特許第6869605号(P6869605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869605事象分類装置、事象分類プログラム、故障・不良判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869605
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】事象分類装置、事象分類プログラム、故障・不良判定装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/20 20190101AFI20210426BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20210426BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20210426BHJP
【FI】
   G06F16/20
   G06F16/28
   G06F16/906
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-12533(P2017-12533)
(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公開番号】特開2018-120488(P2018-120488A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】村松 久
【審査官】 三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0216436(US,A1)
【文献】 特開平10−314135(JP,A)
【文献】 特表2012−524948(JP,A)
【文献】 特開2016−173782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00−16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障・不良の事象が発生したか否かについての事象分類を行う対象装置に設けられ、測定対象データの種別が異なる複数のセンサを含むN(2以上の整数)個のセンサと、
前記N個のセンサに接続されるN個以下のM個のカオス尺度算出手段であって、接続されたセンサから得られるデータを1つのセンサ毎に時系列に所定時間単位毎に区分し、1区分のデータにおける同時確率分布に基づき1つのカオス尺度情報を算出して合計でM個のカオス尺度情報を算出するカオス尺度算出手段と、
前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報について、パターンマイニング分類を行い、前記データに基づく分類結果を得る1つのパターンマイニング分類手段と、
を具備することを特徴とする事象分類装置。
【請求項2】
前記カオス尺度算出手段は前記センサの数と同数のN個設けられ、前記各カオス尺度算出手段は、対応する1つのセンサから得られる時系列データから1系列のカオス尺度情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の事象分類装置。
【請求項3】
前記カオス尺度算出手段は、N(2以上の整数)個のセンサ毎に対応して1つ設けられ、N個のセンサ毎に得られるMの時系列データから1つのカオス尺度情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の事象分類装置。
【請求項4】
前記カオス尺度算出手段は1つ設けられ、前記N個のセンサから得られるNの時系列のデータから1個のカオス尺度情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の事象分類装置。
【請求項5】
前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報に基づきパターンマイニング学習を行い、前記パターンマイニング分類手段が用いるパターンマイニング分類モデルを生成するパターンマイニング分類モデル生成手段と、
を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の事象分類装置。
【請求項6】
前記パターンマイニング分類では、ランダムフォレストによる分類を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の事象分類装置。
【請求項7】
コンピュータを、
故障・不良の事象が発生したか否かについての事象分類を行う対象装置に設けられ、測定対象データの種別が異なる複数のセンサを含むN(2以上の整数)個のセンサから前記データを受けるN個以下のM個のカオス尺度算出手段であって、前記センサからのデータを1つのセンサ毎に時系列に所定時間単位毎に区分し、1区分のデータにおける同時確率分布に基づき1つのカオス尺度情報を算出して合計でM個のカオス尺度情報を算出するカオス尺度算出手段、
前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報について、パターンマイニング分類を行い、前記データに基づく分類結果を得る1つのパターンマイニング分類手段、
として機能させることを特徴とする事象分類プログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを前記センサの数と同数のN個設けられた前記カオス尺度算出手段として機能させ、対応する1つのセンサから得られる時系列データから1系列のカオス尺度情報を算出するように機能させることを特徴とする請求項7に記載の事象分類プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、N(2以上の整数)個のセンサ毎に対応して1つ設けられ、N個のセンサ毎に得られるMの時系列データから1つのカオス尺度情報を算出する前記カオス尺度算出手段として、機能させることを特徴とする請求項7に記載の事象分類プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを1つの前記カオス尺度算出手段として、前記N個のセンサから得られるNの時系列のデータから1個のカオス尺度情報を算出するように機能させることを特徴とする請求項7に記載の事象分類プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、更に、
前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報に基づきパターンマイニング学習を行い、前記パターンマイニング分類手段が用いるパターンマイニング分類モデルを生成するパターンマイニング分類モデル生成手段、
として機能させることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の事象分類
プログラム。
【請求項12】
前記パターンマイニング分類では、ランダムフォレストによる分類を用いることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の事象分類プログラム。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサを、製造装置の所要位置に設けられたセンサとした、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の事象分類装置と、
前記センサから得られるデータに基づき、前記事象分類装置故障或いは不良を判定する判定手段として用いる
ことを特徴とする故障・不良判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事象分類装置、事象分類プログラム、上記事象分類装置を用いて構成した故障・不良判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品製造の現場などでは、製造装置に設けられたセンサから得られるデータの分布や特性が日々変動することが生じ、装置の故障や不良を判定するためのルールや閾値が変動する。このようなセンサからのデータは、センサの数が多く、また、データ量も増大する傾向にある。従って、上記のような変動を考慮に入れて判定を行おうとすると、時間やコストがかかるため、リアルタイムでの判定が難しい。
【0003】
そのため、センサから得られるデータを全て用いるのではなく、間引きしたデータについて判定を行う事が行われている。しかしながら、間引きしたデータを用いて判定を行うと当然のことながら精度の低下が生じ、場合によっては誤判定が発生することがある。
【0004】
従来の故障予測システムとしては、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のシステムは、故障予測装置と学習サーバとを設けて、上記故障予測装置は、対象装置に故障が生じた場合に、この故障が生じるまでの時系列のセンサデータを上記学習サーバに送信して、学習サーバによる、上記故障が生じるまでの時系列のセンサデータを教師データとした学習により対象装置の故障を予測する学習モデルの生成を行わせる。そして、この生成された学習モデルを上記故障予測装置に送信して、故障予測装置において学習モデルを動作させる。
【0005】
故障予測装置の学習モデルは、対象装置のセンサから得られるデータに基づき、故障の確率を予測して動作する。これにより、対象装置の故障を事前に検知してクラウドやネットワークの保守品質を向上させることができるというものである。
【0006】
また、広くデータ解析という観点からは、特許文献2に記載されたシステムを従来システムとして挙げることができる。このシステムは、コンピュータのプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。このプログラムの実行により、時系列パターンの各時系列データにおいて繰り返される回数と、時系列パターンの繰り返し回数が所定の回数以上となる時系列データの数である出現頻度を数える。
【0007】
上記により、所定の繰り返し回数で、且つ所定の時系列データの数以上で所定の繰り返し回数以上となる時系列パターンを抽出する。更に、時系列データ各々に所定の間隔でチェックポイントを設け、各チェックポイントにおいて各時系列データにおける時系列パターンの繰り返し回数の上限値を算出し、この上限値を用いて出現頻度を算出することによって、繰り返し回数を数え上げる時系列パターンと時系列データの範囲を限定する。
【0008】
更に、特許文献3には、カオス理論に基づく軌道平行測度法により監視対象の移行およびその予兆を検出する時系列データの異常監視装置が開示されている。軌道平行測度法は、時系列データを高次元空間へ埋め込むことにより構築される軌跡が、決定論的に規則性を持つのか確率論的なものであるのかを求めるものである。具体的には、軌道平行測度を評価値として算出することにより行う。評価値が0に近ければ決定論的に規則性を持つものとし、0.5に近いほど確率論的性質が大きいとする。
【0009】
また、非特許文献1には、時系列データを高精度に分類する新たなDeep Learning技術が開示されている。この非特許文献1の技術は、(1)センサにより得られる時系列データをカオス理論に基づき図形化し、(2)上記図形を位相幾何学に基づいた数値化により独自のベクトル表現とし、(3)上記で得られたベクトル表現を畳み込みニューラルネットワークによって学習するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016−173782号公報
【特許文献2】特開2011−123652号公報
【特許文献3】特開2016−57649号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】株式会社富士通研究所、“時系列データを高度に分析する新たなDeep Learning技術を開発”、[online]、2016年2月16日、PRESS RELEASE、平成29年1月23日、インターネット<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/02/16.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のものは複数のセンサからのセンサデータをまとめて学習データとし学習モデルを生成し、動作させるため、多大な時間を要し、高速な分類を行うことはできないものである。
【0013】
また、特許文献2ものは、時系列パターンと時系列データの範囲を限定することにより効率化を図っているが、この手法が全ての事象分類に適用できるものではないという限界がある。
【0014】
特許文献3のものや非特許文献1に記載のものは、演算処理が複雑であり、高速な分類を行うものには向かないという問題がある。
【0015】
本発明は上記のような事象分類処理における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のセンサからのセンサデータに基づく分類を高速に精度良く行うことができる事象分類装置を提供することである。また、上記のような事象分類装置を実現する事象分類プログラム、上記事象分類装置を用いて構成した故障・不良判定装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る事象分類装置は、故障・不良の事象が発生したか否かについての事象分類を行う対象装置に設けられ、測定対象データの種別が異なる複数のセンサを含むN(2以上の整数)個のセンサと、前記N個のセンサに接続されるN個以下のM個のカオス尺度算出手段であって、接続されたセンサから得られるデータを1つのセンサ毎に時系列に所定時間単位毎に区分し、1区分のデータにおける同時確率分布に基づき1つのカオス尺度情報を算出して合計でM個のカオス尺度情報を算出するカオス尺度算出手段と、前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報について、パターンマイニング分類を行い、前記データに基づく分類結果を得る1つのパターンマイニング分類手段と、を具備することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る事象分類装置では、前記カオス尺度算出手段は前記センサの数と同数のN個設けられ、前記各カオス尺度算出手段は、対応する1つのセンサから得られる時系列データから1系列のカオス尺度情報を算出することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る事象分類装置では、前記カオス尺度算出手段は、N(2以上の整数)個のセンサ毎に対応して1つ設けられ、N個のセンサ毎に得られるMの時系列データから1つのカオス尺度情報を算出することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る事象分類装置では、前記カオス尺度算出手段は1つ設けられ、前記N個のセンサから得られるNの時系列のデータから1個のカオス尺度情報を算出することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る事象分類装置では、前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報に基づきパターンマイニング学習を行い、前記パターンマイニング分類手段が用いるパターンマイニング分類モデルを生成するパターンマイニング分類モデル生成手段と、を具備することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る事象分類装置では、前記パターンマイニング分類では、ランダムフォレストによる分類を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る事象分類プログラムは、コンピュータを、故障・不良の事象が発生したか否かについての事象分類を行う対象装置に設けられ、測定対象データの種別が異なる複数のセンサを含むN(2以上の整数)個のセンサから前記データを受けるN個以下のM個のカオス尺度算出手段であって、前記センサからのデータを1つのセンサ毎に時系列に所定時間単位毎に区分し、1区分のデータにおける同時確率分布に基づき1つのカオス尺度情報を算出して合計でM個のカオス尺度情報を算出するカオス尺度算出手段、前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報について、パターンマイニング分類を行い、前記データに基づく分類結果を得る1つのパターンマイニング分類手段、として機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る事象分類プログラムでは、前記コンピュータを前記センサの数と同数のN個設けられた前記カオス尺度算出手段として機能させ、対応する1つのセンサから得られる時系列データから1系列のカオス尺度情報を算出するように機能させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る事象分類プログラムでは、前記コンピュータをN(2以上の整数)個のセンサ毎に対応して1つ設けられ、N個のセンサ毎に得られるMの時系列データから1つのカオス尺度情報を算出する前記カオス尺度算出手段として、機能させることを特徴とすることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る事象分類プログラムでは、前記コンピュータを1つの前記カオス尺度算出手段として、前記N個のセンサから得られるNの時系列のデータから1個のカオス尺度情報を算出するように機能させることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る事象分類プログラムでは、前記コンピュータを、更に、前記カオス尺度算出手段が算出したM個のカオス尺度情報に基づきパターンマイニング学習を行い、前記パターンマイニング分類手段が用いるパターンマイニング分類モデルを生成するパターンマイニング分類モデル生成手段、として機能させることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る事象分類プログラムでは、前記パターンマイニング分類では、ランダムフォレストによる分類を用いることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る故障・不良判定装置は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサを、製造装置の所要位置に設けられたセンサとした、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の事象分類装置と、前記センサから得られるデータに基づき、前記事象分類装置故障或いは不良を判定する判定手段として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数のセンサから得られるデータから分類結果を得る前に、複数のセンサから得られるデータを時系列に所定時間単位毎に区分し、区分したデータからカオス尺度情報を算出することによりデータを圧縮するので、複数のセンサからのセンサデータに基づく分類を高速に精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る事象分類装置の第1の実施形態を示す構成図。
図2】本発明に係る事象分類装置の要部であるパターンマイニング分類モデル生成手段の実施形態を示す構成図。
図3】本発明に係る事象分類装置の動作を説明するためのフローチャート。
図4】本発明に係る事象分類装置の動作を説明するためのフローチャート。
図5】本発明に係る事象分類装置の第2の実施形態を示す構成図。
図6】本発明に係る事象分類装置の第3の実施形態を示す構成図。
図7】本発明に係る事象分類装置の第4の実施形態を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下添付図面を参照して本発明に係る事象分類装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に、本発明に係る事象分類装置の第1の実施形態のブロック図を示す。この実施形態では、製造装置などの対象装置100の所要箇所にセンサ11−1〜11−Nが設けられている(N:2以上の整数)。センサ11−1〜11−Nは、製造工程等の温度や湿度、装置の速度、装置の部位に流れる電流や検出ポイントの電圧等を検出する構成を備える。
【0032】
センサ11−1〜11−Nには、カオス尺度算出手段20−1〜20−Nが接続される。カオス尺度算出手段20−1〜20−Nは、対応するセンサ11−1〜11−Nから得られるデータを時系列に所定時間単位毎に区分し、区分したデータからカオス尺度情報を算出するものである。
【0033】
カオス尺度算出手段20−1〜20−Nの構成は、同一である。そこで、代表としてカオス尺度算出手段20−1の詳細構成を説明し、他のカオス尺度算出手段20−2〜20−Nにおける各系統の詳細構成を省略する。センサ11ー1から連続してデータ(センサログ)が到来し、(式1)に示すように、データ長がn+1の時系列データが与えられたものとする。
【0034】
【数1】
【0035】
すると、上記のxが含まれる区間Iをm個の区間に分割する。ここで、分割区間をX(i=1,2,・・・,m)とすると、上記区間Iは、次の(式2)により表すことができる。
【0036】
【数2】
【0037】
次に、x∈Xとなる確率分布p(i)と、x∈X,xt+1∈Xとなる確率分布p(i,j)を算出する。この結果は、次の(式3)となる。
【0038】
【数3】
【0039】
次に、カオス尺度情報HCDは、上記のp(i)とp(i,j)を用いて以下の(式4)によって求められる。
【数4】
【0040】
なお、カオス尺度情報HCDの最大値は、logmである。
【0041】
カオス尺度算出手段20−1〜20−Nの後段には、パターンマイニング分類手段40が配置されている。カオス尺度算出手段20−1〜20−Nにより上記のようにして得られたカオス尺度情報をHCD−1〜HCD−Nとする。パターンマイニング分類手段40は、カオス尺度算出手段20−1〜20−Nにより得られたHCD−1〜HCD−Nについて、パターンマイニング分類を行い、上記カオス尺度算出手段20−1〜20−Nの分類結果に基づく分類結果を得るものである。このパターンマイニング分類では、例えば、ランダムフォレストによる分類を用いることができる。
【0042】
図2には、パターンマイニング分類手段40の詳細構成図が示されている。パターンマイニング分類手段40は、データセット生成部41Aとパターンマイニング分類モデル生成手段41とパターンマイニング判定部42により構成される。パターンマイニング分類モデル生成手段41の前段には、上記カオス尺度算出手段20−1〜20−Nの演算結果から学習用のデータセットを生成するデータセット生成部41Aを設けるように構成する。ここではカオス尺度情報算出において算出されたカオス尺度情報HCD−1〜HCD−Nをaとbに分類するため、aに分類すべきカオス尺度情報とb分類すべきカオス尺度情報のデータセットを生成する。
【0043】
データセット生成部41Aに示されるカオス尺度情報(データ)は、縦方向がセンサに対応している。ここでは、センサの数Nが4個である例を示している。データセット生成部41Aに示されるカオス尺度情報(データ)は、横方向が時間に対応している。前述の例では、データ長がn+1について1つのカオス尺度情報が算出される。このため、ここでは時間経過により5個のカオス尺度情報が算出されたことを示している。
【0044】
データセット生成部41Aにより生成されたデータセットは、パターンマイニング分類モデル生成手段41へ与えられる。パターンマイニング分類モデル生成手段41は、データセットを用いてパターンマイニング学習を行い、パターンマイニング分類モデルを生成する。このパターンマイニング分類モデルは、カオス尺度算出手段20−1〜20−Nから与えられるデータに対してパターンマイニング分類手段40が分類に用いる分類モデルである。
【0045】
パターンマイニング判定部42は、カオス尺度算出手段20−1〜20−Nの後段に配置され、上記カオス尺度算出手段20−1〜20−Nが算出した上記複数のセンサ11−1〜11−n毎のデータについて得られたカオス尺度情報HCD−1〜HCD−Nに対して、パターンマイニング分類を行う。つまり、パターンマイニング判定部42は、パターンマイニング分類モデル生成手段41により生成されたパターンマイニング分類モデルを用いてパターンマイニング分類を行い、結果を得る。このパターンマイニング分類による結果は、図示しない表示装置やプリント装置へ送って出力させることができる。
【0046】
以上の事象分類装置は、センサ11−1〜11−Nを入力ポートに取り込み、ディジタル化してコンピュータ処理を行うサーバコンピュータなどにより構成することができ、各手段は、サーバコンピュータが事象分類プログラムを実行することによって実現することができる。
【0047】
図3図4は、上記事象分類プログラムに対応するフローチャートを示す。このフローチャートにより事象分類装置の動作を説明する。図3は、パターンマイニング分類モデルを生成する処理を示すものである。処理がスタートとなると、センサ11−1〜11−Nからのデータを取り込み、各センサ毎のデータを時系列に所定時間単位毎に区分し、区分したデータからそれぞれカオス尺度情報を算出する(S11)。
【0048】
次に、教師用のカオス尺度情報を事象でラベル付けする(S12)。ここの事象とは、センサ11−1〜11−Nのセンシング対象としての、製造工程等の温度や湿度、装置の速度、装置の部位に流れる電流や検出ポイントの電圧等とすることができる。
【0049】
次に、上記のラベル毎に、カオス尺度情報からデータセットを生成し、生成されたデータセットを用いてパターンマイニング学習を行う(S13)。そして、上記パターンマイニング学習を行って、その結果パターンマイニング分類モデルを生成する(S14)。
【0050】
図4は、分類すべきカオス尺度情報の算出処理と上記図3のフローチャートのプログラムによって生成されたパターンマイニング分類モデルを用いた実際の分類処理を示すものである。処理がスタートとなると、センサ11−1〜11−Nからのデータを取り込み、各センサ毎のデータを時系列に所定時間単位毎に区分し、区分したデータからそれぞれカオス尺度情報を算出する(S21)。
【0051】
次に、N系列のカオス尺度情報を一体として、パターンマイニング分類モデルを用いて分類を行うことにより、分類を行う(S22)。このステップS22においては、図2に示したようにN系列のカオス尺度情報を一つとして扱い、所定時間単位毎にaとbのいずれかに分類する処理が行われる。
【0052】
以上のように、本実施形態では各系列毎にカオス尺度情報の算出を行い、この各系列毎のカオス尺度情報を1つに纏めてパターンマイニング分類モデルを用いて分類を行うので、カオス尺度情報を算出によって、各系列毎のデータを圧縮でき分類までの処理速度を速めることができる。
【0053】
次に、本発明に係る事象分類装置の第2の実施形態を説明する。図5に、本発明に係る事象分類装置の第2の実施形態のブロック図を示す。この実施形態でも、製造装置などの対象装置100の所要箇所にセンサ11−1〜11−Nが設けられている。センサ11−1と11−2の出力を2変量のカオス尺度算出手段30−1に与え、センサ11−3と11−4の出力を2変量のカオス尺度算出手段30−2に与え、・・・、センサ11−(N−1)と11−Nの出力を2変量のカオス尺度算出手段30−sに与える。
【0054】
カオス尺度算出手段30−1〜30−sの構成は、同一である。そこで、代表としてカオス尺度算出手段30−1の詳細構成を説明し、他のカオス尺度算出手段30−2〜30−sにおける各系統の詳細構成を省略する。センサ11ー1、11−2から連続してデータ(センサログ)が到来し、(式5)に示すように、データ長がn+1の時系列データが与えられたものとする。
【0055】
【数5】
【0056】
上記において、xtとytはtの値が同一の場合には同一時刻のデータである。そこで、上記のxが含まれる区間Ixをm(x)個の区間に分割し、yが含まれる区間Iをm(y)個の区間に分割する。ここで、分割区間を、X(i=1,2,・・・,m(x))とY(i=1,2,・・・,m(y))とすると、上記区間Iは、次の(式6)により表すことができる。
【0057】
【数6】
【0058】
次に、時刻tにおいてx∈X,y∈Yjとなる同時確率分布p(i,j)と、時刻tと時刻t+1についてx∈X,y∈Yj,xt+1∈Xu,yt+1∈Yvとなる同時確率分布p(i,j,u,v)を算出する。この結果は、次の(式7)となる。
【0059】
【数7】
【0060】
次に、カオス尺度情報HCDは、上記のp(i,j)とp(i,j,u,v)を用いて以下の(式8)によって求められる。
【数8】
【0061】
なお、上記計算によるカオス尺度情報HCDの最大値は、{logm(x)×m(y)}である。
【0062】
カオス尺度算出手段30−1〜30−sの後段には、パターンマイニング分類手段40Bが配置されている。カオス尺度算出手段30−1〜30−sにより上記のようにして得られたカオス尺度情報をHCD−1〜HCD−sとする。パターンマイニング分類手段40Bは、カオス尺度算出手段30−1〜30−sにより得られたHCD−1〜HCD−sについて、パターンマイニング分類を行い、上記カオス尺度算出手段30−1〜30−sの分類結果に基づく分類結果を得るものである。このパターンマイニング分類では、例えば、ランダムフォレストによる分類を用いることができる。この第2の実施形態におけるパターンマイニング分類手段40Bは、入力がs系列である点を除き第1の実施形態のパターンマイニング分類手段40と同様に処理を行うので、その詳細な説明を省略する。
【0063】
以上説明した第2の実施形態に係る事象分類装置は、センサ11−1〜11−Nを入力ポートに取り込み、ディジタル化してコンピュータ処理を行うサーバコンピュータなどにより構成することができ、各種段は、サーバコンピュータが事象分類プログラムを実行することによって実現することができる。この第2の実施形態に係る事象分類プログラムに対応するフローチャートは、第1の実施形態のものと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0064】
次に、本発明に係る事象分類装置の第3の実施形態を説明する。図6に、本発明に係る事象分類装置の第3の実施形態のブロック図を示す。この実施形態でも、製造装置などの対象装置100の所要箇所にセンサ11−1〜11−Nが設けられている。センサ11−1と11−2と11−3の出力を3変量のカオス尺度算出手段50−1に与え、センサ11−4と11−5と11−6の出力を3変量のカオス尺度算出手段50−2に与え、・・・、センサ11−(N−2)と11−(N−1)と11−Nの出力を3変量のカオス尺度算出手段50−rに与える。
【0065】
カオス尺度算出手段50−1〜50−rの構成は、同一である。そこで、代表としてカオス尺度算出手段50−1の詳細構成を説明し、他のカオス尺度算出手段50−2〜50−rにおける各系統の詳細構成を省略する。センサ11ー1、11−2、11−3から連続してデータ(センサログ)が到来し、(式9)に示すように、データ長がn+1の時系列データが与えられたものとする。
【0066】
【数9】
【0067】
上記において、xtとytとztはtの値が同一の場合には同一時刻のデータである。そこで、上記のxが含まれる区間Ixをm(x)個の区間に分割し、yが含まれる区間Iをm(y)個の区間に分割し、zが含まれる区間Iをm(z)個の区間に分割する。ここで、各分割区間を、X(i=1,2,・・・,m(x))とY(i=1,2,・・・,m(y))とZ(i=1,2,・・・,m(z))とすると、上記区間Ix,I,Iは、次の(式10)により表すことができる。
【0068】
【数10】
【0069】
次に、時刻tにおいてx∈X,y∈Yj,z∈Zとなる同時確率分布p(i,j,k)と、時刻tと時刻t+1についてx∈X,y∈Yj,z∈Z,xt+1∈Xu,yt+1∈Yv,zt+1∈Zとなる同時確率分布p(i,j,k,u,v,w)を算出する。この結果は、次の(式11)となる。
【数11】
【0070】
次に、カオス尺度情報HCDは、上記のp(i,j)とp(i,j,u,v)を用いて以下の(式12)によって求められる。
【数12】
【0071】
なお、上記計算によるカオス尺度情報HCDの最大値は、{logm(x)×m(y)}である。
【0072】
カオス尺度算出手段50−1〜50−rの後段には、パターンマイニング分類手段40Cが配置されている。カオス尺度算出手段50−1〜50−rにより上記のようにして得られたカオス尺度情報をHCD−1〜HCD−rとする。パターンマイニング分類手段40Cは、カオス尺度算出手段50−1〜50−rにより得られたHCD−1〜HCD−rについて、パターンマイニング分類を行い、上記カオス尺度算出手段50−1〜50−rの分類結果に基づく分類結果を得るものである。このパターンマイニング分類では、例えば、ランダムフォレストによる分類を用いることができる。この第3の実施形態におけるパターンマイニング分類手段40Cは、入力がr系列である点を除き第1の実施形態のパターンマイニング分類手段40と同様に処理を行うので、その詳細な説明を省略する。
【0073】
以上説明した第3の実施形態に係る事象分類装置は、センサ11−1〜11−Nを入力ポートに取り込み、ディジタル化してコンピュータ処理を行うサーバコンピュータなどにより構成することができ、各手段は、サーバコンピュータが事象分類プログラムを実行することによって実現することができる。この第3の実施形態に係る事象分類プログラムに対応するフローチャートは、第1の実施形態のものと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0074】
次に、本発明に係る事象分類装置の第4の実施形態を説明する。図7に、本発明に係る事象分類装置の第4の実施形態のブロック図を示す。この実施形態でも、製造装置などの対象装置100の所要箇所にセンサ11−1〜11−Nが設けられている。センサ11−1〜11−Nの出力をN(N≧4)変量のカオス尺度算出手段60に与える。なお、本実施形態は、第1の実施形態から第3の実施形態から続いての説明であり、4変量以上の場合のものであるため、上記Nを4以上としたが、この実施形態の説明は、Nが1以上の場合について成立するものである。従って、1〜3変量の場合において、本実施形態による構成を採用して処理を行っても良いことは勿論である。
【0075】
カオス尺度算出手段60には、センサ11−1〜11−Nから連続してデータ(センサログ)が到来し、(式13)に示すように、センサ11−1〜11−N毎にデータ長がn+1の時系列データが与えられたものとする。
【0076】
【数13】
【0077】
次にi(i=1,2,・・・,N)番目の時系列データが含まれる区間Iiをm(i)個の区間に分割と、上記区間Iiは、次の(式14)により表すことができる。
【0078】
【数14】
【0079】
ここで、ある時刻t(t=1,2,・・・,n+1)においてi番目の系列値xi,jが含まれる区間番号をL(i)と表すと、系列値xi,jと(式14)の区間は次の(式15)の関係となる。
【0080】
【数15】
【0081】
ここで、上記L(i)は次の(式16)の関係を有する。
【0082】
【数16】
【0083】
上記L(i)について、(式16)の関係を有することを考慮し、全系列に対し次の(式17)の変換を考える。
【0084】
【数17】
【0085】
上記(式17)から、uについては次の(式18)の関係にあることが分かる。
【0086】
【数18】
【0087】
上記uは、ある時刻tにおける値であるから、これを全時刻t=1,2,・・・,n+1について考え、{u1,u2,・・・,un+1}系列を生成する。このような操作によって、N変量データが1変量の(式19)に示す整数値系列に置き換えられたことになる。
【0088】
【数19】
【0089】
これ以降は1変量の場合と同様に処理を行えばよい。即ち、u=i(1≦i≦M)となる確率分布p(i)と、u=iかつut+1=j(1≦i,j≦M)となる確率分布p(i,j)を次の(式20)により算出する。
【数20】
【0090】
次に、カオス尺度情報HCDは、上記のp(i)とp(i,j)を用いて以下の(式21)によって求められる。
【数21】
【0091】
なお、上記計算によるカオス尺度情報HCDの最大値は、次の(式22)である。
【数22】
【0092】
カオス尺度算出手段60の後段には、パターンマイニング分類手段40Dが配置されている。カオス尺度算出手段60により上記のようにして得られたカオス尺度情報をHCDとする。パターンマイニング分類手段40Dは、カオス尺度算出手段60により得られたHCDについて、パターンマイニング分類を行い、上記カオス尺度算出手段60の分類結果に基づく分類結果を得るものである。このパターンマイニング分類では、例えば、ランダムフォレストによる分類を用いることができる。この第4の実施形態におけるパターンマイニング分類手段40Dは、入力が1系列である点を除き第1の実施形態のパターンマイニング分類手段40と同様に処理を行うので、その詳細な説明を省略する。
【0093】
以上説明した第4の実施形態に係る事象分類装置は、センサ11−1〜11−Nを入力ポートに取り込み、ディジタル化してコンピュータ処理を行うサーバコンピュータなどにより構成することができ、各手段は、サーバコンピュータが事象分類プログラムを実行することによって実現することができる。この第4の実施形態に係る事象分類プログラムに対応するフローチャートは、第1の実施形態のものと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0094】
上記では事象分類装置の実施形態を示したが、これを故障・不良判定装置とすることができる。この場合には、上記センサ11−1〜11−Nを、製造装置の所要位置に設けられたセンサとし、他の構成を上記実施形態の事象分類装置と同一の構成とし、上記センサ11−1〜11−Nから得られるデータに基づき、上記事象分類装置を上記製造装置の故障或いは不良を判定する判定手段として用いる。これにより、多量のデータを用いた解析により誤差が少ない上記製造装置(或いは、この製造装置により製造された製品)の故障・不良判定を行う故障・不良判定装置を提供することができる。
【0095】
なお、各実施形態では、全て同じ変量のカオス尺度算出手段を用いたが、例えば、センサの数が6である場合(6変量である場合)、第1の実施形態(1変量)のカオス尺度算出手段を1つ、第2の実施形態(2変量)のカオス尺度算出手段を1つ、第3の実施形態(3変量)のカオス尺度算出手段を1つ、というように、異なる変量のカオス尺度算出手段を混合して用いても良い。また、異なる変量のカオス尺度算出手段の数についても、適宜な数選択し、合計で所定数のセンサのデータを受けて分類するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0096】
11−1〜11−N センサ
20−1〜20−N カオス尺度算出手段
30−1〜30−s カオス尺度算出手段
40,40A,40B,40C.40D パターンマイニング分類手段
41 パターンマイニング分類モデル生成手段
41A データセット生成部
42 パターンマイニング判定部
50−1〜50−r カオス尺度算出手段
60 カオス尺度算出手段
100 対象装置



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7