(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話及びスマートフォン等(以下、携帯端末装置という)による通信を可能にする通信システムにおいては、限られた周波数帯域を多数の携帯端末装置で有効に利用するために、種々の多重化方式が用いられている。代表的なものとして、FDMA(周波数分割多元接続)、TDMA(時分割多元接続)及びCDMA(符号分割多元接続)が知られている。
【0003】
図1を参照して、多重化方式としてCDMAを採用した無線通信システムにおいては、送信機において拡散符号処理が実行され、受信機において逆拡散符号処理が実行される。
図1には4台の送信機及び1台の受信機を示しているが、実際の無線通信システムは、より多くの送信機及び受信機を含む。送信機と受信機との間の通信は、公知の無線通信の基地局(図示せず)を介して実行される。
【0004】
第1送信機900は、高周波生成部902、一次変調器904、二次変調器906及び拡散符号発生器908を含む第1送信機本体と、アンテナ910とを備えている。第2送信機912〜第4送信機916も、第1送信機900と同様に構成されている。高周波生成部902は、搬送波として使用される高周波を生成する。一次変調器904は、高周波生成部902から入力される高周波を、入力されるデータ(デジタルデータ)を用いて一次変調する。一次変調には、公知の変調方式が使用され、例えば、ASK(振幅偏移変調)、FSK(周波数偏移変調)、PSK(位相偏移変調)又はQAM(直角位相振幅変調)等が使用される。二次変調器906は、一次変調後の信号S1が入力され、拡散符号発生器908から入力される拡散符号を用いて信号S1を二次変調し、信号S2として出力する。具体的には、信号S1と拡散符号とを乗算して出力する。二次変調後の信号S2は、アンテナ910から、CH1の信号として送信される。同様に、第2送信機912〜第4送信機916からも、二次変調後の信号が、CH2〜CH4の信号として送信される。なお、各送信機においては、相互に異なる拡散符号が使用されるが、搬送波の周波数帯域は同じである。
【0005】
図2の(a)は、第1送信機900〜第4送信機916のそれぞれにおける一次変調後の信号S1を示している。拡散符号発生器908により、一次変調後の信号S1は、より広い周波数範囲に拡散され(周波数帯域が広がり)、エネルギーが変わらないので、強度が小さい信号S2となる(
図2の(b)参照)。ここでは、後述する受信機930の検出対象である信号を第2送信機912から送信される信号(CH2)であるとする。
【0006】
再び
図1を参照して、受信機930は、アンテナ932と、逆拡散器934、BPF(バンドパスフィルタ)936、復調器938及び逆拡散符号発生器940を含む受信機本体とを備えている。アンテナ932は無線信号を受信する。逆拡散器934は、逆拡散符号発生器940から出力される逆拡散符号を用いて、受信信号S3に対して逆拡散処理を実行する。具体的には、信号S3と逆拡散符号とを乗算して出力する。BPF936はバンドパスフィルタであり、入力される信号S4のうち所定の周波数範囲(所定帯域)の信号を通過させ、それ以外の信号を減衰させて、信号S5として出力する。復調器938は、入力される信号S5に対して、一次変調器904で採用されている変調方式に応じた方式で復調処理を実行する。これにより、復調器938から所定のデータ(第1送信機900における一次変調前のデジタルデータ)が出力される。
【0007】
なお、携帯端末装置は送信機能及び受信機能を有しており、第1送信機900〜第4送信機916はそれぞれに対応する携帯端末装置の送信機能を示したものであり、受信機930は、対応する携帯端末装置の受信機能を示したものと言える。
【0008】
図2の(c)〜(e)に、上記したように、受信機930の検出対象である信号を第2送信機からの信号(CH2)であるとして、信号S3〜S5の波形を示す。受信信号S3は、CH1〜CH4から送信される帯域拡散された信号が重畳された信号である(
図2の(c)参照)。これに対して、第2送信機912において用いられた拡散符号に対応する逆拡散符号を用いて逆拡散された後の信号S4においては、第2送信機912が使用するCH2の信号は、拡散前の状態に戻り、それ以外の信号は、拡散されたままである(
図2の(d)参照)。
【0009】
これは、使用される拡散符号及び逆拡散符号の性質によるものであり、拡散符号としてPN(Pseudorandom Noise)系列が使用され、逆拡散符号は拡散符号と同じものである。同じ拡散符号を2回適用(2回乗算)すると、元の信号に戻る。一方、2つの異なる拡散符号をそれぞれ1回適用しても、信号は拡散されたままである。したがって、
図2の(d)では、CH2の信号のみが元に戻り、CH1、CH3及びCH4の信号は拡散されたままである。なお、逆拡散符号発生器940は、CH1〜CH4のそれぞれに対応する複数の逆拡散符号を記憶しており、第2送信機912から事前に制御用チャンネルを介して受信機930に、第2送信機912で使用した拡散符号の情報が送信されることにより、逆拡散符号発生器940は、第2送信機912からの信号を検出するために使用すべき逆拡散符号を出力することができる。
【0010】
その後、信号S4が
図1のBPF936を通過することにより、所定帯域外の信号が除去された信号S5が生成される(
図2の(e)参照)。復調器938は、信号S5に対して、一次変調器904で採用されている変調方式に応じた方式で復調処理を実行する。これにより、復調器938から、第1送信機900が送信したデータが出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
CDMAのように、符号分割で複数チャンネルを同一帯域内で使用し、受信側で逆拡散により希望のチャンネルの信号(以下、希望波ともいう)を選択する方法においては、チャンネル数を増やすと逆拡散による他チャンネルの不要波(以下、ノイズともいう)レベルが増えることになる。そのため、希望波と不要波との比(以下、SN比ともいう)が劣化する問題がある。例えば、
図2の(e)に示すように、CH2の信号(強度S)に対して、それ以外のCH1、CH3及びCH4の拡散された信号はノイズ(強度N)となる。チャンネル数が多くなればノイズの強度が増大するのに対して、CH2の信号の強度は変わらないので、SN比は減少(劣化)する。したがって、CDMAを用いた通信システムにおいて、SN比を所定値以上に維持するために、使用可能なチャンネル数には限界がある。
【0013】
従来では、送信信号以外の不要波を除去することで、ビットエラーレート(BER(Bit Error Rate))の改善を行なっている。それは、送信機から出力された信号に、通信経路により重畳されるノイズを不要波として除去することを目的としている。上記のように、CDMAに関して、検出対象である所定チャンネルの信号に対して、それ以外のチャンネルで使用される信号が常にノイズになり得るという問題、即ち、採用されている多重化方式(CDMA)自体により生じる問題を改善することは、これまで考えられていなかった。また、従来のビットエラーレートの改善方法は、採用されている多重化方式(CDMA)自体により生じる問題を改善することを目的としていない。
【0014】
例えば、CH1〜CH4を使用する場合、CH2を希望波とすると、他のチャンネルは不要波となる(
図2の(d)及び(e)参照)。CH2単独で受信したとき、信号強度が十分であればBER=1x10
−5であるとした場合でも、他のチャンネルの信号が干渉するためにBER=1x10
−3になるとする。実際には、これに外来不要波等でさらにエラーレートが劣化する。しかし、従来の不要波除去は、上記したように外来不要波の除去を目的としているために、BER=1x10
−3に近づけることが限界であり、BER=1x10
−5に至ることはできない。
【0015】
また、従来のFDMAでは、各チャンネルの周波数帯域幅が干渉しないように(各チャンネルの周波数帯域が重ならないように)、各チャンネルを周波数軸上に配置している。そのため、チャンネル数を増やすと、各チャンネルのデータ量を減らす必要が生じる問題がある。これは、各チャンネルの帯域幅が重なることで混信となり、ノイズ等の不要波による影響でビットエラーレートが悪化する以前に、希望波に他のチャンネルの信号が干渉するために、受信機への入力信号そのものが、エラーレートが悪化した状態で入力されるためである。FDMAにおけるこの問題を改善できれば、好ましい。
【0016】
また、マルチキャリア変調に属するOFDM(直交周波数分割多重)では、送信機からデータを、互いに直交する複数の搬送波(サブキャリア。以下、サブチャンネルともいう)に乗せて伝送し、受信機において複数のサブキャリアにより伝送されたデータを集合する。各々のサブキャリアはQAM等の公知の方式で、低シンボルレートで変調される。即ち、OFDMでは、高速の変調を受けた単一の広帯域幅の信号ではなく、ゆっくりとした変調(低変調速度)を受けた多数の狭帯域幅の信号を、FDMAよりも密(狭い周波数間隔)に配置することにより周波数利用率を向上する。各サブキャリアは直交しており、
図12に示すように、各サブキャリアの中心周波数の位置では、その他のサブキャリアの信号強度はゼロになるので、通常、周波数軸上で重なりが生じる程に密に並べられるにもかかわらず、サブキャリアが互いに干渉しない利点がある。
図12において、サブキャリアSC2のスペクトルを太い実線で示す。サブキャリアSC1及びSC3〜SC5も、周波数はシフトしているが、同様のスペクトルである。各サブキャリアは、高速フーリエ変換(FFT)により効率的に分離できる。このようなOFDMにおいて、帯域幅を変更せずにデータレートを上げるために、帯域幅内のサブキャリアの数をさらに増やすことが行なわれるが、各サブキャリアは直交している必要があり低データレートとなる為に、全体のデータレートは、サブキャリア数に正比例して増大するわけではない。また、帯域内の総電力に規定がある場合、サブキャリア数を増やせば各サブキャリアの電力を小さくしなければならず、エラーレートの劣化を招く原因になる。したがって、サブキャリア数(サブチャンネル数)を増大することが難しい問題を改善できれば、好ましい。
【0017】
したがって、本発明は、信号を多重化する通信方式において、特定チャンネル(サブチャンネルを含む)の信号に対して、それ以外のチャンネルの信号が不要波となることによるエラーレートの劣化を改善することができる通信システム及び端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の局面に係る通信システムは、所定の多重化方式に基づき通信を行なう複数の送信機と少なくとも1つの受信機とを含む通信システムであって、複数の送信機のそれぞれの送信周波数帯域の少なくとも一部は、相互に重なる。受信機は、複数の送信機から受信した変調信号から不要波を除去する不要波除去部と、不要波除去部からの出力信号を復調する復調部とを有する。不要波除去部は、入力信号を、シンボル周期をΔTとし、nを正の整数として、f=n/ΔTの周波数fの信号に変換して出力する第1周波数変換部と、1シンボルに対応する期間において、所定時間間隔のタイミングにおける第1周波数変換部からの出力信号の信号値を保持した後、Mを正の整数として、保持した信号値を、保持した順序で、シンボル周期の1/Mであり且つ所定時間間隔よりも短い時間間隔で繰返し読出して出力する拡散部と、拡散部から出力される信号が入力されるローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の出力信号が入力されるバンドパスフィルタ部と、バンドパスフィルタ部の出力信号を、第1周波数変換部への入力信号の搬送波周波数の信号に変換して出力する第2周波数変換部とを有する。
【0019】
これにより、信号を多重化する通信方式において、特定チャンネルの信号に対して、それ以外のチャンネルの信号が広帯域に拡散することによるエラーレートの劣化を改善することができる。
【0020】
本発明の第2の局面に係る通信システムは、所定の多重化方式に基づき通信を行なう複数の送信機と少なくとも1つの受信機とを含む通信システムであって、複数の送信機のそれぞれの送信周波数帯域の少なくとも一部は、相互に重なる。受信機は、複数の送信機から受信した変調信号から不要波を除去する不要波除去部と、不要波除去部からの出力信号を復調する復調部とを有する。不要波除去部は、入力信号を、シンボル周期をΔTとし、nを正の整数として、f=n/ΔTの周波数fの信号に変換して出力する第1周波数変換部と、1シンボルに対応する期間において、所定時間間隔のタイミングにおける第1周波数変換部からの出力信号の信号値を保持した後、保持した信号値を、周波数fの1波長単位でランダムに重複することなく読出して出力する拡散部と、拡散部から出力される信号が入力されるローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の出力信号が入力されるバンドパスフィルタ部と、バンドパスフィルタ部の出力信号を、第1周波数変換部への入力信号の搬送波周波数の信号に変換して出力する第2周波数変換部とを有する。
【0021】
好ましくは、通信システムにおいて、多重化方式としてCDMA、FDMA、又は、非直交の複数のサブキャリアを用いる非直交マルチキャリア方式が用いられる。CDMAが用いられるときには、複数の送信機のそれぞれは、相互に異なる拡散符号を適用した信号を送信し、受信機は、通信対象の送信機で使用された拡散符号に対応する逆拡散符号を受信信号に適用して得られた信号を、不要波除去部に入力する。
【0022】
本発明の第3の局面に係る端末装置は、所定の多重化方式に基づき通信を行なう複数の送信機を含む通信システムで使用される端末装置であり、複数の送信機のそれぞれの送信周波数帯域の少なくとも一部は、相互に重なる。端末装置は、複数の送信機から受信した変調信号から不要波を除去する不要波除去部と、不要波除去部からの出力信号を復調する復調部とを有する。不要波除去部は、入力信号を、シンボル周期をΔTとし、nを正の整数として、f=n/ΔTの周波数fの信号に変換して出力する第1周波数変換部と、1シンボルに対応する期間において、所定時間間隔のタイミングにおける第1周波数変換部からの出力信号の信号値を保持した後、Mを正の整数として、保持した信号値を、保持した順序で、シンボル周期の1/Mであり且つ所定時間間隔よりも短い時間間隔で繰返し読出して出力する拡散部と、拡散部から出力される信号が入力されるローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の出力信号が入力されるバンドパスフィルタ部と、バンドパスフィルタ部の出力信号を、第1周波数変換部への入力信号の搬送波周波数の信号に変換して出力する第2周波数変換部とを有する。
【0023】
本発明の第4の局面に係る端末装置は、所定の多重化方式に基づき通信を行なう複数の送信機を含む通信システムで使用される端末装置であり、複数の送信機のそれぞれの送信周波数帯域の少なくとも一部は、相互に重なる。端末装置は、複数の送信機から受信した変調信号から不要波を除去する不要波除去部と、不要波除去部からの出力信号を復調する復調部とを有する。不要波除去部は、入力信号を、シンボル周期をΔTとし、nを正の整数として、f=n/ΔTの周波数fの信号に変換して出力する第1周波数変換部と、1シンボルに対応する期間において、所定時間間隔のタイミングにおける第1周波数変換部からの出力信号の信号値を保持した後、保持した信号値を、周波数fの1波長単位でランダムに重複することなく読出して出力する拡散部と、拡散部から出力される信号が入力されるローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の出力信号が入力されるバンドパスフィルタ部と、バンドパスフィルタ部の出力信号を、第1周波数変換部への入力信号の搬送波周波数の信号に変換して出力する第2周波数変換部とを有する。
【0024】
好ましくは、拡散部は、第1周波数変換部からの出力信号を、所定周波数でサンプリングし、デジタルデータを生成して出力するA/D変換部と、第1記憶部及び第2記憶部と、A/D変換部から出力されるデジタルデータを、1シンボル毎に第1記憶部及び第2記憶部に交互に記憶させる第1スイッチ部と、第1記憶部及び第2記憶部から、デジタルデータを記憶された順序で、シンボル周期の1/Mであり且つ所定時間間隔よりも短い時間間隔で繰返し読出して出力する第2スイッチ部と、第2スイッチ部から出力されるデジタルデータを、アナログ信号に変換して出力するD/A変換部とを含む。
【0025】
より好ましくは、拡散部は、1シンボル分の信号値を、周波数fの1波長に対応する単位で分割して保持し、保持した信号値を、周波数fの1波長に対応する単位で繰返し読出し、各回の読出しにおいて、重複せずにランダムに読出す。
【0026】
さらに好ましくは、拡散部は、入力信号の所定のタイミングにおける値を保持する第1サンプルホールド部及び第2サンプルホールド部と、第1周波数変換部からの出力信号を、1シンボル毎に、所定時間間隔のタイミングで、第1サンプルホールド部及び第2サンプルホールド部に、交互に保持させる第1スイッチ部と、第1サンプルホールド部及び第2サンプルホールド部に保持されている値を、保持された順序で、シンボル周期の1/Mであり且つ所定時間間隔よりも短い時間間隔で繰返し読出して出力する第2スイッチ部とを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、信号を多重化する通信方式において、特定チャンネルの信号に対して、それ以外のチャンネルの信号が広帯域に拡散することによるエラーレートの劣化を改善することができる。したがって、通信方式及び各チャンネルの帯域幅を変更することなく、チャンネル数を、従来よりも増やすことができ、通信サービスに割当てられた通信帯域をより有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
(第1の実施の形態)
図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムは、第1送信機100、第2送信機112、第3送信機114、第4送信機116及び受信機130を備えている。本無線通信システムでは、多重化方式にCDMAが採用されている。
図3には4台の送信機及び1台の受信機を示しているが、実際にはより多くの送信機及び受信機を備えていてもよい。また、送信機と受信機との通信は、公知の無線通信の基地局(図示せず)を介して、又は、基地局を介さず直接に行なわれる。なお、送信機及び受信機を携帯端末装置と考えることもできる。携帯端末装置は送信機能及び受信機能を有しており、第1送信機100〜第4送信機116は、それぞれに対応する携帯端末装置の送信機能を示したものであり、受信機130は、対応する携帯端末装置の受信機能を示したものと言える。
【0031】
第1送信機100は、
図1に示した第1送信機900と同様に構成されている。即ち、第1送信機100は、高周波生成部102、一次変調器104、二次変調器106及び拡散符号発生器108を含む第1送信機本体と、アンテナ110とを備えている。第2送信機112〜第4送信機116は、第1送信機100と同様に構成されている。高周波生成部102は、搬送波として使用される高周波を生成する。一次変調器104は、高周波生成部102から入力される高周波を、入力されるデータ(デジタルデータ)を用いて一次変調する。一次変調には、ASK、FSK、PSK、又はQAM等の公知の変調方式が使用される。二次変調器106は、一次変調後の信号S1が入力され、拡散符号発生器108から入力される拡散符号を用いて信号S1を二次変調し、信号S2として出力する。これにより、一次変調後の信号S1(例えば、
図2の(a)参照)は、周波数が拡散され、強度が小さい信号S2となる(例えば、
図2の(b)参照)。二次変調後の信号S2は、アンテナ110からCH1の信号として送信される。同様に、第2送信機112〜第4送信機116からも、二次変調後の信号が、CH2〜CH4の信号として送信される。各送信機において使用される拡散符号は、相互に異なるものが使用される。
【0032】
受信機130は、アンテナ132と、逆拡散器134、BPF136、復調器138、逆拡散符号発生器140及び不要波除去部200を含む受信機本体とを備えている。アンテナ132は無線信号を受信する。受信信号S3は、CH1〜CH4から送信される帯域拡散された信号が重畳された信号である(例えば、
図2の(c)参照)。逆拡散器134は、逆拡散符号発生器140から出力される逆拡散符号を用いて、受信信号S3に対して逆拡散処理を実行する。具体的には、信号S3と逆拡散符号とを乗算して、信号S4として出力する。受信機130の検出対象がCH2の信号であるとすると、信号S4においては、第2送信機112が使用するCH2の信号が、拡散前の状態に戻り、それ以外の信号は、拡散されたままである(例えば、
図2の(d)参照)。BPF136はバンドパスフィルタであり、入力される信号S4のうち所定の周波数範囲(所定帯域)の信号を通過させ、それ以外の信号を減衰させて、信号S5として出力する(例えば、
図2の(e)参照)。
【0033】
不要波除去部200は、入力される信号から不要波を除去して、信号S7を出力する。不要波除去部200は、例えば、特許文献1に第1実施形態として開示されているものである。復調器138は、不要波除去部200から出力される信号S7に対して、一次変調器104で採用されている変調方式に応じた方式で復調処理を実行する。これにより、復調器138から所定のデータ(例えば、第1送信機100が送信したデータ)が出力される。
【0034】
図4を参照して、不要波除去部200は、第1周波数変換回路202、A/D変換器204、第1メモリ206、第2メモリ208、第1バスセレクタスイッチ210、第2バスセレクタスイッチ212、D/A変換器214、LPF(ローパスフィルタ)216、BPF218、第2周波数変換回路220、PLL発振回路222、同期補正回路224、DDS(Direct Digital Synthesizer)226、及び制御回路228を備えている。
【0035】
第1周波数変換回路202には、BPF136から出力される、一次変調後の信号S5(不要波を含む)が入力される。第1周波数変換回路202は局部発振回路を有し、入力信号S5を、シンボル周期を1周期とする周波数(シンボルレート)のn倍(nは正の整数)の周波数f(シンボル周期をΔTとして、f=n/ΔT)を有する信号に変換する。
図5には、「ベースバンド」で示す変調の対象データ(シンボル)が、ASK、FSK及びPSKの各変調方式で一次変調された後の信号(不要波を含まない)を示している。例えば、n=2とした場合に、
図5の(c)に示す信号(搬送波周波数は任意)が第1周波数変換回路202に入力されると、第1周波数変換回路202は、シンボルレート(1/ΔT)の2倍の周波数(2/ΔT)を有する
図5の(d)に示す信号を出力する。
図5の(a)又は(b)の信号に関しても同様に変換される。
【0036】
A/D変換器204は、第1周波数変換回路202の出力(アナログ信号)を、PLL発振回路222から出力されるクロックにしたがってサンプリングしてデジタル符号化する。PLL発振回路222は、周波数が、入力されるクロック(後述する受信機の基準クロックに同期したクロック)のN倍(Nは正の整数)のクロックをA/D変換器204に供給する。
【0037】
第1バスセレクタスイッチ210は、制御回路228により制御され、A/D変換器204の出力(変換データ)を1シンボル毎に、第1メモリ206及び第2メモリ208に交互に出力する。第1メモリ206及び第2メモリ208は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、1シンボル分の変換データを記憶するのに充分な容量を有している。なお、第1メモリ206及び第2メモリ208は、別のメモリ素子により構成しても、1つのメモリ素子上の異なる領域として構成してもよい。第2バスセレクタスイッチ212は、制御回路228により制御され、第1メモリ206及び第2メモリ208から交互にデータ(1シンボルに対応)を読出し、読出したデータをD/A変換器214に入力する。第1バスセレクタスイッチ210及び第2バスセレクタスイッチ212がアクセスする第1メモリ206及び第2メモリ208のアドレスは、制御回路228により指定される。第2バスセレクタスイッチ212は、第1バスセレクタスイッチ210が第1メモリ206及び第2メモリ208のいずれか一方にデータを書込む間に、書込み状態にない他方とD/A変換器214とを接続し、D/A変換器214にデータを入力する。このとき、第2バスセレクタスイッチ212は、一次変調後の信号S5(第1周波数変換回路202への入力信号)におけるシンボル周期を1周期とする周波数のM倍(Mは正の整数)の速度で、記憶されている1シンボル分のデータの読出しを、先頭データからサイクリック(循環的)に繰返し行なう。このとき、MはNよりも大きい値に設定され、D/A変換器214へのデータ出力速度(周波数)は、A/D変換器204の動作クロック周波数よりも大きい値に設定される。
【0038】
D/A変換器214は、第2バスセレクタスイッチ212から入力されるデジタル信号(第1メモリ206及び第2メモリ208から読出したデータ)をアナログ信号に変換して出力する。D/A変換器214のD/A変換は、DDS226から出力されるクロックのタイミングで行なわれる。
【0039】
DDS226は、位相アキュームレータ、位相−振幅コンバータ、及びD/Aコンバータから構成される、周波数及び位相が可変である公知の信号発生器である。DDS226の発振周波数は、同期補正回路224及び制御回路228から入力される位相データによりコントロールされる。このとき、DDS226の発振周波数は、PLL発振回路222の出力クロックと同等、又は、それ以上の周波数に設定され、シンボル周期を1周期とする周波数のM倍の周波数である(周期はシンボル周期の1/M)。即ち、D/A変換器214によるD/A変換は、第2バスセレクタスイッチ212によるデータ読出しと同じ速度で実行される。
【0040】
このような高い周波数クロックでD/A変換器214が、第1メモリ206及び第2メモリ208のデータを繰返し読出すことで、D/A変換器214からの出力信号の周波数を、入力信号S5の帯域幅を保持したまま、入力信号S5のM/N倍にすることができる。例えば、入力信号S5の1シンボルの変調出力の周波数を2kHz、入力信号S5の搬送周波数fbを2kHz、PLL発振回路222の出力クロックを20kHz(シンボル周期内のサンプリング数が10であり、N=10)、DDS226の出力クロックを30kHz(M=30)とすると、D/A変換器214からの出力の周波数を3kHz(=1kHz×M/N)とすることができる。このようにすることで、波形データ間では位相ずれが発生しないので、帯域幅は逓倍前と同じに維持されたまま、搬送波周波数のみが逓倍される。
【0041】
同期補正回路224は、受信信号の基準クロックにPLL発振回路222及びDDS226の発振出力を同期させるためのものであり、例えば、DDS226の発振位相を少しだけ前後に移動させ、その位相の前後移動によって生じる信号のレベル変化を取り出して、その変位が0となるように位相を制御する。そのために、
図4に示すように、D/A変換器214の出力は、LPF216及びBPF218を介して同期補正回路224に入力される。このように同期を取ることで、1シンボルの符号を弁別し、且つ第1メモリ206及び第2メモリ208への信号の書込みと読出しとに位相ずれが生じて位相がずれた状態で逓倍されることを防止できる。
【0042】
なお、受信信号の基準クロックとは、送信機においてベースバンド信号で搬送波を変調する際に用いられるクロックと同じものであり、このクロックの立ち上がり、又は、立ち下がりに基づいて数ビットの変調を行なう。
【0043】
D/A変換器214から出力されるアナログ信号は、LPF216に入力され、高周波成分が減衰され、平滑化された信号がLPF216から出力される。LPF216の出力は、BPF218に入力され、所定の帯域に制限されてBPF218から出力される。BPF218の出力は第2周波数変換回路220に入力される。第2周波数変換回路220は、局部発振回路を備えており、BPF218の出力を逓倍前の周波数に変換し、信号S7として出力する。
【0044】
制御回路228は、上記したように、第1バスセレクタスイッチ210及び第2バスセレクタスイッチ212の切換え制御、第1メモリ206及び第2メモリ208のアドレスデータの生成、そのアドレスへのデータの書込み又は読出しの制御、第2周波数変換回路220の局部発振周波数の設定、DDS226の周波数設定等を行なう。
【0045】
第1メモリ206及び第2メモリ208からのデータの読出しと、読出したデータのD/A変換器214によるD/A変換は、DDS226のクロック周波数で行なっており、変換された信号波形は、入力信号の逓倍の周波数に変換される。このとき、同期補正回路224は、PLL発振回路222の周波数が基準クロックのN倍となり、DDS226の周波数が基準クロックのM倍(M>N)となるように同期を取ることで、位相ずれのない逓倍された1シンボル単位の波形を出力できる。このように位相を揃えて逓倍された変調波のスペクトルは、
図6の(a)に示す入力時のスペクトルから、
図6の(b)に示すように高周波側に移動する。このとき、入力信号に含まれるノイズ及び妨害波等の不要波は位相が揃っていない状態で逓倍されるため、広い周波数範囲に拡散される。
図4において、一点鎖線で囲まれたA/D変換器204、第1バスセレクタスイッチ210、第1メモリ206、第2メモリ208、第2バスセレクタスイッチ212、D/A変換器214、PLL発振回路222、及びDDS226は、拡散部を構成する。
【0046】
例えば、入力信号の周波数をfb=100kHz、占有帯域幅を12.5kHz、逓倍後の周波数をfc=1000kHzとすると、逓倍率Hは、H=fc/fb=1000/100=10倍となるので、占有帯域内のノイズも逓倍されて125kHzに広がることになる。ここで、逓倍されて一様に拡散されたノイズ及び妨害波の電力密度は低下するため、このような逓倍波をBPF218に通すと、その出力信号(信号S7)に含まれる不要波のレベルを低下させることができる。したがって、この信号を第2周波数変換回路220により、逓倍前の周波数へ変換することにより、ノイズ及び妨害波の排除を行なうことができる。
【0047】
以上により、BPF136から出力され不要波除去部200に入力される信号S5においては、
図7の(a)に示すように、検出信号であるCH2の信号に対して、CH1、CH3及びCH4の信号が不要波として含まれているが、不要波除去部200のLPF216を通過した後には、
図7の(b)に示すように、不要波(CH1、CH3及びCH4の信号)は広い周波数範囲に拡散され、信号強度は小さくなる。したがって、BPF218により、CH2の周波数範囲外の信号を除去すれば、
図7の(c)に示すように、不要波の強度N
1は、
図7の(a)の不要波の強度N
0よりも小さくなる(N
1<N
0)のに対して、CH2の信号の強度Sは変化しないので、SN比を改善することができ、ビットエラーレートを改善することができる。
【0048】
図4では、BPF218を第2周波数変換回路220の前段に配置しているが、これに限定されない。BPF218は、拡散した不要波を除去できればよいので、第2周波数変換回路220の後段に配置してもよい。その場合、BPF218から出力される信号が復調器138に入力されるようにすればよい。
【0049】
(第1変形例)
図3の不要波除去部200は、
図4に示す構成に限定されない。特許文献1の第2実施形態又は第3実施形態と同様に、
図4において、第1メモリ206及び第2メモリ208からの読出しをランダムに行なう構成に変更した構成によっても、不要波を除去することができる。ここで、ランダムとは、1シンボルに対応するデータを1組として、その記憶アドレスを、重複することなくランダムに指定することを意味する。
【0050】
図8を参照して具体的に示す。上記と同様に、不要波除去部には、不要波と希望波とを含む信号が入力され、第1周波数変換回路202は、入力信号を、シンボルレートの整数倍の周波数を有する信号に変換する(シンボル周期をΔTとして、f=n/ΔT)。
図8の(a)は、1シンボルが4波長で表されるとした場合(即ち、シンボルレートの4倍の周波数に変換された場合)に、周波数変換後の信号に含まれる波形を示している。実際の信号は、
図8の(a)の希望波(実線)及び不要波(破線)のそれぞれの振幅を所定の値に変換した信号を重ね合わせたものである。そのアナログ信号をサンプリングして、メモリに記憶する。メモリからのデータ読出しは、1波長単位でランダムに重複することなく行なわれる。
【0051】
例えば、
図8の(a)に示したt2期間、t4期間、t1期間及びt3期間の順でデータが読出された場合を、
図8の(b)に示す。実際の読出されたデータは、
図8の(b)に示す実線(希望波)及び破線(不要波)のそれぞれの振幅を所定の値に変換した信号を重ね合わせた信号のデジタルデータである。
【0052】
図8の(c)及び(d)は、
図8の(b)からそれぞれ希望波及び不要波を取出したものである。これから明らかなように、メモリから読出されたデータに含まれる希望波は、
図8の(a)と変わっていないが、メモリから読出されたデータに含まれる不要波は、各波長のつなぎ目で位相がずれており、1シンボル内で変調された波形となっている。したがって、上記と同様に、希望波は維持され、不要波は広域に拡散されることになり、BPF218(
図4参照)を通過させることにより不要波を除去することができる。
【0053】
(第2変形例)
図3の不要波除去部200は、特許文献1の第4実施形態と同様に、サンプリングホールド回路を備えた
図9に示すようなものであってもよい。
図9を参照して、不要波除去部240は、第1周波数変換回路242、サンプルホールド部244、第1サンプルホールド群246、第2サンプルホールド群248、第1多チャンネルアナログスイッチ(第1多CHアナログSW)250、第2多チャンネルアナログスイッチ(第2多CHアナログSW)252、制御回路254、LPF256、BPF258、第2周波数変換回路260及び同期補正回路264を備えている。
【0054】
第1周波数変換回路242、LPF256、BPF258、第2周波数変換回路260及び同期補正回路264はそれぞれ、
図4の第1周波数変換回路202、LPF216、BPF218、第2周波数変換回路220及び同期補正回路224に対応し、同様の機能を実行する。第2周波数変換回路260の局部発振周波数の設定は、制御回路254により行なわれる。制御回路254は、
図4のPLL発振回路222及びDDS226に対応する機能を備え、後述するように、各部の制御を行なう。
【0055】
サンプルホールド部244は、複数のサンプリングホールド回路(以下、S/H回路ともいう)を並列に備えている。各S/H回路は、入力信号を、外部から制御を受けたタイミングでサンプリングして保持する。複数のS/H回路を、順次作動させることにより、S/H回路の数だけ入力信号をサンプリングして保持することができる。複数のS/H回路は、同数のS/H回路を含む第1サンプルホールド群246及び第2サンプルホールド群248に区分されている。
【0056】
第1多チャンネルアナログスイッチ250は、外部からの制御を受けて、入力される信号を複数のS/H回路のいずれかに出力するスイッチである。第1多チャンネルアナログスイッチ250及びサンプルホールド部244の各S/H回路は、制御回路254により制御されて、第1周波数変換回路242の出力信号を、サンプルホールド部244のS/H回路に順次入力し記憶させる。第1多チャンネルアナログスイッチ250を切換えるタイミング、及びサンプルホールド部244の各S/H回路にデータを記憶させるタイミングは、制御回路254が有するPLL発振回路の機能により生成される発振信号により決定される。第1サンプルホールド群246及び第2サンプルホールド群248を構成するS/H回路への記憶は、シンボル単位に交互に行なわれる。即ち、第1サンプルホールド群246を構成する複数のS/H回路での記憶が終われば、第2サンプルホールド群248を構成する複数のS/H回路への記憶を開始し、第2サンプルホールド群248を構成する複数のS/H回路での記憶が完了すれば、第1サンプルホールド群246を構成する複数のS/H回路への記憶を開始する。
【0057】
第2多チャンネルアナログスイッチ252は、外部からの制御を受けて、複数の入力信号のいずれかを出力するスイッチである。第2多チャンネルアナログスイッチ252及びサンプルホールド部244の各S/H回路は、制御回路254により制御されて、サンプルホールド部244の各S/H回路に記憶されているデータを順次読出し、LPF256に入力する。第2多チャンネルアナログスイッチ252を切換えるタイミング、及びサンプルホールド部244の各S/H回路からデータを読出すタイミングは、制御回路254が有するDDSの機能により生成される発振信号により決定される。第1サンプルホールド群246及び第2サンプルホールド群248を構成するS/H回路からの読出しは、交互に行なわれる。即ち、記憶動作が実行されていない群に対して読出しが実行される。このとき、第1サンプルホールド群246及び第2サンプルホールド群248のそれぞれからの読出し速度は、一次変調後の信号S5(第1周波数変換回路242への入力信号)におけるシンボル周期を1周期とする周波数のM倍(Mは2以上の整数)で行なわれ、各群からのデータ読出しを、先頭データからサイクリックに繰返す。なお、
図4の同期補正回路224、PLL発振回路222及びDDS226に関して上記したのと同様に、制御回路254は、同期補正回路264から入力される信号を用いて、PLL発振回路の機能により生成する発振信号の位相と、DDSの機能により生成する発振信号の位相とを同期させる。
【0058】
これにより、
図4を参照して上記したのと同様に、希望波を維持し、不要波を拡散させることができる。
図9において、二点鎖線で囲まれた第1多チャンネルアナログスイッチ250、サンプルホールド部244及び第2多チャンネルアナログスイッチ252は、制御回路254による制御を受けて、拡散部として機能する。したがって、第2多チャンネルアナログスイッチ252からの出力が、LPF256、BPF258及び第2周波数変換回路260を通過した後の信号S7において、希望波を維持したまま、不要波を低減することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
上記では、多重化方式としてCDMAを採用した無線通信システムに関して説明したが、これに限定されない。
図10に示したような、多重化方式としてFDMAを採用した無線通信システムであってもよい。
【0060】
図10を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信システムは、第1送信機300、第2送信機312、第3送信機314、第4送信機316及び受信機330を備えている。
図10には4台の送信機及び1台の受信機を示しているが、実際にはより多くの送信機及び受信機を備えていてもよい。また、送信機と受信機との通信は、公知の無線通信の基地局(図示せず)を介して、又は、基地局を介さず直接に行なわれる。
【0061】
第1送信機300は、高周波生成部302、変調器304及びアンテナ306を備えている。第2送信機312〜第4送信機316は、第1送信機300と同様に構成されている。高周波生成部302は、搬送波として使用される高周波を生成する。変調器304は、高周波生成部302から入力される高周波を、入力されるデータ(デジタルデータ)を用いて変調する。変調には、ASK、FSK、PSK、又はQAM等の公知の変調方式が使用される。変調後の信号は、アンテナ306から送信される。同様に、第2送信機312〜第4送信機316からも、変調後の信号が送信される。各送信機に割当てられる送信周波数CH1〜CH4は相互に異なるものが使用される。即ち、後述するように、送信の周波数帯域は相互に重なっていてもよいが、周波数帯域の中心周波数は相互に異なる。
【0062】
受信機330は、アンテナ332、周波数変換器334、BPF336、復調器338、及び不要波除去部200を備えている。アンテナ332は無線信号を受信する。受信信号S10は、CH1〜CH4の信号が重畳された信号である。
図11の(a)に、受信信号S10が、CH1〜CH4の信号が重畳された信号であることを模式的に示す。便宜上、CH1〜CH4を同じ信号強度で示しているが、実際にはそれぞれの信号強度は異なる。周波数変換器334は、入力される高周波信号を中間周波数の信号に変換する。BPF336はバンドパスフィルタであり、入力される信号のうち所定の周波数範囲(所定帯域)の信号を通過させ、それ以外の信号を減衰させて、信号S11として出力する(例えば、
図11の(b)参照)。
【0063】
不要波除去部200は、入力される信号S11から不要波を除去して、信号S7を出力する。不要波除去部200は、
図4に示したものと同じものである。復調器338は、不要波除去部200から出力される信号S7に対して、変調器304で採用されている変調方式に応じた方式で復調処理を実行する。これにより、復調器338から所定のデータ(送信機からのデータ)が出力される。
【0064】
受信機330の検出対象がCH2の信号であるとすると、不要波除去部200内のLPF216の出力信号S6(
図4参照)は、例えば
図11の(c)に示すように、不要波(CH1、CH3及びCH4の信号)は広い周波数に拡散され、信号強度は小さくなる。したがって、不要波除去部200内のBPF218(
図4参照)により、CH2の周波数範囲外の信号を除去すれば、
図11の(d)に示すように、不要波の強度は、
図11の(a)の不要波の強度よりも小さくなるのに対して、CH2の信号強度は変化しないので、SN比を改善することができ、ビットエラーレートを改善することができる。
【0065】
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、不要波除去部200として、上記の第1変形例又は第2変形例のものを使用することができる。
【0066】
上記では、無線通信における各チャンネル信号の多重化方式として、CDMA又はFDMAを採用する場合を説明したが、これに限定されない。これら以外の多重化方式を採用した無線通信システムであってもよい。さらには、無線通信に限らず、有線による通信であってもよい。
【0067】
例えば、多重化方式として、複数のサブキャリア(サブチャンネル)を用いるマルチキャリア変調方式を採用した通信システムにも、上記した不要波除去部を適用することができる。マルチキャリア変調方式には、例えば、
図12を参照して上記したOFDMがある。OFDMでは、サブキャリアが相互に直交していることが要求される。同じ帯域で、データレートを上げるためにサブキャリアの数を増大しようとすると、即ち、
図12に示したサブキャリアSC1〜SC5の間隔をさらに狭くしようとすると、サブキャリア間の直交性が崩れ、各サブキャリアの中心周波数の位置で、その他のサブキャリアの信号強度がゼロにならず、各サブキャリアを精度よく分離できなくなる。そのような場合(サブキャリアが非直交)であっても、上記した不要波除去部を用いることにより、各サブキャリアに含まれる、その他のサブキャリアの信号を不要波として除去又は低減することができる。即ち、不要波除去部により、非直交のサブキャリアを用いる非直交マルチキャリア方式を採用した通信システムにおけるエラーレートを改善することができ、サブキャリア数(サブチャンネル数)を増大することができる。
【0068】
また、不要波除去部の構成は、上記した構成(
図4、
図9等)に限定されない。第1周波数変換回路、LPF、BPF、ローパスフィルタ、及び第2周波数変換回路に加えて、1シンボルに対応する期間において、所定時間間隔のタイミングにおける第1周波数変換回路からの出力信号の信号値を保持した後、Mを正の整数として、保持した信号値を、保持された順序で、シンボル周期の1/Mであり且つ所定時間間隔よりも短い時間間隔で繰返し読出してLPFに出力する機能を有するものであればよい。
【0069】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。