(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869557
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
B25B21/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-139505(P2019-139505)
(22)【出願日】2019年7月30日
(62)【分割の表示】特願2016-73510(P2016-73510)の分割
【原出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-198959(P2019-198959A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】513096347
【氏名又は名称】株式会社 アイダ
(74)【代理人】
【識別番号】100145148
【弁理士】
【氏名又は名称】北上 日出登
(72)【発明者】
【氏名】後▲藤▼ 貴章
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−215326(JP,A)
【文献】
特開2001−105333(JP,A)
【文献】
特開2010−131726(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3154620(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
B25B 13/00 − 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に第1のナットを受け容れるために設けられた第1の開口と、他端側にビットを受け容れるために設けられた第2の開口と、前記第1の開口側において当該第1のナットを保持する第1の保持部とを有する外側部材と、
前記外側部材に少なくとも一部が収容され、前記第1のナットより小径の第2のナットを保持するための第2の保持部を有し、軸方向が前記外側部材の軸方向と実質的に同じであり、前記外側部材の軸方向に沿って移動可能である内側部材と、
前記内側部材の外周面と前記外側部材の内周面との間に位置する円環部材と、
前記外側部材の内周面には円環部材を保持する円環部材保持部と、を備え、
前記円環部材の内側の所定範囲は、前記円環部材保持部における前記円環部材の保持領域の外側へ突出し、
前記内側部材の外周面には、前記内側部材における軸方向の移動にともない、前記円環部材における前記所定範囲の少なくとも一部が当接することにより、前記外側部材から前記内側部材が脱落することを防止するための膨出部が設けられ、
前記外側部材における第1の保持部の奥には、前記内側部材が最奥部まで移動したときに当該内側部材における当該最奥部との対向面が接触する接触部が設けられ、
当該接触部と円環部材保持部との間には、
当該接触部から当該円環部材保持部へ向かって前記内側部材の軸中心側に傾斜するテーパー部と、
前記テーパー部と前記円環部材保持部との間に設けられ、当該テーパー部から当該円環部材保持部へ向かって前記内側部材の軸方向と実質的に平行に形成され、前記軸方向における長さが前記円環部材の軸径より短い中継部と、
が設けられる
ことを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記第1の保持部は、前記第1の開口から当該外側部材の軸方向に奥行きを有する前記外側部材の内壁によって画され、
前記軸方向において前記接触部と向かい合う前記内側部材の外面より奥側には、軸中心側に屈曲した段差が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ビット用ソケットは、一端にビットを固定することにより、インパクトドライバーやドリルドライバーに取り付けてボルトやナットの締緩作業に用いられるものである。すなわち、ビット用ソケットの一端に固定されたビットをインパクトドライバー等に取付け、さらにソケットの開口からナットを嵌入させて用いられる。インパクトドライバー等を駆動させると、ビットが回転することによりソケットが回転し、ナット等の締緩作業が実行可能となる。
【0003】
従来のビット用ソケットには、アウターソケット及びインナーソケットを有する構成のものがあった(特許文献1,2参照)。このソケットでは、アウターソケットの内部でインナーソケットが移動する。アウターソケットにおいて所定のサイズのナットを保持することができ、インナーソケットでは、アウターソケットで保持できるナットより小径のナットを保持することが可能である。つまり、このようなビット用ソケットを用いることにより、ユーザーは異なる直径のナットの締緩作業をそれぞれ行う際に、ソケットをインパクトドライバー等から取り外さなくてもよい。
【0004】
このような複数サイズのナットに対応したビット用ソケットは、ナットを受け容れるためのアウターソケットの開口と、インナーソケットの開口とが同じ方向を向いている。また、インナーソケットは、アウターソケットの開口側に付勢されており、インナーソケットがユーザーにより押し込まれないときは、インナーソケットの開口はアウターソケットの開口近傍に位置する。
【0005】
ユーザーが小径のナットの締緩作業をするときは、インナーソケットでそのナットを保持させる。またユーザーが大径のナットの締緩作業をするときは、ソケットをナットに押し付けることにより、インナーソケットを開口と反対側(ビット側)に押し込み、アウターソケットでそのナットを保持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1309103号公報
【特許文献2】意匠登録第1309418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなインナーソケットがアウターソケットの内部で軸方向に移動する構成においては、インナーソケットがアウターソケットから外れないようにする必要がある。
【0008】
従来は、インナーソケットを外れないようにする構造が摩耗、破損する等、劣化しやすくなっていた。例えば特許文献1,2のようなビット用ソケットによれば、2点のピン(A−A断面図のやや左側の細かいハッチング部分)でインナーソケット全体がアウターソケットから脱落しないように留めている。しかしながら、このような構成ではピンの摩耗、破損によりインナーソケットが脱落する虞があった。例えば高所作業においてはインナーソケットの脱落、落下による事故を防止する必要がある。
【0009】
以下の実施形態においては、インナーソケットの脱落を防止しうるビット用ソケットを提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態におけるビット用ソケットは、一端側に第1のナットを受け容れるために設けられた第1の開口と、他端側にビットを受け容れるために設けられた第2の開口と、当該第1の開口側において当該第1のナットを保持する第1の保持部とを有する外側部材を備える。またビット用ソケットは、当該外側部材に少なくとも一部が収容され、第1のナットより小径の第2のナットを保持するための第2の保持部を有する内側部材を備える。またビット用ソケットにおいて、内側部材及び外側部材は、軸方向が実質的に同じであり、内側部材は外側部材の軸方向に沿って移動可能である。またビット用ソケットでは、内側部材の外周面と前記外側部材の内周面との間に位置する円環部材が設けられる。また外側部材の内周面には円環部材を保持する溝状の円環部材保持部が設けられている。円環部材の内側の所定範囲は、円環部材保持部における円環部材の保持領域の外側へ突出している。内側部材の外周面には、内側部材の軸方向の移動により、円環部材の所定範囲の少なくとも一部が当接することにより、外側部材から内側部材が脱落することを防止するための膨出部を備える。円環部材保持部と第2の保持部との間には、当該第2の保持部から当該円環部材保持部へ向かって前記内側部材の軸中心側に傾斜するテーパー部が設けられる。テーパー部と、円環部材保持部における当該テーパー部側端部との間の軸方向の距離が、軸部材の線径より短い。
【発明の効果】
【0011】
実施形態におけるビット用ソケットは、円環部材により内側部材を外側部材の所定範囲に留めている。従来の構成では、外周面の円環部材および球状部材や2点のピンを用いて内側部材を留めているため、これら部材が上記のように摩耗等、劣化により内側部材を外側部材に留めておけなくなる状況が生じやすいが、上記構成によれば、耐久性が向上する。また、外側部材の外周面に円環部材を保持しているソケットと比較して、連続的で滑らかな面を呈することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のビット用ソケットにおける斜視図。
【
図2】実施形態のビット用ソケットにおける正面図。
【
図3】実施形態のビット用ソケットにおける平面図。
【
図4】実施形態のビット用ソケットにおける右側面図。
【
図5】実施形態のビット用ソケットにおける左側面図。
【
図7】実施形態のビット用ソケットにおける他の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜
図9を参照して、実施形態のビット用ソケットについて説明する。まず実施形態にかかるビット用ソケット1の全体構成について
図1〜
図6を参照して説明する。
図1〜
図5に示すように、ビット用ソケット1は、外側部材10、内側部材20、およびスライド部材30を含んで構成される。
【0014】
図1〜
図5に示すように、外側部材10は、大径の円筒部と、その円筒部の軸方向の一端側にテーパー面を介して連なって設けられた小径の円筒部とを有して構成される。大径の円筒部の一端には第1の開口12が設けられる。この第1の開口12は、ナットを挿入可能な直径を有する。
【0015】
図4に示すように外側部材10における第1の開口12側には、多角形(例えば12角、6角等)のナットの保持部が設けられている。この保持部について、以下、「第1の保持部18a」として説明する。また第1の保持部18aにより保持されるナットを第1のナットとして説明する。
【0016】
第1の保持部18aは、第1のナットの先端面における周縁部が当接される第1の当接面18bと、当該第1のナットの側面が当接される第1の側面18cとを備える。
【0017】
図6に示すように内側部材20は、円筒型に形成され、一端の開口側に第2の保持部24を備える。第2の保持部24は第1のナットより小径のナット(以下、「第2のナット」と記載する)を保持するものであり、サイズを除き、概ね第1の保持部18aと同様の構造を有する。したがって、符号を省略するが、第2の保持部24も第2のナットの先端面における周縁部が当接される第2の当接面と、第2のナットの側面が当接される第2の側面とを備える。
【0018】
図6に示すように、内側部材20は、外側部材10の内部に少なくとも一部が収容され、かつ内側部材20の軸方向と、外側部材10の軸方向とは実質的に同じ方向となる。また内側部材20は、外側部材10に対して当該軸方向に移動可能である。また外側部材10の第1の保持部18aの第1の開口12と、内側部材20の第2の保持部24の開口とは、当該軸方向において同じ方向を向くように配置される。
【0019】
図6に示すように内側部材20の外周面における、第2の保持部24と反対側(外側部材10の第2の開口14側)には、外側部材10の内周面側(軸方向と直交する方向)に突出する膨出部22が設けられる。膨出部22における突出方向と略直交する両側面のうち、一方側(第2の開口14側)には、付勢部材Bの一端面が当接する。また当該両側面のうち、他方側(第1の開口12側)には後述のように円環部材Rの所定範囲が当接する。
【0020】
付勢部材Bは、外側部材10に収容され、内側部材20より第2の開口14側に位置する。付勢部材Bは内側部材20を外側部材10における第1の開口12側に付勢する。なお、付勢部材Bは例えばバネ部材である。
【0021】
図6は、内側部材20に対し、軸方向において第2の開口14側へ押し込む力がかかっていない状態を示している。この状態において、第1の保持部18aの位置に第2の保持部24が位置するため、このときにビット用ソケット1において保持されるナットは小径の第2のナットとなる。これに対し、
図7および
図8は、内側部材20に対し、軸方向において第2の開口14側へ押し込む力がかかっている状態を示している。第2の保持部24は奥側(第2の開口14側)に後退しているため、この状態において、ビット用ソケット1において保持されるナットは第1の保持部18aに対応する第1のナット(大径のナット)となる。
【0022】
なお、付勢部材Bにより、内側部材20が第1の開口12側に付勢されているので、内側部材20が外側部材10から脱落しないようにする構成が必要となる。上記のように従来は、外側部材の内周面側で保持する2点のピン部材(円柱状部材)と、外側部材10の外周面においてそれらピンが外側部材から脱落しないように保持する円環部材とを備える構成により内側部材の脱落を防止していた。
【0023】
しかしながら、このような構成においては、常に円環部材が内側部材側にピンを抑えており、その状態で内側部材が軸方向に移動すると、ピンの端面と内側部材の外周面との間に摩擦が生じる。したがって、度重なる内側部材の軸方向の移動により、ピンの端面は摩耗していく。
【0024】
さらに、内側部材を付勢部材による付勢力に抗して押し込むと、ピンの側面(ピンの軸方向に沿った面)に負荷がかかる。この力はピンの軸方向と直交する方向にかかるため、度重なる内側部材の軸方向の移動により、ピンが劣化し、破損(ピンの折れ等)する虞がある。
【0025】
上記のようにピンの摩耗や折れ等により、内側部材を外側部材内に留められなくなると、内側部材が外側部材から脱落する虞がある。例えば建築現場等、高所作業においては、内側部材の脱落による事故を防止する必要がある。
【0026】
これに対する本実施形態の構成につき、
図6を参照して説明する。
図6示すように、外側部材10の内周面における所定位置には、円環部材Rの保持領域(円環部材保持部16)が設けられている。この「所定位置」とは、内側部材20に対して押し込む力がかかっていない状態(
図6)における膨出部22の位置より、第1の開口12側に隣接する位置である。一例において、この円環部材保持部16は外側部材10に凹部を設けることにより形成される。円環部材保持部16の深さ(軸方向と直交する方向の長さ)は、円環部材Rの円周方向と直交する断面の直径より短い。したがって、円環部材保持部16は円環部材Rの一部を保持し、円環部材Rの内側は円環部材保持部16から内側部材20側へ突出する。なお、円環部材Rの内側とは、円環部材Rが描く円の中心側をいう。
【0027】
内側部材20に対して押し込む力がかかっていない状態においては、内側部材20が外側部材10から脱落しないように、膨出部22の第1の開口12側の面と、円環部材Rの上記内側の面が当接する。このような構成によれば、上記のようなピンでの保持と比較して、より広い面で脱落防止をしているため、耐久性が向上する。また、外側部材の外周面に円環部材を保持しているソケットと比較して、連続的で滑らかな面を呈することが可能となる。
【0028】
次に
図9を参照してスライド部材30について説明する。上記のように、外側部材10は、第1の保持部18aの位置に対応する大径部分と、付勢部材Bを収容する小径部分とを有するが、さらに第2の開口14側においてビットを保持するためのビット保持領域を有する。また、ビット保持領域には、球状体を保持する球状体保持部が設けられている。
スライド部材30は、外側部材10におけるビット保持領域の外周面を囲うように設けられている。またスライド部材30は、スライド部材30は、その内側のバネ部材により第2の開口14方向へ付勢されている。またスライド部材30の内周面には、内側(外側部材10のビット保持領域の外周面側)へ突出する突部が設けられている。この突部は、外側部材10のビット保持領域における球状体保持部に対応する位置に設けられる。さらにスライド部材30の内周面には、この突部に対して第2の開口14側に隣接する凹部が設けられている。スライド部材30がバネ部材の付勢力により第2の開口14側へ付勢されているとき、付勢力に抗してスライド部材30を第1の開口12側に押すと、球状体がスライド部材30の凹部に落ち込み、ビットが挿入可能となる。スライド部材30を第1の開口12側へ押す力を解除すると、スライド部材30における球状体は突部によりスライド部材30の内側に押され、ビットは
図6のように球状体と突部により保持される(
図9)。
【0029】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 ビット用ソケット
10 外側部材
12 第1の開口
14 第2の開口
16 円環部材保持部
18a 第1の保持部
18b 第1の当接面
18c 第1の側面
20 内側部材
22 膨出部
24 第2の保持部
30 スライド部材
B 付勢部材
R 円環部材