(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸変性ポリオレフィン樹脂、多価ヒドラジド化合物及び水性媒体を含有する包装材料用接着剤であって、酸変性ポリオレフィン樹脂が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、オレフィン成分が、プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)とを含有し、プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、多価ヒドラジド化合物を0.1〜30質量部含有し、該包装材料用接着剤から得られる塗膜の50%メタノール水溶液に対する接触角が50〜70°であることを特徴とする包装材料用接着剤。
酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる未反応の不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の包装材料用接着剤。
少なくとも基材層、接着層、シーラント層がこの順に積層されてなる包装材料であって、前記接着層が、請求項1〜4のいずれかに記載の包装材料用接着剤から形成された層であることを特徴とする包装材料。
基材層の少なくとも片面に請求項1〜4のいずれかに記載の包装材料用接着剤から形成された接着層の上に、溶融したシーラント樹脂を押出しラミネートにより積層する工程を有することを特徴とする包装材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の包装材料用接着剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂、多価ヒドラジド化合物及び水性媒体を含有するものである。
【0012】
まず、酸変性ポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有する共重合体であり、オレフィン成分として、プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)とを含有する。
本発明において、プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との質量比(A/B)は、後述する水性分散体とした際の分散粒子径を小さくする観点、及び塗膜の基材への密着性を向上させる観点から、60/40〜95/5であることが必要であり、60/40〜80/20であることが好ましい。共重合成分として含有するプロピレン単位(A)の割合が60質量%未満であったり、95質量%を超えると、基材への密着性が低下することがある。
【0013】
プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類や、ブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。中でも、酸変性ポリオレフィン樹脂の製造のし易さ、水性分散化のし易さ、基材に対する密着性、ヒートシール時の熱収縮率低減の観点から、1−ブテン、イソブテンなどのブテンが好ましく、1−ブテンがより好ましい。プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)は、必要に応じて、複数種を混合して使用してもよい。
【0014】
プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられるが、重合のし易さの点から、ランダム共重合されていることが好ましい。
【0015】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、上記ポリオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有する共重合体である。水性分散化のし易さや基材との密着性の観点から、不飽和カルボン酸成分の含有量の下限としては、プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との合計100質量部(A+B)に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。含有量の上限としては、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましく、7質量部以下であることが特に好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量部未満であると、基材への密着性が低下する傾向があり、また酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化することが困難となる場合があり、一方、含有量が10質量部を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化は容易になるが、基材への密着性が低下したり、ヒートシール時に熱収縮することがある。
【0016】
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物を用いることができる。中でもポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
【0017】
不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられ、中でもグラフト共重合が生産性の観点から好ましい。
不飽和カルボン酸成分を、プロピレン単位(A)とプロピレン単位以外のオレフィン単位(B)とを含有する未変性ポリオレフィン樹脂へ導入する方法は特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸成分とを有機溶媒に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸成分をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から、前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜選択して使用すればよい。
【0018】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、プロピレン/1−ブテン/無水マレイン酸共重合体、プロピレン/イソブテン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/無水マレイン共重合体、エチレン/プロピレン/1−ブテン/無水マレイン酸共重合体、プロピレン/オクテン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、中でも、プロピレン/1−ブテン/無水マレイン酸共重合体が接着性の観点から好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂として、これらを単独で使用しても、また本発明で規定する構成を有するものを複数種併用してもよい。
【0019】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて上記以外の他の単位が含まれていてもよい。他の単位としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
これら他の単位の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂の10質量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、後述するように不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、400ppm以下であることがさらに好ましく、200ppm以下であることが特に好ましく、100ppm以下であることが最も好ましい。一方、不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量の下限としては、1ppm以上であることが好ましく、2ppm以上であることがより好ましく、3ppm以上であることがさらに好ましい。
不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量を1000ppm以下にすることで、50%メタノール水溶液に対する接触角を本発明で規定する50〜70°の範囲にすることができる。
【0021】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量の下限としては、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましく、30,000以上であることが最も好ましい。一方、重量平均分子量の上限としては、200,000以下であることが好ましく、180,000以下であることがより好ましく、160,000以下であることがさらに好ましく、120,000以下であることが最も好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、基材との密着性が低下する傾向があり、一方、重量平均分子量が200,000を超えると、樹脂の媒体に対する分散や溶解が困難になるなど、コーティング剤の形態に加工するのが困難となる傾向がある。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
【0022】
一般に酸変性ポリオレフィン樹脂は、溶剤に対して難溶であり、このため分子量測定が困難となる場合がある。そのような場合には、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート値を分子量の目安とするのがよい。
【0023】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、耐熱性の観点から、融点が60℃以上で
あることが好ましく、ビカット軟化点温度が50℃以上であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明における多価ヒドラジド化合物について説明する。多価ヒドラジド化合物としては、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものであり、低分子化合物であっても重合体であってもかまわないが、ヒートシール時の熱収縮低減や高温多湿環境下で保存した時のしわ低減の観点で低分子化合物の方が好ましい。なお、多価ヒドラジド化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂を架橋させる機能を有しており、架橋により基材との密着性を向上させ、ヒートシール時の熱収縮を低減し、高温高湿環境下で保存した時のしわの発生を抑制していると考えられる。
【0025】
多価ヒドラジド化合物のうちの低分子多価ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの2〜10個、特に4〜6個の炭素原子を含有するジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの2〜4個の炭素原子を有する脂肪族の水溶性ジヒドラジンなどが挙げられ、これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもかまわない。これらの中でも、アジピン酸ジヒドラジドが水に対する溶解性と基材との密着性のバランスに優れており好ましい。
【0026】
多価ヒドラジド化合物のうちの多価ヒドラジド重合体(分子中に2個以上のヒドラジド基を有する重合体)としては、その構造や特性は特に限定されないが、例えば、アクリルアミドとアクリル酸ヒドラジドを共重合して得られたものなどが挙げられる。
【0027】
包装材料用接着剤における多価ヒドラジド化合物の含有量は、ヒートシール時の熱収縮率の低減や高温高湿環境下で保存時のしわ発生抑制の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが必要である。含有量の下限としては、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。含有量の上限としては、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。0.1質量部未満の場合や、30質量部を超える場合は、基材との密着性が低下したり、ヒートシール時の熱収縮率が大きく、高温高湿環境下で保存するとしわが発生する場合がある。
【0028】
本発明の包装材料用接着剤は、多価ヒドラジド化合物以外の他の架橋剤を含有していてもよい。他の架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などを用いることができる。具体的には、多価オキサゾリン化合物、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などが挙げられる。
なかでも、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤が好ましい。このような架橋剤としては、多価オキサゾリン化合物、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられ、特に多価オキサゾリン化合物が好ましい。これらは単独でも複数を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
多価オキサゾリン化合物としては、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物や重合体が挙げられ、重合体である方が、ヒートシール時の熱収縮率を低減したり、基材との密着性に優れるため好ましい。
【0030】
多価オキサゾリン化合物のうちの低分子多価オキサゾリン化合物としては、例えば、2,2´−ビス−(2−オキサゾリン )、2,2´−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−エチレン−ビス−(4,4´−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2´−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2´−m−フェニレン−ビス−(4,4´−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2´−(1,3−フェニレン)−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドおよびビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等の低分子化合物が挙げられる。これら多価オキサゾリン化合物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもかまわない。
【0031】
多価オキサゾリン化合物のうちの多価オキサゾリン重合体(分子中に2個以上のオキサゾリン基を有する重合体)は、その構成成分として付加重合性オキサゾリンが好ましく、付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体をも含むモノマー成分を重合させることにより得ることができる。
【0032】
包装材料用接着剤における他の架橋剤の含有量は、本発明の効果と添加目的の効果とを考慮し適宜選択すればよいが、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
次に本発明における水性媒体について説明する。本発明における水性媒体とは、水又は水を主成分とする液体のことであり、後述する塩基性化合物や有機溶媒を含有していてもよい。
塩基性化合物としては、包装材料用接着剤を乾燥して塗膜を形成する際の乾燥性の観点から揮発性のものを用いることが好ましく、沸点は200℃以下であることがより好ましい。沸点が200℃を超える場合は、得られる塗膜に残存する傾向にあり、接着性などの各種性能が低下することがある。
【0034】
塩基性化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0035】
塩基性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量であることがより好ましく、0.9〜3倍当量であることがさらに好ましく、0.9〜2倍当量であることが最も好ましい。塩基性化合物の含有量が0.5倍当量未満であると、塩基性化合物の添加効果が認められず、一方、含有量が10倍当量を超えると、包装材料用接着剤より塗膜を形成する際の乾燥時間が長くなったり、包装材料用接着剤の安定性が低下することがある。
【0036】
水性媒体には、有機溶媒を含有していてもよく、中でも水溶性有機溶媒を含有していることが好ましい。有機溶媒を含有することで基材への濡れ性を改善することができる。また、後述する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化の際に有機溶媒を添加することで、水性分散化を促進し、分散粒子径を小さくすることができる。
【0037】
水溶性有機溶媒の20℃における水への溶解性としては、100g/L−H
2O以上であることが好ましく、200g/L−H
2O以上であることがより好ましく、300g/L−H
2O以上であることがさらに好ましく、500g/L−H
2O以上であることが特に好ましく、任意の量で完全に溶解することが最も好ましい。また、水系コート剤を乾燥して塗膜を形成する際の乾燥性の観点から、有機溶媒の沸点は、200℃以下であることが好ましい。沸点が200℃を超える場合は、得られる塗膜に残存する傾向にあり、接着性などの各種性能が低下することがある。
【0038】
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。なかでも、20℃における水への溶解性が高いエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールは、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化促進効果の観点から好ましい。有機溶媒は単独でも複数を混合して使用してもよい。
【0039】
水溶性有機溶媒の含有量は、包装材料用接着剤全体に対し、5〜95質量%の範囲であることが好ましく、含有量の下限としては、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が最も好ましい。含有量の上限としては、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましく、70質量%以下が最も好ましい。含有量が5質量%未満の場合は、濡れ性や透明な塗膜を形成させる効果が悪化する。含有量が95質量%を超えた場合は、包装材料用接着剤中の酸変性ポリオレフィン樹脂の分散安定性が悪化する傾向がある。
【0040】
後述する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤の20℃における水への溶解性としては、10g/L−H
2O未満であり、上記と同じ理由で、沸点が200℃以下である有機溶剤が好ましい。
【0041】
疎水性有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、包装材料用接着剤に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。疎水性有機溶剤の添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
【0042】
本発明の包装材料用接着剤は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性分散化助剤の使用を排除するものではないが、水性分散化助剤を用いずとも、酸変性ポリオレフィン樹脂及び多価ヒドラジド化合物を水性媒体中に均一に、分散及び/又は溶解することができる。水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないため、接着性に優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
【0043】
ここで、「水性分散化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0044】
「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を水性分散体の製造時に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが最も好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で含有しても構わず、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下程度含まれていても差し支えない。
【0045】
本発明でいう不揮発性水性分散化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物などが挙げられる。
【0046】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0048】
本発明の包装材料用接着剤は、目的に応じて性能をさらに向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂及び多価ヒドラジド化合物以外に、他の樹脂、無機粒子、顔料、染料等の添加剤を添加することができる。
【0049】
他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。他の樹脂の添加量としては、本発明の効果と添加目的の効果とを共慮し適宜選択すればよいが、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部の範囲が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
【0050】
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。添加量は、目的に応じて適宜設定されるが、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲が好ましい。なお、無機粒子として複数のものを混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できるものである。
【0051】
顔料、染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられ、分散染料、酸性染料、カチオン染料、反応染料等、いずれのものも使用することが可能である。添加量は、目的に応じて適宜設定されるが、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲が好ましい。
【0052】
本発明の包装材料用接着剤には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
【0053】
以上のような添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また添加剤は、水性分散体への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性又は水性分散性のものを用いることが好ましい。
【0054】
本発明の包装材料用接着剤は、上記のような成分が水性媒体中に均一に、分散及び/又は溶解している。水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径は、保存安定性や薄膜を形成しやすくする観点から、0.5μm以下であることが好ましく、0.001〜0.3μmであることがより好ましく、0.01〜0.2μmであることがさらに好ましく、0.02〜0.1μmであることが特に好ましい。
【0055】
本発明の包装材料用接着剤における、酸変性ポリオレフィン樹脂及び多価ヒドラジド化合物などの不揮発成分の含有量は、成膜条件、目的とする塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、包装材料用接着剤の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
【0056】
本発明の包装材料用接着剤の粘度は、コーティングの作業性などの観点から、B型粘度計で20℃条件下にて測定した粘度は、4〜10000mPa・sの範囲が好ましく、5〜1000mPa・sの範囲がより好ましく、5〜300mPa・sの範囲がさらに好ましい。また、水性分散体のpHは特に限定されないが、pH6〜12であることが好ましい。
【0057】
次に、本発明の包装材料用接着剤の製造方法について説明する。
本発明の包装材料用接着剤において、上記酸変性ポリオレフィン樹脂及び多価ヒドラジド化合物は水性媒体に分散及び/又は溶解している必要があり、その分散及び/又は溶解方法は特に限定されない。酸変性ポリオレフィン樹脂及び多価ヒドラジド化合物は一括して水性媒体に分散及び/又は溶解しても構わないが、一般的に分散や溶解の際には加熱を必要とすることが多く、そのためゲル化する場合があるため、酸変性ポリオレフィン樹脂と多価ヒドラジド化合物を個別に分散及び/又は溶解し、その後、それらを常温で混合する方法が好ましい。
【0058】
即ち、本発明の包装材料用接着剤の製造方法としては、あらかじめ、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を製造し、その水性分散体に多価ヒドラジド化合物の水溶液を添加し、混合する方法が好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体に分散及び/又は溶解する方法としては公知の方法を用いることが可能である。ただし、水溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合、水性媒体中で加熱や撹拌さらには加圧などによって溶液を得ることができるが、非水溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合は、水性媒体に分散し、水性分散体として取得する方法を用いることが有効である。
【0059】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
【0060】
容器としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
【0061】
例えば、上記装置に、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで攪拌を続ける(例えば、5〜300分間)。
【0062】
その後、さらに系内に塩基性化合物、有機溶剤及び水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度、80〜240℃の温度下で加熱、攪拌する。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径を0.15μm以下にすることができる。また、このように2段階の工程によって樹脂を水性化することは、粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整するうえでも好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
【0063】
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量が低下することがある。
【0064】
水性分散体の製造時に上記の有機溶剤を用いた場合には、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすればより好ましく、1質量%以下とすることが、環境上より好ましい。ストリッピングの工程では、水性分散化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
【0065】
水性分散体の固形分濃度は、例えば、水性媒体を留去する方法や、水で希釈する方法により調整することができる。
【0066】
上記のような製造方法を採用することで、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に効率よく分散又は溶解された、均一な液状の水性分散体を調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
【0067】
上記のような酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体と多価ヒドラジド化合物の水溶液を、それぞれ本発明で規定する所定量を含有するように混合し、包装材料用接着剤を得ることができる。
【0068】
次に、本発明の包装材料について説明する。
本発明の包装材料は、少なくとも基材層、接着層、シーラント層がこの順に積層されたものであり、接着層は、本発明の包装材料用接着剤から形成された層である。
【0069】
基材層は、包装材料用接着剤が塗布できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。具体例としては、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔などの軟質金属箔、紙、不織布などが挙げられ、中でも熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔が好ましい。
【0070】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、ナイロン6、MXD6ナイロン等のポリアミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられ、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
なかでも、ポリエステル樹脂フィルムや、耐突き刺し性、耐衝撃性などに優れるポリアミド樹脂フィルムが特に好ましく、二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。 熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含有するものでもよく、また、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、フィルムの表面に、前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等が施されたものでもよい。またこれらのフィルムは、易接着コーティング、帯電防止コーティングなどの各種コーティングが施されたものでもよい。
熱可塑性樹脂フィルムの厚さは特に制限されないが、包装材料としての適性、他の層と積層する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜300μmであることが好ましく、用途によって、5〜30μmであることがより好ましい。
【0071】
本発明の包装材料を構成する接着層は、後述するように、包装材料用接着剤を基材層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥することで、形成することが可能である。
接着層の厚さは、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜3μmであることがより好ましく、0.02〜2μmであることがさらに好ましく、0.03〜1μmであることが特に好ましく、0.05〜1μmであることが最も好ましい。
【0072】
本発明の包装材料用接着剤より得られる塗膜は、高温高湿環境下でのしわ発生抑制の観点で50%メタノール水溶液に対する接触角が50〜70°の範囲であることが必要であり、下限として53°以上が好ましく、56°以上がより好ましく、58°以上がさらに好ましい。上限として67°以下が好ましく、64°以下がより好ましく、62°以下がさらに好ましい。本発明の包装材料を構成する接着層は、50%メタノール水溶液に対する接触角が50〜70°の範囲であり、かつ、多価ヒドラジド化合物を所定量含有することで、包装材料を高温高湿環境下で保存した場合であってもしわが発生しないものである。
【0073】
本発明の包装材料用接着剤より得られる塗膜の50%メタノール水溶液に対する接触角を本発明で規定する50〜70°の範囲にするには、前記塗膜における不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量を1000ppm以下にすることが好ましく、500ppm以下にすることがより好ましく、400ppm以下にすることがさらに好ましく、200ppm以下にすることが特に好ましく、100ppm以下にすることが最も好ましい。
一方、高温高湿環境下でのしわ発生抑制の観点で、不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量の下限は、1ppm以上であることが好ましく、2ppm以上であることがより好ましく、3ppm以上であることがさらに好ましい。
塗膜中の不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量を前記好ましい範囲にすることで、50%メタノール水溶液に対する接触角を50〜70°の範囲にすることができ、高温高湿環境下でのしわ発生を抑制することができる。
本発明において、不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量とは、酸変性ポリオレフィン樹脂の製造の際に原料として使用された不飽和カルボン酸モノマー成分のうち、ポリオレフィン樹脂と反応せずに遊離状態で酸変性ポリオレフィン樹脂中に残存する不飽和カルボン酸モノマー成分の量を意味する。
また、本発明者らによると、酸変性ポリオレフィン樹脂のみを固形成分とする水性分散体の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量は、水性化前の該酸変性ポリオレフィン樹脂原料にて測定した不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量と一致することが確認されている。
【0074】
不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量を低減する方法は、これに限るものではないが、たとえば、包装材用接着剤を作製する前の酸変性ポリオレフィン樹脂原料を加熱および減圧して、不飽和カルボン酸モノマー成分を留去する方法や、酸変性ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿により、不飽和カルボン酸モノマー成分を分離する方法や、粉末やペレット状にした酸変性ポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒などの液で洗浄して、不飽和カルボン酸モノマー成分を除去する方法などが挙げられる。
【0075】
これらの方法の中でも、粉末やペレット状にした酸変性ポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒などを洗浄液として用いて洗浄する方法が、低減効果が高く好ましい。
洗浄液に使用する有機溶媒としては、酸変性ポリオレフィン樹脂に対する溶解性が劣り、かつ不飽和カルボン酸モノマー成分に対する溶解性に優れるものを選定することが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトンなどを用いることが好ましい。
また、洗浄液として、有機アミンを添加したものを使用することで、不飽和カルボン酸成分の残存量を大幅に低減することが可能となる。洗浄液に添加できる有機アミンとしては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
洗浄液における有機アミンの含有量は、不飽和カルボン酸モノマー成分の低減効率の観点から、洗浄液100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
具体的な洗浄方法としては、例えば、粉末やペレット状にした酸変性ポリオレフィン樹脂と、水や有機溶媒などからなる洗浄液とを混合し、加熱及び攪拌する方法が挙げられる。また、洗浄回数を増やすことで、残存量をより低減することが可能となる。洗浄液の量は、酸変性ポリオレフィン樹脂と等質量以上であることが好ましい。洗浄温度としては、樹脂の溶解や変形のない範囲で高温であることが好ましい。洗浄時間としては、30分以上が好ましく、60分以上がより好ましい。洗浄後の酸変性ポリオレフィン樹脂は、加熱や減圧などにより、洗浄液を乾燥させることが好ましい。
【0076】
本発明におけるシーラント層は、ヒートシール性を有するものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。ポリプロピレン樹脂は、安価で耐熱性、耐油性に優れている。このため、ポリプロピレン樹脂を用いることで、ボイル・レトルト食品やスナック菓子などを包む包装材料に本発明の積層体を好ましく適用できるようになる。なお、ポリプロピレン樹脂は、共重合ポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0077】
シーラント層には、低温でのシール性を向上させるために、ポリエチレン系樹脂やオレフィンエラストマーなどが、本発明の効果を低減させない範囲で添加されていてもよい。この他にも、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、発泡剤などを任意で配合してもよい。
【0078】
シーラント層の厚みとしては、特に限定されないが積層体の加工性やヒートシール性などを考慮して10〜60μmの範囲が好ましく、15〜40μmの範囲がより好ましい。また、シーラント層に5〜20μm程度の凸凹を設けることで、シーラント層に滑り性を、包装材料に引き裂き性をそれぞれ付与することが可能である。
【0079】
次に、本発明の包装材料の製造方法について説明する。
本発明の包装材料の製造方法は、基材層の少なくとも片面に本発明の包装材料用接着剤から形成された接着層の上に、溶融したシーラント樹脂を押出しラミネートにより積層する工程を有する。
【0080】
基材の少なくとも片面に接着層を形成する方法は公知の方法が採用でき、たとえば接着剤を塗布して接着層を形成する方法が挙げられる。具体的には、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などの方法が挙げられ、基材表面又は必要に応じて基材表面に設けられた下塗り層表面に包装材料用接着剤を均一に塗布することができる。そして、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な接着層を基材上に形成することができる。
【0081】
このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被塗布物である基材の特性や包装材料用接着剤中に任意に配合しうる前述の各種有機溶剤や添加剤の添加具合により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮し、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、80〜150℃が特に好ましい。一方、加熱時間としては、1秒〜20分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、5秒〜10分が特に好ましい。
【0082】
設けた接着層の上にシーラント層を積層する方法は、例えば、接着層とシーラント樹脂フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント樹脂を溶融させて接着層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出しラミネート)などがあげられる。なかでも、接着性、生産性で優れており、薄膜化、低コストという観点で押出しラミネートが好ましい。押出し時の溶融シーラント樹脂の温度は、適宜に設定することができる。なかでも、接着層を介しての基材層との密着性や、ヒートシール時の熱収縮率低減の観点から、230〜300℃の範囲が好ましく、230〜270℃の範囲がより好ましく、240〜260℃の範囲がさらに好ましい。
【0083】
さらに、接着性向上やヒートシール時の熱収縮を低減するために、得られた包装材料をエージング処理してもよい。エージング処理の条件としては、室温〜60℃程度の温度で、12〜200時間保持すればよい。
【0084】
本発明の包装材料用接着剤を用いた包装材料は、基材、接着層及びシーラント層が少なくともこの順に積層されてなる積層体からなり、通常、基材を外側、シーラント層を内側(内容物側)にして使用されるが、何らこれに限定されるものでなく、包装材料として要求される物性(剛性や耐衝撃性、耐久性など)や用途、さらには性能(易引裂性やハンドカット性、耐ピンホール性、印刷性、透明性、隠蔽性、意匠性など)などに応じて、別の層を適宜積層し、様々な層構成の積層体として用いてもよい。例えば、基材の外側に、樹脂フィルム、合成紙、紙、不織布、金属箔、蒸着層、印刷層といった別の層を、公知のポリウレタン系接着剤を使用して積層してもよいし、これら別の層は、単独で積層されても複数で積層されてもよい。無論、他の層は印刷などの処理がされたものでもよい。
【0085】
本発明の包装材料は、基材とシーラント層との層間接着性が優れており、求められる層間接着強度としては、使用目的や用途によって多少変動するものの、一般には、15mm幅に切り取られた包装材料の基材とシーラント層との層間を200mm/分の速度でT型剥離した際の剥離強度が、実用上問題のないレベルとしては1.0N/15mm以上であることが求められており、1.5N/15mm以上であることが好ましく、3.0N/15mm以上がより好ましく、5.0N/15mm以上が特に好ましく、剥離不可であることが最も好ましい。なお、剥離不可とは、層間接着強度が強すぎるため、基材とシーラント層の界面とを剥離することが全くできない態様をいう。具体的には、測定に必要なきっかけを設けることができない場合、もしくはきっかけを設けることができても、測定時に包装材料に切れや伸びなどが発生する場合のことであり、このような現象があった場合には、その層間接着強度は10N/15mmを超えると推認される。
【0086】
本発明の包装材料は、各種の加工方法とりわけヒートシール加工(ヒートシール層を介してヒートシールする加工)により、様々な形態の包装材料に加工することが可能である。包装材料の形態としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ(胴部用と底部用のブランク板をそれぞれ作製し、該ブランク板を、カップ成形機を用いて筒状の胴部に成形すると共に、胴部の一方の開口端に底部を成形し、熱接着してなる紙カップ容器など)、蓋材など種々の形態が挙げられる。さらに、最内層のシーラント層にポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂製のチャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。また、本発明の包装材料は深絞り成型にも適している。
【0087】
本発明の包装材料は、上記のようにヒートシール加工して包装材料とした場合、ヒートシール時の熱収縮を抑制でき、包装材料としたとき見栄えにも優れている。また、使用する接着層は、内容物の吸着が少ないため、包装材料への内容物の臭い移りや着色を抑制し、内容物を長期間良好に保存することが可能となる。
【0088】
本発明の包装材料は、様々な内容物に対して良好な耐性を有していることから、様々な内容物を包む包装材料として好適に使用することができる。具体的には、液体、粘調体、粉体、固形物、又はこれらを組み合わせなど、内容物の形状を特に限定せずに使用することが可能である。本発明の包装材料は、特に食品向け包装材料として好適であり、例えばポテトチップス、クッキー、ビスケット、チョコスナック、せんべい、あられ、ポップコーンのようなスナック菓子類、お茶、かつお節、昆布粉末スープなどの乾燥物、ケチャップ、香辛料、ソース、醤油、酢、味噌、スープなどの調味料、冷凍食品やレトルト食品のような食品類、サラダ油、食用油、ごま油、オリーブオイル、マーガリン、バター、チーズなどの油脂類を内容物とする包装材料に好適である。この他、本発明の包装材料は、農薬、防虫剤、殺虫剤、湿布材、歯磨き剤、錠剤のような医薬(部外)品、芳香剤、香料、入浴剤、化粧品、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、消臭剤、洗剤のようなアメニティー用品類、雑貨品、電子部品、IC、機械部品のような産業部材などを内容物とする包装材料にも無論好適である。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
<物性の評価>
【0090】
1.酸変性ポリオレフィン樹脂
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
プロピレン単位(A)とプロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との合計に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm
−1)により求めた。
【0091】
(2)不飽和カルボン酸成分以外の樹脂の構成
プロピレン単位(A)と、プロピレン単位以外のオレフィン単位(B)との質量比は、オルトジクロロベンゼン(d
4)中、120℃にて
1H−NMR、
13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
【0092】
(3)重量平均分子量
酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1mL/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0093】
(4)不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量
酸変性ポリオレフィン樹脂ペレット約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μ C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が1000ppm未満の場合、酸変性ポリオレフィン樹脂ペレット量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー成分標準サンプルを用いて作成した。
【0094】
2.塗膜
(1)不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量
包装材料用接着剤から得られた塗膜約0.05gを精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μ C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量が1000ppm未満の場合、包装材料用接着剤から得られた塗膜の量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー成分標準サンプルを用いて作成した。
(2)接着性
下記(a)、(b)の方法で、各種材料同士が接着された包装材料となりうる積層体を作製し、積層体から幅15mmの試験片を採取した。次に引張試験機(インテスコ社製、インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用いて、T型剥離により試験片中の基材層とシーラント層間の接着強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。測定は、サンプル数5で行い、平均値を接着強度として、接着性を評価した。
【0095】
(a)ポリエステル樹脂フィルム/ポリプロピレン樹脂の積層体の作製方法
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット、厚み12μm)に、包装材料用接着剤を乾燥後の塗布量が約0.5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させ接着層を形成した。
次に、押出しラミネート装置を用いて、接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製 ノバテックPP FL02A)を溶融押出して、厚み30μmのポリプロピレン層からなるシーラント層が形成された積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたポリプロピレン樹脂の温度は約240℃であった。
【0096】
(b)アルミニウム箔/ポリプロピレン樹脂の積層体の作製方法
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット、厚み12μm)のコロナ面に、グラビアコート機を用いて、二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)を乾燥後の塗布量が5g/m
2になるように塗布、乾燥した後、アルミニウム箔(厚み7μm)を貼り合わせて、基材を調製した。
上記基材のアルミ面に包装材料用接着剤を塗布した以外は、前記(a)と同様の操作を行い、積層体を得た。
【0097】
(3)ヒートシール時の熱収縮率
上記(2)(b)で作製した積層体を縦40mmで横200mmの長方形に裁断し、シーラント層同士がそれぞれ接するように重ね、横方向に平行にヒートプレス機( シール圧0.3MPaで2秒間)にて120℃ でプレスした。ヒートシール後の長さX1を測定し、[(200−X1)/200]×100の式で熱収縮率を求めた。試料片10片につき熱収縮率を求め、その平均値を収縮率として評価した。実用的に用いることのできる収縮率としては、2.0%以下であり、1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
(4)高温高湿環境下におけるしわの評価
上記(1)(b)で作製した積層体を縦1m×横1mの正方形に裁断し、温度50℃ 、湿度85%の条件下へ搬入し、10日間放置した後、しわの確認を目視で行った。
○ : フリーテンションでしわがないもの
△ : フリーテンションでしわがあり、3kg/mのテンションで消えるもの
× : フリーテンションでしわがあり、3kg/mのテンションでも消えないもの
【0099】
(5)50%メタノール水溶液に対する接触角
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット、厚み25μm)に、包装材料用接着剤を乾燥後の塗布量が約3.0g/m
2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させ塗膜を形成した。得られた塗膜の50%メタノール水溶液に対する接触角は、液滴法により測定した。すなわち、20℃65%RH環境下で、協和界面科学社製接触角計CA−DT・A型を用いて、50%メタノール水溶液が直径約1.5mmの液滴を作るよう滴下して接触角を測定した。5回の測定の平均値を採用した。
【0100】
<製造例1(酸変性ポリオレフィン樹脂P−1の製造)>
プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに3倍質量の、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕と混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−1を得た。
【0101】
<製造例2(酸変性ポリオレフィン樹脂P−2の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄方法を変更して酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに3倍質量の、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕と混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄後、回収した。同様の方法で10回洗浄し、ついで、同様の方法で温度を60℃に変更し、さらに10回洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−2を得た。
【0102】
<製造例3(酸変性ポリオレフィン樹脂P−3の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄方法を変更して酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに3倍質量の、アセトンとジメチルアミノエタノールからなる洗浄液〔アセトン/ジメチルアミノエタノール=90/10(質量比)〕と混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌し樹脂を洗浄後、回収した。同様の方法でさらに10回洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
【0103】
<製造例4(酸変性ポリオレフィン樹脂P−4の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄方法を変更して酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法で樹脂を2回洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
【0104】
<製造例5(酸変性ポリオレフィン樹脂P−5の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄方法を変更して酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
【0105】
<製造例6(酸変性ポリオレフィン樹脂P−6の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄方法を変更して酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を細かく切断し、ペレット状に加工した。
次に、このペレット状の樹脂を、樹脂の2倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。
洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
【0106】
<製造例7(酸変性ポリオレフィン樹脂P−7の製造)>
製造例1において、樹脂の洗浄を行わずに酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。すなわち、プロピレン/1−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=70/30)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を固化させた。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−7を得た。
【0107】
<製造例8(酸変性ポリオレフィン樹脂P−8、P−9、P−10、P−11の製造)>
プロピレンと1−ブテンの質量比を、プロピレン/1−ブテン=60/40(P−8)、95/5(P−9)、97/3(P−10)、50/50(P−11)にそれぞれ変更した以外は、製造例5と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−8、P−9、P−10及びP−11を得た。
【0108】
<製造例9(酸変性ポリオレフィン樹脂P−12の製造)>
プロピレン/1−ブテン共重合体に代えて、プロピレン/エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、製造例5と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−12を得た。
【0109】
酸変性ポリオレフィン樹脂(P−1〜12)の特性を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、130.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂(P−1)、25.0gのエチレングリコールモノブチルエーテル、100.0gのイソプロパノール、15.0gのジメチルアミノエタノールおよび230.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り自然冷却した。
内温が80℃まで冷えたところで容器を開封して、100.0gのテトラヒドロフラン、10.0gのジメチルアミノエタノールおよび40.0gの蒸留水らからなる原料を追加投入した。その後、容器を密閉し、ヒーターの電源を入れ、撹拌翼の回転速度を300rpmの状態で再度加熱した。系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した後、ヒーターの電源を切り自然冷却した。
回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、P−1の水性分散体(以下、P−1Emと示す。)を得た。なお濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
酸変性ポリオレフィン樹脂としてP−1Em、多価ヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジドの5質量%水溶液(以下、ADH水溶液と示す。)を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、多価ヒドラジド化合物固形分が5質量部となるように混合した後、室温で撹拌し、包装材料用接着剤を得た。
【0112】
実施例2〜3、比較例2
包装材料用接着剤中の多価ヒドラジド化合物の含有量を、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、0.5質量部(実施例2)、30質量部(実施例3)、35質量部(比較例2)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って包装材料用接着剤を得た。
【0113】
実施例4
酸変性ポリオレフィン樹脂としてP−1Em、多価ヒドラジド化合物としてADH水溶液、その他の架橋剤として多価オキサゾリン化合物(日本触媒社製、多価オキサゾリン基含有アクリル樹脂水溶液、エポクロスWS700、固形分濃度25質量%、以下WS700と示す。)を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、多価ヒドラジド化合物固形分が5質量部、多価オキサゾリン化合物固形分が5質量部となるように混合した後、室温で撹拌し、包装材料用接着剤を得た。
【0114】
実施例5〜12、比較例8
酸変性ポリオレフィン樹脂として、P−2(実施例5)、P−3(実施例6)、P−4(実施例7)、P−5(実施例8)、P−6(実施例9)、P−7(比較例8)、P−8(実施例10)、P−9(実施例11)、P−12(実施例12)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、包装材料用接着剤を得た。なお、各例において濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
【0115】
比較例1
包装材料用接着剤として、P−1Emを用いた。
【0116】
比較例3
酸変性ポリオレフィン樹脂として、ボンダインTX8030(アルケマ社製、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体(質量比:エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=85/12/3)、以下TX8030と示す)を洗浄したものを用いた。詳しくは、ペレット状の樹脂であるTX8030を、樹脂の3倍質量のアセトンと混合し、50℃に保った状態で1時間攪拌して樹脂を洗浄した。樹脂を回収後、さらに同様の方法で樹脂を洗浄し、遊離状態の無水マレイン酸を除去した。洗浄後の樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥した。この時、不飽和カルボン酸モノマー成分の残存量は、1.0ppmであった。
次に、ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの洗浄したTX8030、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、粒状物は浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体TX8030Emを得た。なお濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
得られたTX8030Emを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、包装材料用接着剤を得た。
【0117】
比較例4
酸変性ポリオレフィン樹脂としてP−1Em、その他の架橋剤として多価オキサゾリン化合物WS700を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、多価オキサゾリン化合物固形分が5質量部となるように混合した後、室温で撹拌し、包装材料用接着剤を得た。
【0118】
比較例5
酸変性ポリオレフィン樹脂としてP−1Em、他の架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、ブロック型イソシアネート架橋剤、デュラネートMF−K60B、固形分濃度60質量%)を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤固形分が5質量部となるように混合した後、室温で撹拌し、包装材料用接着剤を得た。
【0119】
比較例6〜7
酸変性ポリオレフィン樹脂として、P−10(比較例6)、P−11(比較例7)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、包装材料用接着剤を得た。なお、各例において濾過の後、フィルター上に樹脂の未分散物は確認できなかった。
【0120】
実施例1〜12、比較例1〜8で得られた包装材料用接着剤から得られた塗膜の各種性能の評価結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
実施例1〜12で得られた本発明の包装材料用接着剤は、接着強度が良好で、包装材料のヒートシール時の熱収縮率が低く、さらに高温高湿環境下で保管しても、しわが発生しにくいものであった。
なかでも、多価ヒドラジド化合物に加え、その他の架橋剤を含有し、50%メタノール水溶液に対する接触角がさらに好ましい範囲である実施例4の包装材料用接着剤は、ヒートシール時の熱収縮率が低く特に優れていた。
【0123】
一方、比較例1、4、6では多価ヒドラジド化合物を含有していなかったため、高温高湿環境下で保存するとしわが発生した。
比較例2では、多価ヒドラジド化合物の含有量が本発明で規定する範囲を外れていたため、高温高湿環境下で保存するとしわが発生した。
比較例3、6、7では酸変性ポリオレフィン樹脂の成分が本発明で規定する範囲を外れていたため、基材とプロピレン樹脂のシーラントフィルムとの接着強度が低く、実用的に包装材料として用いることができなかった。また、ヒートシール時の熱収縮率が高かった。
比較例8では、塗膜の50%メタノール水溶液に対する接触角が本発明で規定する範囲を外れていたため、高温高湿環境下で保存するとしわが発生した。
【0124】
なお、実施例1〜12、比較例1〜8の包装材料用接着剤より得られた塗膜の水に対する接触角を測定したが、いずれも95〜100°の範囲であった。