【文献】
平川 久,自航グラブ浚渫船の設計について,建設の機械化,社団法人 日本建設機械化協会,1956年 3月25日,No.73,6-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記エンジンの過給システムでは、車両に搭載されたエンジンに衝撃的な負荷がかかることが予測されたときに、予め電気モータによりコンプレッサーの駆動力をアシストすることにより、衝撃的な負荷に対するエンジントルクを得て、エンジン回転の落ち込みを防いでいる。
【0005】
これに対して、浚渫船のグラブバケットの昇降の動力に用いられる大型エンジンの過給システムでは、グラブバケットを水中から上げる時に負荷変動が大きいため、耐久性の観点から大型の過給機が用いられている。このような大型の過給機では、回転体のイナーシャが大きくなるため、上記従来の過給システムと同様の構成では、エンジンの負荷変動時に追従遅れが生じて、負荷に見合った燃料量に対して供給される空気量が少なくなるため、瞬間的にエンジン出力不足となりエンジン回転数が低下し、エンジンにより駆動される発電機から供給される電気周波数が変動することで、グラブバケット巻き上げモータの回転変動を起こし、グラブ操作性に影響すると共に、燃焼不良により不燃物が増大してエンジンからスモークが多量に排出されるという問題がある。
【0006】
このような浚渫船用エンジンにおいて、過給機の追従遅れによる瞬間的なエンジン出力の不足およびエンジンから排出されるスモークの発生を抑えるために、グラブバケットの巻き上げ速度を落として負荷変動を緩やかにした場合、作業効率が低下してしまう。
【0007】
そこで、この発明の課題は、グラブバケットを水中から上げる時の負荷変動に対して過給機の追従性を向上させ、瞬間的なエンジン出力の不足およびエンジンから排出されるスモークの発生を抑制できる浚渫船用エンジンの過給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様に係る浚渫船用エンジンの過給システムは、
浚渫船のクレーンに吊り下げられたグラブバケットの昇降の動力に用いられるエンジンの過給システムであって、
上記エンジンの排気通路に配置され、上記エンジンの排気により駆動されるタービンと、
上記エンジンの給気通路に配置され、上記タービンの回転トルクにより駆動されるコンプレッサーと、
上記コンプレッサーの駆動力をアシストする電気モータと、
上記グラブバケットの重量を計測する重量計測部と、
上記重量計測部により計測された上記グラブバケットの重量に基づいて、上記電気モータを制御する制御装置と
を備え、
上記制御装置は、
上記グラブバケットが水底から離れて水中にあるときに上記重量計測部により検出された上記グラブバケットの重量に基づいて、上記グラブバケットが水中から空中に出たときの上記エンジンの負荷を算出する負荷算出部と、
上記負荷算出部により算出された上記エンジンの負荷に応じた上記電気モータのアシスト量を算出するアシスト量算出部と
を有し、
上記グラブバケットが水面上に出る前の水中において、上記アシスト量算出部により算出された上記アシスト量で上記コンプレッサーの駆動力を予めアシストするように、上記電気モータを制御することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、グラブバケットが水底から離れて水中にあるときに重量計測部により検出されたグラブバケットの重量に基づいて、制御装置の負荷算出部は、グラブバケットが水中から空中に出たときのエンジンの負荷を算出し、制御装置のアシスト量算出部は、負荷算出部により算出されたエンジンの負荷に応じた電気モータのアシスト量を算出する。そして、グラブバケットが水面上に出る前の水中において、制御装置は、アシスト量算出部により算出されたアシスト量でコンプレッサーの駆動力を予めアシストするように、電気モータを制御する。これにより、グラブバケットが水中から水面上に出たときに急増するエンジン負荷に対して必要な空気量を、電気モータによりアシストされたコンプレッサーから予めエンジンに供給することができる。したがって、グラブバケットを水中から上げる時の負荷変動に対して、エンジンに供給される空気量が不足しないようにでき、瞬間的なエンジン出力不足およびエンジンから排出されるスモークの発生を抑制できる。
【0010】
また、一実施形態の浚渫船用エンジンの過給システムでは、
上記グラブバケットの上下方向の位置を計測する位置計測部を備え、
上記制御装置は、
上記位置計測部により計測された上記グラブバケットの上下方向の位置に基づいて、上記グラブバケットが水底から離れて水中にあるか否かを判定する位置判定部を有し、
上記グラブバケットを上げる時に上記位置判定部により上記グラブバケットが水底から離れて水中にあると判定したとき、上記重量計測部により水中での上記グラブバケットの重量を計測して、そのグラブバケットの重量に基づいて、上記負荷算出部により、上記グラブバケットが水中から水面上に出たときの上記エンジンの負荷を算出する。
【0011】
上記実施形態によれば、グラブバケットを上げる時に、位置計測部により計測されたグラブバケットの上下方向の位置に基づいて、グラブバケットが水底から離れて水中にあると位置判定部が判定したとき、重量計測部により水中でのグラブバケットの重量を計測する。これにより、水の浮力が働いて軽くなった水中でのグラブバケットの重量を確実に計測でき、水中でのグラブバケットの重量に水の浮力を加えることで、水中から水面上に出たときのグラブバケットの重量が得られる。
【0012】
また、一実施形態の浚渫船用エンジンの過給システムでは、
上記負荷算出部は、上記重量計測部により検出された水中の上記グラブバケットの重量に上記グラブバケットに働く浮力を加算して得られた空中での上記グラブバケットの重量に基づいて、上記グラブバケットが水中から水面上に出たときの上記エンジンの負荷を算出する。
【0013】
上記実施形態によれば、負荷算出部は、重量計測部により検出された水中のグラブバケットの重量にグラブバケットに働く浮力を加算して、空中でのグラブバケットの重量を求めて、その空中でのグラブバケットの重量に基づいて、グラブバケットが水中から水面上に出たときのエンジンの負荷を予め算出することができる。ここで、グラブバケットに働く浮力は、例えば、標準的な量の土砂などが収容されたときのグラブバケット全体(収容物を含む)の体積に基づいて予め算出しておく。
【0014】
また、一実施形態の浚渫船用エンジンの過給システムでは、
上記グラブバケットの上下方向の位置を計測する位置計測部を備え、
上記制御装置は、
上記グラブバケットを上げる時に、水中での上記位置計測部により計測された上記グラブバケットの上下方向の位置と上記グラブバケットの上昇速度に基づいて、上記グラブバケットの水中における現在位置から水面上に出るまでの所要時間を算出する所要時間算出部を有し、
上記グラブバケットが水面上に出る前の水中において、上記所要時間算出部により算出された上記所要時間が予め設定された時間になると、上記アシスト量算出部により算出された上記アシスト量で上記コンプレッサーの駆動力を予めアシストするように、上記電気モータを制御する。
【0015】
上記実施形態によれば、グラブバケットを上げる時に、水中での位置計測部により計測されたグラブバケットの上下方向の位置とグラブバケットの上昇速度に基づいて、制御装置の所要時間算出部により、グラブバケットの水中の現在位置から水面上に出るまでの所要時間を算出する。そして、グラブバケットが水面上に出る前の水中において、所要時間算出部により算出された所要時間が予め設定された時間になると、制御装置は、アシスト量算出部により算出されたアシスト量でコンプレッサーの駆動力を電気モータにより予めアシストするように、電気モータを制御する。ここで、予め設定された時間として、電気モータによるアシストの開始から実際にエンジンに供給される空気量が増加するまでの遅れ時間を設定することにより、グラブバケットが水中から水面上に出たときにエンジンの負荷に応じた空気量をエンジンに供給することが可能になる。これにより、グラブバケットの上昇速度に係わらず、制御装置は、電気モータによるアシストの開始タイミングを正確に制御できる。
【発明の効果】
【0016】
以上より明らかなように、この発明によれば、グラブバケットを水中から上げる時、グラブバケットが水面上に出る前に電気モータによりコンプレッサーの駆動力を予めアシストすることによって、グラブバケットを水中から上げる時の負荷変動に対してエンジンから排出されるスモークの発生を抑制できる浚渫船用エンジンの過給システムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の浚渫船用エンジンの過給システムを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態のエンジンEの過給システムを備えたグラブ浚渫船1の要部側面図である。このグラブ浚渫船1は、港湾,河川,運河などの底を浚って土砂などを取り除くものである。
【0020】
この第1実施形態のグラブ浚渫船1は、
図1に示すように、作業台船2と、その作業台船2に設置されたクレーン3と、図示しない操舵室とを備えている。上記クレーン3は、ジブ4と、巻き上げ設備5と、クレーン操作室6とを有する。上記クレーン3のジブ4からグラブバケット10が支持ワイヤ7を介して吊り下げられている。
【0021】
また、
図2はグラブ浚渫船1のエンジンEと発電機Gおよび過給システムの構成図である。
【0022】
グラブ浚渫船1は、
図2に示すように、エンジンEと、エンジンEにより駆動される発電機Gとを備えている。この発電機Gにより発電された電力は、クレーン3の旋回やグラブバケット10の昇降などの動力に利用される。
【0023】
また、上記過給システムは、エンジンEの排気通路P1に配置され、エンジンEの排気により駆動されるタービン21と、エンジンEの給気通路P2に配置され、タービン21の回転トルクにより駆動されるコンプレッサー22と、コンプレッサー22の駆動力をアシストする電気モータ23と、グラブバケット10の重量を計測する重量センサ31(重量計測部)と、グラブバケット10の上下方向の位置を計測する位置センサ32(位置計測部)と、エンジンEおよび電気モータ23などを制御する制御装置30とを備える。上記タービン21とコンプレッサー22および電気モータ23が回転軸24で連結されている。このタービン21とコンプレッサー22および電気モータ23で過給機を構成している。
【0024】
この過給システムでは、エンジンEの排気によりタービン21が駆動され、そのタービン21から回転軸24を介して伝達された回転トルクによりコンプレッサー22が駆動される。これにより、コンプレッサー22により昇圧された空気が給気通路P2を介してエンジンEに供給される。
【0025】
制御装置30は、マイクロコンピュータとモータ制御用インバータおよび入出力回路などからなり、エンジン制御部30aと、負荷算出部30bと、アシスト量算出部30cと、位置判定部30dとを有する。
【0026】
エンジン制御部30aは、クレーン操作室6からのクレーン3の操作指令に基づいて、エンジン負荷に見合った燃料量を燃料供給装置(図示せず)からエンジンEに供給する。
【0027】
また、負荷算出部30bは、グラブバケット10が水中にあるときに重量センサ31により検出されたグラブバケット10の重量に基づいて、グラブバケット10が水中から空中に出たときのエンジンEの負荷を算出する。なお、重量計測部の一例としての重量センサ31は、巻き上げ設備5(
図1に示す)に装備されたロードセルを用いている。ここで、巻き上げ設備5は、支持ワイヤ7や開閉ワイヤを巻き上げるための複数の巻き上げドラム(図示せず)と、各巻き上げドラムを駆動する複数のモータ(図示せず)とを備える。各モータは、発電機Gから電力が供給される。
【0028】
また、アシスト量算出部30cは、負荷算出部30bにより算出されたエンジンEの負荷に応じた電気モータ23のアシスト量を算出する。
【0029】
また、位置判定部30dは、位置センサ32により計測されたグラブバケット10の上下方向の位置に基づいて、グラブバケット10が水底9から離れて水中にあるか否かを判定する。位置計測部の一例としての位置センサ32は、クレーン3の支持ワイヤ7の繰り出し長さおよびジブ4の傾斜角度などに基づいて演算により求める。なお、位置計測部として水深計などをグラブバケット10に取り付けて、通信ケーブルを介して制御装置30に計測データを送信するようにしてもよい。
【0030】
上記グラブ浚渫船1の浚渫作業では、まず、操船室からの操作により水底9にスパッド(図示せず)を打ち込んで、作業台船2を所定の浚渫水域に固定する。次に、空のグラブバケット10が吊り下げられた状態からクレーン3の支持ワイヤ7を繰り出する。このとき、支持ワイヤ7を繰り出している途中で開閉ワイヤ(図示せず)も繰り出すことにより、グラブバケット10のシェル11が開く。
【0031】
そして、シェル11を開いた状態でグラブバケット10を水底9まで下降させて着底させる。
【0032】
次に、
図3(a)に示すように、開閉ワイヤを巻き上げてシェル11を閉じて、水底9を所定の厚さで掘削した後、
図3(b),
図3(c)に示すように、支持ワイヤ7と開閉ワイヤを巻上げることにより、グラブバケット10を水面8上に吊り上げて、掘削した土砂を土砂運搬船などに移して浚渫する。
【0033】
上記グラブバケット10の吊り上げ時に、位置センサ32により計測されたグラブバケット10の水深L(上下方向の位置)に基づいて、位置判定部30dによりグラブバケット10が水底9から離れて水中にあると判定すると、重量センサ31によりグラブバケット10の重量W1を検出する。
【0034】
ここで、位置判定部30dにおいて、グラブバケット10が水底9から離れたかどうかは、重量センサ31により検出された水中のグラブバケット10の重量W1の変化(ゼロから重量増)により判断してもよいし、水深計により計測された水底9までの水深よりもグラブバケット10の水深Lが浅くなったことにより判断してもよい。
【0035】
そして、水底9から離れて水中にあるグラブバケット10の重量W1に基づいて、負荷算出部30bによりグラブバケット10が水中から空中に出たときのエンジンEの負荷を算出する。
【0036】
ここで、負荷算出部30bは、重量センサ31により検出された水中のグラブバケット10の重量W1にグラブバケット10に働く浮力Fを加算して得られた空中でのグラブバケット10の重量W2に基づいて、グラブバケット10が水中から水面8上に出たときのエンジンEの負荷を算出する。
【0037】
上記第1実施形態では、グラブバケット10に働く浮力Fは、標準的な量の土砂などが収容されたときのグラブバケット10全体(収容物を含む)の体積に基づいて予め算出している。
【0038】
なお、複数回のグラブバケット10の昇降において、水中のグラブバケット10の重量W1の計測および空中でのグラブバケット10の重量W2の算出を繰り返してデータを蓄積し、蓄積された過去のデータに基づいて、水中のグラブバケット10の重量W1に対するグラブバケット10に働く浮力Fを算出してもよい。詳しくは、グラブバケット10の昇降毎に、重量センサ31により検出された水中のグラブバケット10の重量W1と、空中でのグラブバケット10の重量W2から、グラブバケット10に働く浮力Fを、
F = W2−W1
により求める。そうして、水中のグラブバケット10の重量W1に対する浮力Fの関係を表すテーブル(または数式)を作成して、そのテーブル(または数式)を用いて水中のグラブバケット10の重量W1から浮力Fを求めてもよい。
【0039】
上記第1実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムでは、グラブバケット10が水底9から離れて水中にあるときに重量センサ31により検出されたグラブバケット10の重量W1に基づいて、制御装置30の負荷算出部30bは、グラブバケット10が水中から空中に出たときのエンジンEの負荷を算出し、制御装置30のアシスト量算出部30cは、負荷算出部30bにより算出されたエンジンEの負荷に応じた電気モータ23のアシスト量を算出する。そして、グラブバケット10が水面8上に出る前の水中において、制御装置30は、アシスト量算出部30cにより算出されたアシスト量でコンプレッサー22の駆動力を予めアシストするように、電気モータ23を制御する。これにより、グラブバケット10が水中から水面8上に出たときに急増するエンジン負荷に対して必要な空気量を、電気モータ23によりアシストされたコンプレッサー22から予めエンジンEに供給することができる。
【0040】
グラブ浚渫船1では、巻き上げ時にグラブバケット10が水中から水面8上に出たとき、巻き上げドラムを駆動するモータの負荷が急増して電力が増えるので、エンジンEの負荷が急増する。従来のグラブ浚渫船用エンジンの過給システムでは、このようなエンジン負荷の急増に対応するため、燃料供給を増やしてエンジン出力を上げようとすると、コンプレッサーによる過給が遅れて、燃料量に対して供給される空気量が少ないため、負荷に対するエンジン出力が不足し、また燃焼不良により不燃物が増大してエンジンからスモークが多量に排出される。
【0041】
これに対して、上記第1実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムによれば、グラブバケット10を水中から上げる時の負荷変動に対して、エンジンEに供給される空気量が不足しないようにでき、瞬間的なエンジン出力不足を無くすと共に、エンジンEから排出されるスモークの発生を抑制することができる。
【0042】
また、従来のグラブ浚渫船用エンジンの過給システムでは、過給機の追従遅れによるエンジン出力不足およびエンジンから排出されるスモークの発生を抑えるために、グラブバケットの巻き上げ速度を落として負荷変動を緩やかにしていたが、この第1実施形態では、グラブバケット10の巻き上げ速度を速くすることが可能になり、作業時間を短縮することができる。
【0043】
また、上記第1実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムでは、グラブバケット10を上げる時に、位置センサ32により計測されたグラブバケット10の水深L(上下方向の位置)に基づいて、グラブバケット10が水底9から離れて水中にあると位置判定部30dが判定したとき、重量センサ31により水中でのグラブバケット10の重量W1を計測する。これにより、水の浮力Fにより軽くなった水中でのグラブバケット10の重量W1を確実に計測できる。
【0044】
また、上記負荷算出部30bは、重量センサ31により検出された水中のグラブバケット10の重量W1にグラブバケット10に働く浮力Fを加算して、空中でのグラブバケット10の重量W2を求めて、その空中でのグラブバケット10の重量W2に基づいて、グラブバケット10が水中から水面8上に出たときのエンジンEの負荷を予め算出することができる。
【0045】
なお、グラブバケット10の重量とグラブバケット10の上下方向の位置とに基づきエンジンEの負荷とその負荷に応じたアシスト量とをシミュレーションまたは実験により予め求めて、グラブバケット10の重量と上下方向の位置およびアシスト量の関係を表すマップを予め作成しておき、そのマップを用いてグラブバケット10の昇降時に電気モータ23のアシスト量を算出するようにしてもよい。
【0046】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムは、制御装置30に所要時間算出部を加えた点を除いて第1実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムと同一の構成をしており、同一構成部には同一参照番号を付している。
【0047】
この第2実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムにおいて、制御装置30は、
図4に示すように、エンジン制御部30aと、負荷算出部30bと、アシスト量算出部30cと、位置判定部30dと、所要時間算出部(図示せず)とを有する。エンジン制御部30aと負荷算出部30bとアシスト量算出部30cおよび位置判定部30dは、第1実施形態と同様の動作を行う。
【0048】
また、所要時間算出部は、水中からグラブバケット10を上げる時に、水中での位置センサ32(位置計測部)により計測されたグラブバケット10の水深L(上下方向の位置)とグラブバケット10の上昇速度Vup[m/sec]に基づいて、グラブバケット10の水中における現在の水深L[m](現在位置)から水面8上に出るまでの所要時間Tm[sec]を、
Tm = L/Vup
により算出する。
【0049】
ここで、グラブバケット10の上昇速度Vup[m/sec]は、
図1に示すクレーン3の支持ワイヤ7の巻き上げ速度である(ジブ4の傾斜角度一定)。
【0050】
上記第2実施形態によれば、グラブバケット10が水面8上に出る前の水中において、所要時間算出部により算出された所要時間Tm[sec]が予め設定された時間Tsになると、制御装置30は、アシスト量算出部30cにより算出されたアシスト量でコンプレッサー22の駆動力を予めアシストするように、電気モータ23を制御する。
【0051】
ここで、上記予め設定された時間Tsとして、電気モータ23によるアシストの開始から実際にエンジンEに供給される空気量が増加するまでの遅れ時間を設定することにより、グラブバケット10が水中から水面8上に出たときにエンジンEの負荷に応じた空気量をエンジンEに供給することが可能になる。これにより、グラブバケット10の上昇速度に係わらず、制御装置30は、電気モータ23によるアシストの開始タイミングを正確に制御できる。
【0052】
上記第2実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムは、第1実施形態の浚渫船用エンジンEの過給システムと同様の効果を有する。
【0053】
上記第1,第2実施形態では、エンジンEにディーゼルエンジンを用いたが、他の構成のエンジンを用いてもよい。
【0054】
また、上記第1,第2実施形態では、エンジンEにより駆動される発電機Gで発電された電力を、クレーン3の旋回やグラブバケット10の昇降などの動力に利用したが、エンジンの駆動力を、支持ワイヤ7や開閉ワイヤを巻き上げるための複数の巻き上げドラムに減速器などを介して伝達する浚渫船にこの発明を適用してもよい。
【0055】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。