特許第6869478号(P6869478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869478
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ドアモジュール
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20210426BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20210426BHJP
   E05B 79/06 20140101ALI20210426BHJP
   E05B 79/16 20140101ALI20210426BHJP
   E05B 83/40 20140101ALN20210426BHJP
【FI】
   B60J5/00 M
   B60J5/00 501A
   E05B79/22 A
   E05B79/06 B
   E05B79/16
   !E05B83/40
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-129103(P2017-129103)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10974(P2019-10974A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 禎之
(72)【発明者】
【氏名】片山 英史
(72)【発明者】
【氏名】柴山 智志
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−097940(JP,A)
【文献】 特開2017−020335(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0208656(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0072726(US,A1)
【文献】 特開2017−095903(JP,A)
【文献】 特開2007−120284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
E05B 79/06
E05B 79/16
E05B 79/22
E05B 83/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部を車両のドアのインナーパネルに当接させて同インナーパネルに設けられた開口部を車室側から覆うモジュールパネルと、
前記モジュールパネルに取り付けられていてアウトサイドハンドルの操作に伴う作用が入力され、前記ドアに取り付けられている装置を制御する出力を行うリモートコントロール機構と、
入力側アームと出力側アームとを備えていて前記入力側アームと前記出力側アームとの間に位置する支点において前記モジュールパネルに回動可能に取り付けられている揺動アームと、
前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとを連結する連結部材と、を備え、
前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとが前記連結部材を介して連結されているときには、前記入力側アームが前記モジュールパネルにおける前記シール部が設けられているアウターパネル側において同モジュールパネルにおけるシール部よりも外側にはみ出た状態になり、前記入力側アームに入力された前記アウトサイドハンドルの操作に伴う作用を、前記連結部材を介して前記リモートコントロール機構に入力する一方、前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとが連結されていないときには、前記入力側アーム及び前記出力側アームの双方が前記シール部よりも内側で前記モジュールパネルと重なる位置への同揺動アームの回動が許容されるドアモジュール。
【請求項2】
前記揺動アームは、前記モジュールパネルを貫通している前記支点と、前記モジュールパネルにおけるアウターパネル側とは反対の車室側に配設されている前記出力側アームと、前記モジュールパネルのアウターパネル側に配設されている前記入力側アームと、からなり、
前記リモートコントロール機構が前記モジュールパネルにおける車室側の面に取り付けられている請求項1に記載のドアモジュール。
【請求項3】
前記モジュールパネルには、同モジュールパネルを横切る梁が設けられており、前記出力側アームが前記梁の上面に当接しているときには、前記入力側アーム及び前記出力側アームの双方が前記シール部よりも内側で前記モジュールパネルと重なった状態になる請求項1又は請求項2に記載のドアモジュール。
【請求項4】
前記モジュールパネルには、前記出力側アームが前記梁の上面に当接しているときに、前記入力側アームを収容する前記入力側アームの形状に倣った窪みが設けられている請求項3に記載のドアモジュール。
【請求項5】
前記連結部材は、棒状の連結ロッドであり、
前記リモートコントロール機構には、前記連結ロッドを挟持するクリップが設けられており、
前記出力側アームに一端が連結されている前記連結ロッドの他端を、前記クリップで挟持することで前記出力側アームと前記リモートコントロール機構とが前記連結ロッドを介して連結される請求項1〜4のいずれか一項に記載のドアモジュール。
【請求項6】
前記クリップが、前記リモートコントロール機構における車室側の表面に取り付けられている請求項5に記載のドアモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のドアに取り付けられるドアモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のドアのインナーパネルに車室側から取り付けられるドアモジュールが開示されている。このドアモジュールは、インナーパネルに設けられた開口部を塞ぐモジュールパネルに、ドアに取り付けられている装置を制御する出力を行うリモートコントロール機構や、ウィンドーガラスを昇降させるウィンドーレギュレーターなどを取り付けてモジュール化したものである。
【0003】
図11に示されているように、特許文献1に開示されているドアモジュールのモジュールパネル111には、入力側アーム112と出力側アーム113との間に位置する支点114を中心に回動可能な状態で揺動アーム115が取り付けられている。揺動アーム115の出力側アーム113は、リモートコントロール機構116に連結されている。
【0004】
そして、このドアモジュールでは、ドアのアウターパネルに取り付けられているアウトサイドハンドルの操作による作用をリモートコントロール機構116に入力するために、揺動アーム115の入力側アーム112とアウトサイドハンドルとをコントロールケーブル117を介して連結している。
【0005】
これにより、アウトサイドハンドルの操作による作用がコントロールケーブル117及び揺動アーム115を介してリモートコントロール機構116に入力され、アウトサイドハンドルの操作に伴ってリモートコントロール機構116からドアに取り付けられている装置を制御する出力が行われるようになっている。
【0006】
しかし、コントロールケーブル117は、アウターケース118内でインナーワイヤー119が摺動することによって作用を伝達するものである。そのため、長い距離に亘ってコントロールケーブル117を配策すると、摩擦による抵抗が大きくなり、効率が悪くなって大きな操作力が必要になる。
【0007】
これに対して、特許文献2には、アウトサイドハンドルの操作による作用をロッドの上下動に変換し、このロッドの上下動をモジュールパネルとアウターパネルとの間に位置するドアロック装置に入力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4602614号公報
【特許文献2】特開2001−18650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図12に示されているように、こうしたロッド127を揺動アーム125の入力側アーム122に連結して、アウトサイドハンドルの操作による作用を、ロッド127を介して揺動アーム125に伝達する場合、モジュールパネル121のアウターパネル側に入力側アーム122を配設する必要がある。なお、図12は、インナーパネル128に車室側から取り付けられたドアモジュールにおける揺動アーム125が設けられている部分をアウターパネル側から見た状態を模式的に示している。
【0010】
この場合、入力側アーム122が、モジュールパネル121におけるインナーパネル128と当接する部分であるシール部121aよりも内側に位置していないと、入力側アーム122がシール部121aとインナーパネル128との間に介在することになる。そして、ドアモジュールを車室側からインナーパネル128に取り付ける際に、入力側アーム122がインナーパネル128に干渉してしまう。
【0011】
なお、図12に示されているように、入力側アーム122が配設される位置よりも外側までインナーパネル128の開口部129を大きくすれば、こうした入力側アーム122とインナーパネル128との干渉が生じにくくなる。しかし、この場合、大きくした開口部129よりもさらに外側にシール部121aが位置するように、開口部129の大型化に合わせてモジュールパネル121を大きくすることになり、ドアモジュールが大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するためのドアモジュールは、シール部を車両のドアのインナーパネルに当接させて同インナーパネルに設けられた開口部を車室側から覆うモジュールパネルと、前記モジュールパネルに取り付けられていてアウトサイドハンドルの操作に伴う作用が入力され、前記ドアに取り付けられている装置を制御する出力を行うリモートコントロール機構と、入力側アームと出力側アームとを備えていて前記入力側アームと前記出力側アームとの間に位置する支点において前記モジュールパネルに回動可能に取り付けられている揺動アームと、前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとを連結する連結部材と、を備えている。そして、このドアモジュールは、前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとが前記連結部材を介して連結されているときには、前記入力側アームが前記モジュールパネルにおける前記シール部が設けられているアウターパネル側において同モジュールパネルにおけるシール部よりも外側にはみ出た状態になり、前記入力側アームに入力された前記アウトサイドハンドルの操作に伴う作用を、前記連結部材を介して前記リモートコントロール機構に入力する。その一方で、このドアモジュールでは、前記リモートコントロール機構と前記出力側アームとが連結されていないときには、前記入力側アーム及び前記出力側アームの双方が前記シール部よりも内側で前記モジュールパネルと重なる位置への同揺動アームの回動が許容される。
【0013】
上記構成のドアモジュールでは、リモートコントロール機構と出力側アームとが連結部材で連結されていないときには、揺動アームをシール部よりも内側に格納することができる。これにより、揺動アームがシール部よりも外側にはみ出していない状態でドアモジュールをインナーパネルに取り付けることができる。そのため、揺動アームがシール部よりも外側にはみ出している場合と比較して、揺動アームとインナーパネルとが当接しにくくなる。
【0014】
なお、揺動アームとリモートコントロール機構とが連結部材を介して連結されているときには、入力側アームが、モジュールパネルのアウターパネル側において同モジュールパネルにおけるシール部よりも外側にはみ出た状態になる。
【0015】
そのため、上記のように揺動アームをシール部よりも内側に格納した状態でドアモジュールをインナーパネルに取り付けた後に、揺動アームとリモートコントロール機構とを連結部材を介して連結し、入力側アームとアウトサイドハンドルとを連結すれば、アウトサイドハンドルの操作による作用を、揺動アームに入力することができるようになる。すなわち、アウトサイドハンドルの操作に伴う作用を、揺動アーム及び連結部材を介してリモートコントロール機構に入力することができる。
【0016】
また、ドアモジュールの一態様では、前記揺動アームは、前記モジュールパネルを貫通している前記支点と、前記モジュールパネルにおけるアウターパネル側とは反対の車室側に配設されている前記出力側アームと、前記モジュールパネルのアウターパネル側に配設されている前記入力側アームと、からなり、前記リモートコントロール機構が前記モジュールパネルにおける車室側の面に取り付けられている。
【0017】
上記構成の揺動アームでは、インナーパネルとアウターパネルとの間に入力側アームが位置する一方、出力側アームはモジュールパネルの車室側に位置している。そして、これら入力側アームと出力側アームとが、モジュールパネルを貫通している支点を介して繋がっている。これにより、アウターパネルに取り付けられているアウトサイドハンドルの操作による作用をモジュールパネルのアウターパネル側に位置する入力側アームに入力し、揺動アームを介してモジュールパネルの車室側の面に取り付けられたリモートコントロール機構に伝達することができる。
【0018】
また、ドアモジュールの一態様では、前記モジュールパネルには、同モジュールパネルを横切る梁が設けられており、前記出力側アームが前記梁の上面に当接しているときには、前記入力側アーム及び前記出力側アームの双方が前記シール部よりも内側で前記モジュールパネルと重なった状態になる。
【0019】
上記構成によれば、梁の上面に出力側アームが当接する位置まで揺動アームを回動させることにより、揺動アームをシール部よりも内側に格納した状態で位置決めすることができる。
【0020】
ドアモジュールの一態様では、前記モジュールパネルには、前記出力側アームが前記梁の上面に当接しているときに、前記入力側アームを収容する前記入力側アームの形状に倣った窪みが設けられている。
【0021】
上記構成によれば、揺動アームをシール部よりも内側に格納した状態にしたときに、梁の上面で出力側アームを位置決めするとともに、入力側アームを窪みに収容することができる。入力側アームが窪みに収容されていれば、入力側アームに他の部材などが引っ掛かりにくくなる。
【0022】
ドアモジュールの一態様では、前記連結部材は、棒状の連結ロッドであり、前記リモートコントロール機構には、前記連結ロッドを挟持するクリップが設けられている。そして、このドアモジュールでは、前記出力側アームに一端が連結されている前記連結ロッドの他端を、前記クリップで挟持することで前記出力側アームと前記リモートコントロール機構とが前記連結ロッドを介して連結される。
【0023】
上記構成によれば、クリップで連結ロッドを挟持する、という簡単な作業で出力側アームとリモートコントロール機構とを連結することができる。
ドアモジュールの一態様では、前記クリップが、前記リモートコントロール機構における車室側の表面に取り付けられている。
【0024】
上記構成によれば、インナーパネルの開口部を塞ぐようにドアモジュールを車室側からインナーパネルに取り付けたとき、クリップは車室側に露出している。そのため、ドアモジュールを車室側からインナーパネルに取り付けた後であっても、車室側からクリップにアクセスすることができる。すなわち、出力側アームに連結されている連結ロッドをリモートコントロール機構に設けられているクリップで挟持する作業を車室側から行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
インナーパネルにドアモジュールを取り付ける際に、揺動アームとインナーパネルとが当接しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両の右側面図。
図2】ドアトリムが取り付けられていないリヤドアを車室側から見たときの状態を示す図。
図3】ドアトリム及びドアモジュールが取り付けられていないリヤドアを車室側から見たときの状態を示す図。
図4】車室側から見たドアモジュールの正面図。
図5】アウターパネル側から見たドアモジュールの背面図。
図6】ドアモジュールの斜視図。
図7】アウトサイドハンドル用のリモートコントロール機構とベルクランクの出力側アームとが連結ロッドで連結されている状態を示すドアモジュールの正面図。
図8】アウトサイドハンドルからアウトサイドハンドル用のリモートコントロール機構までの連結態様を示す模式図。
図9】入力側アームに設けられているクリップの斜視図。
図10】インナーパネルに車室側から取り付けられたドアモジュールをアウターパネル側から見たときの状態を示す図。
図11】従来のドアモジュールのリモートコントロール機構近傍を車室側から見たときの状態を示す図。
図12】インナーパネルの開口部を大きくした場合の揺動アームの入力側アームと開口部とシール部との位置関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、車両のパワースライドドアのドアモジュールに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、ドアモジュールが取り付けられるリヤドア4を備えた車両1について説明する。なお、図1は車両1の右側面図であり、リヤドア4が開いている状態を示している。
【0028】
この車両1のリヤドア4は、図1に示されている状態から車両前方に向かって移動することによって閉じるパワースライドドアである。なお、リヤドア4は車両1に左右一対に設けられているが、左右対称な構造をなしているため、以下では車両右側のリヤドア4及びドアモジュールについて説明し、車両右側のリヤドア4及びドアモジュールについての説明は省略する。
【0029】
図1に示されているように、リヤドア4は車両1の後部の乗降口2に取り付けられている。乗降口2の上縁部及び下縁部には、前後方向に延びるドアレール3が上下に対になって1つずつ敷設されている。リヤドア4はこれら上下のドアレール3に沿って前後に移動する。
【0030】
図1に示されているように、乗降口2の前縁にはストライカー9が取り付けられている。リヤドア4が閉じたときには、リヤドア4の前端部に内蔵されている第1ロック装置6がストライカー9と係合し、リヤドア4の移動を規制する。なお、乗降口2の後縁にもストライカーが設けられており、リヤドア4が閉じたときには、リヤドア4の後部に内蔵されている第2ロック装置7がこのストライカーと係合する。すなわち、リヤドア4が閉じているときには、リヤドア4が前後で乗降口2に係合することにより、リヤドア4の移動が規制される。
【0031】
また、リヤドア4の前端下部には第3ロック装置8が内蔵されている。第3ロック装置8は図1に示されているようにリヤドア4が全開になっているときに、乗降口2の下縁後端部近傍に設けられているストライカーと係合し、リヤドア4の移動を規制する。
【0032】
図1に示されているように車両外側の意匠面を構成するアウターパネル41には、車両1の外側からリヤドア4を操作するためのアウトサイドハンドル45が取り付けられている。
【0033】
図2に示されているように、リヤドア4には、ロック装置6,7,8を制御する出力を行うリモートコントロール機構14,15や、乗降口2を開閉するためにリヤドア4を前後方向に移動させるパワースライドドアユニット18などが取り付けられている。ドアモジュール10は、樹脂製のモジュールパネル11にこうした各種の装置を取り付け、モジュール化したものである。なお、図2は、リヤドア4の車室側の意匠面を構成するドアトリムを取り付けていないリヤドア4を車室側から見た状態を示している。
【0034】
リヤドア4は、アウターパネル41と、インナーパネル42とを組み合わせて構成されている。図1及び図2に示されているように、リヤドア4の上部には、ウィンドーガラス5が嵌め込まれている。ウィンドーガラス5はアウターパネル41とインナーパネル42との間に収容されている。
【0035】
図3に示されているように、インナーパネル42の中央には開口部43が設けられている。そして、図2に示されているように、ドアモジュール10は、モジュールパネル11で開口部43を塞ぐように、車室側からインナーパネル42に取り付けられる。
【0036】
なお、図3及び図2に示されているように、インナーパネル42の後部には、パワースライドドアユニット18の延出部18aが挿通される挿通孔44が設けられている。図2に示されているように、ドアモジュール10は、この挿通孔44に延出部18aを挿通させた状態で、インナーパネル42に取り付けられる。
【0037】
次に、図4〜10を参照して、ドアモジュール10について詳しく説明する。
図4に示されているように、モジュールパネル11の車室側の面には、パワースライドドアユニット18が取り付けられている。パワースライドドアユニット18は、車体側に固定したワイヤーをモーター駆動のドラムで巻き取ることにより、リヤドア4を前後方向に移動させる装置である。
【0038】
図5に示されているように、モジュールパネル11のパワースライドドアユニット18が取り付けられる部分は、アウターパネル側に膨らんで飛び出しており、この部分がパワースライドドアユニット18を収容する収容部11eになっている。収容部11eの後部には挿通孔11fが設けられている。図4及び図5に示されているように、パワースライドドアユニット18におけるワイヤーのケースである延出部18aがこの挿通孔11fを挿通してモジュールパネル11のアウターパネル側からモジュールパネル11の後端よりも後方まで延びている。
【0039】
また、図5に示されているように、モジュールパネル11のアウターパネル側の面には、インナーパネル42と当接するシール部11aが設けられている。シール部11aは、モジュールパネル11のアウターパネル側の面における上縁部を除く縁部に沿って、前縁部及び下縁部及び後縁部に亘って設けられている。すなわち、モジュールパネル11においては、シール部11aが設けられている面がアウターパネル側の面であり、アウターパネル側の面と反対側の面が車室側の面になっている。
【0040】
図5に示されているように、モジュールパネル11のアウターパネル側の面における中央付近には、ウィンドーレギュレーター17が取り付けられている。ウィンドーレギュレーター17は、モジュールパネル11の上端に取り付けられているプーリー17aに巻き掛けたワイヤー17bをモーター駆動のドラムで巻き取ることによってキャリア17cを上下に移動させ、下端がキャリア17cに固定されたウィンドーガラス5を上下に移動させる装置である。
【0041】
また、図4に示されているように、モジュールパネル11の車室側の面には、車室側からリヤドア4を操作するインサイドハンドル12が取り付けられている。より具体的には、インサイドハンドル12は、モジュールパネル11の上部における前縁近傍に取り付けられている。そして、モジュールパネル11におけるインサイドハンドル12の後部には、連結ロッド23,24を介してインサイドハンドル12の操作による作用が伝達され、その作用の入力に伴ってロック装置6,7,8やパワースライドドアユニット18を制御する出力を行うリモートコントロール機構14が取り付けられている。
【0042】
このリモートコントロール機構14は、ロック装置6,7,8のそれぞれとコントロールケーブルによって連結されている。そして、リモートコントロール機構14は、連結ロッド23,24を介して伝達されたインサイドハンドル12の操作による作用を、コントロールケーブルを牽引する牽引力に変換する。そしてリモートコントロール機構14は、その牽引力をコントロールケーブルを介してロック装置6,7,8に伝達する。すなわち、リモートコントロール機構14は、ロック装置6,7,8を制御する出力として、コントロールケーブルの牽引を行う。また、リモートコントロール機構14は、パワースライドドアユニット18を制御する出力として、電気的な信号を出力する。なお、ロック装置6,7,8が電気的な信号によって制御される装置である場合には、リモートコントロール機構14はロック装置6,7,8を制御する出力として電気的な信号を出力する装置であってもよい。また、パワースライドドアユニット18が物理的な作用によってスイッチが操作されることによって制御される装置である場合には、リモートコントロール機構14はパワースライドドアユニット18を制御する出力として、コントロールケーブルの牽引を行う装置であってもよい。すなわち、リモートコントロール機構14は、電気的であるか物理的であるかといった出力の種類に限らず、リヤドア4に設けられている装置を制御する出力を行う装置であればよい。
【0043】
リモートコントロール機構14は、リヤドア4が閉じている状態でインサイドハンドル12が後方に操作されたことに伴う作用が入力されたときには、第1ロック装置6と第2ロック装置7による係合を解除するようにコントロールケーブルを牽引し、リヤドア4を移動可能な状態にする。そして、リモートコントロール機構14は、パワースライドドアユニット18を制御する信号を出力する。これにより、パワースライドドアユニット18が、リヤドア4を開く方向に移動させ、リヤドア4が図1に示されている全開位置に向かって自動的に移動する。
【0044】
一方で、リモートコントロール機構14は、リヤドア4が開いている状態でインサイドハンドル12が前方に操作されたことに伴う作用が入力されたときには、第3ロック装置8による係合を解除するようにコントロールケーブルを牽引し、リヤドア4を移動可能な状態にする。そして、パワースライドドアユニット18を制御する信号を出力する。これにより、パワースライドドアユニット18が、リヤドア4を閉じる方向に移動させ、リヤドア4が全閉位置に向かって自動的に移動する。
【0045】
図4に示されているように、インサイドハンドル12の下方におけるインサイドハンドル12と隣接する位置にはドアロックボタン13が設けられている。そして、モジュールパネル11における車室側の面におけるドアロックボタン13の下方には、ロッキングアクチュエーター16が取り付けられている。
【0046】
ロッキングアクチュエーター16は、ドアロックボタン13の状態に応じてリモートコントロール機構14に作用し、インサイドハンドル12の操作を無効化する装置である。具体的には、ロッキングアクチュエーター16は、ドアロックボタン13がロック位置にあるときには、リモートコントロール機構14に作用してリモートコントロール機構14からの出力が行われないようにする。これにより、インサイドハンドル12が操作されたとしてもリモートコントロール機構14からロック装置6,7,8やパワースライドドアユニット18への出力が行われなくなり、リヤドア4の開閉が行われなくなる。なお、ドアロックボタン13がロック位置にない場合、すなわち非ロック位置にある場合には、インサイドハンドル12が操作されたときに、上述したようにリモートコントロール機構14からロック装置6,7,8やパワースライドドアユニット18への出力が行われる。
【0047】
また、モジュールパネル11の車室側の面におけるリモートコントロール機構14の下方には、アウトサイドハンドル45の操作に伴う作用が入力されるリモートコントロール機構15が取り付けられている。
【0048】
そして、図4及び図5に示されているように、モジュールパネル11におけるリモートコントロール機構15の前方であり、モジュールパネル11の前縁近傍の部分には、アウトサイドハンドル45の操作に伴う作用によって揺動する揺動アームであるベルクランク19が取り付けられている。ベルクランク19は、支点である回転軸19cがモジュールパネル11を貫通していてモジュールパネル11に対して回動可能に取り付けられている。そして、ベルクランク19では、図4に示されているようにモジュールパネル11の車室側に配設されている出力側アーム19bと、図5に示されているようにモジュールパネル11のアウターパネル側に配設されている入力側アーム19aとが回転軸19cによって連結されている。
【0049】
図4に示されているように、ベルクランク19の出力側アーム19bの先端部には棒状の連結ロッド22の一端が連結されている。なお、出力側アーム19bの先端部には連結ロッド22の一端を挿通する挿通孔と、連結ロッド22を挟持する爪とを備えたクリップ21が取り付けられている。連結ロッド22は、一端をこのクリップ21の挿通孔に挿通させた状態でクリップ21の爪によって挟持され、出力側アーム19bの先端部に連結されている。
【0050】
図4〜6には、ベルクランク19が格納位置にある格納状態におけるドアモジュール10が示されている。格納状態のときには、連結ロッド22のもう一方の端部はリモートコントロール機構15に連結されておらず、ベルクランク19の出力側アーム19bとリモートコントロール機構15とが連結されていない。
【0051】
図6に示されているように、モジュールパネル11には前後方向に沿ってモジュールパネル11を横切る梁11bが形成されている。ベルクランク19が格納位置にあるときには、出力側アーム19bがこの梁11bの上面に当接している。そして、ベルクランク19が格納位置にあるときには、図5に示されているように入力側アーム19aがシール部11aよりも内側に位置しており、入力側アーム19a及び出力側アーム19bの双方がシール部11aよりも内側でモジュールパネル11と重なった状態になる。
【0052】
次に、図7を参照して、リモートコントロール機構15の構成を説明し、リモートコントロール機構15と出力側アーム19bとを連結ロッド22を介して連結した搭載状態について説明する。
【0053】
図7には、ベルクランク19が格納位置から図7における反時計回り方向に転回されて連結ロッド22がリモートコントロール機構15に連結された搭載状態のドアモジュール10におけるリモートコントロール機構15近傍の様子が示されている。
【0054】
図7に示されているように、リモートコントロール機構15は、スイッチ15fと、スイッチ15fに作用するスイッチングレバー15aとを含んでいる。スイッチングレバー15aは、回転軸15cを中心に揺動可能にモジュールパネル11の車室側の面に取り付けられている。スイッチングレバー15aは、回転軸15cよりも下方に位置する入力部15bと、回転軸15cよりも上方に位置する当接部15dと、回転軸15cよりも上方に位置し、当接部15dよりも前方に位置する係合部15eとで構成されている。
【0055】
スイッチングレバー15aは弦巻バネ15gによって図7における反時計回り方向に付勢されている。モジュールパネル11の車室側の面には、係合部15eと当接するストッパー11cが形成されており、図7に示されているように、係合部15eがストッパー11cに当接している状態がスイッチングレバー15aの初期状態である。
【0056】
図7に示されているように、当接部15dは、初期状態においてはスイッチ15fと当接しないようになっているが、スイッチングレバー15aが回転軸15cを中心に弦巻バネ15gの付勢力に抗して図7における時計回り方向に回動したときにスイッチ15fに当接する形状になっている。
【0057】
入力部15bにおける車室側の面には、ベルクランク19の出力側アーム19bに取り付けられているクリップ21と同様のクリップ21が取り付けられている。すなわち、クリップ21は、リモートコントロール機構15における車室側の表面に取り付けられている。連結ロッド22を入力部15bに連結してリモートコントロール機構15とベルクランク19とを連結ロッド22を介して連結した搭載状態にする際には、図7に示されているように、ベルクランク19が格納位置から図7における反時計回り方向に転回される。そして、連結ロッド22の端部を入力部15bに取り付けられているクリップ21の挿通孔に挿通させた状態でクリップ21の爪によって挟持し、連結ロッド22をスイッチングレバー15aの入力部15bに連結する。こうして連結ロッド22をスイッチングレバー15aの入力部15bに連結することにより、リモートコントロール機構15と出力側アーム19bとが連結ロッド22を介して連結され、ベルクランク19の揺動に連動してスイッチングレバー15aが揺動するようになる。すなわち、連結ロッド22は、リモートコントロール機構15と出力側アーム19bとを連結する連結部材である。そして、図7に示されているように、搭載状態のときには、ベルクランク19の入力側アーム19aがモジュールパネル11のシール部11aよりも外側にはみ出した状態になる。
【0058】
図8に示されているように、こうして連結ロッド22を介してリモートコントロール機構15と連結された搭載状態におけるベルクランク19の入力側アーム19aには、アウトサイドハンドル45と連結されている連結ロッド30が連結される。アウトサイドハンドル45には、アウトサイドハンドル45を車両外側に向かって引く操作を連結ロッド30を下方に押し下げる作用に変換するリンク機構46が設けられており、連結ロッド30の上端はこのリンク機構46を介してアウトサイドハンドル45に連結されている。なお、図8では、アウターパネル41やインナーパネル42、そしてモジュールパネル11を省略してアウトサイドハンドル45からリモートコントロール機構15までの連結態様を模式的に示している。
【0059】
こうしてアウトサイドハンドル45に連結されている連結ロッド30が搭載状態のドアモジュール10におけるベルクランク19の入力側アーム19aに連結されると、アウトサイドハンドル45の操作に伴う作用が、連結ロッド30、ベルクランク19、連結ロッド22を介してリモートコントロール機構15に伝達されるようになる。そのため、アウトサイドハンドル45が車両外側に向かって引かれ、図8に矢印で示されているように連結ロッド30が下方に押し下げられると、ベルクランク19が回転軸19cを中心に図8における時計回り方向に回動する。そして、ベルクランク19の出力側アーム19bに連結されている連結ロッド22が矢印で示されている方向に移動し、スイッチングレバー15aが回転軸15cを中心に図8における反時計回り方向に回動する。その結果、スイッチングレバー15aの当接部15dがスイッチ15fに当接し、スイッチ15fからロック装置6,7,8やパワースライドドアユニット18を制御する電気的な信号が出力される。第2ロック装置7には、アクチュエーターが設けられている。スイッチ15fから出力された電気的な信号は、パワースライドドアユニット18と第2ロック装置7とに入力される。
【0060】
第2ロック装置7とリモートコントロール機構14とは、上記のコントロールケーブルに加え、このアクチュエーターで発生させた牽引力をリモートコントロール機構14に伝達するアクチュエーター用コントロールケーブルによっても連結されている。第2ロック装置7に設けられているアクチュエーターは、スイッチ15fからの電気的な信号の出力を契機に、このアクチュエーター用コントロールケーブルを牽引してインサイドハンドル12が操作されたときと同様にリモートコントロール機構14を作動させ、ロック装置6,7,8による係合を解除する。
【0061】
つまり、リモートコントロール機構15は、アウトサイドハンドル45の操作に伴う作用の入力に伴ってロック装置6,7,8やパワースライドドアユニット18を制御する出力を行う装置である。
【0062】
リヤドア4が閉じている状態で、アウトサイドハンドル45が操作されたことに伴う作用が入力され、当接部15dがスイッチ15fに当接したときには、スイッチ15fからの電気的な信号の出力を契機に、アクチュエーターがアクチュエーター用コントロールケーブルを牽引し、リモートコントロール機構14を作動させる。そして、リモートコントロール機構14が第1ロック装置6と第2ロック装置7による係合を解除するようにコントロールケーブルを牽引する。これにより、リヤドア4が移動可能な状態になる。また、スイッチ15fからの電気的な信号の出力を契機に、パワースライドドアユニット18が、リヤドア4を開く方向に移動させ、リヤドア4が図1に示されている全開位置に向かって自動的に移動する。
【0063】
一方で、リヤドア4が開いている状態で、アウトサイドハンドル45が操作されたことに伴う作用が入力され、当接部15dがスイッチ15fに当接したときには、スイッチ15fからの電気的な信号の出力を契機に、アクチュエーターがアクチュエーター用コントロールケーブルを牽引し、リモートコントロール機構14を作動させる。そして、リモートコントロール機構14が第3ロック装置8による係合を解除するようにコントロールケーブルを牽引する。これにより、リヤドア4が移動可能な状態になる。そして、スイッチ15fからの電気的な信号の出力を契機に、パワースライドドアユニット18が、リヤドア4を閉じる方向に移動させ、リヤドア4が全閉位置に向かって自動的に移動する。
【0064】
なお、ロック装置6,7,8が電気的な信号によって制御される装置である場合には、リモートコントロール機構15はロック装置6,7,8に直接電気的な信号を出力する装置であればよい。また、リモートコントロール機構15を、コントロールケーブルによって各ロック装置6,7,8と連結し、リモートコントロール機構14と同様にロック装置6,7,8を制御する出力としてコントロールケーブルの牽引を行う装置にしてもよい。また、パワースライドドアユニット18が物理的な作用によってスイッチが操作されることによって制御される装置である場合には、リモートコントロール機構15はパワースライドドアユニット18を制御する出力として、コントロールケーブルの牽引を行う装置であってもよい。すなわち、リモートコントロール機構15は、電気的であるか物理的であるかといった出力の種類に限らず、リヤドア4に設けられている装置を制御する出力を行う装置であればよい。
【0065】
なお、ロッキングアクチュエーター16は、ドアロックボタン13の状態に応じてリモートコントロール機構15に対しても作用し、アウトサイドハンドル45の操作を無効化する。具体的には、ドアロックボタン13がロック位置にあるときには、リモートコントロール機構15からの出力が行われても第2ロック装置7のアクチュエーターやパワースライドドアユニット18が動作しなくなり、リヤドア4の開閉が行われなくなる。なお、ドアロックボタン13がロック位置にない場合、すなわち非ロック位置にある場合には、アウトサイドハンドル45が操作されたときに、上述したようにリモートコントロール機構15からの電気的な信号の出力を契機に、第2ロック装置7のアクチュエーターやパワースライドドアユニット18が制御される。
【0066】
ところで、連結ロッド30は、ベルクランク19の入力側アーム19aに設けられた樹脂製のクリップ20を介して入力側アーム19aに連結されている。
図9に示されているように、クリップ20は入力側アーム19aの先端部に回動自在に取り付けられている基部20aと、蓋部20bとを備えており、基部20aと蓋部20bとが薄い板状の帯部20cで連結されている。基部20a及び蓋部20bは、それぞれが連結ロッド30を収容する半円柱状の窪み20gを有するブロック体である。そして、基部20aには窪み20gを挟む位置に一対の凸部20eが設けられており、蓋部20bには窪み20gを挟む位置に凸部20eを収容する一対の凹部20fが設けられている。また、基部20a及び蓋部20bの窪み20gには、窪み20gの周方向に沿って延びる複数の溝20dが一定の間隔で設けられている。
【0067】
図10に示されているように、クリップ20は、基部20aの窪み20gに連結ロッド30の先端部を収容し、蓋部20bを基部20aに嵌め合わせることによって連結ロッド30を挟持する。なお、連結ロッド30の先端部の表面には、連結ロッド30の周方向に延びる凸条30aが、窪み20gにおける溝20dの間隔と同じ間隔で設けられている。連結ロッド30に設けられている凸条30aの数は、溝20dの数よりも多く、連結ロッド30において凸条30aが設けられている範囲は、クリップ20によって覆われる範囲よりも広くなっている。
【0068】
このように連結ロッド30の先端部に凸条30aを設け、クリップ20の溝20dと凸条30aとを係合させることにより、クリップ20に挟持された連結ロッド30が軸方向にずれてしまうことを抑制できる。また、凸条30aが、クリップ20で覆われる範囲よりも広い範囲に設けられていることにより、クリップ20で挟持する位置を選択的に調整してアウトサイドハンドル45からスイッチングレバー15aまでに至る各部品の公差による位置ずれを相殺することができる。これによりアウトサイドハンドル45からスイッチングレバー15aまでに至る各部品の公差による位置ずれによってスイッチングレバー15aがスイッチ15fに当接するようになるアウトサイドハンドル45の操作量にずれが生じてしまうことを抑制できる。
【0069】
なお、図10は、インナーパネル42に車室側から取り付けられたドアモジュール10をアウターパネル側から見たときの状態を示す図である。図10に示されているように、モジュールパネル11のアウターパネル側の面には、ベルクランク19の回転軸19cを支持している部分から上方に延びるように、入力側アーム19aの形状に倣った形状の窪み11dが設けられている。そのため、図5に示されているようにベルクランク19が格納位置にあるときには、入力側アーム19aはこの窪み11dに収容される。
【0070】
次に、このドアモジュール10の作用について説明する。
図7図10に示されているように、リモートコントロール機構15と出力側アーム19bとが連結ロッド22を介して連結されている搭載状態のときには、入力側アーム19aがモジュールパネル11のシール部11aよりも外側にはみ出した状態になる。そのため、ドアモジュール10を車室側からインナーパネル42に取り付ける際に、入力側アーム19aがシール部11aとインナーパネル42との間に介在することになり、入力側アーム19aがインナーパネル42に干渉してしまう。
【0071】
これに対して、ドアモジュール10では、連結ロッド22によってリモートコントロール機構15と出力側アーム19bとが連結されていない状態であれば、ベルクランク19の格納位置への回動が許容される。ベルクランク19が格納位置にあるときには、ベルクランク19の入力側アーム19a及び出力側アーム19bをシール部11aよりも内側に格納することができる。これにより、ベルクランク19がシール部11aよりも外側にはみ出していない状態でドアモジュール10をインナーパネル42に取り付けることができる。
【0072】
そのため、このドアモジュール10によれば、ベルクランク19がシール部11aよりも外側にはみ出している場合と比較して、ベルクランク19とインナーパネル42とが当接しにくくなるという効果を得ることができる。
【0073】
次に、ドアモジュール10をインナーパネル42に取り付け、アウトサイドハンドル45と連結する際の手順について説明する。
まず、ドアモジュール10をインナーパネル42に取り付ける際には、図4〜6に示されているように、連結ロッド22をスイッチングレバー15aの入力部15bに連結せずに、ベルクランク19が格納位置にある格納状態にしておく。そして、格納状態のドアモジュール10を車室側から開口部43を塞ぐようにインナーパネル42に取り付ける。なお、図4〜6に示されているように、ドアモジュール10の後部にはモジュールパネルのシール部11aよりも後方に延びている延出部18aが存在している。そのため、図2に示されているように、インナーパネル42にドアモジュール10を取り付ける際には、この延出部18aを挿通孔44に挿通させなければいけない。したがって、インナーパネル42にドアモジュール10を取り付ける際には、まずドアモジュール10を後方に移動させながら延出部18aを挿通孔44に挿通させ、延出部18aが挿通孔44に挿通している状態でモジュールパネル11のシール部11aをインナーパネル42に当接させる必要がある。
【0074】
そして、ドアモジュール10をインナーパネル42に取り付けた後、図7及び図10に示されているように、ベルクランク19の入力側アーム19aを前方に転回させて、図7に示されているように連結ロッド22をスイッチングレバー15aの入力部15bに連結する。
【0075】
その後に、図10に示されているように、クリップ20の溝20dと連結ロッド30の凸条30aとを嵌め合わせる位置を調整することによって、アウトサイドハンドル45からスイッチングレバー15aまでに至る各部品の公差による位置ずれを相殺し、クリップ20によって連結ロッド30を入力側アーム19aに連結する。
【0076】
こうして図8に示されているように、アウトサイドハンドル45の操作による作用がリモートコントロール機構15に伝達される状態になる。
以上説明した実施形態によれば、上記のように、ベルクランク19とインナーパネル42とが当接しにくくなるという効果に加えて以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(1)格納状態では、ベルクランク19の入力側アーム19aがモジュールパネル11からはみ出していないため、ドアモジュール10を搬送する際などに、入力側アーム19aに何かが引っ掛かってしまうということが生じにくくなる。
【0078】
(2)格納状態では、ベルクランク19の入力側アーム19aがモジュールパネル11からはみ出していないため、搬送時のドアモジュール10の荷姿を小さくできる。
(3)入力側アームとインナーパネルとの干渉を抑制するために、図12に示されているようにインナーパネルの開口部を大きくし、それに合わせてモジュールパネルを大きくする必要がない。そのため、図12に示されているようにインナーパネルの開口部を大きくし、開口部に合わせてモジュールパネルを大きくする場合と比較して、ドアモジュール10を小型化できる。
【0079】
(4)ベルクランク19とリモートコントロール機構15とが連結ロッド22を介して連結されている搭載状態のときには、入力側アーム19aが、モジュールパネル11のアウターパネル側においてシール部11aよりも外側にはみ出た状態になる。
【0080】
そのため、上記のようにベルクランク19をシール部11aよりも内側に格納した状態で、ドアモジュール10をインナーパネル42に取り付けた後に、ベルクランク19とリモートコントロール機構15とを連結ロッド22を介して連結すれば、アウトサイドハンドル45の操作による作用を、ベルクランク19に入力することができるようになる。すなわち、アウトサイドハンドル45の操作に伴う作用を、コントロールケーブルを利用することなく、ベルクランク19及び連結ロッド22を介してリモートコントロール機構15に入力することができる。
【0081】
(5)ベルクランク19では、インナーパネル42とアウターパネル41との間に入力側アーム19aが位置する一方、出力側アーム19bはモジュールパネル11の車室側に位置している。そして、これら入力側アーム19aと出力側アーム19bとが、モジュールパネル11を貫通している回転軸19cを介して繋がっている。これにより、アウターパネル41に取り付けられているアウトサイドハンドル45の操作による作用をモジュールパネル11のアウターパネル側に位置する入力側アーム19aに入力し、ベルクランク19を介してモジュールパネル11の車室側の面に取り付けられたリモートコントロール機構15に伝達することができる。そのため、ウィンドーレギュレーター17をモジュールパネル11のアウターパネル側の面に配設する一方で、リモートコントロール機構15をモジュールパネル11の車室側の面に配設することができる。すなわち、モジュールパネル11の両面を有効に活用して各装置を配設することができ、ドアモジュール10の小型化を図ることができる。
【0082】
(6)梁11bの上面に出力側アーム19bが当接する位置までベルクランク19を回動させることにより、ベルクランク19をシール部11aよりも内側に格納した状態で位置決めすることができる。
【0083】
(7)ベルクランク19をシール部11aよりも内側に格納した格納状態にしたときに、梁11bの上面で出力側アーム19bを位置決めするとともに、入力側アーム19aを窪み11dに収容することができる。入力側アーム19aが窪み11dに収容されていれば、入力側アーム19aに他の部材などが引っ掛かりにくくなる。
【0084】
(8)クリップ21で連結ロッド22を挟持する、という簡単な作業で出力側アーム19bとリモートコントロール機構15とを連結することができる。
(9)クリップ21がスイッチングレバー15aの入力部15bにおける車室側の面に設けられているため、インナーパネル42の開口部43を塞ぐようにドアモジュール10を車室側からインナーパネル42に取り付けたとき、クリップ21は車室側に露出している。そのため、ドアモジュール10を車室側からインナーパネル42に取り付けた後であっても、車室側からクリップ21にアクセスすることができる。すなわち、出力側アーム19bに連結されている連結ロッド22をリモートコントロール機構15に設けられているクリップ21で挟持する作業を車室側から行うことができ、作業しやすい。
【0085】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・スイッチングレバー15aに取り付けられているクリップ21は、車室側の表面ではなく、アウターパネル側の表面に取り付けられていてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、格納状態のときに連結ロッド22の一端がベルクランク19の出力側アーム19bに連結されており、連結ロッド22とリモートコントロール機構15とが連結されていない例を示した。これに対して、ベルクランク19とリモートコントロール機構15とが連結されていなければ、ベルクランク19を格納位置まで回動させることができる。そのため、例えば、格納状態のときに連結ロッド22の一端がリモートコントロール機構15に連結されている一方、連結ロッド22の他端がベルクランク19の出力側アーム19bに連結されていない構成であってもベルクランク19を格納位置まで回動させて格納状態にすることができる。
【0087】
・連結部材の一例として棒状の連結ロッド22を示したが連結部材はこうした構成に限定されない。例えば、連結部材は板状のリンクアームでもよい。また、連結部材は複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。例えば、複数の揺動アームを組み合わせたリンク機構として作用を伝達するものであってもよい。
【0088】
・ベルクランク19を収容する窪み11dの形状は必ずしもベルクランク19の入力側アーム19aの形状に倣った形でなくてもよい。例えば、入力側アーム19aを収容することができる大きさの矩形の窪みであってもよい。
【0089】
・ベルクランク19を格納位置まで回動させてベルクランク19がシール部11aよりも外側にはみ出さない格納状態を実現することができるのであれば、入力側アーム19aを収容する窪み11dがモジュールパネル11に形成されていなくてもよい。
【0090】
・梁11bの上面に出力側アーム19bを当接させて位置決めする構成には限らず、ベルクランク19を位置決めする構成を採用することもできる。例えば、梁11bとは別にモジュールパネル11にベルクランク19を位置決めするためのストッパーを設けてもよい。また、入力側アーム19aをストッパーに当接させて位置決めを行うようにしてもよい。ベルクランク19が格納位置に向かう過程でモジュールパネル11と摺接するようになり、格納位置に近づくほどベルクランク19とモジュールパネル11との摺動抵抗が大きくなるようにモジュールパネル11の表面を傾斜させ、摺動抵抗を利用してベルクランク19を格納位置に保持するようにしてもよい。格納位置において、クリップやバンドなどの固定部材を用いて、ベルクランク19をモジュールパネル11に固定し、位置決めするようにしてもよい。モジュールパネル11の表面に可撓性の爪を設け、ベルクランク19が格納位置に向かう過程で弾性変形させながら爪を乗り越え、復元した爪との係合によって格納位置に保持されるようにしてもよい。
【0091】
・上記実施形態では、ベルクランク19の入力側アーム19aがモジュールパネル11のアウターパネル側に位置する一方、出力側アーム19bがモジュールパネルの車室側に位置する構成を例示した。これに対して、リモートコントロール機構15をモジュールパネル11のアウターパネル側に取り付け、ベルクランク19全体がモジュールパネル11のアウターパネル側に位置する構成を採用してもよい。
【0092】
・ロック装置6,7,8やストライカーの位置は上記実施形態で示した位置に限らず変更してもよい。また、ロック装置の数やストライカーの数も変更することができる。
・連結ロッド22をベルクランク19の出力側アーム19bやスイッチングレバー15aの入力部15bに連結するクリップ21に替えて、クリップ20を採用し、クリップ20によって連結ロッド22を挟持することもできる。この場合、連結ロッド22の表面に複数の凸条を設けることにより、ベルクランク19からスイッチングレバー15aまでの部分で、アウトサイドハンドル45からスイッチングレバー15aまでに至る各部品の公差による位置ずれを相殺することができるようになる。なお、この場合には、アウトサイドハンドル45からリモートコントロール機構15までを連結する際に、最後にクリップ20による連結を行うことになる。
【0093】
・連結ロッド22をクリップで挟持することによって連結する例を示したが、連結ロッド22の連結方法は適宜変更することができる。すなわち、必ずしもクリップで挟持する構成を採用する必要はなく、例えば、連結ロッド22の先端を出力側アーム19bや入力部15bに設けられた挿通孔に挿通させて、連結ロッド22を出力側アーム19bや入力側アームに係合させることによって連結してもよい。
【0094】
・揺動アームとして、支点である回転軸19cの部分で屈曲しているベルクランク19を例示した。これに対して、格納状態において入力側アーム19a及び出力側アーム19bの双方がシール部11aよりも内側でモジュールパネル11と重なり、モジュールパネル11からはみ出さなくなるのであれば、揺動アームはベルクランクでなくてもよい。例えば、揺動アームは支点の部分で屈曲していなくてもよい。
【0095】
・パワースライドドアのドアモジュール10として具体化した実施形態を示したが、インナーパネル42の開口部43にドアモジュール10を取り付ける構成であれば、揺動アームの入力側アームがインナーパネル42に干渉してしまうという課題は生じ得る。そのため、同様の構成は、パワースライドドアに限らず、手動式のスライドドアや、ヒンジ式のドアに適用することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1…車両、2…乗降口、3…ドアレール、4…リヤドア、41…アウターパネル、42…インナーパネル、43…開口部、44…挿通孔、45…アウトサイドハンドル、46…リンク機構、5…ウィンドーガラス、6…第1ロック装置、7…第2ロック装置、8…第3ロック装置、9…ストライカー、10…ドアモジュール、11…モジュールパネル、11a…シール部、11b…梁、11c…ストッパー、11d…窪み、11e…収容部、11f…挿通孔、12…インサイドハンドル、13…ドアロックボタン、14…リモートコントロール機構、15…リモートコントロール機構、15a…スイッチングレバー、15b…入力部、15c…回転軸、15d…当接部、15e…係合部、15f…スイッチ、15g…弦巻バネ、16…ロッキングアクチュエーター、17…ウィンドーレギュレーター、17a…プーリー、17b…ワイヤー、17c…キャリア、18…パワースライドドアユニット、18a…延出部、19…ベルクランク、19a…入力側アーム、19b…出力側アーム、19c…回転軸、20…クリップ、20a…基部、20b…蓋部、20c…帯部、20d…溝、20e…凸部、20f…凹部、20g…窪み、21…クリップ、22…連結ロッド、23…連結ロッド、24…連結ロッド、30…連結ロッド、30a…凸条。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12