(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869507
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】アミノ酸系アニオン性界面活性剤を含有する組成物の増粘方法及び増粘組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20210426BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20210426BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20210426BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20210426BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20210426BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20210426BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20210426BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/365
A61Q19/10
C09K3/00 103H
C11D1/10
C11D1/90
C11D3/20
A61Q5/02
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-92358(P2017-92358)
(22)【出願日】2017年5月8日
(65)【公開番号】特開2018-188390(P2018-188390A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】礒辺 真人
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 美幸
(72)【発明者】
【氏名】松江 由香子
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 健夫
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−248300(JP,A)
【文献】
特開2017−071570(JP,A)
【文献】
特開2017−078106(JP,A)
【文献】
特開2012−092064(JP,A)
【文献】
特開2017−048128(JP,A)
【文献】
特開2015−048307(JP,A)
【文献】
特開2001−131132(JP,A)
【文献】
特開昭64−090295(JP,A)
【文献】
特開2016−193886(JP,A)
【文献】
特開2016−190812(JP,A)
【文献】
特開2007−238607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と(B)を含有する組成物の増粘方法であって、pHを
5.0−6.5の範囲で調整することを特徴とする増粘方法。
(A)式(I)の構造を有するアミノ酸系アニオン性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数が
12の直鎖のアシル基、nは2、Aは水酸基、Xはナトリウム原子)
(B)ベタイン構造を有する両性界面活性剤
【請求項2】
下記(A)、(B)、および(C)を含有し、かつpHが5.0−6.5であることを特徴とする組成物。
(A)式(I)の構造を有するアミノ酸系アニオン性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数が12の直鎖のアシル基、nは2、Aは水酸基、Xはナトリウム原子)
(B)ベタイン構造を有する両性界面活性剤
(C)有機酸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するアミノ酸系アニオン性界面活性剤とベタイン構造を有する両性界面活性剤を含有する組成物の増粘方法、及び前記方法によって増粘されたことを特徴とする増粘組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体洗浄剤組成物の基材には安価であることや洗浄性の面からアニオン性界面活性剤を含むものが一般的である。洗浄剤組成物に配合されうるアニオン性界面活性剤としては従来から脂肪酸塩などの石けん系界面活性剤やラウレス硫酸ナトリウムなどの硫酸系界面活性剤が使用されてきているがが、近年では消費者の嗜好の変化により、アミノ酸系界面活性剤を使用することが望まれている。
【0003】
近年では、洗浄剤組成物の使用感の向上を求めて様々な構造を有するアミノ酸系界面活性剤が開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、液体洗浄剤組成物はその使用性から通常、適度に増粘される状態で上市されている。増粘方法としては、一般には塩化ナトリウムなどの無機塩や脂肪酸アルカノールアミンなどのノニオン性界面活性剤、天然又は合成の高分子化合物などの各種増粘剤を添加する方法が一般的である(特許文献2、3、4参照)。
【0005】
しかしながら、無機塩やノニオン性界面活性剤、高分子化合物などの添加による増粘方法では泡質や泡量が低下するという課題があった。さらに特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤においては、前記増粘剤の添加による増粘が困難であったり、保存時における分離・沈殿の課題があることは知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−002962号公報
【特許文献2】特開2002−088400号公報
【特許文献3】特開平07−252496号公報
【特許文献4】特開2005−232049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤を含有する組成物の増粘方法、及び前記方法によって増粘されたことを特徴とする増粘組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意工夫を凝らし研究した結果、特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤、及びベタイン構造を含有する両性界面活性剤を含有する組成物をpH調整することで増粘させることが可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本願第一の発明は、下記(A)と(B)を含有する組成物の増粘方法であって、pHを調整することを特徴とする増粘方法である。
(A)式(I)の構造を有するアミノ酸系アニオン性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数が8〜14の直鎖又は分岐のアシル基、nは1〜3の整数、Aは水素原子または水酸基、Xはアルカリ金属原子またはアルカノールアミンを示す)
(B)ベタイン構造を有する両性界面活性剤
【0010】
本願第二の発明は、pHを5.0−6.5の範囲で調整する本願第一の発明に記載の増粘方法である。
【0011】
本願第三の発明は、(A)が下記(i)または(ii)であることを特徴とする本願第一の発明または本願第二の発明に記載の組成物の増粘方法である。
(i)Rが炭素数12の直鎖のアシル基、かつn=2、かつAが水酸基、かつXがナトリウム原子
(ii)Rがラウロイル基、n=1、Aが水素原子、Xがナトリウム原子
【0012】
本願第四の発明は、下記(A)、(B)、および(C)を含有し、かつpHが5.0−6.5であることを特徴とする組成物である。
(A)式(I)の構造を有するアミノ酸系アニオン性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数が12の直鎖のアシル基、nは2、Aは水酸基、Xはナトリウム原子)
(B)ベタイン構造を有する両性界面活性剤
(C)有機酸
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤を含有する組成物を増粘すること、及び前記方法によって増粘されたことを特徴とする増粘組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に配合されうる(A)特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤を具体的に示すと、カプロイル−β−アラニン、カプリロイル−β−アラニン、ラウロイル−β−アラニン、ミリストイル−β−アラニン、ココイル−β−アラニン、カプロイル−N−メチル−β−アラニン、カプリロイル−N−メチル−β−アラニン、ラウロイル−N−メチル−β−アラニン、ミリストイル−N−メチル−β−アラニン、ココイル−N−メチル−β−アラニン、カプロイル−N−エチル−β−アラニン、カプリロイル−N−エチル−β−アラニン、ラウロイル−N−エチル−β−アラニン、ミリストイル−N−エチル−β−アラニン、ココイル−N−エチル−β−アラニン、カプロイル−N−プロピル−β−アラニン、カプリロイル−N−プロピル−β−アラニン、ラウロイル−N−プロピルβ−アラニン、ミリストイル−N−プロピル−β−アラニン、ココイル−N−プロピル−β−アラニン、カプ
ロイル−N−ヒドロキシメチル−β−アラニン、カプリロイル−N−ヒドロキシメチル−β−アラニン、ラウロイル−N−ヒドロキシメチル−β−アラニン、ミリストイル−N−ヒドロキシメチル−β−アラニン、ココイル−N−ヒドロキシメチル−β−アラニン、カプロイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニン、カプリロイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニン、ラウロイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニン、ミリストイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニン、ココイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニン、カプロイル−N−ヒドロキシプロピル−β−アラニン、カプリロイル−N−ヒドロキシプロピル−β−アラニン、ラウロイル−N−ヒドロキシプロピルβ−アラニン、ミリストイル−N−ヒドロキシプロピル−β−アラニン、ココイル−N−ヒドロキシプロピル−β−アラニンのアルカリ金属イオン塩またはアルカノールアミン塩が挙げられる。これらの中でも好ましくはRが炭素数が12の直鎖のアシル基、nが2、Aが水酸基、Xがナトリウム原子の組み合わせであるラウロイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニンナトリウム、またはRが炭素数が12の直鎖のアシル基、nが1、Aが水素原子、Xがナトリウム原子の組み合わせであるラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウムであり、さらに好ましくはRが炭素数が12、nが2、Aが水酸基、Xがナトリウム原子の組み合わせであるラウロイル−N−ヒドロキシエチル−β−アラニンナトリウムである。またA成分の配合量としては質量%濃度で1%(以下、特に記載があるもの以外は、質量%濃度を単に%と示す)以上が好ましい。
【0016】
本発明に使用されうる(B)ベタイン型界面活性剤はなんら限定されるものではないが、一部を具体的に例示すると、カプリルベタイン、カプリリルベタイン、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、カプリン酸アミドプロピルベタイン、カプリル酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾニウムベタイン、ヤシ油アルキルN−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウムが挙げられる。配合量としては1%以上が好ましい。これらは市販品を使用することができ、具体例を示すと、ゲナミンB1556J(クラリアント社)、アンホレックスLB−2(ミヨシ油脂社)、ニッサンアノンBDL(日油社)、アンホレックスCB−1(ミヨシ油脂社)、アンホレックス30S(ミヨシ油脂社)が挙げられる。
【0017】
本発明においてpHの調整に使用されるpH調整剤はなんら限定されるものではないが、具体的に一部を例示すると有機酸が好ましく、酢酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸、フィチン酸、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸が挙げられる。さらに好ましくはクエン酸である。
【0018】
(A)特定のアミノ酸系アニオン性界面活性剤及び(B)ベタイン構造を有する両性界面活性剤を含有する組成物の増粘工程は、前記組成物の調製後に行ってもよく、組成物の調製中に行ってもよい。
【0019】
また、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で公知の成分を適宜配合することができる。公知の成分としては、例えばラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルーテル硫酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸塩等の(A)成分以外のアニオン性界面活性剤;ヒドロキシアルキル(C12−14)ヒドロキシエチルサルコシンナトリウムなどの(B)成分以外の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;セチルトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘニルトリモニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルカチオン性界面活性剤;カチオン化グァーガム、カチオン化ガラクトマンナン、ヒドロキシエ
チルセルロース、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム/アクリルアミド)コポリマー、高重合ポリエチレングリコール等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリコシルトレハロース等の湿潤剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン類;イソプロピルメチルフェノール、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ成分;エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−アラニン、L−アルギニン、グリシン、L−システイン、Lスレオニン等のアミノ酸;フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン等の防腐剤;その他紫外線吸収剤、香料、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、各種薬剤等が挙げられる。
【0020】
また本発明の組成物には、無機塩やノニオン性界面活性剤、高分子化合物などの増粘剤を別途添加し、増粘させてもよい。
【0021】
また本発明の組成物には、別途濁り剤を加えることができる。濁り剤を用いることで、pHを変動させることなく本発明の組成物を白濁させることができるが、本発明の効果を損なうものではない。濁り剤としては例えばジステアリン酸グリコールなどのパール剤やカオリン、タルク、海シルトなどの粘土鉱物、硫酸マグネシウム、酸化チタンなどの不溶性の無機金属塩が挙げられる。
【0022】
一般にアニオン性界面活性剤は、pHを低下させていくと徐々に白濁しアニオン性界面活性剤固有のpHを下回るとアニオン性界面活性剤が析出・分離する弱酸遊離反応起きることが知られている。アニオン性界面活性剤が析出・分離した状態の組成物は、起泡性を失うため洗浄剤として不適である。この現象は組成物の外観や専門パネラーによる使用テストにより判別できる。
【0023】
本発明の増粘方法、及び前記方法によって増粘されたことを特徴とする増粘組成物は、ヘアシャンプー、ボディーソープ、洗顔料、ハンドソープなどに用いることができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明のアミノ酸系アニオン性界面活性剤を含有する組成物、及びその増粘方法、及び前記方法によって増粘されたことを特徴とする増粘組成物について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。まず、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0025】
実施例1−0〜6−2及び比較例1−0〜2−2
表1〜表8に記載の組成に従い、実施例1−0〜6−2、及び比較例1−0〜2−2の各試料を常法に準じて調整し、pH、粘度の測定、および泡立ち、外観について評価を行い、その結果を表1〜表8に併せて示す。表中の配合量は全て、組成物質量合計を100%とした際の質量%濃度で示されており、固形分としての値である。
【0026】
(1)pH
pHは、各実施例及び比較例の組成物を30℃に調温した状態でpHメーター(HORIBA F−52)を用いて測定した。
【0027】
(2)粘度、増粘度、増粘評価
粘度は、25℃に調整した各実施例及び比較例の組成物に対し、B型粘度型を用いて測定
した。またpHが7.0の際の各組成物(各基準試料)粘度に対する、各pHに調整した際の同組成物粘度の比を増粘度として算出し(数1参照)、算出した増粘度について下記基準に基づき増粘評価を行った。
【数1】
<増粘評価基準>
◎:増粘度が10以上
○:増粘度が2以上〜10未満
×:増粘度が2未満
【0028】
(3)泡立ち
5名の専門パネルにより、各実施例及び比較例の組成物をシャンプーとして使用し、使用時の泡立ちについて官能評価により評価を行った。尚、評価基準は以下の通りである。
<泡立ち評価基準>
◎:非常に良好(泡立ちが良いと回答した専門パネルの人数が5名中4名以上)
○:良好(泡立ちが良いと回答した専門パネルの人数が5名中3名)
△:普通(泡立ちが良いと回答した専門パネルの人数が5名中2名)
×:不良(泡立ちが良いと回答した専門パネルの人数が5名中1名以下)
【0029】
(4)外観
試験者の目視により、各実施例及び比較例の組成物の白濁や析出・分離の有無について、下記評価基準に従って室温環境下にて外観評価を行った。
<外観評価基準>
◎:透明であり、白濁はみられない
○:白濁しているが、組成物構成成分の分離・沈殿はみられない
×:組成物構成成分の析出、および分離・沈殿がみられる
【0030】
本発明における課題は、組成物として増粘効果を得ることであり、増粘に伴い白濁しても、起泡性が完全に喪失していなければ課題は解決しているとする。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
表1〜6に記載される実施例から明らかな様に、(A)、(B)を含有した組成物はpHを調整することで増粘することが可能である。しかし表7および表8に記載される比較例にて確認できるように、(A)及び(B)のいずれかを含有しない組成物では、pHを調整しても十分な増粘効果を得ることはできなかった。