のみが係合されるとともに第二ブレーキB2のみが係合されると十二速になるようになっている。
【0071】
ところで、この第二実施形態における装置20においても、上述した従来の車両用自動変速装置における各ギヤ比を変更することなく、High側のギヤ比に対するLow側のギヤ比の比(=(Low側のギヤ比)/(High側のギヤ比))を表すスプレッドを広げて前進十二速化が可能となる。以下、このことを
図14及び
図15に示す速度線図に基づいて具体的に説明する。尚、
図15に示す速度線図は、各変速段における第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の三要素の速度比を表し、第一プラネタリ機構P1〜第四プラネタリ機構P4の各要素を横軸方向及び縦軸方向にギヤ比(λ)に対応させた間隔(1:λ)で配置し、縦軸方向に各要素に対してその速度比を取ったものである。又、
図15にて太実線により示した速度線は、第四クラッチCL4が係合状態になる場合の速度線を示す。
【0072】
装置20が十一速を形成する場合、
図15に示すように、第一プラネタリ機構P1の第一キャリアC1が第三連結部材J3によって連結された入力軸N(
図13を参照)から回転が入力され、第一サンギヤS1が第一ブレーキB1によって固定されている。これにより、第一プラネタリ機構P1においては、第一リングギヤR1の回転数が作られる。又、第一プラネタリ機構P1の第一リングギヤR1と第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2とが第二連結部材J2によって連結されており(
図13を参照)、第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2が第十一連結部材J11を介して第二ブレーキB2によって固定されている。これにより、第二プラネタリ機構P2においては、第二サンギヤS2の逆回転数が作られる。
【0073】
又、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4は、第八連結部材J8によって連結された入力軸Nから回転が入力され(
図13を参照)、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4と第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2とが第四連結部材J4及び第七連結部材J7によって連結されている(
図13を参照)。これにより、第四プラネタリ機構P4においては、第四リングギヤR4の回転数が作られる。第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3と第二プラネタリ機構P2の第二リングギヤR2とが第四連結部材J4によって連結され(
図13を参照)、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3と第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4とが第五連結部材J5及び第九連結部材J9を介して第三クラッチCL3によって連結される(
図13を参照)。これにより、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3の回転数が作られる。尚、十一速形成時においては、第三プラネタリ機構P3の第三リングギヤR3は第三ブレーキB3によって固定されていないので自由回転する。第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3は、第五連結部材J5及び第十二連結部材J12を介して出力軸Tに連結されているので、第三キャリアC3の回転数が出力軸Tに伝達される。
【0074】
これに対して、装置20が十二速を形成する場合、
図14及び
図15に示すように、上述した十一速を形成する場合と比べて、第一プラネタリ機構P1の第一サンギヤS1が第一ブレーキB1によって固定されていない点で異なる。又、装置20が十二速を形成する場合、上述した十一速を形成する場合と比べ、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2(第三要素)と第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3(第二要素)とが第十連結部材J10を介して第四クラッチCL4によって連結されて一体回転する点で異なる。
【0075】
装置20において十二速が形成される場合、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2と第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4とが第四連結部材J4及び第七連結部材J7によって連結される(
図13を参照)。又、装置20においては、第三クラッチCL3により第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4と第五連結部材J5を介して連結された第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3と、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2と、が、第四クラッチCL4により第十連結部材J10を介して連結される(
図13を参照)。又、装置20においては、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4と第三プラネタリ機構P3の第三サンギヤS3とが第七連結部材J7によって連結される(
図13を参照)。更に、第四プラネタリ機構P4の第四キャリアC4には、第八連結部材J8を介して入力軸Nからの回転が入力される(
図13を参照)。これにより、装置20においては、十二速を形成する場合の、第二プラネタリ機構P2の第二サンギヤS2及び第二キャリアC2、並びに、第四プラネタリ機構P4の第四サンギヤS4及び第四リングギヤR4の回転数が作られる。
【0076】
これにより、第三クラッチCL3によって第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4に連結された第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3の回転数が作られる。そして、第三キャリアC3は、第五連結部材J5及び第十二連結部材J12を介して出力軸Tに連結されているので、第三キャリアC3の回転数が出力軸Tに伝達される(
図13を参照)。ここで、装置20においては、十二速を形成する場合、第三クラッチCL3及び第四クラッチCL4により、第二プラネタリ機構P2の第二キャリアC2と第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4とが連結されて、第二キャリアC2と第四リングギヤR4とが同速で回転する。従って、十二速を形成する場合においては、第四プラネタリ機構P4の第四リングギヤR4の回転数は十一速形成時に比べて大きくなるので、第三プラネタリ機構P3の第三キャリアC3の回転数も大きくなる。これにより、
図15に示すように、装置20におけるスプレッドが広がる。
【0077】
以上の説明からも理解できるように、上記第二実施形態の車両用自動変速装置20は、第一プラネタリ機構P1及び第二プラネタリ機構P2が、ダブルピニオン式のプラネタリ機構であり、第三プラネタリ機構P3及び第四プラネタリ機構P4が、シングルピニオン式のプラネタリ機構であり、第一プラネタリ機構P1の第一要素、第二プラネタリ機構P2の第一要素、第三プラネタリ機構P3の第一要素及び第四プラネタリ機構P4の第一要素は、それぞれ、第一サンギヤS1、第二サンギヤS2、第三サンギヤS3及び第四サンギヤS4であり、第一プラネタリ機構P1の第三要素、第二プラネタリ機構P2の第三要素、第三プラネタリ機構P3の第二要素及び第四プラネタリ機構P4の第二要素は、それぞれ、第一キャリアC1、第二キャリアC2、第三キャリアC3及び第四キャリアC4であり、第一プラネタリ機構P1の第二要素、第二プラネタリ機構P2の第二要素、第三プラネタリ機構P3の第三要素及び第四プラネタリ機構P4の第三要素は、それぞれ、第一リングギヤR1、第二リングギヤR2、第三リングギヤR3及び第四リングギヤR4であり、第四クラッチCL4は、第二プラネタリ機構P2の第三要素である第二キャリアC2と第三プラネタリ機構P3の第二要素である第三キャリアC3とを係脱可能に連結する。
【0078】
これによれば、車両用自動変速装置20における各変速段を形成するギヤ比を変更することなく、スプレッドを広げることができる。これにより、車両用自動変速装置20のステップ比が大きくなることがなく、変速時における変速ショックを悪化させることがない。従って、車両用自動変速装置20においては、極めてスムーズな変速を実現することができる。又、車両用自動変速装置20においては、スプレッドを広げるためにギヤ比を変更する必要がないので、駆動源であるエンジンが駆動力を発生する際に、効率の良いエンジンの回転数域を使用することができる。これにより、車両の燃費を悪化させることがない。
【0079】
本発明の実施に当たっては、上記各実施形態及び上記各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、例えば、上記各実施形態及び上記各変形例を組み合わせる等、種々の変形が可能である。